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2023年6月14日 (水)

共和党候補はウクライナ戦争をどう見ているか

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昨日のトランプの体たらくを見ていて急に心配になったので、もう少し続けましょう。
米国はウクライナを今後も支援し続けていく気持ちがあるのだろうか、ひょっとして政権が変わればウクライナ切りをするのではないか、という危惧です。

実は共和党内でも、民主党のリベラル政策についての反対は共通していますが、ことウクライナ支援に対しては大きく立場に違いが見られます。
いやそれどころか、ウクライナ政策こそが共和党の候補者選びの最重要テーマといってよいほどです。

「2024年米大統領選で野党共和党からの出馬が取り沙汰される南部フロリダ州のロン・デサンティス知事が、ウクライナ戦争への関与は米国にとって重要な国益ではないとの認識を示した。これにより、共和党の大統領選指名候補獲得争いは、ウクライナ支援の是非を巡る外交政策が争点になるとの見方が専門家の間で広まっている」
(ロイター2023年3月16日)

アングル:24年米大統領選、共和党はウクライナ戦争関与が争点に | ロイター (reuters.com)

実は、共和党は20年前のブッシュ政権がイラク戦争やアフガニスタン戦争を主導した結果、国力の疲弊を招いてしまったことへの反動があるようです。
民主党のベトナムの泥沼、共和党のイラク・アフガンという悪夢です。
20年間で戦費が880兆円、州兵までイラクやアフガンに投入し、8千人もの戦死者を出しながら戦線は膠着し勝てない戦争になってしまったことに対するやり場のない憤りが、トランプの「アメリカファースト」という新孤立主義を受け入れることになったのです。

「米ブラウン大の研究チームは1日、米国の「9・11」後の20年間で、一連の対テロ戦争の費用が8兆ドル(約880兆円)にのぼるとする報告をまとめた。(略)
内訳は、アフガニスタンパキスタンでの費用が2・3兆ドル(約250兆円)▽イラクシリアでの費用が2・1兆ドル(約230兆円)▽退役軍人への療養費2・2兆ドル(約240兆円)などだった。

死者は米兵が7052人▽敵対した兵士が30万人前後▽市民が36万~38万人▽ジャーナリストらは680人だったという」
(朝日2021年9月20日)
対テロ戦争費用は20年間で880兆円 死者90万人、米大学が報告 [アフガニスタン情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

FOXテレビのタッカー・カールソンが今年3月13日に、共和党の候補者や立候補の可能性のある人物を対象に実施したウクライナ戦争に関する質問の回答を見ると、共和党の外交政策がきわめて内向きになっていることに驚きさえ覚えます。

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BBC   ディサンティス候補

たとえば、トランプに猛追すると言われているフロリダ州知事デサンティスは、このFOXのアンケートに答えてこのようにに答えて、ウクライナ政府を慌てさせました。


「米フロリダ州のロン・デサンティス知事(44、共和党)は14日、ロシアによるウクライナ侵攻は「領土紛争」であり、アメリカの「重大な国益」ではないと発言した。これを受け、ウクライナ外務省報道官はデサンティス氏に、ウクライナを訪問するよう呼びかけた。
2024年の米大統領選への出馬が有力視されているデサンティス知事は、共和党候補と目される人物に対する米FOXニュースの質問に答えるかたちで、ウクライナ侵攻に言及した。
デサンティス氏はロシアによるウクライナ侵攻は「領土紛争」であり、アメリカよるウクライナ支援の継続は、同国の「重要な国益」には含まれないなどと述べた。
米政府にとってウクライナ支持は不可欠かどうか問われると、「不可欠ではない。欧州にとってはそうだが、アメリカにとってはそうではない」と述べた。こうした発言は、デサンティス氏が大統領に就任した場合にウクライナへの援助を縮小する可能性があるこ
とを示唆している」
(BBC2023年3月16日)
ロシアの侵攻は「領土紛争」と米フロリダ州知事 ウクライナが訪問を提案 - BBCニュース


