不動産バブルに踊った国、中国
中国経済が恒大に象徴されるように、デフォールトラッシュ真っ盛りなのは見てのとおりです。
碧桂園、遠洋、中植系ホールディングス、中融信託 、まだまだラッシュは始まったばかりです。
後述しますが、「融資平台」(LGFV )という不良債権の本丸が残っています。
LGFVの総額は推定で約940兆円。史上最大の不良債権です。
では、中国政府はどうする気なのでしょうか。
かつてチャイナラバーたちは、ゴーゴーチャイナを煽る時になんと言っていたでしょうか。
曰く、中国は日本のバブル崩壊を研究し尽くしているのでバブルは起きない。
仮に起きても日本のようにバブルを破裂させて、その後の「空白の十年」などを起こさない賢さを備えている。
万が一起きても、共産党が一気に巨額資金を投入できる仕組みが整っているから大丈夫、な~んて言っていませんでしたか。(笑)
コロナの時もそうでしたが、日本人の一部にはびこるこの中国共産党に対する盲目的信頼はどこから来るのでしょうか。
バブルは起きないどころか、世界一の不動産バブルが勃発し、巨額なマネーゲームの城を作り上げました。
そしてバブルはモノの見事に2年前に破裂しました。
しかしなぜか2年間の間、中央政府は破産処理に手をつけずに放置し続け債務を増やし続けました。
それが一斉に弾け始めたのが、今年の夏でした。
不動産業界の巨大企業集団が相次いで破綻しました。
恒大などは、あえて米国で破産処分をするという裏技まで繰り出しました。
もちろん中国政府は、このような外国での破産申請を使っての企業再編自体を認めていません。
「8月16日夜、恒大は中国証券監督管理委員会が発布した「立件告知書」を受け取った。これは企業が違法に情報開示した容疑で、中国証券法、中国行政処罰法など法律に従い、中国証券監督管理委員会が恒大に対してして立件することを決定したということだ」
中国趣聞:NO.857 恒大が米国で破産保護申請、創業者の許家印は離婚で脱出準備!?
普通の国なら2年前にとっくに破産淘汰されていなければならないにもかかわらず2年間も助けるでもなく、潰すでもなく放置していたツケが回ってきたのです。
恒大の経営危機が発覚した2年前の2021年12月、広東省は作業チームを派遣、監督して経営を守ると発表していました。
そして中央銀行もそれを支援すると言っていましたが、実際はなにもしなかった。
監査くらいしたのでしょうが、大きなザーサイ瓶の蓋を開けたらウェという腐臭に仰天して、また蓋を閉めてしまったのかもしれません。
救済せねば不動産を買った消費者が泣きを見るのはわかっていても、習近平の「共同富裕」思想に忖度してそれを許さなかったのかもしれません。
政府による根本的な解決策がなんら打たれないまま、ここまで来てしまったのです。
その間、さらに不良債権は溜まりに溜まるばかり。
中国政府はこのまま進めば、全面的な金融危機と信用収縮になる可能性があるというのに、いったいどれだけ不良債権があるのかさえ明示していません。
思い出していただきたいのですが、わが国の90年代末の不動産バブル崩壊は巨額の不良債権を生みました。
不良債権とはこんな意味です。
「銀行などの金融機関(=債権者)が持つ貸出金などの債権のうち、その回収が、通常の回収期間に行われず、回収が困難な状態にあるか、困難になる可能性が高いもの。また、業況や財務内容に問題があり、経営が破綻しているか、破綻する可能性がある債務者に対する債権のこと」
不良債権|証券用語解説集|野村證券 (nomura.co.jp)
バブル崩壊時には8兆円、それが2年子の95年には40兆円、そしてとうとう2002年には52兆円にも登りました。
この時点で、銀行の不良債権比率は、8.6%とピークを付けています。
つまり、金融機関の貸し出しの1割弱が不良債権と化してコゲついていたわけですから、ぞっとします。
不動産バブルの時、ろくすっぽ精査しないで土地が担保に入っていたらジャブジャブ融資した報いです。
誰が行くのかわからないような田舎のゴルフ場、レジャー施設などが雨後の筍のように全国に建てられました。
いまになると結果を知っていますから馬鹿じゃなかろかと思いますが、バブルの真っ最中には熱に浮かされたように札びらが舞っていたのです。
田舎の寿司屋でも、オレはカネかき集めてあのゴルフ場の会員権買ったのどうのという会話がされていた時期です。
デベロッパーだけではなく、銀行も狂い、一般企業も本業を忘れてマネーゲームに走った時代でした。
ちょうどこのバブル期に帰農した私なんぞ、変人奇人仙人扱いでした。
老舗羊羹屋の2代目が投機に走って店を潰し、真面目なネジの町工場の親父が株に飛びついて工場を失ったなんて話が、全国で起きていました。
彼らの末路はご存じでのとおり、店を失い工場を取られ、家族は離散しました。
これと同じことが、中国では日本の数十倍の規模に増幅して起きたと思えばよいでしょう。
中国は「社会主義」(マルクス号泣)ですから、土地の私有が認められない分だけ、投機の色彩が強かったようです。
中国では「融資平台 」(Local Government Financing Vehicles:LGFV)というシステムが不動産バブルを作り出しました。
融資平台とは、中国の地方政府が傘下に置く公共インフラへの投資会社のことです。
「平台」はプラットフォームですから、融資のプラットフォームということですが、中央政府が強い権限を握っていました。
