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2023年8月30日 (水)

海洋放出が遅れたわけ

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やっと福島第1原発の処理水が放出されることになりました。
やっと、やっとやっとです。遅すぎたくらいです。

コメンテーターの玉川徹氏はこう言っています。

「一方、日本の漁業関係者への打撃を憂慮し、「処理水として海洋放出することが合理的で唯一の選択肢ではなかった」と主張。「(政府は)多分コストで海洋放出を選んだと思う」としながら、「その被害額を考えれば、海洋放出は一概に安いと言えなくなるんじゃないか」と論じた。
 だがこの後、同氏は「さらに言えばですね、じゃあ、なんでこんなに汚染…汚染した水を処理して、海に流さなきゃいけないかということに追い込まれているかというと、汚染水がどんどん生まれているからなんですよね」と持論。「未だにどんどん汚染水が生まれてるので、処理水が生まれている」と連呼していた」
(リアルライブ 2023年08月28日)

そうでしょうか。
玉川氏はなぜ「汚染水が増えてしまうのか」、その理由をわかってしゃべっていません。
まるで東電と政府がジャブジャブ溢れっぱなししておいたツケが回ってきたような言い方です。
東電は凍結壁とかいろいろやってんですがね。

いまでも「汚染水がどんどん生まれる」理由は、地下水があまりにも豊かに湧き出る場所に原子炉が立地しているからです。

「基本的に循環利用している汚染水だが、被災した原子炉建屋には細かい隙間があるため、雨水や地下水が入り込んで容積が増えてしまう。その増加量は現在、1日あたり100トン前後となっている」
福島第一原発処理水の海洋放出開始、東電 トリチウム以外の核種を除去 | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」

水の出所は地下水です。
福島第1原発は、山系から湧きだす豊富な地下水がある場所に建てられていました。
しかも地表を15メートルも掘り下げて建設されたために、いっそう地下水が湧きだすことになりました。
平時はそのまま海に流せばいいだけのことですが、事故処理となると大きな問題となりました。
それは地下水の出る3ルートが、事故を起こした原子炉や瓦礫と接触して、濃度の差があっても放射性物質を含んでいる可能性があるからです。

ではどうするかといえば、ひとつは施設手前に井戸を掘ってバイパスルートを作ること、施設を囲む凍土壁を作ってブロックすることでしたが、いずれもあまりうまくはいきませんでした。
あまりにも流入量が多いからです。
地下水の8割から9割は施設地下に流入し、いわゆる「汚染水」となってしまいました。
いちおうお断りしておくと、ALPSで浄化されるまでの水を「汚染水」と呼んでもかまいません。
しかし除去装置以降もそう呼ぶと、まるでなにもしないでそのまま「汚染水」を放出する誤解を呼ぶので使ってはいけません。
反対派はあえて「汚染水」と呼び続けることで、風評を拡大しています。
中国に至っては「核汚染水」です(苦笑)。テメーだって出してるだろうが。

止められなければ、放射性物質を除去するしかテはありません。

「放射性物質は天然、人工を合わせて全部で1000核種ほどあるとされる。東電はそこから、原子炉停止30日後の炉心に存在するだろう核種を評価。水に溶けない核種などを除外し、セシウムやストロンチウムなど62核種をALPSで汚染水から除去する主要なターゲットに定めた。
ALPSは2013年に稼働を開始した。主に内径約1メートル、容積約1トンの円筒形をした吸着塔が18塔ならんだ設備で、現在はそのうちの13~15塔で放射性物質を吸着している」

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 サイエンスポータル

基本的な原理として、汚染水をALPSの吸着塔に通す前には、後の作業の邪魔となるマグネシウムやカルシウムを液体と固体が混じった泥のような「スラリー」にして取り除く前処理を行います。
吸着塔内へ流れた汚染水からは、吸着塔ごとに狙った核種を取り除いていきます。
吸着材は使用状況にもよりますが、短いものでヨウ素吸着材を1~2カ月に1回程度、長いものでストロンチウム吸着材を1~2年に1回程度で交換しています。

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ALPS(多核種除去設備)
サイエンスポータル

「ALPS処理によって、セシウムだともともと1リットルあたり数千万ベクレル(ベクレルは放射能の強さを表す単位)あったのが、0.1~1ベクレル程度までに下がる。ストロンチウムでも同10万ベクレルから0.1~1ベクレル程度まで下がるなど、9割方の核種は検出限界値未満になる」
(サイエンスポータル前掲)

問題はトリチウムでした。

「水素と似た挙動をしめすトリチウムは水の形で存在するので除去が難しい。半減期は12.3年で、弱いベータ線を放出して崩壊する」
(サイエンスポータル前掲)