もっとも現実のトランプ政権は、優秀な外交スタッフに恵まれて、引きこもりにならず中東やアジアで着実に布石を打ってきました。
昨日山路さんが、「トランプが大統領時代に上手く行ったのは、ポンぺオがいてナヴァロ、ピルズベリーやニッキーヘイリー、ある時期のボルトン、ペンスや優秀な娘婿、日本の安倍晋三が周りを固めていたからです」という指摘は正鵠を射ています。
トランプの功績はこれら「チームトランプ」のものなのです。

NATOとだけは終始ギクシャクしていましたが、それはむしろウクライナ戦争前のNATOの問題であってトランプだけの責任ではありません。
ただし、トランプやディサンティスは、ウクライナ支援に力を注ぐ今のNATOの現住所をきちんと理解しているとは思えません。
ゼレンスキーにとってNATOなき戦いはかんがえられもしないでしょう。
ディサンティスはこのトランプの欠陥だけ強調してしまっています。

実はこのディサンティスの外交政策は、あのマクロンと瓜二つです。
「わが国には多くの重要な国益があるが、ウクライナとロシアの領土紛争にこれ以上巻き込まれることは、国益にはあたらない。欧州にとってはそうだが、わが国にとっては違う」というディサンティスの発言は、マクロンの発言だとしても少しも違和感がありません。

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習近平氏 マクロン仏大統領を異例の厚遇 EUの対中包囲網の切り崩しに躍起:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

ウォールストリートジャーナルは、このマクロン訪中をこう評しています。

「中国は長い間、西側諸国との地政学的な競争において米国と欧州を分断しようとしてきた。フランスのエマニュエル・マクロン大統領が先週、欧州は中国に対する米国の姿勢には従わないと宣言したことで、中国の戦略は成果を上げたように見えた。
しかし、見かけは当てにならない。実は欧州連合(EU)はこの1年で中国に対する姿勢を決定的に変えた。欧州の人たちは米国人よりも穏やかな言葉を使い、中国との経済関係について「デカップリング(切り離し)」ではなく「デリスキング(リスクの低減)」を望むと話す。
ただ実質的には、欧州のデリスキングと米国のデカップリングはほぼ同じように見える。欧州は中国に対して経済的な防衛策を構築しつつあり、その中には米国よりもさらに踏み込んだものもある」

(ウォールストリートジャーナル2023年4月20日)
マクロン発言は気にするな 欧米の対中見解は一致 - WSJ 

いまやマクロンは、NATOが東京に連絡事務所を開設することにすら反対し、NATOは北大西洋地域に焦点を当て続けるべきだと主張しています。
ま、その一方でフリゲート艦をアジアに派遣してバランスをとろうとするんですがね。
つまりマクロンに言わせれば、台湾が中国と八重山に同時侵攻しようと、ヨーロッパの利害には無関係だということです。
この嬉しい応援に中国は気をよくし、5月12日の汪文斌報道官は、「関係方面がいわゆる地政学的利益を求めて地域の平和と安定を破壊しないよう望む」と応じています。
なにが「地域の平和と安定」だ。ひとり破壊しているのは自分だろうに。

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マクロン仏大統領、ロシアでコロナ検査を拒否 ロシア政府認める - BBCニュース

マクロンは、国際社会の安定に責任を持つべき国家が中露に追従し、ロシアをテロ国家と指定する国連総会の決議にも反しています。
おもえば、マクロンはウクライナ侵略が起きた直後も、ロシアの声を聞け、停戦協議を行なえと主張して無意味に終わったモスクワ詣でに精を出したものでした。
マクロンがなかりせば、西側陣営、EUの対ロシア結束ははるかに早かったはずです。

マクロンは深く勘違いしているようですが、NATOをアジアに関わりさせたくないのなら、ロシアにへつらうのではなくウクライナを早く勝たせることです。
早く終われば終わるほど中国は関与できなくなるからです。
またお友達の習近平に、心から台湾侵攻や尖閣・八重山侵攻をするなと忠告すべきでしょう。
とまれ、マクロンさん。ド・ゴール主義はド・ゴール御大のようなカリスマ的人物がやってこそサマになるのであって、あんたのような軽いキャラがやっても座興に終わるのは目に見えています。

