プリゴジン暗殺される
プリゴジンが、モスクワからサンクトペテルブルトに向かう自家用ジェットを爆破されて死亡しました。
正式には本人確認がされていませんが、暗殺か事故かは別にして死亡したことはほぼ間違いないでしょう。
私は絶対にプーチンはプリゴジンを許さないだろう、彼は殺されると書きましたが、当たってしまいました。
プーチンが好きなのは毒薬。今回は機体に爆薬を仕掛けたか、対空ミサイルを使ったようです。
21世紀とは思えない、ロシアの暗黒の宮廷劇です。
ホント、ロシアと中国はこんなことまでよく似ていますね。
「ロシアの雇い兵組織ワグネルの創始者エフゲニー・プリゴジン氏(62)らを乗せた自家用機が、モスクワの北西約300キロのトヴェリ州クジェンキノ村近くで墜落したとされる。
ロシア連邦航空局は23日、墜落機の乗客リストに、プリゴジン氏の名前があると明らかにした。国営インタファクス通信は、墜落現場で乗客乗員10人全員の遺体が確認されたと伝えた。プリゴジン氏は今年6月、ロシア国防省に対する反乱を起こし、部隊を一時、モスクワへ向かわせた。 他方、死者の身元について慎重を促す専門家の声もある」
(BBC8月24日)
ワグネル代表プリゴジン氏、飛行機墜落で死亡か 搭乗者名簿に名前とロシア当局 - BBCニュース
ロイター
動画が残っており、機体は空中で分解して胴体らしき大きな部分は垂直に落下しています。
ワグネル代表プリゴジン氏、飛行機墜落で死亡か 搭乗者名簿に名前とロシア当局 - BBCニュース
また機体の残骸にはミサイルのものだと思われる多くの穴が開いている(下写真赤丸)と、ワグネルは主張しています。
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ただし、米国情報筋は対空ミサイルの可能性は低く、飛行機に仕掛けられた爆薬によるものだと見ていくるようです。
「ロシアの民間軍事会社ワグネルの創設者、エフゲニー・プリゴジン氏が搭乗していたジェット機の墜落を巡り、米当局者は同氏の暗殺計画の結果との見方を示した。地対空ミサイルで撃墜された可能性は低いとみている。
米政府の初期分析では、ジェット機に仕掛けられた爆弾が爆発したか、何らかの破壊工作が23日の墜落を引き起こしたことが示唆されている。この分析は完全ではないと当局者らは強調している」
(ウォールストリートジャーナル8月25日)
プリゴジン氏、暗殺の可能性=米初期分析 - WSJ
このプリゴジン所有の「エンブレアル・レガシー」には、ワグネルの指揮官クラスが同乗していたようで、元GRU特殊部隊中佐ドミトリー・ウトキン以下、セルゲイ・プロパスティン、エフゲニー・マカリャン、アレクサンドル・トトミン、ヴァレリー・チェカロフ、ニコライ・マツセイェフらが乗っていたようです。
エンブラエル社製の「レガシー600」
ロシアはウクライナの仕業にしたいようですが、今ウクライナにとってプーチン体制の攪乱要因となっているプリゴジンを殺さねばならない理由はありません。
この男を処罰したいのなら、むしろ原告側証人として国際法廷に引きずり出してしゃべらせるほうがよほどましです。
プリゴジンはアフリカ、中東におけるロシアの裏工作の隅々まで知っていますので、惜しい男が殺されました。
ワグネルは名指しでプーチンを暗殺犯だとして糺弾しています。
「ワグネル系とされる「テレグラム」チャンネル「グレイ・ゾーン」は23日夜、ロシア軍がプリゴジン代表やウトキン氏を乗せた飛行機を撃墜したと伝えた。
「グレイ・ゾーン」によると、クジェンキノ村の住民は飛行機が墜落する前に2回、爆発音を聞き、水蒸気の筋が2本伸びる様子を目にしたという。「グレイ・ゾーン」は、プリゴジン代表が「ロシアに対する裏切り者の行為の結果、死亡した」と書き、「しかし彼は地獄でも最高の存在になる!」とたたえた」
(BBC前掲)
ウクライナの反応。
「「ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問はソーシャルメディアで、「戦争の霧が晴れるのを待つべきだが」としつつ、「プーチンは自分をおびえあがらせた相手を、許したりしないのは明らかだ。2023年6月に彼を無効化した当人は、まさに時機をうかがっていたのだ」と書いた。
さらにポドリャク氏は、「プリゴジンはルカシェンコの突拍子もない『保証』や、同じくらいばかげているプーチンの『名誉にかけた言葉』を信じた瞬間、自分自身の特別殺害令状に署名した。それは明らかだ」とも続けた」
