さぁ日本の出番だ、ウクライナ復興プラン
ウクライナ復興会議(URC23 )が始まりました。
戦争しながら復興を考え、かつ、その一部を推進するといういままでにない形になるようです。
「ロシアの軍事侵攻で甚大な被害を受けているウクライナの復興支援について各国政府や企業などが話し合う会議が21日、イギリスで始まり、オンラインで参加したゼレンスキー大統領は、ロシアに対抗するためにも復興事業を推し進める重要性を強調しました。
会議では、林外務大臣が演説し、日本が戦後の荒廃から発展を遂げ、東日本大震災などの自然災害を乗り越えてきた経験や知見をいかし、官民をあげて復旧・復興を後押ししていく考えを強調しました。 「ウクライナ復興会議」は、ウクライナとイギリスの両政府の主催でロンドンで2日間にわたって開かれ、日本を含む60か国余りの政府関係者や世界銀行などの国際機関、それに民間企業も参加します」
(NHK6月21日)
ウクライナ 復興会議始まる 大統領 “具体的な事業 推進を” | NHK | ウクライナ情勢
ウクライナ復興会議 NHK
世界銀行の復興事業の見積もりがでています。
「世界銀行はことし3月、ウクライナの復興にかかる費用は4110億ドル、日本円でおよそ58兆円に上るという試算を発表していて、民間企業の直接投資を促すことが今回の会議の大きな課題となっています。
イギリスのスナク首相は、38か国の400を超える企業がウクライナの復興に向けた投資に関心を示しているとした上で、さらなる投資を促すため、今回の会議で新たな戦争保険の枠組みを立ち上げる考えを示しました」
(NHK前掲)
なぜ、戦争を続けながら復興を開始するのかといえば、ロシアの侵略による大規模破壊によってウクライナの国民のみならず、経済やインフラが激しく傷ついており、このままでは戦争の継続もできなくなるのが目に見えているからです。
国民の生活や経済が破壊され尽くせば、ロシアに降伏するしかありませんからね。
だからこそ、戦争の終結を待つことなく、ウクライナの破壊された民生部門を再建しようとするのがこの復興計画です。
いわば、先の大戦の復興プランのマーシャル・プラン(欧州復興計画)を先倒しして行おうとするものです。
これは初めての戦争中の復興計画だという理由です。
そもそも戦争がいつ終わるかわからないのです。
ウクライナの勝利となればよし、5年、10年と膠着状態が続くかもしれません。
しかも、たとえば橋を架け直おしたそばから破壊されることもありえます。
また、ロシア軍はいまやダム破壊という大規模環境破壊も厭わなくなっており、ザポリージャ原発も最後の切り札に使うつもりか、占領を続けたままです。
発狂したプーチンが原発を破壊したらなどと、考えたくもありません。
しかし、自由主義陣営はウクライナに巨大な支援をおこなっており、もう下がることは許されません。
ウクライナ戦争は、民族と民族の戦いを超えて、人類の未来をかけた戦いとなっているからです。
このウクライナ戦争は、人類が決して負けるわけにはいかない戦いなのです。
実はこの分野において、日本はやや先行した取り組みをしています。
先日のG7に先行して開かれた農業相会合において、日本は破壊されたウクライナ農業支援を呼びかけています。
読売
「先進7か国(G7)の農相会合が22日、宮崎市で開かれ、焦点の食料安全保障では生産拡大に向けた連携強化を確認した。ウクライナへの農業生産支援でも一致した。G7の労働雇用相会合も岡山県倉敷市で始まり、いずれも23日に議論の成果を踏まえた文書を発表する予定だ。(略)ウクライナは世界有数の穀物輸出国で、侵略で多くの農地や関連施設が被害を受け、途上国の食料事情にも悪影響を及ぼしている。野村農相はオンライン参加したウクライナのミコラ・ソルスキー農業政策・食料相に対し、被害を受けたかんがい施設などの再建を日本として支援する方針を伝えた。G7各国もウクライナの農業復興に向け支援を強化することを確認した」
(読売2023年4月22日)
ウクライナかんがい施設再建、日本が支援へ…G7が農業復興で一致 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
特に日本がすぐにでもウクライナに転用できる技術としては、農業再生技術があります。
東日本大震災において、宮城の沿岸部は津波によってことごとく灌漑施設が破壊され、農地には震災がれきが山積しました。
放射能による被害も重なり、風評被害がそれに被るという三重苦を跳ね返した経験が、ウクライナの今後に生かせるはずです。
ウクライナ高官ら 東日本大震災被災地視察 “農業復興参考に” | NHK | ウクライナ情勢
「18日には、視察団の5人が交流館を訪れ、仙台市の担当者から被災当時の状況について説明を受けた。津波による塩害で当初は沿岸部では10年近く農業ができない可能性があるとされていたが、排水施設の改良で塩を取り除き、3年後には8割近くの農地が回復したという。市の担当者は「安全な住まいと農業など産業の復興があれば、次の一歩を踏み出せる」と話した」
(朝日2023年4月19日)
