フランスの暴動病の根源は
フランスでまたまた全国規模の大暴動です。
鎮静化しつつあるという人がいる一方で、いっそう過激化し銃器が出現したという情報もあります。
「フランスの内務省によると、6月30日夜から7月1日未明にかけて警察官ら4万5千人を動員。拘束された数が29日夜より増えたほか、79人の警察官らが負傷した。ただ内務省は、暴力のレベルは前夜よりも低下したとしている。
フランスメディアによると、1350台の車両が放火され、学校や政府庁舎を含む266の建物が焼失または損壊したという。特に被害が大きかったのは南部マルセイユやリヨンで、商店の略奪などが発生した」
(ロイター7月2日)
フランス暴動、1300人超拘束 | Reuters
毎年やっていますな、この国は。
フランスは民主主義の誕生した自由博愛の国なんて甘ったるいことを言っている人もいますが、本当にそうでしょうか。
よく共産主義はユダヤ人のマルクスが考え、レーニンのロシア革命で実現したと思っている人が多いのですが、間違いです。
共産主義の生まれた国はフランスで、創始者はフランス人の革命家フランソワ・ノエル・バブーフです。
フランソワ・ノエル・バブーフ
フランス革命 – イラストストック「時短だ」 (jitanda.com)
バブーフは法律上の平等ではなく、実体としての平等を求めました。
そして実質的平等に達する唯一の方法は、私有財産を廃絶、生産手段の共同を唱えました。
そしてバブーフの描く社会では、各人の才能によって仕事をえることができ、その成果を現物で共同保管所に保管し、分配の管理を打ちたてることででした。
ね、まるっきりマルクス主義の共産主義社会そのものでしょう。
そしてその実行手段は、少数の反乱委員会の蜂起による権力掌握でした。
これが後に「バブーフの陰謀」と呼ばれるのですが、共産主義の開祖はこのフランス人でした。
後に出てくるレーニンなどのロシア人革命家は、そっくりこれを学んだだけのことです。
つまり、フランス革命の鬼っ子として誕生したのが共産主義なのです。
ですから、フランス共和制は暴力革命で成立した政権の末裔ですので、暴力を否定しれないのかもしれません。
英国人のエドモンド・バークは『フランス革命の省察』でこう言っています。
「正しい目標をめざすかぎり、社会の変化は抜本的であればあるほど良い、と見なす考え方と規定しうる。ここからは当然、「正しい目標をめざすかぎり、社会の変化は急速であればあるほど良い」という結論も導かれよう。
かくして成立するのが、いわゆる急進主義の理念にほかならない。フランス革命が真に重要なのは、「自由・平等・博愛」を謳ったことや、人権宣言を採択したことにあるのではなく、急進主義に基づく史上初の大規模な革命だったことにあるのだ」
バークはフランス革命のような4万人がギロチンで首をはねられ、200万人が殺され、多くの社会施設が焼かれた社会的動乱が続けば、さらに過激な急進主義思想を生み、行き着くところは極端な中央集権的軍人支配だとしています。
バークがこの本を書いたのは、ナポレオン登場の前のことですから炯眼です。
バークの見通しどおり、フランス革命はロベスピエールを経てバブーフを生み、ナポレオンに行き着きました。
そしてこのような急進主義、暴力容認体質はしっかりとフランスに根付いてしまったようです。
この急進主義は、裏返せば法の支配と秩序遵守意識が甘いということです。
目的が正しければ法を無視してよい、怒りが正当ならば社会を破壊しても許される、なぜなら被支配者は権力に抵抗する権利を持っているからだ、ということに容易になりかねません。
平たい話、なんせ国歌のラ・マルセーエーズからしてリフレインがこうなんですから。
武器を取るのだ、我が市民よ!
隊列を整えよ!
進め!進め!
敵の不浄なる血で耕地を染めあげよ!
