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2023年7月 6日 (木)

フランス暴動がイスラム差別だって?

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フランスの暴動を伝える日本メディアのトーンが引っ掛かります。
この暴動の原因をすべて「植民地支配と移民差別」あるいは「イスラム差別」にしてしまっていることです。
ほんとうにそうでしょうか。
たとえばNHKはこうしたり顔で述べています。

「「郊外」が抱える課題は、フランスの植民地支配の歴史と密接につながっています。帝国主義の時代、フランスはイギリスなどと競い、中東やアフリカも侵略して、広大な植民地を支配しました。なかでも、なかなか手放さなかったのがアルジェリアで、アルジェリアは8年に及ぶ激しい独立闘争を余儀なくされました。しかし、独立後も、フランスと旧植民地の経済格差は深刻で、多くのアラブやアフリカの人たちがフランスに仕事を求めてやってきました。こうした人が多く移り住んだのが「郊外」です。
死亡した17歳の少年もアルジェリア系でした。
「少年はアラブ系だから殺されたのではないか」という人種差別への怒りや、「郊外」での苦しい生活に対する不満が、人々の抗議行動の背景にあるのです 」

(NHK7月3日)
フランス 警察への抗議活動が暴動に 背景は - キャッチ!世界のトップニュース - NHK

フランスが、大都市郊外に移民が多く住んでいる移民の街を作り出してしまったというのは事実です。
また、この移民らの待遇が低いのも事実でしょう。

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NHK

傲慢と言われることを承知であえて尋ねたいのですが、だからどうしたというのでしょうか。
「植民地出身だから差別されている」とNHKは言っていますが、移民は本国の労働者より待遇が低いのを百も承知でフランスに来たのではありませんか。
それでも出身国よりもずっと待遇はよかったから移民をしたはずですので、なにをいまさらです。

本来、移民は労働者階級の下にもう一層下層階級をつくることです。
そもそも差別的制度なのです。
虐げられて当然だとは思いませんが、それを知って招いたのであり、それを承知で入ってきたはずです。
しかしそれが移民2世3世になると階級が固定されているようにみえて反発が起きる、当然のことです。
だから、そもそも移民はその場しのぎの発想ではダメで、10年、20年先を考えて入れなければならないのです。
一度移民を大規模に受け入れてしまって国籍を与えたならば、必ず家族を作って増殖していきます。
しかも多くは同一言語・同一習俗・同一宗教を求めて同じ場所に住み、排外的エスニックコロニーを作ります。
これがフランスでいう「郊外」で、日本にも数カ所あります。
これは当然すぎるほど当然の人の営みで禁止するわけにはいきません。
シンガポールのように外国人女性労働者が妊娠したら国外退去などは先進国ができない以上、移民制度の必然的流れです。
まだ引き返し可能なのはわが国のような場合だけで、フランスのようにもう半世紀以上たってしまった国は、移民を元の国に返すことなど不可能です。
第一、そんなことをしたらほんとうの差別ですから、大暴動くらいでは済みませんよ。

では、法的に移民が「別の国」、即ち外国人待遇のままとまで言われれば、明確に違うと思います。
彼らは国籍を所有するフランス人です。

「国が違う」という表現を使うことで、NHKは法律的にも差別があり、社会慣習的にも宗教的にも差別が存在するから「格差」があるのだというロジックを使っています。
これでは暴徒たちがイスラム教徒だから差別されたから火を着けて回っているのだ,という暴動の肯定につながってしまいます。
この暴動を伝えるリベラルメディアのトーンの基層にあるのは、「暴動へのシンパシー」です。
暴徒は正しい怒りで商店や自動車が焼いているのだ、警察署や図書館が炎上するくらいなんだ、フランスはそれを許すべきだ、といわんばかりです。

では、ほんとうにイスラム差別がフランスにあるのでしょうか?
いやそもそも、フランスには宗教差別自体が存在しません。
フランスは、「ラシイテ」( laïcité)と呼ばれる極端な無宗教政策を実現している社会で、これほど徹底した宗教と社会・政治の分離は世界でもこの国くらいでしょう。
フランス革命は「自由・平等・友愛」という標語を掲げましたが、ここでいう「自由」とは日本人が考える一般的自由ではなく、「宗教からの自由」を指します。
たとえばハトさんは「博愛」がモットーだそうですが、そんてな甘ったるい子供のお菓子ではまったくありません。

