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2023年8月12日 (土)

広島市長、核抑止は破綻している?

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なでしこが負けてしまい、意気消沈です。

きを取り直して、先だっての松井広島市長の平和宣言です。

「こうした中、G7で初めて「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が独立の文書としてまとめられ、全ての者にとっての安全が損なわれない形での核兵器のない世界の実現が究極の目標であることが再確認されました。それとともに、各国は、核兵器が存在する限りにおいて、それを防衛目的に役立てるべきであるとの前提で安全保障政策をとっているとの考えが示されました。
しかし、核による威嚇を行う為政者がいるという現実を踏まえるならば、世界中の指導者は、核抑止論は破綻しているということを直視し、私たちを厳しい現実から理想へと導くための具体的な取組を早急に始める必要があるのではないでしょうか。市民社会においては、一人一人が、被爆者の「こんな思いは他の誰にもさせてはならない」というメッセージに込められた人類愛や寛容の精神を共有するとともに、個人の尊厳や安全が損なわれない平和な世界の実現に向け、為政者に核抑止論から脱却を促すことがますます重要になっています」
「平和宣言」【全文】 広島市・松井市長「世界中の指導者は、核抑止論が破綻していることを直視すべき」|FNNプライムオンライン

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FNN

やれやれ、ため息の出るような「平和宣言」ですね。
ひとことで評すれば幼稚。それ故に、この時代においては危険ですらあります。
なんでも松井氏はガンジーの言葉を引用し、世界中に「平和文化」を根付かせる取り組みを広めていこうと呼びかけたそうです。
言外に核兵器禁止条約に加盟しろということでしょう。

松井氏は外務官僚出身で、前任者の左翼系秋葉市長に対して自民党の候補に押されたのですが、言っていることは秋葉氏となんら変わりません。
広島は岸田氏の地盤ですから、たぶん核兵器について首相と通じるモノがあっての今年の松井平和宣言でしょう。
つまり、岸田氏が立場上言えない「理想」を、松井市長が代わりに言ったというところです。

では、そもそも「核抑止が破綻した」という現状認識は正しいのでしょうか?
ここういう言葉は厳密に使っていきただきたいものです。
元外務官僚出身の松井市長に言うのもバカバカしいですが、「核抑止の破綻」とは端的に核抑止が失敗して、現実に「核戦争が起きてしまった」という意味です。
米露が部分的か、全面核戦争であるかを問わず、核兵器を使用したということになります。

それがわかっていて「核抑止の破綻」という表現を使うことは、政治的脅迫です。

いうまでもなく、この1年間、米露、あるいは米朝、米中が米朝が核戦争をした事実はありません。(あたりまえだ)
幼稚なことを言わんで下さい。それともこの平和宣言はただの反核文学なのでしょうか。
正確にいえば、「核抑止の失敗」ではなく、核抑止の大黒柱であるNPT体制がロシアのウクライナ侵略によって大きく揺らいだのです。

核抑止の実態は、核兵器というモノだけを見ていてもわかりません。
核抑止は、核のトライアド(※1)と相互確証破壊理論(※2)、そしてNPT(※3)によって成立しています。

今日は長くなりますから説明を省きます。下の引用をご覧ください。
※1核の 3 本柱 
※2相互確証破壊 - Wikipedia
※3核拡散防止条約 - Wikipedia

そしてNPTは核軍縮、核不拡散、軍事目的への核の使用禁止、という三つの部分から成立しています。

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NPT(核兵器不拡散条約)について | 国際平和拠点ひろしま〜核兵器のない世界平和に向けて〜 (hiroshimaforpeace.com)

このNPTの三つの柱は常に揺らいでいますが、この1年間ほど大きく揺らいだことはありませんでした。
その原因は、ロシアが核の使用を政治的な脅迫に使い、核軍縮交渉からの離脱を宣言したことです。

