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2023年8月

2023年8月31日 (木)

福島事故において武田邦彦と山本太郎がしたこと

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社会が大災害や恐慌、あるいは戦争に見舞われた時、国民の不安心理につけ込んだ煽動家がカルト思想を広めようとします。
12年前の福島事故においても、悪質な流言飛語を流す者が出ました。
彼らはエセ科学を振り回し、極端な思想を広め、その極端な煽動から風評が生まれてさらに社会の傷を大きくしていきました。

風評は暴力です。
多くは匿名性の陰に隠れて、罪なき人々を貶め、リンチにかけ、経済と生活を破壊するのですから、「風評被害」などというなまやさしい言葉でくくってはいけません。
まさにむき出しの暴力であり、許すべからざる憎悪表現です。

私は風評暴力の体験者です。
私の場合、なんと人殺し呼ばわりされたのです。
「毒を撒くテロリスト」と呼ばれ、「農業など早く止めるのが復興の近道だ」とまで言われ、取引先には誹謗中傷を流され、売り上げは激減し、農場は一時壊滅状態に陥りました。

かつて風評を煽った悪人どもを列挙しておきます。

・武田邦彦・「2015年3月には日本に住めなくなる」「東北のものを食べたら死にます」と発言。
・上杉隆・ 「福島・郡山には人住めない。人が住める数値ではない」と発言。
・岩上安身・ 「お待たせしました。福島の新生児の中から先天性的な異常を抱えて生まれてきました。スクープです」と発言。
・早川由紀夫・ 「農家は毒をばら撒くテロリストだ」「殺意があったと解する」「貧乏人は福島の米を食って死ね」と書いた。
・広瀬隆・「 原発事故の拡大はもう止められない。このままでは大量死が出るが、うちの娘のサプリでなおる」と書き、放射線専門家を訴訟した。ちなみにこの娘サプリは偽薬。
・雁屋哲 ・「福島はもう人が住めない。逃げる勇気を持て」という「美味しんぼ」の原作を書いて福島県から抗議を受けた。
・クリストファー・バズビー ・「40万人がガンで死ぬ」と言った。
・山本太郎・震災瓦礫反対運動を煽った。

彼らは、海洋放出と聞きつけると出番だと思ったようで、山本太郎は自らの率いるれいわ新撰組のこんな英文の政府方針反対宣言を出して、中国と「共闘」しようとしています。
れいわ新選組は、2023年8月24日の岸田政権による放射能汚染水放出の撤回を求める声明

一方、武田の参政党は放出反対を主張しています。

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武田邦彦 - Wikipedia

武田は2011年の福島原発事故で最も執拗に煽りを続けた人物で、上杉隆、岩上安身、早川由紀夫らに並んで原発デマッター四天王と評されていました。
当時まだ山本は売り出し中でした。

Photo_7出典不明

この武田がほかの3人と違うのは、その影響力が圧倒的だったことです。
岩上や、上杉といった左翼ジャーナリストは、その影響力が左翼業界限定だったのに対して、当時無名だった彼は「元原子力関係者」という肩書を最大限使って、一般家庭の主婦に浸透しました。

彼のプロパガンダによって巨大な風評被害が起き、東日本に対する差別が起きました。
福島県産や茨城県産農水産物の不買を生み出し、やがて西日本における被災地瓦礫の受け入れ拒否にまでつながっていきます。

そして武田氏の言説をテキストにした多くの主婦のサークルが生まれ、その中から数万人の自主避難者を出しています。
彼女たちは家族をつれ、時には家族と離別して子供を抱えた自主避難民として、遠く四国、奄美、沖縄へと流れていくことになります。

武田は実に精力的に講演をこなしていましたが、その中のひとつが記録に残っています。
2014年2月の郡山市 講演会は自治体 が主催者だったからです。

今にして思えば被災地自治体が、こんなことをしゃべる人間を招聘してしまうこと自体が驚きです。
過去ログから再収録しておきます。
究極の無責任男・武田邦彦氏の「不都合な真実」: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

郡山に住むことは法令違反しています
(2013年7月19日郡山市主催講演会の発言)

東北に済むことが「法令違反」だそうです。
ただし日本の法令ではなく、彼が作れと言っている架空の「法令」に反しているからにすぎませんが。
あるいは、武田氏の主張を知るには、2013年2月14日の武田ブログを見るといいかもしれません。

※http://takedanet.com/2013/02/10_6a83-1.html

原子力と被曝 福島で甲状腺ガン10倍。国は子どもの退避を急げ!
国は直ちに次の事が必要です。
1)高濃度被曝地の子どもを疎開させる(除染は間に合わない)、
2)汚染された食材の出荷を止める、
3)ガンになった子どもを全力で援助する。
4)除染を進める。また親も含めて移動を促進する。
5)「福島にいても大丈夫だ」と言った官吏を罷免し、損害賠償の手続きを取る。
6)日本の未来を守るために、大至急、予防措置を取ることを求めます。

ものすごいですね、こっちも。「甲状腺ガン10倍」「福島に居ても大丈夫と言った役人は罷免」だそうです。
そして「福島は全員疎開」です。
このような煽動を武田は、事故直後から執拗に行っており、「東日本の農産物は食べるな」と煽動したために、大きな風評被害をもたらました。

今でも武田邦彦と聞いただけで、吐き気がするという福島県、茨城県の農業者はたくさんいます。
そして彼の周辺には北関東を中心に多くの母親の信奉者サークルが生れ、彼女たちの中から多くの自主避難者が出ました。
その数は千所帯を超えると言われています。彼らは関西、九州、四国、遠く沖縄にまで逃げて行きました。
ひとりの人物の煽動 が これほどまで多くの家族の運命を変えたことは、希有なケースではなかったでしょう。

かたや山本は震災瓦礫搬入反対運動の音頭を取りました。
当時、被災地で処理できない瓦礫は山を成して積み上がり、支援物資を運ぶ道路すら開通できない地域すら出ていました。
この被災瓦礫を被災しなかった自治体が引き受けていこうとする善意の動きに反対したのが、彼らの運動でした。
彼らは、「核のゴミを持ち込むな」と叫び、人々に恐怖心を植えつけていました。
受け入れを表明した自治体処分場の入り口には、反対派が阻止線を張り、車両の下にまで飛び込むといった「市民」の狂態がそこここで繰り広げられました。

Photo_2

出典不明

受け入れた後も、延々と処理場周辺の住民に鼻血が出た、頭痛が絶えないという流言蜚語が流されました。
下のまんがは例の雁屋哲の『美味しんぼ・福島の真実』のひとこまですが、「市民団体」が流したデマをそのまま真実に祭り上げてしまっています。

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スピリッツ

そして雁屋は、厳かにこのように結論づけます。

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同上

こんな者たちが原発反対を主張し、今はメニューを替えて放出反対を煽っているのですから、その正体が知れようというものです。

 

2023年8月30日 (水)

海洋放出が遅れたわけ

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やっと福島第1原発の処理水が放出されることになりました。
やっと、やっとやっとです。遅すぎたくらいです。

コメンテーターの玉川徹氏はこう言っています。

「一方、日本の漁業関係者への打撃を憂慮し、「処理水として海洋放出することが合理的で唯一の選択肢ではなかった」と主張。「(政府は)多分コストで海洋放出を選んだと思う」としながら、「その被害額を考えれば、海洋放出は一概に安いと言えなくなるんじゃないか」と論じた。
 だがこの後、同氏は「さらに言えばですね、じゃあ、なんでこんなに汚染…汚染した水を処理して、海に流さなきゃいけないかということに追い込まれているかというと、汚染水がどんどん生まれているからなんですよね」と持論。「未だにどんどん汚染水が生まれてるので、処理水が生まれている」と連呼していた」
(リアルライブ 2023年08月28日)

そうでしょうか。
玉川氏はなぜ「汚染水が増えてしまうのか」、その理由をわかってしゃべっていません。
まるで東電と政府がジャブジャブ溢れっぱなししておいたツケが回ってきたような言い方です。
東電は凍結壁とかいろいろやってんですがね。

いまでも「汚染水がどんどん生まれる」理由は、地下水があまりにも豊かに湧き出る場所に原子炉が立地しているからです。

「基本的に循環利用している汚染水だが、被災した原子炉建屋には細かい隙間があるため、雨水や地下水が入り込んで容積が増えてしまう。その増加量は現在、1日あたり100トン前後となっている」
福島第一原発処理水の海洋放出開始、東電 トリチウム以外の核種を除去 | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」

水の出所は地下水です。
福島第1原発は、山系から湧きだす豊富な地下水がある場所に建てられていました。
しかも地表を15メートルも掘り下げて建設されたために、いっそう地下水が湧きだすことになりました。
平時はそのまま海に流せばいいだけのことですが、事故処理となると大きな問題となりました。
それは地下水の出る3ルートが、事故を起こした原子炉や瓦礫と接触して、濃度の差があっても放射性物質を含んでいる可能性があるからです。

ではどうするかといえば、ひとつは施設手前に井戸を掘ってバイパスルートを作ること、施設を囲む凍土壁を作ってブロックすることでしたが、いずれもあまりうまくはいきませんでした。
あまりにも流入量が多いからです。
地下水の8割から9割は施設地下に流入し、いわゆる「汚染水」となってしまいました。
いちおうお断りしておくと、ALPSで浄化されるまでの水を「汚染水」と呼んでもかまいません。
しかし除去装置以降もそう呼ぶと、まるでなにもしないでそのまま「汚染水」を放出する誤解を呼ぶので使ってはいけません。
反対派はあえて「汚染水」と呼び続けることで、風評を拡大しています。
中国に至っては「核汚染水」です(苦笑)。テメーだって出してるだろうが。

止められなければ、放射性物質を除去するしかテはありません。

「放射性物質は天然、人工を合わせて全部で1000核種ほどあるとされる。東電はそこから、原子炉停止30日後の炉心に存在するだろう核種を評価。水に溶けない核種などを除外し、セシウムやストロンチウムなど62核種をALPSで汚染水から除去する主要なターゲットに定めた。
ALPSは2013年に稼働を開始した。主に内径約1メートル、容積約1トンの円筒形をした吸着塔が18塔ならんだ設備で、現在はそのうちの13~15塔で放射性物質を吸着している」

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 サイエンスポータル

基本的な原理として、汚染水をALPSの吸着塔に通す前には、後の作業の邪魔となるマグネシウムやカルシウムを液体と固体が混じった泥のような「スラリー」にして取り除く前処理を行います。
吸着塔内へ流れた汚染水からは、吸着塔ごとに狙った核種を取り除いていきます。
吸着材は使用状況にもよりますが、短いものでヨウ素吸着材を1~2カ月に1回程度、長いものでストロンチウム吸着材を1~2年に1回程度で交換しています。

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ALPS(多核種除去設備)
サイエンスポータル

「ALPS処理によって、セシウムだともともと1リットルあたり数千万ベクレル(ベクレルは放射能の強さを表す単位)あったのが、0.1~1ベクレル程度までに下がる。ストロンチウムでも同10万ベクレルから0.1~1ベクレル程度まで下がるなど、9割方の核種は検出限界値未満になる」
(サイエンスポータル前掲)

問題はトリチウムでした。

「水素と似た挙動をしめすトリチウムは水の形で存在するので除去が難しい。半減期は12.3年で、弱いベータ線を放出して崩壊する」
(サイエンスポータル前掲)

このALPSは世界最高の能力を持つ除去装置で、62種の放射性物質を除去しますが、唯一の例外がこのトリチウムです。

 

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・γ核種(45核種)・・・検出限界値(ND)未満にまで除去
・β核種(8核種)・・・5核種までが検出限界値(ND)未満にまで除去
・Sr-89(ストロンチウム)、Sr-90、Y-90(イットリウム)については、告示濃度以下


トリチウムは別名三重水素といい、いわば「水」ですから、水の中から水を除去できないのです。
もう少し細かく言えば、トリチウムは、毎日宇宙から地球にふりそそぐ放射線が空気中にある窒素や酸素とぶつかり、日々新たに作られるもので、空気中や海水中に普通に含まれています。
ですから、トリチウムは雨水にも含まれていますが、もちろん無害です。
というか、人類は誕生以来何万年の単位でこの天然放射性物質を浴び続けてきたので、それがイヤなら家から外に出ないことです。

トリチウム中性子を2つ持つ水素の同位体であり、ガンマ線を出しますが、非常に小さな力しかなく、人体に与える影響はミニマムで、ヨーロッパのミネラルウォーターには含まれているものが多く、フランスなどにはその含有基準すらあります。
岩盤を通して湧出する地下水は、岩盤が含む多種の放射性物質を含むからです。

WHOも飲用水基準として10000ベクレル/ℓを設定しています。
つまり基準以内なら、普通の水として飲めるのです。

地上生物の体内の水にはトリチウムが含まれていて、およそ1ベクレル/ℓだといわれています。
当然人体も100ベクレルていどのトリチウムを微量持っています。


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よく汚染水を出すなら、お前が飲んでみろ、という反原発運動家がいますが、いいですよ、飲みましょか(笑)。
もちろん法定希釈濃度にしてからですが、ウガイをして歯磨きに使って、お風呂の水にも使えます。
トリチウムなんぞたかだかそんなていどのものなのです。

トリチウムを含んだ処理水は、福島原発のサイト内にどんどんたまっていき、2023年8月現在の貯蔵量は約134万トン、貯蔵率は98%に上り、2024年前半には満杯に達する見通しです。
いずれパンクに追い込まれるのは目に見えていたので、政府や東電は早くから処理水の海洋放出を検討し各方面と協議してきました。

玉川氏は止めろと言いますが、地下水は止める方法を知っていたら教えて下さい。
原子炉の冷却は完全廃炉の日まで稼働させ続けねばなりません。

よくある誤解ですが、再稼働停止の仮処分を出したある裁判官などは、再稼働を止めれば「安全」だと勘違いしていたようですが、原子炉と使用済み燃料は、運転停止しようと事故処理中だろうと、休みなく冷却し続けねばなりらないのです。
冷却水が止まれば炉心を冷却することがなきなくなり、また事故に繋がります。
ですから、この冷却水は半永久的に止められません。
地下水も止められない以上、いつかは海洋に処理済み水として放出せねばならなかったのです。
それが遅れに遅れて、今やっているというだけのことです。

 

2023年8月29日 (火)

日中冷戦が始まる

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とうとう中国との冷戦が始まりました。
戦争はかならずしも経済的な必然から生じません。
経済が相互依存関係にあろうとなかろうと、冷戦は生まれます。


外務省は中国への渡航注意喚起を出しました。

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【処理水】緊張高まる中国…大使館は邦人に「日本語控えて」 塩の買い占め・“汚染水”拡散マップも 影響は日本全国に - YouTube

「外務省は渡航や滞在するにあたって特に注意すべき点として、▽外出する際、不必要に日本語を大きな声で話さないなど、慎重な言動を心がけることのほか、▽日本の大使館や日本人学校を訪問する必要がある場合は、周囲の様子に細心の注意を払う、▽万が一抗議活動などの場に遭遇した場合には決して近づかないようにし、その様子をスマートフォンなどで撮影するなどの行為も行わないことを挙げていて、「出来る限り最新情報の収集に努めてください」と呼び掛けています。 なぜなら、戦争は二国間で作られる「空気」がつくりあげるものだからです。
いまのこの「空気」は、2010年の尖閣諸島海域での漁船衝突事件、2012年の尖閣諸島国有化などで始まった中国の「反日暴動」直前のなにかピリピリする空気感に通じるものがあります。
峯村氏は義和団事件を引き合いに出して、警戒を呼びかけています」
外務省 処理水めぐる嫌がらせ受け中国渡航の注意喚起|ニフティニュース (nifty.com) 

今、仕掛けられているのは、中国のお家芸の超限戦だと自覚しましょう。
フェークニュースなど朝飯前の常套手段です。ウソを百回言えば、真実になる、そう思っている国です。
いままでさんざん嘘八百を言われて、いまや定説となってしまったことがどれだけあることか。

今回も同じです。
科学めかしたものから、印象操作まで千差万別。お好み次第。
まずは科学もどきから。

「清華大学のチームによれば、マクロシミュレーションの結果、放射能汚染水は放出後約240日で中国の沿岸海域に到達し、1200日後には北米沿岸に到達するとともに北太平洋のほぼ全域に広がることが明らかになりました。その後、汚染物質は赤道海流により北アメリカから南アメリカの海岸に沿って急速に南太平洋に拡散する一方、オーストラリア北部の海域を経てインド洋に移動します。
 注目すべきは、汚染物質の放出場所は福島付近であるにもかかわらず、汚染物質の高濃度領域は時間の経過とともに北緯35度付近に沿って東に延び、東アジア付近の海域から北米付近の海域に広がっていく点で、2400日目の時点で、中国の南東沿岸海域は主に濃度の低いことを示す薄いピンクですが、北米の西側海域は既に濃度の高い赤色にほぼ覆われている点です」
清華大学の研究チーム 日本の放射能汚染水海洋放出の全過程をシミュレーション 240日で中国到達か (cri.cn)

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清華大学の研究チーム 日本の放射能汚染水海洋放出の全過程をシミュレーション 240日で中国到達か (cri.cn)

もし、中国のトリチウムを放出している4原発で同シミュレーションを作れば、さぞかし太平洋は真っ赤かになることでしょうな。
しかしチャイナのトリチウムは良いトリチウム、日本のは悪いトリチウムなんでしたっけね。
人体にまったく影響の出ないものが、どれだけ拡散しようと意味がありません。

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読売

もっとたわいないものにはこんなものもあります。

「一方、中国のSNS・微博(ウェイボー)では27日、「日本のスーパーでは海鮮が割引されても誰も買わない」との動画を上游新聞など複数のメディアが取り上げている。
動画は中国人が日本のスーパーの店内で撮影したものとみられ、「ほかの商品は元の値段だが海鮮(刺し身)は売れないので割引シールが張られ始めた」「海鮮コーナーには客が誰もいない」などと紹介している。単に消費期限が近い商品に割引シールが張られていたり、たまたま客が少なかった時間に撮影したりしただけの可能性もあるが、ネット上では大きな反響を呼んでいる」
「日本の処理水放出で魚が大量死」、台湾でフェイク映像出回る―台湾メディア (msn.com)

馬鹿だね。スーパーの閉店間際に行けば、刺身に半額なんてベタベタ張ってあるよ。
生ものは持ち越せないなんていうのは日本の常識。いつまでも腐った魚を常温で売っているどこかの国と違って、わが国は魚にはうるさいのです。
あるいは台湾の国民党一派を使って、そちら経由でもフェークを流しているようです。
なんでも魚が大量死したとか(笑)。

「台湾でこのほど「台湾のニュースが報じない、日本の核廃水放出後、近海で魚が大量死した状況」との動画が出回った。動画には海岸近くで魚が大量に死んでいる様子が映っている。このうわさについて、台湾のファクトチェックサイト・MyGoPenは28日、問題の動画は2023年2月にすでにネット上に投稿されていたものであり、8月24日の処理水放出とは無関係であると指摘した」
台湾メディア (msn.com)

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上の写真も出所はハッキリしていて、3月16日に糸魚川でイルカに追われてイワシが陸に打ち上げられた様子です。
5カ月前の日本海側。しかも原因も分かっています。

ところで、中国内部の空気は日本以上に張りつめているようで、背景にあるゼロコロナ政策の失敗、大企業集団が相次いでデフォールトに陥った経済低迷、若者の4割を超える失業率高止まり、そして北京を沈め、河北、東北をも呑み込んだ大水害対策の失敗などで、先を見通せない不安心理はパンパンの風船よろしく爆発寸前です。

 では、習近平はこの中国の「空気」をどのような方向に導くのでしょうか。
穏便に対処療法を積み上げて軟着陸させるのか、習近平政権に向かわないために外に向けるのか、おそらく習自身決めかねているふしがあります。
本来なら主敵である米国との一戦に及ぶか、台湾総統選以降と考えていた台湾侵攻を前倒しするという選択肢もありえたでしょうが、まだ煮詰まり切っていないところで一国の趨勢を左右するダイスを転がせないと思ったのでしょう。
今、習が安直に反米方向に「空気」を誘導すると、ほんとうに戦争が始まってしまう、今はまだ戦争準備の時期で、中国人の「空気」に押されて大戦争をしたくはない、まぁそんなところです。

こういう時に、米国をこれ以上刺激せずに叩ける国がいました。
それがわが日本です。
いくらメチャクチャな論理で叩いても反撃もせず、叩かれぱなしになっている国。
ぜったいに実力で反撃してこない国。
中国内の日本企業が焼き討ちにあっても、口頭の抗議しかしない国。
大使館が投石されて河原のようになってもようと、大使召還さえしない専守防衛の国。

海上保安庁の船に中国漁船がぶつけても、後難を恐れて船長をすぐに返してしまう腰抜けの国。
与党内部に大量の中国シンパがいる国。
メディアが親中派で占められている国。

これが中国が経験則で熟知している日本という国です。
サンドバックにするに、これほど適した国がどこにあるでしょうか。

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中国で激化してる反日デモについて米国メディアの報道は? : ニューヨークの遊び方 (excite.co.jp)

いい例が2010年9月の中国漁船衝突事件です。
民主党政権は、自民党時代からの伝統芸である、中国におもねることで、尖閣漁船衝突事件を収拾しようとしました。
結果は、さらなる中国公船と航空機の侵犯を招きます。
いまなら、少々エスカレートして、「一部の暴徒」が日本の商店や工場の焼き討ちにしようと、大使館にたまごを投げ入れようと、日本人学校を脅迫しようと、ちょうどいいガス抜きになる、どうせ公明党や自民党親中派やメディアが取りなしてくれるから、ふたたび中国観光客歓迎といった雰囲気になるとでも、思っているのでしょう。

習からしてみれば、安倍がいればこんなことは簡単にはできないが義士が殺してくれたので、今はもういない。
羊のような男が首相に腰掛けて生意気を言っている。試してみるか。
台湾侵攻に支援を送るなという警告にもなるしな。
日本叩きをしているうちは、誰も文句をいわないだろう。
まぁ、習が考えていることは、そんなところです。

ずいぶんと馬鹿にされたもんです。
試されているのは、日本の側、いやもっと特定すれば岸田氏だということを忘れないように。

 

 

2023年8月28日 (月)

処理水の海洋放出は正常に行われています

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トリチウム処理水は,正常に海洋放出され、検出不能値に収まっています。
トリチウムは下図の地点でモニタリングされています。

これは24時間「処理水ポータルサイト」から閲覧できます。
海域モニタリングの結果 | 東京電力 (tepco.co.jp)

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海域モニタリングの結果 | 東京電力 (tepco.co.jp)

魚類や藻のモニタリングは以下の地点です。

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同上

福島県も「ALPS処理水に係る海域モニタリング結果」というサイトで、モニタリング数値を24時間見ることができます。
ALPS処理水に係る海域モニタリング結果 - ふくしま復興情報ポータルサイト - 福島県ホームページ (fukushima.lg.jp)

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ALPS処理水に係る海域モニタリング結果 

放出基準値は、WHO飲用水基準が1万Bq/ℓに対して、最大値で700Bq2/ℓを上回らないように運用されています。
いわば崖の100メートル手前にロープを張り、そのまたずっと前で運用されているということです。

● 放出停止判断レベル
① 放水口付近(発電所から3km以内10地点):700ベクレル/㍑
政府方針では、放出時のトリチウム濃度の上限値を1,500ベクレル/㍑未満と定めていますが、設備や測定の不確かさを考慮しても1,500ベクレル/㍑を上回らない値として、放出時の運用上限値を約700ベクレル/㍑とし、実施計画にも記載しました。
この運用上限値をもとに、放水口付近(発電所から3km以内)における指標(放出停止判断レベル)を700ベクレル/㍑に設定します。

② 放水口付近の外側(発電所正面の10km四方内4地点):30ベクレル/㍑
至近3年の、日本全国の原子力発電所の前面海域におけるトリチウム濃度の最大値※(20ベクレル/㍑)を明らかに超過する場合を通常な状況ではないとみなし、放水口付近の外側(発電所正面の10km四方内)における指標(放出停止判断レベル)を、最大値(20ベクレル/㍑)の1.5倍の30ベクレル/㍑に設定します。

モニタリング結果は検出限界値以下で、まったくなんの問題もありません。

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ALPS処理水に係る海域モニタリング結果 

「令和5年8月25日に採水した海水のトリチウム濃度は、迅速分析を実施した結果、すべての測点で検出下限値未満(3.7~4.1 Bq/L未満)であり、人や環境への影響がないことを確認しました。
トリチウムの迅速分析については、検出下限値の目標を10 Bq/Lとして、測定時間を短縮すること等により、これまでよりも速やかに測定することができます。
検出下限値の目標 10 Bq/L未満であれば、日本全国における2015年度以降の海水の最大値20 Bq/Lや排水に関する国の安全規制の基準及びWHOの飲料水の基準を下回っていることが確認できます。
なお、同じ測点において、電解濃縮法※1により検出下限値を約0.1 Bq/Lまで下げた測定を毎月実施します」
ふくしま復興情報ポータルサイト - 福島県ホームページ (fukushima.lg.jp)

