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2023年10月12日 (木)

ハマスはパレスティナとイコールではない

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今回のハマスの無差別テロ報道に、なにかヘンな印象を受けませんでしたか。
ハマスの枕詞に長ったらしく「ガザ地区を実効支配している武装勢力」とくっつけて報じています。

たとえばNHKはこういう感じでハマスを紹介しています。

「正式名称は「イスラム抵抗運動」。ハマスはそのアラビア語の頭文字などをとったもので「情熱」という意味の単語にもなります。
1987年に発足したハマスは国家としてのイスラエルを一切認めない強硬な立場をとり、武力闘争を掲げて自爆テロなどを行いました。その一方で、市民に対する福祉活動も行い、市民の支持を得ました。そしてパレスチナの穏健派の政治勢力「ファタハ」との武力闘争をへて、2007年からはガザ地区を実効支配しています」
(2023年10月10日)
イスラエルにイスラム組織「ハマス」が大規模攻撃 何が起きた? | NHK 

下の画像はハマスの戦闘員が、野外コンサートにロケット弾を大量に撃ち込んだ後に突入し、手当たり次第に発砲して200名以上を虐殺し、100人以上を拉致した時の画像です。
血だらけの女性が髪をつかまれて車に連れ込まれています。

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ハマス戦闘員が音楽イベントに――若者ら260人が犠牲に 「奇襲」「民間人の人質」「SNS」…イスラエルに異例な大規模攻撃 - ライブドアニュース (livedoor.com)

これが「武装勢力」とやらの「パレスティナ解放闘争」だそうです。
「武装勢力」というあいまいな概念は、主権国家が有する正規軍以外の武装集団を指しますが、ISのようなテロ組織からカレン民族同盟のように国家形態を持つものまで千差万別で、これではなにも言ったことになりません。
ハマスはいままでテロで数限りなく市民を殺してきており、スッキリと「テロ組織」と呼んであげるべきです。

なになに、彼らハマスもガザ地区を「実効支配」しているから、パレスティナの代表だって。
ここは大事なのでしっかり押さえておきたいのですが、「実効支配」とはこのような意味で使われる概念です。
実効支配の概念規定とは

「実効支配(じっこうしはい、英: effective control)は、特定の国や勢力が、それと対立している国や勢力、あるいは第三国などの承認を得ないままに軍隊を駐留させるなどして一定の領域を実質的に統治している状態を指す」
実効支配 - Wikipedia

実効支配していると聞くとなにか重々しく聞こえて、一定の合法性すらあるように聞こえてしまいますが、なんのことはない法の支配によらず、国際社会の承認も得ずに、勝手に武力で一定領域を支配しているだけの「状態」です。
日本に関わることだと、北方領土はロシアが「実効支配」していますし、竹島も韓国が「実効支配」しています。
ウクライナの占領地4州もロシアによる違法な「実効支配」です。
このように「実効支配」という言葉をメディアは安易に使いまわしていますが、法や正義を無視して占有しているだけのネガティブな「状態」のことなのです。

つまり、ハマスはガザ地区を暴力で支配しているだけであって、なんの法的合法性も正義も持たないテロリスト組織にすぎません。
それを知ってか知らずか、うちの国の首相がパレスティナ自治政府とイスラエルに平和を呼びかける電話をしたそうです。

「岸田文雄首相は10日、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長と近く個別に電話会談を行う方向で調整に入った。政府関係者が明らかにした。イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが大規模な戦闘状態に陥っていることを踏まえ、イスラエルとアラブ諸国の双方とも良好な関係を持つ日本の立ち位置を生かし、停戦を呼びかける」
(産経10月10日)
<独自>岸田首相、イスラエル・パレスチナに停戦呼びかけへ - 産経ニュース (sankei.com)

おもわず吹き出しちゃいました。
だってパレスティナ自治政府はなんの力も権限もない映画の大道具みたいなところですよ、そんな所になにを期待しているのですか。
そりゃ、パレスティナ自治政府は、即時和平を働きかけようと答えるでしょうが、なんの力もありません。
パレスティナ自治政府とは、昔のPLOのことですが、かつてはソ連の後ろ楯でブイブイいわしていましたが、今は衰弱しきっています。
カネなし、武力なし、人材なしで、136カ国から承認された 「国家」だという看板だけが頼りですが、これもハマスに奪われかかっています。
パレスチナ自治政府 - Wikipedia

2007年にイランをバックにつけた新興勢力であるハマスと内ゲバを演じてコテンパンにされて以来、ガザ地区の実権はすべてハマスに「実効支配」されてしまいました。
ハマスはイランから潤沢な資金と武器、そしてイラン革命防衛隊の支援をもらって勝利を収めたのです。

