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2023年10月

2023年10月31日 (火)

第5次中東戦争にはならないと思います

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第5次中東戦争が起きて世界大戦に発展するぞ、と騒ぐ人が出ていますが、ありえないと思います。
しかもこの発信源は、ひともあろうに私が今までいちばん信頼していたイスラム研究者の池内恵氏ですから、ショックでした。
池内氏はこうツイートしています。

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XユーザーのSatoshi Ikeuchi 池内恵さん

いったいどういう意味で、池内氏は「第4次中東戦争まで中東の時計の針が戻る」というのでしょうか。
池内氏は第4次中東戦争(ヨナ・キプール戦争)の枠組みがまた再現されて、「 全アラブvsイスラエル」の枠組みで第5次中東戦争が勃発するとでも考えているのでしょうか。
ありえない想定です。

では、第4次中東戦争当時の両陣営の枠組みをみてみましょう。
イスラエル陣営はただ一国ですが、攻め込んだアラブ諸国は、エジプトを主力として、シリア、イラク、ヨルダンの4カ国でした。
イスラエル内部も複雑に分裂していましたが、外からの侵略に対しては団結するのがこの国の掟です。
一方、アラブ諸国はさらに複雑で、「パレスチナの大義」という概念規定が欠落したスローガンはすべての国が賛成するものの、現実にイスラエルとの戦争に兵を出す段になると温度差が浮き彫りになりました。

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4度にわたり衝突「中東戦争」ってどんな戦争だった?(THE PAGE)

上図をみればわかるように、第1次から第4次まで一貫して参戦しているのはわずかにエジプト一国だけです。
大きな軍事力を持つサウジは一貫して、米国との摩擦を恐れて不参加を決め込みました。
原油の最大顧客が米国だったからです。
参戦した3カ国は、エジプトはシナイ半島、ヨルダンはヨルダン川西岸、シリアはゴラン高原と、共に3回の中東戦争でイスラエルに領土を奪われたためにやむなく参戦したのです。
そして現在、シナイ半島はすでに返還され、残るヨルダン川西岸には小規模ですがパレスチナ自治区となり、ゴラン高原にはPKO(UNDOF)が入っています。

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同上

つまり、いまや湾岸諸国にとって、しょせん「外国」にすぎないパレスチナのために、中東最大の軍事大国のイスラエルと戦争などして国の浮沈を賭けたくはないのです。
それに湾岸諸国はイスラエルが核を保有していることもよく知っています。
そしてイスラエルがハマスの妄想のように地上から消し去る危機に遭遇した場合、それを使用することをためらわないこともわかっています。

わかろうとしない国がひとつありました。
ハマスのような狂信者を育て、中東諸国にテロ組織を配布して地域の不安定を作り出しているペルシャ人の国です。
湾岸諸国からすれば、イランなど宗派も違う上に、エラソーにイスラエルと戦えと呼号しながら、自分は一度も本格的戦闘を交えたことがない安全地帯にいたような国です。
こんな国がいくら太鼓を叩いても、湾岸諸国は参戦することはありえませんし、仮に米国と対決することになろうとも湾岸諸国は冷やかに眺めているでしょう。

第4次中東戦争での主力は、エジプトとシリアだったことを忘れないで下さい。
ヨルダンは参戦したものの、戦場に到達しないようにのろのろと進軍したといわれていますから、実際「アラブ側」といっても実態は2カ国プラスアルファ程度にすぎませんでした。
とうてい「全アラブ陣営」の枠組みで戦っていないのが、おわかり頂けたでしょうか。

第4次中東戦争によって、エジプトはいかなる手段でもイスラエルには勝てないということを身に沁みて理解しました。
言い換えれば、イスラエルを消滅させることは物理的に不可能だと悟ったのです。
しかもただぼろ負けしたのではなく、最終的には負けたにせよ、戦い半ばまではイスラエルを押しまくり、イスラエル軍自慢の機甲部隊と航空機を多く撃破しました。
いままで一回も勝ったことのないアラブ陣営にとって、この緒戦の勝利は特筆すべき輝かしい経験でした。

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スエズ運河を渡河してシナイ半島に侵攻するエジプト軍
第四次中東戦争 - Wikipedia

しかしイスラエル軍の主力が揃い反撃に出ると、形勢は逆転し、逆にエジプトとシリアは自国領土に攻め込まれて終わりました。

「純軍事的にみればイスラエル軍が逆転勝利をおさめたのだが、戦争初期にとはいえ第一次第二次、第三次中東戦争でイスラエルに対し負け続けたアラブ側がイスラエルを圧倒したという事実は「イスラエル不敗の神話」(イスラエルはアラブ側に対して決して負けない)を崩壊させ、逆にイスラエルに対して対等な立場に着くことができたエジプトは1979年エジプト・イスラエル平和条約を締結し、1982年にシナイ半島はエジプトに返還された(同年ゴラン高原はイスラエルが一方的に併合を宣言した)」
Wikipedia

皮肉にも、緒戦でのエジプトの勝利によっていままで出ると負けだったエジプトは自信を回復し、米国やイスラエルと対等の立場で交渉し、平和条約の締結に至っています。なにがどうころぶかわかりません。
この1979年に第4次中東戦争の結果生まれたエジプト-イスラエル平和条約が、今のアラブ世界とイスラエルの関係の基本となっています。
そこで決まったのは以下です。

●エジプト-イスラエル平和条約
・相互の国家承認
・1948年以来続く中東戦争の休戦
1967年六日間戦争占領英語版したシナイ半島からのイスラエル軍及び入植者の段階的撤退(1982年完了)
・返還後のシナイ半島におけるエジプト軍の兵力規模および活動地域の制限と国連平和維持軍の駐留
(ウィキ前掲)

ですから第4次中東戦争こそ、アラブ諸国にコペルニクス的転回を与えた戦争だったわけです。
その意味で、池内氏が「第4次中東戦争時に戻る」というのは大変けっこうなことだと私は思うのですが、ナニを心配されているのかしら。

このような経過を持つエジプトが、いまさら「外国」のパレスチナのために戦争をイスラエルに仕掛けるということはありえません。
エジプトが立たないような対イスラエル戦争など絶対にありえませんし、エジプトが踏み切る可能性はかぎりなくゼロである以上、第5次中東戦争などどこをどうしても起こりようがないではありませんか。

ところで、エジプトなどの湾岸諸国の態度を飯山陽氏はこう規定しています。

①イスラエルに対しては、入植や「占領」を批判。
②パレスチナの大義は支持。
③パレスチナ自治政府に対しては失望。
④ハマスはテロ組織。
(飯山陽note)

ハマスはメディアのいうように「ガザ住民の福利厚生団体」などではなく(あたりまえだ)、ISなどと同じイスラム教原理主義テロ組織です。
ですから、湾岸諸国が④ハマスをテロ組織と認定しているのは、彼らがイスラム原理主義国家を目指して王政打倒を叫んでいるアブナイ奴らだからです。
彼らは、サウジ、ヨルダン、UAE、ついでに世話になっているカタールの王室などもまとめて地獄行きだと考えています。
こんな自分の国をメチャクチャにしかねない過激派と一緒に戦争ができるかどうか、考えてみればお分かりのとおりです。
カタールがハマスのボスを優遇しているのは、ヤクザにめかじめ料を払って、うちだけはなんとかお眼こぼしをと思っているからにすぎません。
カタールは、米国に睨まれないために米軍基地を置いてバランスをとったつもりになっています。
このように湾岸諸国はまことにいじましい国々で、軒並みハマスに対しては強い嫌悪感をもっています。

ハマスはかつてエジプトにおいてムスリム同胞団をもとにしてつくられた団体ですが、エジプトはハマスと袂をわかっています。
むしろ今はハマスの流入を恐れて、ガザとの国境にあるラファ検問所を閉めています。


「イスラム教は信仰だが、国の安全保障にまつわる政治を必ずしも超越するとは限らない。
エジプトに住む何百万人ものムスリムの人たちは、ガザの民間人の苦しみを前に、何とかしたいと思っているはずだ。
しかしエジプト政府は、たとえ平時だったとしても、ラファ検問所を越えてガザからエジプトへ入ることを認めていない。イスラエルは今回、ガザ地区を完全封鎖しているが、ハマスが2007年からガザを実効支配するようになってからというもの、エジプトは同じようなことをしていたのだ」
(BBC10月18日) 
【解説】 他国は巻き込まれる? イスラエル・ガザ戦争、読者の質問にBBC特派員が回答 - BBCニュース

湾岸諸国は、今回の事件について外国から問われれば「パレスチナの大義」と条件反射的に応えるでしょうシ、イスラエルのガザ爆撃を非難するでしょうが、実際にはただのお題目にすぎません。
かつてのように戦争などする気などまったくありません。
その力もなければ意志もないのです。
エジプトさえガザとの検問所を閉めて難民の流入を防ぐていどの対応しかしていませんから
、あとの諸国は推して知るべし、戦う気などゼロです。
中東諸国が戦う気がないのに、誰が中東戦争をするのでしょうか。

この状況に危機感を持ったのが、イランとハマスでした。
最期の大物であるサウジすらまさにイスラエルと握手しようという直前にこのハマスのテロが炸裂したわけです。

ハマスを操ったのはイランであることは確かです。
直接にゴーサインをだしてはいないようですが、ここまでハマスを育成してしまったのはイランとカタールです。

イラン=ハマスは到底イスラエルが主権国家として容認できない規模のテロを仕掛けてイスラエルをおびき出し、ガザの戦場に引き込んで市民の死傷者の山を築かせて孤立化させようとしています。

イランの手先のヒズボラが米軍基地に攻撃をしたために米国はイラン国外の軍事目標を攻撃していますが、極めて抑制された反撃で、イランとの全面戦争に発展する可能性はありません。空母打撃群を2個急派しましたが、それはヒズボラへの押さえだといわれています。
この空母打撃群は、常に中東、大西洋方面に配置されているものですから、アジア方面が手薄になっているということはありません。
したがって、アジア方面の兵力を引き抜かねばならないような事態ではありません。

仮にそうなっても困らないように、日本は対中抑止を重層化しておく必要があります。
いま、日本がしているのはフィリピンとの準同盟関係づくりです。

「日本とフィリピン両政府は、自衛隊とフィリピン軍が共同訓練する際の入国手続きなどを簡略化する「円滑化協定」の締結に向けた協議を進める方針を固めた。岸田文雄首相が11月上旬にフィリピンを訪問して同国のマルコス大統領と会談し一致する。同協定が締結されれば、日本が「準同盟」と位置づける豪州、英国に続き3カ国目となる」
(朝日10月28日)
自衛隊とフィリピン軍、訓練円滑化へ 来月首脳会談、中国念頭に協力 [岸田政権]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

要は、米国がどうであろうと日本は日本の構えを怠らないということに尽きます。

 

 

 

 

2023年10月30日 (月)

イスラエル-ハマス戦争をあえて単純化してみます

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宜野湾さんやふゆみさんのおっしゃことを聞いているとふむふむとなります。
かつて安倍氏が、「イスラエルの言うことを聞いているとなるほどと思うが、パレスチナのことも聞くとふむふむと思うから悩ましい」という意味のことを言っておられましたか、ほんとうに難しい。

ですから、今回の「ハマス-イスラエル戦争」は、あえて素人の蛮勇で単純化して考えてみることにします。
まず最初の単純化。今回の紛争の原因はなんでしょうか?
実は多くの論調は、意図的か否かは別にして、あえてここを無視しています。

いうまでもなく、原因はハマスの残虐非道なテロが発端です。
ここをハズしてしまうから訳がわからなくなります。
ところがいまや世界の空気は、「ガザの子供をイスラエルの残虐な爆撃から守れ」に変化しようとしています。
エルドアンなど「イスラエルは戦争犯罪国家だ」とまで言い出す始末です。

イスラエルとハマスの戦争では、イスラエルでは1400人、ガザではハマスの主張では7000人を超える死者が出て、ハマスに捕虜になっている人は、子供30人を含む220人以上にのぼっています。
しかも人質たちは二重国籍なので、イスラエルだけでなく、少なくとも25カ国が関係する国際問題です。
国連は米国案、中露案が相互の拒否権でオシャカになり、非常人理事国案の三つが出て結局、非常任理事国案が可決されました。

「(非常任理事国案に)反対を投じたのはアメリカ、イスラエルと、オーストラリアなど14カ国。日本を含む45カ国は棄権票を投じていた。
この決議案は、ヨルダンが提起したもので、イスラエルもハマスもいずれも名指しで非難はしていない形での即時停戦と、民間人の解放、民間人と国際機関の保護、ガザへの人道支援の安全な通過を求めるとなっている。
これでは、被害国イスラエルと、犯罪者テロ組織が同等に並べられているだけでなく、第一恐ろしい犯罪を犯したハマスを非難していないという決定的な問題を含むということである。イスラエルとアメリカも反発を表明した」
機能不全の国連がハマス非難なしで即時停戦で可決:ハマスが歓迎を表明 2023.10.28 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

決議案においてことの発端を作ったハマスを非難するか、スルーするかが分岐点なのですが、結局国際社会はスルーを選んでしまい、禍根を残したまま可決してしまいました。
最初に挑発してどの国でも耐えられないような大規模テロを仕掛けて、イスラエルが激怒するのを見越して罠にハメようと画策したのはハマスであるにもかかわらず、です。

そこで第2に、ハマスとは何者なのでしょうか。
ひとことで言えばテロ組織です。ここがグラつくとまたまた訳が分からなくなります。
メディアは一斉にハマスは行政組織で、病院、学校を持つ福祉団体だと報じ始めました。
ならば、なぜ病院の地下で人を殺すためのロケット弾づくりをしているのでしょうか。

事実、日本ではまったく報じられていませんが、ガザに限定的侵攻をしたイスラエル軍は、病院の地下にトンネル網を発見しています。

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「イスラエル軍のハガリ報道官は、27日、記者会見を行い、ハマスの主要な拠点が、ガザ地区で最大の総合病院であるシファ病院の地下にあると、証拠映像や傍受録音などとともに発表した。
また、10月7日に奇襲がはじまるやいなや、大勢のハマス戦闘員数百人が、身を隠すために、ここへ逃げ込んでいたと報告した。その証拠もあるとのこと。

イスラエルは、病院を通過せずに、トンネルへ入る通路も把握している。病院地下通路を通じて、他の病院へも移動可能になっているとのこと。
www.timesofisrael.com/hamass-main-operations-base-is-under-shifa-hospital-in-gaza-city-says-idf/
地上軍侵攻でハマスと戦闘に:ガザ空爆でハマス司令官ら5人死亡 2023.10.28 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

ハマスは病院を楯にして、いまだロケット弾攻撃を続けています。
これが国連(UNRWA)が支援している病院のもうひとつの素顔です。
ですからイスラエルはテロを潰すためには、爆撃するか、地上進攻してひとつひとつ潰していくしかなかったのです。
ただし、これは病院というもっとも保護されるべき民間施設への攻撃という国際人道法に抵触する可能性がありました。

ここで問題となる第3の問題は、イスラエルの反撃のやり方です。
イスラエルは今までの慎重なサージカルストライク(精密攻撃)の方法を捨てて、ワンブロック全体を爆撃で廃墟にするような限定的無差別爆撃に踏み切りました。
その結果、いまメディアを騒がせている痛ましいガザ市民の死傷が積み重なっていくことになり、いままでイスラエルに同情的だった国際社会はドン引きしました。

このことに関して、私も強くイスラエルを非難する側に回ります。
イスラエルの怒りと悲しみを理解したうえで、これ以上の無差別爆撃は国際社会で敵を増やすことです。
これが非常任理事国案が圧倒的多数で成立した国際社会の「空気」です。
すなわちこれが「ハマスの罠」です。

第4に、ではどうしたら解決できるのでしょうか。
ここで英国の二枚舌とか、果ては紀元前まで遡っても無意味です。

このような歴史まみれの土地で歴史を蒸し返せば、かえって分かりにくくします。
せいぜい遡っても、今のアラブ-イスラエル関係の基本を作った1973年の第4次中東戦争(ヨム・キプール戦争)まででストップすべきです。
第4次中東戦争を見れば、イスラエルとパレスチナ国家が平和共存すること以外に解決がありえないことが分かるはずです。

ハマスが主張するように「パレステナの大義」などと言って、イスラエルを地上から文字どおり抹殺することが解決だなどと言っていては、パレスチナ問題の解決は永遠にないのです。
中東の恒久平和を獲得するには、お互いに存在を認め合い、パレスチナはイスラエルを認めてテロリズムを清算し、イスラエルもまたパレスチナを国家承認して新たな入植地の拡大を止めるべきです。
そのためにはパレスチナ自治政府がしっかりしてもらわねばならないのですが、腐敗してハマスに乗っ取られているありさまであることが今回の遠因です。

実はこの平和共存への道は、9合目まで出来上がっていました。
アラブ世界の盟主であり最大の軍事力を持つエジプトは、第4次中東戦争で負けてこの平和共存路線に切り換えました。
ハマスが起こしたいのは第5次中東戦争であり、そこに世界全体をたたき込み世界戦争に仕向けたいのです。

残念ですが、イスラエルはこの「ハマスの罠」にいまのところ完全に片足を取られています。
ただしイスラエルも馬鹿ではありませんから、そろそろこの罠の存在に気がつき始めたようです。
地上攻撃は人質問題もあって見送られたままになっており、部分的越境攻撃を繰り返すに留まっています。
私は戦車を先頭にする大軍での侵攻ではなく、少数の特殊部隊の攻撃を持続することをお勧めします。

なお地上戦は一部ですでに始まっていますが、その目的はハマスのトンネル網の壊滅です。
佐藤正久氏はこう見ています。

「実際に2014年時は大きな犠牲が出ている。イスラエルはできるだけトンネルには入りたくない。人質がいなければ、一番簡単なのは海水をどんどん中に入れること。そうすれば弾薬は全部湿気ってしまうから。人質がいたらなかなかそれができない。ガスや煙を使う手もあるが、ナチスのこともあり、それもなかなかできない。
できるだけ(トンネルに)入らず、向こうが出てきたところを叩くのが一番犠牲は少ない。そのかわり時間はかかる。
今回の戦いは、包囲環をつくってどんどん狭めていくという戦いではなくて、少しずつ地歩を確保しながらトンネルから出てきた戦闘員を叩く、あるいは地歩を固めてトンネルがないかどうか調べながらゆっくり進む。大規模な地上戦闘というイメージとは違う戦いをやれば、犠牲は少なくできる。ただ、時間はかかる。だから(イスラエルとしては)いま電気や燃料は絶対にハマスにやりたくない」
保育器の乳児が死に瀕しても、イスラエルがガザ地区に「燃料」支援を認めない理由(FNNプライムオンライン(フジテレビ系)) - Yahoo!ニュース

いずれにしても長期化することは間違いありません。
中東戦争や世界戦争に発展することはないと信じたいですが、だからこそ情報戦がいっそう大事なのです。


 

2023年10月29日 (日)

日曜写真館 子も秋へ朝焼雲は母が見て

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朝焼ほのか藪ひたす水のあふれ落つ 種田山頭火 

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朝焼けてただただきのふよりも勢ふ 三橋敏雄

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朝焼けのなおも濃くなる 舟遊歌 伊丹三樹彦

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帯なす朝焼黒人霊歌は女声高し 金子兜太 

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朝焼のうつくしさおわかれする 種田山頭火

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朝焼に染まる間あらず水泡消ゆ 橋閒石

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朝焼の屏風のごとくうつくしく 山口青邨

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朝焼けてただただきのふよりも勢ふ 三橋敏雄

 

 

2023年10月28日 (土)

イスラエルとハマス・イランの間で中立はありえない

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大変に珍しいことですが、常連コメンターである宜野湾さんとふゆみさんと意見が違ってしまいました。
宜野湾さんはこのようにコメントされています。

「テロリズムも違法な武力行使による現状変更も是認しないのは当然の前提として、カタールが「イスラエルに無条件の青信号や殺しのライセンスを与えるのは支持できない」と危惧する(実際イスラエルは報復戦略成功のためなら犠牲が出ても止む無しと考えている)ような面から、G7支持の中でイスラエルが国連憲章に定める自衛権の範囲を逸脱(民間人の大量巻き添えなど)するようなことにでもなり、そういう解決法を是認すれば、それが台湾有事に反映された時どうなるか、と考えることもできます」

まず宜野湾さんが、ここでカタールの言説を出したのが理解に苦しみます。
私は、カタールがなにを言おうといっさい無視することにしています。
カタールは中立の立場でもなんでもなく、ハマス支援国家の最たる国だからです。
カタールは、ハマスの最高指導者ハニーヤに豪邸を与えて、大富豪のような暮らしをさせています。
ハニーヤなどの幹部の総資産は6000億円ともいわれ、プライベートジェットを所有しリムジンを乗り回す生活をしています。
それもガザに来る難民支援金から公金チューチューをしたアガリですから、なんともかとも。

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総資産6000億円!イスラエルが殺害を狙うハマス幹部「残酷6人衆」の正体…プライベートジェットを乗り回し、安全地帯から戦闘指示【全員の顔写真入手】 - ライブドアニュース (livedoor.com)

「カタール政府がカタール国内に活動拠点を提供してきた組織の1つがハマスで、最高幹部ハニーヤ氏はカタールで暮らし、ここから対外的なメッセージを発してきました。
ハマスは、ガザ地区では暗殺される恐れもあるとして、2012年に政治部門の事務所をカタールに設置したとされています。
そして、ほほ同じ時期、カタールに、同様に政治部門の事務所を設置した組織が、アフガニスタンのイスラム主義勢力「タリバン」です」
(NHK10月25日)
ハマス人質解放で注目されるカタールの“仲介外交”(油井’s VIEW) - 国際報道 2023 - NHK 

つまりカタールはメディアに「親米」などと報じられていますが、テロリスト支援国家といって差し支えない国なのです。
米空軍基地を置いているのは、眼くらまし、あるいはただの保険のようなもので、カタールの顔はしっかりとテロリストの側に向いています。

ですから、今回の事で欧米から、ハマスの事務所を撤去しろという圧力をかけられましたが、5人の人質を解放してみせて「仲介役」であることを誇示しています。

こんなカタールが「イスラエルに無条件の殺しのライセンスを与えるな」と言っているそうですが、片腹痛い。
ハマスに「殺しの無条件ライセンスを与えているのは」のは、他ならぬカタール自身です。
この国に人道を言う資格はありません。

カタールはハマスに「米国がうるさいからお印でいいから解放してみせてよ」と言っただけのことで、こういうことを「仲介」と呼ぶべきではなく、むしろ「合法的窓口」と正しく呼ぶべきです。

むしろカタールがちょっと動けば人質が戻る、というほうが怪しいんじゃありませんか。
いかにツーカーの関係なのか、ということです。
ちなみにハマスは人質をカードに使っており、先日解放されたイスラエル人の高齢の女性は、夫をまだ拉致されたままなので口を封じられたままです。

「ハマスは、昨日、人質の中で、高齢女性二人を釈放したが、彼女たちを穏やかに扱っていた一面を強調し、ハマスこそ、人道的だと世界にアピールしている。
世界はおおむね、ハマスの宣伝に傾いているようでまる、イスラエルが悪い国だという印象を撒き散らそうとする、激しい情報戦争だが、イスラエルはどうもこれに負けはじめているようにもみえる」
(オリーブ山通信10月25日)
ガザ人道危機問題:燃料搬入を拒否するイスラエルに国際社会の厳しい目とイスラエルの反論 2023.10.25 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

ハマスはこうやって、人質にとった各国と裏交渉で高い要求を出しては、それに応じて二人三人という人数で「解放」する気だと見えます。
たとえば、頑としてテロとの戦いを主張する国には、このまま米国につきあっていると人質が死ぬことになるぞ、と脅すことでしょう。
ハマスに同情的な姿勢を見せれば、ひょっとして人質を返してもらえるかもしれません。
こうして西側諸国の利害は分断され、一致団結してテロと戦うことができなくなります。

わが国外務省ならば、裏金を積んで人質解放を懇願することでしょうが。

とまれ、カタールがこんなキレイゴトを言っても、イスラエルは洟もひっかけないはずです。
もちろんカタール如きに「仲介役」を依頼することなど絶対にありえません。

国連は本来なら調停役をするために出来たような機関ですが、グテーレスの極端なハマス寄りの言動のおかげで国連の線をみずから消滅させました。
そもそもUNRWAをハマスに支配させておいて、いまも連日「現地国連機関」の名で反イスラエルのパブリシティをしているような国連にイスラエルは聞く耳を持ちません。
百歩譲って国連に従うと考えても、ブラジル案を米国が拒否し、米国案は中露によって拒否されているのですから、身動きがとれません。


ではどのような立場の国が、イスラエルに対して「国際人道法に沿って自衛戦争をしろ」といえるのでしょうか。
イスラエルを説得できる条件は三つです。

①ハマスの残虐なテロに対して強い非難をする。
②ハマスをテロ組織だと認識する。
③イスラエルの反撃を自衛権の発動と認める。

この3点は原則中の原則であって、ひとつも譲れないもののはずです。
わが国のようにテロと呼ばず「紛争」と呼び、ハマスを「ガザ地区を実効支配する武装組織」などと呼ぶような国、あるいはメディアに重信の娘を登場させるような国は、この段階でイスラエルから発言資格なしと認定されています。
つまりイスラエルからは相手にされませんから、「中立」もナニもあったもんじゃありません。
イスラエルに日本は、アチラ側一歩手前の国と認識されていることでしょう。
なぜなら日本は、パレスチナ難民支援金という名称でUNRWAを通じてハマスに資金供給しているからです。

「2021年9月に外務省が公開した「我が国の対パレスチナ支援」という資料によると、1993年以降の日本の対パレスチナ支援の累計は21.5億ドル以上、日本円に換算すると2400億円以上にもなります。
「我が国による最近の支援」というところには、筆頭に「パレスチナ難民支援」が挙げられ、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を通じて、パレスチナ難民に対して273万ドルの食糧支援の実施を決定、UNRWAを通じて「パレスチナ難民の子供のための質の高い包括的な教育に向けた学校における学習環境強化計画」に対して約900万ドルの支援を決定などと書かれています。
2020年3月に外務省が公開した「中東和平についての日本の立場」という文書にも、「パレスチナ難民の経済・社会生活を向上させる国際的取組に貢献するため、我が国は、UNRWAを通じたパレスチナ難民支援に引き続き努力していきたい」と書かれています」
(飯山陽『中東問題再考』

そのうえ日本はハマスのバックにいるイランと、西側最大の「伝統的友好国」です。
ハマスを指導して武器や資金を与えているイランと握手しているような日本のような国は話の外です。

こんな日本をイスラエルがどう見ているか、考えなくてもわかります。

したがって私は、池内恵氏は私が敬愛して止まない研究者ですが、今回ふゆみさんが支持なさっている「中立無難論」には大きな疑問をもたざるを得ません。
イランが日本の言うことをひとつでも聞いたことがあるでしょうか。ナッシングです。
いままでさんざんホルムズ海峡で各国のタンカーを攻撃してきましたが、それを止めたこと一度でもありましたか。なしです。
むしろ日本のタンカーを首相訪問に合わせて攻撃し、死傷者さえ出してさえみせました。

イランは、日本との「伝統的友好関係」など歯牙にもかけておらず、日本を「大悪魔米国の犬」くらいに考えています。
ニコニコ握手してみせるのは、自由主義陣営を分断できるからで、日本を「中立」の立場にしておくほうが有利だからです。
それをなにを勘違いしているのか、70年も前の日章丸事件を忘れきれずに「伝統的友好」にすがっているのは日本のほうだけなのです。

中東原油に9割依存しているからということを言う人もいますが、依存しているのはサウジとUAEであってイランなど1.5%にすぎません。

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中東依存率は88.9%…日本の原油輸入元をさぐる(石油統計版)(2020年公開版)(不破雷蔵) - エキスパート - Yahoo!ニュース