「ロシアと米国の核軍縮合意、新戦略兵器削減条約(新START)は、ロシアのプーチン大統領の履行停止表明で修復がほぼ不可能になった。ウクライナ戦争と並行し、新たな軍拡競争が勃発するリスクが高まる一方、米ロ両国は50年余りにわたりこれまでの核軍縮条約がもたらしてきた安定的かつ予測可能な核管理の枠組みに頼れなくなる」
(ロイター2023年2月22日)
焦点:新START、修復ほぼ不可能 核リスク拡大へ | Reuters

このロシアの離脱で、それまで不十分ながらも「非核化への道」を歩んでいた核軍縮が座礁しました。
反核団体のICANのように、このロシアの暴挙を非難せずに核兵器禁止条約締結しない日本を攻撃するのは、とんでもない倒錯です。
核兵器廃絶国際キャンペーン - Wikipedia

そしてもうひとつの核大国である中国は、そもそも核軍縮のテーブルにつこうとさえしていません。
それどころか、中国は「使える核」である中距離弾道ミサイルを増強し続けました。
大陸間弾道弾はその破壊力の大きさ故に全面核戦争となりますが、中距離核は相手の策源地を破壊するための小型核ですから「使いやすい」のです。

中国は米露がINFに拘束されていることを尻目に、様々な射程距離の中距離ミサイルを開発しました。
そしてこの中距離核戦力を背景にして、韓国・日本・沖縄・グアムなどに実戦配備された米軍の戦力を脅かし、九州-沖縄-台湾を結ぶ第1列島線の内部への米国の空母の接近を防ごうという「接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略」を推進しています。

このような「使える核」への中国の変化に危機感を抱いた米国は、2019年8月にINFから脱退した後、米国・中国・ロシアの3カ国を包括する核軍縮の枠組みを作ろうと主張してきましたが、もちろん中国は見向きもしませんでした。

2番目の核不拡散も、ロシアがベラルーシに核ミサイルを前進配備することで崩れました。
米国は対抗措置をかけていませんが、ヨーロッパの核のバランスが崩れてしまった以上、なんらかの措置は必要となります。
するとまた核戦争への道が近づくわけです。

明らかな核拡散防止条約条約違反ですが、だれも止められませんでした。

「ロシアとベラルーシは25日、ロシアの戦術核ミサイルをベラルーシ領内に配備することを正式決定する協定に調印した。
バイデン氏は26日、ロシアがベラルーシに戦術核兵器を配備する計画を進めていることを「極めて否定的」にとらえていると述べた。米国務省もロシアの核配備計画を非難している。
米国の反応に対して在米ロシア大使館は「米国がわれわれに仕掛けた大規模なハイブリッド戦争の中、必要と考える手段で安全を確保することはロシアとベラルーシの主権的な権利」と強調。「われわれが取った措置は、国際的な法的義務に完全に合致するするものだ」とした」
(ロイター2023年5月29日)
ベラルーシへの戦術核配備、米は批判する資格ないとロシア一蹴 | ロイター (reuters.com)

そして三番目の核の軍事利用転用禁止は、北朝鮮とイランで完全にザルとなっています。
これも米国は有効な阻止方法を持たないまま、ほぼ完成の域に達しています。

このような状況を見れば、「核抑止の失敗」とは、ロシア、中国、北朝鮮、イランのNPT破りを止められない米国の弱腰の問題なのです。
どうしても松井市長が「核抑止の失敗」と言いたいのなら、核を政治的脅迫の手段に使ったロシアを強く批判するべきです。
全面核戦争を恐れるバイデンは、このロシアの核戦争の脅迫に屈しました。

ゼレンスキーがロシア軍が撤退するなら中立も辞さない、NATO加盟は検討してもよいという悲痛なことを言ったのは、戦闘機の供与や飛行禁止区域の設定にすら腰が引けている彼らへの痛烈な批判です。
もし米国を批判したいなら、この恐露病のバイデンの弱腰を責めなさい。