このALPSは世界最高の能力を持つ除去装置で、62種の放射性物質を除去しますが、唯一の例外がこのトリチウムです。

 

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・γ核種(45核種)・・・検出限界値(ND)未満にまで除去
・β核種(8核種)・・・5核種までが検出限界値(ND)未満にまで除去
・Sr-89(ストロンチウム)、Sr-90、Y-90(イットリウム)については、告示濃度以下


トリチウムは別名三重水素といい、いわば「水」ですから、水の中から水を除去できないのです。
もう少し細かく言えば、トリチウムは、毎日宇宙から地球にふりそそぐ放射線が空気中にある窒素や酸素とぶつかり、日々新たに作られるもので、空気中や海水中に普通に含まれています。
ですから、トリチウムは雨水にも含まれていますが、もちろん無害です。
というか、人類は誕生以来何万年の単位でこの天然放射性物質を浴び続けてきたので、それがイヤなら家から外に出ないことです。

トリチウム中性子を2つ持つ水素の同位体であり、ガンマ線を出しますが、非常に小さな力しかなく、人体に与える影響はミニマムで、ヨーロッパのミネラルウォーターには含まれているものが多く、フランスなどにはその含有基準すらあります。
岩盤を通して湧出する地下水は、岩盤が含む多種の放射性物質を含むからです。

WHOも飲用水基準として10000ベクレル/ℓを設定しています。
つまり基準以内なら、普通の水として飲めるのです。

地上生物の体内の水にはトリチウムが含まれていて、およそ1ベクレル/ℓだといわれています。
当然人体も100ベクレルていどのトリチウムを微量持っています。


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よく汚染水を出すなら、お前が飲んでみろ、という反原発運動家がいますが、いいですよ、飲みましょか(笑)。
もちろん法定希釈濃度にしてからですが、ウガイをして歯磨きに使って、お風呂の水にも使えます。
トリチウムなんぞたかだかそんなていどのものなのです。

トリチウムを含んだ処理水は、福島原発のサイト内にどんどんたまっていき、2023年8月現在の貯蔵量は約134万トン、貯蔵率は98%に上り、2024年前半には満杯に達する見通しです。
いずれパンクに追い込まれるのは目に見えていたので、政府や東電は早くから処理水の海洋放出を検討し各方面と協議してきました。

玉川氏は止めろと言いますが、地下水は止める方法を知っていたら教えて下さい。
原子炉の冷却は完全廃炉の日まで稼働させ続けねばなりません。

よくある誤解ですが、再稼働停止の仮処分を出したある裁判官などは、再稼働を止めれば「安全」だと勘違いしていたようですが、原子炉と使用済み燃料は、運転停止しようと事故処理中だろうと、休みなく冷却し続けねばなりらないのです。
冷却水が止まれば炉心を冷却することがなきなくなり、また事故に繋がります。
ですから、この冷却水は半永久的に止められません。
地下水も止められない以上、いつかは海洋に処理済み水として放出せねばならなかったのです。
それが遅れに遅れて、今やっているというだけのことです。

 

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コメント

共産党や中国や北朝鮮に同調した自称リベラルの左翼マスコミ連中はトリチウム、「汚染水」、「理解が得られていない」、「未知の核物質」と国が福1の廃炉に向けて前進する度に抗戦拠点を築いてはねちっこく妨害しようとしていますね。
林智裕氏が指摘するように次の拠点は「汚染土」といったところでしょうか。侵略国家ロシアもそうですけど早く撤退するなり玉砕するなりしてくれませんかね。

分かりやすく説明して頂きありがとうございます。
先般のabemaTVの原口議員の説明がよく理解できませんでした。「線量(ベクレル)ではなく核種の総量が問題なんだ。これを全く公表されていない」と何度も言っていました。「政府の国会答弁でトリチウム以外の核種は調べていないから分からないと答えた」など言いたい放題。放射能の専門家が誰もいないので原口議員の高慢な態度だけ印象に残る結果となりました。
「通常の冷却水とジブリを冷却したものでは全く別物だ」とも言っていましたがそこらへんが良く分かりません。
きっとここで管理人さんが説明したとおり、とるに足らない量のものしかないと思っていますが。
まだまだ勉強不足です。いろいろと教えてください

原口議員のアベマのコメントは見ていないのですが、線量と放射能量については下記リンクをご参考に。
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h28kisoshiryo/h28kiso-02-03-01.html
チェックが必要なのはベクレルでいいんですよ。
核種の総量とか、何の量を量と呼んでいるのかすら謎で、何度聞いても理解できなくて当然だと思います。

2020年2月14日の福島民友新聞は既に、「トリチウムは体内には常に数十ベクレル存在」と説明し、大事なのは濃度であり、前提を欠く誇張で恐怖心をあおることを戒める記事を書いています。
https://www.minyu-net.com/news/sinsai/fuhyo-deep/FM20200214-459553.php

