イスラエルは頭を冷やせ
イスラエルは味方を急激に減らしていっていることに気がつかないのでしょうか。
アラブ諸国が、ガザ爆撃に対して強い怒りをもっていることは予想できたことです。
西側陣営に近かったヨルダンの王妃はこう述べています。
「王妃は、ハマスの奇襲攻撃に続くイスラエルによるガザ空爆と西側の「ダブルスタンダード」を痛烈に非難。イスラエル南部で起きたこととガザで起きていることを重ね合わせ、「銃を突きつけて家族全員を殺すのはいけないことだが、砲撃して殺すのは構わないというのだろうか」と語った。
イスラエル国内で大きな反発を招いたこのインタビューは、イスラエルと他の中東諸国などがこの紛争をどうとらえているかで分断が深まっていることを浮き彫りにするものだ」
(ブルームバーク10月26日)
イスラエル支持の機運後退、ガザ空爆激化への怒り強まる(Bloomberg) - Yahoo!ニュース
西側陣営にも分裂が目立つようになりました。
「イスラエル軍はハマスのテロに報復するためガザ侵攻を準備しつつ、空爆を繰り返しているが、EU内にはイスラエルの報復攻撃での評価には温度差がある。即時停戦を求める国がある一方で、ハマスが完全に壊滅するまで戦闘を続けることを支持する国がある。「無条件でイスラエルの自衛権を認める」と主張する加盟国と、ガザ地区のパレスチナ人の人権保護を考慮し、イスラエル軍のガザ報復攻撃には批判的な国に分かれている。
ルクセンブルクで開かれた外相会議では、スペイン、スロベニア、アイルランドなどは、人道的即時停戦を求めるアントニオ・グテーレス国連事務総長の呼びかけを支持したが、ドイツ、オーストリア、チェコなどは即時停戦案に反対している」
(ウィーン発コンフィデンシャル10月26日)
ウィーン発 『コンフィデンシャル』 (livedoor.blog)
イスラエルを支持する国はドイツ、オースリア、チェコなどです。
ドイツはナチスのホロコーストへの贖罪意識からか、イスラエル支持を貫徹しています。
こういった中で、ポルトガル出身のグテーレス国連事務総長は致命的なミスを犯しました。
本来、このような状況で国連に求められるのは調停であるにもかかわらず、こう言ってのけたのです。
「国連 グテーレス事務総長:「ハマスによる攻撃が理由もなく起きたわけではないと認識することもまた重要です。パレスチナの人々は56年間にわたり、息の詰まるような占領下におかれています。彼らは自分たちの土地が入植によって食い荒らされるのを目の当たりにし、暴力に苦しめられてきました。
「イスラエルの建国に伴い、パレスチナ人は次々と土地を追われ、その多くは現在の自治区と呼ばれるエリアに押し込まれています」
「ただハマスの攻撃を正当化するものではなく、その攻撃もパレスチナ人への集団懲罰を正当化できません」
(テレ朝10月25日)
国連混迷イスラエル“怒りあらわ” グテーレス氏発言巡り辞任要求 (tv-asahi.co.jp)
このグテーレスは、ハマスがテロを起こした原因をイスラエルにあるとします。
「イスラエル建国によってガザ地区に追い込められ、いまは息の詰まる占領下に置かれている」からだとしてしまいました。
この論法は、よく日本の中東学者と称するハマス版ムネオらが口にすることです。
「天井のない牢獄」に繋がれているから重圧の解放としてテロをしてよい、という論法です。
こういう言い方でテロを正当化すれば、必ずじぶんの国でテロを起こされますが、グテーレスはわかって言っているのでしょうか。
イスラエルがガザを占領しているですって?それでよく国連事務方トップが張れますね。
そもそも8年も前の2005年にイスラエルはガザから撤退していますし、いまかの地を「実効支配」しているのはまぎれもなくハマスです。
