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2023年6月27日 (火)

「ワグネルの乱」を知っていたウクライナ

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こうして「ワグネルの乱」は一幕の茶番で終わったのですが、ウクライナ戦争とどのようにからんでいたのでしょうか。
まずこの乱について、米国の情報部が事前に知り得ていたとワシントンポストは報じています。

「ロシアの民間軍事会社ワグネルが武装反乱を起こす前に米情報当局が兆候をつかみ、政権や議会の限られた関係者に伝えていたと、複数の米メディアが24日報じた。情報当局は反乱の成否までは予測しなかったが、成り行きによってはロシアの核兵器管理が不安定化すると懸念を抱いていた。
情報当局は反乱の正確なタイミングは把握していなかったが、起きること自体は確実だと判断。ワシントン・ポスト紙は、政権や議会への説明は「直近2週間以内」になされたとした。政権はプーチン大統領が反乱を西側諸国の陰謀だと主張することを警戒し、反乱が実際に起きるまで表だった行動を控えていた」
(共同6月25日)
米当局、ワグネル反乱を事前把握 ロシアの核不安定化を懸念(共同通信) - Yahoo!ニュース

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ロイター

米国にとって「ワグネルの乱」は静観しているだけのものであり、余計なことをあらかじめ言うとロシアンラバーたちから「米国の謀略工作だ」と言われることのほうがイヤだったようです。
だから沈黙しつつ、唯一核兵器管理が混乱することのみを恐れていたようです。
これはソ連崩壊時から一貫した米国の姿勢で、崩壊時の混乱で核兵器が闇市場に流れるなどということが繰り返されないようち監視していました。

また、可能性としては低いものの、ワグネルが雪だるま式に膨れ上がり、首都に向えばあるいはあるいは、ということも頭の隅にはあったと思われます。
事実南部軍管区は無抵抗という恭順を示しており、一時期状況は流動的ではあったのです。

そして同時にウクライナには、この「ワグネルの乱」の情報をしっかりと伝えていたはずです。
秦郁彦氏『ウクライナ戦争の軍事分析』によれば、侵攻直前の2022年1月中旬にCIAのバーンズ長官は極秘裏にキーウを訪れてゼレンスキーと面会しています。
そこでバーンズは、ロシアが近々ウクライナを侵攻行い、初日にアントノフ国際空港を空挺部隊で奇襲攻撃する予定だと、作戦内容まで教えています。
ゼレンスキーがなんと答えたのかはわかりませんが、国際空港近辺に第4即応旅団が配置され、これが決め手となってロシア空挺軍の奇襲を凌ぎきりました。
この緒戦の失敗が、プーチンの戦争計画すべてを狂わしていきます。

今回もまたワグネルが反乱に走るという情報は、いち早く1カ月以上前にキーウに届けられていたとはずです。
当時、キーウは米国情報機関ルートとは別に、ワグネルから情報が漏洩されていました。
ブリゴジンは5月の初めに、ウクライナ側にバフムトを撤退してくれれば、ロシア軍陣地の展開位置を教えると打診したと言われています。

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ANN

「米紙ワシントン・ポストは14日、ロシア軍のウクライナ東部ドネツク州の要衝バフムト攻略で主力を担う露民間軍事会社「ワグネル」が、ウクライナ国防省情報総局に「ウクライナ軍がバフムトから撤退すれば、露軍部隊の展開場所を教える」と提案していたと報じた。
インターネット上に流出した米機密文書に基づく報道で、ワグネルの創設者エフゲニー・プリゴジン氏が今年1月下旬、ウクライナ国防省情報総局に関係者を通じて打診したところ、ウクライナ側は、プリゴジン氏を「信用できない」として拒否したという」
(読売5月16日)
ワグネルが「露軍の展開場所教える」と打診、ウクライナ側「信用できない」と拒否 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

この仇敵から内通のオファーをもらったウクライナ側は、即座に拒否したそうですが、たぶんワグネルの情報はだだ漏れだったはずです。
ロシア軍の機密保持が甘いのは有名ですが、ましておや「民間軍事会社」にまともな防諜組織があるのかさえ疑問です。
ワグネルが、「武装蜂起」を決断したのは5月中旬頃ですが、その準備過程をウクライナは興味津々で観察していたはずです。
そして、ブリゴジンの最終的なゴーサインが、7月1日までに国防省の指揮下に入ることで決断されたというタイミングまでも読んでいました。ウクライナとワグネルほど「長いつきあい」になると、キーウがブリゴジンの心理を読むことなどたやすいことなのです。

「ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相が、ロシアのウクライナ侵略に戦闘員を派遣している露民間軍事会社「ワグネル」創設者のエフゲニー・プリゴジン氏に対し、7月1日までに国防省の傘下に入るよう迫っている。プリゴジン氏は猛反発し、プーチン大統領にも公然と異議を唱え始めた」
(読売6月22日)
ワグネル創設者、傘下入り迫る露国防相に猛反発…戦況巡りプーチン氏に公然と異議 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