いまや、このようなあいまいな「中立無難論」こそ、テロに対する立場を弱めている元凶となっています。

宜野湾さんは国際人道法に反するイスラエルの反撃を容認すれば台湾有事に影響が出るとお考えのようですが、コレはコレ、アレはアレです。
イスラエルがどうであろうと、中国は国際人道法など守る気など初めからさらさらありません。
超限戦を準備し、国際司法裁判所の判決にも背いて南シナ海を占拠している国に、国際人道法の説教をしても無意味です。
中国に国際法など念頭にありません。
ありとあらゆる非合法的、かつ非人道的な手段を使ってでも勝つ、勝者こそ善だと中国は考えているはずです。

台湾に対する攻撃は、ロシアがやったように徹底した民間インフラと民間人を標的にするはずです。

わが国は欧米の自由主義陣営と共にイスラエルを支持し、そのうえに則って国際人道法を守れと主張すべきなのです。

一方、ハマスに対して影響力を持つのはどの国でしょうか。
生みの親であるイランを別にすれば、それはロシアです。
ロシア官営スプートニクはこう書いて、いまハマス代表団が訪露していると報じました。
ハニーヤはプイベートジェットで行ったようです。


「ハマスの声明によると、代表団はロシアのプーチン大統領の姿勢を称賛し、国際社会が「シオニスト政府によるジェノサイド(集団殺害)の犯罪に対して責任を果たす」必要性を強調した。声明にはまた「ボグダノフ氏はパレスチナ人の権利を支持するロシアの立場を表明し、停戦や検問所の開通、ガザへの人道支援物資の搬入を実現するために、関係機関と共に行っている取り組みも示した」 
(スプートニク10月26日)
パレスチナのハマスの代表ら、モスクワを訪問=露外務省 - 2023年10月26日, Sputnik 日本 (sputniknews.jp)


ハマス側は、混乱し、分裂を深める西側陣営に対してスッキリした支援関係を持っています。
ロシアはハマスの無差別テロを称賛し、ガザの「人道的停戦」を要求しています。
これに応えるかのように、マクロンは「人道的停戦」を要求し始めました。
フランスのマクロン大統領は27日、イスラエルとイスラム組織ハマスによる軍事衝突について、「爆撃を受けている人々を保護するためには、『人道的停戦』が有効だ」と述べた。「戦闘の中断」を求める欧州連合(EU)よりも踏み込んだ表現で対応を訴えた」
(朝日10月28日)
【速報中】マクロン大統領「人道的停戦を」 表現、EUより踏み込む [イスラエル・パレスチナ問題]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
毎度のことながら、この人物の軽薄さには辟易します。
戦闘を「中断」するということは、あくまでも国際人道法の枠内でのガザ侵攻を容認している表現ですが、「停戦」は現況で戦争を事実上凍結するという意味です。
現況で停戦してしまったら、ハマスはほとんど無傷でそのまま温存され、また同じテロを繰り返すことでしょう。
結局、死んだのはイスラエク国民とガザ住民ばかりということになってしまいます。
ちょうどいまロシアがウクライナに対して言っている「和平」が、占領地の確保しか意味しないのと同じことです。
ここでもまた「人道」という自由主義陣営にとってもっとも弱い脇腹を突かれているようです。
イスラエルは完全にパブリシティで負けています。


 

 

2023年10月27日 (金)

イスラエルは頭を冷やせ

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イスラエルは味方を急激に減らしていっていることに気がつかないのでしょうか。
アラブ諸国が、ガザ爆撃に対して強い怒りをもっていることは予想できたことです。
西側陣営に近かったヨルダンの王妃はこう述べています。


西側陣営にも分裂が目立つようになりました。

「イスラエル軍はハマスのテロに報復するためガザ侵攻を準備しつつ、空爆を繰り返しているが、EU内にはイスラエルの報復攻撃での評価には温度差がある。即時停戦を求める国がある一方で、ハマスが完全に壊滅するまで戦闘を続けることを支持する国がある。「無条件でイスラエルの自衛権を認める」と主張する加盟国と、ガザ地区のパレスチナ人の人権保護を考慮し、イスラエル軍のガザ報復攻撃には批判的な国に分かれている。
ルクセンブルクで開かれた外相会議では、スペイン、スロベニア、アイルランドなどは、人道的即時停戦を求めるアントニオ・グテーレス国連事務総長の呼びかけを支持したが、ドイツ、オーストリア、チェコなどは即時停戦案に反対している」
(ウィーン発コンフィデンシャル10月26日)
ウィーン発 『コンフィデンシャル』 (livedoor.blog)

イスラエルを支持する国はドイツ、オースリア、チェコなどです。
ドイツはナチスのホロコーストへの贖罪意識からか、イスラエル支持を貫徹しています。

こういった中で、ポルトガル出身のグテーレス国連事務総長は致命的なミスを犯しました。
本来、このような状況で国連に求められるのは調停であるにもかかわらず、こう言ってのけたのです。

「国連 グテーレス事務総長:「ハマスによる攻撃が理由もなく起きたわけではないと認識することもまた重要です。パレスチナの人々は56年間にわたり、息の詰まるような占領下におかれています。彼らは自分たちの土地が入植によって食い荒らされるのを目の当たりにし、暴力に苦しめられてきました。
「イスラエルの建国に伴い、パレスチナ人は次々と土地を追われ、その多くは現在の自治区と呼ばれるエリアに押し込まれています」
「ただハマスの攻撃を正当化するものではなく、その攻撃もパレスチナ人への集団懲罰を正当化できません」 
(テレ朝10月25日)
国連混迷イスラエル“怒りあらわ” グテーレス氏発言巡り辞任要求 (tv-asahi.co.jp)

このグテーレスは、ハマスがテロを起こした原因をイスラエルにあるとします。
「イスラエル建国によってガザ地区に追い込められ、いまは息の詰まる占領下に置かれている」からだとしてしまいました。
この論法は、よく日本の中東学者と称するハマス版ムネオらが口にすることです。
「天井のない牢獄」に繋がれているから重圧の解放としてテロをしてよい、という論法です。
こういう言い方でテロを正当化すれば、必ずじぶんの国でテロを起こされますが、グテーレスはわかって言っているのでしょうか。

イスラエルがガザを占領しているですって?それでよく国連事務方トップが張れますね。
そもそも8年も前の2005年にイスラエルはガザから撤退していますし、いまかの地を「実効支配」しているのはまぎれもなくハマスです。

だもから、メディアはハマスの接頭語に必ずといっていいほど「ガザを実効支配する」とつけているではありませんか。
もし、イスラエルがガザを占領していれば、いまさら地上侵攻もなにもあったものではありません。
今回侵攻したとしても、ハマスを掃討に一定の成果が上がったとイスラエルが判断すれば、地上軍を撤退させるでしょう。
あんな世界一テロリストが密集している場所に軍を置くのは、テロの標的を与えるようなものだからです。

グテーレスが提案した「人道的停戦」案自体は、頭から拒否する性格ではないと思います。
しかし、その理由にハマスの言い分をまるごと代弁したようなことを言えば、イスラエルが激怒してグテーレスの辞職と、国連で人道問題を担当するグリフィス事務次長への査証発給を拒否 するのはあたりまえで、安保理で審議する前から当事者から拒否されてしまいました。

グテーレスはイスラエルが国連に対して深い不信感があることを知るべきです。
メディアが言う「ガザの国連機関」とはハマスなのですから。
ハマスが国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を牛耳り、テロの温床にしています。

「ガザはイスラエルによる封鎖が続き、今回の紛争前から住民の6割が食料支援に頼ってきた。その配給を担うUNRWAガザ事務所は職員約1万2000人を抱え、地域最大の「雇用主」でもある。職員のうち外国人は幹部ら十数人で、99%以上を地元のパレスチナ人が占める。
UNRWAは学校や病院運営、インフラ整備を担うため、ガザを実効支配するハマスとの関係は断ち切れず、イスラエルは「ハマス戦闘員や武器移送の隠れみのになっている」と非難してきた。UNRWA学校の教科書は「ユダヤ人憎悪を煽(あお)り、イスラエル攻撃を美化している」と米欧でも再三問題視されてきた。ガザでは小学校など約280校がUNRWA傘下にある」
(産経10月26日)
国連とイスラエル、根深い相互不信 ガザ支援難航の背景に - 産経ニュース (sankei.com)

今回「ガザ保健当局」、あるいは「国連現地当局」と称して死亡者数を発表しているのは、すべてこのハマスです。
たぶん大幅に水増しされているはずですが、大きな民間人被害がでていることは疑い得ません。

ただしグテーレスが言うように、イスラエルの報復攻撃は度が過ぎています。
これは事実です。

このガザ地区への攻撃作戦は「鉄の剣(ソーズ・オブ・アイアン/ヘブライ語名ハラヴォート・バルゼル)は、そのすさまじさにおいて大戦中に壊滅したドレスデンに比較されるほど過激です。

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Xユーザーのイスラエル空軍https://t.co/3Xm1vxvq7D」 / X (twitter.com)

「反撃作戦開始から5日後の10月12日にイスラエル軍はその爆撃の投弾量を発表しています。空軍の爆撃だけで6000発の爆弾を投下し、その合計重量はなんと4000トンにも達しています。1発あたり平均666kgというこの数字から大型の航空爆弾の比率が高く、一般的な500ポンド爆弾(227kg)はむしろ少なく、1000ポンド爆弾(454kg)以上が主体で、大重量の2000ポンド爆弾(907kg)が大量に投下されていることが分かります」
(JSF10月22日)
イスラエル軍のガザ空爆は開始5日で4000トンの爆弾を投下、ドレスデン爆撃に匹敵(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース

爆弾の投下量は実に4千トンにも達し、しかも454㎏級や907㎏級といった大型の航空爆弾が多用されています。
しかもこれらは今までのようなGPSをつけたJDAM精密誘導タイプではなく、自由落下する無誘導のものが多く使われているようです。
これは映像的にも確認されています。
下写真はイスラエル空軍によって10月15日にポストされたツイートのもので、F-16に搭載されているのは旧式の無誘導爆弾であるM117(750ポンド、340kg)です。

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XユーザーのIsraeli Air Forceさん: 「ממשיכים להגן על הבית. https://t.co/lYk22IXtG7」 / X (twitter.com)

このような無誘導爆弾は開けた土地で軍事目標に用いるべきもので、民間人地帯でハマスのロケット弾発射施設をピンポイント破壊するにはまったく不向きです。
今までイスラエル空軍は、ガザ地区の空爆に際して民間人被害が出ないように、あらかじめ避難経路まで記したチラシを投下し、SNSでも警告を与えてから精密爆撃で当該箇所のみを破壊してきました。
しかも事前にその建物の屋根にルーフノッカーと呼ばれる小型の爆弾を落としてから、本格的攻撃を仕掛けるという民間人保護の手順を踏んできました。

それが今回、これまでの慎重さをかなぐり捨てして、ひとつの建物どころか、ワンブロック全体を消滅させるような爆撃を行っています。
その結果、「ガザ保健当局」の発表で3千から4千人が死亡したと発表されています。

実に愚か極まる爆撃です。
こういう無差別爆撃をやって喜ぶのはだれでしょうか。
いうまでもありませんが、ハマスとイランです。

イスラエルがこの報復を自衛戦争とすることはまちがっていませんが、そのためには国際社会に納得させる必要があります。
戦争にはルールがあり、いかに相手がテロリストであろうと民間人を殺してはなりません。
現代においては、戦争にもルールがあり、国際人道法の範疇なのです。

かつては非戦闘員大量虐殺以外なにものでもない原爆投下や都市空襲があったために、その反省から大戦後は戦争において「やっていいこと」と「悪いこと」の区別をつけるために「国際人道法」が生まれました。
軍事力に当たらない非戦闘員の市民、特に女性や子供、老人、病人が多数居住する住宅地、病院、集会場、宗教施設、文化施設を攻撃対象にすることは禁じられています。

国際的人道団体のヒューマンライツウォッチは、明確な見解を出しています。

「戦時国際法のもと、攻撃の目標は「軍事目標」に限定される。軍事目標とは、軍事行動に効果的に資する物であることを示し、またその全面的または部分的な破壊、奪取または無効化が明確な軍事的利益をもたらすものを指す。
敵陣の戦闘員、武器、弾薬、建物や車両など、軍事目的で使用されている物などが該当する。
国際人道法は、武力紛争中、民間人の犠牲がある程度避けられないことを認識してはいるが、紛争当事者には依然、戦闘員と民間人の区別義務、及び戦闘員など軍事目標のみを標的とする義務が課される。ただ、民間人は、戦闘中の戦闘員を支援するなど、「敵対行為に直接参加している」間は、攻撃対象から除外されない」

ロシア、ウクライナと国際法:占領、武力紛争、および人権について | Human Rights Watch (hrw.org)

ハマスが病院や学校を拠点にしていることは知られていますが、だからといってその建物全体を破壊したり、ましてや一区画全体を爆撃で消滅させることなどは許されない蛮行です。
イスラエルはこのような爆撃をただちに止め、かつてのような民間人に犠牲がでない方法で攻撃をするべきです。
味方を減らして、敵を増やす戦争をしてどうするんですか。
こんなことをしていると、当初あったイスラエルの悲劇に対する同情や連帯の気持ちすら萎えてきます。
これこそハマスが望んだことではなかったのですか。
イスラエルよ、頭を冷やせ!

 

 

2023年10月26日 (木)

「イスラエルの核」という複雑なパズル

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イスラエル情勢を語る時に、なぜか語られないものがひとつあります。
イスラエルの90発以上といわれる核の存在です。
後述しますが、これは疑惑ではなく公然の秘密であって、イスラエルは保有をあえてあいまいにする戦略をとっているだけのことです。
これはイスラエルが、米国の核の傘(拡大抑止)に入っていないことを意味しています。

イスラエルの核は、米国にすら完全に隠匿して開発されました。
米国政府がイスラエルの核の存在に気がついたのは、英紙サンデー・タイムズが1986年10月5日号において「暴露─イスラエル核兵器の秘密」というスクープ記事によってでした。
同紙は、イスラエル南部のネゲブ原子力センターの元原子炉技術者モルデハイ・ヴァヌヌの内部告発証言と、彼が撮影した多数の写真に基づいて、極秘の巨大な地下工場で核兵器が製造されていることを暴露しました。
そしていまや、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は2017年、イスラエルが保有する核弾頭数を80発と推定しています。
この80発はミニマムの数字で、おそらくイスラエルは現在約80~200発の核爆弾とその運搬手段を保有していると見られています。

米国はあえてこの「イスラエルの核」の存在に眼をつぶってきました。
最初の暴露記事が出た1986年から6年後に、米国はイラクに開戦するにあたっての大義を核兵器や大量破壊兵器の開発阻止に置きましたが、戦後の検証によってそのようなものはなかったことがわかっています。
またイランは2003年に核開発が露顕した後、厳しい制裁を受け続けています。

しかし、中東において最初に核開発に成功し、核爆弾とその投射手段を保有するイスラエルにはひとこともありませんでした。
これは二重基準です。
どうしてこのようなダブスタをイスラエルに対してだけとるのでしょうか。

その理由は逆説的ですが、NPT(核拡散防止条約)体制を護持したいからです。
世界の主権国家を、核保有国である米露中英仏(P5)と、それ以外の非核兵器国に二分して管理するのがNPT体制です。
これこそが戦後体制そのものでした。

しかし唯一の例外がありました。いうまでもなくイスラエルです。

煎じ詰めると、主権国家の運命はどこの国の核の傘に入るのかで決定されます。
なんの紛争もない凪の地域ならいざ知らず、外国の脅威にさらされている国にとって、どの国の差し出す核の傘にわが身を預けるのかで、国家の行き先は決定されてしまうのです。
たとえばアジア・オセアニアにおいては、日韓豪NZの国々は中国の核に対峙するには米国の核の傘に入るしか選択の余地がなかったわけです。

では、イスラエルはどうでしょうか。
イスラエルは米国の兵器体系に依存しながらも、核兵器に関しては独自の道を選択しました。
つまりイスラエルは、米国や欧州を信じていなかったのです。
欧州は、ナチスのホロコーストに際して無力だったばかりか、フランスのようにドイツ占領地域においてユダヤ人狩に協力した恥じるべき歴史を持っています。
どうしてら彼らを信用できようか、それがイスラエルの本音でした。

そして誕生したばかりのユダヤ人国家の存続の担保として核を保有したのです。

イスラエルという国を無から作り上げ、核保有に踏み切ったのはダヴィッド ・ベングリオン初代首相でした。

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ベン・グリオン ハウス|アレックスソリューションズ@イスラエル (note.com)

「「原子力兵器」の開発・保有は、初代イスラエル首相ダヴィッド・ベングリオンの着想である。ベングリオンが核兵器開発を重視した理由としては、
①「イスラエルの破壊・抹殺」を叫ぶアラブ諸国による「第二次ホロコースト(the second Holocaust)」を絶対に阻止するとの決意。
②人類初の原爆製造に成功したアメリカのマンハッタン計画にユダヤ人科学技術者が多大の貢献をしたことなどからくる「ユダヤ人の頭脳」への信頼。
③原子力エネルギーを利用した大規模淡水化事業によって不毛のネゲブ砂漠を花咲く緑の草原に変える。
(『イスラエルの核不透明政策と ケネディ~ニクソン政権』船津靖)
HG40206 (2).pdf

すなわちイスラエルの核開発は、二度とホロコーストを受けないというユダヤ民族の決意そのものであり、それはユダヤ人を海に追い落とせと叫んで四方から攻め込んで来るアラブ諸国に対する恐怖が背景にあったのです。
これは今に至るもいささかも変化しないイスラエルの根っこにある感情です。

すぐれた現実主義者だったベングリオンは1948年の独立戦争の勝利の後も、アラブ世界の攻撃はこれで終わりとならず極めて長期間これに耐えぬかねばならないことをわかっていました。
彼はこう言っています。

「平和は,アラブ側が自らの敗戦と和解するまで来ない。この敗戦がアラブ人指導者の愚かさや分裂に起因する単なる失敗ではなく、将来にわたって訂正不可能であることをアラブ側が理解するまで平和は来ない。
和平の実現には、アラブ人が(イスラエル建国という)領土の損失を最終的に受け入れる必要がある」

(船津前掲)

ベングリオンは、アラブ側が物理的にイスラエルを解体できないと理解するまでこの包囲は続き、アラブにイスラエルの最終的不可逆性を納得させるには、核を手にする必要があると考えたのです。
この根源的とでも言っていいホロコーストへの恐怖がある以上、イスラエルの核をとりあげることは不可能です。

しかし同時に、ベングリオンはこのイスラエルの独自核武装をもっとも嫌うのは、他ならぬ独立宣言の19分後に承認してくれた米国であることも熟知していました。
米国は最大の支援国であると同時に、イスラエルの核についてもっとも嫌う国なのです。
なぜなら、イスラエルの核武装は米国が考えているNPTという戦後枠組みを否定するものだからです。
それが故に極秘に開発し、核保有をひとことも漏らさず、持っているとも持っていないとも言わない曖昧戦略に徹したのです。
まるで中東の都市伝説のように漂うイスラエルの核の幽霊です。

ただし欧米もイスラエルが核保有していることは充分に知っていました。
だから、先日のガザ地区核爆発というフェークニュースが信憑性を持って世界に流れたのです。
しかし彼らはイスラエルの核を非難できないでしょう。
なぜならホロコーストを許したという巨大な倫理的負い目があるからです。

このあいまい戦略は、米国にとって福音でした。
表向きは、核拡散防止条約体制は崩壊していないように見えるからです。

そして実態を知っているアラブ側は、これ以上のイスラエル侵攻をすればイスラエルが核使用に踏み込むということに恐怖しました。
そのうえ通常兵器でも、情報戦においてもかなわないとなれば、一部の過激派が振り回す「パレスチナの大義」という旗は静かに降ろすしかなかったのです。

つまりベングリオンが夢見た、イスラエルを囲む平和な環境が整おうとする兆しがほのかに見え始めたのです。
それがトランプが放った「アブラハム合意」であり、さらにイスラエルとアラブ世界の盟主サウジとの接近でした。
この流れが完了すれば、安んじてイスラエルはこの核という戦略的資産を神殿からとりださずに済んだはずでした。
しかしこの共存を断じて許さないとする国が一国残りました。
それがアラブ人ではなくペルシャ人の国イランです。
そしてこのイランはロシア、中国と新悪の枢軸を組んでいます。

イランが操る大規模テロが大爆発したのです。
今後、イランが核保有し、国際社会がイスラエルを孤立させる方向で動いたならば、イスラエルは核保有宣言をするかもしれません。

核なき世界が夢だという岸田氏よ、ぜひイスラエルの核というパズルをほどいてみてください。
お菓子のような反核では、どうにもならないことが少しは分かるでしょうし、米国がこれほど奔走しているのはイスラエルに核保有宣言をさせないためだと分かるでしょう。
最悪ここで核の火の手が上がれば、世界を巻き込んだ大戦に発展する可能性もありえます。

なお、念のために申し添えておきますが、私は今のイスラエルによるガザ地区爆撃は過剰報復で容認できないと考えています。
また、いっそう泥沼化し、被害を爆発的に拡大する地上進攻にも賛成しかねます。
ただし彼らがこれを2度目のホロコーストだと認識するのは当然ですし、反撃の権利は留保されるべきです。
これが大前提であって、しかしなお、今イスラエルに必要なことは頭を冷やすことです。

 

 

2023年10月25日 (水)

岸田さん、いいかげんイランに忖度するのは止めなさい

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日本がG7の枠組みからはずれて、ただ一カ国だけイスラエルテロに対する共同声明に参加しませんでした。

「イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム主義組織ハマスの戦闘をめぐり、米国のバイデン大統領と英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの首脳が22日に電話会談した。6か国首脳は共同声明でイスラエルの自衛権を支持する一方、ガザの民間人を保護するための国際人道法順守を求めた。
声明はハマスによる人質2人の解放を歓迎し、残る人質全員の即時解放を求めた。食料や水、医療などの人道支援や各国国民のガザからの脱出支援に向け、緊密な連携を確認した」
(読売10月23日)
G7の6か国が共同声明、イスラエルに国際人道法の順守要求…米は地上戦「先延ばし」促したか : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) 

G7、じゃなかったG6の共同声明の骨子は三つです。

①ハマスのイスラエル攻撃をテロとして認める
②イスラエルの自衛権行使容認
③ガザ地区の民間人保護

どれひとつとして否定できるものではないはずです。
①のハマスをテロとして認めるのは、先だって日本もそれに同調したはずです。
②イスラエルの自衛権行使。たぶんこれでしょうか、岸田氏が中東諸国が怒るからと尻込みしているのは。
③当然のことですが、これも①②を踏まえるから、イスラエルに自制を求められるのです。
ハマスのテロを肯定するような輩の言うことにイスラエルは耳を貸しません。

日本が不参加の理由はこうです。

「松野博一官房長官は23日の記者会見で、主要7カ国(G7)メンバーのうち日本を除く6カ国が、イスラム組織ハマスと戦闘を続けるイスラエルの自衛権を支持する共同声明を出したことについて「6カ国は今回の事態の中で誘拐・行方不明者など犠牲者が発生しているとされる国々だ」と述べ、邦人被害が出ていない日本が加わっていない背景を説明した」
(毎日10月23日)
G7、日本以外の6カ国がイスラエル支持 政府「邦人は被害なし」(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

うちの国は拉致されていないから乗らないよ、とのこと。
おいおい、日本は今年の広島サミットの首脳声明に、北朝鮮に対して拉致問題の早期解決を求めることも盛り込んでもらいましたが、今回の不参加の論法だと、他の6カ国は北に拉致されていないから、共同声明に参加しなくてもよいということになります。
オレは君らの拉致被害者救出には協力しないが、オレのほうはよろしく、ということです。
ご都合主義以前の問題で、G7に喧嘩売っているのでしょうか。

これはよもやハマスに気配りしたのではないと信じたいですが、イランに対して忖度したことは間違いありません。
21日に開かれた「カイロ平和サミット」にも上川外相を出席させています。
もちろんG7としてはただ一国、東アジアの閣僚級としてもひとりです。
このカイロサミットなるものは、イスラエルに対する非難で埋めつくされたものになるのは目に見えているので、出席すること自体がハマステロ肯定と受け取られても致し方ありません。
政府は、「しっかり日本のプレゼンスが示せたと考えている」(官房長官)などと寝ぼけたことを言っていますが、なにを言っているのやら。

同時期、あのマクロンですら、ISと戦った国際的同盟をハマスにまで拡大すべきだと述べています。

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AFP

「【10月24日 AFP】フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は24日、エルサレムを訪問し、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」と戦う国際連合を、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)を実効支配するイスラム組織ハマス(Hamas)にまで拡大すべきだとの考えを明らかにした。
エルサレムでイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相と会談したマクロン氏は、7日のハマスによる対イスラエル攻撃を受け、ISと戦う国々は「ハマスとも戦うべきだ」と主張した。
またハマスの奇襲とイスラエルの報復によって生じている危機をめぐり、イスラエル・パレスチナ和平交渉の「決然とした再開」が必要だと訴えた」
(AFP10月24日)
仏大統領、エルサレム訪問 「対ハマス連合」提案 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News

まことに正論です。

しかし、なぜかわが国だけはこの国際的動きに背を向けてイランの機嫌を損なうことのみに汲々としています。
これがサウジだったら大半の原油湯を買っていので低姿勢になるのはわかりますが、なんの経済的つながりもないに等しいイランに忖度して憚りません。

内に向かっては宗教独裁国家、外に向けてはテロの影の主役のような国、それがイランです。
そんなイランを「伝統的友好」と称して支えているのがわが国です。

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米国は「苦い経験」を繰り返さないことを保証しなければならない - Mehr通信社 (mehrnews.com)

先日、安倍氏の弔問に訪れたラィースィ・イラン大統領と岸田首相との会談は「歴史的友好関係を確認した」そうです。
テロ国家と「友好関係」ですか。恥ずかしいこと。

  1. 岸田総理大臣から、安倍元総理大臣の逝去に対するライースィ大統領からの弔電に謝意を述べるとともに、長年にわたるイランとの伝統的友好関係の一層の強化に向けて協力していきたい旨述べました。これに対して、ライースィ大統領から、改めて弔意の表明があるとともに、日・イラン関係を様々な分野で拡大していきたい旨述べました」
    (外務省9月21日)
    日・イラン首脳会談|外務省 (mofa.go.jp)

なんですか、この「歴史的友好関係」とは。そんなものがあったのでしょうか。
いつまで『海賊といわれた男』時代の遺産で食っているのでしょうか。
よくイランを「親日国家」という者がいますが、とんでもない。
イランが日本のタンカーだけ攻撃しなかったとでも。
真逆です。イランはこともあろうに安倍氏が20年ぶりに訪れたその時を狙って日本タンカーを攻撃し、船員2名を殺害したのです。

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産経

「イラン沖のホルムズ海峡近くで13日朝(日本時間同日昼)、東京都内の海運会社「国華産業」が運航するタンカーと台湾の石油大手、台湾中油のタンカーが攻撃を受けた。両社が発表した。国華産業のタンカーは砲弾を受け、2隻とも火災が発生した。日本人は乗船していなかった。安倍晋三首相のイラン訪問中に起き、日本政府などは確認作業を急いでいる。何者が攻撃したのか不明。イラン政府は関与を否定した」(産経2019年6月13日)
日本のタンカーに砲撃 イラン沖ホルムズ海峡付近 - サッと見ニュース - 産経フォト (sankei.com)