よく海洋放出について説明がされていない、とか不十分だと言う人がいますが、それはだれにでも簡単に手にはいる上記のようなリアルタイムデータとその説明をまったく読まないからです。
読みもしないで運動家やメディアに踊らされて聞いていないら、と言っているだけのことです。
海洋放出まで恐ろしく時間を喰いました。
その理由はひとえに処理水を「汚染水」と呼び、永遠に「理解は得られていない」と叫び続けたメディアとサヨク業界があったからです。
政府内部にも小泉環境相のような人物がいて、所轄でもない海洋放出に待ったを掛ける始末でした。

この間、政府はひたすらIAEAと協議し、どこからどう突っ込まれても万全の仕組みを作り上げました。
たとえばモニターリングポストも従来の6カ所から9カ所に増やし、基準値はこれ以上ないというほどミニマムです。
今回の放出計画は日本政府とIAEAとの合作のようなもので、事務局長は「最後の一滴まて監視する」と言うほど自信をもったものになっています。

ですから、今回の放出に対してデマを流して煽動するメディアや団体に対しては、政府は沈黙せずにその都度反論するだけではなく、悪質ならば風評を流す反社会的行為として訴訟も辞さない対応をとるべきです。

ところで、中国は完全にイってしまいました。
「核汚染水」によってこんな怪獣が誕生するそうです。
背中に原爆を2発もらっています。なんという品性下劣な国でしょうか。

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馬鹿ですか、馬鹿ですね。いや馬鹿なだけではなく、狂っていますね。
この風評を世界にまき散らす中国とサヨク業界の反応については、次回に。

 

 

2023年8月27日 (日)

日曜写真館 われをにくむ人に贈らむ蘭の花

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蝶死せり続いて散れり蘭の花 雨人

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星空も生者の側に蘭溢れ 花谷和子

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月落ちてひとすぢ蘭の匂ひかな 大江丸

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既望は葉がくれに見る蘭の香ぞ 松岡青蘿

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むせび泣くあまりに高き蘭の香に 渡辺恭子

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すぐ傍の蘭に抱かれるたちくらみ 横山さつき

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蘭の花幽かに揺れて人に見す 西東三鬼

 

2023年8月26日 (土)

北朝鮮と中国が米空母の「軍事偵察」にこだわるわけ

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北朝鮮が軍事偵察衛星「万里鏡-1号」と称するミサイルを発射し、今回も失敗しました。
今回は第3段の分離に失敗して空中分解したようです。
北朝鮮は10月までに3回目の発射試験を行うと宣言しています。


「北朝鮮の国営メディアは24日、2回目となる偵察衛星の打ち上げが失敗したと発表した。
BBC韓国は、同日午前3時50分にロケットの発射を確認。ロケットは、中国と朝鮮半島の間に位置する黄海の国際水域の上を通過した。
日本の防衛省によると、ロケットはその後、沖縄本島などの上空を通過し、太平洋に落下した。
日本ではこれを受け、全国瞬時警報システム(Jアラート)が発動し、屋内への避難が呼びかけられた。警報は20分で解除された」
(BBC2023年8月24日)
北朝鮮が2回目の偵察衛星打ち上げに失敗、太平洋に落下 - BBCニュース


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BBC

北朝鮮は前回の失敗を改善して第1段、第2段までうまく作動したが、第3段の分離に失敗したと言っていますが、どうも違うようだと、JSF氏は見ています。

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JSF

「日本防衛省の観測では、今回の千里馬-1型ロケットの落下物が全て予告落下区域から外れていたと推定されています。つまり、北朝鮮の言う第1段と第2段は成功し第3段で問題が生じたという説明と食い違いがあります。落下物が全て予告落下区域から外れていたとなると、全段に何らかの問題が発生していたのかもしれません」
(JSF8月24日)
北朝鮮ロケット発射失敗、日本側観測と食い違う説明(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース

北の言い分どおり第1、第2段まで正常に作動していたなら、想定された軌道上(上図右赤点線)に落下せねばなりませんが、第1、第2、第3段ロケットのすべてがバラバラの地点に落下しています。
となると、前回のように第2段の失敗にとどまらず、全段の作動が狂って、発射直後から軌道に乗らなかった可能性があります。
2回目は改善ではなく改悪。
これでは開発チーム全員、高射砲で吹き飛ばされますな。気の毒。ツルカメツルカメ。

前回、今回と続けて「軍事偵察衛星」に執着しているのには、ワケがあります。
北が狙っているのは韓国の都市や軍事基地などではなく、太平洋上の米空母打撃群であり、それを探知する「眼」が欲しいのです。

「キム総書記は2022年3月に国家宇宙開発局を視察したと伝えられた際、「軍事偵察衛星の開発と運用の目的は、南(韓国)地域と日本地域、太平洋上でアメリカ帝国主義の侵略軍とその追従勢力の軍事行動の情報をリアルタイムでわが軍に提供することにある」と発言しています」
(NHK2023年1月26日)
北朝鮮 軍事偵察衛星の狙いとは?ミサイル開発との関係は? | NHK

下の写真は、2022年3月、国家宇宙開発局を視察する正恩ですが、この男が見入っているのは、朝鮮半島や黄海、東シナ海です。

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NHK

ここで正恩が口にした「リアルタイムでの軍への情報提供」とは、「動く標的」、すなわち米空母打撃群を追尾し情報を得ることです。
火星シリーズの長距離弾道ミサイルが政治的な相互破壊確証をめざすものだとするなら、「動く標的」を監視し攻撃を準備するのはもっとリアルな軍事的必要から来ています。
北にとってトランプ時代に眼前で見せつけられた米空母3隻の示威に手も足も足も出なかったのは、よほど屈辱だったはずです。

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米空母3隻が集結、日本海で軍事演習 - CNN.co.jp

この米国のプレゼンスの象徴である空母をなんとしてでも沈めたい、そのためには対艦ミサイルを充実させ、その眼となる位置情報が欲しい、しかしどこの国もそんなものを売ってくれない、ならば自力で軍事偵察衛星を保有せねばならない、と考えたのでしょう。
米国と対抗して「戦っている」ということだけが国家的アイデンティティの国ですから、そう思いつめるのもむべなるかなです。

北朝鮮、弾道ミサイルの「眼」を打ち上げ: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

ところで北以外、もう一国米国の空母打撃群を死ぬほど憎み、かつ嫉妬せんばかりに空母に憧憬を抱いている国があります。
というか、北などはとりあえずやらしておけばいい程度の幼稚な段階です。
もっとも危険なのは、言うまでもなく北よりもケタ違いに強力な中国です。
中国の場合も、北と似たトラウマから始まっています。

1995年から翌96年にかけて、台湾海峡危機が発生したことを覚えておられるでしょうか。
蒋台湾の民主化に邁進していた李登輝は母校コーネル大学(もうひとつの母校は京大ですが)を訪問するという名目で、米国訪問を要請していました。
中国は李登輝を独立を企む「国家分裂主義者」と見ていましたから、この男を政権から追放し、米国との絆を断ち切ってしまおうと決心したのです。
李は訪米することで米国とのつながりをアピールし、民主化なった台湾を世界にアピールしたかったのですが、中国を恐れたクリントン政権はビザを発給しようとしなかったために訪米は頓挫してしまいました。

この弱腰に怒った議会が、クリントンに強く抗議し、結局クリントンも折れて訪米を認めることとなります。

結局、李は1995年6月、堂々と訪米したのですが、中国が怒るまいことか。
中国の国営報道機関は李を、「中国を分断する企図を持つ反逆者」と烙印を押し、ミサイルで恫喝を加えます。
台湾周辺海域に弾道ミサイルを撃ちまくったのですから、お前子供か。
これが約1年間も続く台湾海峡危機、別名「第3次台湾ミサイル危機」です。

このとき、米国は対抗して2個空母打撃群を派遣しました。

「これに対してアメリカはベトナム戦争以来最大級の軍事力を動員して反応した。1996年3月にクリントン大統領はこの地域に向けて艦艇の増強を命じた。当時この地域には、空母ニミッツインディペンデンス(「独立」の意味。)を中心とした2つの空母戦闘群がおり、ニミッツ空母戦闘群は台湾海峡を通過した。この危機に対して、1996年に中国の首脳部はアメリカ軍が台湾の援助に来航することを阻止できないと認めざるを得なかった」
第三次台湾海峡危機 - Wikipedia

派遣した空母の名が、偶然とはいえ「インデペンデンス」(「独立」)という名称だったことは中国首脳の自尊心をズタズタにしました。
しかし地団駄踏もうと対抗手段がありません。目の前を堂々と通過する米空母に手も足もでなかったのです。
結局、空母に対する有効な攻撃手段を持たなかった中国は、ミサイル恫喝の中止に追い込まれます。
この事件は、中国に大きなショックを与えました。
米国が来援すれば台湾統一が不可能になってしまうからです。
中国が海軍力のキャップを埋めねば、台湾統一ができないことを悟った瞬間でした。
海洋を征しないかぎり米国の覇権を奪えない、このことを自覚したのです。

それ以降、中国は魔物にでもとりつかれたように大海軍建設に邁進します。
当時のバブル景気に後押しされて、有り余るチャイナマネーをぞんぶんに海軍建設に注ぎ込んだのです。

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中国、「強軍」へまい進 国防費90倍に―透明性欠き戦力増強:時事ドットコム (jiji.com)

練度はともかくとして、隻数では海自を遥かに陵駕します。
海自の将官が、5年前なら対抗できたが、今は日本単独では無理だといわしめています。

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中国海軍、海自能力より大幅優位 米機関報告書「尖閣圧倒のシナリオ」 - 産経ニュース (sankei.com)

かくして毛沢東以来の陸軍国を大海軍国家に変身させてしまったのですから、なんともかとも。
同時に南シナ海を実効支配すべく、その足掛かりとして滑走路と軍港をもった3ツの海上要塞をけんせつして完成させてしまいました。
また空母の仕組みを知るべく「遼寧」をスクラップとして買い込み、これを再生させて空母「遼寧」を作り上げます。

そしていまや世界第2位の大海軍国として、新造の空母3隻を加えて、大型空母4隻体制にしようとしています。

そしてもうひとつが、ASBM( 対艦弾道ミサイル/anti-ship ballistic missile)という射程約 1500 キロメートルの弾道ミサイルです。

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DF-21D

「これは中国本土から発射し、衛星などを通じた精密誘導で海上の米空母をピンポイントで攻撃できるとされる。対地攻撃にも使えるため、在日米軍基地も標的になりうる。開発に成功すれば、東アジアでの軍事紛争に米軍を介入させないという中国の「接近拒否戦略」の切り札になるとみられている」
Microsoft Word - Andrew Erickson and Gabe Collins.doc (suikoukai-jp.com)

日本はこのような中距離弾道ミサイル自体を保有していません。
本来なら反撃能力を持つと宣言した時点で、トマホークではなく中距離弾道ミサイルの保有を選ぶべきでした。
政治的理由で、検討対象にもならなかったのは残念でした。

また航空機や艦船から発射するYJシリーズ対艦ミサイルも開発しました。
特に脅威なのは、290カイリの長射程をを持つYJ-18です。
これ海自の90式対艦ミサイルの射程の3倍をもちますから、アウトレンジされてしまいます。
これは軍事偵察衛星とセットで運用されています。
中国海軍と日米艦隊が対決する場合、この対艦ミサイルと中距離弾道ミサイルの飽和攻撃が待ち構えているはずです。

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中国海軍、海自能力より大幅優位 米機関報告書「尖閣圧倒のシナリオ」 - 産経ニュース (sankei.com)

また「眼」となる軍事偵察衛星も347基と米国に迫る勢いです。

「米宇宙軍トップのサルツマン作戦部長は14日、上院軍事委員会の戦略軍小委員会の公聴会向けの書面で、中国人民解放軍が347基の情報収集・監視・偵察(ISR)用の衛星を運用していると明らかにした。
2021年末の260基から大幅に増加。民間衛星も活用した米軍のISR能力に迫っているとみられ、サルツマン氏は公聴会で「中国とロシアは宇宙領域での米国の優位を弱めようと動きを強めている」と警戒感を表した」
(毎日2023年3月15日)
中国軍が347基の情報収集衛星を運用 米宇宙軍が明らかに | 毎日新聞 (mainichi.jp)

これに自信を深めた中国が行った去年2022年8月の台湾海峡危機は、台湾をぐるりと包囲し弾道ミサイルを対本上空を通過させました。
このとき波照間と眼と鼻の先に着弾させています。

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「台湾有事は日本有事」が現実に 中国演習で高まる脅威 - 産経ニュース (sankei.com)

「中国軍は95年7月と96年3月、短距離弾道ミサイル東風(DF)15計10発を台湾本島北部と南部の沖合計3カ所に発射したが、着弾地点は今回の演習区域より遠かった。また、大規模上陸演習地は台湾海峡の中国大陸側だった。
今回は、台北、基隆、高雄の重要港湾沖や軍港がある北東部の宜蘭沖に加え、日本の排他的経済水域(EEZ)に食い込む東部沖にも演習域を設定し、台湾本島を事実上、封鎖。軍用機や艦艇が事実上の停戦ラインである台湾海峡の中間線を越え、東部沖にも艦艇を進出させて東西から挟撃する態勢をとっている。4日の弾道ミサイル発射では、初めて台北上空を越えて東部沖に着弾した」
(産経2022年8月5日)

このように米空母が、台湾有事においてどこに位置しているのかが決定的に重要なのです。
石平氏と峯村健司氏の共著『習近平・独裁者の決断』によれば、米中軍事衝突のリスクが高まると、米軍の空母機動部隊は台湾付近から退避し、グアムまでいったん下がると述べられています。

現時点で、東アジアでは空母1隻体制状態です。
もう一隻増強して2隻体制にするという話は、前々からありますが、実現していません。
すると、現有の日米の海軍力では、台湾付近の通常戦力の軍事バランスで中国が優位に立ちます。
なかでも、中距離ミサイルについては中国2000発に対して米国はゼロという圧倒的な中国優位の状態ですから、米国といえども苦しい所です。

ですから1隻でも米空母が沈められるリスクを米国は取らないだろう、というのが両氏の見立てです。
空母は米国のプレゼンスと威信の象徴ですから、これを一隻沈められたら政権が飛びます。

このリスクを取って、米空母打撃群はグアムへと下がります。
このように米空母のスタンスは東アジアの軍事情勢に決定的意味を持ちます。

米空母がグアムまで下がった場合、日本は最悪シナリオに備えねばなりません。
自衛艦隊は単独で中国艦隊と海上決戦することは不可能ですから、宮古、石垣に展開する対艦ミサイル部隊と潜水艦隊のみを残して、水上艦は中国との艦隊決戦を回避し、沖縄本島の線まで下がるかもしれません。

断腸の思いですが、海自単独では台湾はおろか宮古、石垣も救えないのです。
日本付近の海上優勢は大きな打撃を受けて、日本のシーレーンは中国よって寸断され、エネルギーの枯渇が現実味を帯びます。

だから、自力でエネルギーを供給できる原子力が必要なのですか、そのへんは別の機会に。 
これが最悪シナリオです。
一番悪いことを考えて対策をたてましょう。

長々と説明しましたが、この米国のプレゼンスの象徴である「空母」をなんとしてでも沈めたい、そのためには対艦ミサイルを充実させ、その眼となる軍事偵察衛星を保有したいというのが北の意図です。
このことを抜きにして、ただ北の脅威をさわぎたてても意味がありません。

 

 

 

2023年8月25日 (金)

プリゴジン暗殺される

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プリゴジンが、モスクワからサンクトペテルブルトに向かう自家用ジェットを爆破されて死亡しました。
正式には本人確認がされていませんが、暗殺か事故かは別にして死亡したことはほぼ間違いないでしょう。
私は絶対にプーチンはプリゴジンを許さないだろう、彼は殺されると書きましたが、当たってしまいました。
プーチンが好きなのは毒薬。今回は機体に爆薬を仕掛けたか、対空ミサイルを使ったようです。
21世紀とは思えない、ロシアの暗黒の宮廷劇です。
ホント、ロシアと中国はこんなことまでよく似ていますね。

「ロシアの雇い兵組織ワグネルの創始者エフゲニー・プリゴジン氏(62)らを乗せた自家用機が、モスクワの北西約300キロのトヴェリ州クジェンキノ村近くで墜落したとされる。
ロシア連邦航空局は23日、墜落機の乗客リストに、プリゴジン氏の名前があると明らかにした。国営インタファクス通信は、墜落現場で乗客乗員10人全員の遺体が確認されたと伝えた。プリゴジン氏は今年6月、ロシア国防省に対する反乱を起こし、部隊を一時、モスクワへ向かわせた。 他方、死者の身元について慎重を促す専門家の声もある」
(BBC8月24日)
ワグネル代表プリゴジン氏、飛行機墜落で死亡か 搭乗者名簿に名前とロシア当局 - BBCニュース


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ロイター

動画が残っており、機体は空中で分解して胴体らしき大きな部分は垂直に落下しています。

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ワグネル代表プリゴジン氏、飛行機墜落で死亡か 搭乗者名簿に名前とロシア当局 - BBCニュース

また機体の残骸にはミサイルのものだと思われる多くの穴が開いている(下写真赤丸)と、ワグネルは主張しています。

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Telegram: Contact @orchestra_w

ただし、米国情報筋は対空ミサイルの可能性は低く、飛行機に仕掛けられた爆薬によるものだと見ていくるようです。

「ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者、エフゲニー・プリゴジン氏が搭乗していたジェット機の墜落を巡り、米当局者は同氏の暗殺計画の結果との見方を示した。地対空ミサイルで撃墜された可能性は低いとみている。
米政府の初期分析では、ジェット機に仕掛けられた爆弾が爆発したか、何らかの破壊工作が23日の墜落を引き起こしたことが示唆されている。この分析は完全ではないと当局者らは強調している」
(ウォールストリートジャーナル8月25日)
プリゴジン氏、暗殺の可能性=米初期分析 - WSJ

このプリゴジン所有の「エンブレアル・レガシー」には、ワグネルの指揮官クラスが同乗していたようで、元GRU特殊部隊中佐ドミトリー・ウトキン以下、セルゲイ・プロパスティン、エフゲニー・マカリャン、アレクサンドル・トトミン、ヴァレリー・チェカロフ、ニコライ・マツセイェフらが乗っていたようです。

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エンブラエル社製の「レガシー600」

ロシアはウクライナの仕業にしたいようですが、今ウクライナにとってプーチン体制の攪乱要因となっているプリゴジンを殺さねばならない理由はありません。
この男を処罰したいのなら、むしろ原告側証人として国際法廷に引きずり出してしゃべらせるほうがよほどましです。
プリゴジンはアフリカ、中東におけるロシアの裏工作の隅々まで知っていますので、惜しい男が殺されました。

ワグネルは名指しでプーチンを暗殺犯だとして糺弾しています。


「ワグネル系とされる「テレグラム」チャンネル「グレイ・ゾーン」は23日夜、ロシア軍がプリゴジン代表やウトキン氏を乗せた飛行機を撃墜したと伝えた。
「グレイ・ゾーン」によると、クジェンキノ村の住民は飛行機が墜落する前に2回、爆発音を聞き、水蒸気の筋が2本伸びる様子を目にしたという。「グレイ・ゾーン」は、プリゴジン代表が「ロシアに対する裏切り者の行為の結果、死亡した」と書き、「しかし彼は地獄でも最高の存在になる!」とたたえた」
(BBC前掲)

ウクライナの反応。

「ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問はソーシャルメディアで、「戦争の霧が晴れるのを待つべきだが」としつつ、「プーチンは自分をおびえあがらせた相手を、許したりしないのは明らかだ。2023年6月に彼を無効化した当人は、まさに時機をうかがっていたのだ」と書いた。
さらにポドリャク氏は、「プリゴジンはルカシェンコの突拍子もない『保証』や、同じくらいばかげているプーチンの『名誉にかけた言葉』を信じた瞬間、自分自身の特別殺害令状に署名した。それは明らかだ」とも続けた」
(BBC前掲)

プリゴジンはプーチンとの直接交渉でベラルーシに国外退去することを条件にして、罪に問われない口約束をもらっていたようです。
それもあってか、プリゴジンはベラルーシ行きなど見向きもせずに、ロシア国内で活発なビジネスを続けていました。
死ぬ前日まで、彼がやっていたのはモスクワ市との給食の交渉でした。
たぶんモスクワに飛んだのも、この給食獲得交渉のためだったのでしょう。
傭兵部隊のボスが、最後の最後までこだわったのが市の給食だったとは悲喜劇です。
まぁ、考えてみれば給食業がワグネルの本業だったのですが。

「モスクワ地域の指導者に近い対話者は、墜落の直前の日の午後、プリゴジンはモスクワ地域の行政およびモスクワ市長室の代表者と「[予算機関の]栄養問題について」会ったと述べた。PMC Wagnerの創設者に関連する企業は、長年にわたり政府契約の下でさまざまな予算機関に食料を供給してきた。
クレムリンに近い2人のメドゥーザ情報筋は、反乱後もプリゴジンがロシアで同様の事業を続け、「結論を出さなかった」ことに驚いたと述べた。
「彼はたくさんのものを持っているアフリカ、彼自身がアフリカ諸国の指導者とビジネスをしています。これまでのところ、誰も彼に干渉しておらず、誰も彼を追い出していません。なぜ彼はここで学校給食の契約が必要なのですか、そしてそのようなリスクがありますか?彼はばかではありません、彼はすべてを理解していたようです」とメドゥーザの対話者の一人を追加しました」
「暴動の後、彼はひどく終わるだろうという感覚がありました。これは許されません」プリゴジンの飛行機の墜落。クレムリンに近いメドゥーザの情報筋は、ワーグナーPMCの長であるメドゥーザの死の可能性について何と言っていますか? (meduza.io)

そこで残されたワグネル残党ですが、当然のことてながら怒り狂っているようです。
前述したように、「ロシアに対する裏切り者の行為の結果、死亡した。しかし彼は地獄でも最高の存在になる!」と叫んでいます。
報復に出るかもしれません。

いずれにしても、今後ロシア国内のプーチンをめぐる権力闘争は激化することでしょう。
そしてプリゴジンがそうであったように、プーチンもベッドの上で死ねないようです。

 

ワグネルから見る「プリコジンの乱」: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
プーチン、主戦派を粛清: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
難しい「プリゴジンの乱」の後始末: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
伏魔殿のワグネル帝国: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

 

 

2023年8月24日 (木)

海洋放出案件は馬鹿判定器です

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なんだあの決勝戦は。つまらない。最低最悪。
ケーオー、あれだけ騒げば守備妨害だぞ。
酒は止めていたのですが、あの悪夢の5回をみていたら、シラフでは見られませんでした。
今日は二日酔い。

さて処理水の放出が始まります。
もはや科学の次元からナマ臭いな政治の局面へと入ってしまったようで、たまらんなぁ。
中国サマは自分が日本の数倍のトリチウムを出していることを棚にあげて、お怒りの様子です。
くどいようですが、中国のトリチウム排出量をおさえておきましょう。

「日本政府は、中国の原子力エネルギーに関する年鑑や原発事業者の報告書を基に資料を作成した。それによると、2020年に浙江省・秦山第三原発は約143兆ベクレル、21年に広東省・陽江原発は約112兆ベクレル、福建省・寧徳原発は約102兆ベクレル、遼寧省・紅沿河原発は約90兆ベクレルのトリチウムを放出していた。
東電は、福島第一原発の年間放出総量を22兆ベクレル以下に抑える計画で、放出後のトリチウムの濃度は、世界保健機関(WHO)などの基準をはるかに下回るとしている」
(読売6月21日)
中国の複数原発がトリチウム放出、福島「処理水」の最大6・5倍…周辺国に説明なしか : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

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読売

福島第1からの処理水に含まれるトリチウム濃度は年間2.2兆ベクレル、方や秦山第三原発1基だけで143兆ベクレルですからなんと65倍。
ケタが違ううえに、海洋放出しているのは泰山原発だけではなく4基もありますから、あわせれば447兆ベクレルにも達します。
おいおい203倍じゃないか。
よもや稼働時に出たトリチウムは安全だが、廃炉作業の工程で出たトリチウムは危険だとでも言うんでしょうか。
いいトリチウム、悪いトリチウムってわけでしょうか。
バカバカしい。もちろんどこから排出されようと、まったく同じです。

いやマジでそう思っているから、自分が排出しているのには目もくれず、日本のそれだけを指して「核汚染水を人類の公共財産の海洋にながすな。海洋は日本の下水ではない」なんて環境運動家みたいなことを言い出しています。

「中国外務省の汪文斌副報道局長は7日、原発処理水放出を巡って言葉を強めた。中国メディアは、大半の放射性物質を取り除いた「処理水」ではなく、「核汚染水」と呼んでおり、批判的な報道を連日続けている。汪氏は「海は世界の公共財産だ、日本の下水道ではない」といった、感情的な発言もいとわない」
(朝日6月17日)
「海は日本の下水道ではない」 原発処理水放出、「安全」認めぬ中国:朝日新聞デジタル (asahi.com)

