中国、BRICS会議でイスラエル叩きを煽るも不発
お見舞い、ありがとうございます。
なんとかシャキっとした合間に書いてしまおうとしております。
さて、このところめっきり政治力を落としている習近平が、今の反ユダヤ、反イスラエルの風に便乗して勢力拡張に勤しんでおられます。
あ、そうそう、イスラエルバッシングに夢中の皆さん、叩くべきはハマスなんでしょうか、それともイスラエルなのでしょうか。
いまや、イスラエル憎しの地金むき出しの方も大勢おられますね。
それはさておき、習近平の盟友はまたまたプーチン大帝。
ふたり共に手をとって、BRICS会議を使ってイスラエルとその後ろ楯である米国を叩こうとしたようです。
朝日はこう報じています。
「臨時会議は今年の議長国の南アが呼びかけた。BRICS首脳が特定の国際問題でこうした会合を開くのは異例。出席者は「非常に時宜を得たものだ」(プーチン・ロシア大統領)などと南アに賛辞を送った。
BRICSは来年1月から拡大される予定で、AP通信によると、今回の会合には新たな加盟国であるエジプトやサウジアラビア、イランなど6カ国の高官らも参加。8月の首脳会議で拡大を主導した中国の習近平(シーチンピン)国家主席は「我々がこの問題で立場をすりあわせ、行動を起こすことは、拡大後のBRICSによる協力関係のすばらしいスタートになる」と称賛した」
(朝日11月22日)
ガザ情勢めぐりBRICS首脳が特別会議 米欧と違う影響力アピール [イスラエル・パレスチナ問題]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
朝日
それにしても習近平、いつもつまんなそうな顔しているね。むくんでるし。
正代といい勝負。
議長国南アの呼びかけとなっていますが、習近平のごり押しでしょう。
朝日はこのBRICSを主導しているのが中国だと思いたいとご様子で、この書きようにはその切ない気持ちが現れています。
「ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成される新興5カ国(BRICS)は21日、イスラエル・パレスチナ情勢をめぐる臨時の首脳会議をオンラインで開いた。米欧が情勢の悪化を防ぐための建設的な役割を果たせないなか、グローバルサウスを代表する勢力としての存在感をアピールした。」
(朝日前掲)
「米欧が情勢の悪化を防ぐための建設的な役割を果たせないなか、グローバルサウスを代表する勢力としての存在感をアピールした」ですか。
朝日さんはあっさりと「米国が建設的役割を果たせないから」と言っていますが、いまどこの国の斡旋で人質釈放が可能となかったのかお忘れでしょうか。
中東諸国とイスラエルの両者と外交交渉ができる国は、世界ひろしといえど米国しかいないんですよ。
よもやイランなんていうんじゃないでしょうね。
ですからなんやかやで中東で圧倒的「存在感」を見せているのは、よくも悪しくも米国です。
イスラエルにたずなをつけるのも、イランを抑止するのも、タカールに話をつけたのも、全部米国の仕事です。
だからイスラエルが暴走すれば米国も批判されるのです。
存在感があるぶん失敗すればダメージを受けます。
中国なんて、アンタどこにいたの、ってていどの端役にすぎませんから、外野で勝手なことを言えるだけのことです。
中国がいなくても中東政治は回りますが、米国がいないとまったく回らないのが、今回よく分かったでしょう。
ほほう、いつから中国がBRICSを代表したのでしょうか(笑)。
そもそも、中国がオレ様ワールドと吹聴したい時に都合よく使われる「グローバルサウス」っていったいナニ?