そして本年8月24日の同社社説で、デマや誤情報への毅然とした対応と、それらを信じ込む人々の認識のずれを解消することが急務だ、としています。
https://www.minyu-net.com/shasetsu/shasetsu/FM20230824-800414.php
その対応を同社説は政府に求めていますが、これは当然として、各分野を網羅した科学的・技術的しくみ、そこから導かれる対応の取捨選択についての必要にして過不足無い説明を、この福島民友新聞社自身がせめても努めているように、全マスコミも行うべきであることは、論を待たないと思います。自分で複数情報を取りに行かない人々をターゲットにしてきたなら尚更、ちゃんと紙面や番組を大きく割いて。
それでも我らが琉球新報は29日社説で、「微量でも人体に入れば内部被曝が起きる可能性がある」と言い切っていて、志の低さと底の浅さで期待を裏切らない新報さん最&高。でもそれで本当にいいのかしら。
福島民友記事と管理人さんの今週今日まで3本の記事を、声に出して100回づつ読んでも、潮時を感じて行動を変えるのは、遅いか出来ないか。
処理水放出を「理解できる」が67%、「理解できない」が25%(日経)だそうですから、闇雲に不安に煽られている国内外の人たちが持たされている誤った前提に立つ論を張る社は、少し考え直したらどうでしょうかね。
そうだったのか!とテレビで人の蒙を啓くらしい池上彰氏が処理水放出の全てを解説する!みたいな番組づくりが無い、今後も無いなら、それはどうしてですかね。
とまれ、他人を堕として活力を得たいだけのところには、何も与えてやらない。
29日河北新報によれば、福島県いわき市へのふるさと納税が急増しているそうですね。
香港の店では客が行列したという我が国の回転寿司チェーンなども、ほぼ全量が中共向けで困っているような業者さんのホタテとか使って、祭りができないですかね。もう商売の模索はしているでしょうけれど。
食べたくない人のことをとやかく言わないし、食べてとやかく言われたくもなし。
政府も我々も、常に状況を診断しながら対応を決めて、前へ進もうぜ。

 せっかくデータに則って記事にして頂いているのに恐縮ですが、玉川や山本太郎らの勘違いの根本はもっと国語能力的というか、よく言って最初期の理科の基礎の問題なのではないかと。
例えば「希釈」という概念についてですが、どんな毒性も薄めれば限りなく無害に近づくものとの理解をしていないようです。
あと、自然界の放射線と発電にともなう副産物として出来た人工的な放射線は科学的に同じものですが、彼らの頭の中では「違うもの」なんですよね。すると、そうした誤った先入見からの議論である限り、スタートラインからすれ違うのだと思っています。

日本の当局者や東電の担当者らは長い期間をかけてIAEAや国際社会とすり合わせをしつつ、不安や不満が起こらぬよう経過措置にすら最大限の縛りを自らに課しています。その過程には中国や韓国の専門家も当然参加し、そのうえで結論が出た事です。
また、環境に影響を与えない程度の微量の「何か」が出る事もまた当然なことです。その「何か」が問題だというなら、立証責任は問題にする側にあります。
合わせて、十数倍の中国から排出される分についても、それが許されれ、福島が許されないという合理的な説明もして頂けなくてはなりません。

科学を理解できない、あるいは理解しようとしない。自分の情緒、感情、感覚でしか物事を判断出来ない。そんな人たちが一定数いることは、ここ数年の様々な事件事故のニュースを見ていて理解できました。それらの人々に、いくら科学的根拠云々言っても、決して聞こえていませんし、聞こうともしないと思います。だからと言って、それをほったらかしにしていると、いつの間にか真実が真実でなくなってしまう。そのような事案もここ数年のニュース事件、事故で知りました。できることは、ただ淡々と事実を続けることしかない。中国国内では情報統制されて、真実が届いていないのでしょうが、それでも国外にでた人たちには、事実が伝わるはずです。時間はかかうかもしれませんが、地道な努力が一番かと。あと、昨日のニュースで、中国国内では、東シナ海産の魚介類(中国産、輸入品ではない)も売れあなくなっているそうです。日本産の輸入を止めたら、国産品も売れずに漁業者がないているとか?自分たちで自分たちの首をじわじわ絞めている感じがするのは私だけ?

 岸田が二階に訪中を依頼した、って報道が出て来ましたね。
二階は「日本人の利益を考えて行動せざるを得ない」とかで、譲歩する気満々です。自分で放逐した二階を使う岸田の馬鹿さ加減を疑うが、農水相が「不買運動につながるとは考えていなかった」という答弁が岸田の慌てぶりで真実とわかって愕然としています。

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