ただし、マクロン訪中と同時した欧州委員のフォンデアライエン氏は、既定の西側の外交路線そのものでした。

「欧州の中国に対する新たな考え方を理解するためには、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長が、マクロン氏とともに中国を訪問する直前の3月30日に行った演説原稿を読むといい。その一部は、米バイデン政権の国家安全保障会議(NSC)が書いたと言っても違和感がない。
フォンデアライエン氏は「中国共産党の明確な目標は、世界秩序の体制を中国中心のものに変えることだ」と述べた。「われわれは、自国企業の資本・専門技術・知識が、体制上のライバルでもある諸国の軍事・情報収集能力の強化に利用されることがないよう注意する必要がある」
(WSJ前掲)

ヨーロッパ内部も説得できないで、ワンマンプレーやっているんじゃないよ、マクロン。

しかし、米国内にマクロンと同じ考え方が生まれ、それが大統領となったらどうでしょうか。
欧州のマクロンのゴーリズム(ドゴール主義)と米国流「アメリカファースト」が大西洋を隔てて登場したら、状況は大きく変わります。
ウクライナはロシアに屈し、台湾と八重山は侵攻を受けるでしょう。

このようなディサンティスは、トランプのひな型であり、彼に次ぐ共和党候補なのですから憂鬱になります。

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米フロリダ州知事、大統領選への出馬表明 「偉大な米国の復活導く」 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

これに対して他の共和党候補が、即座に反論したことは救いでした。

「ヘイリー氏は14日の声明でウクライナへの支持を改めて表明。「米国にとってウクライナの勝利ははるかに良いことだ」と述べた。
いずれも大統領候補指名争いをしたことがあるフロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員、リンゼー・グラム上院議員も共和党内の孤立主義を批判。グラム氏はロシアのプーチン大統領について「遅かれ早かれ代償を支払うことになる」とツイッターに投稿した。
シンクタンクのアトランティック・カウンシルに籍を置く元外交官のダン・フリード氏は「デサンティス氏のコメントは、第二次世界大戦前の共和党の伝統的な立場である孤立主義、つまり欧州の安全保障に対する無関心を極めてほうふつとさせる」と述べた」
(ニューズウィーク2023年3月16日)
来年の米大統領選、共和党内はウクライナ戦争への関与が争点に|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

では、候補者を選定する党員はどうでしょうか。
今年2月に実施したロイターとイプソスの世論調査では、党員の55%が、民主的でない国から攻撃された場合、米国は民主的な国を支援すべきだと回答していますが、同時に米国はウクライナに武器を送り続けるべきかとの問いには、賛否が真っ二つに分かれてしまっています。
つまり共和党中央委員会のキャビネスが言うように、党員は外交政策には関心をもっているが、これまで約束した分は供与してもさらなる支援となると尻込みしてしまう、ということのようです。

言い換えれば、共和党員の態度は決まっていないのです。
ですから指導者のイニシャチブしだいで、どちらにでも傾くということになります。

一方、その他の候補者はここを攻め口だと考えたようです。
元国連大使だったヘイリー、前副大統領だったペンス、前国務長官のポンペオなどの候補者は、外交政策での経験を有権者へのアピールポイントとしてトランプやディサンティスの非干渉主義に対抗しています。
これらの人々は、トランプ政権の外交を作り出してきた人々でした。

仮にトランプやディサンティスが大統領となっても、この人たちと組んでくれるなら救いはあるのですが。

トランプは秘密文書を大量に持ち出して、フロリダの別荘の風呂場に置いておいたそうです。
その中には核戦略や核爆弾に関する機密解除されていない文書もあったとか。
そして御大は来客に、オレはこんなスゴイもの持っているんだぜ、とばかりに自慢したとも伝えられています。
まったく愛想が尽きます。子供か。
共和党はペンスやマルコ・ルビオなどのような保守政治家を大統領候補に据えるべきでしょう。

 

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コメント

辛いところですが直近CBSの調査では、ペンス支持はわずか4%。ヘイリーの3%を足してもぶっちぎられているデサンティスの半分以下なんですよね…。

https://www.thegatewaypundit.com/2023/06/trump-soars-latest-poll-up-38-points-desantis/