概念規定すらあいまいです。
それをあいまいにしたままで、G7先進諸国と対置させようというのですからムリがありすぎます。
いやあいまいだから、朝日のように妙な思い込みができるのです。
かつて毛沢東時代にさんざん使われた「第3世界」のようなものなのかしら。
毛時代はこの「第3世界」を指導するのはオレ様だ、と露骨に言っていましたもんね。
いまでもその名残が、天安門のにバカでかく書いてある「世界人民大団結万歳」に残っています。
【動画】天安門楼上、人民服の習氏 “毛沢東氏と並び立つ指導者”|【西日本新聞me】 (nishinippon.co.jp)
近隣諸国を侵略しまくって、あげくは南シナ海まで奪っておいて「世界ジンミンは団結せよ」もないもんですが、あのスローガンは毛の見果てぬ夢、世界はオレ様中国の膝下にひざまずけという意味です。
そしてこれをまんま継承したのが、ミニ毛沢東の習近平でした。
彼は経済の力を使って一帯一路で、世界に中国経済圏を作ろうとしましたが、哀れカンジンの中国経済の大失速で座礁。
かつての毛時代と違うのは、毛はソ連の平和共存政策を「社会帝国主義」と呼び、戦争も辞さない構えでしたが、今は違います。
なんとロシアは中国の経済圏に取り込まれ、政治的にいまや弟分。
今回もプーチンは、習近平に調子を合わせてこんなヨイショをしています。
[モスクワ 21日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領は21日、オンライン形式で開かれた新興5カ国(BRICS)首脳会議で、イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突の政治的な解決を呼びかけ、BRICSはこうした解決の実現に貢献できるとの考えを示した。
プーチン大統領は、米国の外交政策の失敗により中東危機が引き起こされたと改めて非難。「事態の緩和、停戦、イスラエル・ハマス紛争の政治的解決に向け、国際社会が共同で取り組むことを求める。この地域の国々のほか、BRICS諸国もこの取り組みに重要な役割を果せる」と述べた」
(ロイター11月21日)
BRICS、ガザ危機の政治解決に貢献可能=ロシア大統領(ロイター) - Yahoo!ニュース
プーチンがこのハマス紛争は「米国の外交政策の失敗」にあると言っている所から、そもそも間違いです。
米国がやってきたのはオスロ合意から始まり、アブラハム合意を経て、サウジのイスラエルとの国交回復まで一貫してこの地域の安定でした
米国の中東外交のキイワードは、民主、共和を貫いて一貫して「2国家共存」です。
パレスチナとアラブ諸国には、非現実的な「イスラエル消滅」路線を捨てさせ、一方イスラエルにはパレスチナ国家を認めさせました。
そして両者に普通の国家間の外交関係を取り戻させる、というのが米国の考えです。
たぶんこれ以外解決の方法はありません。
これを「米国の外交政策の誤り」と呼ぶなら、もはや残るのは戦国時代を思わすケイオスの復活で、イランが言う「イスラエルの消滅」しかなくなりますから、どこまでも戦争と緊張は続くことでしょう。
いやそのほうがいい、戦争はズっと続いてくれたほうが嬉しい、中東がテロと戦争の巷であるほうがありがたい、なぜなら中露が中東の政治地図に割り込めて世界の覇権を握れるから、というのがプーチンと習近平の思惑です。
ちょっと前に米国でシェールオイル生産が本格化した時、日本の経済評論家は口を揃えて、これで米国は中東に関心がなくなる、関与もしなくなると言っていましたが、そうはなりませんでした。
また、米国にとって最大の敵は中国だから、中東はお荷物なのだ、という人もいました。
同じ論法はウクライナでも使われましたが、それは逆なのです。
中東やウクライナで、自由主義陣営の盟主としての筋を通せば、中国はなにもできないし、無力なら中国が図に乗るだけです。
ですからいまも、地中海に空母打撃群を張り付けており、いざとなれば今のように空母2隻体制で中東ににらみを効かせています。
国務長官など、10月7日以降、ほとんど中東に現住所を移してしまいました。
こんなマネを中国ができるんだったら、「中国は存在感をアピールした」といえるんですがね。
このハマステロの時、王毅はどこでなにをしていたのか思い出して下さい。