そして核合意に反してウラン濃縮を続けました。
すでに核合意は空文化していたのです。
だからトランプは核合意から脱退して、真剣にイランを核放棄させる道を選択したのです。
もっともバイデン政権になってから、米はイラン核合意への復帰のために交渉を続けてきており、8月15日になってイランから「近い将来に調印する下地が整った」との前向きな発言があった。いよいよ本当に復帰が実現するのかもしれない」としています。
いよいよ米がイラン核合意へ復帰か (iforex.jpn.com)

こういうやりとりと無縁に、日本は呑気に核合意ができるといいねぇ、という態度のようです。

「2 両首脳は、イラン核合意をめぐる最新の情勢を踏まえ、率直な意見交換を行いました。岸田総理大臣から、日本として核合意を一貫して支持してきており、関係国による核合意への早期復帰を期待する旨述べました。両首脳は、引き続き緊密な意思疎通を継続していくことで一致しました」
(外務省前掲)。

この会談でイランはこう述べたと、イランメディアは報じています。

「さらに、全世界の非難の矛先となっているアメリカの一方的かつ違法な核合意離脱にも触れ、「核問題に関するわが国の表明は、完全に論理的で擁護できるものだ」と語っています。
そして、「わが国として、1つの公正な合意を成立させる用意がある」とし、「これまでのアメリカの悪い経歴からして、過去の苦い経験が繰り返されないことの保証を獲得する必要がある」と述べました。
加えて、イランの地域内における対話ややり取りが拡大発展しつつあるとし、「地域外の国が地域の問題に口出しせず、地域の課題を地域外の勢力に任せないことが、このような対話が成功する条件だ」としています」
(pars  Today9 月22日)  
イラン大統領が岸田首相と会談、「日・イ関係への米の制裁の影響阻止を」 - Pars Today

岸田氏がなんと答えたのか外務省は公表していませんが、イランは米国に核合意に介入するなと言っているのです。
それどころか「地域外の国がこの地域に口出しするな」とも言っています。

要するに、中東地域においてイランの革命防衛隊の好きにやらせろと、核を作るのを邪魔するな、西側各国は指をくわえて見ていろということです。

こんなことを平然と言わせるとは、日本の立ち位置はどこにあるのでしょう。
核合意を空文化して核武装に邁進するイランか、それを阻止しようとしている米国なのか。
案の定、イランメディアはこのようにこの日イ首脳会談を伝えています。

「ライースィー・イラン大統領が、米ニューヨークにて日本の岸田文雄首相と会談し、イランと日本が旧来から友好関係にあるとした上で、「率先的な方策の模索により、日・イ関係に対する米の一方的・圧政的な制裁の影響を防ぐ必要がある」と語りました」
(pars  Today9 月22日)  
イラン大統領が岸田首相と会談、「日・イ関係への米の制裁の影響阻止を」 - Pars Today

岸田氏とイランはこの首脳会談で、米国の「一方的・圧政的制裁」の影響をはねのけることで「両国関係の強化が確認された」ようです。
こんな首脳外交なら、しないほうがましというものです。

今回、岸田氏は両サイドにバランスをとってプレゼンスをみせることで、なんらかの妥協を探るということのようですが、ハッキリ言ってあげれば岸田氏の外交能力ではむりです。
これをやりたいのなら、安倍氏並の存在感と戦略性、ついでに愛嬌も備えることですが、全部岸田氏にないものばかりです。
内政で減税も貫徹できず、従兄弟の税務会長には頭が上がらないようなふにふにゃな人物が、中東という修羅場を仕切ろうなんて百年早い。
ただの二枚舌外交に終わって、どちらからも嘲笑を買うだけのものとなるでしょう。

安倍外交は輝きに満ちたものでしたが、北方領土交渉とイラン外交のふたつは明らかな失敗でした。
失敗を継承する必要はありません。

 

 

2023年10月24日 (火)

ノーベル平和賞がイラン人権活動家に与えられた意味

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今年のノーベル平和賞はイランの女性人権活動家に与えられました。


「ノルウェー・ノーベル委員会は6日、2023年のノーベル平和賞をイランの人権活動家ナルゲス・モハンマディ氏(51)に授与すると発表した。イランでの女性への抑圧と闘ったことが評価された。
ノルウェー・ノーベル委員会のベリト・ライスアンデシェン委員長は、モハンマディ氏は「イランでの女性への抑圧と闘い、すべての人の人権と自由を推進するために闘った」と受賞理由を説明した。
また、モハンマディ氏の闘いには「多大な個人的犠牲」が伴ってきたと述べた。
モハンマディ氏は、2003年のノーベル平和賞受賞者、シリン・エバディ氏らが設立した人権団体「人権擁護センター」の副代表。女性やマイノリティー、死刑囚の人権擁護などのために活動してきた」
(BBC10月7日)
ノーベル平和賞、収監中のイラン女性人権活動家に イランは「偏った」受賞と非難 - BBCニュース

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BBC

ノーベル平和賞委員会は、モハンマディ氏の受賞理由についてイランの「神権的な政権による、女性を標的にした差別と抑圧の政策」に対して、この1年間にデモを行った何十万人ものイラン人を評価するものだと述べています。
モハンマディ氏はこの指導者です。

この1年間のデモとは、22歳のイラン女性マーサー・アミニさんが、テヘランでイスラム教の服装規則を遵守せずヒジャーブ(ヘッドスカーフ)を正しく着用していなかったというささいな理由で宗教警察に逮捕され、警察署内で尋問中に死去した事件から始まっています。

「一方、クルド系のRudawメディア・ネットワークは、「彼女はヘッドスカーフが原因で警察官に殴打された。彼女の父親は娘の体に拷問の痕跡があったと主張している。彼女が以前に病気を患っていたという情報についても、父親は『娘は完全に健康だった』と述べた」と報じた。また、彼女の治療にあたったクリニック関係者は、「彼女は13日に入院した時に既に脳死状態だった」と証言したという」
(ウィーン発 『コンフィデンシャル9月24日)
10年遅れで「イランの春」到来するか : ウィーン発 『コンフィデンシャル』 (livedoor.blog)

この虐殺に対して、イラン全土で激しい抗議行動が勃発しました。

「(CNN) イランで道徳警察に拘束された若い女性の死に対する抗議デモが続くなか、当局は24日までに、街路に平穏が戻るまでインターネット接続を制限すると明らかにした。
イランではマフサ・アミニさん(享年22)の先週の死をきっかけに、数千人が街頭に繰り出して抗議を行っている。
アミニさんは首都テヘランで逮捕され、「再教育センター」に連行された。逮捕理由は頭部を覆うヒジャーブを適切に着用していなかったことだとみられる。
16日以降、テヘランを含む少なくとも40都市でデモが行われた。デモ隊は女性に対する暴力や差別、ヒジャーブ着用義務の撤廃を求めている。
デモは治安部隊との衝突に発展し、数十人が死亡したとの情報もある」
(CNN9月24日)
イラン、ネット接続を制限 女性死亡へのデモで死者増加 - CNN.co.jp

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イランでスカーフ巡り女性死亡 警察暴行疑惑、抗議拡大: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「SNS(交流サイト)ではアミニさんとされる女性が病院に横たわる写真が拡散している。血痕なども見えることから「警察が暴行した」と疑う声が広がる。遺族も「頭蓋骨が折れていた」などとし、死亡の責任が警察にあると主張した。
17日に開かれたアミニさんの葬儀では、女性がスカーフを脱いで抗議する様子などが見られた。テヘランなどでもデモが行われ、市民らが「女性、命、自由」などと声をあげながら行進する様子がSNSなどに投稿されている。イランの報道メディアはデモの参加者が拘束されたと伝えた。
一方、警察はアミニさんが「心臓発作を起こした」と説明。警察署でアミニさんが突然倒れたとする動画を公開した。遺族はアミニさんに健康上の問題はなかったとしている。デモをしていた市民に警察が発砲し、けが人が出たとの情報もある」
(日経9月20日)

日本の「イスラム専門家」たちには、ヒジャーブについてイスラム風ファッションだとか、着用の義務はなく自由だという言い方をするものがいるのですが、飯山陽氏によれば、まったくの間違いです。

「女性のヒジャーブ着用はイスラム教という宗教上の義務であり、そこには基本的に「選択の自由」などというものは存在しないこと、特にイランのように国家が着用義務を定めている国では、ヒジャーブの未着用、あるいは不適切着用が懲役刑や、あるいはより厳しい刑罰に処されることを、彼らは隠したり、あるいは軽視してきたりしてきました」
(飯山陽note) 

つまりイランでは、ヒジャーブは宗教支配の象徴なのです。

ところで、イランは国内に対してはヒジャーブから髪一筋はみ出すことすら許さない専制的宗教国家であり、国外に対しては世界最大のテロ輸出国家でした。
イランの準軍事組織であるイラン革命防衛隊(IRGC )は、イラクやシリアですさまじいばかりの破壊テロ活動を行っており、中東の混乱の源泉となってきました。

黒井文太郎氏によれば、彼らは海外のイラン民主派勢力に対して国外であるにも関わらず容赦ない暗殺攻撃を続けました。

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イスラム革命防衛隊

「イラン人の暗殺は、欧州亡命組を中心に、1980年代から90年代にかけてかなり頻繁に行われ、少なくとも20か国以上で、計350人以上が殺害された。ただし暗殺作戦は、2000年代以降は比較的沈静化している。亡命反体制派の活動家たちが高齢化し、武力で体制を倒せるような存在ではなくなったからである」
(黒井文太郎2019年4月17日)
中東の最重要問題に浮上したイランの国家的テロ組織 ISよりも危険な存在、イラン「革命防衛隊」とは(後編)(1/4) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

この執拗な大量暗殺のために、国外亡命グループは壊滅しました。
イランで専制政治が続くひとつの理由は、イスラム原理主義政権にとって代わる民主派勢力に指導者がいないためです。
それは全員殺害されてしまったからです。

次に標的にされたのが、イスラエルとユダヤ人です。
イランは、彼らの支配下にあるレバノンのシーア派組織「ヒズボラ」に指令してイスラエルに対してロケット弾攻撃を仕掛けました。
このヒズボラは、元来は革命防衛隊が82年に作ったレバノンのシーア派テロ組織で、83年にはレバノン駐留の米仏軍に自爆テロを行い、80年代に欧米人30人以上を誘拐したりしています。
これらの活動は、革命防衛隊の指令に従っており、革命防衛隊を通じてイラン指導部と直接につながっています。

いまやヒズボラの活動は、中南米にも及び、麻薬売買にも関わっています。
これらのダーティな資金を基にして、革命防衛隊は多くの国々の反政府テロ組織を作り、育成してきました。

「(革命防衛隊)クドス部隊は、外国のテロ組織を育成する工作も行った。スーダン、パレスチナ、レバノン、イラク、ヨルダン、トルコ、アフガニスタン、タジキスタン、エジプト、アルジェリア、リビア、チュニジアなどの反政府ゲリラを訓練し、テロリストに育て上げる工作である。クドス部隊の軍事顧問がこれらの国々に派遣されて指導することもあったが、イラン国内の訓練所で指導することもあった 」
(黒井前掲)

特にこの浸透工作が成功した地域は、イラク、シリア、イエメン、そしてパレスチナで、この地におけるテロ流血事件のほぼすべてに、イランが関わっているといっても過言ではありません。
よく日本のメディアや「イスラム専門家」たちは安易に「パレスチナの大義」とか「ガザ住民の抵抗」と美名で呼んでいますが、内実はこのハマスやヒズボラなどのイラン傀儡集団にとって替わられています。
それが露になったのが、このハマスの虐殺事件だったのです。

2023年10月23日 (月)

まんまとハマスの嘘に乗ったメディア

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嘘は言ってみるものです。
大きな嘘は、できるだけデカイ声で堂々とガナることです。
それもどうせつくなら大きなテーマいい、セコイ嘘はバレると恥ずかしいですが、大きな嘘になると問われるのは真実そのものではなく、政治的ポジションの問題になってしまうからです。
「パレスチナの抵抗」などという人々は「空爆」と呼んでいますが、彼らは「空爆」を具体的に実証分析しようとはしません。

そしてバレようとどうしようと百回繰り返すことで、いっそう有効になっていきます。
仮に嘘がバレても、その時には一人歩きしている寸法ですし、「ブレない人」と言われて尊敬されるかもしれません。
ヒトは真実を知りたいのではなく、「信じたいモノを信じたい」だけなのですから。

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「信じたいモノ」とは、たとえばこのようなことです。
中東専門家の高橋和雄氏はこう言います。

「パレスチナを含む中東情勢全般に詳しい国際政治学者の高橋和夫氏は、パレスチナでは1948年のイスラエルの独立以来75年もの間、自分たちから土地を奪い、圧倒的な軍事力を背景に抑圧を強いてきたイスラエルに対する不満と怨念が積もりに積もっていたと指摘する。
それはあたかも圧力鍋にこれでもかこれでもかと言わんばかりに圧力を加え続けるようなもので、それがいつかは爆発することは誰もがわかっていた」
日本人はまずパレスチナで何が起きてきたかを知らなければならない/高橋和夫氏(放送大学名誉教授)(ビデオニュース・ドットコム)

高橋氏にかかると今回のハマスの大規模テロはまるで必然で、「爆発することは誰でもわかっていた」そうです。
ほんとうにそうでしょうか。
パレスチナ自治政府はとうにテロを放棄し、二カ国共存の道を認めていますし、ガザ住民もハマスに不満を持つ住民が多くいることはこの7月の反ハマスデモでわかっています。
決してハマス=ガザ住民ではなく、ガザ住民はテロなどを望んでいないのです。
しかし高橋氏はハマスを擁護したいために、彼らのイスラエル殲滅という異常な主張を普遍化して正当化してしまっています。
これではガザ版のムネオです。

ハマスの立場が他のガザの人々と決定的に異なるのは、ユダヤ人を海に追い落とすこと、つまりイスラエル国家の完全否認と、その手段に暴力を大規模に用いることです。
そして主張するだけではなく、テロ攻撃を行って、これこそが「パレスチナ解放闘争」なのだと主張しているわけです。

こんなことをガザの住民は望んでいません。

ハマスのやることは、いままでユダヤ人が世界各地で舐めてきた反ユダヤ主義と同じだ、新手のホロコーストではないか、と考えるのがサイモン ウィーゼンタール センターです。

サイモン ウィーゼンタール センターは、今回の「病院爆撃」デマは反ユダヤ主義(アンチセミティズム)だと警告しています。

「ハマスは、爆発がパレスチナのイスラム聖戦から来たことを知っていて、イスラエルを非難することに決めました、そして多くの外交官と主流メディアがハマスによって供給された血の中傷を繰り返して、反ユダヤ主義を広めました」
Simon Wiesenthal Center(@simonwiesenthal)さん / X (twitter.com)

サイモンウィーゲンゼンタールセンターはいままで、手厳しく反ユダヤ主義と戦ってきましたが、今ほどあきれるようなほど無造作に反ユダヤ主義が横溢している時代はありません。
時事は『各国からイスラエル非難の声』というセンセーショナルな見出しでこう書いています。

【イスタンブール時事】パレスチナ自治区ガザ情勢の緊張緩和に向けた国際会議「カイロ平和サミット」が21日、エジプトのカイロで行われた。会議では各国からガザで軍事作戦を続けるイスラエルへの厳しい非難の声が相次ぎ、パレスチナ自治政府のアッバス議長はイスラエルが民間人に対する「無差別攻撃を行っている」と訴えた」
(時事10月21日)
イスラエルに厳しい非難=ガザ緊張緩和目指す―エジプトで「平和サミット」|ニフティニュース (nifty.com)

「各国イスラエルの空爆に批判相次ぐ」と言っても、言っているのは、パレスチナ自治政府のアッバスがこう言っているくらいです。

「アッバス氏は「住民の避難所になっている病院や学校も標的になっている」と主張。ガザへの人道支援も「イスラエルが妨害してきた」と指摘した」
(時事前掲)

人道支援のコンボイが止まっているのは、エジプトとの国境ゲートが閉まっているからで、これはエジプトが難民に来られないようにそうしただけのことですし、またゲート手前でバリケードを作って物資搬入と避難を妨害していたのはハマスです。
エジプトやサウジは「ガザ住民の強制移住を拒否する」と言っていますが、この住民避難は戦闘に巻き込まれないための措置であって、現時点で「強制移住」させるなどとイスラエルは一言も言っていません。
エジプトが「問題解決のためのロードマップを作れ」などとキレイゴトを言っているようですが、ハマスが連日ロケット弾を撃ち込んでいる今の状況で、周辺国は口先介入しかしないようではまったく無意味です。

そもそもこのアラブ諸国の会議は、ハマスとは一線画しています。
サウジは準公共放送ニュースチャンネル「アルアラビーヤ」で、ハマスの海外部門指導者であるハーリド・マシュアルとインタビューを行い、こう問い詰めています。

「アンカー 「ハマスが行った攻撃は通常の作戦ではありません。(イスラエルに対する)宣戦布告に近い。(略)これはあなたたちが独断で決定したのであって、他の党派、パレスチナ自治政府、そしてガザの人々は、これについて全く相談されていませんよね。(略)
あなたは10月7日の攻撃を決定し、今、アラブ諸国に参加を要請していますね。アラブ諸国はこの決定に参加していません」
(飯山陽note10月21日)

要するに、ハマスよ、勝手なテロをしてアラブ世界を巻き込むなということです。
今回のテロ攻撃についても、これは普通の戦争ではなく、テロにすぎない、それも非常にタチが悪くて許しがたいという本音が透けています。
ところがこれが日本のメディアにかかるとイスラエルに「各国非難」となってしまうのですから、メディアがどっちを向いて仕事をしているのかわかります。

日本のメディアは、イスラエルが受けた子供や老人、女性、外国人まで含む大量虐殺、200人を超える拉致監禁についてはろくに報じないことでハマスに忖度しました。
一方この「ガザ空爆」事件においては、「ガザ保健当局」なる機関の「471人空爆で死亡」という発表を丸のまま流して、一気に流れを変えてしまいました。
これはパレスチナ自治政府の正規の保健機関ではなく、それを僣称するハマスの組織です。「ガザ保健当局」などは存在しません。
ハマスといわず、まるでハマスが「国家」であるかのような錯覚を与えて権威付けをすることに、西側メディアは加担してしまっているのです。

ところでこの「ガザ空爆事件」については、専門家による具体的分析が既に始まっています。
APはこう伝えています。

「イスラエルのニュース局チャンネル12による10番目のビデオは、ガザ市の病院の南東約16マイル(6 km)の町、ネティヴォットの建物の上層階にあるカメラから撮影されたもので、発射されたロケット弾の弾幕を捉えた。
3つのビデオを合わせると、ガザ内部から複数のロケットが発射され、アル・アハリ・アラブ病院での爆発の約3秒前に空中で1発がバラバラになったように見える」
AP visual analysis: Rocket from Gaza appeared to go astray, likely caused deadly hospital explosion | AP News

さらにイスラム聖戦は、同時刻にロケット弾で攻撃したことをテレグラムに投稿しています。

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AP

「爆発から7分後、ハマスの軍事部門アルカッサム旅団は、テレグラムチャンネルへの投稿で、「ロケット弾の弾幕で占領下のアシュドッドに発砲した」と述べた。アシュドッドは、ガザの北約50マイルにあるイスラエルの沿岸都市だ。
数分後、ハマスと協力している過激派グループであるイスラム聖戦も、「民間人に対する虐殺」に対応してテルアビブにロケット攻撃を開始したとテレグラムに投稿した。次の1時間で、イスラエルに対するロケット攻撃を発表する過激派グループからの投稿がさらに5つありました」
(AP前掲)

また、JSF氏は病院に着弾した飛翔体の軌道を緻密に分析をしています。
JSF『動画分析:ガザの病院の被害はロケット弾の推進剤の爆発による墜落事故か』
動画分析:ガザの病院の被害はロケット弾の推進剤の爆発による墜落事故か(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース
この病院に落ちた爆発物の弾道はガザ内、病院の北西1.5kmの定点カメラに捉えられていました。
JSF氏は詳細にこれを追跡して分析を加えています。

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JSF

・00秒~:画面の右から左に向かって光点が斜めに上昇中
・06秒頃:閃光を発する
・07秒頃:左側面に閃光。上昇しながら左から右に進路変更
・09秒頃:長細い煙を吐き出し始める
・10秒頃:空中で爆発
・16秒頃:画面奥の地上で小爆発
・18秒頃:画面手前の地上で大爆発
・18秒~:地上の爆発後に炎上が続く

まず、上写真左の炎をあげて上昇する飛翔体がイスラエルである可能性はありません。
なぜなら航空機から投下する爆弾は炎を発しないからです。
イスラエルが保有する推進炎を出すものは対戦車ミサイルのヘルファイアくらいですが、もしそうなら着弾してできたクレーターが小さすぎます。
ヘルファイアは数百キロの弾頭をもっていますから、これが使われたことはありえません。

アイアンドームではないかという説もありましたが、これも退けられています。

「軍備管理センターの上級政策ディレクターでミサイル防衛の専門家であるジョン・エラスは、アイアンドームがガザ上空でミサイルを迎撃することは技術的には可能かもしれないが、発射体は飛行経路の非常に早い段階にあり、まだ上昇中であり、システムは飛行経路上にあると判断した発射体のみを迎撃するように設計されているため、この場合はありそうもないと述べた」
(AP前掲)

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【検証】 ガザ市の病院爆発、映像などの証拠から何が分かるのか - BBCニュース

それにしても500人死亡にしては、あまりにちいさなクレーターではありませんか。

「この小さな爆発規模で500人死亡というガザ側の報告はとても釣り合わず考え難いでしょう。推定される弾頭重量はせいぜい数kgから数十kg程度の爆発規模です。しかし航空爆弾ならば数百kgあるので桁が違います。つまりこの着弾痕からでもイスラエル軍の空爆という可能性はほぼ消えました。もし航空爆弾なら着弾痕は遥かに大きな穴になっていなければおかしいのです」
(JSF前掲)

過去、1発の爆撃で500人以上が死亡した例は、建造物の中で密集した人々に1トン級の弾頭が炸裂したケースが数例あるだけです。
このような駐車場のような開放空間で、数十キロの爆弾が爆発しても、500人死亡することはありえません。
推測の域を出ませんが、多くて十数人規模ではないでしょうか。

500人はお手盛りの大本営発表ですので、「空爆」と呼ぶアラブ各国は調査団を派遣して被害者数や弾体の残骸を調べてみるべきです。

JSF氏の結論は、発射したロケット弾が空中で燃料の事故から進路を変えて、病院の駐車場に落下して地上で爆発したと考えています。

「ロケット弾が上昇中に固体燃料推進剤が燃焼の不具合を起こして進路が変わってしまう。そして長細い煙を吐き出し始めて空中爆発。固体燃料推進剤の爆発と推定される。弾頭が外れて回転を始めながら落下(回転により急激な空気抵抗の増大で速度が急減、上昇から下降に転じる。ただしこの弾頭の挙動は映像には映っておらず現象からの推定)、落ちて来た弾頭が地上に着弾した。」と推定できます。ただし地上で2回爆発があった理由がよく分からず断定はできませんが、それぞれ燃え残りの推進剤と弾頭だった可能性が考えられます」
(JSF前掲)

APも同じ結論に達しています。

「AP通信は半ダースの専門家による視覚的分析を行い、最も可能性の高いシナリオは、爆発の数秒前にガザ内からのロケットが逸れてバラバラになったことであることに同意しました。(略)
元英国陸軍将校で諜報コンサルタントのジャスティン・クランプ氏は、このような自家製ロケットの故障率は高いと述べた。

「明らかに、飛行中に失敗し、スピンアウトして崩壊し、地上への影響がそれに続くことがわかります」と、ロンドンを拠点とする戦略アドバイザリー会社であるSibyllineのCEOであるクランプは述べています」
(AP前掲)

以上から、イスラエル爆撃説は完全に論破されています。

 

2023年10月22日 (日)

日曜写真館 たちまちに大夕焼の天くづれ

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地にひとり跼み夕焼浄土かな 村越化石

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今日生きし者出でて見よ大夕焼 蔦三郎

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かはせみの巣ありと思ふ夕焼川 松村蒼石

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何もなく死は夕焼に諸手つく 河原枇杷男

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ぐんぐんと夕焼の濃くなりきたり 清崎敏郎

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しづかなる時経て夕焼身に至る 桂信子

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ひとときの夕焼よりも緋の記憶 櫂未知子

 

 

2023年10月21日 (土)

人質は「人間の盾」、攻撃受けたら殺害始めよ

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英米独など各国首脳のイスラエル訪問が終わりました。
首脳がいる間は攻撃を手控えていましたが、これで攻撃を延期する理由はなくなりました。
好むと好まざると、イスラエルはガザ地区に侵攻を開始するでしょう。
一部では軍事的包囲に止まるだろうという楽観論がありますが、昨年2月にウクライナ国境に集結したロシア軍はそのまま国境を超えました。
当時日本の多くの外交専門家は「ただの軍事演習であって侵攻はない」と言っていましたが、まったくはずれたことになります。

軍隊を攻撃態勢のままスタンバイ状態のまま待機させることは、いわばエンジンの回転数を上げながらブレーキを踏んでいるようなもので、自ずと時間的限界があるからです。
待機が長すぎると、士気が崩壊します。

侵攻のための軍事物資の集積はすでに完了しており、あとはネタニエフの命令を待つだけです。
そしてネタニエフは戦時内閣指導者として強力な権限を与えられています。
彼はためらわないでしょう。

「ヨアヴ・ガラント国防相は、ガザ近郊の部隊に対し、ハマスが支配するパレスチナの飛び地に入る命令は「すぐに」来るだろうと語った。「あなたは今、遠くからガザを見ています、すぐにあなたはそれを内側から見るでしょう」とガラントはギバティ旅団の軍隊に語った」
高官は、ガザの地上攻撃は「まもなく」と述べ、「長く激しい」と警告 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

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イスラエルタイムス

イスラエル軍のもっとも緊急性のある任務は人質の解放です。
イスラエルはハマスの戦闘マニュアルを入手して、公開しています。
ここには「人質は楯であって、殺害しろ」と記してあります。

「【エルサレム=福島利之】イスラエル大統領府は15日、死亡したイスラム主義組織ハマスの戦闘員から回収したという人質の扱いを指南した「軍事ハンドブック」の内容を公表した。人質を「人間の盾」として利用し、必要に応じて殺害するよう指示している。(略)人質を最大限に利用するというハマスの方針は、公表されたハンドブックで明確に示されている。手のひらサイズで、カラー8ページの冊子の表紙には「我々の兵士に勝利を」と書かれている。「強さを示せ、弱さやためらいを見せるな」との心構えも記している。
人質の扱いについては、1、2か所に集めて電気ショックや暴力などで衝撃を与え、必要に応じて殺害するよう指示。イスラエル側に人質を見えるようにして「人間の盾」とし、攻撃を受けたら「人質の殺害を始めよ」と要求している。
「IDを取り上げて身元を確認し、外界との連絡を絶つ」「収容場所の出入り口には爆発物を仕掛けた車や狙撃兵を配置する」といった具体的な収容手順も示し、捕虜とした兵士の階級確認のためにイスラエル軍の記章も掲載している」
(読売2023年10月18日)
 人質は「人間の盾」、攻撃受けたら殺害始めよ…イスラエルがハマス指南書を公表 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

今、日本のメディアはハマスの解説として、ハマスは平和的な住民サービスをする組織であると報じていますが、素顔は音楽祭典を襲って200名もの人々を拉致し、人質として楯に取り、事あればためらいなく殺せと命じるテロリストなのです。
人質には多くの女性や子供も含まれており、拷問や陵辱を受けている可能性があります。
分散してトンネルなどに監禁されていると考えられていますが、イスラエルがどこまで居場所を特定できているかはわかりません。