というか共和党内の8割強がトランプ&デサンティス。
これはMAGAだけでは積めない数字で、おそらく支持者の頭にはウクライナ政策自体はほんの片隅の節約程度に、メインは反LGBTで民主党に勝てる強さのある候補へと流れているのだと考えます。
悲しいほどの、ウクライナの大地で命をかけている人々への距離感です。
しかしそれも込みで、なんでもいいからもぎ取れる時に取ってきて戦っているウクライナ軍。少しでも大きく奪還して欲しい。

デサンティス氏は春に地味に訪日して岸田首相に会ってたことはあまり報道されませんでしたが、彼の頭の片隅にウクライナ支援の意味付けを、そっとどれだけ仕込んでおけるかが、外交の岸田と呼ばれる者の責務だと念じ進めて欲しいものです。
これは表でアピールするより、共和党が勝った後にハードランディングさせない為に裏でやるべき事だと思います。

トランプのロシアに甘々な姿勢は上でも書かれている通りですが空騒ぎに終わったロシアゲート問題に関して、もしかしたらあったのではないかと疑ってもいいと思います。
少なくともトランプはロシアにとって都合の良い存在ですし、機密文書問題にしてもバイデンも持ち出しをしていましたが、トランプのは内容がかなり凄いですね。これらがロシアや中国に渡っていたらと思うとかなり悪質です。

 国連憲章第一章第一条は、「平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのために有効な集団的措置をとること」の加盟国義務を、各自の同盟国だけを守ることに限ったりはしていないので、同じく第一条にある「平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って」、侵略されたウクライナに存続の意思ある限り協力するのは、憲章にも道理にも適った現実だと考えます。
誰も侵略者ロシアに対して侵略し返したり滅ぼそうとはしていませんから。
一方で、誰かに大声で言われなくとも、もとより我々ヒトは多様なもので、持っている実力も、向上するかしないかもバラバラなのも現実。
ひとりの人物が発する意見や考えにも、至極尤もで多くの共感を得るものがあったり、極端で一部にしかうけないものがあったり。
デサンティス氏にしても、行き過ぎたるLGBT運動と脱炭素運動を忌避し転換しようとする考えは、支持を得るのも当然ちゃ当然です。
我々の中にだって、例えば、ウクライナで攻撃を受けて家も街も破壊され家族を失い悲嘆する人々のニュースを見て「気の毒に」「ロシアは酷すぎる」と思った5分後に、「お腹空いたな、ランチあれにしよっかな♪」と思う程度の都合や矛盾や不条理は当たり前にあります。
ヒトがやることですから、国家同士でもそれはあり、協調も国益もその時々で都合が変わり得る、しかしラーム・エマニュエル駐日米国大使のような盛大な内政干渉は恥ずかし過ぎて出来ない。
となれば、残さず全員が満足するわけではないとしても、より普遍性と具体性を備えた価値観を提示し共有して一致点を育てるしかありません。
安倍ちゃんの価値観外交は、そのようなものであったのではなかろうかと考えています。
安倍ちゃんがご存命だったらプーチンはウクライナ侵略をやらなかっただろうとは露ほども思いませんが、安倍ちゃん亡き後、我儘の箍を外す方向にあると見える者が、国内外にいる印象はあります。
衣食、それと現代では住、それらが足りていないと礼節を知り発揮することができないというのはありますから、多くの国民生活をより良くするのは国家の重要な仕事ですが、己の生活、人生が思い通りにならないとしても、実力が様々な誰にでも選択の自由は保障されている中で、「侵略やテロリズムに成功を与えてはならない」「いかなる犯罪者にも法に基づく償いをさせる」ことくらい共有できないとしたら。
或いは、建前として共有できても「私が、私の国がそれにリソースを割くのは反対」が大勢になるとしたら。
それで我々ヒトは何を得て、どういう代償を払うことになるだろうか。
ということは考えていたい私は、乾いた希望とドス黒い疑念、両方持っています。

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