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2023年11月 6日 (月)

ただの呼び方では済まない

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東海大学国際学部教授アルモーメン・アブドーラ氏が、面白い記事をニューズウィークに書いていますのでご紹介します。
アブドーラ氏はエジプト人ですが、パレスチナ自治政府アッバス議長などの通訳を務め、元サウジアラビア王国大使館文化部スーパーバイザーの肩書をもってきることからわかるように、立場は「アラブ」側です。
そのアブドーラ氏が、日本メディアのハマステロについての言葉の使い方について疑問を呈しています。

アブドーラ氏はこう述べています。

「パレスチナとイスラエルとの武力衝突について、日本のメディアは真逆の意味を伝えている。問題を言語的に表現していく上で、客観を主観から切り離さず当事者視点を重視しない傾向がある。わざとではないと思いたいが、多くのニュースや報道番組に使用される言葉を見て、意図的に事実を曲げて伝えているとしか思えない」
(ニューズウィーク11月4日)
イスラム組織、イスラム勢力、イスラム聖戦...日本メディアがパレスチナ報道に使う言葉を言語学的視点から考える|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp) 

実は私はこの冒頭の一文を読んだ時、もう読むのを止めようかと思いました。
「イスラエルとハマスの武力衝突」ではなく、「ハマスのテロに対するイスラエルの反撃」とすべきですし、ここで氏がハマス=パレスチナと一括りにしているのも引っかかりましたが、ま、いいかと読み進めるとこれがなかなか面白い。

まずアブドーラ氏はメディアがひんぱんに使う言葉の「力」をこう定義します。

「テレビやラジオ、ネット配信動画などを通じてそれぞれの国民に実情を語りかける。そこで最大の武器となるのは、言葉である。言葉には、出来事に対する人の意識や認識を誘導する力がある」
(NW前提)

いやまったくそのとおり。日本のメディアはろくにその歴史背景も実態も調べずにテキトーと言葉をつなぎ合わせて枕言葉に使い回して、あらぬ方向に印象操作しています。
これについては、先日、私も噛みつきました。
ハマスはパレスティナとイコールではない: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

アブドーラ氏もこれはおかしいと感じたようです。

「イスラム組織、ハマス、大規模攻撃、実効支配、拉致、軍事衝突、ガザ地区、イスラエル軍、カッサム旅団、戦闘員、人質、テロ行為、流血、越境攻撃、地上侵攻 など」
(NW前掲)

氏は「言葉の意味というのは、主観的視点と観点が織り交ざってできるものである。つまり客観的で一般的な意味から出発して考えるのではなく、個人的で主観的な意味から出発して考えようとするものだ」としています。
日本のメディアの場合、主観が混入した言葉を使って状況を伝えようとするから、全体が狂ってきます。

たとえば、ハマスについて頻繁に使われる接頭語は「イスラム組織」です。
まぁアブドーラ氏はエジプト人ですから、ハマスの母体はエジプトから発生した「ムスリム同胞団」だと知っているはずですから、「イスラム組織」と一般化されるのはいい迷惑だという気分はわかります。
「イスラム組織」は世界全体で19億人いるといわれるムスリムの世界には星の数ほどあるわけで、揃って19億ハマスなわきゃありません。
それはない、とアブドーラ氏は言います。

「そもそも、ハマスの正式名称はアラビア語で「イスラム抵抗運動」であり、その頭文字から構成されたものだ。「情熱」という意味の単語にもなる。ところが、日本のメディアは活動内容を示す最も重要な部分である「抵抗運動」をとり、代わりに「組織」を当てている。
そもそも「イスラム組織」という表現は造語だ。(略)
造語にはメリット・デメリットの両面があるが、その言葉で伝えたい意味が見えなければ、かえって理解を阻むことになる。イスラム組織やイスラム聖戦、イスラム勢力などのように「イスラム●●」と安易につなぎ合わせて新しい言葉を作り出すのは避けるべき」
(NW前掲)