武器をとれと、子供に歌わせるか、って外国人は思いますが、まぁ熱いというと聞こえがいいですが過激な国柄なのです。
ワールドカップで優勝したといえばパリで大規模デモ、年金改革で取り分が減れば即暴動、移民の子が警官に撃たれたといえば全国で内戦まがいのデモをして図書館まで焼く。
どうにかしています。まともじゃありません。
「【パリ=梁田真樹子】フランスのパリ郊外でアルジェリア系の少年が警察官の発砲で死亡した事件を受けて仏各地に広がった暴動は、1日夜から2日未明にかけて続いた。収拾のめどは立っておらず、マクロン大統領は1日、暴動への対応を理由に、2日から予定していたドイツへの国賓訪問の中止を決めた。
パリ中心部のシャンゼリゼ通りで車が放火されるなどしたほか、南部のリヨンやマルセイユなどでも暴徒と警察官らが衝突し、仏内務省によると、719人が逮捕された。仏当局は対応に当たる警察官らを4万5000人に増員した」
(読売7月2日)
フランス各地で暴動、マクロン大統領はドイツ訪問中止…パリ中心部シャンゼリゼ通りでも:写真 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
新たな拘束者719人に 仏抗議デモ 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
マクロンは力でねじ伏せようとしているようで、警官労組(そんなモンがあるんだ)までもが徹底的に「社会の害虫」をやっつけるんだ、と息巻いています。
「警察官労働組合の「Alliance Police Nationale」と「UNSA Police」は「きょう、警察官が最前線にいるのは戦争状態にあるからだ」「こうした野蛮人の群れを前にして、平静を呼び掛けるだけでは不十分であり、無理やりでもおとなしくさせなければならない」として、極右勢力の主張を唱えた。
エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は、暴動が起きている地域に緊急事態を宣言していないが、代わりに警察官の増員を約束した。
両組合は「今は労働争議の時ではなく、こうした『社会の害虫』と戦う時だ」と主張する一方、警察官の法的保護の強化と増員が実現されない場合、「あすにでも抵抗を始める」としている」
(AFP7月1日)
暴徒は「社会の害虫」 仏警官労組 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News
知りませんよ、こんな表現使っていると、警官労組の発言は政府の発言と同等ですからね。
子供を射殺した警官は、遺族に謝罪し殺人罪に問われるそうです。
しかしこれに対して、おかしいじゃないか、職務を果たしただけだろう、制止しているのに逃げれば撃たれる、とする声も上がっています。
【7月3日 AFP】フランスで先週、交通違反の取り締まり中に17歳の少年が射殺された事件で、発砲した警官を支援する募金が3日までに98万6000ユーロ(約1億5600万円)超に上った。事件に対する抗議デモを発端に、仏全土で暴動が起きている。(略)
警官のために集まった額は、死亡したアルジェリア系のナエル・Mさんの遺族のために集まった募金18万9000ユーロ(約3000万円)を大きく上回っている」
(AFP7月4日)
17歳射殺の警官支援の募金、1.5億円超 仏 写真16枚 国際ニュース:AFPBB News
一方、マクロンは原因をSNSとゲームだと言ってのけました。
正気ですかね、この人物。
本気でこの大暴動の原因がSNSとゲームだと考えているのなら、いったんは力でおさえつけてもまたなにかをきっかけにして再爆発を続けます。
原因は、いみじくもポーランド首相が指摘しているとおり、いままでの過大な移民政策のツケなのです。
フランス、怒りの抗議暴徒化で警官4万人動員-少年射殺の警官は訴追 - Bloomberg
「検問中の警官が17歳のアルジェリア系移民2世の少年を射殺した事件を機に広がった今回の暴動は、移民出身者の格差や差別是正の問題が進んでいないことを浮き彫りにした。
05年、パリ郊外で移民出身の若者の暴動が続いたとき、当時のシラク大統領は「教育や雇用の格差解消に取り組む」と約束した。05年の暴動は、アフリカ系の若者が警察に追われ、逃げ込んだ変電所で感電死したのが発端だった。
民間団体の調査によると、アラブ系や黒人住民が警察に職務質問される確率は白人の約20倍。17年の法改正で、警官の発砲要件が緩和されたことが少年射殺の遠因になったとの批判もある。検問中の警察による射殺事件は、昨年だけで13件にのぼった」
(産経7月3日)
仏暴動、市長宅放火で妻と子供負傷 1年後のパリ五輪へ募る不安 - 産経ニュース (sankei.com)
殺されたのが少年ならば、今回逮捕された2千人(!)の平均年齢は17歳だそうです。
「暴動は、移民層の多いパリ郊外や南仏マルセイユなど都市部で頻発。打ち上げ花火で役場を攻撃したり、商店を襲撃したりなど、手法が大胆になっている。フランスで今春続いた年金制度改革への抗議デモと異なり、略奪横行が著しい」
(産経7月2日)
フランス、暴動と略奪やまず 10代の移民層の「反乱」 社会の分断浮き彫り(産経新聞) - Yahoo!ニュース
暴動はフランス社会に構造化しています。
処置なしです。
暴徒の少年たちは「武器を取るのだ、我が市民よ!敵の汚れた血で耕地を染めよ」とか歌いながら、火をつけて回っているのでしょう。
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ゼネストは革命以後のフランスの国技ですから。
ナポレオンが帝政を敷く前に看破していた英国のエドモンド・パークって凄いな!
