台湾でタローが吠えました。
わけのわからないリベラルもどきの党に溶解していく自民党で、ひさしぶりの保守らしいひと吠えでした。
パチパチ。
蔡総統、自民・麻生副総裁と会談 台湾への支持に感謝(中央社フォーカス台湾) - Yahoo!ニュース
【台北=矢板明夫】9日付の台湾各紙は、訪台した自民党の麻生太郎副総裁が8日の講演で、日本や台湾、米国などが中国の軍事的圧力に対抗するために「戦う覚悟」を持つことが地域の抑止力になると強調したことを大きく取り上げた。
与党、民主進歩党に近い大手紙、自由時報は「台湾海峡の安全を守る決意を示す」との見出しを掲げ、1面トップで麻生氏の発言を紹介、2面と3面にも関連記事を掲載した。「麻生氏の今回の台湾訪問で、インド太平洋地域におけるわれわれの協力の方向性が示された」との頼清徳副総統の言葉を紹介した」
(産経8月9日)
麻生氏「戦う覚悟」発言、台湾で波紋 与党系と親中派で賛否両論 - 産経ニュース (sankei.c
私は自民党とは、LGBTと移民推進、はたまた増税をする党かと思っていました。
こんな党には未練はありません。いままで他に選択肢がないからという消極的支持でしたが、もう愛想が尽きかけています。
そう思うのは私だけではないとみえて、自民支持率の激落ちぶりはすさまじく、なんと時事通信の世論調査で政党支持率は自民党が21.1%で、いまや生きながら葬られようととしている岸田政権支持率26.6%と合わせると、青木率47.7%というレッドゾーンに突入してしまいました。
青木率は科学的根拠はない経験則ですが、50%を切ると政権運営が困難と判定されますから、そうとうに岸田政権は修復不可能なまでに国民から見放されつつあるのは間違いありません。
ちなみに歴代政権をみると、民主党に政権を奪われた麻生政権末期で39%、カン政権などわずか28%、民主党政権末期の野田政権は34%です。
50%を切ると政権が… 「参院のドン」の法則、歴代内閣で見ると:朝日新聞デジタル (asahi.com)
いま解散総選挙などやったら、与党の改選議席数×青木率=当該国政選挙での与党の獲得議席数ですから大敗は確定的で、この時期になるとメディアが定番の次の総理候補世論調査をやって囃し立てる時期になります。
どーでもいいですが、これまた定番で1位が石破氏(笑)。どーしていつもいつもゲルなんでしょうか。もう終わった人ですよ。
2位が河野ジュニア(中笑)、3位が小泉ジュニア(大笑)だそうですが、まぁぜったいにこの人たちがなることはないでしょう。
いずれにしても岸田降ろしの政局の季節に突入したことは確かで、それぞれ党の大物を気取る諸兄の発言は、当然この政局を見てのこととなっているはずです。
その意味でこの麻生氏の「台湾を守る覚悟」発言は、広い意味で台湾を防衛の責務とした安倍外交の台湾現地での宣言であり、狭い意味では、岸田政権権となって急速に遠心力が働いている旧岩盤自民支持層に向けたものと考えていいでしょう。
まず分かりやすい反応は、例によって中国から始まりました。
これが実に中国らしく、いきなり戦闘機を飛ばして威嚇することから始めます。
法の支配を大事にするフツーの国は、こんなことはしないんですが。
「台湾国防部(国防省)は7日、中国の軍用機延べ24機が同日午前6時(日本時間同7時)までの24時間に台湾周辺で活動したと発表した。うち12機が台湾海峡の暗黙の「休戦ライン」である中間線を越えたり、台湾の防空識別圏に進入したりした。
軍用機は戦闘機「殲16」や「殲10」など。軍艦延べ7隻も活動した。台湾国防部は「台湾軍が厳密に監視し対処した」と強調した」
(東京8月10日)
台湾周辺に中国軍33機 麻生氏訪問に反発か:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
未確認情報ですが、台湾メディアのsohuはこんな記事を流しています。
「麻生氏が台湾に到着した同日、我が国の軍用機が台湾周辺に現れ、いわゆるセンターラインの越境を繰り返した。
台湾国防省の統計によれば、我が国の航空機と軍艦は台湾島で24回もの出撃を行い、うち12回はセンターラインの越境を行った。
とりわけ2機の戦闘機Su-30(スホーイ30)は注目を集める。経路を見ると2機のSu-30は麻生氏の特別機により近い経路をとっており、これは2機のSu-30が特別機を射程距離に入れていた可能性があることを意味する」