下の写真は、「自由・平等・博愛」という革命スローガンに書き換えられた寺院の正面玄関のものです。

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寺院はことごとく破壊され、キリスト象は撤去されました。
焼けてしまってマクロンが再建を誓ったノートルダム寺院は「理性の神殿」と名前を替えられて、キリスト像、聖母マリア像は共に撤去されて、代わりに安置されたのが「マリアンヌ」という正体不明の革命の女神でした。
今は観光地として名高いモン・サン・ミッシェル修道院は牢獄となり、ヨーロッパ最大だったクリュニー修道院は他の建造物の石材供給源となってしまいました。
僧侶は見つかり次第ギロチン送りとなりました。

その破壊のすさまじさは、まさに宗教弾圧そのものでしたが、これがフランス考える「自由」です。
ここまでしてフランスは宗教と手を切ったのです。
したがってこの「自由」、正確に言えば「宗教からの自由」こそが、フランス共和制の社会規範の大前提であって、スローガンの残りふたつの「平等・友愛」は、これを理解した者に対してのみ平等と友愛を保障します、という意味にすぎません。

これが先日もふれましたがフランス革命の実相であって、フランス共和制は紆余曲折がありながらもフランス革命を継承していることを自らのレジティマシー(正統性)としています。
7月14日の革命記念日を、「パリ祭」と言いなおして浮かれているマスコミ人士には、このフランスの「自由」の意味する苛烈さがまったく理解できていないでしょう。

移民の父母や祖父母の世代は、フランスに移民をする際にこの「宗教からの自由」を理解して宣誓したはずです。
宣誓せねば帰化は認められません。
ですから、今、暴れている暴徒たちも、2015年にシャルリエブドを襲撃して多数を殺害したイスラム教テロリストの兄弟も、両親が帰化する際してこの宣誓をしてフランス国民となったはずです。

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仏シャルリ・エブドなど襲撃事件、被告14人に有罪判決 - BBCニュース

ラシイテは徹底しています。
たとえば、学校でイスラム女性がつけるマフラー(ヒジャーブ)が禁止された時、すわ、イスラム差別だと日本のメディアは騒ぎましたが、それ以前に学校ではキリスト教のロザリオの着用すら禁止されていたのです。

いや、社会ではイスラム教徒は「差別」されているはずだという見方もあるようですが、そうではありません。
宗教を侮辱する権利を認めるのもラシイテなのです。
平等にすべての宗教を批判し揶揄する「自由」を認め、他者が自分の宗教を批判する「自由」を苦しみながら許容する受忍が大前提なのです。

たとえばイスラム過激派に襲撃されたシャリルエブドは過激な風刺マンガ雑誌ですが、イスラムをおちょくるのと同じだけの情熱をかけてキリスト教もクソミソに風刺しています。
たとえばキリスト教などこんなふう。アップするのをためらったほど下品。

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むしろイスラムには手ぬるいくらいで、襲撃の原因となったのはムハンマドを描いたからだそうです。

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トルコ、仏紙のムハンマド風刺画再掲載を強く非難 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

このような、信徒にすれば侮辱以外なにものでもないとしても、これがフランス共和制が求める「自由」とは「非難と冒涜まで含む自由」であって、それと一対となった「寛容」を求めているのです。

では、今のフランスがこの「宗教からの自由」を貫徹できるのかといえば、そうでもありません。
実際にイスラム教を侮辱すれば、シャリルエブドのように皆殺しの目に合うわけですし、2020年にはこの事件に連鎖したと思われるパティ殺害事件が置きました。
サミュエル・パティという高校教師が斬首されたのです。

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「私たちは恐れていない」 教師殺害に仏各地でデモ 写真18枚 国際ニュース:AFPBB News