ナポレオン時代があったからこその後のド・ゴール主義であり、お高く止まっていて気に入らなければ暴れる民衆というお約束。戦前の芸術界には良い時代だったかもしれませんが、技術発展期に全く怠惰でゼネストはかりやっていた1930年代。第二次大戦が勃発したらアッサリとドイツに負けるという唯我独尊。
大戦後はNATOやEC内でも独自の軍備で兵器を世界に売りまくってます。
去年の2月にはマクロンは何度もプーチンに説得に行ったけど、全くのピエロでした。
で、今も他のEU諸国とは違うんだアピールで中国に行って歓待されてましたけど…他国や日本から見たら「こいつ何がしたいんだ?」という状態。あのイタリアでさえ一帯一路から離脱しようとしてるのに。いくらなんでも逆張りが過ぎるよなあ、と。
マクロンは若々しくて面がちょっと良いだけの無能でしょう。とは言ってもあの国民性ではトップになりたがる変人も少ないし誰がやっても大変でしょうけど。
結局はそんな国で上に立つにはナショナリズムを煽るしかないわけで···。
投稿: 山形 | 2023年7月 4日 (火) 07時53分
自ら引き入れた無計画な移民政策のしっぺ返しですよねこれは…それなのに「社会の害虫」とはあまりに傲慢な言い分です。
昨年沖縄でも似たような警官の暴行事件から軽く暴動状態にはなりましたが流石にここまでには至りませんでした。
日本政府も労働力補充のための移民促進をやる気満々ですが、この有り様を見てどう感じたのでしょうね?
日本の誇る治安の良さを無下にした代償はとてつもなく大き付くと思うのですが。
投稿: しゅりんちゅ | 2023年7月 4日 (火) 16時08分
日本の報道番組の解説ではいつもどおり、格差社会だの、オリンピック問題や歴史的植民地主義が遠因となる差別問題という、あさっての方角からの言説であふれてますね。
それだと現実問題として暴力の肯定や助長につながるしかないし、再発防止にも何の役にも立ちません。
ポーランド首相が言うように、この問題は「野放図な移民政策の結果」なのであって、もっとはっきり言えばイスラム問題でしょう。
そのことは暴動の参加者のほとんどがイスラム系住民である事からも明らかで、彼らの75%が共和国法よりイスラム法が優先するとしています。二世、三世になってすらも、全然同化していないんですね。
武器なんかフランス全土に点在する事実上の自治地区(ノーゴーゾーン)にいくらでも備蓄されているので、こういう内戦的な絵柄になるのは当然でした。
もちろん暴力革命はフランス人の十八番で、伝統。
それが知識人にもたらした思想的影響は甚大で、「自分たちにもっぱら責任がある」とするリベラル的態度ではあきたらず、よりラディカルな方向に政策して来たの失敗が現在までの顛末でしょう。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2023年7月 4日 (火) 17時47分