だもから、メディアはハマスの接頭語に必ずといっていいほど「ガザを実効支配する」とつけているではありませんか。
もし、イスラエルがガザを占領していれば、いまさら地上侵攻もなにもあったものではありません。
今回侵攻したとしても、ハマスを掃討に一定の成果が上がったとイスラエルが判断すれば、地上軍を撤退させるでしょう。
あんな世界一テロリストが密集している場所に軍を置くのは、テロの標的を与えるようなものだからです。
グテーレスが提案した「人道的停戦」案自体は、頭から拒否する性格ではないと思います。
しかし、その理由にハマスの言い分をまるごと代弁したようなことを言えば、イスラエルが激怒してグテーレスの辞職と、国連で人道問題を担当するグリフィス事務次長への査証発給を拒否 するのはあたりまえで、安保理で審議する前から当事者から拒否されてしまいました。
グテーレスはイスラエルが国連に対して深い不信感があることを知るべきです。
メディアが言う「ガザの国連機関」とはハマスなのですから。
ハマスが国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)を牛耳り、テロの温床にしています。
「ガザはイスラエルによる封鎖が続き、今回の紛争前から住民の6割が食料支援に頼ってきた。その配給を担うUNRWAガザ事務所は職員約1万2000人を抱え、地域最大の「雇用主」でもある。職員のうち外国人は幹部ら十数人で、99%以上を地元のパレスチナ人が占める。
UNRWAは学校や病院運営、インフラ整備を担うため、ガザを実効支配するハマスとの関係は断ち切れず、イスラエルは「ハマス戦闘員や武器移送の隠れみのになっている」と非難してきた。UNRWA学校の教科書は「ユダヤ人憎悪を煽(あお)り、イスラエル攻撃を美化している」と米欧でも再三問題視されてきた。ガザでは小学校など約280校がUNRWA傘下にある」
(産経10月26日)
国連とイスラエル、根深い相互不信 ガザ支援難航の背景に - 産経ニュース (sankei.com)
今回「ガザ保健当局」、あるいは「国連現地当局」と称して死亡者数を発表しているのは、すべてこのハマスです。
たぶん大幅に水増しされているはずですが、大きな民間人被害がでていることは疑い得ません。
ただしグテーレスが言うように、イスラエルの報復攻撃は度が過ぎています。
これは事実です。
このガザ地区への攻撃作戦は「鉄の剣(ソーズ・オブ・アイアン/ヘブライ語名ハラヴォート・バルゼル)は、そのすさまじさにおいて大戦中に壊滅したドレスデンに比較されるほど過激です。
Xユーザーのイスラエル空軍https://t.co/3Xm1vxvq7D」 / X (twitter.com)
「反撃作戦開始から5日後の10月12日にイスラエル軍はその爆撃の投弾量を発表しています。空軍の爆撃だけで6000発の爆弾を投下し、その合計重量はなんと4000トンにも達しています。1発あたり平均666kgというこの数字から大型の航空爆弾の比率が高く、一般的な500ポンド爆弾(227kg)はむしろ少なく、1000ポンド爆弾(454kg)以上が主体で、大重量の2000ポンド爆弾(907kg)が大量に投下されていることが分かります」
(JSF10月22日)
イスラエル軍のガザ空爆は開始5日で4000トンの爆弾を投下、ドレスデン爆撃に匹敵(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース
爆弾の投下量は実に4千トンにも達し、しかも454㎏級や907㎏級といった大型の航空爆弾が多用されています。