中央から地方に新幹線を通せ、高速道路を作れ、マンション群を作れ、という命令が下ると、この融資平台が資金を調達してきたのです。
これが不動産バブルの資金提供源でした。
日経
「融資平台は、地方政府による「暗黙の保証」があるとみなされてきた。社債や銀行借り入れで積み上がった負債は、地方政府の隠れ債務とみなすのが一般的だ。融資平台が経営不振に陥れば、株主である地方政府か、貸し手の金融機関が支援せざるを得ないのが実情だ。
最近では、融資平台が地方政府から土地の使用権を買う例も目立った。住宅市場の低迷で新規の建設が減り、地方政府が不動産開発企業に国有地の使用権を売って稼ぐ土地収入も落ち込んだためだ。土地使用権の購入は地方政府の収入不足を補う狙いだが、実態は地方政府への「つなぎ融資」に近い。マンションの建設予定がない土地が塩漬けになれば融資平台の財務が悪化。地方政府の隠れ債務がさらに膨らむ恐れがある」
(日経2023年6月15日)
融資平台とは 中国地方政府の資金を調達 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
今、この融資平台がショートしています。
「中国の金融市場で今最も注目を集めているのが、地方政府傘下の投資会社「融資平台」の債務不履行(デフォルト)懸念だ。
融資平台はもともと道路や橋の建設など採算の取りづらいインフラ事業のために設立された。それでも銀行や債券市場から低利でお金を調達できたのは、地方政府が資金返済を保証するという暗黙の前提があったからだ。ところが土地使用権収入の激減で、地方政府の資金支援余力が低下。この前提が崩れつつある。
米シティグループの推計によると、融資平台の有利子負債は22年末で約47兆元(約940兆円)、GDPの39%に達するという。万一デフォルトが現実になれば、金融システムを揺るがしかねない」
(日経8月20日)
恒大集団が米で破産申請 波立つ中国リスク、不動産発ドミノ危機 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
940兆ですぜ、お立ち会い。
日本の不良債権は、2017年当時には100兆円超ですから融資平台だけで、その9.4倍。
民間のデベロッパーまで入れると、トータルでどれだけになるのか想像もつきません。
くり返しますが、そもそも中国の土地は「買えない」のです。
社会主義だから土地の所有権は国家にあり、私有はみとめられず「使用権」だけなのです。
自由主義経済ならば、不動産という実態があるからどこかで制限がかかりますが、中国では無制限に価値が増大するし、逆に紙屑にもなるわけです。
だから、中国人は投機目的で不動産を「買った」のです。
ちょっと小銭がある人間なら、マンションを2、3軒買って値上がりを待っていたわけです。
日本なら、いくらバブル期でもマンションを買えば住んだものですが、中国ではただの金融商品にすぎません。
金融機関は不動産を買うなら気楽に融資してくれたので、中国人の家計に対する負債率は一説で137.9%にも達しました。
米国はいちばんひどい時で90%でしたが、中国の家計に対する負債率は世界最悪のはずです。
家計債務とは 比率高まる新興国、減る先進国で二極化 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
つまり、中国では国民が借金しまくったのです。
これも不動産価格が右肩上がりのうちは、名目では豊かだったわけですが、不動産相場が瓦解してしまえば、負債だけしか残りません。
こんなことが永遠に続くはずがありません。
この借金で不動産を買って紙屑となった人たちは、今さら不動業者に駆け込んでも無意味ですから、地方政府に押しかけるでしょう。
いままで何度も見てきた白紙革命の不動産版です。
融資平台は現在、いちおう中央政府が「包括的対策」を言ったので落ち着いていますが、先行きどんなもんでしょうか。
「LGFVは融資などを合わせた債務総額が累計9兆ドルに上り、国内金融システム全体を揺るがしかねないリスクをはらんでいる。しかし中国共産党が7月の中央政治局会議で、地方の債務リスクを解決するため「包括的な」対策を取ると確約したことから、投資家の間でLGFV債への信頼感が高まった」
(ロイター8月18日)
中国、融資平台の社債利回り低下 暗黙の政府保証見込み買い殺到 | Reuters
私が「包括的対策」が怪しいモンだと思うのは、不良債権の総額を中国政府が明示していないことです。
つまり不良債権処理のイロハのイをやっていないのに、どうして「処理」なんかできるのでしょうか。
次回、もう少しそのへんを見ていきます。
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バブル崩壊からしばらくして、住専とか拓銀や山一證券の破綻処理が印象的でしたね。
中国はこの10倍規模でやらかしています。
数の論理でとんでもない悪条件でも進出した外国企業が逃げ出してるんですが、中共崇拝者はどう説明してくれるんでしょうかね!?隣国である日本企業もようやくどうにか足抜けしようとしてますし、ドイツなんか酷いもんで。正直「安い労働力と資源」が無ければ「はい、サイナラ!」なわけです。フランスはどうするのか知らんけど。。
で、中国経済か破綻したら「ルーブル経済」で国内でどうにか回しているロシアがぶっ壊れますね。プーチンさんは分かってるのかなぁ?しんりゃく戦争中なのに。
投稿: 山形 | 2023年8月22日 (火) 10時22分