侵攻まで時間をかけているのは、今イスラエルの人質交渉班は、全力で解放交渉しているためかもしれません。
イスラエルは今回のテロ攻撃で多数の戦闘員を捕虜としており、それをカードとしての捕虜交換はいままでも双方ともにやってきたことです。

また、パレスティナ側は決して一枚岩ではありません。
ハマスの強権的支配、過大な税金、指導者の豪邸などは憎しみの対象となっています。
この7月には、公然と反ハマスデモが行われており、不満も高まっていました。
そしていうまでもなく、侵攻を予知できなかったとはいえ、ガザ地区には、イスラエル情報機関のエージェントが大量に送り込まれています。
彼らの優先順位一位の任務は、人質監禁場所のはずです。

人質交換などの平和的手段での奪還には限界があります。
最終的には、実力を行使せざるをえないはずです。
史上もっとも困難な人質解放作戦となるでしょう。

2023年10月20日 (金)

バイデン、イスラエルに「9・11テロ」教訓を伝える

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バイデンが、イスラエルを訪問しました。

「【ワシントン=大内清】イスラエルを訪問中のブリンケン米国務長官は現地時間17日未明、バイデン大統領が18日にイスラエルを訪問すると発表した。イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザに対するイスラエル軍の地上侵攻が近いと見られる中、同国への連帯を示すと同時に、紛争の不拡大を目指す」
(産経10月18日)
バイデン米大統領が18日にイスラエル訪問へ - 産経ニュース (sankei.com)

この直前の17日、例のガザのアル・アハリ病院爆破事件が発生しています。
おそらく偶然ではなく、ハマス、ないしはその眷属がバイデンのイスラエル訪問を中止に追い込むために仕組んだのでしょう。
ネタニヤフがバイデンを招請したのは、米国などの自由主義陣営の支持をとりつけた上で、地上進攻に踏み切る腹づもりだったようです。
中東の戦地に米国大統領が乗り込むのは異例でしたが、 バイデンはその日の夕刻までに訪問を決断しました。

判断が遅いこの人物にしては極めて異例です。
いかに米国がイスラエルがやろうとしている地上進攻に対して、強い危機感をもっていたかわかります。
つまり、米国大統領を招請して地上進攻したいネタニエフと、連帯を表明しながら侵攻を思い止まって欲しいバイデンという構図です。

ただしバイデンとしてはたんなるイスラエル訪問としてしまえば、反イスラエル感情を露にしているアラブ社会を敵に回しかねないので、いったんヨルダンに立ち寄って、ヨルダンのアブドラ国王の主催するエジプト、ファタハ(パレスティナ自治政府)を加えた和平を促すアラブ穏健派の会議に参加してからイスラエルに赴く予定でした。

そこにガザの病院爆発事件が起きたわけです。
いかにこの爆破事件が、誤爆とはいえ仕組まれた政治的なものかわかりますね。
西側メディアはまんまとこれに乗ってしまい、ハマスのプロパガンダを鵜吞みにして「イスラエル軍、病院を爆撃。500名死亡」と打ったのですから罪が重い。
これでバイデンは苦しい立場に追い込まれました。

この時期にイスラエルを訪問することは、これを肯定するととられるからです。
アラブ穏健派は硬化し、この会議自体がお流れになりましたが、米国NSCは直ちに爆破の分析結果を公表し「イスラエルに罪はない」としたことでイスラエル訪問に踏みきったようです。

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米・イスラエル首脳が会談、病院爆撃は「あなた方でなく他のチームがやったように見える」とバイデン氏(CNN.co.jp) - Yahoo!ニュース

内容としてはこのようなことを伝えに行ったようです。

「以下の4点を宣言しました。
「17日の病院爆撃事件の犯人は、イスラエルでもハマスでもない。パレスチナを本拠とする過激派のイスラム聖戦がイスラエルを攻撃しようとして起こした『誤射』である」
「ハマスが拘束している人質は全員が救出されなくてはならない」
「ガザ地区の人道危機は避けねばならない、支援物資の搬入は急務である」
「パレスチナの圧倒的多数は、ハマスではない」
当初、バイデンはこうしたメッセージを、ヨルダン、エジプト、ファタハにも同意させて宣言する計画でしたが、結果的に1人で宣言することになった」
(ニューズウィーク10月19日)
バイデンの必死の仲介で、ガザ危機の出口は見えるのか?|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

①病院爆破はイスラム聖戦の「誤射」、②人質解放、③支援物資搬入、④パレスティナ=ハマスではない、と言ったところで、西側指導者の誰が行ってもこう言うしかなかった内容です。
本来はこれを米国とアラブ穏健派の総意としてやりたかったはずですが、これには失敗しました。

①から③まではいいとして、肝は④の「パレスティナ=ハマスではない」という言い方ですが、大部分のパレスチナ人はハマスではないのは当然です。
ハマスはパレスチナ人を代表しているのではなく、ガザ住民を脅し、自らは豊かな生活をしながら高い税金を課しています。
ハマスは武器庫や出撃拠点をあえて一般の市民の住居や学校、病院の下に作ります。
住民は盾です。

今、ガザの人々に必要な食糧、水、医薬品や避難所が極度に不足しているのは事実で、ハマスは自分用の物資は溜め込んでいてもそれを供出しようとはしません。
バイデンが、ネタニエフに対して人道支援に協力するよう要請し、確実に民間人に行くことを条件にしてエジプトから支援物資の搬入を開始することを求めて合意しました。
また住宅を失ったガザと西岸の100万ともいわれるパレスティナ人のために、米国は1億ドル拠出することも表明しています。
このような住民ケアとワンセットになっての軍事支援であることを強く言ったようです。

ネタニエフとの会談で、バイデンは自国の2001年9.11同時テロの経験を踏まえて衷心からの同情と共に、それ以降の対テロ戦争の苦い経験について話をしたようです。

「この席でバイデン大統領は、2001年アルカイダのテロを経験した自分と米国人がハマスの奇襲テロでイスラエル国民が感じている「衝撃、苦痛、怒り」を理解していると明らかにした。
同時にバイデン大統領は「怒りに駆られるな(don’t be consumed by it)」と強調した。続いてバイデン大統領は「9・11以降、米国は怒りに包まれた。正義を追求して正義は勝ち取ったものの、同時に失敗も犯した」と説明した」
(韓国中央日報10月19日 「激怒した米国は失敗した」…バイデン大統領、イスラエルに「9・11テロ」教訓)

「激怒した米国は失敗した」…バイデン大統領、イスラエルに「9・11テロ」教訓(1)(中央日報日本語版)

このへんのことをフランクに言えるのは、アメリカン・リベラルのよいところでしょう。
トランプだったら、こんなメンツに関わることは口が裂けても言いません。
たしかに対テロ戦争は、米国の覇権国家の失墜を招きかねない歴史的な失敗でした。
9.11からアルカイダに対する報復を宣言したのは自衛戦争の範疇でしたが、落としどころもわきまえずに筋違いのイラク戦争を開始し、さらにはアフガンにまで戦線を拡大するという悪手の連鎖に陥ってしまいました。

結果、ぬきさしならないまでに戦線を拡大して、米国は勝利の目算もないまま州兵までアフガンに動員するといった泥沼にはまります。
実に20年間に渡る勝利なき戦争でした。
米国の力の消耗は大きく、それにつけこむようにして中国は南シナ海の覇権を確立してしまい、ロシアはクリミア侵攻をしてしまいます。
これは明確な戦争目的を持たず怒りと復讐心だけで戦争をに突入すれば、米国のような失敗をするぞ、という忠告です。

「実際、この日、英国エコノミストやデイリー・テレグラフなど外信はハマス殲滅を掲げて大々的な地上戦を予告したイスラエルがすぐに実行に移すことができていない背景には米国など国際社会の外交的な圧迫だけでなく「力による平和・その後」のシナリオが不在のためだと分析した。実行可能な安全保障、政治戦略なく報復だけを強調すれば自国の政治的混乱を呼び込み、さらに手強く過激な敵をつくる「色あせた勝利」に陥りやすくなるためだ」
(中央前掲)

ネタニエフよ、このバイデンの忠告は真剣に聴いておいたほうがよい。
こぶしを振り上げるのは簡単ですが、降ろすのはその数十倍難しいからです。

オリーブ山通信の石堂ゆみ氏はこう書いています。

「イスラエルにとっては、非常に力強い支えであった。しかし良いことばかりではない。バイデン大統領は、ハマスと一般のパレスチナ人は違うと強調し、最終的には、二国家共存、言い換えればパレスチナ国家を認めることを目標にする必要があると明言した。
言い換えれば、アメリカは力強い支えではあるが、今の右派政権(ガザは別として西岸地区を併合することを最終目的)とは、目標を異にしているということがはっきりしたということである」
バイデン大統領イスラエル訪問:絶大なイスラエル支持と”厳しい決断”への示唆も 2023.10.19 – オリーブ山通信 (mtolive.net) 

私もこの方法、つまりイスラエルとパレスティナ国家の二国間共存しか最終的にはないと思います。
この間、サウジまで巻き込んでその実現に大きく接近したところで、起きたのがこのハマスのテロ攻撃でした。
なんとかイスラエルに踏みとどまってほしいと願うのは、私だけではないでしょう。

 

2023年10月18日 (水)

まるでイスラエルが加害者のようです

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読売が『許せない・野望変わらず…半世紀経ても、イスラエルへ「憎悪と不信」渦巻くエジプト国民』という大きなタイトルをつけて叫んでいました。
いわく、「イスラエルの野望は変わらず、憎しみと不信が渦巻く」だそうです。なんかスゴイね。

「カイロ=田尾茂樹】エジプトを中心としたアラブ諸国とイスラエルが戦火を交え、石油ショックを招いた第4次中東戦争開戦から6日で50年となった。半世紀を経て和平の動きは広がるが、アラブ諸国が連帯するパレスチナとイスラエルとの衝突は絶えず、エジプト国民らの間には、今も憎しみや不信が渦巻く。
 エジプト・シナイ半島西岸の街トール。海辺近くに朽ちた建物群があった。戦争当時、イスラエル軍幹部らが使った住居跡だ。近くに住むアフマド・フセインさん(36)は「イスラエル人の観光客が時々訪れるが、我々の土地を奪ってきたイスラエルを許すことはできない」と話した」
(読売10月8日)
許せない・野望変わらず…半世紀経ても、イスラエルへ「憎悪と不信」渦巻くエジプト国民 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

よく記事を読むと、1973年の第4次中東戦争でスパイ容疑で捕まったエジプト人の話でした。
おいおい、いったいいつの話をしているんだい、第4次中東戦争なんて50年前のことでしょうが。
しかもこの戦争をしかけたのはエジプトで、今回も同じ構図ですが、ヨナ・キプール(贖罪の日)に奇襲攻撃を受けたのです。

「ヨム・キプール」の日に攻撃を受けた上、第三次中東戦争以来アラブ側の戦争能力を軽視していたイスラエルはアラブ側から奇襲を受け、かなりの苦戦を強いられたが、(イスラエル軍の主力である)予備役部隊が展開を完了すると、アメリカの支援等もあって戦局は次第にイスラエル優位に傾いていき、10月24日、国際連合による停戦決議をうけて停戦が成立した際、イスラエル軍は逆にエジプト・シリア領に侵入していた」
第四次中東戦争 - Wikipedia

「われわれの土地を奪った」もなにも、エジプトの一方的な侵攻によって突如始まった戦争で、イスラエルからみれば完全な自衛戦争です。
奪おうとしたのはエジプト、奪われて抹殺されかかったのがイスラエルです。
この読売記事に出てくるエジプト人はこう言います。

「エジプト軍に協力し、拠点を探るスパイ活動で約3年間拘束された遊牧民ムハンマド・スレイマンさん(80)は「今もパレスチナの同胞は苦しんでいる。この解決がなければ、本当の和平はない」と強調した」
(読売前掲)

あ、この人、一般市民じゃなくてスパイだったのね。(笑)
「パレスティナ同胞を解放する」と称して、当時のアラブ人国家はユダヤ人国家を消滅させるつもりで攻撃したのです。
「解放」とはただの比喩ではなく、文字通りイスラエルを地上から消し去ることでした。
しかし緒戦で敗退を重ねていたイスラエルは反撃に転じて勝利を掴んでいます。
とにもかくにも緒戦では善戦したことによって、エジプトをはじめとするアラブ諸国は面目を保ってイスラエルと対等な条件で交渉に乗り出すことができるようになったのです。
イスラエルと和平条約を結び、米国とも国交を回復しました。

特に戦争前の1972年7月に約2万人ともされたソ連の軍事顧問団が駐留していたエジプトは、これらを全員追放して、ソ連の衛星国から脱しました。

そしてなによりエジプトは大きな教訓を得ます。
イスラエルを抹殺することは物理的に不可能である、という認識です。

エジプトは、アラブ世界を拘束していた「パレスティナの大義」 幻想から自由になり、今に至ります。
これが今の大部分のアラブ国家の認識となっています。

面白いのは、戦後処理の一環として行われた占領地返還交渉においてエジプトは、パレスティナ(ガザ)を返還してもよいというイスラエルの申し出をあっさり拒否しています。
あれあれ、「われわれの土地」を返そうというんですから、もらっておけばいいのに。

拒んだのは、あんなテロリストの巣を返してもらっても困るということです。
それがこの読売が探し出してきた人物の手にかかると、まるで「許せない、イスラエルが野望に燃えて、ふたたびガザに攻め込んでいる」という話になっています。

読売の狂ったテンションの記事はまだまだ続きます。
こんどの怒りの語り部は「国連関係者」です。

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ガザ・エジプト境界の検問所、開通する方向で調整…国連「100万人以上が家を追われた」:写真 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

「【ワシントン=池田慶太、エルサレム=笹子美奈子】国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は15日、「(パレスチナ自治区ガザで)100万人以上が1週間で家を追われた」と明らかにした。イスラエル軍によるガザでの大規模な地上作戦が迫る中、人道危機は厳しさを増している。
イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘以降、ラザリーニ氏は「ガザには一滴の水も、一粒の小麦も、1リットルの燃料も入ってこない」と惨状を訴えた。その上で「(ガザの人々は)川が流れるように(エジプト国境方面の)南に向かっている。ガザには安全な場所はない」と指摘した」
(読売10月16日)
ガザ・エジプト境界の検問所、開通する方向で調整…国連「100万人以上が家を追われた」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

私は、必ず「国連関係者」がハマス側代理人としてプロパガンダをすると思っていました。
先日も書いたように、この「国連関係者」とはUNRWAというハマス利権の中枢に位置する機関です。
ハマスのフロント組織と言ったら語弊がありますが、このUNRWAがガザで100万人が家を追われる、と言っています。

「パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が続く中、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のラザリーニ事務局長は15日、ガザ地区で「この1週間で少なくとも100万人が家を追われた」と明らかにした。ガザでは激しい空爆と、食料や燃料の搬入を禁止する「完全封鎖」により人道危機が深刻になっている」
(毎日10月16日)

ガザ、人道危機深刻 UNRWA事務局長「100万人が家を追われた」 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

追われた人々は気の毒だとは思いますが、因果関係だけははっきりさせて書いて頂きたいものです。
ハマスがガザを根城にして、イランから貰った武器を溜め込み、それを学校や病院の地下に隠していました。
これらの学校や病院はUNRWAが世界からの浄財で作ったものでしたが、ガザを「実効支配する武装組織」ハマスはこの国連救済機関を乗っ取ってしまいました。

「UNRWAは腐敗の温床です。それどころか、ハマスと癒着している。UNRWAの学校の下には武器庫があり、UNRWAの学校ではハマスのサマーキャンプという名の、子供向け軍事訓練キャンプの参加者募集をします。UNRWAの学校では、イスラエル人は悪であり攻撃し殺すのが正しいと教える教科書を使っています。UNRWAの学校の教師はイスラエルへの憎悪に満ちた投稿をSNSでしています」
(飯山陽note)

そして今回の大規模テロルを見てEUは、UNRWAに対する支援がハマスに対する支援となってしまっていることにやっと気がつき支援停止の見直しを発表しました。

「欧州連合(EU)のバルヘリ欧州委員(近隣・拡大政策担当)は9日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃を受け、パレスチナ向けの支援を見直すと表明した。X(旧ツイッター)で、6億9100万ユーロ(約1080億円)分の資金援助について再検討する考えを示した」
(日経10月10日)
EU、パレスチナ支援見直しへ 10日に緊急外相会合 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

気がつかないのは、うちの国のメディアばかり。
「国連」というとひれ伏す条件反射が抜けきらず、実態を調べてみようともせずに彼らのプロパガンダを鵜吞みにします。
そして気がつけば、まるでイスラエルが「野望」に燃えて、ガザに爆弾の雨をふらせて市民を殺傷し、100万人の人を追い出そうとしているといった加害者と被害者が入れ替わった記事を大量に流すのです。

今、避難が滞っている、取り残された人たちが出た、エジプト側の検問所が開かない、救助物資が届かないなど多くの悲惨な情報が連日伝わってきています。
落ち着いて、なぜそうなっているのかをひとつひとつ考えていきましょう。
「戦争」のせいにしたり、「ユダヤ・アラブ数千年の抗争」などといってみてもなにも解決しないのですから。
ましてや「イスラエルの野望」などと言ってしまっては、加害者と被害者を逆転させることになりかねませんからね。

イスラエル現地で暮らす石堂ゆみ氏はこう述べています。

「一般メディアでは、イスラエルが、ガザの市民を無差別に殺害しようとしているという概念が定着しているかのようである。
無論、市民たちの犠牲は避けられないのであるが、これはイスラエルが望むところではない。そういう環境を作ったのは、市民を盾にしてきたハマスなのである。
ハマスは人々を盾にしているが、イスラエルは市民を急ぎ避難させている。冷静に考えれば、ガザの市民がうらむべきはハマスである」
(オリーブ山通信10月16日)
ガザ市民の南部避難を妨害するハマス:イスラエル水道供給再開 2023.10.16 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

日本メディアも、少しはイスラエルの人の声に耳をかたむけたらいかがでしょうか。

 

 

2023年10月17日 (火)

救援機についての誤解をふりまく野党

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いつものことですが、うちの国の野党はピントをはずしまくっています。
いえなに、救援機が遅れた、ドバイで降ろした、韓国空軍に乗せてもらった、アッチはタダだったが、コッチはカネ取った、といういう一件です。
政府有料チャーターに批判の声 外務省幹部「退避搭乗8人は想定外」(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

たとえば立憲はこの調子。

立憲民主党泉健太代表は16日、イスラエルとイスラム組織ハマスの軍事衝突を受けた日本政府による邦人退避の対応を「遅い」と批判した。長崎県佐世保市で記者団に語った。韓国軍の輸送機が日本人51人を運んだのに対し、日本政府が手配したチャーター機は8人だった事実に触れ「一刻も早く退避したい方が51人いたことを政府が把握できていなかった」との見方を披露。「情報収集力や決断が足りなかった」と指摘した」
(共同10月16日)
邦人退避「遅い」と批判 立民代表、日本政府の対応に(共同通信) - Yahoo!ニュース

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いや~、立憲に「情報収集と決断」なんて言われたくないですな。いちばんそれがないのがおたくでしょうが。
これに江川詔子氏まで相乗りして、こんなことをツイートしています。

「韓国は無料、しかも自国まで。一方、日本は有料で、ドバイまで。「自己責任」の国だもの →政府のチャーター機“有料”に邦人不満」

さすが江川氏らしく日本政府への「本質的批判」まで深掘りしていますが、この一件は「自己責任の国」とはあいにく関係ありません。
直ちにXの新機能のコミュニティノートで突っ込まれています。

今回の韓国のは軍用機で、民間チャーター便を使う場合は韓国でも使用料金を請求してます。日本でも自衛隊機が向かっており、こちらは通例通り無料となるはずです」

まぁ、これだけのこと。
3万取ったのとらないの、直行便だからどうのこうの、関係ないしょ、そんなこと。

いま政府を追及するこっちゃありませんやね。
この江川氏のツイートには、池内恵氏が直ちに反論しています。

「テルアビブ空港の発着状況を検索してみたら分かりますが、ドバイにもアブダビにも定期便が今も運行しているんですよ。自力で出られるのです。イスラエルは余程のことがなければ唯一の出入り口のベン・グリオン空港を閉じません。「自己責任」といった手頃なワードにつなげるジャーナリズムは軽率です」

どうしてちゃんと調べてから書かないだろうね、泉さん「情報収集」なんでしょう、大事なのは。
たぶん初めから政府叩きという結論があって書いているからこうなるんでしょうね。ああセコ。
軍用機なら無料、民間チャーターなら有料(ただし格安)というのは常識で、問題にするなら自衛隊機派遣にまで時間がかかってしまう法体制をどうにかするしかないでしょう。

アフガン避難の時はこうでした。
防衛省は外務省の要請がないと勝手に動けないのです。
この時も防衛省は外務大臣からの要請という形を踏襲しましたが、それは自衛隊法84条の3と4にその既定があるからです。
「在外邦人等輸送」(自衛隊法第84条の4)と「在外邦人等保護措置」(自衛隊法第84条の3)という法律は整備されていましたが、ネックがいくつかありました。
それはPKO5原則にもあったように現実離れした「安全」の縛りが大きかったです。
自衛隊法84条の3を押さえておきます。
自衛隊法 (doshisha.ac.jp)

●自衛隊法第84条の3
在外邦人等の輸送
第八十四条の三  防衛大臣は、外務大臣から外国における災害、騒乱その他の緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する邦人の輸送の依頼があつた場合において、当該輸送の安全について外務大臣と協議し、これが確保されていると認めるときは、当該邦人の輸送を行うことができる。この場合において、防衛大臣は、外務大臣から当該緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する外国人として同乗させることを依頼された者を同乗させることができる。

そもそも民間航空機ではなく自衛隊機を出さねばならないような在外邦人等輸送は、外国での災害や暴動、あるいは戦争といった緊急事態が起きているからで、安全なわきゃありませんがね。
南スーダンでは「戦闘」と日報に書いたら、野党から「戦闘が起きている地域に自衛隊を出したか。これは違反だ。撤収させろ」とワーワーやられましたが、自衛隊は民間では危ないからこそ軍隊を出すのです。(あたりまえだ)

アフガンのケースのように、現地政権が崩壊してしまって、その次の政権が国際的に承認を受けていないという空位というケースすらあります。
今回のイスラエルの場合、ベングリオン空港はまったく正常に機能しており、定期便もでているという場合もあります。

野党はかならず、自衛隊機派遣について、安全であることが確認されたかどうか、当該政府の了承があったかどうか、武器使用を許可していたかどうかなど、あとからネチネチと政府追及のネタにしてきます。
そのくせ隣国からワンテンポ遅れると、今度は「緊急対応がなっていない」「自己責任の国だから国民を見捨てたのだ」という非難を浴びせてくるわけで、しょーもない連中です。

韓国には韓国の都合があって、これについては楽韓さんが指摘していますが、要は韓国や欧米には便が止まっていたから、救援機を出したのです。
しかし日本は違って便があったということです。

「韓国人は場合によっては「帰りたくても帰れない」可能性が出たからこその派遣だったわけです。欧米も同様で、アメリカはユナイテッド、デルタ等のイスラエル便は運行停止が決まっています。
その一方で日本とイスラエルの民間便は週2回の直行便があります。イスラエルのエルアル航空が成田−テルアビブ便を飛ばしています。
昨日の成田発もなんの問題もなく飛んでいましたね。それ以外にも経由地ありでいくらでも帰ろうと思えば帰れます。
そもそも外務省の安全情報でもイスラエルはほぼ全土がレベル2(不要不急の渡航中止)でしかない」
楽韓Web (rakukan.net)

エルアル航空の運行状況はこうです。
まったく平常ですから、これに乗って帰ってこれるのです。
だから、緊急に救援機を送らねばならなかったアフガンとは、状況が大きく違うのです。

「エルアル・イスラエル航空は、イスラエルで発生した攻撃後も、治安当局の指示に従って通常運航を継続している。(略)エルアル・イスラエル航空は、東京/成田〜テルアビブ線を東京/成田発が木・日曜、テルアビブ発が水・土曜の週2往復運航している。現段階では、10月7日テルアビブ発東京/成田行きのLY91便は定刻の出発を予定している」
エルアル・イスラエル航空、通常運航を継続 航空券の特別対応も - TRAICY(トライシー)

ですから、韓国空軍機に同乗して来た人は、緊急に帰国しなければならない事情があった人たちだったのです。

ガザ侵攻が今日にでもあるかも知れない今、わが国の中東政策がいままでどおりの八方美人でよかったのか、イランがハマスと組んでいたら対イラン政策を抜本的に見直す気があるのかどうか、ハマスの世界テロ煽動に対してどのように対処するのか、などなど議論すべきことは無数にあるでしょうに。
こういう時に、つまらない枝葉の揚げ足取りは止めませんか。
こんなことで点数を稼いだと思うほうが情けない。

 

 

 

2023年10月16日 (月)

ガザ地区、侵攻を前にした避難をめぐる攻防


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イスラエル軍の15日といわれたガザ侵攻は延期されました。
天候が理由ですが、避難の遅れなどがあるようです。
後述しますが、イスラエル地上軍のガザ侵攻を前にして避難路が示されました。

イスラエル軍のアヴィチャイ・アドラエ報道官はソーシャルメディアで、ガザ北部から南部へ移動する経路を2つ示し、現地時間の午前10時~午後4時(日本時間の午後4時~午後10時)の間は、「危害を受けることなく」ここを通行できると、ソーシャルメディア「X(旧ツイッター)」でアラビア語で発表した。
報道官は、ガザ市の住民はハンユニスまで南へ移動するよう指示。沿岸部やザイトゥン地区西の住民にも、特定の道路を使った南への移動が認められるとした」
(BBC2023年10月14日)
イスラエル軍、ガザ住民に2つの避難経路示す ガザの死傷者1万人超える - BBCニュース

今回、イスラエルは戦時内閣を作り、挙国一致体制でハマスを完全撃滅しようとしています。


「イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は11日、イスラム武装組織ハマスとの戦闘を指揮するため、緊急の挙国一致政府を発足させた。ハマスのメンバーは全員「死人も同然」だとし、同組織の一掃を表明した。
ネタニヤフ首相と、野党「国家団結党」党首で前国防相のベニー・ガンツ氏はこの日、ハマスとの戦闘に対処するため、抗議デモにまで発展した両者の激しい政治的対立を一時的に脇に置くことで合意した。
ガンツ氏は「戦争をする時」が来たと主張。国民に対し、発足したばかりの緊急政府は「団結」し、「ハマスというものを地球上から抹殺する」用意ができていると語った」
(BBC10月12日)
ハマス構成員は「死人同然」、ネタニヤフ氏が一掃を表明 イスラエル「戦時内閣」発足 - BBCニュース


米国はイスラエルの自衛権発動を支持したものの、ネタニヤフの「ハマスは死人も同然」などといった発言には不快感を示しています。

「アメリカのジョー・バイデン大統領は、ネタニヤフ首相と電話で協議し、イスラエルは「戦争のルールに従って行動」しなければならないと明確に伝えたことを明らかにした」
(BBC前掲)

イスラエル連帯を明確にした欧米が、いちばん恐れているのは彼らの怒りに任せた暴走でしょう。
しかしこのイスラエルの激怒こそが、これがいままで無数にあったハマスのテロに対する対応と今回を大きく区別する部分です。
ガザ侵攻は2014年にもありましたが、この原因はヨルダン川西岸で起きたイスラエル人の少年3人の誘拐殺人事件がきっかけでした。
イスラエルはハマスのトンネルを破壊することを理由にあげていますが、米国と国連の仲介で2カ月で撤退しています。

