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2023年11月14日 (火)

ハマスを作ったイラン革命防衛隊

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ほんとうに不思議です。
イランと「伝統的友好」を保つことが、日本の安全保障につながるという岸田氏の「バランス外交」です。
これは日本こそが、非西欧諸国と違ってG7とイランの仲介役になれるという錯覚にあるようです。
この考え方は日本の中東屋と国際政治学者のほぼ全部の考え方のようで、外務省のアラブ語スクールもその一部です。
岸田氏当人は、このアラブ語スクールと英語スクールの間で右往左往しています。
この間の日本政府の対ハマス対応の右往左往はこのためです。

はっきり言ってあげましょう。幻想にもほどがあります。
10月7日のテロ攻撃以降、真っ先に疑いの目を向けられた国はどこだったでしょうか。

イランです。イランこそがハマスを作ったのです。
今回のハマスの越境作戦は、イランの支援なくしては考えられませんでした。

黒井文太郎氏はこう述べています。
ハマス・ヒズボラを支えるイランの危険な謀略機関「コッズ部隊」:黒井文太郎 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト (fsight.jp)

「そもそも10月7日にハマスともう一つのガザの民兵組織「パレスチナ・イスラム聖戦」(PIJ)がイスラエルを奇襲したことが原因だが、奇妙なことがある。
ハマス軍事部門「カッサム旅団」は、もともとそれほど戦闘力の高い集団ではなかった。かつては完全な地下組織で、せいぜい少数メンバーがイスラエルに潜入して自爆テロを行うくらいだったし、ハマスがガザを支配するようになって部隊化した後も、イスラエル軍の追撃を回避するため常設の軍隊とはならず、身元を秘匿した数人の「細胞」を最小単位に編成する秘密組織スタイルがとられた。
組織的な戦闘訓練はさほど行われず、大人数の部隊単位で緻密な作戦を遂行するような体制も作られなかった。侵入してきたイスラエル軍と戦う際も、せいぜい地下トンネルを駆使したゲリラ戦を個別の小部隊が行う程度で、緻密な作戦に則った統制のとれた戦いはできなかった」
(黒井前掲)

ハマスは「福利厚生機関」であり「国連職員」だという解説をいやというほど聞かされたと思いますが、半分は事実です。
事実゛彼らの多くはふだんは「国連職員」であり民間人の顔をして暮らしているハマスの民兵です。
そしていまのような時になると銃でイスラエル兵を撃ってきます。
一方、彼らの恒常的な軍事部門は「アル・カッサム旅団」です。
いま、シファ病院付近でイスラエル軍と戦っているのがこの連中です。

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ガザで交戦するハマス戦闘員 アル・カッサム旅団が映像公開(AP通信) - Yahoo!ニュース

いま日本のメディアはイスラエル軍がシファ病院を直接攻撃しているかのように報じていますが、明らかな誤報です。
まだイスラエル軍はその前哨地点の掃討をしている段階です。
それはハマスの公開した上の動画でも明らかです。

「最終的には、シファ病院での戦闘が鍵とのことだが、実際には、まだ周辺にあるハマスやイスラム聖戦の拠点の一掃が終わっていないのである。イスラエル軍は、病院周辺だけでなく、学校やモスク、民家周辺で、ハマスやイスラム聖戦の拠点やトンネル、武器庫数十ヶ所が摘発・破壊する作業が続けている」
ガザ北部戦闘でイスラエル兵7人戦死:シファ病院で起こっていること 2023.11.13 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

このアル・カッサム旅団は、もともと訓練された戦闘員ではなく、彼らにできるのは個人の過激な人物がイスラエルに潜入して自爆攻撃を仕掛けるにとどまっていました。
少数のローンウルフ型テロリストの集まりであって、今回の大規模な作戦は不可能でした。
それがわずかの数年で今回の越境攻撃を実施する力を持つまでに成長します。

今回テロは実に巧妙で、複雑な軍事行動をとっています。

「たとえばイスラエル側の盗聴を逆手にとって、故意に相手を油断させるような会話を聞かせるなど、徹底した偽装工作で自分たちの作戦の準備を隠した。イスラエル側の警備の弱点を研究し、奇襲と同時にイスラエル側の電話通信施設をドローンで破壊し、隔離壁を監視する無人カメラや遠隔操作機関銃を封じた。壁の爆破から襲撃、制圧、人質拉致などの手順も事前に充分に訓練されていた。2年前までのカッサム旅団とは違い、戦術レベルが大きく向上していたのだ」
(黒井前掲)

このハマス強化をしたのがイランのイスラム革命防衛隊の対外工作機関「コッズ部隊」でした。
コッズ部隊こそが、イランの対外政策の要です。
コッズ部隊は、正規軍とはまったく違う指揮系統を持ち、人員、予算、装備のすべてがイランのトップからでる仕組みになっています。
このコッズ部隊の司令官こそがソレイマニでした。

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https://www.sankei.com/world/news/190612/wor190612...