当時、ウクライナ軍は反攻のチャンスをうかがっていました。
武器は万全とはいえぬものの一定の量の備蓄がかない、損害を受けた部隊の再編も行われ補充も完了しました。
なんといっても西側から新鋭戦車が大量に供与されたことが大きかったでしょう。
あとは空軍ですが、F16を待ちきれないと判断し、あとは反攻のタイミングだけの問題でした。
そのような時、6月24日に、ほんとうにワグネルが「武装蜂起」してしまったのです。
ワグネルに期待などみじんもなかったものの、戦線攪乱の役にくらいたつと判断したのでしょう。
ウクライナ軍はこの機を逃さず他方面で攻勢にでています。

「CNN) ウクライナ軍は24日、民間軍事会社ワグネルの武装蜂起で混乱するロシアに対し、多方面で同時に反転攻勢をかけた。
マリャル国防次官はSNS「テレグラム」で、東部の部隊が同日、複数の方向に攻撃を仕掛けたと発表。具体的にバフムート、ヤヒドネなど数カ所の名前を挙げた。
マリャル氏は「全方面で前進がある」と述べたが、それ以上の詳細には言及しなかった。
同氏はまた、ウクライナ南部で激しい戦闘が続いているとも報告。ロシア軍は守勢に回り、ウクライナ軍の動きを必死に阻止しようとしていると主張した」
(CNN6月25日)
ウクライナ軍、ロシアに多方面攻撃 国防次官が発表 - CNN.co.jp

また南部戦線において、ダムの決壊によって先のばしになっていたドニプロ川の渡河作戦が敢行され、部隊は対岸の上陸に成功しました。

「ロシアの有力紙イズベスチヤは16日、ウクライナ軍が南部ヘルソン州のドニプロ川東岸のノバカホフカに上陸を試み、東岸を占領する露軍と銃撃戦になったと報じた。
ウクライナ軍関係者は16日、自国部隊がノバカホフカに反撃拠点となる橋頭堡を確保する作戦を開始したとSNSで明らかにした」

(読売6月17日)
ドニプロ川の渡河作戦、東岸で銃撃戦…ウクライナが反撃拠点の橋頭堡目指す : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

そして、「ワグネルの乱」の前日、ウクライナ空軍はウクライナとクリミアを繋ぐチョンハル橋を長距離ミサイル・ストームシャドーで破壊しました。

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BBC

「チョンハル橋は、並行する2本の橋からなる。ロシアが任命したヘルソン州トップのウラジミール・サルド氏によると、2本とも損傷した。負傷者はいなかった。
サルド氏は、イギリスがウクライナに供与した長距離巡航ミサイル「ストームシャドウ」が、「イギリス政府の命令」による攻撃に使われた可能性が高いと述べた。
チョンハル橋はクリミア半島からウクライナ本土南部の前線への最短ルート。ロシア占領下の都市メリトポリへと続く重要な連絡路でもある。メリトポリは今月初めにザポリッジャ州で始まったウクライナの反転攻勢の標的のひとつだと考えられている」
(BBC6月23日)
ウクライナ、クリミア半島と結ぶ橋を攻撃か 英長距離ミサイルを使用とロシア - BBCニュース 

いよいよ、クリミア半島とヘルソン州全域を射程に入れたウクライナの反撃が始まったようです。

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NOELREPORTS 

このようにウクライナ側の動きを一連のものとしてみると、ウクライナは明らかに事前に米国情報機関からワグネルの武装蜂起を教えられ、それに合わせて反攻作戦を練っていたことが分かります。

ちなみにブリゴジンは行方不明だそうですが、たぶんどこかで変死体でころがっているのが見つかるはずです。

 

 


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JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

ウクライナに平和と独立を

 

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コメント

プリゴジンは何処にいるのか分からないけど、とりあえず「軍上層部への抗議デモのためにモスクワを目指しただけだ。ワグネルはこれにて解散」という音声メッセージだけは出しましたね。
まあ、ロシア当局は何が何でも暗殺するでしょう。不審死なり自死という形で。

 米軍はもちろん、ウクライナさえ今回のプリコジン動乱を事前に察知していた。という事は、ロシア軍も当然に分かっていたはず。
それでありながら、プリコジンの行進にロシア軍は打つ手がなく、唯々諾々とモスクワまで200kmに迫る醜態を晒しました。

今後プリコジンが首尾よく暗殺されるのか、もう死んでいるのか分かりませんが、ショイグやゲラシモフこそけん責される必要がありました。
米分析によればロシア軍の士気低下がすでに著しいようですが、そりゃ当然の結果です。
反対にウクライナは今後さらに充実した装備が得られる見込みで、大いに士気も上がりましょう。けど、功にはやらず、焦らずたゆまずで損害を最小限にとどめて頂きたいものです。

 逃亡先のベラルーシでワインに毒を盛られて・・・?

秦郁彦さんはこの歳になっても精力的に執筆活動を続けているとは目を見張るものがあります。歴史戦を展開する中韓の反日勢力とそれに連携する国内の左翼に対して秦さんの実証主義に基づいた冷静な研究は政府の見解にも大きな影響を与えました。
これからも頑張っていただきたいです。

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