以後、イスラエルはハマスのロケット弾を完全にブロックすることで、ハマスとの一定の共存を考えていたようですが、この構図は破綻しました。
ですから今回のガザ侵攻は、2014年のように一定の任務を達成するとイスラエル領に戻るものではなく、おそらくガザ地区の一定部分をバッファゾーンとして恒久的に支配下に置くものとみられています。

イスラエル国内からの情報を送ってくれている貴重なサイトである石堂ゆみ氏(イスラエル政府公認ガイド)の『オリーブ山通信』はこう述べています。
ガザ包囲網・イスラエル予備役48時間で30万人招集:ネタニヤフ首相が犠牲を覚悟でハマス壊滅を宣言 2023.10.10 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

「イスラエルは、もはやハマスは完全に存在を無くさなければならないとして、徹底的な攻撃を宣言。
9日、ギャラント防衛相は、ガザ地区を完全包囲するとして、電気もガスも水道も食料も全ての搬入を停止した。サイバー部隊は、ハマスにつながる仮想通貨を凍結したとのこと。いわゆる包囲網、包囲殲滅を宣言したということである。
同時に、イスラエル軍が、大規模な予備役を招集すると、わずか48時間で、30万人がこれに応じた。これは、1973年のヨム・キプール戦争の時の40万人に次ぐ多さである。この他、海外にいて、国防のために帰国を急いでいる人も多い。
さらには、ヨーロッパ各地に派遣していたイスラエル軍と、その装備を本国に呼び戻している。これから始まる攻撃は相当に大規模なものになりそうである。
ハマスは、イスラエルが大規模な攻撃をするなら、そのたびに人質を殺してその様子をアップすると脅迫した。しかし、たとえ人質を犠牲にしてもハマスを完全に壊滅させる方針だとネタニヤフ首相は言っている」
(オリーブ山通信10月10日石堂ゆみ)

いま、まだ侵攻が始まらないのは、予備役の招集が簡潔していないことと、ヨーロッパ各地に出しているイスラエル軍の装備を本国に呼び戻しているためであり、最大の理由は120~150名にも及ぶ人質の監禁場所を突き止めきっていないためだと思われます。
そのためもあって、イスラエルは避難期間を延長しつづけています。

NYタイムスは、ハマスはトンネルにこもって抵抗するとイスラエル軍は見ていると報じています。

「ガザ市やガザ地区北部の地下には数百km(推定)もの地下トンネルが張り巡らされ、ここにハマスの戦闘員が数万人規模で潜んでいると予想されている。取材に応じたイスラエル軍高官も『敵はトンネルを活用した戦術で我々に襲いかかってくるだろう』と述べた」と報じたが、複数のイスラエル軍将校は困難な戦いに向けて準備が進んでいる」
イスラエルの侵略計画はガザ市とハマスの指導者を標的にしている-ニューヨークタイムズ (nytimes.com)

一方、ハマスは地下秘密工場で対戦車ロケット弾を作っている風景を公開しています。

20231015-150837

A Mansour أحمد منصور

イスラエル軍は大量にガザ地区に避難勧告を出し続けており、日本メディアが書き散らしているように「1時間で立ち退け」というものではありません。

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本格侵攻前の事前準備、イスラエル軍の歩兵部隊と戦車がガザ地区に侵入 (grandfleet.info)

下写真は避難勧告ビラで、ガザ川の南までの退避ルート(安全回廊)を2本用意し、その道路名まで明記しています。

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#عاجل ガザ市の住民への重要な声明です。 私たちは最近、あなた方の安全を守るために、ガザ市を離れてワディ・ガザの南に行くよう訴えました。 IDFは、10:00から16:00の間、前述の道路を無傷で移動することを許可することをお知らせします。 安全のため、ベイト・ハヌンからカーン・ユニスまで南に移動するのに当たる時間を利用してください。
あなた自身とあなたの愛する人を気にかけているなら、指示に従って南に行ってください。
ハマスの指導者たちは自分たちの世話をし、この地域でのストライキから身を守っていると確信してください。
ビーチ、砂浜、ザイトゥーンの西側の住民も、ダルドル通りとサナ通りをサラアルディン通りとアルバール通りに向かって移動することができます」
افيخاي ادرعي(@AvichayAdraee)さん / X (twitter.com)

あるいはSNSでこのように勧告しています。

「ガザ市の住民よ、ナイムの #حماس の指導者たちは、あなた方を犠牲にし、爆撃の下で生きる覚悟で、あなた自身の利益のために、できるだけ早くワディ・ガザの南の地域に行きなさい。
そしてハマスの指導者たちに、あなたはガザを深淵に向かって押しやった 」
#دواعش_حماس アヴィチャイ・エデリ

 この安全回廊を通って避難が続けられているのが動画でも確認できます。
すでに60万人が避難しているといわれています。
「ガザ北部からの主要な避難経路の1つであるアルラシード通りは、南に避難しようとする住民で完全に溢れています。

「この映像は、IDFが宣言したワディガザの境界線のすぐ南で撮影されました」
OSINTtechnical

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OSINTtechnical(@Osinttechnical)さん / X (twitter.com) 

朝日によれば、UNRWAなどの国連機関は活動拠点や人員を南部に移したと発表しました。
UNRWAが運営する学校などには多くの市民が避難しており、イスラエルに対して攻撃対象にしないよう要求したそうです。
南部のガザ川以南に避難するのは正しい判断ですが、ハマスの拠点と目されている学校や病院に避難するのは、ハマスに人間の楯を与えるようなものです。

またハマスは、この避難を妨害し、南部に移動する車列の前にブロックを置いているのがドローンに撮影されています。
障害物の杖にはハマス戦闘員の検問所がかならずあるはずです。

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「これが、ハマスが戦争の惨禍から身を守るために、ガザ渓谷の南へのガザ人の移動を妨害しようとしている方法です。ハマスの指導者たちは、ガザ市の住民がその施設や指導者の人間の盾にならないことを恐れている。ハマスはガザの人々を憎み、搾取している」
アヴィチャイ・エデリ

ハマスは避難をさせないと宣言しています。

「一方、ハマスは13日、SNS上に声明を出し、「(イスラエルの警告は)偽りの宣伝で、心理戦だ。市民に対して、無視するよう呼びかける」と主張した」
(朝日10月13日)
ガザ住民への「24時間以内」の退避要求、ハマスは「無視」呼びかけ [ガザ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

エジプトは北部からのガザ難民を阻止するためにコンクリートで障壁を作りました。

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「エジプトは、ガザとの2層のフェンスに加えて、コンクリートの障壁を完成させるために<>時間体制で取り組んでいます。それは一人の「難民」を望んでいません」
XユーザーのEli David

また、避難する車列を空爆したとBBCは報じていますが誤報です。
そもそもイスラエルに避難民を空爆し、避難を遅らせる利益はなにひとつありません。
イスラエルはなんどとなく繰り返しているように、目標はガザ市民ではなくハマス戦闘員なので、早く退避してほしいのです。

「こうした中、ガザ地区北部から逃れてきた民間人の車列が空爆を受けたとする映像が浮上した。BBCヴェリファイはこれを本物だと確認した。この映像は、幼い子どもを含む複数の民間人の死亡が確認された空爆現場の近くで撮影されたもの。
数台の車両が炎上したり、損傷しているのが映っている。この場所はガザ市のはずれから南に数キロの地点」
(BBC10月15日)
イスラエル、「陸海空からの」ガザ攻撃を準備 病院への避難命令は「死刑宣告」とWHO - BBCニュース

これには動画もあって、上空からの飛翔体が見られないために空爆ではなく路肩爆弾(IED)であると考えられます。

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AbuAliEnglish(@AbuAliEnglishB1)

おそらく、ハマスは避難を徹底的に妨害し、住民が多くいる場所を選んでテロ攻撃をしかけるつもりなのでしょう。
それを西側メディアが報じて、イスラエルの非人道ぶりを非難させ、欧米を離反させること、これがハマスの思惑です。
人道が自由主義陣営の弱い脇腹だと知っているからです。

さらにハマスは、世界各国でテロを呼びかけました。
ナイフ、自動車で聞き殺す、毒薬等々、いかなる手段も問わず、対象は無限だそうです。
この人らにクレージーだといっても始まりませんが、完全に狂っています。
さっそくフランスでナイフで首を切って殺害するテロが起きています。
ハマスはまともにやったら勝てる道理がないので、あらゆる手段を使って泥沼化させ、イスラエルを追い込む腹です。

 

 

 

 

 

2023年10月15日 (日)

日曜写真館 コスモスや花おとろへずみだれそめ

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コスモスや雲の愁ひに水くもり 上田五千石

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コスモスの天にのぼらん如く揉む 山口青邨

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一面のコスモス密にして疎なり 稲畑汀子

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コスモスの揺れ返すとき色乱れ 稲畑汀子

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この頃の空コスモスの色似合ふ 後藤比奈夫

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コスモスの遠い記憶に停留所 岡本眸

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いつ見てもコスモスの張り切つてをり 右城暮石 

 

 

 

 

2023年10月14日 (土)

安倍氏を二度殺した岸田政権

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あーあ、やっちゃった。
岸田政権が、「テロリストに報酬をやってはならない」という万国共通のテロリズム 対処の大原則を踏み外しました。
テロリストの要求どおり、とうとう本当に宗教法人解散請求をだしてしまったのです。
これでわが国はテロリストの要求を呑む国という情報を世界に散布してしまいました。
しかもハマステロの時代にです。

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【速報】旧統一教会に“解散命令請求” 宗教法人審議会で盛山文科大臣が方針表明 (tv-asahi.co.jp)

「旧統一教会をめぐる問題で盛山文部科学大臣は12日、宗教法人審議会が終了したあと臨時の記者会見を開き、教団の行為は民法上の不法行為に該当し、著しく公共の福祉を害するなどとして解散命令の請求を正式に決定し、13日にも東京地方裁判所に請求すると表明しました」
(NHK10月12日)
旧統一教会の解散命令 請求を正式決定 今後の手続きは | NHK | 旧統一教会

岸田氏の政治家としての根本的欠陥は、理念が欠落していることです。
いつもはその欠落はわかりません。政府はしっかりした官僚機構に支えられていますから。
ですから、岸田氏が安倍氏の外交路線を踏襲しているうちは破綻はありませんが、わが身に降りかかる火の粉となるともう踏ん張れません。
聞く耳大事のいい人リベラルに戻ってしまいます。
「聞く耳」が多い分ノイズも聴いてしまい、かえって状況を悪化させてしまいます。

それにしても呆れたもんです。
なんでも、いつまでも引きずると選挙に響くからだそうです。おいおい。
宗教法人審議会で、解散など無理ですと言った学識経験者に対して政府関係者がこう言ったそうです。
「政権がもたん」
知るか、そんなこと。
この問題は、政権の存続なんかとはまったく無関係です。

あらかじめ言っておきますが、私は旧統一教会などはどうしようもない反日宗教、いやクソ邪教だと思っています。
あんなもんを拝むなら、イワシの頭を拝むほうがよほどましです。
しかし旧統一教会が邪教であろうとどうしようと、「宗教」なのです。

わかってんのかな、「宗教」ほどこわいモンはこの世にないのです。
今回のハマスのテロ攻撃でも、いうまでもなく宗教対立が背景にあります。
だからこそいっそう法と秩序という「ものさし」で考えねばならないのです。

今年3月27日、永岡文科相が統一教会に対する5回目の「質問権」を行使しました。
内容はありません。同じことの繰り返しをしているだけのことです。

「文化庁は28日、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する5回目の「質問権」を行使、教団側に質問を送付したと発表した。永岡桂子文部科学相が27日、宗教法人審議会に質問内容を諮問し了承された。回答期限は4月25日。
5回目は教団の組織運営や財産関連、献金などのトラブルを巡る示談状況など計203項目について回答を求めた。裁判所への解散命令請求の可否判断は4月以降になる。
教団側の過去4回の回答内容は乏しく、教団による違法行為の「組織性、悪質性、継続性」を要件とした解散命令請求の可否を文化庁が判断できる状況に至っていない。このため5回目の行使を決断した」
(産経3月28日)
旧統一教会問題 文化庁5回目質問権を行使 - 産経ニュース (sankei.com)

なぜ文科省は、同じことの繰り返しをしているのでしょうか。
2009年に旧統一教会は、先祖の因縁を殊更に結び付けるなどの献金奨励や勧誘をしないとしたコンプライアンス宣言を出し、今年7月に発表した声明でも、宣言以降は「教団を相手取った民事訴訟は着実に減っている」としています。
2018年に、安倍政権は霊感商法でだまし取られた寄付を返還できるように消費者契約法を改正したことによって、旧統一教会は霊感商法がたちゆかなくなり、2018年から19年にかけては0となります。
以後、1件か2件にとどまっています。
つまり霊感商法を絶滅させたのは安倍氏なのです。
この事実を知らず、旧統一教会の集会に安倍氏が出たのでないので、このテロリストは殺意を抱いて、日本がもっとも失ってははならない政治家を暗殺したのですから絶句します。

産経も解散請求には、やや呆れ気味にこう述べています。

「解散命令請求の要件とされる教団による違法行為の「組織性、悪質性、継続性」を強く主張できる証拠の積み上げは不十分な状況だ。
法令違反を踏まえた裁判所による宗教法人の解散命令は過去2件。いずれも団体のトップが深く関与した刑事事件が有力な証拠になった。
一方、旧統一教会を巡っては現状、組織的な刑事事件は浮上しておらず、教団の違法性を認定した複数の民事裁判などで解散命令の要件を立証するという前例のない手順を踏まざるを得ない。請求が退けられれば今後の宗教行政に大きな禍根を残すことは必至なため、文化庁は慎重な姿勢を保っている」
(産経3月27日)

旧統一教会への質問権行使、文化庁の調査が長期化 解散命令請求へ証拠積み上げ急ぐ - 産経ニュース (sankei.com)

旧統一教会が起こしている献金の強要などはすべて民事上の事件であって、オウムが起こした刑事テロルとは次元が違います。
宗教法人解散のために必要な刑事事件が存在しない以上、残るは「組織性、悪質性、継続性」のみということになりますが、これらも各々の民事裁判ですべて解散に追い込むに足るものでなければなりません。
これが怪しい。

たとえば、裁判で献金を強要したかしないかを、誰が判断できるのでしょうか。
安倍氏を暗殺したテロリストの母も「喜んで」喜捨したのかもしれないのです。
強要を受けたか受けないかは、信徒の内面の問題であってだれにも分かりません。
それほどまでに「宗教」とはひとの精神の内部の問題なのです。
ですから内面まで立ち入って禁止するとなると、あらゆる宗教が行っている喜捨行為を禁じねばならなくなります。
そしてあらゆる宗教に解散命令を出さねばならなくなります。

ならば問題はその額でしょうか。
実はこれも1億2億の宗教的喜捨などそう珍しいことではないのです。
カソリックなど諸外国の事例では1億、2億の献金など日常茶飯事。
組織性に至っては、「教会」と名乗っている以上、なんらかの関与があるのはあたりまえであって、ことさら旧統一教会に限ったことではありません。
旧統一教会を擁護する気などさらさらありませんが、元々「宗教」とはそういうものなのです。
旧統一教会は幼稚だったからこうなっただけのことで、視野を伸ばしてしまうとそう驚くことではないのです。
ひと頃こんなこんなことをやっていた宗教法人は両手の数ほどあったはずですが、それをいちいち解散請求すつもりなのでしょうか。
民事的に処罰されるべきは処罰する、それでジ・エンドです。

問題はこのテロリストが、「ウチは統一教会で不幸になったんだ」と叫んだから、こんな解散請求まで出すはめになったという政治の側の問題です。
そもそも「政権が持たない」もナニも、初めから対処を誤っていました。
初めから安倍氏を暗殺した外道の言うことなど一切無視すればよかっただけのことです。
テロリストに与えるべきは、絶望と無力感だけです。

テロリストとその志願者に対して、テロをやってもなにも変わらない、政府は微動だにしない、一切の交渉もしないし、警察はテロリストに物語を語らせない、名前すら開示しない、動機も聞かない、一切を黙殺する、これが先進国のテロ対応原則です。
ところが奈良県警はベラベラと捜査情報をリークしまくり、メディアはテロリストの悲話を作ってみせました。
そして、旧統一教会と自民党の代議士との関係などという、まったくどうでもいい方角にこの事件をそらしたのです。
その結果が宗教法人解散劇です。馬鹿馬鹿しい。

かくして安倍氏を二度殺されました。
一度目はテロリストによって、そして二度目はその男に政府が屈したことで。

 

 

2023年10月13日 (金)

イラン、ハマスのイスラエル攻撃計画に関与か

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11日のイスラエルの状況です。
イスラエル政府は、これまでに30万人の予備役を動員し、ガザ地区周辺に35の大隊を展開させているとしていますが、予備役の編入と部隊編成、訓練、補給に時間が必要なはずで、ガザ地区への侵攻には至っていません。
一方、ヒズボラは11日、「レバノン国境に近いイスラエル軍駐屯地を対戦車ミサイルで攻撃した」と表明し、イスラエル軍に損害がでました。
イスラエル軍は直ちに報復攻撃を行い、「レバノン南部のヒズボラ駐屯地を無人機で攻撃し、対戦車ミサイルが発射された射点にも砲撃を加えた」と発表しています。

また、イスラエル国防相は、シリア領内からイスラエルに向けて砲撃があったと発表しています。
ヒズボラは北部で挑発をすることで、ガザ地区に集中しているイスラエル軍の力を分散させようと意図しています。
これで、ハマス、ヒズボラ、シリアがイスラエル包囲網を作ったことが確認されました。

一方、同じく11日、米国は空母打撃群を派遣するのに併せて、空路で武器弾薬などの支援品をイスラエル南部の基地に輸送しました。

「[ワシントン 9日 ロイター] - 米国防総省高官は9日、イスラム組織ハマスによる攻撃を受けたイスラエルに防空装備や弾薬などの軍事支援を急いでいると明らかにした。
「(軍需物資を載せた)航空機が既に出発した」とし、最も緊急のニーズに対応するためイスラエル側と常に連絡を取っていると述べた。
米国はイスラエルによる軍事支援要請の詳細を明らかにしていないが、高官によると、政府は防衛産業にイスラエルからの既存の注文に迅速に対応するよう働きかけているほか、米軍の在庫から支援に回すことも検討している。
高官は米国がウクライナとイスラエルに同時に武器を支援するのに苦慮するのではないかとの懸念に否定的な見方を示し、「両国に支援を続けるとともに、われわれ自身の世界的な即応態勢も維持することができる」と述べた」
(ロイター10月10日)
米、イスラエル軍事支援加速 ウクライナと並行可能=国防当局者 | Reuters

この米国が2正面をかかえることに対して、ゼレンスキーがこのような危惧をもらしています。

[9日 ロイター] - ウクライナのゼレンスキー大統領は9日夜のビデオ演説で、世界の結束を弱めるため中東で戦争をあおることはロシアの利益になると述べた。ロシアのプロパガンダ担当者が事態を「ほくそ笑んで」おり、「ロシアの同盟国」イランがイスラエルを攻撃する勢力を公然と支援していると指摘した。
「この全ては現在、世界が認識しているよりもはるかに大きな脅威となっている」とした上で「われわれは、この脅威に対抗する方法を知っている。必要な対策を準備している。最も重要なのは、最大限の世界的団結の必要性を訴えていることだ」と述べた。
ゼレンスキー氏は8日にイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し「イスラエルと連帯している」と伝えた」
中東での戦争扇動、ロシアを利することに=ウクライナ大統領 | Start Magazine (taboolanews.com)

ゼレンスキーが指摘するとおり「ロシアの同盟国のイランが公然とイスラエルを攻撃している」のは事実です。
ウォールストリートジャーナルはこのように報じています。

「ドバイ】パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが7日にイスラエルに対して行った大規模な奇襲攻撃は、イランの治安当局者が立案に関わっていたことが分かった。レバノンの首都ベイルートで2日に開かれた会合でイラン当局者が攻撃を承認した。ハマスとレバノンのシーア派組織ヒズボラの幹部が明らかにした。
 両組織の幹部によると、イラン革命防衛隊(IRGC)の幹部はイスラエルへの陸海空からの侵入を立案するため、8月からハマスと協力していた。
 ベイルートで数回会合が開催され、作戦の詳細が練られたという。会合にはIRGCの幹部のほか、ハマスとヒズボラなどイランの支援を受けている四つの武装集団の代表が出席した」
(WSJ2023 年10 月 9 日)
イラン、ハマスのイスラエル攻撃計画に関与 - WSJ

ただし現時点では 米国当局者はイランが関与した証拠を確認していないと述べています。

「ワシントン(CNN) 米諜報当局は大量のデータとスパイ組織を駆使し、イランがハマスによるイスラエルへの攻撃に直接的な役割を果たしていたのかどうか断定する有力な証拠を探っていると、バイデン政権の高官が10日に明らかにした。
イランが長年ハマスを支援してきたことから、米国はイランを今回の攻撃の「共犯」とみている。ただサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が10日に述べたところによれば、米政権は依然イランと攻撃の策定・遂行とを結びつける直接の証拠をつかんではいない」
(CNN10月11日)

直接のイランからの指令があったという物的証拠は上がっていませんが、この大規模襲撃の前日にイラン大統領とハマス指導者ハニヤが面談しています。

「ハマスはイランから支援を受けていることを公式に認めている。イランのライシ大統領は8日、イスラム聖戦の指導者ジヤド・アル・ナカラ氏、ハマス指導者のイスマイル・ハニヤ氏と会談した。
ハマスとヒズボラの幹部によると、イランはイスラエルと敵対するハマスやヒズボラなどの民兵の調整や資金繰り、武装にIRGCの国外向け資金・人員を投じるため、イエメンでのサウジアラビアとの対立などその他の地域紛争を棚上げしている」
(WSJ前掲)

ハマスやヒズボラのバックにイランがおり、武器・弾薬の補給、訓練をしているのは、ハマス自らも認めていることです。
サウジを攻撃したイラン強硬派の意図: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

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イスラエル攻撃立案に関与か イラン精鋭部隊、ハマスと会合―8月以降2週間置きに・報道:時事ドットコム (jiji.com)

「イランはスンニ派のハマスを以前から支援していたが、他のイランの代理組織はシーア派で、最近になって組織間の協力が加速するまでハマスはアウトサイダーだった。
これらの武装組織の代表によると、8月以降、レバノンで少なくとも2週間に1度、コッズ部隊の幹部と会合を開き、今回のイスラエルへの攻撃とその後について議論した。ガーニ氏はヒズボラ指導者のハッサン・ナスララ氏、イスラム聖戦のアル・ナカラ氏、ハマス軍事部門幹部のサレフ・アル・アルリ氏とともに一部の会合に出席したという。
イランのアミール・アブドラヒアン外相は少なくとも2回の会合に出席したという」
(WSJ前掲)

イランがハマスと事前に丹念なすり合わせをしていたことは明白で、これだけ大規模なテロ作戦には1年単位の準備が必要です。
発射されたロケット弾だけで、ハマスの公称で5千発といわれていますから、その製造、保管には相当の時間と資金がかかります。
またハマスは、形式的にはイランとは別のパレスティナ民族解放組織」としていますが、ハマスは事実上の革命防衛隊の出先組織にすぎません。
そのような彼らが、イランから事前に明確な同意なしに大規模攻撃をすることなどありえません。

仮に今回の「第2のホロコースト」とさえ呼ばれる大規模テロにイランが直接に関与したとなると、イスラエルは躊躇なくイラン指導部を攻撃することでしょう。


 

 

2023年10月12日 (木)

ハマスはパレスティナとイコールではない

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今回のハマスの無差別テロ報道に、なにかヘンな印象を受けませんでしたか。
ハマスの枕詞に長ったらしく「ガザ地区を実効支配している武装勢力」とくっつけて報じています。

たとえばNHKはこういう感じでハマスを紹介しています。

「正式名称は「イスラム抵抗運動」。ハマスはそのアラビア語の頭文字などをとったもので「情熱」という意味の単語にもなります。
1987年に発足したハマスは国家としてのイスラエルを一切認めない強硬な立場をとり、武力闘争を掲げて自爆テロなどを行いました。その一方で、市民に対する福祉活動も行い、市民の支持を得ました。そしてパレスチナの穏健派の政治勢力「ファタハ」との武力闘争をへて、2007年からはガザ地区を実効支配しています」
(2023年10月10日)
イスラエルにイスラム組織「ハマス」が大規模攻撃 何が起きた? | NHK 

下の画像はハマスの戦闘員が、野外コンサートにロケット弾を大量に撃ち込んだ後に突入し、手当たり次第に発砲して200名以上を虐殺し、100人以上を拉致した時の画像です。
血だらけの女性が髪をつかまれて車に連れ込まれています。

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ハマス戦闘員が音楽イベントに――若者ら260人が犠牲に 「奇襲」「民間人の人質」「SNS」…イスラエルに異例な大規模攻撃 - ライブドアニュース (livedoor.com)

これが「武装勢力」とやらの「パレスティナ解放闘争」だそうです。
「武装勢力」というあいまいな概念は、主権国家が有する正規軍以外の武装集団を指しますが、ISのようなテロ組織からカレン民族同盟のように国家形態を持つものまで千差万別で、これではなにも言ったことになりません。
ハマスはいままでテロで数限りなく市民を殺してきており、スッキリと「テロ組織」と呼んであげるべきです。

なになに、彼らハマスもガザ地区を「実効支配」しているから、パレスティナの代表だって。
ここは大事なのでしっかり押さえておきたいのですが、「実効支配」とはこのような意味で使われる概念です。
実効支配の概念規定とは

「実効支配(じっこうしはい、英: effective control)は、特定の国や勢力が、それと対立している国や勢力、あるいは第三国などの承認を得ないままに軍隊を駐留させるなどして一定の領域を実質的に統治している状態を指す」
実効支配 - Wikipedia

実効支配していると聞くとなにか重々しく聞こえて、一定の合法性すらあるように聞こえてしまいますが、なんのことはない法の支配によらず、国際社会の承認も得ずに、勝手に武力で一定領域を支配しているだけの「状態」です。
日本に関わることだと、北方領土はロシアが「実効支配」していますし、竹島も韓国が「実効支配」しています。
ウクライナの占領地4州もロシアによる違法な「実効支配」です。
このように「実効支配」という言葉をメディアは安易に使いまわしていますが、法や正義を無視して占有しているだけのネガティブな「状態」のことなのです。

つまり、ハマスはガザ地区を暴力で支配しているだけであって、なんの法的合法性も正義も持たないテロリスト組織にすぎません。
それを知ってか知らずか、うちの国の首相がパレスティナ自治政府とイスラエルに平和を呼びかける電話をしたそうです。

「岸田文雄首相は10日、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長と近く個別に電話会談を行う方向で調整に入った。政府関係者が明らかにした。イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが大規模な戦闘状態に陥っていることを踏まえ、イスラエルとアラブ諸国の双方とも良好な関係を持つ日本の立ち位置を生かし、停戦を呼びかける」
(産経10月10日)
<独自>岸田首相、イスラエル・パレスチナに停戦呼びかけへ - 産経ニュース (sankei.com)

おもわず吹き出しちゃいました。
だってパレスティナ自治政府はなんの力も権限もない映画の大道具みたいなところですよ、そんな所になにを期待しているのですか。
そりゃ、パレスティナ自治政府は、即時和平を働きかけようと答えるでしょうが、なんの力もありません。
パレスティナ自治政府とは、昔のPLOのことですが、かつてはソ連の後ろ楯でブイブイいわしていましたが、今は衰弱しきっています。
カネなし、武力なし、人材なしで、136カ国から承認された 「国家」だという看板だけが頼りですが、これもハマスに奪われかかっています。
パレスチナ自治政府 - Wikipedia