「10月16日の夕方に流れたニュースは、フランス中を震撼させた。パリ郊外のイブリヌ県で中学の歴史教師サミュエル・パティさん(47歳)が首を切断されて殺害されたのだ。殺害したとされる容疑者はロシア国籍で18歳のチェチェン系難民の男性。その後、容疑者はすぐに駆け付けた警官に射殺された。
容疑者の行った殺害方法も残虐であったが、実はこの事件は、教師が担当した「表現の自由」の授業において「シャルリー・エブド」に掲載されたイスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を使ったことが原因になっており、そのことは、さらに多くの人にショックを与えた。そう、この事件は「シャルリー・エブド」の風刺画に起因していたのだ」
(ジャパン・インデプス2020年10月19日)
仏、18歳が中学教師の首切断 | "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス] (japan-indepth.jp)

ところがこのテロ事件には続きがあって、なんと告発した生徒は嘘をついていたのですから、まったくやりきれません。「

「実はサミュエル・パティ事件は、「表現の自由」を教える授業でムハンマドの風刺画を見せたとし、一人の生徒が親に訴えたことから大きく発展した事件だ。しかし、その生徒は実際はその授業には出席していなかったのだ。実は、出席していなかったことは最初の時点で他の生徒の証言で知られていた。だが、本人は授業に出席していたと警察には言っており、事件が起きてから約1か月も経った11月20日にようやく嘘をついていたと告白したのである」
(ジャパン・インデプス2021年3月11日)
仏教師斬首、発端は生徒の嘘 | "Japan In-depth"[ジャパン・インデプス] (japan-indepth.jp) 

さらには女性との嘘を親が聞いて広め、それをSNSで知った者がパティを殺害する計画を練っていることを多くの者が知っておりながら誰ひとりも警告を発さず、現場でパティを探し回るテロリストたちにあいつがパティだと教えた者までいたというのですからやりきれません。
以後、現実の学校現場ではイスラム教を非難することはおろかふれることすら恐怖する空気が生まれました。
さて、どちらが「宗教差別」をしているのでしょうか。

このように、私はこのフランス暴動をイスラム差別のせいだという解説に極めて懐疑的です。
この大暴動の原因は、明らかにフランスの移民政策の失敗にあり、それ以外ではありません。

 

 

 

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コメント

 原因は移民政策の失敗で、異質な価値観を持った移民が共和国に同化出来ないせい、とか言う本当の事を報道が伝えるのは具合が悪すぎるのでしょう。
マクロン大統領も「イスラム急進主義者の手からムスリムを守る」とか言って、移民政策の失敗をリカバリーすべく立法したりしてますが、逆にムスリムを分離しようとしているなどとして、「火に油」状態になりました。500万のイスラム教徒は全国にちらばっていて、急進派の扇動はかなり組織化されているようです。

フランスではクリスマスもライシテの槍玉に挙げられ、joyeux noël(メリークリスマス)もハッピーホリデーと言うように政治的な圧力がかけられるようです。
その割にライシテを一切受け入れないマグレブ人(北西アフリカ由来の人々)が問題を大きくしており、しかもこの問題を提起しようとするだけでレイシストだ極右だとレッテルを貼られる状況だそうです。
フランスの自由はこういう観点からも大きく毀損されていると思います。