そう、「イスラム組織ハマス」という枕詞は、日本メディアの造語なのです。
「イスラム」という宗教概念と「ハマス」を勝手に接着してしまったもので、どうしてもイスラムをつけたいなら正式名称である「イスラム抵抗組織(ハマス)」とでもいうしかありません。

長いって。いえ、ひと頃まで「朝鮮民主主義人民共和国」なんてジュゲムジュゲムの国名を使っていたことを忘れましたか。
いまやただの「北朝鮮」か、あるいはさらに短縮して「北」と呼んでいます。
北の本質はなにひとつ変わらないのに呼び方だけ変わったのです。
なぜでしょうか。認識が変化したのです。

かつて産経を除くすべてのメディアは、揃いも揃って北を「地上の楽園」と絶賛し、拉致などないものとして扱いました。
だから「日朝友好」のためには、批判的含意がある「北」などと呼んではならなかったのです。
「地上の楽園」を侮辱するな、というわけです。いまから見るとなんとも珍妙ですらありますが、当時は高級インテリの皆さんが全員引っかかりました。
しかし北が拉致を認め、3代目が狂ったような核開発に邁進し、内情が分かるに連れて、やっと遅ればせでその正体に気がつきました。
いま「イスラム組織ハマス」「福利厚生組織のハマス」と呼んでいるメディアが、何年か後になんと呼ぶのか見てみたいものです。

もしメディアにテロに対して反対の意志があるなら、ここは「テロ組織ハマス」と言うのが正解ですが、日本政府と一緒で「アラブ世界」全体を敵に回しそうでコワイ。
いや、「イスラム組織」と一般化するほうが、ムスリムはみんなテロリストだというようなもんでよほど危ないんですがね。

アブドーラ氏はこうも言っています。

「処理する情報が複雑で難解であればあるほど、より多くの注意力や集中力、認知的労力が必要になり、それ以外の情報に注意を向けることは困難となる。そのため、メディアが伝えようとしているメッセージを理解するのを途中で放棄してしまうことが多い。例えば、意味不明な言葉「イスラム聖戦」や「イスラム組織」などのような視点や観点が強い言葉を理解するのには、認知的労力が必要となる」
(NW前掲)

まったくそのとおりなんですが、氏は言語学者なのでたいそう分かりにくい文章なうえに、氏のスタンスは「アラブ」ですから、理解するのに「認知的労力」が必要です。
とうぜん、私のように「反テロリズム」「イスラエル原則支持」を明確にしている立場とはかなり異なっています。
氏はハマスのテロも「レジスタンス」と呼ばず、なぜウクライナをそう呼ぶのかおかしいと言っていますが、イスラエルはパレスチナを占領していませんが、ロシアはしていることをお忘れでしょうか。
ハマスを「レジスタンス」と呼んでしまえば、イスラエルがガザを軍事占領していることになってしまいます。
イスラエルは9年前にガザから撤退していて、現在は軍事支配の事実はありませんが、メディアにはいままで一貫してガザを軍事占領していたような報じ方がたびたび出てきます。

さて、改めて私の立ち位置を表明しておくと、私は一貫してこのハマスのテロに関してテロリズムに反対する立場から批判しています。
したがって、中東学者が言うような「テロにも理がある」などという立場には立ちません。
このような立場は、実はハマスの代理人、ないしは代弁者であることを自分から物語っていますが、日本のメディアは平気でしゃべらせています。

なんせTBSに至っては、テロの女王であった重信を礼賛する娘を番組に出して、中東情勢を「解説」させるようなところですからね。
これなんかBPOものですよ。

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“天井の無い監獄” ガザ地区に目を伏せた世界の“ダブルスタンダード”【報道1930】 | TBS NEWS DIG (2ページ)

ハマスなるテロ団体は一掃されるべきであって、「ハマスを攻撃してもまた蘇る。暴力の連鎖が始まる」などとしたり顔をしても仕方がありません。
いま彼らの暴力を一掃できないなら容認したも同然だからです。

