日英同盟成立とトラス訪台
さすがにこれは驚きました。
あのゼレンスキーが、飛び入りでG7に来日参加です。大歓迎です。
これで裏番組のようにやっていた習近平の中央アジア5カ国との首脳会談なんぞ、どこかに霞んでしまいました。
ぐめぬ、憎っき、ゼレンスキーとキシダめ、一度とならず二度までもぉぉ。(歯ぎしりの音)。
さて、G7サミットが開かれました。
表の憎まれ役はいうまでもなくロシアですが、影の主役は中国です。
当人たちもよーくわかっていて、中露駐日大使が嫌われ者同士肩寄せ合って会合を開いたようです。惨めじゃー。
「中国とロシアの在日本大使館は18日、呉江浩駐日大使とゲンナジー・オベチコ臨時代理大使が広島市で開幕する先進7か国首脳会議(G7サミット)への対応について、17日に会談したとそれぞれ発表した。両氏は、G7が「中露を攻撃し、虚偽情報を広めている」との主張で一致したとし、中露に厳しい姿勢を示すとみられる首脳会議への強い警戒感をにじませた。
両氏は「G7は国際社会を代表しておらず、全世界の共通認識ではない」との認識でも一致した」
(読売5月18日)
中国・ロシアの駐日大使「G7が中露攻撃、虚偽情報広めている」…サミットけん制で連携(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース
オレらには「グローバルサウス」がついてんだぞ、アフリカにはカネと武器ばらまいて袖の下には手抜かりはないぞ、ざまぁみろ、G7め、ということのようです。
自分から嫌われ者になるような奴は、放っておきましょう。
G7首脳、原爆慰霊碑に献花 - 産経ニュース (sankei.com) G7首脳、原爆慰霊碑に献花 - 産経ニュース (sankei.com)
まぁ、中国とロシア様がお怒りなのは当然で、今回のG7の主要議題は、自由主義陣営としての価値観外交です。
ウクライナ支援を筆頭議題とし、会場を広島に設定したのは、首相の出身地だということもさることながら、ロシアに核を使用するなよ、という強いメッセージです。
G7の核保有国の中には、資料館に足を踏み入れることさえ難色を示す国もいたそうです。
当然でしょう。英米仏はこの核の恐怖の上に世界戦略を構築してきたのですから、それが情緒的に否定されかねない岸田氏の「非核の思い」については総論賛成、各論反対だっただったのです。
この核保有国のためらいを押し退けたのは、ウクライナにおけるロシアの核の脅迫でした。
「政府関係者はこう明かす。
「核軍縮をめぐる立場は各国、温度差は現実としてある。しかし、対ロシアでは一致できるはずだと踏んで、粘り強く働きかけた」
侵攻が長期化する中、ロシアは核兵器使用の威嚇を行っていた。
現実にまた核兵器が使われてしまうかもしれない。
そうした脅威が世界中を覆い、G7各国もロシアの行為を一斉に非難していた。
政府関係者の1人は「核廃絶に向けた第一歩は核による威嚇をしないことだ。そのメッセージを発する場にしたいと強調した」と語る」
(NHK5月19日)
G7首脳 バイデン大統領ら広島原爆資料館へ 難航した水面下交渉 | NHK政治マガジン
私は、岸田氏の「非核の思い」については上滑りした空論だと考えていますが、今回のような現実の核の脅迫と結びつけて説得した岸田氏には敬意を表します。
戦後の枠組みであり続けた戦勝国と敗戦国の垣根を超えて、共に被爆者慰霊碑に献花するとは!長生きするもんだ。
接待についてもよい意味で堅くなりすぎず、広島を味わっていただけた岸田氏の演出は拍手でした。
宮島の日の入りを背景にして並ぶ各国首脳とはできすぎた演出でした。
G7首脳、宮島を訪問 - 産経ニュース (sankei.com)
一方、自由で開かれたインド太平洋、QUAD、CPTPP、航行の自由、これらの共通点は、すべて中国への対処という一点で収束します。
つまり、中国とロシアという専制主義国家+ならず者の子分たちと、自由主義陣営とそれを支持する国々の二つに世界はふたつに割れつつあるぞ、ということを宣言するための第1回サミットだということです。
その意味で歴史に残るサミットでした。
ところでサミット前段で日英首脳会談がもたれて、日英同盟が正式に成立しました。