「2007年3月17日、ハマースとの挙国一致内閣が成立したが、両者の抗争は断続的に続いた。6月11日、ハマースがガザ地区の占拠に及んだことで、アッバースは一方的に内閣の解散を宣言。ハマースを排除した新内閣(首相サラーム・ファイヤード)を組織したが、ハマース側は当然これを認めなかった。以後はパレスチナは、ガザ地区を領するハマースと、ヨルダン川西岸地区を領するファタハの分裂状態となった。2012年10月にヨルダン川西岸地区のみで実施された地方選は、ハマースがボイコットしたため事実上のファタハへの信任投票となったが、主要都市で敗北した」
ファタハ - Wikipedia

以後、ハマスはパレスティナ自治政府を無視して、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)からの支援を独占してきました。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA) |UNRWA

UNRWAは通常の支援機関とは異なり、パレスチナ難民キャンプの運営自体に関わっています。
教育や病院など900以上の施設を運営しており、道路などのインフラ整備なども実施しています。
その結果、UNRWAだけで3万人という大量の職員を雇用しています。すごい利権です。
もちろんハマスに忠誠を誓う者しか採用されません。

UNRWAは5地域で702校を運営し、年間約55万人のパレスチナ難民の子どもたちに無料で初等教育を提供しているほか、次の教育・訓練施設を運営しています。
教員養成校2校(ヨルダン川西岸およびヨルダンに各1校):約2000人が教育学を学んでいます。
技能・職業訓練センター8校:約8000人のパレスチナ難民が様々な分野の技能・職業訓練や高等教育を受けています。  

EUだけで毎年UNRWAに6億9100万ユーロ(約1080億円)もの援助をおこなっており、巨大な利権となっています。
日本もUNRWAに対し第6位の援助国で、3320万米ドルを拠出しています。
日本もEUに従うべきでしょう。

なぜならこのUNRWA利権を握っているのは、ガザ地区を「実効支配」しているハマスだからです。
日欧の「善意」は、ロケット弾に変わっているのですよ。

しかし近年、このハマスの「鉄の拳」による「実効支配」にも綻びが見え始めていました。
先月7月には、大規模な反ハマスデモが行われています。
もはやパレスティナ=ハマスという図式は崩壊しているのです。

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ガザ地区住民がハマスに抗議 生活苦から数千人がデモ参加(AP通信) - Yahoo!ニュース

「ハマスは"鉄の拳"でガザ地区を支配し、デモは禁止され、反対意見は封じ込められた。
 2006年に実施されたパレスチナ自治区の選挙で多数派となったハマスは翌年、ガザ地区を実効支配するに至り、イスラエルとエジプトは同地区を封鎖した。
 イスラエルにしてみれば、同国の生存権を否定するハマスを封じ込める必要があったが、封鎖はガザの経済を荒廃させ、失業率を急上昇させ、頻繁な停電をもたらした。
 現在の猛暑下で電力受給が逼迫、住民は1日に4時間から6時間の電力供給しか受けられない。
 湾岸の富裕国カタールから、ガザ地区の最貧困家庭に毎月100ドルが支給されるが、ハマスはそこから約15ドルの手数料を天引きしていることに対しても、デモ参加者はハマスを批判している」
(AP2023年7月31日)

この大規模テロ事件を受けて、EUはこのパレテティナ支援を凍結する見込みです。

「【ブリュッセル=辻隆史】欧州連合(EU)のバルヘリ欧州委員(近隣・拡大政策担当)は9日、パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃を受け、パレスチナ向けの支援を見直すと表明した。X(旧ツイッター)で、6億9100万ユーロ(約1080億円)分の資金援助について再検討する考えを示した」
(日経10月10日)
EU、パレスチナ支援見直しへ 10日に緊急外相会合 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

EUは、「イスラエルや市民に対するテロの規模や残虐性」を問題視しての決定だとしています。
今回の大規模テロは、いままでパレスティナに対して融和的でイスラエルと距離を置いていたEUも、イスラエルに連帯せざるをえませんでした。
エッフェル塔はイスラエルに連帯して国旗の色に染まりました。

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犠牲者を悼み、イスラエルカラーにライトアップされたエッフェル塔 - Sortiraparis.com
ヨーロッパにとっても、それほどまでにハマスのテロが残虐であって、現代のホロコーストだと考えたからです。

2年ほど前まで朝日はこんなノーテンキな記事を書いて、ハマスを手放しで褒めたたえていました。

パレスチナ自治区ガザ地区で続いた武装勢力とイスラエル軍との衝突は21日、停戦に入った。ガザ地区での最大勢力は、同地区を実効支配するイスラム組織ハマスだ。停戦前日の20日もイスラエルに向けてロケット弾を発射している。
米欧などが「テロ組織」とする一方、「エルサレムを守るために戦う」とのイメージを広め、存在感をさらに増している。
 イスラエル占領下の東エルサレムでパレスチナ人が退去を求められたことなどを機に、4月中旬からエルサレムなどで抗議デモが拡大。そうした人々の声を代弁するように、真っ先に動いたのがハマスだった。

「パレスチナの人々と聖地を守る」(ハニヤ政治局長)として5月10日、ロケット弾攻撃に踏み切った」
(2021年5月21日)
ハマスがガザで支持される訳 「盾」にされた市民だけど [ガザ情勢]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