2007年にイランをバックにつけた新興勢力であるハマスと内ゲバを演じてコテンパンにされて以来、ガザ地区の実権はすべてハマスに「実効支配」されてしまいました。
ハマスはイランから潤沢な資金と武器、そしてイラン革命防衛隊の支援をもらって勝利を収めたのです。

「2007年3月17日、ハマースとの挙国一致内閣が成立したが、両者の抗争は断続的に続いた。6月11日、ハマースがガザ地区の占拠に及んだことで、アッバースは一方的に内閣の解散を宣言。ハマースを排除した新内閣(首相サラーム・ファイヤード)を組織したが、ハマース側は当然これを認めなかった。以後はパレスチナは、ガザ地区を領するハマースと、ヨルダン川西岸地区を領するファタハの分裂状態となった。2012年10月にヨルダン川西岸地区のみで実施された地方選は、ハマースがボイコットしたため事実上のファタハへの信任投票となったが、主要都市で敗北した」
ファタハ - Wikipedia

以後、ハマスはパレスティナ自治政府を無視して、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)からの支援を独占してきました。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) |UNRWA

UNRWAは通常の支援機関とは異なり、パレスチナ難民キャンプの運営自体に関わっています。
教育や病院など900以上の施設を運営しており、道路などのインフラ整備なども実施しています。
その結果、UNRWAだけで3万人という大量の職員を雇用しています。すごい利権です。
もちろんハマスに忠誠を誓う者しか採用されません。

UNRWAは5地域で702校を運営し、年間約55万人のパレスチナ難民の子どもたちに無料で初等教育を提供しているほか、次の教育・訓練施設を運営しています。
教員養成校2校(ヨルダン川西岸およびヨルダンに各1校):約2000人が教育学を学んでいます。
技能・職業訓練センター8校:約8000人のパレスチナ難民が様々な分野の技能・職業訓練や高等教育を受けています。  

EUだけで毎年UNRWAに6億9100万ユーロ(約1080億円)もの援助をおこなっており、巨大な利権となっています。
日本もUNRWAに対し第6位の援助国で、3320万米ドルを拠出しています。
日本もEUに従うべきでしょう。

なぜならこのUNRWA利権を握っているのは、ガザ地区を「実効支配」しているハマスだからです。
日欧の「善意」は、ロケット弾に変わっているのですよ。

しかし近年、このハマスの「鉄の拳」による「実効支配」にも綻びが見え始めていました。
先月7月には、大規模な反ハマスデモが行われています。
もはやパレスティナ=ハマスという図式は崩壊しているのです。

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ガザ地区住民がハマスに抗議 生活苦から数千人がデモ参加(AP通信) - Yahoo!ニュース

「ハマスは"鉄の拳"でガザ地区を支配し、デモは禁止され、反対意見は封じ込められた。
 2006年に実施されたパレスチナ自治区の選挙で多数派となったハマスは翌年、ガザ地区を実効支配するに至り、イスラエルとエジプトは同地区を封鎖した。
 イスラエルにしてみれば、同国の生存権を否定するハマスを封じ込める必要があったが、封鎖はガザの経済を荒廃させ、失業率を急上昇させ、頻繁な停電をもたらした。
 現在の猛暑下で電力受給が逼迫、住民は1日に4時間から6時間の電力供給しか受けられない。
 湾岸の富裕国カタールから、ガザ地区の最貧困家庭に毎月100ドルが支給されるが、ハマスはそこから約15ドルの手数料を天引きしていることに対しても、デモ参加者はハマスを批判している」
(AP2023年7月31日)

この大規模テロ事件を受けて、EUはこのパレテティナ支援を凍結する見込みです。

「【ブリュッセル=辻隆史】欧州連合(EU)のバルヘリ欧州委員(近隣・拡大政策担当)は9日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃を受け、パレスチナ向けの支援を見直すと表明した。X(旧ツイッター)で、6億9100万ユーロ(約1080億円)分の資金援助について再検討する考えを示した」
(日経10月10日)
EU、パレスチナ支援見直しへ 10日に緊急外相会合 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

EUは、「イスラエルや市民に対するテロの規模や残虐性」を問題視しての決定だとしています。
今回の大規模テロは、いままでパレスティナに対して融和的でイスラエルと距離を置いていたEUも、イスラエルに連帯せざるをえませんでした。
エッフェル塔はイスラエルに連帯して国旗の色に染まりました。

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犠牲者を悼み、イスラエルカラーにライトアップされたエッフェル塔 - Sortiraparis.com
ヨーロッパにとっても、それほどまでにハマスのテロが残虐であって、現代のホロコーストだと考えたからです。

2年ほど前まで朝日はこんなノーテンキな記事を書いて、ハマスを手放しで褒めたたえていました。

パレスチナ自治区ガザ地区で続いた武装勢力とイスラエル軍との衝突は21日、停戦に入った。ガザ地区での最大勢力は、同地区を実効支配するイスラム組織ハマスだ。停戦前日の20日もイスラエルに向けてロケット弾を発射している。
米欧などが「テロ組織」とする一方、「エルサレムを守るために戦う」とのイメージを広め、存在感をさらに増している。
 イスラエル占領下の東エルサレムでパレスチナ人が退去を求められたことなどを機に、4月中旬からエルサレムなどで抗議デモが拡大。そうした人々の声を代弁するように、真っ先に動いたのがハマスだった。

「パレスチナの人々と聖地を守る」(ハニヤ政治局長)として5月10日、ロケット弾攻撃に踏み切った」
(2021年5月21日)
ハマスがガザで支持される訳 「盾」にされた市民だけど [ガザ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

まるで正義の味方、弱者のために立ち上がるハマスです。
いまでも同じことを書けますか、朝日さん。
ハマスがせっせとロケット弾を発射し、イスラエル住民を殺し続けるのは、戦っていないと存在理由がなくなるからです。
ユダヤ人を殺しまくって海に追い落とし、そこに晴れてパレスティナ国家を樹立するのが目的です。
そんなことは夢のまた夢だと百も承知しているから、戦うふりをしていただけのことです。

ただし、今回だけは違いました。
なんだパレスティナ自治政府と一緒じゃないかといわれないためには日夜ロケット弾をぶっ放していなければならなかったのですが、中東情勢を大きく変える可能性があるサウジとイスラエルの接近が現実のものとなったのです。
危機感を感じた最大のハマスのスポンサーであるイランが、ハマスの尻を蹴り上げたのです。
これについては次回に。

もはやイスラエル軍によるガザ地区掃討は時間の問題です。
日本政府にできることは、パレスティナ自治政府に電話することなどではなく、イスラエルへの連帯の意志を明確にすること、そしてそのうえでガザ地区の一般民衆に被害がでないように自制を要請することしかありません。
地上進攻は不可避だとしても、道義的に非難されるようなことが続くと国際社会の支援は終わります。
今の水道電気を全面的に切るような方法はあきらかに行きすぎで、戦時国際法違反です。
ウクライナが支援され続けているのは、彼らの戦いが法と正義に則っているからだということをお忘れなく。

ゼレンスキーは11日、訪問先のブリュッセルでこう述べています。

「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の最初の数日を思い出す。すべての指導者はイスラエルを訪れ、人々を支援することを提言したい。何かしらの機関ではなくテロの攻撃を受けている人たち、そして亡くなっている人たちへの支援だ」
(NHK10月11日)【11日詳細】イスラエル 地上部隊の侵攻辞さず 死者2200人超に | NHK | イスラエル・パレスチナ

 


 

2023年10月11日 (水)

イスラエル、史上最悪のテロ攻撃を受ける

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テロ組織ハマスが、イスラエルを攻撃しました。
BBCによれば、8日現在のイスラエルの受けた死者は700人以上、パレスティナ側が400人だそうです。

死傷者は日がたつにつれて激増していますので、あくまで今の時点ではです。


「イスラエル軍は8日、前日にパレスチナ自治区ガザ地区からイスラエル南部に侵入したイスラム組織ハマスの戦闘員が、依然として南部で戦っていると明らかにした。ハマスの攻撃によるイスラエルでの死者は、700人以上に上るという。イスラエルの反撃によるパレスチナ側の死者は400人以上という」
(BBC10月8日)
イスラエルはハマスと「長く厳しい戦争」に直面=イスラエル首相 双方の死者計1100人以上 - BBCニュース

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【解説】 イスラエルへの急襲、不可能と思われたが……ハマスはどうやって - BBCニュース

9日の時点で、イスラエルは奇襲攻撃から立ち直り、ガザ沿いすべての街で治安を回復しているようです。
ハマスが開けたスマート・ウォールの穴は、すべて戦車で封鎖されました。
イスラエル国防軍は、侵入したテロリストを掃討にとりかかっていますが、人質を拉致してパレスティナ側に逃亡した者らの追跡には至っていません。
一方、攻撃初頭には3千発という飽和攻撃がなされたロケット弾攻撃も、いまは下火になり稀に攻撃を受けてもアイアンドームが機能して防いでいるようです。
イスラエルはガザ地区に空爆をかけていますが、これはロケット弾攻撃の拠点を潰すのが目的です。
ここは武器庫であり、発射基地です。
これらのテロ拠点は病院や学校に設置してあり、イスラエルがここを攻撃しなければ無差別ロケット弾攻撃を防げません。
自衛権の発動要件を完全に備えていますが、ここを攻撃すれば、当然子供を巻き込んだ犠牲が出ます。
イスラエルも承知していて、爆撃前に警告文を散布して避難ルートを教え、ルーフノッカーと呼ばれる軽微な攻撃を屋上にすることで非戦闘員に避難する余裕を与えています。
下の写真のチラシは、イスラエル軍が爆撃する際に撒く避難ルートを記した警告文です。アラビア語で書かれています。
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オリーブ山通信

「イスラエル軍は、激しい空爆を行うにあたり、9日、SNSを通して、どのように避難するかどいう情報を、アラビア語で提供していた。
アラビア語報道官は、「イスラエルはハマスの攻撃を受けて、みなさんが生活している地域への攻撃を余儀なくされている。安全のために、そこを離れてください。」と呼びかけ、避難ルートを示していた」
ガザ空爆続く:ガザ市民にIDFが空爆を警告・避難路示唆も 2023.10.10 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

しかしハマスが避難を許さない場合もあり子供が犠牲になると、「イスラエルは罪のない子供をこんなに殺した!大量虐殺者だ!」と宣伝します。
そして、西側のとくに日本のメディアはここだけを報じてイスラエルは残虐な悪玉という印象だけを報じます。
子供たちを人間の楯にしているハマスは免罪され、悪逆なイスラエルとたたかうパレスティナ戦士たちというポジションです。
今回も、コンサート会場の大虐殺にはふれず、ガザ空爆のみを中心に報じているメディアが大多数です。
ハマスはテロ組織ではなく「武装勢力」、民間人を対象にしたテロ攻撃は「武力衝突」と表現するというバイアスのかかりっぷりです。

ところで、緒戦においてイスラエルはかつてない敗北を味わいました。
イスラエルにとって、建国初期を除いて国内を戦場としたのは初めての経験でした。
イスラエルは名にし負うモサドという凄腕の情報機関を持っているはずですが、今回エジプトからの「ガザの動きに注意されたし」という警告を無視して、このような大規模攻撃を許してしまいました。
信じられないような大失態です。おそらくこの一件が終わった後、査問の対象となるでしょう。

またイスラエルは、パレスティナ自治区とイスラエル領の間にスマートウォールと呼ぶ監視カメラとセンサーによる複合的な防御システムを敷いていました。
これに対しても過信があったようです。

テロリストたちは、下動画にあるようにドローンを用いて空から監視塔を破壊し、ブルドーザーを使ってフェンスを突き破って侵入しました。

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ハマスのビデオは、グループが国境を突破して殺人的な侵略を開始した方法を示しているようです|タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)


「イスラエルがガザを囲って設置した分離壁は、場所によってはコンクリートの壁、場所によっては金網のフェンスだ。その一帯をイスラエル軍は定期的に警備しているし、侵入を防ぐためのカメラやセンサーが多数配置され、警備の網を作っている。
それでも数時間のうちに、この分離壁は何度も何度も突破された」
(BBC前掲)

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【解説】 イスラエルへの急襲、不可能と思われたが……ハマスはどうやって - BBCニュース

テロリストたちの一部はフェンスの穴からバイク、機関銃を載せたピックアップトラックやパラグライダーに乗り、イスラエル領に電撃的に侵入しました。
海側からの攻撃もあったようです。

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それと同時に、テロリストはイスラエルの予想をはるかに超えたロケット弾攻撃をしかけて600カ所以上に被害を与えました。
数千発のロケット弾の飽和攻撃をされては、さしものアイアンドームも落としきれなかったようで、多くの着弾を許しました。
これだけ大量のロケット弾は、イランが供与したものだと思われます。
次回に譲りますが、今回のハマスの大規模テロ攻撃の影の司令塔は明らかにイラン以外ありえません。

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同上

侵入した大量のテロリストたちは、無差別に市民に発砲し虐殺を重ねました。
彼らが通過した後には点々と市民の射殺された死体が投げ出されていました。

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同上

テロリストはコンサート会場も襲撃し、無差別に観客に銃を乱射して外国人も含む最低で260人以上が殺害されました。

「(CNN) イスラエル南部ネゲブ砂漠で開かれ、イスラム組織ハマスの戦闘員による襲撃を受けた音楽フェスティバルの近くにある防空壕(ごう)で、内部に弾痕や空の薬きょうが散乱していることがわかった。武器の専門家はこうした状況から、ハマスの戦闘員が内部にいた民間人に手りゅう弾を投げ込み、発砲したことが示されると指摘した。
CNNは9日、現地を取材し、床に複数の空の薬きょうがあり、壁の高い位置に弾痕があるのを確認した。前述の専門家は、弾痕の位置やその高さやパターン、サイズなどから、これらが銃撃により生じたものと断定した」
(CNN10月10日)
音楽フェスの襲撃者、防空壕に手りゅう弾投げ込んだか イスラエル南部 - CNN.co.jp

その一部は拉致されて連れ去られています。
拉致された市民は100人以上だと見られています。
いくつものキブツが襲撃され、子供を含むたくさんの住民が虐殺されました。

「イスラエル軍が最も被害の大きかった集落をメディアに公開しました。犠牲者の正確な数は分かっていませんが、およそ200人が殺害され、うち40人は子どもだったということです」
(テレ朝10月11日)

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イスラエルの集落で虐殺か 子ども40人含む約200人が犠牲 現場公開(テレ朝news) - goo ニュース

これを「武装組織の軍事行動」のように言う者もいますが、コンサート会場で銃を乱射する軍事行動はありえません。
凶悪無比なテロ、あるいは大虐殺以外何者でもありません。
この一方的加害関係をあいまいにして、「両者の衝突」のように描くメディアには強い違和感があります。

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CNN

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BBC

「(CNN) ロケット弾の砲撃が始まったのは午前6時半ごろだった。イスラエルの音楽フェスティバル会場にいた数百人は、ガザ戦闘員の銃撃を受けて逃げ惑った。
この会場は、7日午前、パレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスによる一斉攻撃を受けた場所の一つだった。
イスラエル救助隊によると、フェスティバル会場では少なくとも260人の遺体が見つかった。観客の一部は人質に取られ、ガザから投稿された映像がSNSで拡散されている」
(CNN10月8日)
音楽フェス会場に260人の遺体、ガザで人質にされた観客の映像拡散 - CNN.co.jp

今回の襲撃は、もはや単純なテロではなく軍事作戦であって、かつてないほど多岐にわたり統制の取れた、練り上げられた作戦があったと見られます。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は8日、イスラエル国民に対して、「長く厳しい戦争」に突入するのだと表明しましたが、亡命中のハマス指導者イスマイル・ハニヤ氏は同日、ハマスが「偉大な勝利を目前」にしていると述べています。

イスラエル国防相は、ガザ地区を包囲し食糧、水などの供給を止めると宣言しました。


「イスラエルのヨアヴ・ガラント国防相は9日、ガザ地区を「完全に包囲」すると述べた。
また、「電気、食料、水、ガスのすべてを止める」、「私たちは動物と戦っており、それに見合った行動を取っている」と付け加えた。
ハマスの軍事部門として知られるアル・カッサム旅団は、イスラエルが事前警告なしにパレスチナの民間人に対する空爆を実施した場合、イスラエル民間人の人質を殺害すると脅迫した」
(BBC10月10日)

イスラエル、反撃は「始まったばかり」 ガザ地区「完全包囲」で人道危機の恐れ  - BBCニュース

イスラエルは基本法(憲法)に基づき、50年前の第4次中東戦争(ヨムキプール戦争)以来の戦時体制に突入し、30万人の予備役動員を完了したと発表しました。

このテロの背景については次回にまわします。

2023年10月10日 (火)

ムネオはuseful idiotです

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イスラエルが大変なことになっているようですが、こちらを先に書いてしまったもので、明日に。

さて「ムネオ」こと、鈴木宗男氏が維新を除名されるようです。
当然すぎるほど当然で、維新の党内処分に止まらず、国会議員として懲罰委員会に掛けて辞職勧告するべきです。
ところがこの人、実は懲罰委員長で、しかも参院には届け出だしてたそうです(笑)。
党のほうの事務局は閉まっていたのを知って出し、国会のほうはぬかりなく提出してあるとは、さすが古狸、やることがセコイ。
まぁこの人、仮に除名になっても無所属で当選できる自信がありますしね。

日本維新の会鈴木宗男参院議員は8日、自身のロシア訪問に関する党の除名処分検討を受け、札幌市内で記者会見した。現地滞在中のメディア取材への発言が問題視されていることについて「政治家の言葉尻や認識でとやかく言い始めたら民主主義ではなくなる」と反発した。
鈴木氏は党に事前届を出さずにモスクワを訪問したことについて、党事務局が閉まっていて届け出ができなかったためと釈明。その上で「(手続きに)瑕疵(かし)があるのは事実。いかなる処分も受ける」と述べた」
(時事10月8日)
維新・鈴木氏、発言問題視に反発=「民主主義でなくなる」|ニフティニュース (nifty.com)

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【ノーカット版】「ロシアの勝利 ウクライナに屈することはない」鈴木宗男議員 国営メディアにメッセージ ― 2分55秒動画(北海道ニュースUHB) - Yahoo!ニュース

ロシア官営のスプートニクの動画を見ると、ムネオはこの戦争をロシア用語の「特別軍事作戦」と呼び、「ロシアの勝利、ロシアがウクライナに対して屈することはない。ここは私は何の懸念もなく、100%確信を持って、ロシアの未来、ロシアの明日を信じているし、理解している」と言っています。
当人は国力の差がどうのと言っていますが、「ロシアはウクライナに屈しない」という表現をしていますから、言い訳になりません。
なにが「ロシアはウクライナに屈しない」だつうの。てめーのほうから侵略しておいて「屈しない」はないもんです。
ほんとうにムネオがロシアの友人ならば、2014年2月までの国境線に戻ることだけが和平ですよ、と忠告していらっしゃい。

とまれ言葉遣いから認識までまんまロシアの主張そのもので、これではパイプ役もナニもあったもんじゃありません。
パイプはパイプでも、ロシアから日本への伝声管です。

当人はこれは届け出が遅れた瑣末な行為にすぎず、政治家が認識を問われるのは言論の自由に反すると言いたいようですが、ちゃうねん。
今あんたが批判されているのは届け出うんぬんに対してではなく、ロシアに出かけてゴマをすりまくってくるという自由主義国の政治家にあるまじき裏切り行為に対してです。
国内の媒体にしゃべったり、身内の周回で言っているぶんには、批判は受けても辞めろとまでは言われませんでした。
渡航禁止を破ってまで出かけて行って、ロシア様万歳を叫んでくれば、こう言われても仕方ありません。

ところで、田母神俊雄氏がこんな援護射撃をしています。

「鈴木宗男議員が独断でロシアを訪問したとして日本維新の会で処分が検討されるとか。しかし今回の露ウ戦争で日本は露を完全に敵にしてしまい中露の挟み撃ちにされる状況になってきた。露とのチャンネルも必要だ。その意味で日本政府も鈴木議員をうまく活用した方がよい。日本は中露とは地理的に近い。米国と全く同じ露対応でいいわけがない。米とも露ともそこそこ上手くやれる方策を考えるべきだ」
Xユーザーの田母神俊雄

「日本は中露と地理的に近いから、米と露とそこそこにうまくやれ」というのが、この憂国センセイのご意見だそうで、ムネオはロシアとうまくやってくれた、ということのようです。
この人の薄っぺらな愛国心がバレます。なんですか、「そこそこ上手にやれ」というのは。
ロシアに対してはウクライナに侵攻したお気持ちはよーくわかります、と言い、米国に向いては、けしからんG7で結束しましょう、という二枚舌外交をしろとでも。ご冗談を。
そんなことをしたら米国は日本を信頼に足る同盟国とは金輪際思わなくなるでしょうから、持論のニュークリアシェアリングなんぞ吹き飛びます。

そもそもウクライナ正面で手一杯の今のロシアに、中国と共同して日本と戦端を切る軍事的余裕があるかどうか、元軍事官僚ならわかりそうなものです。
中国ですらウクライナ戦争の戦況を見て大いに日和見しているのであって、濡れ手に粟の儲け話と乗り気なのは正恩の国だけです。
なりふりかまわぬ領土拡大をするロシアと「そこそこうまくやれ」と言う元幕僚長とは、いったい何者だったのでしょうか。
ほんとうにウクライナ侵略は、日本社会のバカ発見器になりますね。

さてロシアという国は、旧KGB(現FSB)のチェキストを統治体制の核にしてできあがった国家です。
よくプーチン体制の支柱はシロヴィキとオルガルヒだと言われていますが、シロヴィキはFSBと軍を指します。
オルガルヒはすでに権力から退けられており、いまやシロヴイキはFSBによって支配されています。

「シロヴィキの中核は、プーチン自身が長官を務めた旧KGBの後身であるロシア連邦保安庁(FSB:アルファ/ヴィンペルなどの特殊部隊と国境警備隊を傘下に収める)である。これに内務省民警・ミリーツィヤと国内軍国防省連邦軍)などの武力省庁が加わる構図である。シロヴィキのロシアの政治エリートに占める割合は年々増加しつつあると考えられている」
シロヴィキ - Wikipedia

旧ソ連では、チェーカー(国家保安委員会・KGB・GPUの前身)の勤務者をチェキストと呼びましたが、この言葉は今もロシアで生きています。
KGBという諜報・防諜組織が、ロシアという統治体制の隅々まで浸透しており、外に向けては西側の政界、官僚組織にまで浸透し、多くのエージェントを獲得しています。
ですから、ソ連崩壊の混沌から再生してきたのも、またチェキスト国家となったのも必然であり、その独裁者がプーチンKGB中佐だったというのも偶然ではありません。

このウライナ侵略を考えて立案したのもFSBでした。
FSBは本来国内諜報機関であるはずなのに、対外軍情報機関であるロシア対外諜報庁(SVR)を押し退けてイニシャチブを握ったのです。
諜報国家ロシア』の著者・保坂三四郎氏(元在ウクライナ日本大使館勤務)はこう述べています。

「ソ連やロシアでは、軍と情報機関は明確に異なる存在です。体制が最も信用を置くのは、軍や警察ではなく、伝統的に情報機関なのです。
それは最近のロシア・ウクライナ戦争でも確認できます。
例えば、ウクライナ全面侵攻の失敗の責任を取らされ、ロシア軍の将軍が10名近く解任されました。ところが、電撃作戦のシナリオを主導したと言われるFSBの幹部が解任されたという情報はありません。そして、今年の5月9日に赤の広場で行われた「戦勝記念日」の軍事パレードで、プーチンの両横に座ったのは、第二次大戦のソ連赤軍の退役軍人ではなく、ウクライナ独立運動やチェコスロバキアの民主化運動の弾圧に活躍したチェキスト(情報機関要員)だったことも象徴的です」
『諜報国家ロシア』/保坂三四郎インタビュー 前編|web中公新書 (chuko.co.jp)

彼らKGB(FSB)は、自由主義国のそれと根本的に違った存在です。
自由主義国のインテリジェンス機関は指導者の判断の助けになるような情報を与えることが任務ですが、ロシアのそれは国家の意思決定に介入し、支配する機関になっています。

「全体主義国家の情報機関は、同時に、体制を守る「盾と剣」としての「保安機関」でもあり、国内の防諜部門が肥大化して対外諜報を侵食し、いつしか体制や指導者の望む情報のみを報告するようになります」
(保坂前掲)

プーチンが自分の好む情報ばかりを聞き、崇拝者のみを身辺に置くようになったのはこのためです。
つまり独裁者を操る機関が、このチェキストなのです。
チェーカー - Wikipedia

チェキストは大量に自由主義国にバラ撒かれており、ロシア政治やロシア語を勉強した研究者や学生、ジャーナリスト、政治家を影響下に置いています。
彼らは一様にこう言うでしょう。

「「欧米メディアの描くロシアは一面的だ」、「ロシアを悪者扱いしてはいけない」、「ロシアには欧米と異なるロジックがあり、我々はそれを理解しなくてはいけない」、という思考になっているのを見受け、強い危機感を覚えます。実はこれは日本だけでなく、欧米にも共通する傾向です」
(保坂前掲)

そして彼らは善意で、ロシアの誤解を解こう、彼らとのパイプにならねば大変なことになってしまう、そしてそう考えて、ロシアのプロパガンダに加担することになります。

そのひとつが、ワタバウティズムです。
ワタバウティズムとは、「自身の言動を批判された者が直接疑問に答えるのを避けて話題をそらす論法のこと」ですが、自由主義国のロシアに対する正当な批判を逸らす発言を繰り返すようになります。
ほら、よく聞くでしょう。
ウクライナがミンスク合意を守らないから懲罰を受けたんだとか、ネオナチだからロシア系住民をいじめたのだとか、ブチャの虐殺はフェークだ、子供の誘拐は人道措置だ、とか。
全部ナラティブですが、ずいぶんと流布されましたっけね。
Whataboutism - Wikiwand

ところで彼らチェキストの協力者は、日本の各界に広く浸透しています。
 ムネオはロシアのエージェントですが、カネをもらう職業的エージェントではなく、useful idiot(役に立つ馬鹿)です。

チェキストがムネオ氏に期待する役割は、前述したように「ロシアは悪くない」「ウクライナがネオナチなので、ロシアは自国民を守るためいたしかたなく特殊軍事作戦をしたのだ」ということを言い散らすことです。
ムネオはなにかといえば、自分ほど対ロシア外交に精通した政治家はおらず、一貫してオレはブレない政治家だ、と豪語していますが、まったくそのとおり一貫してロシアの利益代弁者でした。

ムネオと佐藤優氏は、プーチンの意図を読み間違えて「2島返還論」を喧伝して、北方領土返還運動を攪乱して、「2島先行返還」が現実の道であるかのように言うことで、安倍氏すらミスリードしました。
プーチンにはまったく返還の意志などこれっぽっちもないことは訪日で明らかになりましたが、
この安倍氏の判断が誤っていたのはご承知のとおりです。
プーチンはいかなる妥協も拒みました。

「しかし、2004~05年を境にその発言内容は一変、以降は「南クリルが第二次大戦の結果正式にロシア領になったことは、国際法で認められており、これについて一切議論するつもりはない」、あるいは「1956年宣言には、島を引き渡すとしても、どこの国の主権が及ぶかは書かれていない」、「日本との間に領土問題は存在しない」などという、日本としては理解しがたいレトリックを繰り返し、一貫して強硬な姿勢を示してきた。
特にここ数年のプーチン大統領の発言は、どれも2000年代前半の時分とはかけ離れたものだ。それにもかかわらず、安倍政権は当時のプーチン氏の発言に引きずられてきた可能性が高い。シンガポール合意で、日本が1956年宣言まで下りる決断をしたのも、まさにプーチン氏が当時、1956年宣言の履行はロシアの義務と認めたという一点に、望みをつないだ結果だったと考えられる」
(吉岡 明子 2021年1月13日キャノングローバル研究所)