SOHU 2023年8月9日 『前日本首相专机刚进入台岛,我方多架战机就越过中线,不排除击落 』)
_Taiwan Province_ activities_sohu.com
真偽は定かではありませんが、中国ならこのくらいのことはやってのけるでしょう。
実に分かりやすい反応で、外交儀礼も国際慣習もかなぐり捨てて元首相を軍用機で脅迫する、実にすがすがしいまでの悪党ヅラです。
一方わが国のヒダリサイドの方々のトンチンカンな言動は無視するとしますが、内容的には「専守防衛からはずれる」「竹槍でひとりで戦え」という昭和の香り漂うもので、いまでもこんなていどで批判したと思えるレベルです。
《あなたが真っ先に台湾海峡で戦えば?》…麻生太郎氏「戦う覚悟」発言に反論相次ぐ|日刊ゲンダイDIGITAL (nikkan-gendai.com)
日刊ゲンダイならいつものポジショントークですから笑って済ませられますが、元防衛大臣の肩書で出てくる岩屋毅氏は、ある意味で党内で旗幟を鮮明にしたと言えるかもしれません。
岩屋氏は議員連盟「石橋湛山研究会」でこんなことを言っていました。
毎日新聞が、コンナ良心的な政治家も自民にはいるんだぞという紹介をしていたのが微笑ましいかぎりです。
毎日や東京から褒められれば褒められるほど、自民支持層はどっちらけるんですが、ま、いいか。
岩屋毅・前防衛相に聞く「敵基地攻撃能力」を持つ議論は論理の飛躍だ | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)
「湛山はどの民族も尊重すべきだとの言論を一貫して続け、博愛主義的なところがあった。防衛の仕事では「いざ戦わば」という話になりがちだが、大事なことはいかに戦わないようにするかだ。その思いで防衛交流をやらなきゃいけない。昨年の防衛力強化の議論は危機感をあおって防衛費の増額につなげるという冷静さを欠いたものだった。台湾海峡の安定は極めて重要だが、「台湾有事」などと軽々に言うべきではない。
ある意味で湛山が警告した戦前と近い空気があると感じている。空気ができていても、勇気を持ってものを言う人がいないといけない。湛山は終戦後「日中米ソ平和同盟」を作ろうと言って笑われた。すぐにできると思うのは幻想かもしれないが、そういう世界を希求して困難を乗り越えていく思いが必要だと思う」
(毎日8月12日)
石橋湛山研究会:なぜ今、石橋湛山か 「信念貫き、もの申す人必要」 6月発足・超党派研究会、岩屋共同代表に聞く | 毎日新聞
中国は麻生訪台に対して、このように言っています。
「9日、在日中国大使館は「身の程知らずで、でたらめを言っている」と、麻生氏の発言に激しく反発した。加えて、こう牽制している。
「日本の一部の人間が執拗に中国の内政と日本の安全保障を結びつけることは、日本を誤った道に連れ込むことになる」
中国外務省も「台湾海峡の緊迫した状況を誇張し、対立をあおり、中国の内政に乱暴に干渉した」と、同様に批判を強めた」
(TBS2023年8月13日)
異例の台湾訪問 麻生副総裁「戦う覚悟」発言の真意 中国の反発も“狙い通り”|ニフティニュース (nifty.com)
他の国をつかまえて「身の程知らず」ですか、なるほどなるほど。
小国は黙って震えて見ておれ、ということですな。
ヤクザ屋さんみたいな言い方です。
日本は自国の安全保障と「中国の内政を結びつけるな」ですか、なるほどなるほど。
台湾を侵攻しても、それは「中国内政」だから黙って引っ込んでおれ、というわけですか。
ウクライナがロシアの一部であり、占領地は併合したので「神聖なロシアの国土」だという言いぐさにそっくりです。
しかしこのような強硬な反応が返ってくるのは、麻生氏の思うツボで、こう講演で述べています。
「台湾海峡の安定のために、それ(防衛力)を使うという明確な意思を相手に伝える。それが『抑止力』になる」
(TBS前掲)
はい、伝わらなければ抑止にはならないのです。
ちなみに岩屋氏は「防衛の仕事は、大事なことはいかに戦わないようにするかだ」が信条だそうですが、逆です。
戦わねばならない時に戦う準備と覚悟があるということを示すことが、「防衛の仕事」なのです。
外交と防衛は矛盾したものではなく、外交は軍事力を持っているが故に有効だということが安全保障のイロハです。
どーでもいいですが、岩谷氏は麻生派です。
彼はボスの国際的活動にまっこうから楯突いたわけで、なかなか筋金入りの御仁ではあります。
岩屋氏は安倍政権のみならず、歴代防衛大臣としてはボトムでした。