では、イランは誰が対外戦略を決めているのでしょうか?
最終的な決定権者は、政治と宗教の権力がひとつのこの国ではこのもちろんハメネイというイスラム坊主です。
ハメネイがトップに君臨し、その直系の指揮下にあるのがイスラム革命防衛隊であり、対外工作期間のコッズ部隊です。
このコッズ部隊こそ、イランのイスラム革命の牙とでもいうべきもので、これまで長年にわたって多くの外国の武装勢力を支援してきました。

国軍と革命防衛隊は、比喩が正しいかどうか分かりませんが、ナチスドイツにおける国軍と親衛隊の関係に似ています。
革命防衛隊はナチス親衛隊(SS)から発展した武装親衛隊(Waffen-SS) のようなもので、国軍並の装備と兵員を抱えています。
このいかにも革命国家らしい組織は、イラン革命の時に故ホメイニ師の親衛隊として発足しました。
ナチスで言えば初期の突撃隊(SA)時期に革命の荒事を一手に引き受け、1979年に権力を握った後は反ホメイニ狩りの急先鋒として親衛隊化しました。

そしてイラン・イラク戦争(1988年~88年)で、前線に国民を動員する働きをし、優先的に予算を与えられて国軍をしのぐ軍事勢力として武装親衛隊化しました。
実はイラン革命の指導者たちは国軍がパーレビのものだったためにまったく信用しておらず、革命防衛隊を対抗勢力に仕立て上げて、国軍の監視をさせるつもりだったようです。
この関係はいまだに変わらず、国軍と革命防衛隊はいまでも水と油、犬と猿の仲です。
現在この革命防衛隊は、ハメネイ最高指導者が君臨する「最高指導者室」の直系です。

コッズ部隊は、ハマスやフーシ、ヒズボラなどの過激派にただ資金や武器を渡すのではなく、テロや戦闘の訓練をし、組織拡大の手法などまで細かく指導しました。
この訓練の過程で、各国のテロリストはイランを崇拝し、自国でもイスラム革命を起こそうと決意するようになります。

2020年度の米国務省報告書によると、イランはハマスやパレスチナ・イスラム聖戦、パレスチナ解放人民戦線(PFLP)といった過激派組織に年間約1億ドルを提供していました。
2022年、ハマスの指導者イスマイル・ハニヤは公の場で、同年イランから約7000万ドルを受け取り、それをロケット弾製造に使用したと述べています。

今回の越境作戦に当たって、ハマスがコッズ部隊に指導や協力を求めなかったとは考えられません。
おそらく水面下でハマスの作戦に関与し、指導し、武器資金を提供していたとみるのが妥当です。
ただしそのことをイランの表の顔であるイラン外相に聞いても知らないと答えるでしょう。
命令系統が違いますから。

このようなあきらかな共犯者であるイランと「伝統的友好関係」を結んでいる、わが国はイランとG7の架け橋になるのだと言っているのですから、なんともかとも。

 

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コメント

「日本こそ仲介役」論を掲げている人は結構多そうですね。むろん幻想の極みですが。
 拉致された自国民を取り戻せず、奪われた領土も取り戻せず、果ては新たに自国民を拘束され、領土を奪われつつある我が国如きに他国のいざこざを解決する能力がないのは明白です。あるのなら自分事から解決すべきでしょう。
 イランとの「伝統的友好関係」というのもいい得て妙です。一昔前ならいざ知らず、イランにとって憎き米軍と連携し、制裁に参加している今は「友好」と思っているのは日本だけで、イランからはせいぜい「自由主義陣営の最も弱い環」程度の認識しかないと思います。

うーん、日本政府の対応はイランというよりはサウジやエジプト、ヨルダンらアラブ諸国への配慮に見えますね。

アラブ諸国はハマスとイランの関係を理解しているのでハマスへの攻撃自体は否定していませんが、空爆による民間人への犠牲者が出ることには懸念を示しています。

日本はイギリスやドイツと違ってイスラエルへの負い目があるわけではないし、是々非々の態度でも良いと思いますね。
それにアメリカだって蒙昧な若者たちが停戦を訴えているあたり、イスラエル全面支持の地盤がぐらつき始めていますし。

 岸田さんには外交における戦略性がないんですね。
安倍政権は穏健派のロウハニとは良かったが、対米強硬派ライシ大統領になってからは茂木さんからも祝辞を送っていません。
岸田さんの「一貫した平和外交」とやらでは、新体制のイランがどうなるかが全く見えていなかった。

それと、テロリストにモノを与える事を何とも思わない日本リベラルの悪い習性がモロに出てます。
まず初めにハマスのテロ行為を激越に糾弾すべきで、しかる後にイスラエルの過剰防衛にクギをさすならまだわかります。
ところが最初に「双方に自制を求め」、しかる後にハマスのテロ、イスラエルの自衛権を認める、となった。

誰がどう見ても米国とのすり合わせで軌道修正したとしか見えず、インドが何故にイスラエル支持を表明しているも岸田政府には分からんのだったんでしょう。
中国は国際連携の「「弱い腹」はまさに日本にあり」を再認識したんじゃないですかね。


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