もうかなり前のことですが、国民的長寿ドラマで主人公を苛める姑役が素晴らしかった赤木春恵さんがインタビュー番組で、お住まいの地元商店街で買い物をしていたら、近づいて来たご自分と同じくらいの年頃の女性に「あなたみたいな意地悪な人は大嫌い」と言われて、演者としてありがたいと同時に困惑もした、という話をされていたのを覚えています。
現実と虚構の区別がつかない人はいて、でも個人として「嫌い」という自由はあります。
国・地域・職業・人種・宗教・所属組織などの中であってもいろいろあり得ることにすら、「○○は」「○○人は」などと何にでも直ぐ簡単に所謂「クソデカ主語」にして発言する人はいて、でも間違ったことでも言う自由はあります。
それらは自由世界にも独裁者のいる世界にも共通することでしょう、人間だもの。発言した結果、行動に移した結果、一時的にせよどうなるかはいろいろで、客観的に妥当なことも、不当なこともあります。
「自由」や「多様」には己にとって傷つき不快なことも含まれるので、だからこそ人格とは切り離して発言や行動の内容や質がどういうものであるかを見て、不毛な事態だけは避けていく方が良いわけですが、それってなにかと高度な技術とか不断の努力とかが要ることですよね。
昔々、「他所は他所!ウチはウチ!」と親に叱られた定番を思い起こします。
差別や格差や実力差は我々ヒトが持つ避け難い宿命、時に己の安心や正当化のために、また良くも悪くも動機付けのために必要とさえするもの、という一面の現実を美しい言葉だけで糊塗し、自己責任を全力で否定する言説に曝されるうちに、甘えが多く耐性の低いヒト、選んだのではなく選ばされたのだと思い込む人が増えていったのだとしたら。
異なる考え・批判・反論・差別・格差・区別、その内容が持つ理由や根拠は詳しくどうであるのか、そこに留意できずに、気持ちが傷つけられた、凹まされた、恥をかかされたことへの復讐心に囚われる人、相手や社会を一方的に変えてやろうとする人、屈服させようとする人、それらが増えていった、そしてこれからも増えるのだとしたら。
社会や世界が争いごとを、どれだけ激しかろうが口喧嘩だけで済ませられるなら、どんなにマシだろうか。
惨事前に自ずと節度や限界や折り合いや後腐れを意識できる言論のバトル、そういうものを多くの人が共有し、以て社会や世界の多くが調和を得る、ということは、自分が生きているうちに見ることはないのだろう、止めようのないことはある、と思いつつ、せめて私は己自身を信じ過ぎず疑いもしながら、己にも他人にも期待し過ぎず、「仲良く喧嘩しな!」の「トムとジェリー」をポリコレに関係なく今また見るなどして、人生を受け入れ楽しもうと考えるだけです。

90年代〜2010年くらいまでの欧州の音楽ライブ映像に映る観客が、今から見るとびっくりするくらい白いんですよ。街角の映像も。
私は下記リンクの2012年に緩和された帰化手続きがスタート地点と考えています。
結構なし崩しに忠誠とか文化理解とか大目に見て、なんとかなるさで入れているのが書面から読み取れました。

https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2012_12/france_01.html

ホームグロウンはもう3世目も増えているはずですが、現実が動いたのは50年前ではなく四半世紀位前からでしょうか。
彼等の住む地域は闇です。
差別してる人もいっぱいいますが、単純に繋げて語るものではなく。
記事内容にあるように、格差とイスラム教の問題がセットになってライシテも元も子もないような機能不全が起きています。

池内恵氏らの言うように、イスラム教の教義が西側先進諸国の生活価値観とどうしても違う。
日本がベトナムや中国でなく、今後インドネシアやバングラなどから労働力を入れるなら、事前にぶつかりそうなテーマについて先に法整備が必要です。
私が今回のLGBT法案に賛成するのはそのためでした。
統一協会絡みの法整備もするならば、信教の自由の範囲でが当然ですが、今あるカルトだけでなく文化が違いすぎるヒンドゥやイスラムもあわせて、人権衛生治安に関して国内法に従うよう先回りしたガイドラインを望みます。
熊本に工場を誘致しても本当に人が集まらない、と知人から聞きました。
色々な理由はあるでしょうが、純粋に人が規模に対して足りないのです。
勤務地に集まって住めばエスニック空間は出来ますが、それらが法に従って暮らすライン作りが必要です。一部野党の不法認定コースでなく。

宗教と自由に関する限り、フランスは管理人様が仰るほど高尚でも尊くもないと思います。キリスト教を追放した後に据えたのは「理性崇拝」。人が神を超えるというこれ以上はないほどおぞましいものです。結局これは全くあてにならない人間理性を唯一神とした一神教でした。その結果は殺戮の嵐。西欧人は一神教を相対化できないのです。神に対するルサンチマンが理性崇拝を生み、王侯貴族に対するルサンチマンが革命を生みました。結果理性が神を超える…。フランス革命は人類史上最大のチョンボです。フランス人はプライド高く、お高く留まっていますが、18世紀以降のフランス人の駆動装置はルサンチマンです。特に覇権を握ったアングロサクソンに対する。ドゴールしかり、現代思想しかり、そしてマクロン…。日本人はおフランスを持ち上げ過ぎだと思います。

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