岸田さん、いいかげんイランに忖度するのは止めなさい
日本がG7の枠組みからはずれて、ただ一カ国だけイスラエルテロに対する共同声明に参加しませんでした。
「イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム主義組織ハマスの戦闘をめぐり、米国のバイデン大統領と英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダの首脳が22日に電話会談した。6か国首脳は共同声明でイスラエルの自衛権を支持する一方、ガザの民間人を保護するための国際人道法順守を求めた。
声明はハマスによる人質2人の解放を歓迎し、残る人質全員の即時解放を求めた。食料や水、医療などの人道支援や各国国民のガザからの脱出支援に向け、緊密な連携を確認した」
(読売10月23日)
G7の6か国が共同声明、イスラエルに国際人道法の順守要求…米は地上戦「先延ばし」促したか : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
G7、じゃなかったG6の共同声明の骨子は三つです。
①ハマスのイスラエル攻撃をテロとして認める
②イスラエルの自衛権行使容認
③ガザ地区の民間人保護
どれひとつとして否定できるものではないはずです。
①のハマスをテロとして認めるのは、先だって日本もそれに同調したはずです。
②イスラエルの自衛権行使。たぶんこれでしょうか、岸田氏が中東諸国が怒るからと尻込みしているのは。
③当然のことですが、これも①②を踏まえるから、イスラエルに自制を求められるのです。
ハマスのテロを肯定するような輩の言うことにイスラエルは耳を貸しません。
日本が不参加の理由はこうです。
「松野博一官房長官は23日の記者会見で、主要7カ国(G7)メンバーのうち日本を除く6カ国が、イスラム組織ハマスと戦闘を続けるイスラエルの自衛権を支持する共同声明を出したことについて「6カ国は今回の事態の中で誘拐・行方不明者など犠牲者が発生しているとされる国々だ」と述べ、邦人被害が出ていない日本が加わっていない背景を説明した」
(毎日10月23日)
G7、日本以外の6カ国がイスラエル支持 政府「邦人は被害なし」(毎日新聞) - Yahoo!ニュース
うちの国は拉致されていないから乗らないよ、とのこと。
おいおい、日本は今年の広島サミットの首脳声明に、北朝鮮に対して拉致問題の早期解決を求めることも盛り込んでもらいましたが、今回の不参加の論法だと、他の6カ国は北に拉致されていないから、共同声明に参加しなくてもよいということになります。
オレは君らの拉致被害者救出には協力しないが、オレのほうはよろしく、ということです。
ご都合主義以前の問題で、G7に喧嘩売っているのでしょうか。
これはよもやハマスに気配りしたのではないと信じたいですが、イランに対して忖度したことは間違いありません。
21日に開かれた「カイロ平和サミット」にも上川外相を出席させています。
もちろんG7としてはただ一国、東アジアの閣僚級としてもひとりです。
このカイロサミットなるものは、イスラエルに対する非難で埋めつくされたものになるのは目に見えているので、出席すること自体がハマステロ肯定と受け取られても致し方ありません。
政府は、「しっかり日本のプレゼンスが示せたと考えている」(官房長官)などと寝ぼけたことを言っていますが、なにを言っているのやら。
同時期、あのマクロンですら、ISと戦った国際的同盟をハマスにまで拡大すべきだと述べています。
AFP
「【10月24日 AFP】フランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は24日、エルサレムを訪問し、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」と戦う国際連合を、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)を実効支配するイスラム組織ハマス(Hamas)にまで拡大すべきだとの考えを明らかにした。
エルサレムでイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相と会談したマクロン氏は、7日のハマスによる対イスラエル攻撃を受け、ISと戦う国々は「ハマスとも戦うべきだ」と主張した。
またハマスの奇襲とイスラエルの報復によって生じている危機をめぐり、イスラエル・パレスチナ和平交渉の「決然とした再開」が必要だと訴えた」
(AFP10月24日)
仏大統領、エルサレム訪問 「対ハマス連合」提案 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News
まことに正論です。
しかし、なぜかわが国だけはこの国際的動きに背を向けてイランの機嫌を損なうことのみに汲々としています。