思えばこのプーチンを日本に呼んで開かれた日露首脳会談時は、すでにロシアのクリミア進攻が起きていたのです。
この時点で安倍は二つの交渉の失敗をしています。
ひとつめの決定的失敗は、2014年3月のクリミア侵略を受けても、ロシア融和策を変更せず、北方領土・平和条約交渉に邁進してしまったことです。
そして2016年5月には、オバマの反対を押し切って安倍自身が訪露し、ソチを再度訪問し、ロシアに「新アプローチ」という経済支援プログラムを伝えます。
そして続く同年12月には、プーチンを故郷山口に招くところまで前のめりになりますが、ご承知のようにプーチンはゼロ回答でした。
当時、私は反省をこめていくつかの記事を書いておりますので、よろしければご覧ください。

崩れたロシア幻想・反省を込めて その1: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
崩れたロシア幻想・反省を込めて その2 揺らぐプーチン帝国: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
崩れたロシア幻想その3 ロシアは対中牽制になりえない: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

もちろんムネオには反省の色もなく、ロシアンフレンド街道まっしぐらでした。
この男が対露外交に与えた害悪は巨大です。
保坂氏はこうツイートしています。

「この20年間、鈴木宗男氏&貴子氏が国会に提出した質問主意書は①(外務省への個人的復讐というよりも)「反ロシア的」対露政策を進める特定官僚を標的にコンプロマット(中傷情報)を暴露・更迭、機能麻痺させる。
②2014年以降ウクライナ政府に「ネオナチ」のレッテルを貼り支援を妨害する」
XユーザーのSanshiro Hosaka

かつて、無罪なのにムショ暮らしをしたことの怨念が、ただのuseful idiot から本格的エージェントに飛躍させたのかもしれません。
とまれ、維新うんぬんではなく、政界に置いてはならないロシアンチェキストのひもつきの人物なことは確かです。


 

2023年10月 9日 (月)

プーチン、またまた核の脅迫を始める

S23-055
プーチンは核をもてあそぶのを止めないようです。
まったく困った人ですが、また核戦争の敷居を下げました。
今度は核弾頭積んで、地球を周回し、いかなる場所でも即座に核攻撃できるという原子力推進の巡航ミサイルだそうです。


「ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は5日、開発中の原子力推進式巡航ミサイル「ブレヴェスニク」の「最終試験が成功した」と述べた。ブレヴェスニクをめぐっては、米紙ニューヨーク・タイムズが試験が近いと報じていた。ロシアの大統領報道官はこれを否定していた。
2018年に最初に開発が発表されたこのミサイルは、射程距離が無限の可能性があると評価されている」
(BBC 2023年10月6日)
プーチン氏、原子力推進ミサイルの「最終試験に成功」 - BBCニュース

20231008-024534

JSFさん X (twitter.com)

「プーチン氏はこの日、黒海のリゾート地ソチで開かれた会議で、「数年前に私が発表し、話をしてきた新型戦略兵器の開発は今や事実上終了した」と述べた。会議は国営テレビで中継された。
プーチン氏は、「ブレヴェスニクの最終試験が成功した。世界中を射程とする原子力推進式巡航ミサイルだ」と話した。
このミサイルは、北大西洋条約機構(NATO)が「スカイフォール」のコードネームで呼んできたもの。原子炉を動力源とし、固体燃料ロケットブースターが空中に発射された後に作動するとされている」
(BBC2023年6月23日)
【解説】 ロシアは本当にウクライナで核兵器を使用するのか? 国内議論から見えること - BBCニュース

この原子力推進の巡航ミサイルという奇想天外なモノは、冷戦期に真剣に開発された経緯があります。
冷戦期には、原子力推進の戦略爆撃機などさえ作られましたが、考えてみれば子供でも分かるように、撃墜されたら即原発事故となるわけですから、とてもじゃないが扱いが危険すぎて、飛行させられないという常識のラインで開発は止まっていました。

ただし、原子力を用いてほぼ無限の滞空時間を稼げる魅力は残り続け、西側が開発に手を引いた後にもロシアは開発を続けていたようです。
それがブレヴェスニクでしたが、2019年8月にロシア海軍の演習場で爆発事故を起こして死傷者をだしています。
このときは、近辺の放射線量が急上昇し、核パニックが起きたようです。

しかし懲りもせずにというか、執念深く完成に持ち込んだのですな。
そしてこのプレヴェスニクの完成とほぼ同時期、ロシア政治誌「プロフィリ」はロシア外交・防衛政策の著名な専門家であるセルゲイ・カラガノフによる寄稿を掲載しました。

このカラガノフは外交強硬派で、外交防衛政策会議の議長を務めており、プーチンに強い影響力を持った人物です。

「カラガノフ氏はこう主張する。「西側の意志を破る」には、ロシアは「核兵器使用の敷居を下げ、核抑止力を再び説得力のある議論にしなければならないだろう」。
「世界規模の熱核兵器戦争への転落を防ぐため、我々が現在および過去の侵略行為のすべてに報復する先制攻撃の用意があることを、敵は知るべきだ」
「だが、もし向こうが引き下がらなかったら? この場合、正気を失った人々の理性を取り戻すためには、多くの国の多くの標的を攻撃しなければならないだろう」
我々は昨年以来、ロシア政府のこうした核による威嚇に慣れてきている」
(BBC前掲)

プーチンは通常兵器によるウクライナ戦争ががしこればしこるほど、この理由は西側の支援が原因だとして、部分的動員令を発する時には「ロシアに対する欧米諸国の敵対政策がある。必要となれば大量破壊兵器(核爆弾)の投入も排除できない」と強調し、「これはハッタリではないからな」とまで付け加えていました。
それから1年以上が経過し、今度は、この原子力推進核巡航ミサイルとCTBT条約(包括的核実験禁止条約 )からの離脱と核実験の再開を口にし始めました。
包括的核実験禁止条約 - Wikipedia
CTBT条約そのものは、核兵器保有国で批准していない国があるために発効していませんが、ロシアは批准しています。
「[モスクワ 6日 ロイター] - ロシアのウォロジン下院議長は6日、包括的核実験禁止条約(CTBT)批准撤回の必要性を速やかに検討すると表明した。プーチン大統領が撤回可能との認識を示したことを受けた。
プーチン氏は5日、国内で核実験再開を求める声があるとして30年余りぶりに核実験を実施する可能性を否定しなかった。
ウォロジン氏は、世界の状況が変わり、米欧がロシアに戦争を仕掛けているとの認識を示した上で「次の議会でCTBT批准撤回問題を議論することになるだろう」と述べた」
(ロイター2023年10月6日)
ロシア下院、核実験禁止条約の批准撤回を速やかに検討=議長 | Reuters
ロシア下院がCTBT条約の批准を離脱する決議を出すのは確実ですから、これで核実験再開は決定的となりました。
そう遠くない時期に、ロシアは北極圏のノヴァヤ・ゼムリャ試験場で核実験が行うことでしょう。

 

 
 

 
 
 

2023年10月 8日 (日)

日曜写真館 いつ見てもコスモスの張り切つてをり

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この頃の空コスモスの色似合ふ 後藤比奈夫

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このあたりコスモスに花蓼まじり 清崎敏郎

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ひらひらとコスモスひらひらと人の嘘 楠本憲吉

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さびしさに昼のまろ寝や秋桜 村山故郷

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コスモスに日の匂ひして人近づく 細見綾子

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コスモスとしか言ひやうのなき色も 後藤比奈夫

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コスモスに風ある日かな咲き殖ゆる 杉田久女

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コスモスのみだるるひかり空よりす 大野林火

 

 

 

 

2023年10月 7日 (土)

ウクライナ軍は前進しているが、まだまだ先は遠い

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概括的にウクライナ戦争の現状を押さえておきましょう。
ロシアに対する反転攻勢をじわじわと進めるウクライナ軍は、南部ザポリッジャ州の前線でロシア軍の防衛線を突破し、その突破口を少しずつ拡大して前進しています。
BBCと西村金一氏が、よいまとめ記事を出してくれています。
BBC 10月3日
【解説】 ウクライナ反転攻勢 ロシア防衛線の突破口を拡大 - BBCニュース
南部激戦地でもう一息のウクライナ軍、突破できればロシア軍瓦解へ ウクライナ戦争:地上戦の現状と今後の展開予測(1/5) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)


●ウクライナ各方面の9月末までの全体状況
・ザポリッジャ州の前線でウクライナ軍は初めて装甲車を、ロシア側の陣地へと進めた。
・東部バフムート周辺では、ロシア軍が精鋭部隊をザポリッジャ州へ移動させた後、ウクライナ軍が少し前進した。
・ロシア軍はウクライナ南西部で、ドナウ川の港へのドローン攻撃を継続。ウクライナの穀物輸出を妨害し続けている。

この1年間の占領地の推移はこのようになっています。
赤色がロシア占領地域、青色がウクライナ軍です。
ウクライナ軍は、侵攻直後の首都キーウへの直接攻撃をはね返し、北東部スーミからハルキウまでを去年冬に奪還し、東部の要衝バフムートを奪い返しました。
また西部ではヘルソンを奪い返し、現在ザポリージャに向けて進撃しています。
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BBC

両軍が激突している主戦場は、ザポリージャ州西部です。
両軍はここに主戦力を集中させて戦っているので、この勝敗が天王山となります。
元陸自幹部学校戦略教官室副室長の西村金一氏はこのように述べています。
(10月3日『南部激戦地でもう一息のウクライナ軍、突破できればロシア軍瓦解へ』)
 JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

「ウクライナ南部ザポリージャ州の西部で、ウクライナ地上軍(陸軍に海軍歩兵が加わっているので地上軍の名称を使用)は、ロボティネからトクマクまでの目標線(オリヒウ攻撃軸)に向けて突破口を形成し、それを拡大して、南下しつつある。
一方、ロシア地上軍は南下するウクライナ軍の南下を止めようと必死で、両軍は死闘を繰り広げている」
(西村前掲)

ウクライナ軍は、8月末にザポリッジャ南東56キロのちいさな村ロボティネ付近で、ロシア軍の防衛戦を突破し、その突破口を押し広げています。

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ここにはロシア軍が陣地前面1平方メートルに5発といわれる大量の地雷を敷設し、「竜の歯」と称する対戦車用障壁や対戦車壕を設置して待ち構えていました。
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西村氏による
またロシアはなけなしの精鋭である空挺軍も投入したと伝えられています。
衛星写真でみると、十重二十重の防衛陣地の様子がわかります。
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BBC

「ウクライナ軍は6月にこの地雷原を一気に突破しようとしたが、それはあっという間に失敗に終わった。西側諸国が供与した最新兵器は大破し、炎上した。ウクライナの歩兵部隊も、悲惨な数の死傷者を出して後退する羽目になった。
ウクライナが軍はその後、ロシアの地雷を個々に撤去する作戦に変更した。作業のほとんどは夜間で、しばしば砲火の下で行われる。ウクライナ軍の前進が遅いのは、そのためだ。
ウクライナの戦車や装甲車が、ロシアの地雷やドローン、対戦車ミサイルによって破壊されることもある。私たちが検証した動画では、イギリスが提供したチャレンジャー2戦車がロボティネ近くで破壊されていた」
(BBC2023年9月18日)
ウクライナ軍、ロシア軍の「竜の歯」を突破したのか? - BBCニュース

通常、このような厳重に守られた防御陣地を突破する場合、西側の軍隊はまず徹底した空爆と砲撃によって地ならしします。
時には1週間も続く空爆と砲撃によって地雷源は耕され、対戦車壕や竜の歯はほぼ破壊され、後方の砲兵陣地も消滅しているはずです。
それを見極めてから機甲部隊と随伴する歩兵戦闘車が進撃します。
しかしそのような「贅沢」はウクライナ軍には許されませんでした。
強力な防空システムを破壊できる航空機を持たず、それが可能なF-16の供与が致命的に遅れたからです。
そのためにウクライナ軍はエアカバーなしでの捨て身の前進に頼るしかなく、多大な損害をだしたようです。
これが反攻初期に、ウクライナ軍はなにをしているんだと批判された原因です。

この苦戦する状況を見て、もうウクライナは負けたとすら言う者もでました。
あのロシアンパペットのムネオはこう言っています。
「「私はロシアが勝つと思っている。皆さん、ウクライナが勝つと思うか? 政治経験のない人たちはどうしても印象論や感情論で判断する」と持論を展開。「政治家としての信念を持って、ぶれずに発言・行動していけば分かってくれる」とも訴えた」
(産経10月6日)
維新、鈴木宗男氏「除名」を検討 ロシア「勝利」期待発言が問題に(産経新聞) - Yahoo!ニュース 歳計。
ムネオはロシアでもさんざんプロパガンダに利用されて、アチラのメディアでも「勝利を確信している」と言っていたそうです。
それを受けてか、プーチンは日本と話しあいしたいといっているそうで、G7の結束を分断したい意図は見え見えです。
維新はさっさと除名するのですね。こんな人間がいるようでは、野党第1党になれませんよ。
また、馬淵睦男氏に至っては、「ウクライナ軍は全滅している。今いるのは米英の特殊部隊だ」そうです(爆笑)。
さてウクライナ軍は、この緒戦の苦戦を教訓にして、まず夜間に地雷源の除去を進めて進撃路をつくってから、機甲部隊を進めたようです。
これにはチャレンジャーなどの西側兵器も投入されました。
ここでもウクライナ軍は多くの犠牲を払いながら、防衛戦に食い下がりました。

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BBC

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BBC

西村氏は、ロシア軍はここを突破されれば、東からの補給路を断たれる脅威に直面しているとして、このように述べています。

「この地の戦いでは、ウクライナ軍の後方連絡線は後方にあるが、ロシア軍のそれは南にアゾフ海があるために主に東にある。
そのため、ザポリージャ州防御のロシア軍は、この地で敗北すれば、東からの後方連絡線を遮断されるという脅威を受けている。
ザポリージャ州西部のオリヒウ攻撃軸では、両軍の戦闘力の先端がぶつかり合っているのだ。
ロシア軍が占拠する地域は、南北に幅約110キロあるが、防御陣地はその北部の約30キロに集中している。
その約30キロの間に、ロシア軍は前進陣地、第1・第2・第3の防御陣地を、地域によっては第2と第3の間にも陣地線を構築した。
さらに、市街地を利用した防御も実施している」
(西村前掲)

図1:オリヒウ攻撃軸のウクライナ軍の進出範囲とロシア軍防御線とそれまでの距離


西村氏による
青色部分がウクライナ軍の奪回範囲、橙色部分がロシア軍の占拠範囲。

ISWによると、2段目まで防衛戦を突破したものの、まだすべてを突破したわけではないようです。


「BBCのフランク・ガードナー安全保障担当編集委員は、この作戦がウクライナの反転攻勢で最も戦略的に重要な部分だと指摘。もし成功すれば、ロシア国内のロストフ・ナ・ドヌからロシア支配下のクリミアまで続く、ロシア軍の補給線を切断することになるという。
これが実現すれば、2014年に併合して以来クリミアに駐留させている大部隊を、ロシアは維持できなくなるとガードナー編集委員は言う。
ただし、ウクライナ軍の前進はこれまでのところロボティネ村周辺に限られているため、部隊がアゾフ海まで到達しロシアの補給線を断てるようになるまでには、まだまだ先は長い」
(BBC前掲)

今後はどのように展開するでしょうか。
西村氏はこう予測します。

「今後の攻撃方向は概ね3つに集約される。
オリヒウ攻撃軸の東側のベルボベから南への攻撃方向(A-1)、ロボティネからトクマクの東を通過する攻撃方向(A-2)、ロボティネからトクマクへ進む攻撃方向(A-3)がある」
(西村前掲)

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西村氏による

そして突破した後は、目的地であるアゾフ海沿岸のペルジャンスクに向かって進撃します。
これが成功すれば、ロシア軍は西と東に真っ二つになってしまいます。

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「ウクライナ軍は、第2と第3防御線を突破した後は、南下してアゾフ海に面する都市、メリトポリやベルジャンスクまでを奪還して、南部2州およびクリミア半島とロシア占拠地との間を分断する作戦だ。(略)
ウクライナ軍にベルジャンスクが奪回されれば、ロシア軍は東西に分断されてしまい、ザポリージャ州およびヘルソン州の2州に配備されたロシア軍は孤立し、弾薬等の補給が得られなくなる」

(西村前掲)

そして、同時に進行するであろうクリミア大橋が供与されたATACMSで破壊されれば補給が完全に途絶してしまうばかりでなく、西に逃げたロシア軍部隊はクリミア半島に逃げ込むしかなくなるでしょう。

このようにひまわりの兵士たちは苦闘しつつ、着実に前進しています。
一喜一憂しないで、静かに、しかし熱く注視していきましょう。

 

 

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「俳句は感情をまひさせる手段」 戦場の現実詠む防人、ウクライナ軍大尉の三行詩:中日新聞Web (chunichi.co.jp)う
ウクライナに平和と独立を

 

2023年10月 6日 (金)

辺野古、国がいつものようにいつもの如く代執行

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もういまや予定調和のようになっていますが、あからさまな沖縄県のサボタージュに対して、国が代執行するようです。
ともかく最高裁判決さえ守らないのですから、コワイものなしです。

まずはデニー知事。
下の写真を見ると、ガクっと老けましたね。
当人としては、ほんとうは新外交イニシャチブ(ND)を使ってスマートにやりたかったんでしょうが、例の 万国津梁(ばんこくしんりょう)会議」談合事件でコケて、結局は泥臭い訴訟合戦の連発になってしまいました

もちろんこんなことやっていてもいかなる解決もありえないことは、当人が一番よくご存じのはずです。
デニー氏は「知事」という黄金の檻に幽閉されてしまったのですな。
キラキラしているが、出られない。
いやがらせと訴訟しかないので、仕方なくやっている感ありありです。
万国津梁会議のメンバーでバレたデニー知事の「対案」の中身: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

結局は、迫力のないオナガ、魂が抜けたオナガ、悲壮感がないオナガ、腹芸ができないオナガ、自民党中枢とパイプのないオナガ、出涸らしのオナガ、となってしまい、いまや共産党のパペットに成り下がりました。
要するに、政治家としても政治屋としても能力不足な人だったんでしょうね。

「沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事を巡り、斉藤国土交通相が防衛省の設計変更申請を4日までに承認するよう同県の玉城デニー知事に指示していた問題で、玉城氏は同日、「期限までに承認の判断は困難」として、指示に応じない方針を固めた。政府は5日にも、知事に代わって国交相が承認する「代執行」の手続きを進める方針だ」
(読売10月4日)
辺野古設計変更、玉城デニー知事が国交相指示に応じない方針…「期限までに承認の判断は困難」(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

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辺野古設計変更、玉城デニー知事が国交相指示に応じない方針…「期限までに承認の判断は困難」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

続いて国です。
ちょっと苦笑いしてしまうのは、代執行を提起しているのが国交省で、斉藤大臣は公明党です。
斉藤鉄夫氏は元公明党幹事長で、その時に島尻候補の応援演説で沖縄に行っています。
その2019年の総選挙応援を、琉新はこう書いています。

「友党公明党の支持母体である創価学会の動きも鈍かった。14日のラストサンデーには公明党の斉藤鉄夫幹事長が来県し、島尻氏と共に沖縄市の胡屋十字路などで街頭に立ったが、動員がなかったこともあり、聴衆は十数人にとどまった。自民関係者は「学会でも特に婦人部は辺野古移設容認の島尻氏に対するアレルギーは根強い。特に沖縄の婦人部は党が号令を掛けても応じない。実際、この選挙の学会の熱量は低かった」と恨み節を口にした」
(琉球新4月23日)
「辺野古反対の岩盤固かった…」 創価学会婦人部に根強い〝島尻氏アレルギー〟 琉球新報デジタル (ryukyushimpo.jp)

自民候補を推す「熱量が低い」ですか。そんななま易しいもんじゃないでしょう。
東京から党の幹事長が街頭演説に来るというのに、迎える地元がパラパラなんてありえません。
つまりは、地元創価学会がソッポを向いたということです。
沖縄の創価学会婦人部は全国一「平和闘争」に熱心で、反基地闘争で共産党と競うような組織勢力でした。
連立してなきゃ、その動員力で反基地集会の半数を埋めたのは彼女たちだったはずです。
こんな風土ですから、斉藤大臣が沖縄県の前に立ちふさがればふさがるほど、彼女たちは面従腹背になるのでしょうね。
ま、どーでもいいですが。

「沖縄県名護市辺野古の新基地建設に伴う軟弱地盤改良工事のための設計変更承認申請を巡り、斉藤鉄夫国土交通相は5日、地方自治法に基づき国が県知事の代わりに承認する「代執行」に向け、福岡高裁那覇支部へ代執行訴訟を提起した。玉城デニー知事に変更申請を承認するよう命じる判決を求める。15日以内に口頭弁論が開かれる見通し。新基地建設を巡り、再び法廷闘争となる」
(沖タイ10月5日)
【速報】国交相が代執行提訴 沖縄知事を相手に 辺野古の新基地建設を巡り(沖縄タイムス) - Yahoo!ニュース

さて、ふたたび「法廷闘争」といっても、最高裁判決は承認することを命じているのですからデニー知事が勝つ可能性はゼロです。
沖タイはこんな言い方をしています。

「国と地方が対等協力の関係にある中、国が地方自治体を相手に代執行訴訟を起こすのは2015年に当時の翁長雄志知事を相手に辺野古埋め立て承認の取り消しを取り消すよう求めた裁判に次いで2例目。その時は和解しており、判決が出れば初めてとなる。辺野古問題で異例の事態が繰り返されている」
(沖タイ前掲)

「国と地方が対等」というのは沖タイの幻想です。
国には国の所轄があり、地方自治体にもその所轄があるというだけのことです。
国と地方が紛争を起こしたので、仲裁機関では「対等」ですよ、と言っているだけのことです。
対等うんぬんではなく、立場が違うのです。
安全保障は国が専管事項ですし、県の所管は公有水面の環境アセスメントていどです。
それ以上のことは法律に書いてありません。
ところがこれを「オール沖縄」は最大限拡大して解釈しました。

「オール沖縄」の論理はこうです。

①沖縄に対する基地負担は大きすぎるから、軽減すべきだ。
②普天間基地は「世界一危険な基地」だから、撤去すべきだ。
③政府は普天間基地を移設しようとしているが、「新基地」だから断固反対だ。

①、②につてはいわば総論部分ですので、政府から地元自治体まで反対する者はいないはずですが、辺野古移設は「新基地」だから反対だそうです。 おいおい。
では、このまま宜野湾にいろということになりますが、それでいいのかといえば当然「固定化反対」ですから、じゃあ政府はどうすればよいのでしょう。 
答えを出しようがないことを、政府に要求しているのですから、だだの机上の空論です。 
無理筋を詰め寄るというのが、この人らの流儀です。

安全保障問題の決定権が自治体の首長にないことはわかりきったことですが、この人らは沖縄があの国の最前線にあることを100%利用しました。
おお、危ない。安全保障を弄ぶなよと思いますが、「オール沖縄」はひたすら米軍基地を撤去しろ、自衛隊出て行けと中国が喜ぶことしかしませんから、どうしようもありません。

こんな解決の方法がないことを百も承知で、政府を困らせるだけが目的の「闘争」をしていれば、沖縄県と政府の信頼関係は完全に崩壊しています。
オナガ時代はそれでも安倍氏の指示で、月に一回、当時官房長官だった菅氏が訪沖して一杯やりながら懇談するという記録に残らないサシの時間があったようです。
では今、松野官房長官が沖縄に月一来ますか。
行く必要もないし、それだけ本土政府の心は冷えきってしまったのです。
表面的には聞くふりをしても、もう聞いてません。少なくとも県からの声は。
翁長時代とデニー時代を加えると12年もこんなことをしていればとうぜんのことです。
むしろ沖縄県はこの仕舞い方を考えることです。

 

 

2023年10月 5日 (木)

米国の専守防衛派に堕ちた共和党トランプ派

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米下院議長の解任決議案が可決され、解任されました。
史上初めてだそうです。

「[ワシントン 3日 ロイター] - 米下院は3日、共和党保守強硬派議員が提出したマッカーシー議長(共和)の解任動議を216対210の賛成多数で可決した。下院議長の解任は史上初めて。
議会は政府機関閉鎖を土壇場で回避したばかりだが、共和党内の内紛でさらなる混乱に陥った。
解任動議は保守強硬派のマット・ゲーツ議員が提出。マッカーシー氏が歳出削減に十分に取り組んでいないと非難した。
下院は共和党が221対212で辛うじて多数派を握っており、この日の採決では民主党208議員に加え共和党8議員が解任を支持した。
マッカーシー氏は議長選に再度立候補しない考えを表明。「私は自分の信念のために闘った。これからも闘い続けることができると信じているが、他の形になるだろう」と記者団に述べた」
(ロイター2023年10月4日)
米下院でマッカーシー議長が解任、史上初 共和内紛で混乱さらに | ロイター (reuters.com)

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ロイター

どうかしています。
共和党の下院議長を降ろしたのは、これも共和党右派、ありていにいえばトランプ派です。
解任動議を出したのは、45人いるフリーダムコーカスです。

マッカーシー議長は政府機関の閉鎖を避けるため、与党・民主党にも配慮した「つなぎ予算案」を苦心惨憺してまとめましたが、その中に大幅な歳出削減が盛り込まれなかったことが気に食わなかったようです。
そもそも政府機関閉鎖を回避するための「つなぎ予算」自体が、この共和党右派のごり押しでウクライナ支援予算をカットする内容でした。

「アメリカで懸念されていた政府機関の閉鎖は、当面の「つなぎ予算案」が可決・成立し、ぎりぎりで回避されました。
アメリカでは10月からの新年度の予算が成立しておらず、政府機関が閉鎖される恐れが高まっていましたが9月30日、上下両院は10月1日から45日間の予算執行を可能にする「つなぎ予算案」を可決、バイデン大統領が署名し、成立しました。
ただ、共和党の保守強硬派の反対でウクライナ支援は盛り込まれず、バイデン大統領は声明で「支援の中断はいかなる状況下でもあってはならない」と、支援継続を求めました」
(TBS10月1日
米“つなぎ予算”にウクライナ支援盛り込まれず バイデン氏「いかなる状況下でもあってはならない」|ニフティニュース (nifty.com)

毎年恒例の予算がなくなって政府機関閉鎖危機に陥るという、米国にしかない奇習が問題です。
その都度、世界最強国家が公共サービスを停止し、経済成長を低下させ、国際社会を不安定化させる危機を繰り返すのですから呆れたもんです。
今回決まった「つなぎ予算」も45日間しか有効ではないので、また11月にはショートして、同じことの繰り返しになります。

そして少数派がゴネて、キャスティングボードをにぎるということの繰り返しです。


「この発端は、ジミー・カーター大統領時代の1980年、当時のベンジャミン・シヴィレッティ司法長官が、「1884年不足金禁止条項」に狭義の解釈を付け加えたことによる。
19世紀に制定されたこの予算法は、政府が議会の承認なしに契約を結ぶことを禁じている。制定から100年近くの間は、支出が予算を上回った場合でも、政府は必要な支出を続けられた。だが1980年以降、政府は予算がなければ支出できないという、より厳格な方針を取ることになった」
(BBC10月2日)
【解説】 政府閉鎖、なぜアメリカでだけ頻繁に起こるのか - BBCニュース

普通の国では、こんな馬鹿なことは起きません。
欧州や日本がとっている議会制民主主義では、行政府と立法府が同じ政党または連立政府によって運営されており、所属議員も党議拘束が存在するために一部のハネ上がりのために政府の予算案を議会が拒否することは起こりようがないのです。
仮にそんなことが起きたら、直ちに総選挙となりますが、米国の場合、政府と議会の争いがエンドレスで続くことになります。