では、せめて外野席にいるBRICSの中でくらい「中国がグローバルサウスで存在感を見せた」のでしょうか。
お気の毒ですが、ナッシングです。
だってBRICSは、「ぜったいにまとまらない集まり」にすぎないから。
BRICSは当初から、発展途上国からテイクオフしかけている国の漠然とした集合体でしかないからです。
綱領もないし、決まった行動規範もありませんから学級委員会のほうがまだましです。
ところでBRICSはこんな国々で構成されています。
まずはオリジナル版は、中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカ。
経済崩壊一歩手前のロシアや、いまや経済絶賛大失速中の中国がリーダーヅラしているのはご愛嬌です。
ブラジルと南アは強インフレに悩み、いぜん元気の元太郎はインドくらいなもの。
BRICS拡大版は以下の13ヵ国で、アルジェリア、アルゼンチン、エジプト、インドネシア、イラン、カザフスタン、セネガル、ウズベキスタン、カンボジア、エチオピア、フィジー、マレーシア、タイですが、経済がメタメタな国がかなり混ざっています。
笑えることには、このBRICSという闇鍋をかき混ぜると、中東を不安定化させる便所のスリッパならぬイランも出てくることです。
これでまとまるわけはありませんが、習近平に言わせると、2022年6月のBRICSの会議でこう定義しています。
①BRICS陣営は人類85%の非西側諸国(発展途上国と新興国)を代表する。
②米国は、利己的な安全保障を求めて軍事同盟を拡大し、他国に陣営の対立を強要し、他国の権利と利益を無視しようとしている。
③米国は、閉鎖された小さなグループを作っている。
④一部の国は「長い腕の干渉」を通して一方的に他国を制裁し、科学技術の独占、封鎖、障壁を通じて、他国のイノベーションと発展を妨害し、自らの覇権を維持しようとしている。
この意味は説明する必要もありませんが、米国が「長い腕」を伸ばして、遠くからアジアや中東に干渉しているのはけしからん。
そして米国が「閉鎖された小グループ」、つまり日米豪印のクアッド、あるいは米英豪のオーカスのような軍事同盟を作るのはけしからん、というわけです。
もうすでにこの米国を中心とする対中枠組みにインドが入っているのが中国にとってなんとも腹立たしいところで、なんとしてでもBRICSの磁場に引き寄せたいところでしょう。
なんせ人口では既に中国を抜き、GDPでも急成長が著しく、来年には日本を抜くとまで言われているインドですから。
議長国の南アのラマポーザ大統領が、イスラエルは大虐殺をしていると盛んに煽ったのですが、インドはこの危機の発端が「10月7日のテロ攻撃にある」として譲りませんでした。
インドメディアによれば、ガザ情勢に対してインド代表はこう述べたとのことです。
「[ニューデリー]ナレンドラ・モディ首相は火曜日、イスラエルとガザに関するBRICS-Plus会議を欠席した。ジャイシャンカル外務大臣は、首相の代理としてバーチャルで会議に出席し、西アジアにおける差し迫った危機は10月7日のテロ攻撃によって引き起こされたと述べた。
「テロリズムそのものが懸念されるところでは、われわれの誰一人として、テロリズムに妥協すべきではないし、妥協することもできない。人質を取ることも同様に容認できず、容認できません。その後の展開は、大規模な民間人の死傷者と人道危機を目の当たりにする中で、私たちの懸念をさらに深めています。民間人の死を強く非難する」と述べた。
インドは、ガザ地区で進行中のイスラエルとハマスの紛争は、民間人、高齢者、女性、子供を含む計り知れない人的被害をもたらしていると述べた。
「我々は、緊張緩和に向けた国際社会のあらゆる努力を歓迎する。現在、人道支援と救援が効果的かつ安全にガザの人々に届くようにすることが急務です。また、すべての人質の解放も不可欠だ」と述べた」
(インディアンエクスプレス11月22日)
テロに対するゼロトレランスは、BRICSの会合でEAMは言う-ニューインディアンエクスプレス (newindianexpress.com)
というわけで、中東を米国の覇権の失墜と捉え、BRICSを後ろにつけていると思いたい中国が主導権を奪うという目論見はあえなく費えました。
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