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2023年11月22日 (水)

フーシ派の船舶乗っ取りを「拿捕」と言うな

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イエメンのフーシ派が、紅海において日本郵船が運用している自動車運搬船を乗っ取りました。
イエメンのホデイダ港へ連れて行かれたようです。

「アラビア半島西側の紅海で、日本郵船が運航していた自動車運搬船がイエメンの親イラン武装組織フーシ派により乗っ取られた。
運搬船はバハマ船籍で英国企業の所有だ。日本郵船がチャーターしてトルコからインドへ向かっていた。
捕まった乗組員25人の国籍はブルガリア、ウクライナ、フィリピンなどで、日本人やイスラエル人はいなかった。イスラエルメディアは、イスラエルの実業家が船の所有に関係していると報じた」
(産経11月21日)
貨物船乗っ取り 紅海での航行の自由守れ - 産経ニュース (sankei.com)

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イスラエルタイムス

この船の権利関係は複雑です。

「乗組員は、ブルガリアやフィリピンなど、様々な国籍を持つ25人。拿捕された時点で積荷はなく、日本人もイスラエル人も乗船していなかった。非常にややこしいことに船はイギリスの旗印で、日本郵船がチャーターしていた。しかし船の所有者はイスラエル人ビジネスマンと関連があるとのことである」
フーシ派が拿捕した日本郵船関連の船:世界の海運に懸念 2023.11.21 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

つまりパナマ船籍、英国所有、日本が運行、乗組員は多国籍ということのようです。

ちなみに、ことイラン絡みになると腰が引ける日本政府は、これを「拿捕」と呼んでいました。
松野さんは前回は「他のG7諸国は人質がいるがウチはいないから共同声明に乗らない」と突き放してみせ、今回はフーシ派をまるで主権国家扱いです。

[東京 20日 ロイター] - 松野博一官房長官は20日の閣議後会見で、日本郵船(9101.T)が運航する自動車運搬船が紅海でイエメンの親イラン武装組織フーシ派に拿捕されたことについて、断固非難するとしたうえで、関係国と連携し、船舶と船員の解放に取り組んでいると語った」
(ロイター11月20日)
日本郵船の運航船拿捕を非難、早期解放に取り組む=官房長官 | ロイター (reuters.com)

「拿捕」とは主権国家がなす海洋警察行為のひとつです。

軍艦が、敵国や中立国の船舶支配下におくこと。戦時中では禁制品輸送封鎖侵破といった理由で行われた」
拿捕 と は – jupontyi.jettysuites.com

国連海洋法条約では、公海上の臨検と拿捕についてこのように例示しています。
もちろんこのどれにも該当しません。

「公海上で(軍艦・公船を除く)外国船舶への臨検が認められる旗国主義の例外にあたる場合として、当該外国船が①海賊行為、②奴隷取引、③無許可放送のいずれかに従事している場合」
202012.pdf (mod.go.jp) 

今回、この乗っ取りを働いたフーシ派は、イエメン内乱の当事者であり、勝手に「イエメン政府」や「イエメン軍」を名乗っているテロ組織です。
ハマスやヒズボラと一緒で、イラン革命防衛隊コッズ部隊の「作品」です。

いかなる意味でも主権国家ではなくテロリスト団体にすぎませんから、フーシ派には国家格はありません。
むしろ主権国から、海賊行為として臨検を受け、拿捕されるべきなのはこのフーシ派のほうです。
官房長官は海保の所轄である国交省のレクを受けなかったみえます。

また官房長官は、「断固非難する。関係国と連携して船舶および船員の早期解放のため取り組んでいる」と述べていますが、いったい誰に「乗組員と船舶の解放に全力を尽くしてもらいたい」と頼んでいるのでしょうか。
よもや「特別な友好関係にある」イランじゃないでしょうね。
たぶんそうだろうから、いやーな気分になります。

フーシ派はヘリまで使った大作戦をしていますが、笑えることにはこの船は荷を降ろしたあとの空船で、次の寄港地に向かう途中でした。
つまり空船。船員はウクライナ人などです。

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フーシ派、イスラエル船を「正当な標的」と発言、世界の海運への脅威が高まる |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

「イスラエルの船は、どこにいても我々にとって正当な標的だ。そして、我々は行動を起こすことを躊躇しない」と、フーシ派の軍幹部であるアリ・アル・モシュキ(自称「少将」)は、グループのアル・マシラ・テレビ局に語ったそうです。
彼らのテレビ局の公式な宣言です。
「イエメン軍」とありますが、これは前述のとおりフーシ派の私兵です。

