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2023年9月23日 (土)

セバストポリ攻撃によってロシアがクリミアにこだわる理由がなくなった

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やや旧聞になりますが、去る9月13日、クリミアのセバストポリ軍港のドックがドローンによる爆撃を受け、造船所にあったロプーチャ級揚陸艦「ミンスク」とキロ級潜水艦「ロストフ・ナ・ドヌ」が大破しました。
修繕は不可能なようで、2隻共に廃艦となるようです。

これでいままでのロシア海軍の損失の累計はこのようになります。

・巡洋艦モスクワ、ネプチューン対艦ミサイルで撃沈
・揚陸艦サラトフ、トーチカU弾道ミサイルで大破着底 ※停泊時
・外洋曳船ヴァシリー・べフ、ハープーン対艦ミサイルで撃沈
・揚陸艦ミンスク、ストームシャドウ/SCALP-EG巡航ミサイルで大破 ※入渠時
・潜水艦ロストフ・ナ・ドヌ、同上
・2022年2月24日の開戦以降ロシア黒海艦隊が喪失した大型艦・・・5隻(小型高速艇などは除く)
JSF氏による

 決して強力とはいえないものの、黒海の海上優勢を握っていたロシア黒海艦隊は半身不随に追い込まれつつあるようです。

さて、13日夜の攻撃は大きな火災を引き起こしていたことが、遠景からも確認できます。

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RBCウクライナ

英国国防省は直ちに衛星写真を公開していますが、ドックが精密な爆撃にあったことがわかります。

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揚陸艦ミンスクと潜水艦ロストフ・ナ・ドヌは復帰が困難な大損害(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース

潜水艦の被害写真が漏洩し、施設だけではなく停泊していた艦船にも損傷が出たようです。

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JSF

ロシア国防省の発表。

「ロシア国防省は、今夜、セヴァストポリのオルジョニキーゼ造船所で10発の巡航ミサイルによる攻撃と、3隻の無人ボートがあった発表し、この攻撃についてウクライナを非難している。声明はまた、防空システムによる7発のミサイルの撃墜し、および占領者の巡視船ヴァシルビコフによってウクライナ軍のUAVの破壊したとしている。
しかし、「敵の巡航ミサイルの攻撃の結果、修理中の2隻の船が損傷した」とロシア国防省は述べた」
セヴァストポリへの攻撃-ロシア国防省は2隻の艦船の損傷を発表した|RBCウクライナ

ロシア側の発表では、巡航ミサイル10発と自爆無人水上艇(UAV)3隻の攻撃を受けたようです。
うち、巡航ミサイル7発とUAV3隻を撃破したが、巡航ミサイル3発が防空網を突破しました。
どうやらウクライナ軍は、ストームシャドウ巡航ミサイルとSCALP-EG巡航ミサイルの両方を使用したようです。
セバストポリ軍港は、ロシア軍の最重要軍事施設として防空されていたはずですが、西側の提供した長距離巡航ミサイルが3割の高い確率で防空網を突破したことになります。

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ストームシャドウ/SCALP」を搭載したSu-24M戦闘爆撃機 ウクライナ国防省

またウクライナ海軍はセバストポリ翌日の14日早朝、巡航ミサイルと無人機を使用してクリミア半島東部エフパトリヤ近郊のロシア施設を攻撃し、S-300とS-400からなる複合防空システムの破壊に成功しました。
攻撃にはウクライナ国産の巡航ミサイル「ネプチューン」と自爆ドローンが使用され、攻撃ではまず、自爆ドローンによって防空システムの目となるレーダーとアンテナを破壊し、止めを刺すようにミサイルの発射装置もネプチューンによって破壊しました。
これで南部ヘルソンやクリミア半島に重点的に配置されていたS-400は、わずか1カ月で2基破壊されたことになります。
22日には、艦隊司令部がウクライナ軍によるミサイル攻撃を受け、少なくとも兵士1人が死亡したと、ロシア側が発表しました。

南部戦域は、S-400を搭載した広域防空艦の巡洋艦モスクワが、去年4月にウクライナ軍の地対艦ミサイルで撃沈されたことで黒海上空の航空優勢の確保が困難になったままです。
このためにズミイヌイ島(蛇島)のウクライナによる奪還を許し、島の周辺では外洋曳船ヴァシリー・べフが地対艦ミサイルで撃沈されています。
黒海の要衝であったズミイヌイ島を奪還されたために、黒海の海上優勢の維持は非常に難しくなりました。
もはやロシア黒海艦隊は、かつてのようにウクライナ沿岸に不用意に近寄ることすらできなくなっているのです。
そして黒海艦隊の聖地とでもいうべきクリミア半島最北端のセバストポリまで今回攻撃を受けたことに、ロシア海軍は深刻な衝撃を受けたはずです。

これで決定的になったことは、ロシアにはもはやオデーサを攻略する能力を喪失したということです。
セバストポリに停泊していた揚陸艦の任務は、オデーサ攻略時に海からの海軍歩兵の揚陸をしかけて助攻することでした。
しかし、陸上部隊がドニエプロ川の左岸に撤退してしまい、これ以上の西進ができないうえに、海上からの揚陸艦は損傷を受けてエスコートするはずの残存艦隊がウクライナに接近すらできないようでは、もはやオデーサ侵攻は断念するしかありません。

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クリミア半島 (y-history.net)