そして今回も重秀夫日本大使を呼びつけて同じことを言っているようです。

「【北京共同】中国外務省の汪文斌副報道局長は22日の記者会見で、東京電力福島第1原発処理水の海洋放出決定に「深刻な懸念と強烈な反対」を表明し「日本が誤った決定を正し、核汚染水の海洋放出計画を撤回することを強く促す」と述べた。日中関係筋によると、孫衛東外務次官は同日、日本の垂秀夫駐中国大使を呼び出し抗議した。
垂氏は中国側の抗議に対し「科学的根拠に基づかない主張を行っていることは残念だ」と反論した」
(共同8月22日)
中国、大使呼び放出抗議 香港、10都県水産物禁止 (共同通信) - Yahoo!ニュース

原則をしっかり言うことができる重大使でよかった。
これが民主党政権が選んだ丹羽宇一郎大使なんぞだったら、その場で平伏して泣きじゃくりながら、政府方針を撤回させてみせます、ごめんなさい、ごめんなさい、なんて言いかねなかったですからね。

原則的、かつ科学的に淡々とこういうバカには反論していくしかないのです。
日本メディアは「世界各国割れる反応」なんて書き方をしていますが馬鹿言っちゃいけない。
反対しているのは、中国以外はお約束のロシアのヤクザ連合。
そして国家ではない自由なき香港特別区とマカオだけです。

中国さん、韓国がムン政権じゃなくて残念でしたね。
だとしても領土問題と一緒で、バカになにいっても始まらない、どうせポジショントークなんだからと思って反論しないのが一番いけません。
沈黙すると、それは国際社会では中国の妄言を認めたことになりますからね。

そして対抗措置として日本の農産物の輸入を制限を開始するそうです。

「中国税関総署は7日、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出について「高度の警戒を保つ」とする談話を発表した。「事態の進展を見て、適時、一切の必要な措置を講じて中国消費者の食卓の安全を確保する」とも強調し、海洋放出が実行に移されれば日本からの食品輸入規制を強化することを示唆した」
(産経7月7日9日)
中国、食品輸入規制の強化示唆 日本の処理水海洋放出で - 産経ニュース (sankei.com)

食品の輸入禁止は10都道府県ですが、群馬、長野、栃木は内陸で海なし県、新潟は北陸、このどこが「核汚染水」と関係あるのでしょうか。
言えば言うほど、やればやるほど馬鹿全開です。

日本の野党はどうでしょうか。
選挙公報なんかより、よほどいいいい馬鹿判定器になりますね。

「維新の藤田文武幹事長は韓国野党の主張を「プロパガンダ」と非難し、国民民主の榛葉賀津也幹事長も「『汚染水』ではなく処理水だ」と反発する。公明党の石井啓一幹事長は、中国の姿勢について「冷静に科学的根拠に基づいて判断してほしい。IAEAがお墨付きを与えた」と疑問を呈する。
一方、立憲民主党の泉健太代表は28日の会見で、中国の主張に関し、「IAEAが出した結果については同じ評価がなされるべきだ」と述べた。ただ、長妻昭政調会長は20日の会見で、「汚染水」という呼称を用いた上で、「それぞれの政治家がいろいろな考えで使っている」と許容する考えを示した。来日した韓国野党議員の記者会見に同席し、放出計画に反対する共同声明を出した議員もおり、チグハグな対応が際立つ」
(産経7月30日)
処理水放出 与野党、中韓偽情報の対応割れる 立民ちぐはぐ - 産経ニュース (sankei.com)

維新と国民は合格。正しく科学を理解しています。
公明はいちおう中国にはひとこと言ってはいるものの、夏は海水浴シーズンだから放出するなとかわけの分からないことも言っていました。
そういうこと自体が風評を呼んでいることに気がつかないようでからダメ。
立憲は、韓国の抗議弾に同調した議員がウジャウジャ出た上に、それを掣肘すべき長妻政調会長までもが「汚染水」と呼んではばからないのですからこまった人たちだ。
「汚染水」とは、ALPS浄化装置をとおさず、そのまま海洋放出するという意味ですから、重大な風評拡散です。
共産党、社民党は、いつもどおりの平常飛行で風評推進派。
参政党は、「東日本は滅亡。ここの食品は食べたら死にます」と言って2011年当時、東日本の住民の敵だった武田邦彦がいるせいか風評推進派。

メディアは妙に情緒的に漁民の「政府に裏切られた」というひとことを拡散しています。
あのね、漁民はこう言うしかないの、こう言わないと容認したことになっちゃうから。
容認したら補助金交渉がうまくいかないから。
これだけ漁連は反対したが、実行されてしまった、という負い目を政府に与えないとダメなの。

あの東京新聞はこんなことを書いていました。

「福島の海はなーんでも捕れる宝庫。こんな海はないよ」。福島県沖の漁船上で漁師の声は誇らしげだった。東京電力福島第一原発事故から9年半が過ぎ、復活途中の福島の漁業に再び暗い影がちらつく。原発から出る汚染水を浄化処理した後の水について、政府は近く、海洋放出の方針を決定しようとしている。反対の声を上げる漁業関係者の思いの底にあるのは、被災者と向き合わない国と東電への怒りだ」
(東京2020年12月3日)
福島の漁師は言った「漁業やる人がいなくなっと」 近づく汚染処理水の海洋放出方針決定:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

3年前ですが、堂々と「汚染水」という言い方をして「政府と東電への怒り」を煽っています。
こういう「汚染水」というバイアスのかかった言い方を使って、漁民をこんな心理に誘導しているわけです。

「トリチウム水と呼ばれる処理水は他の原発も放出していると説明を受けた。だが福島第一の処理水は、事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)に触れた汚染水を浄化したもので、他の放射性物質が残る。「どんなに薄めても気持ちのいいものではない」
(東京前掲)

ならば取材者が説明すればいいではないですか。
デブリに仮に触れた地下数も、すべてALPSに通されて浄化され、残ったのはもっとも無害なトリチウムだけだと。
それも飲用水基準以下に海水で希釈して流すのだと。
そしてこれをしない限り廃炉作業は挫折するのだ、と。

それをしないのは、腹黒いか、馬鹿かどちらかです。たぶん両方でしょう。

 

2023年8月23日 (水)

不良債権を明示できない中国という国

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巨額の不良債権問題が発生した場合、日本のような自由主義経済の国においては、その全容の監査と開示から始めねばなりません。
公金投入を前提にしているのですから、当然です。
日本の場合は、銀行が今に至るも営々と不良債権を処理していますが、自力で処理した不良債権額だけで実に100兆円に達します。
これはGDPの2割に達しました。

「不良債権の処理の結果は自明である。銀行の自己資本が尽き、最後は債務超過となる。銀行の破綻である。
末尾の年表に平成時代の主だった銀行の破綻と再編の概要を示した。銀行関係者や金融当局者たちが「金融恐慌寸前、日本経済最大の危機」と語るのが、1997年11月の北海道拓殖銀行の破綻と山一証券の自主廃業の時である。この直前に三洋証券が資金繰りで破産。これをきっかけに急速に短期金融市場が縮小し、拓銀と山一証券を直撃した。破綻は連鎖する。98年には日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が一時国有化される形で看板を下ろし、多くの地方銀行も立ち行かなくなった」
平成―バブル崩壊の後始末とデフレ対策に追われた金融界 | nippon.com 

この20年間にいかに多くの銀行が消滅し統合されていったのかはすさまじいばかりで、大手銀行で旧社名が残っているものがないほど、日本の銀行業界に逆風の嵐を巻き起こしました。
不良債権問題の処理にてこずった日本では景気低迷が体質化し、不良債権を抱えていなかった製造業まで倒産の波にさらわれました。
日本の主力産業である電機や機械、輸送用機器メーカーまで倒産したり、倒産寸前にまで追い込まれる企業が相次いだのは、この時代です。
そのうえに白川日銀がデフレ容認政策というトンデモ金融政策をとったために、延々とデフレトンネルを20年間も歩むことになってしまいました。
これが日本国民に塗炭の苦しみを与え、国家の体力を著しく奪ったのです。
救われたのは2013年にアベノミクスが登場してからのことです。

もちろんこの間、政府は指をくわえていたわけではなく、統廃合への資金提供や、預金保険機構を通じて公的資金を注入し続けました。

その資本注入額は累計で13兆円、これ以外に金銭贈与19兆円、不良債権の買い取り6兆円、合計38兆円もの巨費を投入しています。

山一証券、日債銀に投入した日銀特融の損失だけで、約2000億円にも上っています。

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48兆円負債 恒大集団が破産申請 中国“危機”日本への影響不可避(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース

では、中国が日本と同じ不良債権問題で救済を発動するには、どこから始めたらよいのでしょうか。
日本の不良債権の規模がおおよそ100兆円超規模なのに対して、中国は融資平台(LGFV )だけでその9.4倍、民間デベロッパーや銀行の不良債権までくわえたらどれほどの規模になるのか見当もつきません。
本来なら中国政府は直ちに政府資金を投入して全力でこれを救済しないと、空前の不況と信用縮小に陥ることは明らかです。

そのためには公金投入をどれだけしたらいいのかを確定せねばなりません。
中国のすべての企業に財務情報を一点の曇りもなく開示させ、その開示に基づき金融機関の不良債権を認定することです。

これが出来ないと、いくら不良債権があるのか、いくら資金注入したらよいのか、どれだけ信用不安が拡がっているのか、といったかんじんなことがわからず救済策の設計ができません。

ところが、ここに共産中国特有の壁が立ちはだかります。
中国がソ連から学んだ極度の情報の隠蔽体質です。
共産党の統治原理の根幹には「知らしむべからずよらしむべき」という民衆不信・愚民政策があり、それを可能にさせてしまう共産党国家の強権体質が横たわっているからです。

だから、共産党は不良債権があること自体を認めません。
高橋洋一氏は、石平氏との共著『断末魔の数字が証明する中国経済崩壊宣言』の中でこのように述べています。

「不動産バブルを維持することは可能です。銀行のほうで不動産開発業者にずっとカネを貸し続ければよい。中国では銀行は国有です。だから国有銀行がずっと貸し続ければバブルは維持できます。(略)
不良債権があっても中国政府が『不良債権など一切ない』と言い、銀行も』不良債権はない』と言い切るのであれば砂上の楼閣がずっと続いていくはずです。(略)
だからバブルが弾けたとしても中国政府はなにも言わない」

たぶん、今回も共産党はなにも言わないでしょう。
不良債権は一部の企業の不祥事だとしてないことにして、国有銀行には不良債権など一元もないとシラっとして言ってのけるはずです。
ただしそれが民間企業の債務不履行ていどならば、ですが。

というのは不良債権によるデフォルト危機は、不動産デベロッパーにとどまらず、すでに地方政府にまで及んでいるからです。
いままでさんざん中国経済バラ色論を展開し、日本企業に中国進出を推奨してきた日経新聞さえ、どこで宗旨がえしたのかこう書いています。

「中国の地方財政が厳しさを増している。地方政府傘下の投資会社、融資平台が抱える「隠れ債務」の残高は2022年末に1100兆円を超えた。新型コロナウイルス流行前の19年から5割増えた。過剰な借金でインフラ開発などを進めてきたことが要因となる。
金融不安への飛び火を防ぐには債務圧縮が不可欠だ。ただ地方経済の発展モデルが崩れ、中国景気の重荷になるリスクも高まる」
(日経2023年6月14日)

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中国、地方政府の「隠れ債務」1100兆円 深まる財政難 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

なにが「中国景気の重荷」だって、もうすでに多くの地方政府財政は破綻していますって。
その原因は、先日来再三登場する不良債権の本丸「融資平台」の積み上げた不良債権の山のためです。

融資平台は、リーマンショック時、中国政府が4兆元(当時のレートで60兆円規模)に及ぶ財政出動を行うことで、リーマンショックの影響を吸収するという処置を実行したことから始まります。
当時、中国政府にはこんな規模の財政投入を行う財政的な裏付けがありませんでした。

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隠れ債務665兆円、経済対策は安全運転 (3ページ目):日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

そこで中央政府がとったのは、この財政投入を地方政府に押し付けることでしたが、予算法によって地方政府には赤字予算が認められないために債券発行ができませんでした。
やむをえず地方政府がやったのは、融資平台と呼ばれる投資会社を設立させ、地方政府に帰属する土地を担保にして資金を借り入れる裏技でした。

新幹線や高速道路網、ダムなどの公共インフラ整備をするという名目で、巨額のカネを貸し付けたのです。
融資平台はタテマエは民間企業としましたが、当然ながら地方政府の暗黙の保証があるものだと考えられて、ジャブジャブと銀行は資金供給したのです。

そしてこの融資平台への資金調達として作ったのが、銀行の別働隊としての「影子銀行」(シャドーバンク)でした。
シャドーバンクは一般市民に理財商品と呼ばれる高利回りの金融商品を販売し、広く資金調達を行いました。
たとえば、今経営破綻している中植企業集団などがシャドーバンクです。
【13-010】影の銀行問題を考える(その4) | SciencePortal China (jst.go.jp)

これがなまじうまくいってしまい、不動産バブルが大きく中国GDPを押し上げて世界2位のキンキラ経済大国となってしまっために、かえって修正が困難になってしまいました。
なんせ習近平に「中国の夢」を見させてくれたのは、このおかげですから、修正かけられるはずがないじゃないですか。

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NHK

もちろん融資平台の債務が膨張する背景には、制度の欠陥に便乗している銀行や地方政府の幹部がいて、中央政府に欠かさずワイロを送り続けてからです。
かくしていまや融資平台の累積債務残高は900兆円、いや2800兆円にも達するだろうという観測もありますが、なんせあの国のことですからほんとうのところはわかりません。
かつての共産党の大ボス朱鎔基・元首相の息子はこう言っています。

「朱鎔基・元首相の息子で中国の金融界の実力者である朱雲来氏は、2018年に行われたクローズドの会合で、中国の総債務は2017年末の段階で669兆元(1京2000兆円)に達すると述べていた。ただしこの総債務は中国政府、企業、個人の債務の総合計であり、中国政府だけの債務ではない。
朱雲来氏は中国の債務が年率16.6%で増えてきたことを指摘しているので、仮に同じ割合で2017年末から2021年末の4年間でも増え続けているとすれば、なんと1236兆元(2京2000兆円)まで膨れ上がっていることになる」
(朝香豊  2022年1月20日)
地方財政は完全に破綻…中国経済が「崩壊過程」に入ったと言えるこれだけの理由(朝香 豊) | 現代ビジネス |

当然、地方政府の財政はとっくに破綻していますが、中央政府が「そのようなものはない」と言い切れるかどうかです。
おそらく今中国人民銀行がしている景気刺激策の金融緩和でお茶を濁し、なおそれでも民衆が騒ぎたてれば、反スパイ法を使うかもしれません。
反スパイ法には、これらの破綻した企業の財務状況の開示が含まれているからです。

「スパイ行為の範囲の不明確性が挙げられます。保護の対象として「国家の安全と利益に関する文書、データ、情報及び物品」が今回の改正で新たに追加されたものの、この中には政治の安全や文化の安全が含まれる可能性もあり、その具体的な範囲が明確ではありません」
中国、反スパイ法(スパイ防止法)の改正と留意点 - 明倫国際法律事務所 (meilin-law.jp)

恒大など巨大企業集団から甘い汁を吸っていた共産党幹部は掃いて捨てるほどいますから(だから2年間も破産処分をペンディングしていたわけですが)、彼らが反スパイ法を楯にして開示をさせない可能性が大いにあります。
不良債権を開示できなければ、処理は何一つ始まりませんから、具体的な不良債権処理は冒頭から頓挫します。

これをクリアできれば、次が不良債権処理のための整理回収機関を作る段階となります。

「整理回収機構の業務は、破綻した金融機関等から買い取った債権を回収・処分すること、金融機関の保有する回収困難債権を買い取り・回収・処分すること、金融機関等の資本増強等に当たることなどである。 そのほか、事業再生支援、金融機関等の破綻に関与した者の責任追及等も行なっている」
整理回収機構とは|不動産用語集|三井住友トラスト不動産:三井住友信託銀行グループ (smtrc.jp)

日本の場合、整理回収機構を作り、不良債権を引き取り、銀行のバランスシート上の損失を確定させ、開いた損失には公的資金が注入されました。
これをするのが中央銀行の役割で、通貨をジャブジャブ発行するしか方法はありません。
当然人民元は暴落しますが、元安を輸出増大につなげられたら光明があるってもんです。

ただ、習近平にこれができるでしょうか。
買った不動産はジャンクになり、景気は低迷し、失業率が大卒で4割を超えるような今の中国でこれをすれば、どうなるのでしょうか。
特に考える必要もなく、中国人が選挙できないかわりに年中行事でやっている暴動の勃発です。

だから習近平は威信にかけてやりません。
自分がやった「共同富裕」やゼロコロナ政策が引き金となったのは明白ですしね。
習は騒ぎ立てる消費者の一部は救済するかもしれませんが、不動産業界は絶対に救いません。

金融機関は国有ですから、現状維持を続けて彌縫策でズルズル引っ張るでしょう。
そして国民の不満を外に逸らすことを、真剣に考え始めることでしょう。
不満を逸らすとは、すなわち台湾侵攻をすることです。

 

2023年8月22日 (火)

不動産バブルに踊った国、中国

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中国経済が恒大に象徴されるように、デフォールトラッシュ真っ盛りなのは見てのとおりです。
碧桂園、遠洋、中植系ホールディングス、中融信託 、まだまだラッシュは始まったばかりです。
後述しますが、「融資平台」(LGFV )という不良債権の本丸が残っています。
LGFVの総額は推定で約940兆円。史上最大の不良債権です。

では、中国政府はどうする気なのでしょうか。
かつてチャイナラバーたちは、ゴーゴーチャイナを煽る時になんと言っていたでしょうか。

曰く、中国は日本のバブル崩壊を研究し尽くしているのでバブルは起きない。
仮に起きても日本のようにバブルを破裂させて、その後の「空白の十年」などを起こさない賢さを備えている。
万が一起きても、共産党が一気に巨額資金を投入できる仕組みが整っているから大丈夫、な~んて言っていませんでしたか。(笑)
コロナの時もそうでしたが、日本人の一部にはびこるこの中国共産党に対する盲目的信頼はどこから来るのでしょうか。

バブルは起きないどころか、世界一の不動産バブルが勃発し、巨額なマネーゲームの城を作り上げました。
そしてバブルはモノの見事に2年前に破裂しました。
しかしなぜか2年間の間、中央政府は破産処理に手をつけずに放置し続け債務を増やし続けました。

それが一斉に弾け始めたのが、今年の夏でした。
不動産業界の巨大企業集団が相次いで破綻しました。
恒大などは、あえて米国で破産処分をするという裏技まで繰り出しました。

もちろん中国政府は、このような外国での破産申請を使っての企業再編自体を認めていません。

「8月16日夜、恒大は中国証券監督管理委員会が発布した「立件告知書」を受け取った。これは企業が違法に情報開示した容疑で、中国証券法、中国行政処罰法など法律に従い、中国証券監督管理委員会が恒大に対してして立件することを決定したということだ」
中国趣聞:NO.857 恒大が米国で破産保護申請、創業者の許家印は離婚で脱出準備!?

普通の国なら2年前にとっくに破産淘汰されていなければならないにもかかわらず2年間も助けるでもなく、潰すでもなく放置していたツケが回ってきたのです。
恒大の経営危機が発覚した2年前の2021年12月、広東省は作業チームを派遣、監督して経営を守ると発表していました。
そして中央銀行もそれを支援すると言っていましたが、実際はなにもしなかった。
監査くらいしたのでしょうが、大きなザーサイ瓶の蓋を開けたらウェという腐臭に仰天して、また蓋を閉めてしまったのかもしれません。
救済せねば不動産を買った消費者が泣きを見るのはわかっていても、習近平の「共同富裕」思想に忖度してそれを許さなかったのかもしれません。
政府による根本的な解決策がなんら打たれないまま、ここまで来てしまったのです。
その間、さらに不良債権は溜まりに溜まるばかり。
中国政府はこのまま進めば、全面的な金融危機と信用収縮になる可能性があるというのに、いったいどれだけ不良債権があるのかさえ明示していません。 

思い出していただきたいのですが、わが国の90年代末の不動産バブル崩壊は巨額の不良債権を生みました。
不良債権とはこんな意味です。

「銀行などの金融機関(=債権者)が持つ貸出金などの債権のうち、その回収が、通常の回収期間に行われず、回収が困難な状態にあるか、困難になる可能性が高いもの。また、業況や財務内容に問題があり、経営が破綻しているか、破綻する可能性がある債務者に対する債権のこと」
不良債権|証券用語解説集|野村證券 (nomura.co.jp)

バブル崩壊時には8兆円、それが2年子の95年には40兆円、そしてとうとう2002年には52兆円にも登りました。
この時点で、銀行の不良債権比率は、8.6%とピークを付けています。
つまり、金融機関の貸し出しの1割弱が不良債権と化してコゲついていたわけですから、ぞっとします。
不動産バブルの時、ろくすっぽ精査しないで土地が担保に入っていたらジャブジャブ融資した報いです。

誰が行くのかわからないような田舎のゴルフ場、レジャー施設などが雨後の筍のように全国に建てられました。
いまになると結果を知っていますから馬鹿じゃなかろかと思いますが、バブルの真っ最中には熱に浮かされたように札びらが舞っていたのです。
田舎の寿司屋でも、オレはカネかき集めてあのゴルフ場の会員権買ったのどうのという会話がされていた時期です。
デベロッパーだけではなく、銀行も狂い、一般企業も本業を忘れてマネーゲームに走った時代でした。
ちょうどこのバブル期に帰農した私なんぞ、変人奇人仙人扱いでした。

老舗羊羹屋の2代目が投機に走って店を潰し、真面目なネジの町工場の親父が株に飛びついて工場を失ったなんて話が、全国で起きていました。
彼らの末路はご存じでのとおり、店を失い工場を取られ、家族は離散しました。
これと同じことが、中国では日本の数十倍の規模に増幅して起きたと思えばよいでしょう。
中国は「社会主義」(マルクス号泣)ですから、土地の私有が認められない分だけ、投機の色彩が強かったようです。

中国では「融資平台 」(Local Government Financing Vehicles:LGFV)というシステムが不動産バブルを作り出しました。
融資平台とは、中国の地方政府が傘下に置く公共インフラへの投資会社のことです。
「平台」はプラットフォームですから、融資のプラットフォームということですが、中央政府が強い権限を握っていました。
中央から地方に新幹線を通せ、高速道路を作れ、マンション群を作れ、という命令が下ると、この融資平台が資金を調達してきたのです。
これが不動産バブルの資金提供源でした。

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日経

「融資平台は、地方政府による「暗黙の保証」があるとみなされてきた。社債や銀行借り入れで積み上がった負債は、地方政府の隠れ債務とみなすのが一般的だ。融資平台が経営不振に陥れば、株主である地方政府か、貸し手の金融機関が支援せざるを得ないのが実情だ。
最近では、融資平台が地方政府から土地の使用権を買う例も目立った。住宅市場の低迷で新規の建設が減り、地方政府が不動産開発企業に国有地の使用権を売って稼ぐ土地収入も落ち込んだためだ。土地使用権の購入は地方政府の収入不足を補う狙いだが、実態は地方政府への「つなぎ融資」に近い。マンションの建設予定がない土地が塩漬けになれば融資平台の財務が悪化。地方政府の隠れ債務がさらに膨らむ恐れがある」
(日経2023年6月15日)
融資平台とは 中国地方政府の資金を調達 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

今、この融資平台がショートしています。

「中国の金融市場で今最も注目を集めているのが、地方政府傘下の投資会社「融資平台」の債務不履行(デフォルト)懸念だ。
融資平台はもともと道路や橋の建設など採算の取りづらいインフラ事業のために設立された。それでも銀行や債券市場から低利でお金を調達できたのは、地方政府が資金返済を保証するという暗黙の前提があったからだ。ところが土地使用権収入の激減で、地方政府の資金支援余力が低下。この前提が崩れつつある。
米シティグループの推計によると、融資平台の有利子負債は22年末で約47兆元(約940兆円)、GDPの39%に達するという。万一デフォルトが現実になれば、金融システムを揺るがしかねない」
(日経8月20日)
恒大集団が米で破産申請 波立つ中国リスク、不動産発ドミノ危機 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

940兆ですぜ、お立ち会い。
日本の不良債権は、2017年当時には100兆円超ですから融資平台だけで、その9.4倍。
民間のデベロッパーまで入れると、トータルでどれだけになるのか想像もつきません。

くり返しますが、そもそも中国の土地は「買えない」のです。
社会主義だから土地の所有権は国家にあり、私有はみとめられず「使用権」だけなのです。
自由主義経済ならば、不動産という実態があるからどこかで制限がかかりますが、中国では無制限に価値が増大するし、逆に紙屑にもなるわけです。
だから、中国人は投機目的で不動産を「買った」のです。
ちょっと小銭がある人間なら、マンションを2、3軒買って値上がりを待っていたわけです。
日本なら、いくらバブル期でもマンションを買えば住んだものですが、中国ではただの金融商品にすぎません。
金融機関は不動産を買うなら気楽に融資してくれたので、中国人の家計に対する負債率は一説で137.9%にも達しました。
米国はいちばんひどい時で90%でしたが、中国の家計に対する負債率は世界最悪のはずです。