このように日本のメディアの姿勢はハマス側に偏っており、登場する中東専門家たちはハマスとパレスチナを故意に一体的にとらえて、「弱者パレスチナ人と支配者イスラエルの対立」という構図でしゃべっています。
そしてそこから出るお約束のキャンペーンは、「ガザの子供を救え」という「人道」であり、イスラエルの支援をしている米国への非難です。
これはメディアの一貫した反米姿勢と相性がよいとみえて、いつの間にかイスラエルと米国への糺弾劇にすり替わっています。

ハマスが犯した罪はしっかり償わせるべきです。
彼らが「イスラム軍事組織」だというなら、そのテロに使われる軍事力をもぎ取るべきです。
ハマスに武器弾薬、資金、アジトを提供していた国であるイランとカタールは糺弾されるべきです。
「ハマスはガザの福利厚生組織」だというなら、ガザから一掃して正常な行政が執行すべきです。
「ハマスがガザの国連機関を担っている」というなら、国連はハマスの影響を完全に断つべきです。
今の「国連」、とくにUNRWAや国連人権高等弁務官は、ガザがハマスのテロの温床となるのを放置し続け、いまやハマスの代弁者に成り下がっています。

一方、いかなるテロリズムも批判されるべきであるからこそ、それはイスラエルに対してもあてはまります。
したがって、国際人道法に反するガザ市民への過剰な攻撃は、強く批判されるべきです。
私はイスラエルを「原則として支持」と言っているのは、是々非々で批判すべきは批判するという立場に立つからです。
この間のイスラエルの空爆は明らかに行き過ぎた反撃であることは紛れもなく、地下にハマスのテロ司令部があるとしても、このような一区画まるごと廃墟とするような爆撃を合理化できません。
これを許すと、イスラエル市民に対してのテロもどっちもどっち、死んだ数はガザのほうが多い、という今の世界の風潮に抵抗できなくなります。

 

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コメント

 NWの記事読ませてもらいましたが、言語学者のくせに悪文の典型のように読みづらかった。
正確な言葉遣いをするのは当然としても、それにかこつけてテロ組織(外務省HPによる)を抵抗組織と呼んで、ハマスの蛮行の意味を薄める意図でもあるのかと疑います。

そんな事よりも、お国(エジプト)はなぜ人命の緊急を要するとされるガザのパレスチナ人を受け入れないのか? 日本外務省によれば「パレスチナの大義」のために受け入れられない」と言っている由だが、大義のためにパレスチナ人が死ぬのはいいのか?
そういう事を率直に書いて、我々に知らしめてもらいたいものです。

祝"アレ"!苦節38年、ついに阪神タイガースが日本一に返り咲きました! もうファンの浮かれっぷりはアホそのものですわ。おそらく、日本人の半分はアホです。そんな大勢のアホを相手にして商売する以上、マスゴミとしては、難解なパレスチナ紛争を正確に伝えるよりも、受け手がアホなんで、単純化して報道しないと視聴率が取れないんだと思います。アホには、善悪二元論が一番しっくり解りやすいし、感情移入できてセイギの味方になった気分になって心地良いんですわ。

アホは社会の上層には少なくて下層に多く分布するのはその能力から仕方ないので、どうしても自己存在のルサンチマンから、より貧しくより弱い者に対して判官ビイキになりがちですわ。おそらく報道番組の制作現場では、「おい、それじゃあ同情が取れないぞ、もっと悲惨な絵を出せ」とか「もっと分かり易い呼び方をしろ、馬鹿はハマスじゃワケわからんぞ、イスラム組織と言え」とか言ってるかと思います。

GHQ統制時代から続く事実上の報道寡占(総務省ムラ)状態で、数紙数局が競争してるだけなんで、どうしてもアホな大衆向け(最近、賢い人は新聞TVなんて真剣には見てないそう)になりがちになりますわ。もうここらで報道の自由化をしないと、いつまでも記事にあるような状態のままだと思います。より正確な報道に対する需要はあるし、そのニッチで商売出来ると思いますわ。

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