ウクライナの視察団、宮城の農地を回る 「震災復興の経験学びたい」:朝日新聞デジタル (asahi.com)
またウクライナ側からはこのような質問があったそうです。
「これに対して、ウクライナ側からは▽被災した農家が行政からどのような支援を受けたかや▽農業の経営がどう変わったかなどを質問していました。
視察団を率いるウクライナ農業食料省のドミトラセビッチ次官は取材に対して、被災地では水利施設などの農業施設がどのように復旧したかに関心を持ったとした上で「非常に高い技術で復興を成し遂げたという印象を受けた」と述べました。
そして「水利のシステムや管理などの取り組みについて、重要な情報も得ることができた」と述べ、高い技術力を生かすとともに、行政と農業者が一体となって復興を進めた日本の取り組みを参考にしたいという考えを示しました」
(NHK4月19日)
ウクライナ高官ら 東日本大震災被災地視察 “農業復興参考に” | NHK | ウクライナ情勢
水利システムの再建と管理もまた日本のお家芸です。
ぜひ日本農業界が全力をあげて支援してほしいものです。
日本ならできるし、その実力を持っています。
また、ウクライナには数さえわからない無数の地雷が埋められています。
これらはがれきの下に入っているものもあり、まずこれを除去しないとインフラ再建ができません。
NHK
「ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナで、処理されないままとなっている不発弾や地雷が復旧の妨げとなるなか、G7広島サミットを前に来日しているウクライナ政府の高官などが千葉県にある施設を視察し、建設機械を遠隔で操作できる装置などを見学しました。
来日しているのは、G7広島サミットを前に日本政府が招いた、ウクライナ政府の高官や自治体の関係者合わせて10人で、東日本大震災など数々の災害から復旧や復興を進めてきた日本の経験のうち主に技術の面で学びたいと訪れています」
(NHK5月16日)
ウクライナ政府高官など 復旧や復興の技術を施設で視察 千葉 | NHK | ウクライナ情勢
このような復興だけではなく、ウクライナに製造拠点を移転するのも有益です。
ウクライナは教育の行き届いた優秀な労働者の宝庫であり、かつヨーロッパへの域内輸出の拠点になりえます。
EUに入っていたら言うことなしでしたが、仕方がない。
「ウクライナの労働賃金は、戦争前の時点では多くの中国の都市と同水準だった。中長期的に見れば低コストの生産拠点として、そして、欧州市場により近い拠点として、日本の製造業にとっても理想の生産拠点になり得る」
(ブルースストーク 2023年5月16日)
日本がG7をリードすべき“pay-to-play”のウクライナ復興イニシアチブ:ブルース・ストークス(Bruce Stokes) | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト (fsight.jp)
残念ながら、ウクライナは一帯一路の参加国で、戦争前までは中国経済圏に半ば飲み込まれていました。
いまでもゼレンスキーは中国への幻想が捨てきれないでいます。
西側の投資が貧弱だったことが、中国に押しやったのです。
復興においても、中国は大規模投資を提示しています。
「「中国機械設備工程(CMEC)」は、欧州3位の規模が見込まれる太陽光発電施設計画を提示していた。「中国建材(CNBM)」は、すでに10基の太陽光発電所をウクライナに建設済みだ。これは、ウクライナの既存の太陽光発電容量の半分に及んでいる。こうした中国の、明確な投資意欲に対し、日本政府は、国際的な戦争保険の仕組みづくりをリードすることによって、 中国との競争で一歩先んじ、将来の日本企業の商機を拡大することが必須だ」
(ブルース・ストーク前掲)
太陽発電は特に技術などいりませんが、送電インフラ、発電インフラなどの修復は日本が得意とする分野です。
つまり、ウクライナ復興は、崇高な人類史的理念においても、また商機においてもこれ以上ない対象なのです。
さぁ、いまこそ出番です。
ロシア軍、ウクライナ南部で目立つ進軍 北部は「停滞」 米国防総省 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
ウクライナに平和と独立を
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ワグネルの反乱でロシアがやばい事になってますが、この間リンクさせたロシアンラバーのサイトはこれも「欧米&ウクライナの陰謀だ!」と誇大妄想に走るのでしょうね。
投稿: KOBA | 2023年6月24日 (土) 21時16分
ウクライナ復興は、理念と実利の両面で大きいですね。
戦後の廃墟に人材が居るなら極めて有望な投資案件ですから。
「留学生」として外国に居る若者達が戻れば更に活気が出ます。
キーウで西側諸国や中国の活動が活発になれば、ミサイルも撃ち込みにくくなります。一番の抑止力は中国なのかもしれませんが・・・
ウクライナに投資する投資信託が発売されれば即買いなんだけれど、と思います。
投稿: プー | 2023年6月24日 (土) 21時33分