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家計債務とは 比率高まる新興国、減る先進国で二極化 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

つまり、中国では国民が借金しまくったのです。
これも不動産価格が右肩上がりのうちは、名目では豊かだったわけですが、不動産相場が瓦解してしまえば、負債だけしか残りません。
こんなことが永遠に続くはずがありません。
この借金で不動産を買って紙屑となった人たちは、今さら不動業者に駆け込んでも無意味ですから、地方政府に押しかけるでしょう。
いままで何度も見てきた白紙革命の不動産版です。

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 nippon.com

融資平台は現在、いちおう中央政府が「包括的対策」を言ったので落ち着いていますが、先行きどんなもんでしょうか。

「LGFVは融資などを合わせた債務総額が累計9兆ドルに上り、国内金融システム全体を揺るがしかねないリスクをはらんでいる。しかし中国共産党が7月の中央政治局会議で、地方の債務リスクを解決するため「包括的な」対策を取ると確約したことから、投資家の間でLGFV債への信頼感が高まった」
(ロイター8月18日)
中国、融資平台の社債利回り低下 暗黙の政府保証見込み買い殺到 | Reuters

私が「包括的対策」が怪しいモンだと思うのは、不良債権の総額を中国政府が明示していないことです。
つまり不良債権処理のイロハのイをやっていないのに、どうして「処理」なんかできるのでしょうか。
次回、もう少しそのへんを見ていきます。

 

2023年8月21日 (月)

とうとうやって来た、中国不動産バブルの完全瓦解

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ひさしぶりに通常更新に戻ります。
いや、暑い。
あまりの暑さにボーとしているうちに、半死半生だった中国不動産大手、中国恒大集団が17日、米国で破産申請してしまいました。

中国経済界は、いまや空前のデフォルトラッシュに襲われています。
不動産業界だけで、碧桂園、遠洋、中植系ホールディングス、中融信託などが破綻しています。
このことで中国経済の減速が改めて確かめられた形です。

「中国の不動産開発会社、中国恒大集団は17日、外国企業による米国内保有資産の保全を可能にする米連邦破産法15条の適用をニューヨークの連邦破産裁判所に申請した。法廷文書で明らかになった。米国内資産を保全し債権者からの差し押さえなどを回避しながら、米国外での債務再編に取り組む。
連邦破産法15条の適用により、米国内資産が保全される一方、米国外の場所では債務再編策が練られることになる。国際的な債務再編では、取引を最終的に取りまとめる過程で同条の適用申請が必要になることがある」
(ブルームバーク2023年8月18日 )
中国恒大集団、NYで連邦破産法15条の適用申請-米国内資産保全 - Bloomberg

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朝日

負債額も50兆と、小国の予算規模に匹敵するほど巨大です。

「不動産不況の象徴となった恒大は22年末時点で負債総額が2兆4374億元(約49兆円)に達し、負債が資産を上回る債務超過に陥った。負債総額は21年6月末時点の1兆9665億元(約40兆円)から2割超増えていた。21、22年の2年間の最終損失は単純合計で約5800億元(約11・5兆円)となった」
(朝日2023年8月18日)
中国の「不動産神話」崩れる 米で恒大破産申請、続く負のスパイラル:朝日新聞デジタル (asahi.com)

 恒大は目下、香港、ケイマン諸島、英領バージン諸島などで事業再編取引に向けた交渉を模索中と公表しており、債権人は今月、事業再編取引に対して投票を行い、9月一週目には香港とバージン諸島の裁判所で批准されるであろうと言っています。
米国破産法第15条に基づき、米国破産裁判所は外国企業の破産および債務再編プロセスを承認し、債権人が米国において訴訟を起こしたり、資産を凍結したりすることを防ぐとことができます。
したがって、これは破産そのものを意味せず、「米国における資産を債権者の強制差し押さえなどから保護することが目的で、事業再編取引を行うための措置」にすぎない、というのが恒大の言い分です。
ならばなぜ、中国企業が中国で破産保護を申請しなかったのでしょうか。

福島香織氏はこう見ています。

「破産の危機に直面してきた中国恒大集団が17日に米国マンハッタン破産裁判所で破産保護を申請した。多くの人は、なぜ中国で破産申請しなかったのか?と思うだろう。
理由は簡単だ。中国当局は恒大が破産することを許さなかったのだ。だが、恒大を救済しようと積極的でもなかった。負債総額1.8兆元、救えるわけがない。かといって倒産させることもできない。習近平は許家印に対し、私財をなげうって負債の穴埋めをしろ、追い詰めていた。
そんな状況で、半殺し状態で放置されていた恒大としては、米国での破産保護申請は、最悪の中での唯一の選択肢。グループの中で唯一、生き残りの可能性がある新エネ自動車企業の恒大汽車に一縷の望みをかけて、債務再編を進める」
(中国趣聞NO.858:恒大問題:不動産市場救済は失敗?それとも、わざと?)

中国政府は社会的影響が大きいために恒大を破産させたくても出来なかったし、かといって習近平の後述する「共同富裕」政策を受けて救済する気もなかった、つまり2年前から実質経営破綻しているゾンビー企業なのに半殺し状態のままいて欲しかったということのようです。
恒大はあえて規模が小さいドル建て負債がある米国で破産処理をして事業再編を行い、恒大企業集団で数少ない成長産業の電気自動車に賭けてみようということのようです。

この企業再編で延命させた恒大汽車をドバイのニュートン集団に売り払うことで、汽車の株価をあげました。
ちなみに、14日にこのニュートン集団の新株引受に関する公告がでると、恒大汽車の株価が一気に45%爆上りし、それに合わせたように創業者の許家印が離婚しました。
もちろん爆上がりして得たカネを別れた妻に名義にして、財産を持ち逃げする企みなのでしょう。
バブル紳士たちがよくやった手口です。

米国破産法は日本の民事再生法に相当するもので、チャプター7、チャプター11、チャプター15といつくかありますが、そのうちのチャプター15です。
2008年9月のリーマン・ブラザーズの経営破綻がで適用されたのがチャプター11で、あのリーマンショックの震源地となりました。
破産法の基本的な姿勢は、再建をめざさず清算のみを行うチャプター7以外は、企業を消滅させるのではなく、事業を継続しながら再建を進めるというものです。
恒大が米国での破産法適用を選んだのは、ドル建債権が少ないことから、本体の元建て債権での交渉を有利に運ぶためだと見られています。
ただし恒大が経営破綻状態なのは2、3年前から知れ渡って市場は折り込み済みであり、破産法を適用を要請した以上、いくら経営破綻ではないと言い繕っても無駄でしょう。

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ロイター

 中国最大手の民営不動産デベロッパーの碧桂園は、私募債の償還延期を要請しました。

「かつて財務的に健全と考えられていた同社の苦境は、住宅購入者や金融会社にも影響を与える可能性があり、当局の支援が近いうちに実現しなければ、より多くの民営デベロッパーが転換点に近づくことになる。
中国不動産セクターは2021年後半以降、売り上げの落ち込み、流動性の逼迫、一連のデベロッパーのデフォルト(債務不履行)に見舞われており、中国恒大集団が債務危機の中心となっている。
投資家心理に新たな打撃を与える動きとして、中国の上場企業2社が週末、満期を迎えた投資商品の返済を中融国際信託から受けていないと発表した」
(ロイター8月14日)
アングル:中国不動産業界の資金繰り悪化、当局の対応求める圧力強まる | ロイター (reuters.com)

中国不動産業界の瓦解は、この恒大や碧桂園に終わらず中栄国際信託にも飛び火します。

「 中国の上場企業2社は週末、中栄国際信託から満期を迎えた投資商品の代金を受け取っていないと発表した。
この情報開示は、中栄国際と少数の上場企業を支配する中国のコングロマリット、中智企業集団の健全性に対する市場の懸念を深める可能性がある。
ナシティ・プロパティ・サービス・グループは金曜日の取引所提出書類で、8月8日を期限とする中栄の管理する信託スキームに3000万元(415万ドル)を投資したが、元本と利回りを受け取っていないと述べた。
別の上海上場企業であるKBC Corpは、中栄が管理する2つの信託商品に6000万元を投資したが、満期後に支払いを受けていないと発表した。(略)上場株主の京威紡織機械有限公司は6月29日の年次報告書で、不動産市場の低迷が一部のデベロッパーのデフォルトを引き起こしたため、中栄の事業は「前例のない挑戦」に直面したと明らかにした」
(ロイター8月14日)
中国企業は中栄信託から支払いを受け取っていないと述べている |ロイター (reuters.com)

そしてデベロッパーだけではなく、中国不動産市場に資金を供給していた巨大金融機関の中植企業集団が経営破綻に陥っています。

「(ブルームバーグ) -- 1995年に製材業として設立された中植企業集団は、1兆元(約20兆円)以上を運用する金融コングロマリットに成長した。その中植企業集団が今、中国金融界の巨人の中で最も新しい破綻企業になる危険性をはらんでいる。
地元メディアから「中国のブラックストーン」と呼ばれることもあるこの観測レーダー外の金融業者は、かつて隆盛を極めた中国のシャドー・バンキング(闇の銀行)市場の中心で事業を展開しており、2017年以降、規制当局がその取り締まりに乗り出している。同社は現在、関連会社が一部の投資商品の支払いを滞らせたことで、中国市場全体に警鐘を鳴らしている」
(ブルームバーク8月14日)
中国の20兆円規模の「影の銀行」に危機、習近平政権に新たな困難[ブルームバーグ] (axion.zone)

まがうことない日本人がよく知っている不動産バブルの崩壊の開始です。
不動産事業の不振が投資商品に波及し、不良債権の山を築いて、やがて自壊するという光景です。
どうしてこんなことになったのでしょうか。

中国は、GDPを上げるための個人消費が低迷していました。
一般の先進国における個人消費のGDに締める割合は50~60%ですが、中国はわずか38.7%にすぎません。

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第1部 第1章 第6節 (1)家計消費、物価の動向 | 消費者庁 (caa.go.jp)

個人消費の内訳は、教養娯楽や住居、外食等の「サービスへの支出」が42.4%、食料や光熱・水道等の「財(商品)への支出」は57.6%です。
つまり文化的に豊かな暮らしを支えているのが個人消費なのです。
そしてこの個人消費こそが、自由主義経済ではGDPの6割を支える大黒柱なのです。
だから増税すれば自動的に景気は落ち込みます。

中国政府が低迷する個人消費の穴埋めに考えたのが、大規模な不動産投資でした。
その結果、中国全土にアジア人全員の34憶人相当分の住宅建設済みという空前の不動産バブルが発生してしまいました。
この不動産バブルこそが中国の「繁栄」を支えていたのです。

「しかも中国での不動産開発は「プレセール(事前販売制)」といわれる、住宅の完成前に代金の一部を支払う形態が一般的です。
開発業者は回収した資金をすぐ次のプロジェクトの開発に回していった結果、実際の需要を投資が大きく上回るような構造が存在していました。そして不動産が売れ続けることで地価も高騰し、値上がりを見込んで投資も更に加速する、という相乗効果の中で中国の住宅市場は長らく好調を維持していました。
しかしこれは一種の自転車操業であり、非常に危ういバランスの下で成り立っているシステムでした」
リビンマッチコラム (lvnmatch.jp) 

この事前販売制がクセモノで、着工前にカネを取ってしまい、この土地を担保にして次の物件を買い、尺取り虫よろしく事業を拡大していきます。
かつてのダイエーがやった手口で、順調にいくうちはいいのですが、なにかあるとこの自転車操業のペダルが止まってしまい大ココケすることになります。
中国人がわれもわれもと投機目的で銀行借入をしてまで複数のマンションを購入した結果、個人・家庭部門が膨大な負債を抱えてしまいました。
いまや個人・家庭の負債額はGDPの1.65倍の200兆元、家計の負債比率137.9%にまで膨らんでいます。

しかし考えてみれば、土地の所有を認めない社会主義国家が不動産バブルというのは珍妙な話で、日本でいう不動産所有権とは違い「使用権」にすぎませんので、仮にマンションを買っても住めるだけなのですが。
それでも不動産バブルが発生したのは、投機目的も多くあったということです。

これが2年前に崩壊しました。
経済オンチの習近平が、2021年8月に「共同富裕」政策をぶち上げたからです。
ゴリゴリの毛沢東崇拝者の習は、急速な経済発展のもとで後回しにされてきた所得格差を力付くで是正しようとしました。
その中で共産党への信認を高めようというのが目的です。
共産党にやり玉に上がったのが不動産開発、学習支援、ITの三つの産業でした。
学習塾は2021年9月までに18万社、IT産業でも反トラスト法違反の罰金や権利保護に伴い、業績が悪化する企業が目立ちましたが、本丸は不動産業でした。

 2020年8月、習近平は「三道紅線(三本の赤線)」という規制強化の方針を打ち出したからです。
これは財政状況に不安のある不動産開発企業に対する銀行融資を規制するもので、過剰な不動産投機を抑制し、格差を是正することを目的としたものでしたが、これにより総負債比率等の基準に抵触した企業への融資規制強化のために30社を超える不動産開発企業が次々と債務不履行に陥り、384社が破産に追い込まれ、
中国を代表する巨大企業であった恒大集団は、こうしてデフォールトに追い込まれました。

ちょうど1年前に真壁昭夫氏はこう述べています。

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中国、不動産バブル懸念 民間債務、かつての日本超す | マンション投資・資産運用のおすすめ情報サイト Liv Plus (リヴプラス) (liv-plus.jp)

「主因は不動産バブル崩壊だ。共産党政権の厳格な融資規制は、人々のリスク許容度を急低下させた。債務問題は悪化している。
加えて、ゼロコロナ政策は建設活動を停滞させている。他方、成長期待の高いIT先端企業の規制強化が先行き懸念をさらに高める。それらの結果として、若年層を中心に失業者が急増。ローンの返済を拒む住宅購入者も急増している。
地方政府の財政悪化も鮮明だ。債務返済の延期を銀行に求める地方政府まで、出現しはじめた。
中国の不動産バブルの後始末は拡大するだろう。今後、大手不動産デベロッパーの資金繰りはさらに行き詰まる可能性が高い。ゼロコロナ政策も続き、個人消費は減少基調で推移する」
中国で「不動産バブル崩壊・失業」が深刻化、習近平政権は正念場に | 今週のキーワード 真壁昭夫 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

さらに不動産融資規制が強化される中、追い打ちをかけるように習近平のゼロコロナ政策によって不動産の建設には待ったがかかりました。
不動産開発は融資に頼っています。

自己資金だけでは足りず、巨大な債務を起こして、土地を買ったり建物立てたりします。
中国の事前販売制により、顧客から前金が入ってしのげたからです。

これさえあれば返済が可能ですから、いくら不良債権を抱え込んでいようと、なんとかやっていくことができたのですが、これがゼロコロナで止まってしまったのですから目も当てられません。

それが突如政府によって融資を制限され、本業の建設も資金が足りなかったり、コロナでできなくなったとしたら、一気に支払わねばならない返済がのしかかってきます。
この瞬間工事は中止、作っていたマンション群は不良債権のジャンクとなってしまいます。

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誰も住んでいない構想マンション群「鬼城」(グェイチョン)
ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

しかもこれは不動産業にとどまりませんでした。
これらの大手不動産デベロッパーは、ヘルスケア、新エネルギー開発、自動車、金融など手広く事業を展開していていたのです。

特にこの金融業が地雷源でした。
信託、資産管理、保険、先物などは、すでに金融商品として販売されており、市場にファンドの一部としてバラまかれていました。
かつてリーマンショックで、とうてい不動産を買うことが不可能な貧困層にまで金融商品を売りつけたことがリーマンショックにつながったのと同じ構造です。

これが金融証券用語でカウンターパーティーリスクと呼ぶ現象です。

「取引相手の信用リスクのこと。
外国為替取引やデリバティブ取引で、相手先の金融機関のことを「カウンターパーティー」と呼びます。取引所を介さずに直接取引を行うことから、カウンターパーティーがデフォルト(債務不履行)に陥ると、損失が発生する可能性があります。このため相手先の信用度が取引に絡むリスクになるとされています」
カウンターパーティーリスク | 金融・証券用語解説集 | 大和証券 (daiwa.jp)

今回間違いなく、すでにこれらの不動産企業集団は利払いにすら窮しているわけですから、他の企業集団にも飛び火させることでしょう。
そしてさらには金融商品として広くバラ撒かれていると思われます。

中国経済の終わりの始まりが来たのです。

 

 

2023年8月20日 (日)

日曜写真館 どん~と音してひらく花火かな

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天上に触れし花火の散るほかなし 野澤節子

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全開し花火大きな菊花なり 山口誓子

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一輪の花となりたる揚花火 山口誓子

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あひつげる花火の傘の重なりし 清崎敏郎

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星はおち月はくたくる花火哉 正岡子規 

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待ち受けし花火の空の響きあふ 中村汀女

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星はおち月はくたくる花火哉 正岡子規

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大花火何といつてもこの世佳し 桂信子

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くらがりの天地にひゞく花火哉 正岡子規

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人を恋ひ切々たるは花火の夜 村山故郷

 

花火は難しいので泣きました。
ひさしぶりで三脚をひっぱり出したら使い方がわからず(おいおい)、バルブ撮影なんか自慢じゃないがしたことかないのでパニックになり、こんなしんどい写真って初めてです。

2023年8月19日 (土)

オジィたちのセンカアギー

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きょうの話は本当なのかどうか分からない。
一種の都市伝説のようなものだという人もいるし、私のように直にオジィの口から聞いた者もいる。
ただしオジィは話を盛るヒトで、しかもベロベロであったが。

ウージ(サトウキビ)畑を借りていたオジィは、このセンカアギー(戦果上げ)のひとりだった。
オジィはシマザキ(泡盛)にもたれながら、この噺をしてくれた。
「いや、いい時代だったさぁ。今のヤマトゥヌユ(日本の世)と違って、アメリカーはさ、人がいいから、なんでも盗ませてくれたさぁ。煙草、ウイスキー、ライフル、弾薬、戦車、ミサイル、とり放題」おいおい、馬鹿にしているのか、褒めているのか)

米軍物資をカッパらうことをセンカアギーと呼んだ。
なんでもかっぱらう。
小気味いいほどかっぱらう。かっぱらって、かっぱらって、かっぱらいまくる。
停めてあった戦車の車輪をハズして持ってきてしまう。ジェット機の落下タンクなど、置いておけば必ず盗まれる。盗んで、クズ鉄にして、与那国あたりから台湾や大陸に売りさばく。
当時大陸は内戦中で、おもしろいように売れた。

終戦直後の時など全島あげてこのセンカアギーをしまくった。不良米兵からウイスキー、煙草、拳銃、ライフル、弾薬、果てはミサイルまで横流しをした。ライフルは使い道がないので拳銃より安く、今の貨幣感覚でいえばほんの2、3万だったそうである。やれやれ。

戦争で沈んだ軍艦や商船も瞬く間にサルベージされて、売られた。
センカアギーと呼ぶのは、当時、オキナワ人の中に沢山の元帝国陸軍兵士がいたからだ。彼らにすれば、敵基地に忍び込み、米軍に一泡吹かせて「ザマーミロ、ヒージャミー!」と喝采した。ヒジャミーとは羊の眼。羊の眼は青い。転じてアメリカ人のことだ。
反米ではない、反戦だというならまったく筋違い。 誤解を呼ぶかもしれない言い方をすれば、オジィたちは占領軍との戦いを継続していたのだ。

「夜になるとさぁ、背中にバカデッカイモンキーレンチをくくりつけてね。顔には炭を塗ってさぁ。匍匐前進でね、匍匐前進はベターと伏してはダメ。身体をやや斜めにして頭を低くして。こらナイチャーのワカモノ、やってみなさい、ダメ、それじゃあ死ぬ。あんたは兵隊になれんね」

「まぁいいとしようかねぇ、間合いを詰めて、サーチライトがあっちに行った時に、小さな声でトテチテター!とわん(俺)が突撃ラッパを言うのよ。デッカイ声で言ったら捕まるからね。
草むらで仲間がトテチテター、トテチテターって返すんさぁ。まるでカエルの合唱。トツゲキ!目標、前方の戦車の車輪!カカレ!そして10分以内にセンカアギーさぁ」

ちなみに、兵隊だった頃、オジィは帝国陸軍伍長様であられた。オジィに言わせるとけっこう軍隊内部では偉いらしい。
このセンカアギー組のほとんどは、南洋で凄惨この上ない戦争体験をし、しぶとくも島に生還した男たちだ。オジィと一緒に出征した男の多くは死んだ。

そして、この男たちが見たものは、変わり果てた島と村。亡くなってしまった妻と子、門中(親類)。「ウマリシマ」、生まれた村さえ自分の村が基地の滑走路の下になって、発見できなかった者も多い。

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[戦世のあと]<上>収容所苦難の日々…飢え・マラリア 無念の死:地域ニュース : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

階級賞をちぎった兵隊服を着て、ゲートルを巻き、軍のリュックを背負ったまま、沖縄のひとが入れらていた収容所のテントを歩き回り、女房と子を探した。いくつもの地域のテントを、くたびれた脚で。米兵にこずきまわされながら。
妻子はどこにもいなかった。

彼らはいったんは精神的な脳震盪にかかり、声すら失い、泣くことすら出来ず、1時間もしてようやく涙が湧き、そして地面を叩いて泣いた。オジィの奥さんも、そして子供3人も沖縄戦の中で生きてはいなかった。

「一番わんに似ていたのは尋常小学校の何年だったかねぇ、あいつにはシマ(村)の森のどこになにがあるか、相撲ひとつとってやれんかった。女房はあっちの世で好きな縫い物でもしとるのかねぇ」

オジィのウマリシマは今キャンプハンセンの下にある。彼が遊び、ガキに教えたかった森も田んぼも今はコンクリートの下にある。オジィは家族の骨箱にウマリジマの白い石を納めた。磨いて納めた。
だからこのセンカアギーは、この哀しい男たちの戦争が終わってからの、形を変えたもうひとつの戦争だったのである。
この話の信憑性は保障しない。ただの酔っぱらいのオジィのヨタ噺かもしれない。

島のインテリは、沖縄の人を虐げられたか弱い人たちのように描く。
鉄の嵐に逃げまどい、米軍の異民族統治に苦しむ人たちだと訴えた。
しかし私は実感を込めて、それは違うと思う。
オジィたちシマンチュウは、しぶとくしたたかで、一度や二度なぐり倒されてもめげない人たちだ。

ちなみにこの時代を、琉球史家は「大密貿易時代」と呼び、沖縄はかつてのアジア貿易の中心に一時的に復活した。米軍支配下の時代のことである。
米軍統治を糾弾することはたやすいが、当時国境線と呼べるものは、与那国と台湾の間にはなかった。

 

 

2023年8月18日 (金)

やんばるオジィライフ

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ひと昔前、沖縄の過疎というのもおこがましい山奥に住むオジィがいた。

いちおうクチョー(区長)ということになっている。いったん廃村になったシマ(村)にひとり残っていたからだ。
シマがなくなる最大の原因がなにかお分かりだろうか?教育である。小学校すらテクテク3㎞以上歩かねばならない。
中学校ときたら、そこから更にバスで行く。高校に至っては、もう寄宿舎に入るしか手がない。大学なんて話の外だ。

だから、子供を高校に行かせたいと考えたら、大変な負担になる。いっそのこと、家族で街に移住して、勤め人にでもなるかと30代あたりの夫婦は考えてしまう。
親戚関係が強い沖縄では、都市にいる誰かを頼って出ていくことになる。40代にでもなれば、潰しが効かないから、今出よう、と。仕方なしに、祖先の田畑と家を売り・・・いや売れない。だって買う人がいないから。
名義は残って、人は去って行く。

こんなふうにして、村人は皆、いなくなった。集落跡に行くと、今はハブの王宮となった廃屋がいくつか。水田と茶畑、野性化したバショウと蜜柑の樹。そこにはかすかだが、かつて暮らした人の痕跡があった。

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オジィはこのシマにひとり残った。台所と居間だけの、ほんの15坪の小さな家で暮らし続けることを選んだ。
最後の村人が去る時は、さすがにタフなオジィも哀しかったという。
去る人と、一晩三線(さんしん)を弾いて別れを惜しんだ。三日月の暗い晩だったという。

以後、堂々とクチョーである。住民が生活を続ける限り、いちおう居住区であることには間違いないので、市も非公認ながら認めた。
まぁ、「当人がそう言ってるんだからさぁ」ていどで正式ではない。
その時には、市は再三足を運び、街の老人施設に入ってはどうか、親戚はいないのか、いれば街に住みなさい、などと説得したそうだ。登校拒否児童に対する担任のような気分だったであろう。
当然のことながら、返ってくる言葉は「だ~が入っか、親戚はいない」。
実際は立派な伜がふたりもいて、後に転がり込で来る。

こうして、サンシンとサキグワ(泡盛)だけが、チョーイチさんのたったふたりの友となった。語るものとていない山奥のランプの下で、オジィはなにを唄ったのだろうか。

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やんばる(沖縄県)|多様な生命を育む原始の森へ【未来に残したい日本の原風景2】 | サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイト

オジィの生活には電気、電話はない。電気が通じる前に廃村となったからだ。
都会の反原発運動がキャンドルナイトなどやっていたが、それを言うならオジィは365日キャンドルナイトである。
後に電気が通っても、電灯をつけることを嫌がった。
検針の役をしていた村民が、基本料金くらいまで使わないとソンするよ、と教えてもウンニャであった。

新聞や手紙は、数キロ先の海岸にある共同売店までしか届かない。
しかし、オジィは自動車はおろか免許もない。しかし不便というのとも違う。
そもそも新聞は読まないし、手紙など来るはずもないと決めつけているので、取りにもいかない。

郵便物は、溜まると共同売店の可愛いネェネェ(お姉さん)が車で届けてくれる。「オジィよ、元気しとるかぁ」とチヤホヤされるので、オジィはそれを楽しみにしている節もある。
その時に、必要な食糧や雑貨品や酒も注文する。何日かで届けてくれる。オバミーチー(おばさん)が来ると、露骨につまらなそうな顔をしてみせる。素直なもんである。

大部分の野菜は家の後ろのアタイグァ(自家用菜園)で採れる。けっこうマメに作っている。もともとかなり大きな川の源流なので、湧き水が豊かな土地だから水には困らない。
ニガナ、ウイチョーバー、チョーメイグサ、ハンダマ、ナーベラ、ゴーヤなどなんでも作る。
ひとりでは余るのでおすそ分けでよく頂いたものだ。もっともオジィはうちの卵に眼をつけていたので、帰りにはしっかりと抱えていったが。

料理はこなす。というか作ってくれる人もなければ売店もあるわけがない。なんとオジィはパン食である。
別にパンが好きだからというわけではなく、小麦粉がコメより安いからだ。
なぜか沖縄では米国小麦がめっぽう安かったからで、米国は復興のためと称して余剰小麦粉とポーク(ランチョンミート)を大量に送り込んだ。
それが沖縄そばとチャンプルーとなったそうだ。

家の外まで、朝から小麦粉を練って叩くバンバンという音が聞こえる。
オジィが関西・中国文化圏に生まれていたらお好み焼きでも作ったのだろうが、あいにく沖縄にはお好み焼きはない。
いちど恐る恐る頂戴したパンを食ってみたら、案外マトモで驚いた。
ただしフクラシ粉をしょちゅう切らすので、食パン系ではなくベーグルに近い。

コメは旧集落の残した谷津田があったので、何度か作ろうとしたが失敗したらしい。
めげないオジィとしては珍しく作るのを止めてしまった。ハブがうじゃうじゃいたからだそうだ。
負けず嫌いのオジィは、ハブと一緒にコメは作らんさぁ、と言っていた。

税金は払ったことがない。課税したくとも、収入がないからだと、いばる。
行政サービスも受けたことがない。
市の役人から生活保護を申請したらどうかなどと言われたことがあるようだが、「わんはクチョーさ、馬鹿にするな」と追い返された。

ところが、実はオジィには立派な現金収入があったのである。それがハブ採り。
オジィからすれば、この山奥から転居したら、ハブ採りができなくなる。ハブは一匹ホンハブで1万円、ヒメハブで5千円で保健所が買い取ってくれる。
血清をつくるのだ。「即金だからムゼー(無税)よォ」とオジィは嬉しそうだ。一晩で、いい時で2、3匹捕まるから、なかなかの収入となるという寸法である。
それを聞いた時に、初めてひとりでジャングルに住んでいた理由がわかったような気がした。

ハブが沢山捕れた翌日は、オジィは昼からサキグワ(泡盛)を傾け、三線を奏でる。枯れた、透明な音色がヤンバルの森に滲みていく。
オジィはぜんぜん枯れてなんぞいない偏屈ジジィだが、サンシンの音色が澄みきっているのはなんでなんだろう。

そんな時にうっかり通りかかろうものなら、「うりゃ、ニセー(坊主)、寄っていかんかねぇ」。断ることは不可能だ。
もう今日は仕事にならないと覚悟しよう。

 

 

2023年8月17日 (木)

ジルーと呼ばれる陶工がいた

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いつものような記事は載せないのか、というお叱りをうけそうですが、沖縄のことを思い出す記事を続けています。
以前にも書いたとおり、私の沖縄への関わりは文化と風土からでした。
風が運んでくるサンシンを爪弾く音色、群青の海、突き抜ける入道雲、そしてなによりもこの島に住む陽気な人々を愛してしまったのです。
ついでにテビチやそばも(笑)。

それを心に止めようと雑文を書き始めたのが、このブログの始まりです。
しかし沖縄の政治と関わるようになり、大きくいまの道へと逸れていくことになります。
よかったことなのかどうなのか、それでもう十数年の時間が経過し、始まりの時を忘れていたことに、ふと気がついた次第です。
今週一杯はこの調子で続けて、来週から元に戻します。

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沖縄にジルーという伝説的な陶工がいた。
沖縄の民窯をヤチムンいう。そもそも完全な日用品として始まった。戦後、焼け野原になった沖縄ですっかり什器が焼けてしまったんで、せっせと日常使いの皿やお碗を作ったのが、金城次郎さん、いやジルーたち戦争から返ってきた沖縄の陶工たちだっだ。

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ジルーの陶器を特徴づけるのは、そのスピードと勢いだ。
アートを作っている気なんか作る方も使う方もさらさらないから、スピードが第一。一日何個が出来るのかが大事だったんだろうね。そして当時はガス窯なんかないから、登り窯だろ。もう製品としてばらつきなんてのは当然なわけだ。それがジルーの勢いのある線彫りの面白さとなって生きてくる。手工業的ではあるが、量産がジルーを生んだともいえる。
彼の作品はたまに抱瓶(ダチビン)の注ぎ口がゆがんでいたりする。たぶん大手の工房でこんなものを作ったらハネ品だろう。上の写真のダチビンも実際にジルーの工房で買ったものだ。まだ彼がご存命だった時だ。たぶん彼が50代のバリバリの時だ。まだ私が29の時くらいだったか。
その時のことは今でも鮮明に覚えている。

8月の沖縄。ご想像くだされ。12時半くらいに、迷い迷って彼の読谷の工房にたどり着いて、昼休みだったので汗だくでへたへたと木陰にへたり込んでいた。
1時頃に工房の人たちがぞろぞろ出てきて、その中にジローさんもいて、冷たいお茶をごちそうになり、ちょっとだけ話が出来た。こっちも汗だくだが、ジローさんもヨレヨレの汗くさいTシャツを着て、グローブみたいな「使える手」を持つ働く男だった。まるで農民の手みたいだった。
工房(なんてシャレたものというより町工場)の横で直販していたヤチムンをいくつか買った。
そのときにジルーはいくつかあるダチビンの中で、いかにも金のない私を見たのか、「これがいいよ。口が曲がっているが。色がいい」と言って譲ってもらったのが、もう手元にはないが、藍色のグルクンが踊るダチビンだった。

すばらしいあの藍色、線刻の勢い!グルクンがあの狭い空間が足りなくて、踊って飛び出しそうだ。そして私はあの藍色がたまらなく好きだ。あれは豊穣の沖縄の海の色だと思う。
その深い藍色はお孫さんの金城吉彦さんにも受け継がれている。しかしスピード、つまり勢いまでは遺伝しなかったが。
なぜなら、今彼が作ろうとしている工芸であり、アートであり、偽悪的にいえばみやげ物だから。そして祖父が作っていたのは日常雑器だったから。

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ジルーは人間国宝なんてものになりたくもなくてなってしまい、自分のたかだか一個のマーカイ(お茶碗)がウン万円の値がつけられた時に、「ちゃーならんさ」(訳す必要はないだろうが、「しょうがないね」)と言ったそうだ。そして老齢も重なって急速に作る意欲をなくしていった。
生涯一陶工で何が悪い。ゲージュツ家になんかなるものか、それがジルーの心意気だった。
金城吉彦さんもジルーの孫という七光プレッシャーと戦っているのかもしれない。なにせ今や彼の属する工芸集団は金城一門なんて大相撲みたいな存在だから。
確かに線刻の勢いはないが、それは偉大すぎたジルーオジィと比べられるからだと思う。

夏になると、あの農民の手を持った陶工金城次郎のことを思い出す。

 

 

2023年8月16日 (水)

ヤンバルはそれはそれは山の中

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ヤンバルの続きを書きましょうか。
ヤンバルとは山原のこと。要するにかつての王府・那覇から見て片田舎といったニュアンスですが、その境界ははっきりしません。 
中部のどこらからかヤンバルが始まるという人もいれば、いや名護からだという人もいます。中部のどこからか説は、もっぱら「片田舎の始まり」とされた名護の連中が言っているようです。 

では中部のどこからかということになると、定説はなくて、一説によればなぜか恩納村なのです。
「オンナ村に入ればりっぱなヤンバルさぁ」と北の名護人は言います。冷たいことに同じ中部でもより南のコザ(現沖縄市)の連中も、そうさね、やっぱり恩納村はヤンバルでしょう、などと突き放します。泣くな、恩納村。 

私が住んでいたシマは、逃げも隠れも出来ないヤンバルの真っ只中でした。海沿いを走る1号線から山に入ること30分の鬱蒼たるジャングルの中でした。
そうそう沖縄では、「シマ」とは集落のことをそう呼びます。
今、ふと「1号線」と書きましたが、行政的には58号線です。58号はこのまま国頭(くにがみ)からためらうことなく海中を突っ走った先は鹿児島県、という不思議な海中国道です。

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沖縄の道路事情☆移住者が知りたい、暮らしのアクセス | 糸満晴明病院 (seimei.org)

「1号線」とは旧軍用1号線のことで、米軍施政権下で、大型軍用トレーラーがブワーっと通れるだだっ広い軍用道路を米軍はお作りになったわけです。カッコつけてハイウエイ・ワンなどとも言います。 
ともかく直線、どこまでも直線。参ったかという直線。ジェット戦闘機も離発着できるさぁ、というのが島の人の自虐的自慢です。
地図に定規あてて道路を作ったのですな。いかに住んでいた住民を無視したかお分かりでしょう。
復帰前の米軍は、占領軍だったというのがよくわかります。

那覇から走ると、両側は行けども行けども米軍基地。観光名所にするべくヤシの樹なんぞ植えてやがって、ここはカリフォルニアか、つうの。 どうせ植えるならヤエヤマ・ヤシを植えなさい、と言いたい。
考えてみれば、こういう力づくで押し寄せて来る外国をいったん受容して、やられっぱなしかと思うと、どっこい鼻づらを掴んで手玉に取るようなことがウチナーの伝統芸ではあります。
今も仲井真さんが名人芸を見せて、民主党政権のにわかエライさんを引きづり回していますね。
もっともその後、島のサヨクに死ぬ目に合わされましたが。

それはさておき、その1号線からとある河の源流にあったのが私が入植した村でした。一回廃村になりかかっています。
廃村になる理由というのはおおかた学校問題です。村には小学校がないのです。
東海岸のシマに行くか、西海岸のシマに行くか、いずれにせよ子供が歩いて通える距離ではありません。 

道路に転がっている棒っきれかと思えばハブ、縄張りを荒らされてはならじと自動車に突撃を敢行してくるノータリンのリュキュウイノシシなどが道路の上に珍しくもなくのたくっていますから。  

この私が入った村、島の言葉で「シマ」は、一時は多くの村民がお茶やミカンを作っていたようです。島米を作った水田跡も残っています。  

戦時中は南部からの避難民が決死の逃避行をした場所としても有名で、多くの避難民が病死したり、ハブの餌食となった哀しい話も残っています。
このシマも復帰以降に急速に村民を減らしていきました。やはり海洋博やそれに向けての高速道路建設がきっかけでした。 

海洋博は目と鼻の先の本部(もとぶ)で開かれたのですが、ここへの出稼ぎに男たちが大勢行ってしまい、留守を預かるのはオジィとオバァ、それにヨメさんと子供ということになっていったようです。 
こうなるとヨメさんの肩にズシッと重圧がきます。残った田んぼや畑の管理、炊事、子育てにめげそうになったのでしょう。
そして田畑売り払って、一家総出でひとりまたひとりとシマを出て行ったのです。 

こうしてこのシマには、一時はただひとりのオジィを除いて廃村になったのでした。 
当然電気も通っておらず自家発電でした。

人の数が増えて(といっても14所帯ですが)、やっと電気が入って「県で最後の電気なしのムラに灯が」なんてテレビに出たそうです。
私が入ったのは、この電灯がまだ神々しく見える時期でした。

 

■写真 ヤンバルのパイン畑から八重岳を望む。
パイン畑の脇に積み上げてあったハネのパインをよく頂戴した。鎌で皮を向いて野天で食うパイン。うまかった。
ただし、パインを食うネズミを狙ったハブがいますんでご注意を。
 

 

2023年8月15日 (火)

共同売店というものがあります

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今はどうか知りませんが、私が住んでいた当時、沖縄本島には売店ひとつない地域がごまんとありました。
たまにあっても、なんとしたことか定価より高いのです。定価100円の上に120円などという手書きシールがペタっと貼ってあるのです。
こんなものは初めて見ました。激安デフレの時代にまっこう楯突く地域、これがヤンバルでした。

本土から那覇に来ると、値引きどころか定価維持で精一杯、それが国道58号線で下るにつれてだんだん高くなり、名護を超えると割高セールとなってしまいます。
それも割高であろうがなんだろうが、売ってくれる商店があればこそですが、それがないのです。
食品店などがあるのは名護まで。それ以北は店すらありませんでした。

日航オクマリゾートがあるって?あれはナイチャーの作った租界地です。
ないとなると名護までいちいち出かけなければならないのであまりにも不便、というわけで「共同売店」というものを作りました。

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共同店 - Wikipedia

ムラの人たちが、資金を出して小さな店を作り、商品を買い入れて、あんまーやネェネェが替わり番で店番をするのです。
新聞もここに取りに来ます。ちょっと集落から離れた場所の人は、郵便もここに置いてあります。
私の住んでいた場所は、本島北部脊梁山脈の真上の猫の額のようなウルトラ過疎地だったので、郵便屋に来いというほうが無茶です。

毎夕、共同売店に出かけて新聞を取って、郵便をもらうという生活をしていました。そのとき必要な買い物をするのですが、当時は米軍の横流し物資が悪びれもせずに売られていました。
バドワイザー120円、オリンピア100円、島ビールのオリオン180円といった具合で、私が島暮らしをしていた当時はオリンピアという水みたいなビールしか飲んだことはなかったですね。あ、そうそう、アサヒやキリンなど影もなし。
島ビールは復帰特別措置法の酒税軽減でそうとうに優遇されていたはずですが、米国産ビールに価格では太刀打ちできませんでした。
ま、そりゃそうだ。アメちゃんビールは米軍基地のPXからのもので、基地に勤めている知り合いから買い込むのです。
そもそも米軍基地のPXは在外駐留米兵のために価格を下げてしいるのですから、かなうはずがないのです。

ですから、ヤバルで老人会や豊年祭があると、おジィ、おバアがサンシン片手に飲むのは、バドワイザーと決まっています。
本土に帰ってから、若者たちがナウ(←死語)に「バドくれ」などと言っているのを聞くと、私は「バドワイザーはヤンバルではジジババビールだぜ」、と可笑しかったものでした。

午後、牛にやるグヒチ(カヤ)を刈りにポンコツトラックで北部を回り、1トンほど刈り取り、シャツを絞れば汗がしたたるようになった帰りすがりに寄る共同売店。ありがたかったですね。
そこで一本のオリンピアとテンプラ(さつま揚げ)を1枚買い込み、私ひとりしか知らない東シナ海の蒼い海がみえる眺望の丘で飲む一時。

ああ、あれが人生の至福というものでしょうか。

 

 

2023年8月14日 (月)

台湾タローの咆哮と岩屋氏

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台湾でタローが吠えました。
わけのわからないリベラルもどきの党に溶解していく自民党で、ひさしぶりの保守らしいひと吠えでした。
パチパチ。

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蔡総統、自民・麻生副総裁と会談 台湾への支持に感謝(中央社フォーカス台湾) - Yahoo!ニュース

【台北=矢板明夫】9日付の台湾各紙は、訪台した自民党の麻生太郎副総裁が8日の講演で、日本や台湾、米国などが中国の軍事的圧力に対抗するために「戦う覚悟」を持つことが地域の抑止力になると強調したことを大きく取り上げた。
与党、民主進歩党に近い大手紙、自由時報は「台湾海峡の安全を守る決意を示す」との見出しを掲げ、1面トップで麻生氏の発言を紹介、2面と3面にも関連記事を掲載した。「麻生氏の今回の台湾訪問で、インド太平洋地域におけるわれわれの協力の方向性が示された」との頼清徳副総統の言葉を紹介した」
(産経8月9日)
麻生氏「戦う覚悟」発言、台湾で波紋 与党系と親中派で賛否両論 - 産経ニュース (sankei.c

私は自民党とは、LGBTと移民推進、はたまた増税をする党かと思っていました。
こんな党には未練はありません。いままで他に選択肢がないからという消極的支持でしたが、もう愛想が尽きかけています。
そう思うのは私だけではないとみえて、自民支持率の激落ちぶりはすさまじく、なんと時事通信の世論調査で政党支持率は自民党が21.1%で、いまや生きながら葬られようととしている岸田政権支持率26.6%と合わせると、青木率47.7%というレッドゾーンに突入してしまいました。
青木率は科学的根拠はない経験則ですが、50%を切ると政権運営が困難と判定されますから、そうとうに岸田政権は修復不可能なまでに国民から見放されつつあるのは間違いありません。

ちなみに歴代政権をみると、民主党に政権を奪われた麻生政権末期で39%、カン政権などわずか28%、民主党政権末期の野田政権は34%です。

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50%を切ると政権が… 「参院のドン」の法則、歴代内閣で見ると:朝日新聞デジタル (asahi.com)

いま解散総選挙などやったら、与党の改選議席数×青木率=当該国政選挙での与党の獲得議席数ですから大敗は確定的で、この時期になるとメディアが定番の次の総理候補世論調査をやって囃し立てる時期になります。
どーでもいいですが、これまた定番で1位が石破氏(笑)。どーしていつもいつもゲルなんでしょうか。もう終わった人ですよ。
2位が河野ジュニア(中笑)、3位が小泉ジュニア(大笑)だそうですが、まぁぜったいにこの人たちがなることはないでしょう。

いずれにしても岸田降ろしの政局の季節に突入したことは確かで、それぞれ党の大物を気取る諸兄の発言は、当然この政局を見てのこととなっているはずです。
その意味でこの麻生氏の「台湾を守る覚悟」発言は、広い意味で台湾を防衛の責務とした安倍外交の台湾現地での宣言であり、狭い意味では、岸田政権権となって急速に遠心力が働いている旧岩盤自民支持層に向けたものと考えていいでしょう。

まず分かりやすい反応は、例によって中国から始まりました。
これが実に中国らしく、いきなり戦闘機を飛ばして威嚇することから始めます。
法の支配を大事にするフツーの国は、こんなことはしないんですが。

「台湾国防部(国防省)は7日、中国の軍用機延べ24機が同日午前6時(日本時間同7時)までの24時間に台湾周辺で活動したと発表した。うち12機が台湾海峡の暗黙の「休戦ライン」である中間線を越えたり、台湾の防空識別圏に進入したりした。
軍用機は戦闘機「殲16」や「殲10」など。軍艦延べ7隻も活動した。台湾国防部は「台湾軍が厳密に監視し対処した」と強調した」
(東京8月10日)
台湾周辺に中国軍33機 麻生氏訪問に反発か:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

未確認情報ですが、台湾メディアのsohuはこんな記事を流しています。

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「麻生氏が台湾に到着した同日、我が国の軍用機が台湾周辺に現れ、いわゆるセンターラインの越境を繰り返した。
台湾国防省の統計によれば、我が国の航空機と軍艦は台湾島で24回もの出撃を行い、うち12回はセンターラインの越境を行った。
とりわけ2機の戦闘機Su-30(スホーイ30)は注目を集める。経路を見ると2機のSu-30は麻生氏の特別機により近い経路をとっており、これは2機のSu-30が特別機を射程距離に入れていた可能性があることを意味する」
SOHU 2023年8月9日 『前日本首相专机刚进入台岛,我方多架战机就越过中线,不排除击落 』)
_Taiwan Province_ activities_sohu.com

真偽は定かではありませんが、中国ならこのくらいのことはやってのけるでしょう。
実に分かりやすい反応で、外交儀礼も国際慣習もかなぐり捨てて元首相を軍用機で脅迫する、実にすがすがしいまでの悪党ヅラです。

一方わが国のヒダリサイドの方々のトンチンカンな言動は無視するとしますが、内容的には「専守防衛からはずれる」「竹槍でひとりで戦え」という昭和の香り漂うもので、いまでもこんなていどで批判したと思えるレベルです。
《あなたが真っ先に台湾海峡で戦えば?》…麻生太郎氏「戦う覚悟」発言に反論相次ぐ|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)

日刊ゲンダイならいつものポジショントークですから笑って済ませられますが、元防衛大臣の肩書で出てくる岩屋毅氏は、ある意味で党内で旗幟を鮮明にしたと言えるかもしれません。
岩屋氏は議員連盟「石橋湛山研究会」でこんなことを言っていました。
毎日新聞が、コンナ良心的な政治家も自民にはいるんだぞという紹介をしていたのが微笑ましいかぎりです。
毎日や東京から褒められれば褒められるほど、自民支持層はどっちらけるんですが、ま、いいか。

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岩屋毅・前防衛相に聞く「敵基地攻撃能力」を持つ議論は論理の飛躍だ | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

「湛山はどの民族も尊重すべきだとの言論を一貫して続け、博愛主義的なところがあった。防衛の仕事では「いざ戦わば」という話になりがちだが、大事なことはいかに戦わないようにするかだ。その思いで防衛交流をやらなきゃいけない。昨年の防衛力強化の議論は危機感をあおって防衛費の増額につなげるという冷静さを欠いたものだった。台湾海峡の安定は極めて重要だが、「台湾有事」などと軽々に言うべきではない。
 ある意味で湛山が警告した戦前と近い空気があると感じている。空気ができていても、勇気を持ってものを言う人がいないといけない。湛山は終戦後「日中米ソ平和同盟」を作ろうと言って笑われた。すぐにできると思うのは幻想かもしれないが、そういう世界を希求して困難を乗り越えていく思いが必要だと思う」
(毎日8月12日)
石橋湛山研究会:なぜ今、石橋湛山か 「信念貫き、もの申す人必要」 6月発足・超党派研究会、岩屋共同代表に聞く | 毎日新聞 

中国は麻生訪台に対して、このように言っています。

「9日、在日中国大使館は「身の程知らずで、でたらめを言っている」と、麻生氏の発言に激しく反発した。加えて、こう牽制している。
「日本の一部の人間が執拗に中国の内政と日本の安全保障を結びつけることは、日本を誤った道に連れ込むことになる」
中国外務省も「台湾海峡の緊迫した状況を誇張し、対立をあおり、中国の内政に乱暴に干渉した」と、同様に批判を強めた」
(TBS2023年8月13日) 
異例の台湾訪問 麻生副総裁「戦う覚悟」発言の真意 中国の反発も“狙い通り”|ニフティニュース (nifty.com)

他の国をつかまえて「身の程知らず」ですか、なるほどなるほど。
小国は黙って震えて見ておれ、ということですな。
ヤクザ屋さんみたいな言い方です。
日本は自国の安全保障と「中国の内政を結びつけるな」ですか、なるほどなるほど。
台湾を侵攻しても、それは「中国内政」だから黙って引っ込んでおれ、というわけですか。
ウクライナがロシアの一部であり、占領地は併合したので「神聖なロシアの国土」だという言いぐさにそっくりです。

しかしこのような強硬な反応が返ってくるのは、麻生氏の思うツボで、こう講演で述べています。

「台湾海峡の安定のために、それ(防衛力)を使うという明確な意思を相手に伝える。それが『抑止力』になる」
(TBS前掲)

はい、伝わらなければ抑止にはならないのです。
ちなみに岩屋氏は「防衛の仕事は、大事なことはいかに戦わないようにするかだ」が信条だそうですが、逆です。
戦わねばならない時に戦う準備と覚悟があるということを示すことが、「防衛の仕事」なのです。
外交と防衛は矛盾したものではなく、外交は軍事力を持っているが故に有効だということが安全保障のイロハです。

どーでもいいですが、岩谷氏は麻生派です。
彼はボスの国際的活動にまっこうから楯突いたわけで、なかなか筋金入りの御仁ではあります。
岩屋氏は安倍政権のみならず、歴代防衛大臣としてはボトムでした。
この人物ほど防衛大臣をやらせてはいけない人だったはずですが、安倍氏のミスでした。

岩屋という人物は、国防という難しい分野の専門知識をもっていない、防衛大臣という要責の意味がまるでわかっていない、だから大臣としてしてはいけない外国への譲歩が「外交」だと勘違いしてている、というまことに困った人でした。
こういうタイプは自民党に大勢いますが、選挙区から出してはいけません。

ところで、昔々、ある所に、岩屋という防衛大臣がおりましたとさ。
彼はいろいろとやらかしてくれています。

[岩屋の事件簿その1]
まずひとつめは、2018年4月には、宮古島に駐屯する陸自部隊に保管してあった弾薬・ミサイル類を、地元反基地団体の抗議で撤去して、謝罪していました。