ロシア海軍は、ウクライナの長距離ミサイルの射程内に入ってしまって、もはや安全地帯ではなくなったセバストポリから黒海艦隊をロシア本土のノヴォロシスク港に移動させるでしょう。
つまりクリミアを支配し続けることは、少なくとも軍事的には無意味になりつつあるということを意味します。

クリミアは、農業に不適で、水すらウクライナ側から給水されているような無価値な土地です。
民族的にも、ロシア語系、ウクライナ語系、クリミアタタール人などがいて複雑です。
わざわざ国連制裁を受けてまで略奪する土地ではなく、ロシアはセバストポリの使用権をウクライナから得ていたのですから、どうして傀儡国家まで作って侵攻する必要があったのかさえ疑問です。

ですからクリミア半島の価値は、あくまでセバストポリ軍港があってのものなのです。
セバストポリとそこを母港とする黒海艦隊があってこそのクリミア半島に侵攻した意味があったわけです。
セバストポリが危険地帯となり、停泊していた艦船が破壊されたり、修理もできなくなるとすれば、港だけあっても無意味です。
さっさと施設や器材、人員まで含めてノヴォロシスクに移動するほうが賢明かもしれません。

こうしてみると、クリミア半島をロシアが支配し続ける意味は、純粋に政治的なものになります。
クリミアの放棄は、プーチンの政治的な挫折を意味します。
一方ウクライナ側からも、逆の意味で同じです。
ウクライナからすれば、米国が言ってくるクリミア放棄した朝鮮戦争型和平案を実態で蹴ってみせることを意味します。

ウクライナは、東部と南部の国土の20%を占領しているロシア軍を追い出すことを目標にしています。
しかし、欧米はロシア軍がウクライナ領土から完全に撤退することを停戦・和平交渉の条件としている限り、ウクライナ戦争は長期戦となり、消耗戦となることが避けられない、と見ています。

消耗戦となった場合、戦争経済に再編可能な専制体制のロシアに対して、欧米諸国からの武器供与に依存するウクライナは不利だと考えています。
やっと1年間たって戦車や戦闘機、長射程ミサイルの供与が決まりましたが、ウクライナ側から見ればそれは西側陣営の腰が引けているからであり、欧米からすればゼレンスキーが強硬すぎるからだということになります。
この亀裂は今はわずかですが、明らかに欧米は支援疲れしつつあります。

そこで調停案として出てきたのが、この朝鮮戦争型和平案です。
2022年2月24日侵略開始時点の線を休戦ラインとして、停戦に入るとする案です。
ゼレンスキーはこの案に強く反対しています。
ひとつは、2014年に奪われたクリミアがロシア領土として固定化されてしまうことで、おそらく二度とクリミアはウクライナの懐に帰る日はないはずです。
そうなった場合、クリミア半島のウクライナ国民を見捨てたということになります。
そしてふたつめは、仮にこの案を呑むとしても守られる保証がなにもないからです。

ゼレンスキーが、再三に渡って「われわれはミンスク合意の過ちを繰り返さない」と述べているのは、2015年2月に結ばれた停戦条約である「ミンスク合意」がまったく守られなかったという苦い経験があるからです。
ミンスク合意は、ドイツとフランスの2国を調停役として交えていたはずですが、ロシアはドネツクなどにロシア兵を浸透させて、親露派政権を作ってしまいました。
この狡猾なロシシの動きを傍観していた西側陣営に対する不信感がウクライナにはあります。

どうしてもウクライナを朝鮮半島型和平に導きたいのなら、ウクライナをNATOとEUに加盟させて担保とするしかありませんが、むしろ欧米側にその度胸があるか、です。

このような中で、ウクライナが見せたセバストポリ攻撃は、朝鮮半島型和平に対する回答でもあるのです。

 

 

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ウクライナに平和と独立を

 

 

 

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コメント

朝鮮半島型和平が成立するとしたら、
ウクライナがクリミア大橋を破壊した時だと思います。

これによってクリミアの奪還が一気に現実味を帯びます。
一方で東部2州は地雷原で奪回は茨の道です。

クリミアのウクライナ返還、ロシア占領地は国連管理で10年位後に帰属を住民投票で決定、というのは落としどころのように思えます。
ロシアにとっても、東部2州からネオナチを駆逐するという大義名分は果たしたことになります。

住民投票は悪用の余地を残しますが、10年の猶予期間付きという縛りがあれば、多少はマシと思います。

日本にはPKO活動の実績と名声というメリットがあります。

 東欧三か国の穀物輸出制限継続にからむ問題でゼレンスキーが「ロシアを利する行動」とキレて見せましたが、その怒りはもっともだと思いました。
記事のように黒海を安全に航行するためにはクリミアの奪還が必要不可欠で、その利益は周辺国等しく享受するのです。
戦闘を有利に進めつつあるウクライナですが、来年まで続く事は確実です。
西側諸国は選挙などそれぞれの事情があるにせよ、ウクライナを見捨てる事はEUやNATO、ひいては民主主義陣営の敗北となります。
せめて武器だけは潤沢に供与してもらいたい。
やっとバイデンはATACMSを出すと決めたようですが、それだって極少数にとどまるらしい。
かりそめの平和で良しとする限りウクライナに本当の安逸はなく、侵略の二番煎じをもくろむ独裁者を封じ込める事は出来ないのではないか。

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