ハマス、人質の一部を解放
ハマスが人質を解放することを条件に、イスラエルが4日間の休戦に同意したようです。
カタールによれば、イスラエルとハマスの戦闘の休止は、24日午前7時(日本時間同日午後2時)から始まります。
「(CNN) イスラエル政府によると、同国の内閣はパレスチナ自治区ガザ地区から人質少なくとも50人の解放を実現する取引を承認した。解放されるのは女性と子ども。この取引により、イスラエルとガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスの戦争が先月始まってから初の継続的な停戦が実現するとみられる。紛争拡大を防ぐ大きな一歩にもなる可能性がある。
人質の解放と引き替えに、イスラエル側はガザ地区での空と地上での作戦を4日間停止する。イスラエル政府の声明には、国内の拘禁施設にいるパレスチナ人の解放への言及はない。
これとは別の22日の声明によれば、ハマスはイスラエルで拘束されているパレスチナ人150人が合意の一環として解放されることを明らかにした。今回解放されるのは18歳以下の女性と子ども」
(CNN11月22日)
イスラエル、ハマスと人質解放の取引に合意 4日間の停戦 - CNN.co.jp
ガザ戦闘休止 24日午後2時に開始 - Yahoo!ニュース
イスラエル側の報道はさらに詳しい報道をしています。
「イスラエルの内閣が詳述したように、木曜日から展開される予定の取引は、合計50人の生きているイスラエル人人質と引き換えに、4日間の戦闘の小康状態と、最大150人のパレスチナ人女性と未成年の囚人の釈放というものだった。
また、休止期間中のガザへの燃料や人道支援物資の流入も可能になる。もしハマスが、未成年者や非戦闘員の女性である人質を解放する追加で見つけることができれば、人質10人解放ごとに戦闘を1日余分に停止し、取引を最大10日間まで延長することができる。人質が解放されるごとに、さらに3人のパレスチナ人囚人が解放される。 」
拉致された女性と子どもの解放が木曜日の午前10時から開始 – イスラエル当局者 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)
ニューズウィーク(11月22日)がこの交渉の舞台裏を報じています。
イスラエルとハマスによるガザ人質解放合意 米当局者が明かした緊迫の交渉の舞台裏|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)
この間、米国はイスラエルに自制を呼びかけ、その一方舞台裏ではエジプトやタカールを間に立てて人質交渉をしていたようです。
時系列で追っていきます。
ハマスはぬらりくらりと人質を解放しないこともないと気を持たせつつ、具体的な人質の名前や解放する人数には沈黙するという引き延ばし策をとっていました。
一方、イスラエル側は、地上進攻にこれ以上の待ったはかけられないとしてジレていたようです。
本来ならば電撃的に反撃に移る必要があったのですが、この交渉待ちの焦燥が初期の猛爆を生み出したようです。
当然イスラエルは、これはハマスの地上進攻を遅らせるための時間稼ぎだと見ていました。
この足止めの期間を利用して、ハマスは守備部隊を残して4万ともいわれる戦闘員の主力と幹部を南部に逃亡させていました。
たぶん人質も南部に連れ去られているでしょう。
今後も、ハマスは戦闘状況が不利になるつど、人質釈放を持ち出してくることはまちがいありません。
そして最期の最期まで兵士らは釈放しないことでしょう。
ハマスは子供や女性を人道的理由から先行して解放しているのではなく、手がかかるからそうしているだけのことです。
実に池内恵氏らが言うように見事な「政治的アクターぶり」です。
CNN
10月24日、 米国にハマスが人質解放の条件に同意したとの情報が入りましたが、イスラエルは人質が生きているという証拠を求めます。
これは当然の要求で、ハマスは音楽祭を襲撃し200名以上を虐殺した際に、血だらけになった重傷者や子供を拉致し去りましたが、この人たちの生存情報がありません。
そもそもハマスに人質解放の意志があるとしても、その規模がわからないのです。
「バイデン氏はその後3週間にわたり、具体的な協議を行った。その間、人質解放に向けた提案が交錯、ハマスに人質のリストとその身元情報、解放の保証を要求し、ワシントン、ドーハ、カイロ、ガザと連絡を取り合うという時間も手間もかかる作業が続いた。
やがて人質の段階的解放という構想が浮上し、バイデン氏はカタール首相と電話会談した。
構想は、第一段階としてハマスが女性と子どもの人質を解放し、それに応じる形でイスラエルが拘束しているパレスチナ人を解放するという内容だった」
(NW前掲)
つまりハマスの言い分は、イスラエルが押さえているパレスチナ人の釈放とバーター取引で、人質を返すということのようです。
しかもハマスは狡猾にも、「50人解放する」としながらも、人質の生存情報や身元などを開示しませんでした。