おいおいです。宮古警備隊は対艦ミサイル部隊ですから、ミサイル置かなきゃ一体なにしに行ったんですか。

「岩屋毅防衛相は2日の記者会見で、陸上自衛隊宮古島駐屯地(沖縄県宮古島市)の迫撃砲や中距離多目的ミサイルの弾薬について、島外に搬出するよう指示したことを明かした。地元への十分な説明がないまま弾薬を保管していたことに伴う措置で、岩屋氏は『不十分だった。おわびしたい』と謝罪した。
防衛省は今後、島内で駐屯地とは別の場所に、今年度末にも配備される地対空・地対艦ミサイル部隊の弾薬庫を建設する予定。完成し次第、島外に撤去した迫撃砲などの弾薬も保管する方針だ。ただ、使用する警備部隊との間に距離が生じることから、初動対処の任務に影響が生じることは避けられない」
(産経 2018年4月2日)

さぞ宮古警備隊の隊員たちはやってられんわ、という気分になったことでありましょう。
軍事挑発を繰り返す中国との最前線に派遣されてみれば、上司が地元の左翼政党の抗議は正しい、武器・弾薬は撤去するというのですから、この大臣どちらの味方なのかと嘆いたことでありましょう。
まず間違いなく、弾薬庫がない基地を命じた世界唯一の防衛大臣であることは間違いありません。
岩屋という人は、防衛大臣でありながら宮古島に対艦ミサイル部隊を置く軍事的意味を致命的に理解できてていないのです。

[岩屋の事件簿その2]
岩屋氏は2019年、日韓防衛大臣会談をやり、唯々諾々と韓国の言い分を丸ごと聞いてしまいました。
あろうことかムン政権の韓国国防相に、日本は国際法を守れなんて言わしてしまっています。

「チョン長官はこの日の会談を終えた後、記者たちと会って、「日本の防衛相と日韓の防衛協力についてよい会談となった」とし「哨戒機近接脅威飛行関連しても虚心坦懐に率直な意見を交わした」と述べた。そして「これから両国が緊密に協力しながら、今後このようなことが再発しないように発展させていこうのに意見を一致させた」と説明した。
この日の会談でチョン長官は、岩屋防衛相に韓国艦艇の射撃統制レーダー照射について明白な根拠があることを説明した後、日本哨戒機の飛行のための国際法遵守を強調した。問題の本質は海上自衛隊の哨戒機による近接脅威飛行形態にあるという理由からだ。
チョン長官は続いて「韓国と日本は、隣接する友好国として国際社会で起こるすべてのことについて緊密に協力して協力をする必要がある」とし「協力して発展させてべきという意見の一致を見た」と話した」
(中央日報 2019年6月1日)

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韓国政府の宣伝画像。もちろん合成写真

こんなことを面と向かって韓国に言わせるくらいなら、日韓防衛大臣会談などやる必要はありません。
というか、防衛大臣などいりません。
当時のムン政権は、極度の反日小児病患者の国でした。
日韓関係の条約や取り決めを一方的に廃棄するわ、慰安婦合意はちゃぶ台返しするわ、果てはこのレーダー照射事件のように軍事的挑発までするわ、と話にもならないために、日本は「信頼関係自体が崩壊しています。こんな時になにを話あっても無駄ですから、そちらの頭が冷えるまで接触しません」と言っていました。

それを米国がいらんお節介で中に入って対話を呼びかけてしまい、シャングリラ会合で日韓防衛大臣を開くことにしたのですが、日本は会談のテーマを対北一本にしぼって、それ以外はテーブルに乗せること自体を拒否すべきでした。
ここはふざけるなといって、机のひとつも叩いてから北との連携について話合うところですが、この腑抜け男は聞き役に徹してしまったのですから論外です。

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中央日報

「また「隣接した友好国として、国際社会で起こっているすべての問題について緊密に協力する必要性がある。両国関係が改善できるよう積極的に努力していく」と述べて、北朝鮮問題をはじめさまざまな問題で連携することを確認したとみられます。
これについて韓国の連合ニュースは「出口のない攻防戦を繰り広げ、防衛協力を全面的に中断してきた両国が、少なくとも対話と交流正常化に向けた糸口を確保したと評価される」と肯定的に伝えています」
(NHK 2019年6月1日)

結果、この日韓防衛大臣会合を、「対話と交流正常化に向けた糸口を確保した」と韓国の思惑どおりにしてしまいました。
これがこの男の考える「外交」です。

[岩屋の事件簿その3]
このような無能というのもおこがましい仕事をしていた岩屋氏は、昨今、またぞろこんなことを言ってアチラ系メディアの寵児になっているようです。

「そもそも「敵基地攻撃能力」との言い方は、わが国の防衛政策を語る言葉としてふさわしくない。攻撃を受けた際に、これを防ぐに他に手段がなくやむを得ない場合は反撃せざるを得ないわけだから「反撃能力」と称するのは理解できる。
 反撃能力の対象に「相手国の指揮統制機能等も含む」と明記したことは、いたずらに周辺国を刺激するだけでなく、対処のための準備を促し、軍拡競争につながる恐れがある。(略)
専守防衛は日本の専売特許ではなく、国際法、国連憲章の精神だ。反撃は許されるが、先制攻撃は許されない。それを変える必要はないし、変えてはならない」
(東京 2022年6月3日)
防衛費、最初にGDP比2%目標、適切ではない 自民・岩屋毅・元防衛相:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

この岩屋氏の「反撃能力確保は軍拡につながるからダメ」という主張は、日刊ゲンダイがすぐに取り上げて、立憲や共産党は他ならぬ安倍が任命した元防衛大臣が言っているぞと拡散しました。
篠田英朗氏は即座にツイートでこう述べています。

「専守防衛は日本の専売特許ではなく、国際法、国連憲章の精神」。国際法に対する「憲法優越」説「一択」でなくなってきたとしたら、時代の変化を評価したい。
ただし、「専守防衛」は日本人が創作した概念で、国際法には存在しないよ」
(2022年6月5日)
篠田英朗  Twitter

そのとおりです。「専守防衛」というのは世界広しといえどわが日本だけの概念で、どの国にも通用しません。
こういう寝ぼけたことを、ウクライナ侵略の真っ最中に言えるという岩谷氏の「強靱な」神経に感嘆します。

ところで、岩屋氏が崇拝する石橋は、戦争へとなだれ込もうとする軍部の時代と、敗戦後の武装解除された時代の政治家です。
ある意味、特殊な時代背景を背負った政治家なのです。それを時空を超越させて普遍化してはいけません。
まして現代の日本は侵略の危機にさらされている側であって、石橋の時代とはまったく性格が違うのです。
中i国の軍事予算は日本の4.5倍、海軍も空軍も桁違い、サイバー部隊は17万5千人 日本はできたばかり、です。
これを石橋の時代のように中国戦線に足を取られていた時代といまをどこどうを比較したらよいのでしょうか。

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防衛省・自衛隊|令和元年版防衛白書|2 軍事 (mod.go.jp)

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日本財団図書館(電子図書館) うみのバイブル第2巻(中国海軍・南シナ海・尖閣、韓国海軍・北東アジアの諸問題に関するに関する基礎的な論文) (zaidan.info)

独裁者が自在に侵略戦争を起こせてしまうウクライナ戦争の真っ最中のいま、石橋の時代と比較するほうが愚かです。

好むと好まざるとにかかわらず、もう既に「有事」は起きています。
このウクライナの戦いが、世界をふたつに分けている世界状況で、本来中立などはありえないはずです。
仮にロシアが勝てば、中国と北朝鮮、イランは諸手をあげてロシアを讃えて、非人道的陣営を作り上げるからです。

この時代に、湛山の夢想した「日中米ソ平和同盟」などブラックジョークです。
まさに宏池会的外交思想そのもので、これでは本家の岸田氏の唯一優れた部分の外交も帳消しにするファーレフトです。
彼のような立場は、いっそう自民党のリベラルへの溶解を加速させることでしょう。
「そういう世界を希求して困難を乗り越えていきたい」という岩屋氏は、ぜひ来る総裁選挙の場で「日中米露平和同盟」を「戦前のような空気に抗して勇気を持ってもの申し」ていただきたいものです。
さもなくば、さっさと離党して立憲共産党に移られることを強くお勧めします。
そのほうが似つかわしい。

 

2023年8月13日 (日)

日曜写真館 台風の押し上げて来し雲走る

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台風に任すもの任されぬもの 後藤比奈夫

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台風が生れ天気図活気づく 右城暮石

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台風に任すもの任されぬもの 後藤比奈夫

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台風の近づく岬ぬれそぼつ 右城暮石 

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吃る蝉をり台風の来つつあり 秋元不死男

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颱風となるか風の尾長く曳き 山口誓子

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孤り昏れ野の光も昏れ颱風の樹 赤尾兜子

 

2023年8月12日 (土)

広島市長、核抑止は破綻している?

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なでしこが負けてしまい、意気消沈です。

きを取り直して、先だっての松井広島市長の平和宣言です。

「こうした中、G7で初めて「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が独立の文書としてまとめられ、全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界の実現が究極の目標であることが再確認されました。それとともに、各国は、核兵器が存在する限りにおいて、それを防衛目的に役立てるべきであるとの前提で安全保障政策をとっているとの考えが示されました。
しかし、核による威嚇を行う為政者がいるという現実を踏まえるならば、世界中の指導者は、核抑止論は破綻しているということを直視し、私たちを厳しい現実から理想へと導くための具体的な取組を早急に始める必要があるのではないでしょうか。市民社会においては、一人一人が、被爆者の「こんな思いは他の誰にもさせてはならない」というメッセージに込められた人類愛や寛容の精神を共有するとともに、個人の尊厳や安全が損なわれない平和な世界の実現に向け、為政者に核抑止論から脱却を促すことがますます重要になっています」
「平和宣言」【全文】 広島市・松井市長「世界中の指導者は、核抑止論が破綻していることを直視すべき」|FNNプライムオンライン

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FNN

やれやれ、ため息の出るような「平和宣言」ですね。
ひとことで評すれば幼稚。それ故に、この時代においては危険ですらあります。
なんでも松井氏はガンジーの言葉を引用し、世界中に「平和文化」を根付かせる取り組みを広めていこうと呼びかけたそうです。
言外に核兵器禁止条約に加盟しろということでしょう。

松井氏は外務官僚出身で、前任者の左翼系秋葉市長に対して自民党の候補に押されたのですが、言っていることは秋葉氏となんら変わりません。
広島は岸田氏の地盤ですから、たぶん核兵器について首相と通じるモノがあっての今年の松井平和宣言でしょう。
つまり、岸田氏が立場上言えない「理想」を、松井市長が代わりに言ったというところです。

では、そもそも「核抑止が破綻した」という現状認識は正しいのでしょうか?
ここういう言葉は厳密に使っていきただきたいものです。
元外務官僚出身の松井市長に言うのもバカバカしいですが、「核抑止の破綻」とは端的に核抑止が失敗して、現実に「核戦争が起きてしまった」という意味です。
米露が部分的か、全面核戦争であるかを問わず、核兵器を使用したということになります。

それがわかっていて「核抑止の破綻」という表現を使うことは、政治的脅迫です。

いうまでもなく、この1年間、米露、あるいは米朝、米中が米朝が核戦争をした事実はありません。(あたりまえだ)
幼稚なことを言わんで下さい。それともこの平和宣言はただの反核文学なのでしょうか。
正確にいえば、「核抑止の失敗」ではなく、核抑止の大黒柱であるNPT体制がロシアのウクライナ侵略によって大きく揺らいだのです。

核抑止の実態は、核兵器というモノだけを見ていてもわかりません。
核抑止は、核のトライアド(※1)と相互確証破壊理論(※2)、そしてNPT(※3)によって成立しています。

今日は長くなりますから説明を省きます。下の引用をご覧ください。
※1核の 3 本柱 
※2相互確証破壊 - Wikipedia
※3核拡散防止条約 - Wikipedia

そしてNPTは核軍縮、核不拡散、軍事目的への核の使用禁止、という三つの部分から成立しています。

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NPT(核兵器不拡散条約)について | 国際平和拠点ひろしま〜核兵器のない世界平和に向けて〜 (hiroshimaforpeace.com)

このNPTの三つの柱は常に揺らいでいますが、この1年間ほど大きく揺らいだことはありませんでした。
その原因は、ロシアが核の使用を政治的な脅迫に使い、核軍縮交渉からの離脱を宣言したことです。

「ロシアと米国の核軍縮合意、新戦略兵器削減条約(新START)は、ロシアのプーチン大統領の履行停止表明で修復がほぼ不可能になった。ウクライナ戦争と並行し、新たな軍拡競争が勃発するリスクが高まる一方、米ロ両国は50年余りにわたりこれまでの核軍縮条約がもたらしてきた安定的かつ予測可能な核管理の枠組みに頼れなくなる」
(ロイター2023年2月22日)
焦点:新START、修復ほぼ不可能 核リスク拡大へ | Reuters

このロシアの離脱で、それまで不十分ながらも「非核化への道」を歩んでいた核軍縮が座礁しました。
反核団体のICANのように、このロシアの暴挙を非難せずに核兵器禁止条約締結しない日本を攻撃するのは、とんでもない倒錯です。
核兵器廃絶国際キャンペーン - Wikipedia

そしてもうひとつの核大国である中国は、そもそも核軍縮のテーブルにつこうとさえしていません。
それどころか、中国は「使える核」である中距離弾道ミサイルを増強し続けました。
大陸間弾道弾はその破壊力の大きさ故に全面核戦争となりますが、中距離核は相手の策源地を破壊するための小型核ですから「使いやすい」のです。

中国は米露がINFに拘束されていることを尻目に、様々な射程距離の中距離ミサイルを開発しました。
そしてこの中距離核戦力を背景にして、韓国・日本・沖縄・グアムなどに実戦配備された米軍の戦力を脅かし、九州-沖縄-台湾を結ぶ第1列島線の内部への米国の空母の接近を防ごうという「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略」を推進しています。

このような「使える核」への中国の変化に危機感を抱いた米国は、2019年8月にINFから脱退した後、米国・中国・ロシアの3カ国を包括する核軍縮の枠組みを作ろうと主張してきましたが、もちろん中国は見向きもしませんでした。

2番目の核不拡散も、ロシアがベラルーシに核ミサイルを前進配備することで崩れました。
米国は対抗措置をかけていませんが、ヨーロッパの核のバランスが崩れてしまった以上、なんらかの措置は必要となります。
するとまた核戦争への道が近づくわけです。

明らかな核拡散防止条約条約違反ですが、だれも止められませんでした。

「ロシアとベラルーシは25日、ロシアの戦術核ミサイルをベラルーシ領内に配備することを正式決定する協定に調印した。
バイデン氏は26日、ロシアがベラルーシに戦術核兵器を配備する計画を進めていることを「極めて否定的」にとらえていると述べた。米国務省もロシアの核配備計画を非難している。
米国の反応に対して在米ロシア大使館は「米国がわれわれに仕掛けた大規模なハイブリッド戦争の中、必要と考える手段で安全を確保することはロシアとベラルーシの主権的な権利」と強調。「われわれが取った措置は、国際的な法的義務に完全に合致するするものだ」とした」
(ロイター2023年5月29日)
ベラルーシへの戦術核配備、米は批判する資格ないとロシア一蹴 | ロイター (reuters.com)

そして三番目の核の軍事利用転用禁止は、北朝鮮とイランで完全にザルとなっています。
これも米国は有効な阻止方法を持たないまま、ほぼ完成の域に達しています。

このような状況を見れば、「核抑止の失敗」とは、ロシア、中国、北朝鮮、イランのNPT破りを止められない米国の弱腰の問題なのです。
どうしても松井市長が「核抑止の失敗」と言いたいのなら、核を政治的脅迫の手段に使ったロシアを強く批判するべきです。
全面核戦争を恐れるバイデンは、このロシアの核戦争の脅迫に屈しました。

ゼレンスキーがロシア軍が撤退するなら中立も辞さない、NATO加盟は検討してもよいという悲痛なことを言ったのは、戦闘機の供与や飛行禁止区域の設定にすら腰が引けている彼らへの痛烈な批判です。
もし米国を批判したいなら、この恐露病のバイデンの弱腰を責めなさい。

その結果、核さえ持っていればどんな横車でもやりたい放題だ、俺は核をもっているから反撃できねぇだろ、文句があればほんとうに核を使ってやるぜ、はは、俺様は世界の支配者なんだ、という核万能論が生じてしまったのです。
松井氏のような偽善の人がガンジーを気取っているときに、核万能論が芽生えているのです。

その意味で「核抑止は失敗した」とも言えます。
くどいようですが、誰によってでしょうか。もちろんロシアと中国、北朝鮮、イランによって、です。

こんな核万能論に目覚めたロシア、ひたすら核増強に走る中国、核開発が国是である北朝鮮・イランといった面々を前にして、核兵器禁止条約をなどを結んでしまったら、ならず者国家による核の独占が完成してしまうことになるのですが、分かって言っているのでしょうか。

地獄への道は善意で舗装されている、とはよく言ってもんです。

 

 

2023年8月11日 (金)

被災民は叫んだ、「これは天災ではない!」

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水は引くでしょう。水害で瓦礫と化した街もまた元のようになるでしょう。
ただ「元に戻る」のが、その都市の支配者の登場に合わせてだったら、たまりません。
全体はまだ瓦礫の山、救助を求める人がいるときに、その男だけは、自分の道の前をだけを掃き清めさすのです。
その街は、首都の外堀となって沈められた涿州(タク)市です。

「水が引いたとは言え、まだ洪水被害の生々しい河北省涿州市内。しかし「その場所」だけは、街の路上に散乱していたゴミや泥もきれいに片付けられていた。用意された「その場所」へ、河北省の省委員会書記(河北省のトップ)である倪岳峰氏とその一行が8月3日、ようやく視察に訪れた。
倪岳峰(げい がくほう)氏は安徽省出身の58歳。現職に就任したのが2022年4月であるため、河北に赴任して1年4カ月である」
((エポックタイムス8月10日)
「今まで何してた?」 ようやく現れた省書記に、市民が怒りをぶつける=中国 河北 | 河北省 | 涿州 | 洪水 | 大紀元 エポックタイムズ (epochtimes.jp)

倪(げい)の現職は中国共産党河北省委員会書記、つまり河北省の支配者です。
ご承知のようにこの国は屋上にもうひとつ家を置いたような構造になっています。
たとえば、最近まで外相という重要ポストに秦剛がいましたが、座ってまもなく理由も明らかにされないまま今は牢獄の住人だと伝えられています。
代わって外相をやっているのが王毅。
この男は元外相だから代役をしたのではなく、外交トップは共産党政治局常務委員の外交担当が握っているからです。
ま、本家が出ただけのこと。
すべからく共産党が実権を握っており、小は企業から地方自治体、そして政府に至るまで二重構造になっています。

今回のタク市の水害事件も同じです。
市長などという「小物」はどうでもよく、市の共産党書記か、省の共産党書記がほんとうの責任者です。
市の共産党ボスの蔡?華書記が行方不明なために、しかたがなくその上の省トップ倪閣下がお出ましになったようです。

この倪がお出ましにならればならないほど、タク市の状況は緊迫していました。
「北京を守る」という大義名分のため、タク市が事前通告なしにダムの放流にあって街ごと沈められたからです。

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エポックタイムス

上の写真は8月5日、河北省涿州市で洪水が引いた後の町を歩く市民の姿ですが、街は概観をとどめないまでに破壊され尽くしました。

「河北省涿州市は当局による事前通告なしのダム放水により、住民が避難する間もなく市のほぼ全域が水没した。
市中心ではようやく水は引いたが、依然として浸水している地域もある。壊滅的な被害を引き起こしたのは、自然災害ではなく、共産党政府による「人災」であるとして、抗議の声が上がっている」
(エポックタイムス8月9日)
「これは天災ではない。人災だ!」政府前で抗議する被災民を、警察が鎮圧=中国 河北 | 横断幕 | 洪水 | ダム放水 | 大紀元 エポックタイムズ (epochtimes.jp)

しかも、この事態に抗議するズブ濡れの被災民は市庁舎に向かったのですが、待っていたのは武装警察です。
同じような抗議行動は、河北省保定市定興県の政府庁舎前でも起き、5日には同じ河北省廊坊市覇州市の政府前でも、被災民による抗議活動が行われていました。

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エポックタイムス

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エポックタイムス

まず日本ではありえないでしょうな。
被災者が救援を求めに行った先で、治安警察にメッタ叩きされるなど考えられもしません。
ではなぜ被災者は弾圧されたのでしょうか。

その理由は、被災民が「これは天災ではない!」と叫んだからです。

「河北省廊坊市覇州の政府前で5日行われた抗議活動。掲げられた横断幕には「私たちの家を返せ。(洪水は)ダム放水が引き起こしたことは明らかなのに、降雨のせいにしている」書かれている。(中国のSNSより
「4つのダムによる同時放水のせいで、私たちは家を失った。これは天災ではない! 当局は放水するためにダムを爆破したんだ。私たちは、ただ政府から納得できる説明が聞きたいだけだ。しかし、定興県政府は帰る家を失った難民(被災民)を武力で鎮圧した。この動画を拡散してほしい」
(エポックタイムス前掲)

これらの被災者が発信したSNSは今は完全に削除されています。
残っているのは、「被災民の生活や医療をふくめ、どんな要求でも政府は責任を取る。損失は補償する」と自信満々に約束する現地政府の高官の映像だけだそうです。
共産党は、こんな災害時だけくらいは自由な発信を許してもよさそうなものですが、しない。
彼らにとってメディアは党のスピーカーであり、国民の声が繁栄されるものではないからです。
ただし、削除までのレスポンスがあって世界に流出してしまうのが救いです。

その被災者のSNS上の貴重な動画を見ると、

「8月5日時点でも、定興県では多くの村が「泥の海」のままだった。水が流れて、引いているようには見えない。このまま天日で乾燥するの待つとすれば、いったい何カ月かかるのか。家を失った住民にとって、それは生活再建の目途さえ立たない絶望の光景でしかない。
甚大な洪水被害を受けた河北省涿州市の一部地域では、水が徐々に引いている。
街中には「苦労して、やっと手に入れた」という支援物資を運ぶ市民の姿が多くみられた。いっぽう、市民が街中で撮影した動画のなかには、路上に転がる災害犠牲者の遺体や家畜の死体の山があった。
被災地では、折からの高温が続いている。そうした遺体や家畜の死骸は今、一斉に腐敗し、凄惨な光景となっている。伝染病などの二次災害が発生する危険性は、極めて高い」
(エポックタイムス前掲)

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8月5日時点での定興県の様子 

いま習近平のこのタク市なとの外堀水没作戦に多くの批判が、国内で起きています。

「2023年8月4日、仏国際放送局RFI(ラジオ・フランス・アンテルナショナル)の中国語版サイトは、中国の北京市や河北省を襲った豪雨について、中国共産党の河北省トップが北京市や習近平(シー・ジンピン)国家首席にこびへつらうものだとして批判の声が出ていると報じた。
事は、中国共産党河北省委員会の倪岳峰(ニー・ユエフォン)書記が8月1日から2日にかけて同省保定市と雄安新区の治水、救援作業救済を視察した際「洪水防止の貯水エリアを始動して北京の洪水リスクを低減させる。首都の城を守る堀として断固行動する」と強調したことを紹介。この発言がネット上での論争を引き起こしたと説明した」
Record China 2023年8月4日)
洪水被害の中国河北省、当局者の発言に批判殺到―仏メディア (recordchina.co.jp)

この習近平のオベッカ使いの倪岳峰に対して、あのゴリゴリの共産党媒体の環球時報元編集長ですらこう述べています。

胡錫進(フー・シージン)環球時報元編集長も3日に「北京市、天津市、河北省は地理的に同じユニットにあり、豪雨が降れば運命共同体になる。この時、ある地域を他の地域の『堀』としてはならない。三地における洪水を防ぎ安全を確保する重要性は同等である」と指摘したことを伝えている」
(レコードチャイナ前掲)

ある地域をある地域の「堀」にしてはならないという、いたって当たりまえの認識です。
たとえば、東京都下を守るために八王子を沈めろというようなものです。
これが正論となるようなこの国の実態がこの大洪水で明らかになりました。
それにしても、陣頭指揮をしていたと称する習近平の写真が一枚も出てこないのはなぜなんでしょう。

 

 

 

2023年8月10日 (木)

北京水没

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台風6号は沖縄圏を中心に大きな被害をだしましたが、そのひとつ前の台風5号は中国大陸に上陸し、北京が水没するような大災害になりました。
台風5号は、先島の西を抜けて台湾に上陸した後、福建から大陸内部へと進路をとりました。

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台風5号は非常に強い勢力へ 先島諸島は荒天の恐れ 本州付近は再び酷暑 2週間天気(気象予報士 吉田 友海 2023年07月23日) - 日本気象協会 tenki.jp

福建省では記録的な被害を引き起こし、泉州で体育館の屋根が吹き飛び、数十階の高層アパートが暴風によって倒壊しました。
動画では自動車や街路樹が洪水に押し流され、橋などを破壊している様子が見られます。