しかもこれらは今までのようなGPSをつけたJDAM精密誘導タイプではなく、自由落下する無誘導のものが多く使われているようです。
これは映像的にも確認されています。
下写真はイスラエル空軍によって10月15日にポストされたツイートのもので、F-16に搭載されているのは旧式の無誘導爆弾であるM117(750ポンド、340kg)です。
XユーザーのIsraeli Air Forceさん: 「ממשיכים להגן על הבית. https://t.co/lYk22IXtG7」 / X (twitter.com)
このような無誘導爆弾は開けた土地で軍事目標に用いるべきもので、民間人地帯でハマスのロケット弾発射施設をピンポイント破壊するにはまったく不向きです。
今までイスラエル空軍は、ガザ地区の空爆に際して民間人被害が出ないように、あらかじめ避難経路まで記したチラシを投下し、SNSでも警告を与えてから精密爆撃で当該箇所のみを破壊してきました。
しかも事前にその建物の屋根にルーフノッカーと呼ばれる小型の爆弾を落としてから、本格的攻撃を仕掛けるという民間人保護の手順を踏んできました。
それが今回、これまでの慎重さをかなぐり捨てして、ひとつの建物どころか、ワンブロック全体を消滅させるような爆撃を行っています。
その結果、「ガザ保健当局」の発表で3千から4千人が死亡したと発表されています。
実に愚か極まる爆撃です。
こういう無差別爆撃をやって喜ぶのはだれでしょうか。
いうまでもありませんが、ハマスとイランです。
イスラエルがこの報復を自衛戦争とすることはまちがっていませんが、そのためには国際社会に納得させる必要があります。
戦争にはルールがあり、いかに相手がテロリストであろうと民間人を殺してはなりません。
現代においては、戦争にもルールがあり、国際人道法の範疇なのです。
かつては非戦闘員大量虐殺以外なにものでもない原爆投下や都市空襲があったために、その反省から大戦後は戦争において「やっていいこと」と「悪いこと」の区別をつけるために「国際人道法」が生まれました。
軍事力に当たらない非戦闘員の市民、特に女性や子供、老人、病人が多数居住する住宅地、病院、集会場、宗教施設、文化施設を攻撃対象にすることは禁じられています。
国際的人道団体のヒューマンライツウォッチは、明確な見解を出しています。
「戦時国際法のもと、攻撃の目標は「軍事目標」に限定される。軍事目標とは、軍事行動に効果的に資する物であることを示し、またその全面的または部分的な破壊、奪取または無効化が明確な軍事的利益をもたらすものを指す。
敵陣の戦闘員、武器、弾薬、建物や車両など、軍事目的で使用されている物などが該当する。
国際人道法は、武力紛争中、民間人の犠牲がある程度避けられないことを認識してはいるが、紛争当事者には依然、戦闘員と民間人の区別義務、及び戦闘員など軍事目標のみを標的とする義務が課される。ただ、民間人は、戦闘中の戦闘員を支援するなど、「敵対行為に直接参加している」間は、攻撃対象から除外されない」
ロシア、ウクライナと国際法:占領、武力紛争、および人権について | Human Rights Watch (hrw.org)
ハマスが病院や学校を拠点にしていることは知られていますが、だからといってその建物全体を破壊したり、ましてや一区画全体を爆撃で消滅させることなどは許されない蛮行です。
イスラエルはこのような爆撃をただちに止め、かつてのような民間人に犠牲がでない方法で攻撃をするべきです。
味方を減らして、敵を増やす戦争をしてどうするんですか。
こんなことをしていると、当初あったイスラエルの悲劇に対する同情や連帯の気持ちすら萎えてきます。
これこそハマスが望んだことではなかったのですか。
イスラエルよ、頭を冷やせ!