ネーミングは「日英アコード」で、まるで車の名前のようですが、外交用語としては「合意」「協定」といった意味です。
「広島アコードでは、ロシアによるウクライナ侵略を踏まえ、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を強化する」と明記。北朝鮮の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)の実現や日本人拉致問題の即時解決に向けて緊密な連携で一致した。台湾海峡の平和と安定の重要性も再確認した。
安保分野では、岸田首相が1月に訪英した際、スナク氏との会談で自衛隊と英軍が共同訓練などで相互訪問する際の手続きを簡素化する「円滑化協定」(RAA)が締結されたことを踏まえ、将来的に英空母打撃群をインド太平洋地域に派遣することや、日英合同演習の規模拡充に向けた取り組みも推進する」
(産経5月18日)
日英首脳会談 安保協力強化へ「広島アコード」で合意 - 産経ニュース (sankei.com)
産経
この第2次日英同盟成立と同時期に、台湾に英国トラス前首相が訪問しました。
トラスは首相を辞めたとはいえ、いまだに与党の重鎮であり、当然スナクの了承も得た上での訪台だろうと考えられます。
BBC
「トラス氏は(台湾における)演説で、スーナク氏の約束は「正しかった」として、「こうした政策を喫緊に実行に移す必要がある」と述べた。一方、外交・国防政策の評価については「中国を脅威と明確に記す」よう修正されるべきだと話した。
経済面では、台湾の「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTTP)」加盟を支援することで、中国の加盟を阻止するべきだと訴えた。
さらに、「自由と、本当に自由な事業を支援する」、「経済的な北大西洋条約機構(NATO)」の創設を呼びかけた。これには主要7カ国(G7)と欧州連合(EU)加盟国に加え、韓国とオーストラリアも含めるべきだとしている。
「我々は、プーチンのロシアが最近(4月)議長を務めた国連安全保障理事会を信頼できない」と、トラス氏は述べた。
「我々は世界貿易機関にも、公正な貿易ルールの確実な適用を期待できない。だからこそ、やるべきことをやるための別の選択肢が必要だ」(BBC5月17日)
トラス英前首相が訪台、中国を「脅威」と位置付けるよう政権にはたらきかけると - BBCニュース
トラスは英国政府を非公式に代表する存在であり、さらにはこのG7の時期を選んだことで自由主義陣営の総意だという形を作っています。
この文脈で歯切れよく「外交・国防で中国を脅威と明確に記す」と言い切ったことは大きな前進です。
これは単に中国に向けてだけのものではなく、総統選挙前に国民党メディアや識者がしきりと流す、いざという時には米国は助けに来ない、軍事力を強化すれば中国を刺激する、といった疑米論をまっこうから否定するものです。
このようにウクライナと台湾は絡み合ったふたつにしてひとつのもので、今日のウクライナは明日の台湾なのです。
ですからこれを防ぐには、欧州と日米が共同で双方を結びつけて行かねばなりません。
この欧州とアジア、核保有国と非核国、ウクライナ支援に積極的な国とそうではない国、この互いに矛盾する課題をウクライナの一点で結びつけた今回のサミットの成果は巨大です。
そして締めは千両役者のゼレンスキーの登場で幕を降ろしそうです。素晴らしい。
岸田氏に塩辛いことばかり言ってきた私ですが、今回は率直にその外交手腕に敬服しました。
ゼレンスキー大統領、ヘルソン訪問 「戦争犯罪400件」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
ゼレンスキー大統領を日本は歓迎します!
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スナクの「Don't worry Im wearing! CARP」も笑った。
さすが英国、脱ぎネタ大好きで外交はめちゃくちゃ巧み!同時に前首相が台湾とは!
