イスラエル軍の「病院空爆」はデマでした
ああ、やっぱりそうでしたか。
イスラエル軍の「病院空爆」はデマでした。
当時、どう報道されていたか、見てみましょう。
「イスラエル軍による爆撃が続くパレスチナ自治区ガザ地区の保健省は17日、「ガザ市にあるアフリアラブ病院が同日夜に空爆され、患者や医療従事者、避難民ら、少なくとも500人が死亡した」と発表した。現時点で、詳しい状況はわかっていない。バイデン米大統領は18日、イスラエルを訪問するが、ヨルダン行きは延期した。エジプトのシーシ大統領らとは電話で協議するという。
保健省は声明で「イスラエル軍が大虐殺を行った」と非難した」
(朝日10月18日)
ガザの病院で爆発、患者ら500人以上が死亡 イスラエルは空爆否定 [イスラエル・パレスチナ問題]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
ガザの病院空爆で500人死亡 | 時事通信ニュース (jiji.com)
申し訳ていどにイスラエルの反論も載せていますが、イスラエルが空爆で500人殺害したと断定しています。
これが決定的となり、それからはとめどなくガザで起きているのはイスラエルの大虐殺だ、「快楽殺人」だということになっていったのです。
ちなみに「快楽殺人」などというような反ユダヤ意識に満ちたことを口にしただけで、社会的生命はオシマイです。
ところが、先日人権団体のヒューマンライツウォッチ(HRW)がこの事件の詳細な報告書を出しました。
HRWはリベラル系団体ですが、こういう一本筋が通っているところが欧米リベラルの美質です。
冒頭でHRWはこう結論づけています。
ガザ地区:10月17日、アル・アハリ病院爆発事件の調査結果 |ヒューマン・ライツ・ウォッチ (hrw.org)
「(エルサレム)-2023年10月17日、ガザ地区のアル・アハリ・アラブ病院で多数の民間人が死傷した爆発は、パレスチナ武装勢力が一般的に使用しているようなロケット推進式弾薬が病院の敷地に着弾したことが原因である、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた」
そしてガザ保健省(ハマスですが)がなんの調査もなしに出してきた500人死亡説についてもHRWはこう書いています。
「同日午後6時59分、ヒューマン・ライツ・ウォッチが決定的に特定できていない種類の弾薬が、病院の敷地内の舗装された場所、駐車場と、イスラエルの攻撃から身を守るために多くの民間人が集まった景観のある地域に着弾した。ガザ保健省は、471人が死亡し、342人が負傷したと報告した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この数字を裏付けることができなかったが、この数字は他の推計値よりも著しく高く、死者数と負傷者数の比率が異常に高く、現場の被害状況と不釣り合いに見える」
(HRW前掲)
このハマス保健省が出した500人説は、数十倍に盛った数字だということは当時から言われていました。
この爆発物はあまり人がいない駐車場に落下し、小さいクレーターを作っただけです。
Xユーザーのネイサン・ルセル X (twitter.com)
近寄るとクレーターの小ささに驚きます。
Live updates: Israel-Hamas war rages as President Biden arrives in Tel Aviv (cnn.com)
このクレーターについてHRWは「長さ約90cm、幅約60cm、深さ約30〜40cm」と計測していて、ちいさな爆発であったとしています。
メディアはハマスの発表どおり「病院空爆」と報じましたが、病院の建物にはまったく影響を及ぼしていません。
HRWは事故直後にこの現場を訪れていますが、ハマス保健省はこの爆発物の残骸を隠匿しました。
しかし多くの物証からこの爆発物はハマスが多用しているロケット弾だとしています。
「爆発に先立つ音、それに伴う火球、クレーターの大きさ、それに隣接する飛び散りの種類、クレーターの周囲に見える破片の種類とパターンは、すべてロケットの衝突と一致している。
ヒューマン・ライツ・ウォッチが入手した証拠は、イスラエルがガザ地区で広範囲に使用したような大型空中投下爆弾の可能性を極めて低いとしている」
(HRW前掲)
またこのとき起きた大規模な車両火災は、ロケット弾の燃料が車両に引火したために起きたとしています。