この人物ほど防衛大臣をやらせてはいけない人だったはずですが、安倍氏のミスでした。
岩屋という人物は、国防という難しい分野の専門知識をもっていない、防衛大臣という要責の意味がまるでわかっていない、だから大臣としてしてはいけない外国への譲歩が「外交」だと勘違いしてている、というまことに困った人でした。
こういうタイプは自民党に大勢いますが、選挙区から出してはいけません。
ところで、昔々、ある所に、岩屋という防衛大臣がおりましたとさ。
彼はいろいろとやらかしてくれています。
[岩屋の事件簿その1]
まずひとつめは、2018年4月には、宮古島に駐屯する陸自部隊に保管してあった弾薬・ミサイル類を、地元反基地団体の抗議で撤去して、謝罪していました。
おいおいです。宮古警備隊は対艦ミサイル部隊ですから、ミサイル置かなきゃ一体なにしに行ったんですか。
「岩屋毅防衛相は2日の記者会見で、陸上自衛隊宮古島駐屯地(沖縄県宮古島市)の迫撃砲や中距離多目的ミサイルの弾薬について、島外に搬出するよう指示したことを明かした。地元への十分な説明がないまま弾薬を保管していたことに伴う措置で、岩屋氏は『不十分だった。おわびしたい』と謝罪した。
防衛省は今後、島内で駐屯地とは別の場所に、今年度末にも配備される地対空・地対艦ミサイル部隊の弾薬庫を建設する予定。完成し次第、島外に撤去した迫撃砲などの弾薬も保管する方針だ。ただ、使用する警備部隊との間に距離が生じることから、初動対処の任務に影響が生じることは避けられない」
(産経 2018年4月2日)
さぞ宮古警備隊の隊員たちはやってられんわ、という気分になったことでありましょう。
軍事挑発を繰り返す中国との最前線に派遣されてみれば、上司が地元の左翼政党の抗議は正しい、武器・弾薬は撤去するというのですから、この大臣どちらの味方なのかと嘆いたことでありましょう。
まず間違いなく、弾薬庫がない基地を命じた世界唯一の防衛大臣であることは間違いありません。
岩屋という人は、防衛大臣でありながら宮古島に対艦ミサイル部隊を置く軍事的意味を致命的に理解できてていないのです。
[岩屋の事件簿その2]
岩屋氏は2019年、日韓防衛大臣会談をやり、唯々諾々と韓国の言い分を丸ごと聞いてしまいました。
あろうことかムン政権の韓国国防相に、日本は国際法を守れなんて言わしてしまっています。
「チョン長官はこの日の会談を終えた後、記者たちと会って、「日本の防衛相と日韓の防衛協力についてよい会談となった」とし「哨戒機近接脅威飛行関連しても虚心坦懐に率直な意見を交わした」と述べた。そして「これから両国が緊密に協力しながら、今後このようなことが再発しないように発展させていこうのに意見を一致させた」と説明した。
この日の会談でチョン長官は、岩屋防衛相に韓国艦艇の射撃統制レーダー照射について明白な根拠があることを説明した後、日本哨戒機の飛行のための国際法遵守を強調した。問題の本質は海上自衛隊の哨戒機による近接脅威飛行形態にあるという理由からだ。
チョン長官は続いて「韓国と日本は、隣接する友好国として国際社会で起こるすべてのことについて緊密に協力して協力をする必要がある」とし「協力して発展させてべきという意見の一致を見た」と話した」
(中央日報 2019年6月1日)
韓国政府の宣伝画像。もちろん合成写真
こんなことを面と向かって韓国に言わせるくらいなら、日韓防衛大臣会談などやる必要はありません。
というか、防衛大臣などいりません。
当時のムン政権は、極度の反日小児病患者の国でした。
日韓関係の条約や取り決めを一方的に廃棄するわ、慰安婦合意はちゃぶ台返しするわ、果てはこのレーダー照射事件のように軍事的挑発までするわ、と話にもならないために、日本は「信頼関係自体が崩壊しています。こんな時になにを話あっても無駄ですから、そちらの頭が冷えるまで接触しません」と言っていました。
それを米国がいらんお節介で中に入って対話を呼びかけてしまい、シャングリラ会合で日韓防衛大臣を開くことにしたのですが、日本は会談のテーマを対北一本にしぼって、それ以外はテーブルに乗せること自体を拒否すべきでした。
ここはふざけるなといって、机のひとつも叩いてから北との連携について話合うところですが、この腑抜け男は聞き役に徹してしまったのですから論外です。
中央日報
「また「隣接した友好国として、国際社会で起こっているすべての問題について緊密に協力する必要性がある。両国関係が改善できるよう積極的に努力していく」と述べて、北朝鮮問題をはじめさまざまな問題で連携することを確認したとみられます。