すげーな!やりおるな!と、感心しきり。
ゼレンスキーは西欧歴訪から突然サウジに現れて、現在はフランス機で日本に移動中か。やるなあ!ウェルカムです。
オージーがバイデン来ないとちょっとむくれてましたけど、政府債務問題でG7参加すら危ぶまれてましたからね。あちらから広島に来てもらってクアッド会合というむしろ理想的シナリオ。
投稿: 山形 | 2023年5月20日 (土) 06時56分
頑張ってますね、日本外交。
もう一つ書き足すとすれば、外務大臣が総理の意を汲んで余程汗をかいていないと、これはやれてないという点です。
安全保障分野においては防衛大臣もです。
警備において今頑張っておられる現場の方々とその指揮官にもエールを送ります。
平和公園での勢揃い献花、厳島の陽を背に真ん中に立つ日本開催のg7。
安倍さんが種を蒔いた、米国議会演説や真珠湾広島相互訪問、伊勢志摩での日本の打ち出し方、などなどがスケールアップされての今です。
あの時汗をかいていた岸田さんの下で、責務も膨らんだ今をチームのメンバーがどう継いでいくか、見守っています。
投稿: ふゆみ | 2023年5月20日 (土) 07時47分
ゼレンスキー大統領が訪日する情報としない情報が錯綜する感じ、嫌いじゃないむしろ好き。
欧米諸国では、広島と長崎のありのままの事実は教えられないそうですから、資料館を出てこられた各国首脳の顔が硬いのも宜なるかな。
それでも、焦土から見事に復興した場に、焦土にした方された方が集い揃って献花する。
ここまでで既に、こと外交においては、岸田政権と官僚や関係する皆さんの構想、段取り、実行力には畏敬すら感じるし、スピリチュアルなことに全く興味が無い私でも、安倍ちゃんがついてると思えてきます。
いずれ教科書に載るであろうこの出来事で共有されるのは「核廃絶」ではなく、「核不拡散」や「透明化」であって、理想を維持しながら今は何をするべきか、何をするべきではないかがわかる大人の腹黒さを持った者による、戦争しないための軍事圧力・核を使わないための核抑止力ということになるのでしょう。
それは全て、約束事を守る気が無いロシアと中共のせい。
投稿: 宜野湾より | 2023年5月20日 (土) 11時16分
外務省のPDF(https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100505908.pdf)では、特に安全保障分野=「自衛隊によるアセット防護措置適用の可能性」の項目が目を引きます。グレーゾーン事態に対応する新安保同盟への発展を進める事に同意したというに同様の類似的解釈が出来、これは日本の安全保障新時代を予見させます。
また、このような内容からかんがみれば、約束の実効性を担保するためにこそ、国内的には「憲法改正」を行う政権の強い意思を表したものと言えるんじゃないでしょうか。
さて、「千両役者のゼレンスキー」ですが、もう一人の千両役者インドのモディ首相への期待も膨らみます。あわよくばゼレンスキーとの会談でもあれば、と夢想するものです。
それにしても英国はEU離脱以降、目を見張るほど生き生きとした積極外交を展開しています。あとは経済ですが、この面でも日本との接着をつうじて基盤を整えようとする姿勢は好感が持てます。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2023年5月20日 (土) 13時29分
過去の日英同盟をイギリス視点で見るとどうなのか、という興味深い意見を国際政治chの切り抜き動画で細谷雄一氏が語っています。
そういう経緯を踏まえて、今回の日英合意やアジア戦略について日本という国の立ち居振る舞いについて、より戦略的な姿勢を私は望み、国内についての改憲発議を待ち望んでいます。
モディ首相はG7ライン上でのウクライナ寄り添いは最低限に留めたいのでは。
そこを揉んでくる招聘側という外交の押し引きの端っこを垣間見ている気にさせてくれる、活気ある会議でまだまだ注目ですね。
投稿: ふゆみ | 2023年5月20日 (土) 16時10分
「ゼレンスキー大統領も来たんか!スゲー」と私も心底感服しておりましたが、あまりのオールスター勢揃いの出来過ぎに、日本人は情緒的になり過ぎて厳島での夕暮れショットにダマされてはいけない!と思い直しましたわ。
各国とも自国の都合でワザワザ極東まで来てるわけで、決して日本の為に協力してやろうという親切心からでは全然ありませんし、原爆資料館を見学して核投下の凄惨さを目の当たりにしても、相互確証破壊の思いを強くしただけで、管理人さんもほのめかすように核兵器廃絶なんてツユほどにも思わなかったでしょう。
特に招待国の多くは、G7の自由主義陣営と中ロなど専制国家陣営に二股かけて双方からオイシイ所をいただこうとしているしたたか者のようですので、彼らが広島に来たからと言ってよりG7側についたというのではなくて、ただ「アンタらG7は何くれるの?オレら手ブラでは帰らないからね」と言いに来ただけかも知れませんわ。
G7各国の首脳もそれぞれ国内に向けて人気を稼ぎたいので、「ドヤ?オレ様のG7サミットでの晴れ姿は!先進国首脳の一人として頑張っとるんやで」というポーズが強いだろうし(このところサミットはこの調子が強い)。
それゆえ、ガチ命張ってるウクライナのゼレンスキー大統領が『千両(万両でもいいくらい)役者』に見えてきて、対ロシア戦の反転攻勢が失敗するような事があると、この広島サミットの意義が台無しになってしまう恐れもありますわ。宮島の必勝シャモジの真価も問われます。もう勝ってもらうしかありませんわ。
それにしても誰が音頭とったか知りませんが、今回の広島サミットは上々ですわ(まだ終わったわけじゃないけど)。まさか広告代理店でも使った演出ですか?と思ったほど。
投稿: アホンダラ1号 | 2023年5月20日 (土) 23時02分