その結果、核さえ持っていればどんな横車でもやりたい放題だ、俺は核をもっているから反撃できねぇだろ、文句があればほんとうに核を使ってやるぜ、はは、俺様は世界の支配者なんだ、という核万能論が生じてしまったのです。
松井氏のような偽善の人がガンジーを気取っているときに、核万能論が芽生えているのです。

その意味で「核抑止は失敗した」とも言えます。
くどいようですが、誰によってでしょうか。もちろんロシアと中国、北朝鮮、イランによって、です。

こんな核万能論に目覚めたロシア、ひたすら核増強に走る中国、核開発が国是である北朝鮮・イランといった面々を前にして、核兵器禁止条約をなどを結んでしまったら、ならず者国家による核の独占が完成してしまうことになるのですが、分かって言っているのでしょうか。

地獄への道は善意で舗装されている、とはよく言ってもんです。

 

 

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コメント

PKもFKもクロスバーに嫌われるとはついてなかったですね。それにしても前半のなでしこの動きが今ひとつに見えたのはそれだけスエーデンが強かったということでしょうか。

広島松井市長の発言ですが、典型的な「お花畑論」としか言い様がありません。「核抑止論は破綻」に至っては何を根拠に仰っているのか全く理解できません。ロシアのウクライナ侵略でさらにその重要性が増していると思うのですが。

いずれにせよ理想を語られるのは大いに結構ですが、現実を踏まえない発言は単なる妄想でしかなく、とりわけ首長の発言としては如何なものかと思いますね。

国際法違反の侵略戦争を続けるロシアに対してNATOが応戦しないのは何故かといえば、ウクライナがNATO加盟国ではないから、では全然なく、ロシアの核に抑止されているから。
核抑止破綻説はとっくに破綻中。
それを認められるか、できないか。

被爆国と言うことで被害の事ばかりが取り上げられますが、結局はWW2の次のステージである米ソ冷戦に向け、二種類の爆弾を試す必要があったためでしょう(それもクラウス・フックスによりソ連にダダ漏れだった)。最大最低最悪の戦争犯罪ですが、世界の覇権争いはそれほどまでに厳しいものだということを日本人は認識していません。その米ソ冷戦が終わり、自由主義・民主主義・資本主義・人権重視が広まり浸透すると思われていた二十一世紀に実現したのは、中華皇帝(と、その属国の小皇帝)、ツァーリ、カリフ、スルタンの復活でした。しかも、それぞれが核をもっておもちゃにしています。いまこそ、核抑止を全面的に広めざるを得ない状況になりました。いい加減、極左勢力による反核・似非平和のバカ話は棄却すべきです。

 私は最初、広島市長が何を言っているのか分からなかったですね。
「核による威嚇を行う為政者がいるという現実を踏まえるならば、世界中の指導者は、核抑止論は破綻しているという事実を~云々」という文脈から言えば、ウクライナがロシアから核による威嚇を受けている事自体をもって核抑止論が破綻している事の証明としているように読めます。

しかし、元外務官僚で広島市長がこんな雑であらっぽく幼稚でさえある解釈をするのだろうか?と考えた。
とするとこれは、習近平がウクライナに提供したとされる「核の傘」の事を言っているのかも。恫喝をふくめ、「ウクライナをあらゆる核の脅威から守る」とした約束をたがえている中国の「破れ傘」を指しているのか?などと、うがった思いが浮かびました。
しかし、そんな約束を中華が順守するなどとは当のウクライナ国民やゼレンスキーですら考えないだろうし、国際社会も同じこと。

広島市長は広島市長であるゆえのポジショントークをしたに過ぎず、御身の立場大切にお茶を濁しただけの宣言です。
核抑止論を破綻させる可能性があるのは、やはりバイデンその人でしょう。トランプが指示した中距離核ミサイル開発を党内左派に気兼ねしてストップさせてみたり、軍事費を実質低下させるなど、やっている事がさかさまです。


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