(BBC前掲)
プリゴジンはプーチンとの直接交渉でベラルーシに国外退去することを条件にして、罪に問われない口約束をもらっていたようです。
それもあってか、プリゴジンはベラルーシ行きなど見向きもせずに、ロシア国内で活発なビジネスを続けていました。
死ぬ前日まで、彼がやっていたのはモスクワ市との給食の交渉でした。
たぶんモスクワに飛んだのも、この給食獲得交渉のためだったのでしょう。
傭兵部隊のボスが、最後の最後までこだわったのが市の給食だったとは悲喜劇です。
まぁ、考えてみれば給食業がワグネルの本業だったのですが。
「モスクワ地域の指導者に近い対話者は、墜落の直前の日の午後、プリゴジンはモスクワ地域の行政およびモスクワ市長室の代表者と「[予算機関の]栄養問題について」会ったと述べた。PMC Wagnerの創設者に関連する企業は、長年にわたり政府契約の下でさまざまな予算機関に食料を供給してきた。
クレムリンに近い2人のメドゥーザ情報筋は、反乱後もプリゴジンがロシアで同様の事業を続け、「結論を出さなかった」ことに驚いたと述べた。
「彼はたくさんのものを持っているアフリカ、彼自身がアフリカ諸国の指導者とビジネスをしています。これまでのところ、誰も彼に干渉しておらず、誰も彼を追い出していません。なぜ彼はここで学校給食の契約が必要なのですか、そしてそのようなリスクがありますか?彼はばかではありません、彼はすべてを理解していたようです」とメドゥーザの対話者の一人を追加しました」
「暴動の後、彼はひどく終わるだろうという感覚がありました。これは許されません」プリゴジンの飛行機の墜落。クレムリンに近いメドゥーザの情報筋は、ワーグナーPMCの長であるメドゥーザの死の可能性について何と言っていますか? (meduza.io)
そこで残されたワグネル残党ですが、当然のことてながら怒り狂っているようです。
前述したように、「ロシアに対する裏切り者の行為の結果、死亡した。しかし彼は地獄でも最高の存在になる!」と叫んでいます。
報復に出るかもしれません。
いずれにしても、今後ロシア国内のプーチンをめぐる権力闘争は激化することでしょう。
そしてプリゴジンがそうであったように、プーチンもベッドの上で死ねないようです。
ワグネルから見る「プリコジンの乱」: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
プーチン、主戦派を粛清: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
難しい「プリゴジンの乱」の後始末: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
伏魔殿のワグネル帝国: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
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プリコジンが今まで生きていたって事が不思議なくらいで、アフリカに居る偽装も通用しなかった。
プーチンはプリコジンの死去を悼む演技賞ものの演説を行いましたが、これからどうやってウクライナの責任に持って行くのか見ものです。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2023年8月25日 (金) 07時31分
ほとぼりが冷めた頃に変死というパターンかと思ってたけど、プーチンの裏仕事を知りまくってるワグネルの上位者が纏めて始末された!ということでしょうね。怖い怖い!
林彪事件から何十年経ってるんだと。。
まあ、そういう世界観を今でも描いていて今回のBRICKS会議で仲間を増やしたということです。絶対に嫌な国家観ですね。
もし、ロシアがウクライナを予定通り3日で落としていたら中国とは経済的にマトモにぶつかる関係になっていただろうけど、さらにコロナ禍が無くてブラジルとかが軍事大国化していたら···どう考えてもろくな世界ではないですね。
40年前に英国に喧嘩売って惨敗した常時破綻国家のアルゼンチンはやむを得ずでしょうけど。中東や他の国家は何が望みなのかそれぞれ考えると···冷戦後に一時的に世界の警察になったアンクル・サム大嫌いというわけで。
投稿: 山形 | 2023年8月25日 (金) 09時13分