これがサウジだったら大半の原油湯を買っていので低姿勢になるのはわかりますが、なんの経済的つながりもないに等しいイランに忖度して憚りません。
内に向かっては宗教独裁国家、外に向けてはテロの影の主役のような国、それがイランです。
そんなイランを「伝統的友好」と称して支えているのがわが国です。
米国は「苦い経験」を繰り返さないことを保証しなければならない - Mehr通信社 (mehrnews.com)
先日、安倍氏の弔問に訪れたラィースィ・イラン大統領と岸田首相との会談は「歴史的友好関係を確認した」そうです。
テロ国家と「友好関係」ですか。恥ずかしいこと。
- 岸田総理大臣から、安倍元総理大臣の逝去に対するライースィ大統領からの弔電に謝意を述べるとともに、長年にわたるイランとの伝統的友好関係の一層の強化に向けて協力していきたい旨述べました。これに対して、ライースィ大統領から、改めて弔意の表明があるとともに、日・イラン関係を様々な分野で拡大していきたい旨述べました」
(外務省9月21日)
日・イラン首脳会談|外務省 (mofa.go.jp) 。
なんですか、この「歴史的友好関係」とは。そんなものがあったのでしょうか。
いつまで『海賊といわれた男』時代の遺産で食っているのでしょうか。
よくイランを「親日国家」という者がいますが、とんでもない。
イランが日本のタンカーだけ攻撃しなかったとでも。
真逆です。イランはこともあろうに安倍氏が20年ぶりに訪れたその時を狙って日本タンカーを攻撃し、船員2名を殺害したのです。
産経
「イラン沖のホルムズ海峡近くで13日朝(日本時間同日昼)、東京都内の海運会社「国華産業」が運航するタンカーと台湾の石油大手、台湾中油のタンカーが攻撃を受けた。両社が発表した。国華産業のタンカーは砲弾を受け、2隻とも火災が発生した。日本人は乗船していなかった。安倍晋三首相のイラン訪問中に起き、日本政府などは確認作業を急いでいる。何者が攻撃したのか不明。イラン政府は関与を否定した」(産経2019年6月13日)
日本のタンカーに砲撃 イラン沖ホルムズ海峡付近 - サッと見ニュース - 産経フォト (sankei.com)
そして核合意に反してウラン濃縮を続けました。
すでに核合意は空文化していたのです。
だからトランプは核合意から脱退して、真剣にイランを核放棄させる道を選択したのです。
もっともバイデン政権になってから、米はイラン核合意への復帰のために交渉を続けてきており、8月15日になってイランから「近い将来に調印する下地が整った」との前向きな発言があった。いよいよ本当に復帰が実現するのかもしれない」としています。
いよいよ米がイラン核合意へ復帰か (iforex.jpn.com)
こういうやりとりと無縁に、日本は呑気に核合意ができるといいねぇ、という態度のようです。
「2 両首脳は、イラン核合意をめぐる最新の情勢を踏まえ、率直な意見交換を行いました。岸田総理大臣から、日本として核合意を一貫して支持してきており、関係国による核合意への早期復帰を期待する旨述べました。両首脳は、引き続き緊密な意思疎通を継続していくことで一致しました」
(外務省前掲)。
この会談でイランはこう述べたと、イランメディアは報じています。
「さらに、全世界の非難の矛先となっているアメリカの一方的かつ違法な核合意離脱にも触れ、「核問題に関するわが国の表明は、完全に論理的で擁護できるものだ」と語っています。
そして、「わが国として、1つの公正な合意を成立させる用意がある」とし、「これまでのアメリカの悪い経歴からして、過去の苦い経験が繰り返されないことの保証を獲得する必要がある」と述べました。
加えて、イランの地域内における対話ややり取りが拡大発展しつつあるとし、「地域外の国が地域の問題に口出しせず、地域の課題を地域外の勢力に任せないことが、このような対話が成功する条件だ」としています」
(pars Today9 月22日)
イラン大統領が岸田首相と会談、「日・イ関係への米の制裁の影響阻止を」 - Pars Today
岸田氏がなんと答えたのか外務省は公表していませんが、イランは米国に核合意に介入するなと言っているのです。
それどころか「地域外の国がこの地域に口出しするな」とも言っています。
要するに、中東地域においてイランの革命防衛隊の好きにやらせろと、核を作るのを邪魔するな、西側各国は指をくわえて見ていろということです。
こんなことを平然と言わせるとは、日本の立ち位置はどこにあるのでしょう。
核合意を空文化して核武装に邁進するイランか、それを阻止しようとしている米国なのか。
案の定、イランメディアはこのようにこの日イ首脳会談を伝えています。
「ライースィー・イラン大統領が、米ニューヨークにて日本の岸田文雄首相と会談し、イランと日本が旧来から友好関係にあるとした上で、「率先的な方策の模索により、日・イ関係に対する米の一方的・圧政的な制裁の影響を防ぐ必要がある」と語りました」