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北京で今年一番の大雨 2人死亡 台風上陸の福建省では145万人超被災|au Webポータル国際ニュース (auone.jp)

厦門、泉州、福州を破壊し、浙江、江蘇、上海にも甚大な被害を出しながら移動し、ここでいったんは亜熱帯低気圧になったと言われたものの勢力は衰えることなく河北、首都北京を襲いました。

「被害は1日までに、北京市だけで4.4万人が被災し、12万人以上が避難。災害救急隊員2人の殉職を含めて11人が死亡し、27人が行方不明だ。台風5号は福建省ですでに被災者266万人以上、直接経済損失147.5億元以上の大被害を出している。中国全土で被災者は300万人を超える。この大災害は、人災の側面もあり、習近平の治水事業の失敗ではないか、という声も上がっている」
(福島香織8月4日)
中国・北京の大洪水は「人災」、治水失敗の皇帝・習近平は天から見放された? 600年以上水没被害のない故宮・紫禁城も冠水(1/5) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

この程度の犠牲者ではきかないでしょう。たぶんケタがふたつ違うはずです。

では台風5号の内陸に入ってからの進路を見てみましょう。北京直撃コースです。

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台風5号、気象庁の予想進路と米軍の見方 日本への影響は…2023年7月26日18時時点 | 社会 | 福井のニュース | 福井新聞ONLINE (fukuishimbun.co.jp)

ちなみに比較してみると、中国大陸を襲った台風5号の最低気圧は1002hPa、沖縄、奄美を襲った6号は985hPaでやや5号が強いものの、最大風速は5号が18m/Sに対して6号は最大風速が30m/Sです。
北京市は先月29日から1日午前6時までの平均降雨量が257.9ミリを記録したと発表しました。
門頭溝区は470.2ミリ、房山区は414.6ミリを記録し、河北省臨城県は先月29日午前8時から31日8時までの48時間に1メートルに迫る994.6ミリの降雨量を記録しました。
5号は雨台風、6号は風台風だといえるでしょう。
ただしこの規模の台風はたびたび日本を襲っており、首都が水没するようなものではありません。

北京市西部の山間地域の門頭溝区は集中豪雨により永定河の水位が急上し氾濫、川沿いの道路は濁流と化して、沿道の店舗が完全に水没しました。
特に永定河大橋が濁流で破壊された様子がSNSで拡散しています。

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北京大雨続く、永定河橋が崩壊、沢山の乗用車が洪水で流される、中には人がいる□□□ - ニコニコ動画 (nicovideo.jp)

「門頭溝豊沙線安家荘駅付近では冠水で、列車が立ち往生していた。列車内は、夏休みで新疆ウルムチ旅行からの帰路にある家族連れが多く、高温と飲料水不足で具合が悪くなる乗客も多く出た。門頭溝は水道、電気、ガス、通信の供給が停止され、公共交通もすべて停止。陸の孤島となったのだった。
門頭溝に近い房山区も洪水で、1万人以上が暮らす社区(コミュニティー)が深さ1.5mの水につかった。永定河大橋から、河面が急上昇して家を押し流す様子が目撃された」
(福島前掲)

北京市周辺の都市や重慶は「スポンジ都市構想」の掛け声で治水対策モデル地域のはずでしたが、永定河の氾濫は50年以上ぶりです。
最新の排水設備が設計されているという触れ込みでした。
しかし北京の玄関口北京大興空港の停機場の大部分が冠水し巨大な湖のようになっています。

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北京洪水│啟用僅4年大興機場變澤國 網民:兩天下了一年的雨南方也扛不住 | 星島日報 (singtaousa.com)

またこともあろうに、中華帝国のシンボルである紫禁城も冠水してしまいました。

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新華社

北京は内陸で、北部と西部に高い山があり、台風や海からの降水はここで止まると言われてきましたが、首都に向かう濁流をまったく止めることができませんでした。
むしろ濁流を集めてしまったようです。

人民日報は習近平が対策に奔走し、陣頭指揮を執ったように書いています。

「5日付けの人民日報とCCTV、新華社は「風雨同心、人民至上」の長編記事を発表。
習近平が北京の洪水防止と災害救援で指揮をとったことを賞賛した。記事によれば、習近平は7月25日から27日まで四川を視察している最中すでに、洪水情報にしっかり注目しており、全面的に各部門が主体的責任をおって洪水防止災害救援の準備任務をしっかりするよう、要請したという。また副首相の張国清を門頭溝区の災害指導のために派遣する措置をとった、という」
(福島香織の中国趣聞(チャイナゴシップ)NO.850 2023年8月9日)

しかし、北京に隣接する河北省タク州市はダムの容量が基準を超えた時に、北京への奔流を回避するために無警告で水門を開放し、市は丸ごと水没してしまいました。
いわば都市を丸ごとひとつ人身御供したようなものです。
こんなまねは権威主義国家でしかできません。

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テレ朝  タク州市

「この地区にある企業の社長によりますと、1日午後に放水の通知があり、1時間後には水位が1メートル以上に達したといいます。
タク州市の会社社長:「政府の(避難)通知は遅かった。ダム放水と知らされず、何メートルも水位が上がった」
タク州市では一時、13万人以上が避難し、現在も広範囲で停電や断水が続いています」
(テレ麻8月9日)
「放水だと知らされず…」北京を守るため水没した街 (tv-asahi.co.jp) 

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  テレ朝 タク州

いまタク州市共産党の蔡書記長は、災害直後にもかかわらず失踪中です。
どうやらこの蔡書記長は、習近平へのゴマスリのために自身が水門の開放を要請したようです。
この蔡?華書記は、共産党指導部の蔡奇政治局常務委員の甥っこだと言う理由で異例の出世をした男です。
アッパレな出世欲ですが、無警告で洪水を受けた市民はたまったものではありません。

「タク州市の蔡?華書記は、今のところ雲隠れ中。噂では、雄安新区を守るために、タク州に水を流す泄洪の要求を(自身の出世のために)したのは蔡?華書記自身らしいです。実はタク州の泄洪が決定されたのは、上級政府の保定市党委員会ですら知らず、蔡奇政治局常務委員が2時間で批准したのだとか。じつは蔡?華は蔡奇の甥っこで、もっかスピード出世中だとか。つまり自分が施政を執り行う地域の人々の命と財産を、自分の出世のために差し出した、ということです。
蔡奇は習近平の三大酷吏(三大悪代官)と呼ばれる冷酷な人間らしいですが、その甥っ子も!」
(福島前掲)

タク州市政府も、批判にさらされるのを嫌がってか、民間ボランティア救援隊の受け入れを、理由をつけて拒否しています。
その一方で、救援フェークニュースを流して、全力で救援しているかのように見せているように見せかけていますが、じっさいには被災者は放置されているようです。

ところで、習近平は防災を何もしなかったわけではありません。

「2012年に北京で発生した洪水で79人が死亡した後、習近平国家主席は「海綿城市(スポンジ都市)」の建設を提唱。これを踏まえ、中国はこの数年で洪水対策に多額の資金を投じてきた。
スポンジ都市とは、屋上緑化や透水性舗装、地下貯水槽などスポンジのような機能を使って雨を吸収した後、河川や貯水池へと徐々に放出するという発想だ。北京や重慶など数十に上る都市がスポンジ化を図る方針を示してきた。
だが、中国北部では先月29日以降、豪雨で死者数が増えており、世界的な気温上昇で降水量も増える中、スポンジ戦略が目的を果たしているのか警鐘が鳴らされている」
(ブルームバーク2023年8月3日)
中国の「スポンジ都市」も吸収しきれず-異常な豪雨で洪水被害 - Bloomberg 

ブルームバークは遠回しに「スポンジ戦略が目的を果たしているのか」と問うていますが、もちろんまったく機能していないことは明らかです。北京や福建、重慶に東京にあるような外郭放水路のひとつでもあれば、こんなことにはならなかったはずですが、空母や戦略原潜を作るのに忙しく、治水にはカネを配分していなかったようです。
現実にやったことといえば、水没予定都市を設定することだけだったようです。

「中国河北省では7月下旬からの豪雨により、100万人近くが避難を余儀なくされた。あふれかえった河川の水を多くの住民が暮らしている幾つかの「保水地区」に誘導せざるを得なくなったからだが、首都北京を守るためのこうした措置の犠牲になって家を失った人々がインターネットで怒りの声を上げている。
豪雨で氾濫したのは海河。流域面積は河北省の大部分と北京市、天津市など、ポーランドに匹敵する広大さがあり、特に河北省では洪水被害が大きい。
中国の法律では、大規模洪水で貯水ダムの容量オーバーとなった場合、一時的に指定された低地の保水地区に水を放流することが定められている。
こうした中で7月31日に河北省は13の保水地区のうち7カ所に水を放流。対象にはタク州市や、習近平国家主席が打ち出した国家プロジェクトの一環として設置された雄安新区なども含まれた」
(ロイター8月7日)
中国河北省で100万人近く避難、北京守るため「保水地区」へ放流 | Reuters

都市防災が近隣都市を水没させることだけだったというお粗末。
それでも首都は水没を免れなかったのですから、これはもはや習近平の引き起こした人災です。

 

 

2023年8月 7日 (月)

夏休みをいただいております

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暑中お見舞い申し上げます。
本日から9日水曜日まで夏休みをとらしていただいております。
再開は木曜日からです。
皆様、酷暑の折、くれぐれもご自愛下さい。

                                                 ブログ主

 

2023年8月 6日 (日)

日曜写真館 向日葵に天よりあつき光来る

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向日葵と雨中なれども對峙せり 相生垣瓜人

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二人して忘れてしまふ大向日葵 飯島晴子

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ひややけく向日葵立ちぬ諦めぬ 岸田稚魚

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ひまわりの威おそれぬ日あり恐る日も 赤尾兜子

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わが挫折めくひまわりの枯れざまよ 楠本憲吉

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向日葵の十四花ゴッホの場合の如く 山口誓子  

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向日葵にながき銷夏の日を迎ふ 百合山羽公

 

※お知らせ
明日8月7日から9日までの3日間夏休みを頂戴いたします。
再開は、10日(木)からとなります。

 

 

2023年8月 5日 (土)

ヤンバルのオジーの「すば」

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沖縄を襲った大型台風をお見舞い申し上げます。
被害が心配です。

今日は12年前に書いた雑文を再掲いたします。
ブログを書き始めた当時、このブログはを雑文ブログにするつもりでしたが、気がつけばいまのように。
口蹄疫があり、翁長氏がおり、福島事故があり、そしていまはウクライナです。
その都度、気がつけば論陣を張ってしまいました。
われながらとことん損な性分です。

時折、私は発作のように沖縄を激しく恋しくなる時があります。
思い出すのは、普通に食べていたもの、嵐をはらんだ東シナ海、どこまでも人を拒む緑の壁のように続くヤンパルの深い森だったりするは、なぜでしょうか。
あるいは祭りの時のサンシンの響き。シマンチューのゲラゲラ笑い。
そして島酒。

死ぬならシマで死にたいものです。

                                                   ~~~~~

沖縄には、「沖縄そば」という面妖なものがあります。
蕎麦粉などは耳掻き一杯も入っていません。  

蕎麦はその気になればヤンバルでできそうなものですが、島内で「そば」といえば問答無用にこれです。これしかありません。
ウチナーグチで「スバ」ともいいますが、私が居た時には「沖縄そば」とだらだら言う奴はいなかったな。  

ただ、きっぱりと決意を眉間に込めて「スバくれ!」。これが島の男さぁ(←てなもんか)。 

いわゆる日本そばは「黒そば」という気の毒な名前で呼ばれていて、ほぼまったく食べないのではないでしょうか。私が居た頃は日本そばの店は、那覇の松尾に一軒しかありませんでした。なんかカトマンズの日本食レストランという雰囲気。  

ちなみにラーメン屋は太陽軒という店がただひとつでした。懐かしくて、ヤンバルから那覇に上京するたびに食べていました。今は増えたでしょうね。  

沖縄そばは、麺はラーメン文化圏のものですが、出汁が日本そば文化圏、それも関西そばと豚だしの融合です。  
腰のある平打ち麺にカツオだしの汁、具にはカマボコ(カマブク)と三枚肉がデロンと乗ります。今日は写真に撮るので、見栄を張って3枚乗せてみました。普通は1枚で充分です。
三枚肉は皮つきで、なぜ内地は皮つき三枚肉を売らないんでしょう。
あの皮の下のコラーゲンのプルプルがたまりませんわい。

そしてマストノットアイテムとしては、紅生姜とわけぎ。これがないなら食べないほうがましというものです。三枚肉はサイフの都合で入れなくとも、これは入れましょう。  
下写真右の瓶はヒバーチ粉です。原音忠実主義で言えばヒファーチ粉です。島胡椒のことで、八重山特産のペッパー類の一種らしいですが、風味はまぁ嗅いでみて下され。強烈エスニックです。
本島ではあまり使わず、八重山そばのものだそうです。

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いわゆる私たちナイチャーが知っている胡椒とはまったく似ても似つきません。クセになります。実は私はこのヒーバチ粉を石垣島で知り、以後肌身離さず持ち歩いていた時期があります(←オーバー)。  
八重山ローカルな香辛料で、本島ではまったく使いません。本島では島唐がらしことコーレーグースーを死ぬほどかけて大汗をかきながら食します。 

要するに、鰹出汁の効いた塩味ベースのスープに、カンスイ入りうどん、それにラーメンのようなトッピングが乗る、というところでしょうが、説明すればするほど不正確になっていくので、まぁ現地で食べて下さいというしかない沖縄人のソールフードです。  
おっと、ソールフードっていう言い方嫌いですね。
なんかウソ臭い響き。

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この中華風と和風のフュージョンがいかにも沖縄風で、この島の歴史の両属性を象徴しています、な~んてつまらない講釈はさておき、私はこれをヤンバルの山奥から名護に出るたびに食べていました。  

岸本食堂という、今や観光ガイドにも出て本土のネイネイまでがやって来るお店になってしまいましたが、当時から「輝け!ソーキそば発祥の店」として有名な存在でした。  

あの小ぶりな丼からはみ出しそうになる、というか現にはみ出している骨つきソーキ(アバラ肉)の層をかき分けるようにして食べるソーキそばは、お好きな方にはたまりませんが、本土のお客さんはだいたい食べ残すようです。見ただけで腹一杯になりそうですもんね。 

ところでこの沖縄そばは、起源はやたら古いのだそうですが、戦前は小麦が島内で取れないために内地からの輸入で、そうそう庶民がめったに口に食べられるようなものではなかったそうです。  
盛んになったのは戦後に米国が大量に持ち込んだ余剰小麦がガバガバあったからで、それに先島特産のカツオ節のだし汁と豚肉の煮汁で作った汁をかけたわけです。 

本来の沖縄そばの麺はカンスイを使わずに、ガジュマルの灰を使います。私の住んでいたヤンバルのオジィは車など持っていなかったために、そばは自分で打っていました。  

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一度だけ年の瀬にお相伴させていただいたことがあります。麺から打つのですが、カマドにある灰をかき集めてその上澄みを掬い出します。あれはイジュの枝だったような、ま、いいか。  
そしてこの灰汁汁を入れながら小麦粉を打ちます。灰汁を練り込む以外はまったくうどんと一緒ですね。  

練って寝かせ、伸ばして折り畳んで、ザクザクと切っていくわけです。いや太かったですね。ただでさえ太打ちの沖縄そばが、超々太打ちとなり侍り。  
しかしオジィが根性を入れて打っただけあって、バラバラになることもなく(なったらスイトンだ)、えらく腰のすわった沖縄そばになりました。麺はヤンバルの樹の灰汁で染まってほのかな美しい黄色。 
超々太打ちとあいまって、もはや見た目はほとんどカンピョウみたいでした。 

これに朝からガリガリと私にかかせたカツオ節が参ったかというほど入ったカツオ節臭い、いやもとい、黒潮の香りも高い汁に、そこにオジィの汗がしみこんでいる(しまった。思い出してしまった)噛むと快くプチッと切れる麺がまた最高の沖縄そばでした。 
具ですか。共同売店で買ったカマボコの切れ端が乗っていたような。ワケギはニラだったような。さすがニラは勘弁なので、どかして食べた記憶があります。紅生姜?そんなものはハナっからありません。 

しかし、それまで食べてきた沖縄そばで、最高の一杯だったことは確かです。オジィが上機嫌で、ウサガミソーレと言って出してくれた年越しそば。親指が漬かっていたような気がしますが、年の瀬になると今でも思い出します。 

私の沖縄の記憶はこの一杯です。

 

※お知らせ
来週8月7日から9日までの3日間夏休みを頂戴いたします。
このメチャクチャな熱波にジジィは息も絶え絶えです(大げさ)。
再開は、10日(木)からとなります。

 

 

 

2023年8月 4日 (金)

3貨物船、ロシアの穀物封鎖を突破

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ロシアが海上封鎖している黒海を、勇敢な3隻の貨物線が挑んでいます。
ロシアは、ウクライナに出入港しようとする貨物船は一切軍事目標だと宣言していました。

「イスラエルの民間船が黒海でロシアの穀物封鎖を破った、とAPAUNIANを引用して報告している。
「Ams1」、「Şahin 2」、「Yılmaz Kaptan」と名付けられた<>隻の民間船がイスタンブール海峡を通過した。
これらの船はイスラエル、ギリシャ、トルコの旗の下で航海した。
Ams1はドナウ川のウクライナ支流に入った。
ロシアが行った、7月25月のライン川沿いの穀物倉庫爆撃の後、これはロシアの黒海の封鎖を破った最初の船である。
イスラエルのアシュドッドから旅を始めて、イスラエルの船は、その目的地がウクライナであると公然と述べた。
また、アメリカのP8航空機は、潜在的な脅威に対する船の安全を確保している」
(APA7月22日)
イスラエルの船がロシアの穀物封鎖を突破した最初の船になる-写真 (apa.az)

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APA
航路はこのようなものです。
一路最大の積み出し港であるオデーサに向かっています。

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APA

7月24日、ロシアはNATO加盟国のルーマニアと皮一枚のドナウ川沿岸の穀物倉庫をミサイル攻撃しています。

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BBC


「ウクライナ南部のドナウ川沿いの港で24日、ロシアのドローン(無人機)による攻撃があり、穀物貯蔵施設が破壊された。現地当局が発表した。
破壊された施設は、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のルーマニアから、ドナウ川を挟んですぐの至近距離にある。

当局によると、4人が負傷し、うち1人は重傷だという。
ロシアは今月17日、ウクライナが黒海経由で小麦やトウモロコシなどを輸出できるようにする協定から離脱した。そのため、ドナウ川はウクライナにとって重要な輸出ルートとなっている。
黒海の港湾都市オデーサも毎晩のように攻撃を受けており、穀物倉庫が破壊されている。
当局によると、この1週間で6万トン以上の穀物が被害を受けている。
穀物の世界市場では、ロシアが輸出協定から離脱してから1日のうちに、穀物価格が8%上昇した」
(BBC7月25日)
ロシア、ドナウ川の穀物倉庫を攻撃 ルーマニアの対岸 - BBCニュース

「ロシアは、ウクライナはの穀物倉庫を破壊し、黒海を封鎖しても、ロシアから買えばいいのだと馬鹿なことを言っていますが、そもそもウクライナ戦争を開始した時点で国際穀物市場価格は上昇基調でした。
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国際農研 2022年7月 世界食料価格動向

「国連食糧農業機関(FAO)は、8月6日、世界食料価格動向を公表しました。2022年7月の値は平均140.9ポイントで6月よりも8.6%低く、史上最高値を記録した3月から4か月連続で下落しましたが、1年前の水準からは16.4ポイント(13.1%)高水準にとどまりました。7月の食料価格指標下落は、とりわけ植物油と穀物価格指標の大幅な下落を反映したものです。
穀物価格は6月に比べ11.5%下落したものの、昨年7月に比べ16.6%高水準でした。世界小麦価格は7月に14.5%下落しましたが、国連の仲介によりウクライナの黒海からの穀物輸出を再開することが合意され、再開への期待が高まったことも反映しています。それでも、小麦価格は昨年7月よりも24.8%高い水準を維持しています。
植物油価格は、19.2%下落し、171.1ポイントと、ここ10カ月では最低値をつけました。この背景には、需要の落ち込みと主要国からの十分な輸出の見込みを反映したパーム油・ダイズ油・ヒマワリ油の国際価格の下落があります。原油価格の下落も植物油の下落に影響を及ぼしています」
(国際農研2022年8月8日)
595. 2022年7月 世界食料価格動向 | 国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

ロシアとウクライナは世界有数の穀物産地だったために、去年3月の侵攻初期から小麦の国際相場は急上昇して約14年ぶりに最高値を更新しています。
ウクライナがダメならロシアから買えばよいという問題ではなく、巨大産地のひとつが失われるという市場の危機感は買いを呼び、国際穀物市場を一気にはね上げました。

下図はFAO(国連世界食糧機構)が出した世界市場の食料価格指数ですが、2月に4%近く上昇しました。
既にウクライナ戦争前から食品コストは2020年半ば以降で50%余り上昇していたところに、今回のウクライナ戦争が追い打ちをかけた形になりました。
食品価格上昇は小麦だけには止まらず、ウクライナが世界最大のひまわり油生産地だったために、植物油の価格までもが高騰した影響が大きいようです。

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原因はロシアが世界第2位のウクライナの穀物輸出を、海上封鎖によって止めてしまったからです。
そして穀物輸出第3位が当の原因を作ったロシアです。
下図をご覧いただくと、米国はブッチギリですから別にするとして、二位三位が今回の被侵略国と侵略国だということが判ると思います。

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朝日gloveプラス

ロシアとウクライナは欧州を支える穀倉地帯です。
ふたつの国が輸出している食糧は、世界で消費されるカロリーの実に12%を占め(国際食糧政策研究所による)、世界の穀物市場において小麦の約30%、トウモロコシの約20%、ひまわり油の80%以上の原産国は、ロシアとウクライナです。
ウクライナ戦争は世界食料危機をもたらす: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

そして現実にウクライナからの穀物出荷が途絶え、黒海イチシャチブで再開された矢先にロシアの離脱と黒海海上封鎖という暴挙ですから、これてであがらないわけはありません。
穀物の世界市場は、ロシアが輸出協定から離脱してからわずか1日のうちに、穀物価格が8%上昇しました。
そしてさらには執拗なウクライナの穀物倉庫が爆撃され続けています。
特に主要積み出し港のオデーサは集中的攻撃を浴びており、州内のドナウ川のレニ港とイズマイル港が、ロシアによって4時間にわたってイラン製ドローンで攻撃され、倉庫3棟が爆撃されました。 

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BBC

ウクライナは世界7位の小麦輸出国で、欧州の穀倉地帯と呼ばれています。
クライナの空の青と小麦の黄金色の美しい国旗はそれを象徴しています。
ウクライナの国土は71%が農地で、ドナウ川を通って輸出された穀物は昨年には200万トンに上っています。
これは海上ゆそう使えないためで、侵攻前までは60万トンにすぎませんでした。
河川運送は小型船のために効率が悪いのですが、今はこれとさらに効率の悪い陸上輸送しか道がありません。

レニとイズマイルはドナウ川を隔ててルーマニアと直近であるため、ルーマニアのクラウス・ヨハニス大統領は、「非常に近い」場所で攻撃があったと、ツイッターで非難し、「最近の状況悪化は、黒海の安全保障に深刻なリスクをもたらす。ウクライナの穀物輸送と、ひいては世界の食料安全保障にも、さらなる影響を及ぼす」と強く非難しています。

またウクライナはこの穀物倉庫爆撃を戦争犯罪だと認識して調査しているようです。

「 ウクライナ検事総長事務所は3日、7月以降激化しているロシア軍によるウクライナの農業インフラへの攻撃について、「戦争犯罪の可能性があるとして調査している」とロイターに対し明らかにした」
(ロイター8月4日)
ロシアによる穀物港への攻撃、ウクライナが戦争犯罪として調査(ロイター) - Yahoo!ニュース

現代においては、戦争にもルールがあるのです。
かつては非戦闘員大量虐殺以外なにものでもない原爆投下や都市空襲があったために、その反省から大戦後は戦争において「やっていいこと」と「悪いこと」の区別をつけるために「国際人道法」が生まれました。
軍事力に当たらない非戦闘員の市民、特に女性や子供、老人、病人が多数居住する住宅地、病院、集会場、宗教施設、文化施設を攻撃対象にすることは禁じられています。
この穀物倉庫は軍事目標とは言えません。
ロシアは、ウクライナ戦争における戦争犯罪法廷で厳しい処罰を受けねばなりません。

 

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ウクライナの国旗の背景に小麦畑。 の写真素材・画像素材. Image 189206162. (123rf.com)

ウクライナに平和と独立を

 

2023年8月 3日 (木)

チョンガル橋攻撃を受ける

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コメントにもいただきましたが、6月22日にチョンガル橋がストームシャドーの攻撃により破壊されました。