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まず、グティエレスが56年前からという表現がアホですか?と。イスラエル軍が緩んでる時期にエジプトとシリア双方から全力攻撃されて本当に国家存亡の危機に陥りながら緊急招集で見事に押し返して圧勝してみせた第三次中東戦争の話ですよね。あれで一気にシナイ半島全土まで本当にオーバーロールした件。で、後にあのオイルショックを引き起こした第四次中東戦争を経てエジプトとは一定の和解してシナイ半島返還が実現したんだけど、一連の流れを作ったエジプトではアンワル·サッダートが暗殺されました。
んで、その時にガザも返還するのに「イラネェー!」と。で、あんな辺鄙な空白池(と言うには過密だけど)が生まれてしまった。
JSFの表現でも投下弾薬量でドレスデン空襲(正に大惨事)より多いというのは都市空襲としては確かにそうなんだけど、第二次世界大戦での日本各都市を焼け野原にした量よりも、後の朝鮮戦争やベトナムでの投弾量は遥かに多いのでちょっと比較に出すのはやや無理があるのではないかと。
それにしてもイスラエルは小国なのにそんだけの物量かあるのね。自衛隊も継戦能力の観点でもっと勉強しないとね。
これだけ市街地に空から大型爆弾を投下しながら地上兵力は一部動員のみなのは、北のレバノンのヒズボラ対策ですね。本当に2正面作戦になりますから。
シリアが国内の大混乱でゴラン高原侵攻してこないだけまだ良い状況かと。
どちらにしてもバックには「イランvsアメリカ」な訳で。イランのバックにはロシアや中国と北朝鮮。
中国は国内経済が大変なことになってるので、これまた習近平が台湾侵攻に出るのではないかという不安もありますし。
どっちが正しいなんて判断は出来ないですが、少なくとも日本はイランとは手を切る時なのに我が政府は···圧倒的な経済力か武力で圧力かけられる力も無いのに「伝統的友好関係」ですって。バカですか!
投稿: 山形 | 2023年10月27日 (金) 08時46分
見失ってはならない法や普遍性の高い価値観はあるのですから、テロリズム及び違法或いは非人道的な反撃、それらを行ってもよい理由、されても仕方ない理由を探すことに加担せず、また安易な「どっちもどっち論」とも別に、今現在の問題点を都合の良し悪しなく捉えられることは重要だと考えます。
例えば、イスラエルがガザへの水や電気の供給を止めたことが酷いとメディアはいいますが、ハマスはイスラム国家建設を目指して来ながら、今の今まで水やエネルギーを外部に頼ったままにして来たツケという話でもあります。
法や人道に目を瞑ってもどちらか一方に付くのが大事な話ではなく、問題点や評価してよい点を公平に見る、それは外部の人間の努めだと思います。
現実を洗い出して、妥協や協調、手打ちに繋がる治療法を探り辿り着くものかと思うのですが、国際社会が問題を指摘、また何かを提案して、最終的にこの当事者どうしがどういう行動を選択するだろうかと想像すると、なかなかに暗い思いはします。
投稿: 宜野湾より | 2023年10月27日 (金) 13時49分
イスラエルの自衛権行使について、日本のテレビ番組では必要最小限とか、警察比例の原則みたいな議論をされているケースを見かけますが、法的には軍隊は戦時法規を守る事のみ必要です。
「イスラエル国家の消滅」を目指したテロ組織のハマスは「新たなナチス」であるという、イスラエル国連大使の言葉は肯けます。
ただ、世論はまた別で、あやまった認識と偏向ニュースにあふれていて、人命尊重と言いながら民間人を巻き込んだハマスの責任を重視する向きもありません。
この状態はまさにハマスの思うツボのように感じます。
けど、ネタニヤフは終戦までの役割になるでしょうし、新たなイスラエルは欧米社会には歓迎されるんだと思います。
国際世論がイスラエルに厳しくなりがちな中、日本は逆にイスラエルの自衛権を認める傾向を示しつつあります。
国連のような組織を通じての日本のパレスチナ支援はザルで、テロ支援の温床になっている事をイスラエル大使館も指摘しています。
岸田さんは「人間の尊厳に光をあて、~」とか、まるで解同のパクリのごとく言ってますが、やれやれです。
イスラエルは目的を達成して、とにかく早く終える事が大事だと思います。毛沢東はレバノンに侵攻する米軍を見て、速やかに金門島砲撃を開始しています。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2023年10月27日 (金) 17時54分