11月9日、バーンズCIA長官は合意案づくりのために、ドーハでカタール首脳やモサドのバルネア長官と会っています。
この時点での最大の障害は、ハマスが人質情報を出さないことでした。
11月12日、バイデンはカタールのタミム首長に直接電話し、50人の人質の名前、年齢、性別、国籍などの明確な身元情報を要求しました。
その後まもなく、ようやくハマスは第一段階で解放する50人の人質の詳細情報を開示しました。
11月14日、バイデンはネタニヤフに電話でこの合意案で受諾するようにと話し、ネタニヤフも同意しました。
11月18日、最終合意案として、第一段階で女性と子どもを解放するとしたうえで、全員の解放をにらみ、さらなる解放の見通しも盛り込む形の案がまとまりました。
11月19日、米国はカイロでエジプト情報当局のカミル長官と面会し、ハマス幹部が前日ドーハで策定された合意事項のほぼ全てを受け入れたとの報を伝えられました。
これに対するイスラエルの対応ですが、イスラエルでも議会ではわずかですが、反対がでました。
「カタール、エジプト、アメリカが仲介して出てきたハマスとの人質解放に関する提案について、イスラエルの閣議(連立政権の議員たち)は、火曜夜から徹夜で審議し、22日(水)早朝、採択をとった。結果、賛成35、反対3でこれを受け入れることで可決したと発表した。
反対したのは、極右政党のベングヴィル氏と、シオニスト政党のスモトリッチ氏らで、「休戦はハマスに回復の時間を与えることになる。一部の人質は戻っても残りが戻らない可能性がある。結局、ハマスへの継続した圧力こそが人質全員の解放につながる。」と熱く反対意見を出していた。
しかし、ネタニヤフ首相とリクード、国民統一党、ユダヤ教政党、イスラエル軍、シンベト(国内諜報機関)、モサド(諜報機関)も賛成票を投じたことから、交渉を受け入れる形になったということである」
イスラエルが人質解放取引に応じることで可決 2023.11.22 – オリーブ山通信 (mtolive.net)
そしてイスラエルの具体案はこうです。
「イスラエルの首相官邸は声明を発表。少なくとも50人の人質(女性と子供)が4日間にわたって解放され、その間に戦闘が休止されるとした。また、追加で人質10人が解放されるごとに、戦闘休止が1日延長されるとした。その上で、「イスラエル政府、IDF(イスラエル軍)、治安部隊は、人質全員を帰還させ、ハマス壊滅を完了させ、ガザからイスラエルへの新たな脅威がなくなることを確実にするため、戦闘を継続する」とした」
(BBC11月22日)
人質一部解放と4日間の戦闘休止へ イスラエルがハマスとの合意案を承認 - BBCニュース
初回は女性、子供を中心にして人質50人を4日間に分けて解放し、その間は戦闘を休止させる。
そして以後追加で10人解放するごとに1日延長させる、というものです。
ただし、これで戦闘を停止するわけではなく、ハマス壊滅まで戦いは継続するということのようです。
ハマス指導部や主力が南部に逃げた以上、致し方ないのかもしれません。
テロ攻撃を受けたのが10月7日、そして地上進攻は11月3日。
実に一カ月間、イスラエル地上軍は地上進攻を見送っていたことになります。
この人質問題がなければ、テロ攻撃をしかけられた翌日に侵攻して叩き潰せたものを。
そして地上部隊だけの攻撃によって、空爆を抑制することも可能だったはずです。
この歯車の狂いが、イスラエルにジェノサイドという汚名をかぶせてしまいました。
この流れを見ると、イスラエルはかなり譲歩しています。
ハマスの要求を飲む形での展開であり、今回の釈放は200人といわれる人質の4分の1でしかありません。
しかしここでひとりでも人質を取り返さねば、というイスラエルの苦しい選択でした。
蛇足
風邪をひきました。喉は痛み、頭はグラグラ、鼻水はでっぱなし、全身はかったるいし、もうヨーこんなもん書いているなと我ながら思っております。明日休んだらごめんね。
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お大事になさって下さい。今インフルも流行ってますし。
投稿: 山形 | 2023年11月24日 (金) 05時50分
教育者たる自覚もなく、ナチスと同じ思考をする下劣な輩など相手にせずにゆっくりと静養されますよう。くれぐれもご自愛ください。
投稿: ひだか | 2023年11月24日 (金) 07時32分
明日はまた、一段と寒くなって本格的な冬模様になるそうなんで、ここは大事を取ってお休みください。
コロナ騒ぎから、結局、ウイルスとの闘いはワクチンだけではダメみたいですわ。ウイルスに我が身をさらして地道に自己免疫をも鍛えていかないと、ワクチンというドーピングに頼っていては、後になって溜まったツケを払わされるんですわ。
静養第一で、免疫機能全開にして下さい。
投稿: アホンダラ1号 | 2023年11月24日 (金) 22時36分