「ヘルソン、ウクライナ、6月23日 (AP) ― モスクワが一方的に併合したクリミアの知事代行は6月22日、ミサイルによる爆撃を受けた同半島と、ロシア軍占領下のウクライナ南部を繋ぐ道路の被害状況を視察した。
 ロシア軍は、占領下のウクライナ南部へルソン州と半島を繋ぐチョンガル橋を、主要補給路とみており、モスクワが任命したボロディーミル・サルド知事代行は、問題の橋は、英国がウクライナに供与した巡航ミサイル「ストームシャドー」の直撃を受けたと述べた」
(AP6月23日) 
クリミア半島の橋にミサイル チョンガル橋の路面に大穴が(AP通信) - Yahoo!ニュース

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産経

ロシア側も認めているように、落下したミサイルの破片からこれは英国が供与したストームシャドーによる攻撃です。
Su-24から発射したとみられます。
西側兵器を東側航空機から発射することは普通はできませんが、ウクライナは苦心惨憺してこのSu-24でそれを実現したようです。

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AP

ロシア側はポンツーン(臨時架橋)で代替しようとしているようです。
ポンツーン橋は木・鉄・鉄筋コンクリートなどで造った箱船をつなぎ合わせたものですが、しょせんは代替品なので重量物や車幅のある車両は通れません。
鉄道橋も破壊されたようですので、当分この補給線はつかえなくなります。

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ウクライナ軍は南部チョンハル橋付近のポンツーン橋に対処する=報道官 (ukrinform.jp)

「ポンツーン橋は固定橋の絶対的代替、完全な代わりではない。私たちは、それが橋の代わりを担う緊急手段であることを理解せねばならず、私たちはこの場合、アントニウシキー橋の経験を知っており、カホウカ水力発電所沿いの作業の経験も知っている」
(ウクライナフォーラム2023年8月1日 )

また7月24日には、ロシアの占領下にあるウクライナ南部クリミア半島の北部ジャンコイから南へ1.5キロメートルほど下ったノボステプネという場所にあるロシア軍用車両集積所がストームシャドーの攻撃を受けて破壊されました。
ここはウクライナ南部で戦闘を行っているロシア軍部隊の損傷した車両の修理工場でした。
特に集中的に狙っているのは、クリミア半島と南部をつなぐ補給路です。
橋を攻撃し続けているのは、これを切断すればクリミアは孤立するからで、陸上戦力によるロシア回廊分断のための第1攻撃軸 ザポリージャ州西部軸を助ける意味も持っています。

いままで破壊された橋を青線で囲ってみました。
上からヘルソンのアントノフ橋、今回のチョンハル橋、去年10月に大破したクリミア大橋です。

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BBC

去年8月までに、ウクライナ軍はロシアの補給路に当たる橋を次々破壊していました。
これらの橋は上図でもわかるように鉄道線路(点線) が走っていて、ロシア軍の戦車、歩兵戦闘車、砲弾などの重量物の重要な鉄道による兵站線でした。

「ヘルソン州でロシア軍がドニエプル川以西への補給に使う4つの橋のうち、最後の1つを12日に破壊したと明らかにした。一方、ゼレンスキー大統領は長期戦に備え、戒厳令と総動員令の延長を議会に求めた。
英国防省によるとロシア軍は渡し船などで補給を続けているという。同省は、ロシア軍が今後修復に成功しても、橋が「重要な弱点であり続ける」と指摘した。
ロイター通信によると、ヘルソンの奪回を目指すウクライナ軍の広報担当者は12日、南部にあるロシア軍の補給路はほぼ全て攻撃可能だとも語っていた」
(日経2022年8月14日)
ウクライナ軍、南部でさらに橋を破壊 ロシアの補給妨害 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

ウクライナはこのロシアの弱い脇腹を撃ち続けることでしょう。

 

 

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ロシア兵を待つのは「死のみ」 ウクライナ兵、疲弊も前進誓う 写真15枚 国際ニュース:AFPBB News
ウクライナに平和と独立を

 

※お知らせ
来週8月7日から9日までの3日間夏休みを頂戴いたします。
このメチャクチャな熱波にジジィは息も絶え絶えです(大げさ)。
再開は、10日(木)からとなります。

 

 

2023年8月 2日 (水)

まだ「汚染水」なんて言っている立憲長妻氏

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やっぱり言っちゃっていますね。まさかとは思いましたが、立憲政務会長・長妻氏は「処理水放出」ではなくて「汚染水」だそうです。
読売がこの長妻発言を一報した時には、いくらなんでもIAEAが正式に認めた報告書を否定するようなことまで言うはずがないという淡い期待はあったんですがね。

「長妻政調会長は20日の記者会見で、処理水放出について「風評被害を払拭する努力が足りない」として反対する考えを示した。処理水の安全性は「科学的には決着がついている」として認める一方、中国などが使用する「汚染水」という表現を使うなど、ちぐはぐな発言がみられた」
(読売7月21乳)
立憲民主党「処理水」巡り迷走、一部左派が韓国野党に同調…対立懸念で厳格処分できず : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

長沼昭政務調査会長記者会見(7月20日)の20分18秒から確認して下さい。
迷うふうもなくこのヒト、「汚染水」と言っています。
【動画配信】長妻昭政務調査会長記者会見 7月20日(木)10:30~ - 立憲民主党 (cdp-japan.jp) 

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立憲HP

そもそも、あんたらが政権を握っていたときに起きた原発事故でしょうが、長妻氏は事故時には閣僚でしたから他人事のような口はきかせません。
民主党は他の政党と違って、批評家的立場でいることができない立場なのです。
旧民主党系政党は、福島第1の廃炉工程に責任をもった発言する道義的義務があります。
いま、処理水タンク群が満タンでもう余地がないことは政治家なら誰もが知っているはずで、そしてそれが廃炉作業のネックになっていることも充分知り得ているはずです。

にもかかわらず、あいもかわらず立憲は幼稚です。
処理水の海洋放出に対して、韓国の「共に民主党」と韓国で共同行動をした阿部議員や、それに署名した議員が4名も出てしまったのです。
パリではしゃぐより、もっと深刻な不祥事です。
しかも署名した4議員はおとがめなし。韓国まで行ってデモまでした阿部氏は口頭注意。
この5人の議員は、日韓で「共に民主党」作りたいみたいです。

その「共に民主党」はこんなことを言っています。

「民主党のクォン・チルスン首席報道官は31日のブリーフィングで、「書簡を通じて福島汚染水の海洋放出に対する大韓民国国民の憂慮と反対の立場を伝えた」とし、「特に、李代表は日本が検証されていない汚○水を放流しようとする海は『未来に生まれる子供たちの海であり、地球生命みんなの海』だという点を想起させ、真剣な考慮を促した」と明らかにした。
民主党によると、李代表は書簡で「地理的に近接し、歴史的にも密接な韓日関係がいつにも増して危機に直面しているようで残念だ」と書いた」
(中央日報8月1日)
韓国最大野党代表、岸田首相に書簡…「汚染水の放出を見送ってほしい」 | Joongang Ilbo | 中央日報 (joins.com) 

なんか日本が「未来に生まれてくる子供たちの海」を汚染させているようです(笑)。
うーん、地球人類の敵になるのもいいかも。
この「立憲ファイブ」は、こんなヨタ言っている極左政党とデモしたり、署名したりしているのですから処置なしです。
それにしても一介の野党が仰々しく「首席報道官」と名乗るのですから、よほどムン政権時代は甘い夢の時期だったのですね。
アチラは政権の夢から醒めず、コチラは忘れたふりをして無責任なことを言い散らす、やれやれ。

そしてトリは、大幹部の長妻政調会長の「汚染水」発言ですから呆れたものです。
長妻氏は「風評被害を払拭する努力がたりない」なんて言っていますが、その風評を流しているのはあんたの党でしょうが。

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読売

「処理水放出を巡っては、立民の衆院議員5人を含む野党議員が12日、韓国の左派系最大野党「共に民主党」の議員らと共同声明を出し、このうち立民の阿部知子氏は、日本外国特派員協会での記者会見にも同席した。共同声明は、放出を「海洋環境の汚染につながることは必至」などとしている。国際原子力機関(IAEA)が人や環境への影響は「無視できるレベル」とした調査報告書に照らしても、根拠のない内容だ」
(読売前掲)

7月4日に、国際原子力機関(IAEA)が最終的な報告書を公表しています。
IAEAは、5月29日から6月2日までアルゼンチン、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、韓国、マーシャル諸島、ロシア、米国、英国、ベトナム出身の11名の国際専門家からなる調査団を福島に派遣して総括的な調査を行ないました。
そのうえに立って言い放しではなく、IAEAは海洋放出作業の最後まで監視する責任を負うとして「最後の一滴まで監視する」とまで述べています。
つまりこの海洋放出をIAEAがただ承認しただけではなく、その工程に責任を持つという意味です。

したがって、この報告書はこの処理水海洋放出問題の科学的なゴールドスタンダードです。
長妻氏はこの報告書に眼を通してから「汚染水」などという悪質な表現をしたのでしょうか。
「汚染水」とは、処理せずにそのまま流すという意味だと知って言っているのでしょうか。
それともたんなる非科学的無知だというだけのことでしょか。

■1.IAEA包括報告書の要旨
1)包括的な評価に基づき、IAEAは、ALPS処理水の海洋放出へのアプローチ、並びに東電、原子力規制委員会及び日本政府による関係する活動は関連する国際的な安全基準に整合的であると結論付けた。
2)包括的な評価に基づき、IAEAは、東電が現在計画しているALPS処理水の海洋放出が人及び環境に与える放射線の影響は無視できるものと結論付けた。
2.また、IAEAは、同要旨の中で、放出前、放出中及び放出後もALPS処理水の放出に関し日本に関与することにコミットし、追加的レビュー及びモニタリングが継続予定であることは、国際社会に追加的な透明性及び安心を提供するものであると述べています。
経済産業省2023年7月4日
IAEAが東京電力福島第一原発におけるALPS処理水の安全性レビューに関する包括報告書を公表しました (METI/経済産業省)
中国、処理水の海洋放出「IAEAは支持するな」だってさ: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

IAEAは読み間違いする余地なく、日本の一連の処理は国際的な安全基準と整合的で、処理水の海洋放出は人及び環境に与える放射線の影響は無視できるものと結論付けています。
これに反していまだ「汚染水」といい続けることは、ALPS(多核種除去設備 )で放射性物質を除去することなく、そのまま放出していると言っていることです。
非科学性の極みです。
余人ならぬ民主党だけは言ってはならない。

一方、中国は外交カードで使いたいのでまだ反対しています。

「中国外務省の汪文斌副報道局長は7日、原発処理水放出を巡って言葉を強めた。中国メディアは、大半の放射性物質を取り除いた「処理水」ではなく、「核汚染水」と呼んでおり、批判的な報道を連日続けている。汪氏は「海は世界の公共財産だ、日本の下水道ではない」といった、感情的な発言もいとわない」
(朝日6月17日)
「海は日本の下水道ではない」 原発処理水放出、「安全」認めぬ中国:朝日新聞デジタル (asahi.com)

日本が海洋を「核汚染水の下水道にしている」のだそうです。
この熱波で頭のネジが弾けたのでしょうか。

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読売

「日本政府は、中国の原子力エネルギーに関する年鑑や原発事業者の報告書を基に資料を作成した。それによると、2020年に浙江省・秦山第三原発は約143兆ベクレル、21年に広東省・陽江原発は約112兆ベクレル、福建省・寧徳原発は約102兆ベクレル、遼寧省・紅沿河原発は約90兆ベクレルのトリチウムを放出していた。
東電は、福島第一原発の年間放出総量を22兆ベクレル以下に抑える計画で、放出後のトリチウムの濃度は、世界保健機関(WHO)などの基準をはるかに下回るとしている」
(読売6月21日)
中国の複数原発がトリチウム放出、福島「処理水」の最大6・5倍…周辺国に説明なしか : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

福島第1からの処理水に含まれるトリチウム濃度は年間2.2兆ベクレル、方や秦山第三原発1基だけで143兆ベクレルですからなんと65倍です。
ケタが違ううえに、海洋放出している原発だけで4ツもありますから、あわせれば447兆ベクレル。
つまりは203倍です。
こんな国に「海洋を核汚染水の下水道としている」なんていわれたくはないですな。

悪罵を垂れるだけではなく、対抗措置として日本の農産物の輸入を制限するそうです。

「中国税関総署は7日、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出について「高度の警戒を保つ」とする談話を発表した。「事態の進展を見て、適時、一切の必要な措置を講じて中国消費者の食卓の安全を確保する」とも強調し、海洋放出が実行に移されれば日本からの食品輸入規制を強化することを示唆した」
(産経7月7日9中国、食品輸入規制の強化示唆 日本の処理水海洋放出で - 産経ニュース (sankei.com)

食品の輸入禁止は10都道府県で、福島県、新潟県、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、長野県、東京都です。
福島原発のALPS処理水排出に関し、日本からの輸入食品への検査強化示唆(中国、日本) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)
おいおい、群馬、長野、栃木は内陸で海なし県、新潟は北陸、このどこが「核汚染水」と関係あるのでしょうかね。
ただの嫌がらせです。
こんな外交的プロパガンダに貿易を使うと、金輪際CTTPには入れませんよ。
入れる気もないが。

日本では「汚染水」という言い方で中国と同調しているのは、立憲以外はお約束の共産党、社民党、れいわといったところです。
これらの政党は、風評被害に加担している政党として厳しく批判されるべきです。

処理水の放出について「議論が足りない」と批判するのは誤りです。
延々と経産省のトリチウム水タスクフォースや小委員会で、専門家が処理方法について議論を積み重ねてきています。
そういうことを言うのは知らないだけのこと。
そしてもういいかげん漁業者をネタにしないでいただきたい。

漁業者が心配しているのは風評被害ですから、「汚染水」などと平気で言う立憲は風評を煽る立場ではありませんか。
福島県漁連が海洋放出に反対なわけ: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

『福島原発事故自己調査報告』という真摯な一冊をまとめた開沼博氏はこう述べています。

「処理水に関する正確な情報の共有は確実に進んでいる。だが、風評被害は起こり得る。処理水を巡るデマに対し、一番のインフルエンサーは政治家だ。政治が前面に立ち、継続的な情報発信を通じて、偏った考えが固定化されることを避けてほしい。
政府と東電は27年に福島県漁連に対し「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」と伝えた。そのため、福島の漁業者の対応に焦点が当たっているが、漁業者に「決定権」を押し付けてはいけない。漁業者は処理水が人や環境に害がないことを理解しても、放出に反対する姿勢を崩すことはできない状況だ。政治の責任で放出を決めねばならない」
(産経7月4日)
「デマに科学的な反論を」処理水放出 東京大大学院 開沼博准教授 - 産経ニュース (sankei.com)

長妻氏よ、この福島県人の言うことを拳拳服膺しなさい。

 

 

2023年8月 1日 (火)

ウクライナの反攻が失敗したって?

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反攻は既に始まっているが、想像以上に遅れていると、NHKはこう報じています。

「反転攻勢がいつ開始したかについてウクライナ側はあえて曖味にしていましたが、ロシア国防省が、ちょうど1か月前の6月5日、前の日に東部ドネツク州でウクライナ側が大規模な攻撃を始めたと発表し、その後のゼレンスキー大統領の発言などから、6月上旬に始まったというのがおおかたの見方です。
ウクライナ国防省は、6月19日までに、ドネツク州や南部ザポリージャ州であわせて8つの集落を奪還したと発表しました。しかし、その後、目立った成果は発表されていません。
フィナンシャル・タイムズは、「1か月前に始まった反転攻勢で、ウクライナは、ロシアの強固な防御ラインに穴を開けることに苦戦してきた。ウクライナ軍が直ちに大きく前進するという、西側の一部が抱いていた期待はしぼんでいる」と伝えています」
(NHK7月5日)
ウクライナ反転攻勢「1か月」 地形がウクライナ軍の前進を阻む - キャッチ!世界のトップニュース - NHK

このような苦戦を伝える報じ方は、米国に現れ始めています。
ウオール・ストリート・ジャーナルはこう書いています。

「ウクライナが大規模な反攻を開始したとき、西側の軍事関係者は、キエフ(キーウ)がロシア軍を撃退するために必要な訓練や砲弾から戦闘機までの武器をすべて持っていないことを知っていた。それでも、彼らはウクライナの勇気と機知に期待した。しかし、ウクライナ軍の大幅な前進はほぼ阻止された」

この書き方は誤解を招きますね。
ロシアはウクライナの反攻に対する防御を固める充分な時間がありました。
その間、森林に隠れて待ち受け、その前に地雷源を敷いて待ち構えていたわけです。
NHKは、ニューヨークタイムズの衛星写真を紹介しています。

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NHK

「ニューヨーク・タイムズは、衛星写真をもとに、ザポリージャ州でウクライナ軍がこのように平野や畑を進んでいると分析しています。開けた大地が広がっていて、ウクライナ軍の兵士や軍用車両が上空から、いわば丸見えになっているのです。
本来ならば、ウクライナ軍は戦闘機による上空からの支援を受けながら前進したいところですが、F16戦闘機の供与やパイロットの訓練は遅れています。平野にも、ところどころに林や森がありますが、そこにはロシア軍の兵士や戦車が待ち構えているような状況です。こうした中でウクライナ軍は少しずつ前進していくしかないものと見られています」
(NHK前掲)

ウクライナが米国にクラスター弾の供給を切望したのは、このロシア軍陣地前の地雷源を効率よく広範囲に破壊するためでした。
機関銃で撃ちまくって来る中で、一個一個掘るわけにはいかないでしょう。
ウクライナ軍が自国民がいる民間地域で使う道理がない。
にもかかわらず、「ロシア軍報復でクラスター弾使用」などという報道をしてしまっています。
たとえば朝日はこんなかんじ。

「国際的に禁止の動きがある「クラスター弾」をウクライナに供与するとした米国の決定をめぐり、ロシアのショイグ国防相が11日、インタビューに「ウクライナに対して同様の破壊手段で報復せざるを得ない」と述べた」
(朝日7月12日)
ロシア側「同様の手段で報復」 米のクラスター弾供与決定めぐり発言 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

ロシアのプロパガンダをそのまま報じなさんな。
なにが報復ですか。ロシア軍はとっくに使いまくっていますよ、しかも民間地域で。

また反転攻勢の始まった当初に、ロシア軍はマニューバ防御で待ち構えていたために、ウクライナ軍は大敗した、反攻作戦大失敗と言っているロシアンラバーもいました。
しかし成功したのは初めの時だけで、直ちに戦術を変更しました。
ウクライナ軍はロシアの戦法を知り尽くしています。
とうぜんでしょう。元は同じソ連軍でしたから。

逆にネガティブなことばかり言っている人たちにお聞きしたいものですが、西側の兵器を供与されたウクライナ軍が一気にロシア軍を海に突き落とすとでも考えていたのでしょうか。
わきゃないでしょう。米国とNATOの供与は遅れ続けてきました。

戦車の供与は遅れ、F-16の供与はさらに遅れに遅れてこの秋にも間に合わないでしょう。
どうしてゼレンスキーがNATO諸国巡りをせねばならなかったのでしょうか。

それは反転攻勢に必要な武器が不足していたからです。

とくにバイデンの恐露病は深刻でした。
米国は核戦争を恐れる余り、武器供与の逐次投入をしてしまいました。
せめて去年の暮れに戦車と戦闘機の供与を決めておけば、この反攻に間に合ったのですが。

ですからウクライナ軍は西側の戦車だけ与えられても、航空優勢がない、砲弾が不足しているという苦しい状況で、反攻作戦に踏み切らざるをえなかったのです。
ゼレンスキーが反攻時期に口を濁していたのはそのせいです。
もし米軍が同じ攻勢をかけるとすれば、徹底した空爆と砲撃をした後に、丁寧に地雷源を啓開してからレパルトとブラッドレーを前進させたことでしょう。

当然のことですが、ウクライナだって、そういう定石を踏みたかったのですよ。
ゼレンスキーのG7時のバイデン会談の目的は表敬なんかじゃありません。
渋る米国に、F-16の供与を直談判したのです。

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朝日

バイデン米大統領が21日、主要7カ国(G7)サミットにあわせて来日したウクライナゼレンスキー大統領と広島市内で会談した。米政権は侵攻の長期化も見据え、欧州からウクライナへの米F16戦闘機の提供を認める方針に転じ、今回のG7で欧州首脳らに伝達している。バイデン氏はゼレンスキー氏にも、支援を続ける意思を強調した」
(朝日2023年5月21日)
バイデン氏がゼレンスキー氏と会談、支援強調 F16供与で戦局は?:朝日新聞デジタル (asahi.com)

ウクライナは本来ならば、F-16が到着し、パイロットの訓練も行き渡り、砲弾も充分備蓄したあたりで反攻をはじめたかったはずです。
しかし政治的状況が万の準備を許しませんでした。
米国メディアから思ったほど前進しないという無責任な批評が出るのを聞いて、ウクライナ軍はバイデンがF-16を渋ったツケをオレたちの生命で支払っているんだと内心思ったことでしょうね。

ウクライナ軍総司令官・ヴァレニー・ザルジニー将軍は控えめにこう述べています。

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ワシントンポスト


「ザルジニーは、彼の最大の西側支援者は制空戦闘機なしで攻撃を開始することは決してないだろうが、ウクライナはまだ近代的な戦闘機を受け取っていないが、占領中のロシア人から領土を急速に取り戻すことが期待されている。
つい最近約束されたアメリカ製のF-16の供与は、最良のシナリオでも秋まで到着する可能性は低いだろう。
ウクライナ軍は限られた資源のために、ロシアから時々10倍に撃たれている」
ウクライナの最高将軍、ヴァレリー・ザルジニーは、砲弾、飛行機、そして忍耐を望んでいます-ワシントンポスト (washingtonpost.com)

またウクライナ軍が反攻作戦で何を目指しているのか、ザルジニー司令官は率直にこう語っています。

「ロシア軍は、ロシア本土と、ロシアが2014年に不法に併合されたクリミア半島の間に陸路を確立した。そのリンクを断ち切ることは、ロシアの軍隊に補給する能力に大きな打撃を与えるだろう」
(ワシントンポスト前掲)

サポリージャ州の線で、ロシア内地とクリミアを結ぶロシア回廊を断ち切って分断することです。

「この陸の補給路は、ロシア本土(ロストフ)~マリウポリ~メリトポリ~ヘルソン州~クリミア半島の経路とその逆の経路のことで、これを遮断してしまうと、ザポリージャ州とヘルソン州は兵站的にロシア本土やクリミア半島から遮断されてしまう。
つまり、この2州に存在するロシア軍は兵站的に完全に分断され孤立し、敗北せざるを得なくなるのだ。
だからウクライナ軍の主作戦はザポリージャ正面なのである」
渡部悦和 2023年7月27日)
緒戦の失敗を猛省、ウクライナ軍がいよいよ反転攻勢第2弾 後方の兵站基地や砲兵を効率よく叩き、正面攻勢へ(3/8) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

渡部悦和元陸将の分析を基にしてみると、ウクライナ軍の反攻作戦は主に3方向(攻撃軸といいます)から開始されました。

・第1攻撃軸 トクマク軸(ザポリージャ州西部軸)
・第2攻撃軸 ベリカノボシルク軸(ザポリージャ・ドネツク州境軸)
・第3攻撃軸 バフムト軸

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渡部悦和氏による

重要度には差があって、かつてアゾフ連隊が死守した南部マウリポリとベルシャンスクへ向かう第1軸と、メリトポリへと向かう第2軸が反転攻勢の最も重要な作戦です。
バフムトへの攻撃軸は、ロシア軍を拡散させて南部に戦力を集中させていための支攻です。

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BBC

そしてこの反攻には2つのフェーズで成り立っています。

・フェーズ1は、敵の陣地や配備の弱点を探る攻撃。
・フェーズ2は、主力の本格反攻。

「ウクライナの主作戦正面における反転攻勢を大きく段階区分すると「フェーズ1:一部の部隊による攻撃と阻止作戦」、「フェーズ2:主力による本格的な攻撃」であり、現在は「フェーズ1」の段階である。
フェーズ1における「一部の部隊による攻撃」の目的は、ロシア軍の陣地・配備の弱点を見出すことだ。
ウクライナ軍は一部の部隊(第47機械化旅団、第65機械化旅団)によるトクマク軸での攻撃を試みたが失敗した。この攻撃は6月初旬に開始され、約10日間継続した。
この攻撃が成功しそうにないと分かると、ウクライナ軍は阻止作戦に移行した」
(渡部前掲)

つまり現時点までの戦いは、このフェーズ1の段階にすぎず、ロシア軍陣地や配備を探り、どのような戦術で待ち構えているのかを探るためのものだったのです。
この段階で失敗だ成功だ、レオパルト戦車が何台破壊された、一日何メートルしか前進していないといっても意味がないのです。
果ては、ここで朝鮮半島型和平などを提唱するに至ってまったくの見当違いです。
朝鮮半島型和平とは、占領地をそのままロシアに差し出すことに等しいからです。
ロシアの侵略に報酬を与えることです。
「和平」なんてまだまだ先のこと、もう少し落ち着いてウクライナの奮闘ぶりを見ましょう。
ここで妙に悲観的になっては、ロシアの思うツボですよ。

 

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ウクライナのロシア戦争、ウクライナの兵士がバッターフィールドにシルエットとウクライナの国旗
ウクライナに平和と独立を



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