これについて韓国の連合ニュースは「出口のない攻防戦を繰り広げ、防衛協力を全面的に中断してきた両国が、少なくとも対話と交流正常化に向けた糸口を確保したと評価される」と肯定的に伝えています」
(NHK 2019年6月1日)
結果、この日韓防衛大臣会合を、「対話と交流正常化に向けた糸口を確保した」と韓国の思惑どおりにしてしまいました。
これがこの男の考える「外交」です。
[岩屋の事件簿その3]
このような無能というのもおこがましい仕事をしていた岩屋氏は、昨今、またぞろこんなことを言ってアチラ系メディアの寵児になっているようです。
「そもそも「敵基地攻撃能力」との言い方は、わが国の防衛政策を語る言葉としてふさわしくない。攻撃を受けた際に、これを防ぐに他に手段がなくやむを得ない場合は反撃せざるを得ないわけだから「反撃能力」と称するのは理解できる。 反撃能力の対象に「相手国の指揮統制機能等も含む」と明記したことは、いたずらに周辺国を刺激するだけでなく、対処のための準備を促し、軍拡競争につながる恐れがある。(略)専守防衛は日本の専売特許ではなく、国際法、国連憲章の精神だ。反撃は許されるが、先制攻撃は許されない。それを変える必要はないし、変えてはならない」(東京 2022年6月3日)防衛費、最初にGDP比2%目標、適切ではない 自民・岩屋毅・元防衛相:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
この岩屋氏の「反撃能力確保は軍拡につながるからダメ」という主張は、日刊ゲンダイがすぐに取り上げて、立憲や共産党は他ならぬ安倍が任命した元防衛大臣が言っているぞと拡散しました。
篠田英朗氏は即座にツイートでこう述べています。
「専守防衛は日本の専売特許ではなく、国際法、国連憲章の精神」。国際法に対する「憲法優越」説「一択」でなくなってきたとしたら、時代の変化を評価したい。
ただし、「専守防衛」は日本人が創作した概念で、国際法には存在しないよ」
(2022年6月5日)
篠田英朗 Twitter
そのとおりです。「専守防衛」というのは世界広しといえどわが日本だけの概念で、どの国にも通用しません。
こういう寝ぼけたことを、ウクライナ侵略の真っ最中に言えるという岩谷氏の「強靱な」神経に感嘆します。
ところで、岩屋氏が崇拝する石橋は、戦争へとなだれ込もうとする軍部の時代と、敗戦後の武装解除された時代の政治家です。
ある意味、特殊な時代背景を背負った政治家なのです。それを時空を超越させて普遍化してはいけません。
まして現代の日本は侵略の危機にさらされている側であって、石橋の時代とはまったく性格が違うのです。
中i国の軍事予算は日本の4.5倍、海軍も空軍も桁違い、サイバー部隊は17万5千人 日本はできたばかり、です。
これを石橋の時代のように中国戦線に足を取られていた時代といまをどこどうを比較したらよいのでしょうか。
防衛省・自衛隊|令和元年版防衛白書|2 軍事 (mod.go.jp)
日本財団図書館(電子図書館) うみのバイブル第2巻(中国海軍・南シナ海・尖閣、韓国海軍・北東アジアの諸問題に関するに関する基礎的な論文) (zaidan.info)
独裁者が自在に侵略戦争を起こせてしまうウクライナ戦争の真っ最中のいま、石橋の時代と比較するほうが愚かです。
好むと好まざるとにかかわらず、もう既に「有事」は起きています。
このウクライナの戦いが、世界をふたつに分けている世界状況で、本来中立などはありえないはずです。
仮にロシアが勝てば、中国と北朝鮮、イランは諸手をあげてロシアを讃えて、非人道的陣営を作り上げるからです。
この時代に、湛山の夢想した「日中米ソ平和同盟」などブラックジョークです。
まさに宏池会的外交思想そのもので、これでは本家の岸田氏の唯一優れた部分の外交も帳消しにするファーレフトです。
彼のような立場は、いっそう自民党のリベラルへの溶解を加速させることでしょう。
「そういう世界を希求して困難を乗り越えていきたい」という岩屋氏は、ぜひ来る総裁選挙の場で「日中米露平和同盟」を「戦前のような空気に抗して勇気を持ってもの申し」ていただきたいものです。
さもなくば、さっさと離党して立憲共産党に移られることを強くお勧めします。
そのほうが似つかわしい。
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