「病院の駐車場の車への大規模な火災被害は、高性能爆薬弾頭の爆発単独と矛盾する。火災は、ロケット推進剤の燃焼によって引き起こされ、それが敷地内に存在する燃料やその他の可燃性物質に広がり、発火したと思われます」
(HRW前掲)
また呆れたことに、ハマス保健省はこの証拠を当初は公開するとしながら、今にいたるも公開するどころかこんなことを言い出す始末です。
「ハマスの高官は、残骸は「間もなく世界に公開される」と述べた。事件から1ヶ月以上経った今でも、このようなことは起こっていません。ハマス幹部で、ハマス主導のガザ統治機構の副大臣であるガジ・ハマドは、10月22日、メディアに「ミサイルは水に塩を溶かしたように溶けた。気化しています。何も残っていない」ヒューマン・ライツ・ウォッチは、弾薬のかなりの部分が爆発しても、たとえ弾薬の一部がバラバラになるように設計されていて、熱損傷によって認識できなくなる可能性があるとしても、通常は爆発に耐えられると指摘した」
(HRW前掲)
なんと証拠物件は溶けたんだってさ(爆笑)。
このようないいかげんなハマスの発表を鵜吞みにしてセンセーショナルに「イスラエル病院を空爆、500人死亡」というデマを、西側メディアやグテーレス事務総長までが騒ぎ立てて「事実」としてしまいました。
そして一気にイスラエルのに対する同情は消え失せ、イスラエルに対する憎悪の嵐が吹き荒れます。
まさにそれに点火したのが、この「病院空爆」だったのです。
常に冷静な客観性を忘れないJSF氏このように述べています。
「病院爆発」はイスラエル軍の仕業ではなかったとしても、結果として国際社会のイスラエル批判の声はその後、急速に高まっていった。その意味で、「病院爆発」はガザ情勢でゲーム・チェンジャーとなったともいえるわけだ。ただし、そのゲームチェンジャーは事実に基づいて生じたというより、偏見と誤報によって生じたといえるわけだ。換言すれば、戦況も政治情勢も時には誤報と偏見によって大きく動かされることがあるわけだ。事実が判明した後、「当時の情報は間違っていた」と謝罪しても、名誉回復には少しは貢献するかもしれないが、状況を元返しにすることはできない。
もし10月17日の「病院爆発」の直後、パレスチナ人武装勢力が発射したロケット弾の誤射によるものだということが分かっていたならば、ガザ地区のパレスチナ人はどのように反応しただろうか。ひょっとしたら、ハマス批判の声が飛び出したかもしれない。そうなれば、ガザ紛争はまったく現在の状況とは異なった展開となったかもしれない……。」
10月17日のアル・アハリ病院爆発はガザ側のロケット弾の発射失敗:国際人権団体HRWの調査報告(JSF) - エキスパート - Yahoo!ニュース
まことにそのとおりです。
イスラエルに濡れ衣をきせることでまんまとハマスは世界世論を味方に着けることに成功したのです。
そして今は、この病院の下にハマスのトンネルは「なかった」「あっても使っていなかったか、イスラエルが掘ったものだった」ということになるようです。
ちょっと待って、そりゃ早いでしょう。
まだなにも第三者調査はなされていないのですよ。
「病院空爆」と断定して国際世論をミスリードしたように、「トンネルなどなかった」というのは早すぎはしませんか。
しかしいまや、こんなことを言うだけで「限界右翼」とレッテルを貼られる始末です。
とまれ「イスラエル軍が空爆した」という印象は確実に刻み込まれたのです。
この「印象」は巨大です。
そう言えば、かつて新型コロナの時にテキトーなことを言っていた人は大勢いましたね。
毎日出てきたあのおばさんとか、なんとかクリニックの医者とか、国民全員にPCRしろと叫んで政府を追及した野党やキャスターなど、終わると自分が言ったことなどキレイサッパリ忘れて、新たな「疑惑」を追及しているようです。
あれは正しかったのか、誤って世論をリードしてはいなかったのか、と一度立ち止まればよいのですが、彼らにらはフィードバック機能がないようです。
今回も状況が自分の理念や好みに合うと大喜びで、ろくにわかってもいないうちから騒ぎ立てる輩が大勢出ました。
それが大学教授や専門家で、中東はオレが一番知っていると自称している連中だから困ります。
彼らは批判されると逆上して暴言を吐き散らし、訴えてやると言い出しています。
言論を法的訴訟にすり替えること自体、言論の敗北なのですがわかっていないのでしょう。
彼らには、Keep Calm and Carry On と言ってあげましょう。
最近のコメント