こんな仕組みでは、少数のファーライトがキャスティングボートを握ってしまい瀬戸際戦略をとることが可能になります。
米国はこんな政府閉鎖劇を40年間やっているのですから、米国民主主義もなんだかなぁ、という感じです。
結局、土壇場で連邦議会の上下両院は同日、予算執行を11月中旬まで継続できるつなぎ予算案を超党派で可決し、バイデンの署名で成立したようですが、政府予算を政局に使うこと自体、お前らの国は民主主義をはき違えているのではないかと言いたくもなります。
とくに今回もごねまくって、とうとう自分たち共和党が選んだ下院議長を降ろすとは、醜態極まれりです。

上院(100議席定員)のほうは、民主党50議席(統一会派の無党派2議員を含む)、共和党49議席、無党派(前民主党)1議席と極めて拮抗しているが、50対50のタイとなった場合、形の上では上院議長でもあるハリス副大統領が1票を投じるため、政府案は承認されます。
ただし、民主党側にもファーレフトが大勢いますから、同じようなことが起きる可能性は残されています。

この共和党右派の言い分は、「ウクライナ支援なんぞいらない。国内予算にカネを出せ」ということのようです。
では、ウクライナ支援を止めて国内予算はナニに使うのといえば、要はメキシコとの国境の壁を作れということになります。
不法移民がどんどんとメキシコ国境から入って来て米国を混乱させているぞ、ウクライナなんぞより足元の不法移民を取り締まれ、という意見です。

この共和党右派の考え方は、実は私たち日本人が長年つきあってきた防衛ドクトリンによく似ています。
そう、あのサヨクリベラルがお好きな「専守防衛」です。

1)世界各国政府の多数説は、国連憲章第51条「武力攻撃が発生した場合」を文字通り、武力攻撃への着手を確認後(損害の発生より前の時点でもよい)と解釈する、消極説である。
日本政府は自衛権の行使が可能になる時点について、1970年にこの定義を採用した。
「武力攻撃による現実の侵害があってから後ではない。武力攻撃が始まった時である。(略)始まったときがいつであるかというのは、諸般の事情による認定の問題になるわけです」
(高辻正己内閣法制局長官、昭和45年3月18日、衆議院予算委員会)」

これがあまりに非現実的なので、敵が明らかに攻撃の準備をしたことをもって先制攻撃を可能にするというドクトリンに変えましたが、いまでも強く日本の防衛を縛りつけています。
「先制攻撃」について考える: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

もし相手の発射したミサイルが核弾頭つきだったら数百万人が死んでから、やっと自衛戦闘ができるわけです。
国民の生命を虫けらのように考えているトンデモ防衛論です。

米国の場合、よく勘違いされていますが、「戦争が好き」なのは民主党です。
ベトナム戦争に足を突っ込んだのは民主党、足を抜いたのは共和党です。
共和党は民主党リベラルとは別の意味で、戦争なんかにカネを使うなという主義です。
民主党が地球環境を守れうんぬん方向に行くのに対して、共和党は国境の壁を高くしろ方向に行くというだけのことです。

ですから、共和党の保守を煮詰めたトランプ派は、平気で「ウクライナの国境よりアメリカの国境を守れ」と言えちゃう人らなのです。
ヨーロッパでも、似た傾向はそこらじゅうの国であるのですが、しかし地続きですから、ここでウクライナが負けたら、次はウチの国だという恐怖心がリアルにあるので、大多数の国は踏みとどまっています。
太平洋を隔てた安全地帯にいると思っていられる米国は、ウクライナにむしられるだけだと思っています。

トランプ派は、NATO脱退を口にしていますから、トランプがふたたび大統領にでもなれば、本気で脱退してしまい、ウクライナ支援は打ち切り、ついでにクアッドも止めてしまうかもしれません。
おおよそ保守を標榜する者がやることではありませんが、トランプならやりかねません。
そのようなことになれば自由主義陣営は大打撃を食うことでしょう。

トランプ派がわかっていないのは、米国の防衛力とはNATOと日米同盟を合わせた総合力のことだということです。
そしてさらに、オーストラリアやインドまで加えたクアッドとAUKUSも加えた十重二十重の同盟が、米国を守っているのです。
よくトランプが言っていた「米国が守ってやっている。防衛費を上げないと米軍を引き上げるゾ」という恩着せがましい台詞は、眠りこけていたNATOや日本にはいい刺激でしたが、しかし根本的にはまちがっているのです。
米国があるのは同盟があるからで、その平和の土台の上に米国の安全保障も載っているにすぎません。
ここが同盟国がひとつもないロシアやチャイナと決定的に違うことです。
この同盟国群がコワイから、中露はこれを日夜分断しようとしているわけです。

あろうことか、トランプ派はロシアの分断に乗ろうとしています。
ウクライナより国内にカネを使え、という彼らの考えにいちばん喜ぶのは、ロシアなのですが。

 

2023年10月 4日 (水)

EU外相会議、「戦場」で開催

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EUが、「戦場」のキーウで外相会議を持ちました。

「EU=ヨーロッパ連合は2日、ロシアによる軍事侵攻を受けるウクライナの首都キーウで、初めての外相会議を開きました。
会議のあと、EUのボレル上級代表は、ウクライナへの支援の継続に揺るぎはないとして、EUの結束を改めて強調しました。
ウクライナの首都キーウでは2日、EU加盟国の外相らが集まり、ウクライナのクレバ外相も交えて外相会議が開かれました。
EUが、まだ加盟していない国で外相会議を開くのは初めてだということです。
会議にはウクライナのゼレンスキー大統領も出席し、「ウクライナと、自由な世界の全体が、この戦いに勝てると確信している。私たちの勝利は、あなた方との協力にかかっている」と述べ、ロシアによる軍事侵攻を早期に終結させるためにも、EUの支援が不可欠だと訴えました」
(NHK10月3日)
EU キーウで初の外相会議 ウクライナ支援継続で結束を強調 | NHK | ウクライナ情勢

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NHK

またボレルEU外交安全保障上級代表は、キーウでこうも発言しています。

「ボレル上級代表は、「私たちの対ウクライナ支援は、今後数日、数週間で戦争がどのように続いていくかに左右されない。ウクライナ兵はロシアの強力な防衛線を克服している。衛星画像によれば、それらの防衛の幅は25キロメートルに及ぶこともある」と発言した。同氏はまた、ウクライナの反転攻勢は地雷により非常に複雑になっていると指摘した。
そして同氏は、「私たちの支援は、1日では変わらない。それは、恒常的で構造的なサポートだ。なぜなら、私たちは存在的脅威に直面しているからだ。それは、1日では解決しない。ウクライナ人は勇敢かつ自分たちの持つ能力によって戦っている。私たちは、彼らがより成功して欲しいと思っている。そのため、私たちはより多くの武器をより迅速に供与しなければならない」と強調した」
(ウクライナフォーラム10月3日)
EUの対ウクライナ支援は戦況に左右されない=ボレルEU上級代表 (ukrinform.jp)

ここでボレルが言う「恒常的で構造的なサポート」とは

【【ブリュッセル共同】欧州連合(EU)加盟国の兵器開発など軍事協力を推進する欧州防衛庁(EDA)は、EUに加盟する7カ国がロシアの侵攻を受けるウクライナへの軍事支援の強化と、支援により枯渇した自国の在庫を補充するためにEDAを通じた弾薬の共同発注を開始したと明らかにした。ロイター通信が29日、伝えた。
7カ国が発注したのは155ミリ砲弾で、ロシアに対する反転攻勢に出たウクライナにとって最も重要な弾薬の一つ。EUは今年3月の外相理事会でウクライナ向けの弾薬を共同購入する計画に合意し、1年以内に155ミリ砲弾を100万発供与する方針だ」
(共同9月30日)
ウクライナ用弾薬共同発注 EU加盟7カ国、在庫も補充(共同通信) - Yahoo!ニュース

 欧州装備庁(EuropeanDefence Agency / EDA) は、2004年に作られた EU加盟国聞の装備協力を促進するための機関です。
従来は加盟国が個別に行ってきた防衛装備の研究・開発・生産を、現在は調達や武器輸出に関するルールの統ーや、欧州域内の防衛産業の再編統合にまで及んでいます。
そして今回ウクライナ支援についても、このEDAが集約して共同発注することにまとまったようです。
これで懸案の155ミリ砲弾を1年以内に100万発届けることに弾みがつきました。
また、来年1年間に最大50億ユーロ(7800億円)のウクライナへの軍事支援が提案されました。
こちらは年末までの合意をめざすとされていますが、キーウで外相会議をするということがその決意のほどを示しています。

ウクライナ戦争は、一地域の紛争ではなく、専制主義と自由主義との歴史的闘争です。
ウクライナ戦争はこの専制主義ブロックがロシア、中国、北朝鮮、イランであることを明確に分からせました。

この歴史的戦いの意味を理解しないのが共和党右派で、政府予算をめぐってあろうことかウクライナ支援を切れということを条件に政府予算の「つなぎ予算」に反対しました。
彼ら共和党右派の名は皮肉にもフリーダムコーカス(自由主義議連)です。笑止、なにが自由主義議連だ。
彼らの親分はトランプです。

ちなみにこの時期にモスクワ詣でをする愚か者が日本からも出ています。
例のロシアンパペットのムネオです。
この御仁は、「ブチャの虐殺はなかった」「子供の拉致は人道措置」なんて言ってた人です。
きっとウクライナ戦争はロシアによる人道救済なんでしょう。

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鈴木宗男・維新副代表がロシア訪問: 国会議員ではウクライナ侵攻後初 | アゴラ 言論プラットフォーム (agora-web.jp)

「党に届け出ずにロシアへ渡航したとして、日本維新の会鈴木宗男参院議員の処分を検討していることが3日、分かった。党幹部が取材に「党がルールとして定めていた海外渡航の際の届け出はない。国会議員団の副代表を務める鈴木氏の責任は軽くない。帰国後に本人から話を聞いて処分内容を決めたい」と答えた。
ロシア外務省は2日、ルデンコ外務次官が鈴木氏を迎え、会談したと発表。鈴木氏がモスクワを訪れたもようだ」
(産経10月3日)
<独自>維新が鈴木宗男氏の処分検討 無許可でロシア渡航(産経新聞) - Yahoo!ニュース

訪問した理由は、北方領土への島民の墓参りと漁船の操業安全と停戦呼びかけ、だそうです。
こんなことを、この時期、わざわざお願いしに行くというセンスがズレきっています。
訪日したゼレンスキーがいみじくも言ったように、ロシアのウクライナ侵略は北方領土と同質なのです。

そして「第3次大戦」はすでに起きてしまっているのです。
ヨーロッパ全体を巻き込まないのは、ひとえにウクライナの勇敢さ故であり、EUの自己保身故です。
それをわかっているからこそ、ヨーロッパはこれほどまでにウクライナ支援に全力を注いでいるのです。

こんな時期に敵に「お願い」に行くような行為は利敵行為以外なにものでもありません。
維新のみならず、国会議員の資格を剥奪し、政界から追放すべきです。
そのていどの覚悟で敵陣営に行ったのでしょうから。




 

2023年10月 3日 (火)

NATOがウクライナを助けているのではない。ウクライナが世界を助けているのだ

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英国軍がウクライナに進駐するという情報が流れました。
ただし戦闘部隊ではなく、訓練支援ユニットのようですが、画期的なことです。
同時に、黒海のウクライナの穀物輸送防衛のためにも、英国海軍が強力するようです。
また軍事物資を、ウクライナ国内で製造する計画もあるようです。

「イギリスのシャップス国防相は、ウクライナにイギリス軍を派遣することを検討していると明らかにしました。
 シャップス国防相は、イギリスの「テレグラフ」紙のインタビューでイギリス陸軍をウクライナに派遣し現在、イギリス国内などで行っているウクライナ兵の訓練を現地で実施する可能性を示唆しました。
 また、黒海でロシア軍の攻撃からウクライナの商船などを守るためにイギリス海軍がどのような役割を果たせるかゼレンスキー大統領と協議したことを明らかにしました。
 NATO=北大西洋条約機構の加盟国はこれまで、ロシアとの戦闘に巻き込まれることを避けるため、ウクライナへの派兵を避けていましたが、イギリス軍が派遣されれば一歩踏み込んだ軍事支援となります」
(テレ朝2023年10月1日)
英軍のウクライナ派遣を検討 現地で訓練など 英国防相 (tv-asahi.co.jp)

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ただしBBCなどの英国媒介はこの報道に追随せずに、英ガーディアンはスラク首相の否定的コメントを報じています。

「英国のスナク首相は、近い将来にウクライナへと英国軍の指導官を派遣する可能性を否定した。
スナク氏は、ウクライナにて英国軍人がウクライナ軍を訓練する可能性に関するシャップス英国防相の発言につき、「国防相が話したことは、将来的にいつか私たちがウクライナでその訓練の一部を行う可能性の話だ。しかしそれは、長期的展望に関することであり、『今ここで』という話ではない」と説明した。

そして同氏は、現在英国が自国軍人をウクライナへ派遣することはないと述べた。その際同氏は、「英国兵がその紛争で戦うために派遣されることはない。それは今起きていることではない。私たちが今行っていることは、ウクライナ人の訓練だ。私たちはそれをここ英国で行っている」と発言した」
(ウクライナフォーラム10月1日)
英国軍指導官は今はウクライナに派遣されない=スナク英首相 (ukrinform.jp)

すでに英軍は、様々な分野でウクライナ軍を訓練しています。
そのひとつが自走榴弾砲で、この訓練は公開されました。

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NHK

「イギリス軍は、ロシアによる軍事侵攻を受けるウクライナの兵士らに対する訓練の様子を公開し、兵士たちは反転攻勢の作戦を進めるうえで必要とされる自走砲といった兵器の扱い方を学びました。(略)
このなかで、ウクライナ兵は、イギリス軍の自走式りゅう弾砲「AS90」5門を使い、弾薬を実際に装填して発射する手順を確認するなど扱い方を学んでいました。
兵士らは、7週間にわたって指導を受けたということで、イギリス軍は、ウクライナに戻った兵士らが、習得した技術を仲間とも共有してもらいウクライナ軍の戦闘力の向上を目指すとしています。
ウクライナ軍にとっては、ロシア軍が築いた防衛線の突破を図るなど、反転攻勢の作戦を進める上で戦車部隊と連携する砲兵戦力の強化も課題で、イギリスから30門以上供与されている「AS90」などの自走砲をどう効果的に活用するかもカギになっているとみられます」
(NHK7月30日)
英軍 ウクライナ兵士への訓練を公開 反転攻勢は自走砲がカギか | NHK | ウクライナ情勢

英国はすでに2022年からウクライナ兵を1万人規模で受け入れて、訓練をしてきました。
教官は、広くNATO諸国の各国軍のようで、おそらく各国に散らばらずに英国に集中させたのかもしれません。
自走砲や戦車だけではなく、一般兵員の訓練もされているようです。

「参加したウクライナ人は英国、スウェーデン、デンマーク、オランダ、ノルウェーその他諸国の軍による指導の下、5週間にわたって軍事紛争に関する法律、市街や塹壕における戦闘、兵器や戦場での医術について学んでいく。
英政府は16日、今年は訓練対象者を2万人に倍増すると表明した。訓練の場所は英国全土に数カ所ある。
こうした動きは、北大西洋条約機構(NATO)が15日に表明したウクライナ支援強化の一環だ」
(ロイター2023年2月20日)
アングル:塹壕戦などウクライナ人軍事訓練、英が受け入れ倍増 | ロイター (reuters.com)

ウクライナ兵は経験のない新兵であり、初歩的訓練を英軍が引き受けているものと思われます。

「発表には、「英国で行われているウクライナの新兵のための訓練は、戦士・志願兵が自らの祖国をロシアの侵略から守れるようにする戦闘能力を身に付けさせるものである。訓練は、経験の浅いまま、あるいは、事前の軍事経験が全くないままウクライナ軍に加わった新兵・志願兵を対象にしたものであり、彼らが前線で生存し、戦闘で効果を発揮するために必要な能力を身に付けることを目標したものである」と書かれている。
また、訓練コースは、英国陸軍の予備兵のためのコースをベースにしたものであり、少なくとも5週間にわたって行われると指摘されている。

訓練コースの内容は、武器取り扱い指導、攻撃・防御戦術、武力紛争法の理解、射撃活動・射撃技術、パトロール技術、医療訓練(戦場での応急処置)、展開時の戦力保護、サイバーセキュリティの知識、農村環境下訓練だと説明された」」
(ウクライナフォーラム10月1日)

この時、インタビューを受けたウクライナ兵は、48歳の家具職人でした。
失うものが多い年齢です。おそらく妻子を残して戦場に赴いたのでしょう。
健闘を祈ります。どうぞ、無事平和な家庭に戻れますように。

彼でわかるように、ウクライナはいま国民総動員体制に入り、徹底抗戦の構えです。

「18~60歳のウクライナ人男性は推定1240万人。この人数には現役兵である約21万人のうち、女性約3万人を除外したおよそ18万人が含まれますから、「ウクライナ人で徴兵できる男性人口」は概ね1225万人ほどいえるでしょう。
この1225万人を根こそぎ動員(44.2%)すると、約541.5万人の計算となります。これに女性を含む現役兵約21万人と、海外からの義勇兵約2万人を加えた564.5万人が「ウクライナで戦える頭数の大ざっぱな目安」になります」
ウクライナの「根こそぎ動員」兵士の数はMAXどこまで増やせるか 大戦中の日本は? | 乗りものニュース- (3) (trafficnews.jp) 

約500万動員をマックスとして、老いも若きも、男性女性を問わず、ウクライナを守ろうとしています。

この1年でプーチンは世界的な孤立を味わったはずです。
一方、ウクライナはNATOに加盟することなく、NATO諸国や諸外国からあらゆる軍事支援を引き出すことに成功しました。
自由主義陣営は眼を覚ましました。

エドワード・ルトワックはこのように述べています。

「この数十年間、専門家と称する人たちや、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で講演するような経済人や政治家は、世界で「力の拡散」が進んでいると唱えてきた。日米欧などの主要国で構成されるG7が弱体化し、代わりに中国やロシア、トルコなどの新興国を含む20カ国・地域によるG20の時代が到来している、という主張だ。
G7の一員である米英独などを主体とする北大西洋条約機構(NATO)も、ドイツなどが国防への投資を怠ってきたことから弱体化が指摘されてきた。ロシアは、そうした現状を見越して侵攻に踏み切ったわけだが、その瞬間からNATOは逆に極めて強力な組織に変貌を遂げた。
ショルツ独首相は国防費を国内総生産(GDP)比2%以上に引き上げると表明したほか、加盟国のポーランドやデンマークなどが今月に入って国防費の大幅増額を決めた。NATOは目を覚ましたのだ」
(ルトワック『ウクライナが呼んだNATOの覚醒』2022年3月18日)
【世界を解く-E・ルトワック】ウクライナが呼んだG7の「覚醒」 - 産経ニュース (sankei.com)

訓練を終えて帰国するウクライナ兵士たちを、英軍兵士たちは鉄路横に並んで敬礼で送り出しました。
英軍兵士がウクライナ兵士をいかにリスペクトしているのかわかります。

その列は長く長く続き、戦場に戻るウクライナ兵士を励まし続けました。
NATOがウクライナを助けているのではなく、ウクライナが世界を助けているのです。

戦争は武器だけで戦うわけではありません。
生身の人間が戦うのです。
戦えば戦うほど民族的アイデンティティを崩壊させ、弱体化していくロシアと対象的に、ウクライナはいっそう強くなっていきます。
なぜなら、ウクライナは服従しないからです。

 

 

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乗り物くらぶ
ウクライナに平和と独立を

 

2023年10月 2日 (月)

ロシア軍、占領下のウクライナ人住民も徴兵

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プーチンは、来月から新たに13万人の徴兵を行う大統領令に署名しました。
また徴兵対象者の上限年齢を27歳から30歳に引き上げるそうです。
新たな動員計画には、ウクライナ占領地の住民も含まれています。
いうまでもなく、戦時国際法違反です。

(CNN) ロシア国防省は29日、今秋の新たな徴兵で占領下のウクライナ4州が初めて対象地域に含まれると明らかにした。
国防省によると、秋の徴兵は10月1日からロシア連邦全域で始まる。違法に併合されたウクライナの地域も対象になるという。
ロシアのプーチン大統領は昨年9月、ルハンスク、ドネツク、ヘルソン、ザポリージャ4州の併合を宣言。4州ではこれに先立ち、いわゆる「住民投票」が実施されたものの、ウクライナや西側諸国からは一様に「偽の」住民投票だと非難する声が上がった。
ロシア軍参謀本部組織動員総局の幹部であるツィムリャンスキー少将によると、ロシアの極北地域では気候の違いを考慮し、11月1日から徴兵が開始される。
徴集兵が集合場所から出発するのは10月16日以降になる予定。「徴兵期間は従来通り12カ月」だという」
(CNN9月30日)
ロシアの秋季徴兵、占領下のウクライナ4州が初めて対象に - CNN.co.jp 

ロシアは、去年9月の「住民投票」で得票率50%で成立し、露議会で併合を宣言したから、ロシア領土だといいたいのでしょうが、そんなもんダメに決まっています。
もちろん戦時国際法においては、ウクライナ領土の「併合」は「占領」とみなされ、いくら「住民投票」なるものをしても国際法が適用され、その結果は否認されます。
そもそも国際的な監視団もなく、武装兵の監視の下で行われた秘密投票でない投票など全くの茶番です。

米国は即座に絶対にこの「併合」を認めないと宣言しています。

「バイデン氏は、「これだけは非常に明確にしておく。合衆国はウクライナの主権領土を自分たちのものだとするロシアの言い分を決して、決して、決して認めない」と述べた。
アメリカはロシアが併合に踏み切った場合、追加制裁を科す考え」
(BBC2022年9月30日)
ロシアのウクライナ4州併合、「決して」認めない=バイデン米大統領 - BBCニュース

多くの国々も強く批判してこの併合を認めていない以上、これは純然たる侵略に伴う軍事占領地域であって、戦時国際法の支配下にあります。

「いかなる名目でも、ウクライナにいるロシア軍は、ジュネーブ条約を含む国際法上の占領軍と見なされる。ロシア軍が正式にウクライナ東部に侵入した場合、後述するように、ジュネーブ第4条約における「占領」行為に該当することになる。「LNR」または「DNR」と自称する地元「当局」の主権主張、またはロシア政府による両者の独立承認は、占領に関する国際法の適用に影響を及ばさない」
(ヒューマンライツウォッチ2022年2月24日 )
ロシア、ウクライナと国際法:占領、武力紛争、および人権について | Human Rights Watch (hrw.org)

ジュネーブ条約において、占領軍の権力下にある住民は保護対象となります。

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ジュネーヴ諸条約及び追加議定書 (mofa.go.jp)

●戦時における文民の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約(第4条約)
第五十一条〔志願、労働〕
占領国は、被保護者に対し、自国の軍隊又は補助部隊において勤務することを強制してはならない。自発的志願を行わせることを目的とする圧迫又は宣伝は、禁止する。
② 占領国は、被保護者が十八歳をこえている場合であって、その者を占領軍の需要、公益事業又は被占領国の住民の給食、住居、被服、輸送若しくは健康のために必要な労働に従事させるときを除く外、被保護者に対し、労働を強制してはならない。被保護者は、軍事行動に参加する義務を負わされるような労働に従事することを強制されない。占領国は、被保護者に対し、それらの者が強制労働に服している施設の安全を強制手段を用いて確保するよう強制してはならない」
③略
④ 労務の徴発は、いかなる場合にも軍事的又は準軍事的性質を有する組織の中に労働者を動員することとなってはならない。

ジュネーブ条約が占領軍による軍事動員や労働動員を禁じているのは明らかで、ましてや徴兵などは考えるまでもなく重大な国際法違反です。
ロシアも締結国ですから、念のため。

プーチンはビデオ演説でこう言っています。

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「1年前、決定的で真に歴史的かつ運命的な出来事が起きた。何百万人もの住民が、みずからの判断で祖国とともにあることを選んだ。
あなたたちの確固たる決意のおかげで、ロシアはさらに強くなった。われわれは一つの国民であり、力を合わせてどんな困難にも立ち向かう」
(NHK2023年9月30日 )
ロシア ウクライナ4州の一方的な「併合」1年 支配の既成事実化進める | NHK | ウクライナ情勢

なぁに言ってんだか、プーチン。
ロシア軍が占領地でいかなる所業を働いたのか、すでに明らかになっています。

占領当初、乗り込んで来たロシア軍が真っ先にやったのが「選別」です。
まず住民は選別キャンプ(フィルターキャンプ) に送られます。
マウリポリでは「人道回廊」の先に待っていたのが、4万人以上が強制的に収容された選別キャンプで、ロシアは住民を「いい住民」すなわちロシアに忠誠を誓う者と、「悪い住民」すなわちロシアに抵抗す者に仕分けします。
その方法は拷問、殴打、そして女性に対しては強姦です。
「生存者は、電気ショック、水責め、激しい殴打、銃を突きつけられた脅迫、長期間にわたってストレスポジションを保持することを余儀なくされたと証言している。彼らは、2つの学校を含む市内の少なくとも7つの場所を特定し、兵士が彼らを拘束し虐待したと述べた」
(HRW報告書)
ウクライナ:ロシア軍がイジウムの被拘禁者を拷問 |ヒューマン・ライツ・ウォッチ (hrw.org)

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ブチャの大虐殺をもちだすまでもなく、南部ヘルソンでは住民の占領地域外への移動が制限され、同じく南部ザポリージャではロシアの情報機関連邦保安局(FSB)などが、兵役年齢の男性を探し出してリストアップしています。
東部ハルキウ(ハリコフ)では、医療従事者を強制的に集めて露軍負傷兵を治療させており、協力を拒否すれば処刑すると脅しているといいます。

ロシア軍がしたことは、ウライナ国歌やウクライナ語の禁止、ロシア語による学校教育の強制、ルーブル支払いの強要、親ロシアニュース番組の放送、ロシア語新聞の発行などの情報統制でした。
そして住民の再登録と称する選別も並行して進められたようです。
そして並行して秘密警察による密告政治が始まりました。互いに互いを監視させるのです。

一方撤退したロシア軍が残した爪痕はあまりにひどく、生活インフラはことごとく破壊されていました。
ヘルソン市内には公共施設、民間居住区、学校、病院あらゆるものに仕掛け爆弾(ブービートラップ)が仕掛けられており、市民が平常の市民生活に戻るためには、それをひとつひとつ探し出し、撤去せねばなりませんでした。

「露軍はヘルソン市内に多数の地雷を埋め、ドアを開くと爆発するトラップ(わな)も仕掛けているとされ、除去には相当の時間がかかる見通しだ。露軍は、ヘルソンのインフラ設備を破壊して退却する「焦土作戦」も展開。ウクライナ軍の前進を遅らせる狙いなどがあるとみられるが、現地では電気やガス、水道の供給が止まり、携帯電話の電波もつながっていないという」
(産経11月12日)
ヘルソンの支配権回復にハードル 砲撃や多数の地雷の恐れ - 産経ニュース (sankei.com)

 

2023年10月 1日 (日)

日曜写真館 この世ともあの世とも曼珠沙華の中

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ありふれし明日来るならひ曼珠沙華 斎藤玄  

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いつぽんのまんじゆしやげ見ししあはせに 山口誓子

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うつりきてお彼岸花の花ざかり 種田山頭火

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おのれにこもればまへもうしろもまんじゆさげ 種田山頭火

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かへり観れば行けよ行けよと曼珠沙華 中村草田男

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こんこんと水も土より曼珠沙華 百合山羽公

 

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