(pars Today9 月22日)
イラン大統領が岸田首相と会談、「日・イ関係への米の制裁の影響阻止を」 - Pars Today
岸田氏とイランはこの首脳会談で、米国の「一方的・圧政的制裁」の影響をはねのけることで「両国関係の強化が確認された」ようです。
こんな首脳外交なら、しないほうがましというものです。
今回、岸田氏は両サイドにバランスをとってプレゼンスをみせることで、なんらかの妥協を探るということのようですが、ハッキリ言ってあげれば岸田氏の外交能力ではむりです。
これをやりたいのなら、安倍氏並の存在感と戦略性、ついでに愛嬌も備えることですが、全部岸田氏にないものばかりです。
内政で減税も貫徹できず、従兄弟の税務会長には頭が上がらないようなふにふにゃな人物が、中東という修羅場を仕切ろうなんて百年早い。
ただの二枚舌外交に終わって、どちらからも嘲笑を買うだけのものとなるでしょう。
安倍外交は輝きに満ちたものでしたが、北方領土交渉とイラン外交のふたつは明らかな失敗でした。
失敗を継承する必要はありません。
« ノーベル平和賞がイラン人権活動家に与えられた意味 | トップページ | 「イスラエルの核」という複雑なパズル »
岸田に呆れることは何度もあったけど今回は嘲笑と侮蔑も込めましょう
イランとお友達ムーブを止めて日本でテロが起きたらどうしようとか思ってるのかな
距離を置くでもなくまさか接近するとは
やってることはロシア侵攻初頭のマクロン以上のクソ阿保
もうやってしまったことは取り返しのつかないことなんで、右往左往しながら醜態晒すがいいさ
投稿: しゃちく | 2023年10月25日 (水) 10時35分
常任理事国であるロシアの侵略との違い、自衛権の範囲の解釈、アラブ社会との歴史的な関係性、それらを斟酌したとしても岸田政権のありようは異様に見えます。
「テロリズムに優しい日本」どころか、「テロ支援国家の片棒を担ぐ日本」との印象さえ植え付けかねません。
拉致被害者を取り戻せない理由の一つがここにあり、2.26事件で昭和天皇がおられなければテロリズムが成功していただろう歴史的体たらくに共通するものがあります。
いずれにしろ大局を見誤っている事は確かだし、これで有事のさいに国際協力を得、果ては日本国民を守れるのか? はなはだ不安になります。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2023年10月25日 (水) 15時09分
管理人さんや山路さんが仰ることに共感できるのですが、それでもなお、まことにモヤモヤすることもあるので、思考の途中ですが敢えて書いてみます。
テロリズムも違法な武力行使による現状変更も是認しないのは当然の前提として、カタールが「イスラエルに無条件の青信号や殺しのライセンスを与えるのは支持できない」と危惧する(実際イスラエルは報復戦略成功のためなら犠牲が出ても止む無しと考えている)ような面から、G7支持の中でイスラエルが国連憲章に定める自衛権の範囲を逸脱(民間人の大量巻き添えなど)するようなことにでもなり、そういう解決法を是認すれば、それが台湾有事に反映された時どうなるか、と考えることもできます。
説明能力が適切であったかは別として、あらゆること/より多くを想定して今回の共同声明に追随しない選択をしたのであれば、我が国として現状合理的な面があるとも思えるのです。
対イランの窓口を中共だけに握らせることは、果たして先々我が国にとって大丈夫なことか、という考え方もあり得ます。
「法の支配」を訴えれば、イスラエルによる入植活動にも国際法違反があるとする従来の我が国と欧州諸国の主張にも言及しなければならないので、今回我が国からは「法の支配」という言葉を使っていない(21日日経)ということもあり、本当にモヤモヤして、より普遍的な価値観を維持しながら、国際社会でいつでもあり得る「梯子を掛ける外す外される」「優先順位が上がる下がる」「わかっているが触れない」を想定して、それに耐えて行ける力をつけていく不断の努力を続けられる我が国であれたら…考え続けることになんとか付いて行ける己でありたい…と考えるばかりです。
上記してきたこと考えさせて頂いた、池内恵氏、篠田英朗氏、JSF氏それぞれのご意見も、見逃さない方が良い要素を持つと思うのです。
好む好まないに関わらず他国他者と互いに、信じるけど信じない、依存するけど依存しない、それを按配して生きて行くって、今の我が国には背伸びが過ぎる難しいことなのかもしれませんが。
投稿: 宜野湾より | 2023年10月25日 (水) 17時04分
私は自身の数少ないユダヤ系&アラブ系との付き合い経験や周囲の経験談を省みると、X上で池内恵氏が炎上上等で書かれている中立無難論が妥当だと考えています。
投稿: ふゆみ | 2023年10月25日 (水) 17時12分