まるで正義の味方、弱者のために立ち上がるハマスです。
いまでも同じことを書けますか、朝日さん。
ハマスがせっせとロケット弾を発射し、イスラエル住民を殺し続けるのは、戦っていないと存在理由がなくなるからです。
ユダヤ人を殺しまくって海に追い落とし、そこに晴れてパレスティナ国家を樹立するのが目的です。
そんなことは夢のまた夢だと百も承知しているから、戦うふりをしていただけのことです。

ただし、今回だけは違いました。
なんだパレスティナ自治政府と一緒じゃないかといわれないためには日夜ロケット弾をぶっ放していなければならなかったのですが、中東情勢を大きく変える可能性があるサウジとイスラエルの接近が現実のものとなったのです。
危機感を感じた最大のハマスのスポンサーであるイランが、ハマスの尻を蹴り上げたのです。
これについては次回に。

もはやイスラエル軍によるガザ地区掃討は時間の問題です。
日本政府にできることは、パレスティナ自治政府に電話することなどではなく、イスラエルへの連帯の意志を明確にすること、そしてそのうえでガザ地区の一般民衆に被害がでないように自制を要請することしかありません。
地上進攻は不可避だとしても、道義的に非難されるようなことが続くと国際社会の支援は終わります。
今の水道電気を全面的に切るような方法はあきらかに行きすぎで、戦時国際法違反です。
ウクライナが支援され続けているのは、彼らの戦いが法と正義に則っているからだということをお忘れなく。

ゼレンスキーは11日、訪問先のブリュッセルでこう述べています。

「ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の最初の数日を思い出す。すべての指導者はイスラエルを訪れ、人々を支援することを提言したい。何かしらの機関ではなくテロの攻撃を受けている人たち、そして亡くなっている人たちへの支援だ」
(NHK10月11日)【11日詳細】イスラエル 地上部隊の侵攻辞さず 死者2200人超に | NHK | イスラエル・パレスチナ

 


 

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コメント

今回のハマスの無差別テロ報道には抵抗感を感じまくっています。
下記リンクは公安が前から出しているハマスの記述です。
報道側がこれを、テロや武力革命に憧れや畏怖を抱いて読むから引用がテロ寄りになります。
そもそもこの公安カテゴリが国際テロ組織紹介で監視対象団体なのに。

https://www.moj.go.jp/psia/ITH/organizations/ME_N-africa/HAMAS.html

西岸地区にもハマス勢力は一定浸透しているので大紛争に発展する可能性はあります。
イスラエルは春からこっち、法関係の改悪抗議の大規模デモが何度も起きてごたごたしていました。
日本から見るとアイアンドームで国を守り国民皆兵、ワクチンも率先接種産めよ増やせよでグイグイ走る部分ばかり眩しいのですが、ほころびている部分もあり決して国民一枚岩ではなかったようです。

日本の声明を読むと、今回もハマスと自治政府を別々に、自治政府の正統性を押し出して、イスラエルへ向けてはハマスという組織を指して非難しています。
正当な地域統治者でないハマスに日本という国家が表でコンタクトを取る段階ではないと思っています。
現在の消極的中立の立場を池内恵氏も一定評価しています。
こうやって少しでも火が小さくなるよう働きかけるつもりのようですが、それで何ができるとも思えないのが正直な感想です。

あと重信房子の娘がTBSに出るようになったのかと、唖然としています。

最善の流れとしては形だけとはいえパレスチナ政府に「NOハマス」を宣言させることですね。
実行力はなくともきっちり決別宣言することの影響力は小さくないと思います。
まずこの一歩が無い限り今後も報復の応酬が繰り返され続けるだけでしょう。
逆にこれをうまく利用すればハマスをスケープゴートにして両国の関係改善化を一気に進む可能性も出てきます。

岸田首相の働きかけが呼び水になればいいのですけどね…

 日本のメディアのハマス上げ偏向は、我が国の中東研究の貧困が原因でしょう。
最近良くテレビに出る高橋和夫放大名誉教授、立山良司防大名誉教授、渡辺駿中東研究センター教授などの国際法感覚にとぼしい、誤った認識を連日垂れ流しているのがメディアです。
いわく、ここまで追い込んだイスラエルにも責任があるので、どっちもどっちなのだ、という論調を形成しています。
当然、国際的にそういう話は通用するはずがなく、問題はハマスの行った「テロ」なのであって、「国際法に照らしてどうなのだ?」という事。
テロを正当化するが如き論調が通用するわが国メディアは、頭がどうかしています。

簡単に「どっちもどっち」を当て嵌めるのは本当に雑。
ですがただひとつ。ハマス、イスラエル、両者とも人質や民間人を踏みつけにするのを止む無しとしているようで、テロリストもしくはテロリスト同然の者とは規律無き戦いになる厳しさ。
その点からは、黒い予想しか思い付かない…

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