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アル・マシラー・ネット:イエメン軍:我々は、敵組織の旗を掲げている、またはシオニスト企業によって運営または所有されているすべての船舶を標的にします (masirahtv.net)

●フーシ派の要求
①イスラエル企業によって運行されている船舶は標的。
②イスラエル企業が所有するあらゆる船舶は標的。

③以上の船舶に乗る乗組員を世界の政府は撤退させよ。

要するに、イスラエルと関わったら全部「拿捕」するということのようです。
目的は、パレスチナ「国旗」と彼らの旗を「拿捕」した船に掲げたことから分かるように、紅海で外国船籍の船をハイジャックすることが「ガザ虐殺を止める」方法だと思っているようです。

内容的にはむちゃくちゃで、公海上を航行する船舶は、国連決議で禁止された国や物資に抵触しないかぎり、どこの国のなにを運ぼうと自由です。
これは国際海洋法の大原則である「航行の自由」で保証されています。
また、紅海における度重なるイランの船舶攻撃に対して「国際海洋安全保障構成体」が存在します。
これはる1980年代に繰り広げられたイラン・イラク戦争においてイラクを支援していたクウェート、サウジのタンカーがイランからの攻撃に晒されるようになり、海軍を持たないクウェートやサウジが米国に対して自国のタンカーの護衛を要請していたことから始まっています。
いまもなお続く紅海でのタンカー攻撃に対して米海軍が中心となって作られたのがこのIMSC︓International Maritime Security Construct)です。

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「IMSCは当初,米,英,豪,バーレーンの4カ国で開始されたが,現在はアルバニア,バーレーン,エストニア,リトアニア,ルーマニア,サウジアラビア,セーシェル,UAE,英,米,ラトビアの11カ国が参加する枠組みに成長している」
中東情勢分析_中東地域における海洋安全保障を巡る米中競合の実態 (jccme.or.jp)

このような枠組みが実在するにもかかわらず、親イラン政策に足をとられて日本は参加していません。
海洋安全保障を共同で担う国際的役割から逃げていたら、じぶんの国の運用する船舶が攻撃されてしまったという悲喜劇です。
いいかげん、日本政府も分かりなさいよ。イランは日本との「特別な友好関係」なんぞみじんも感じていないのですよ。
むしろ米国の犬くらいに蔑んでいます。

もし親イラン政策を取り続ける理由を「原油輸送の安定」にあるというなら、真逆です。
イランはアラビア半島を挟んで2カ所、チョークポイント(狭まった場所)を押さえています。
西がフーシ派のバブ・アル・マンダブ海峡、東がイランのホルムズ海峡です。
原油輸送を妨害している最大の敵はイランとその眷属なのです。

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世界経済の脅威となったフーシ派のドローン攻撃 原油価格高騰を招くサウジアラビアの地政学リスク(4/5) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

彼らは今まで頻繁に通過する船舶を攻撃してきました。
そしてすぐ近くには海自がアデン湾の海賊対処行動で、航空機や艦船を派遣しており、目の前のジブチには基地まであります。

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2 海賊行為への対処 (mod.go.jp)

ですから、日本政府がその気にさえなれば、直ちに海自をバブ・アル・マンダブ海峡やホルムズ海峡に派遣できる能力があるのです。

そもそもこういう恥ずかしい状況で、いったい誰に「協力を要請する」のでしょう。
イランですか、それともIMSCでしょうか。
仮にイランに要請したなら、広域暴力団に2次団体とのトラブルの仲介を頼むようなものです。

しかし中東学会の「権威」池内恵東大教授はこう言っています。

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はーい池内先生、日本も頼りにならない米国を捨てて、イランに「頭を下げて歩み寄りましょう」。
その代償に、イランからはイスラエルのガザ侵攻への制裁、あるいはイスラエルとの断交くらいは要求されるしょうし、日米同盟は瓦解するかもしれませんが、なんちゃことありません。
イランとそのバックにいる中国とロシアに着いていけばいいだけのことですから。

 



 

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コメント

結びの画像は日付を捏造したスクショです。
そのポストはテロ後まもなくの頃、
サウジなどの湾岸諸国の今後について、
イランが米とやり合うならイランの攻撃目標は湾岸であると、湾岸諸国は恐れているので先回りして「湾岸諸国もイラン側に」立つ態度を見せて米国の庇護を強めようとする。
という氏の意見の一部でした。
先日どなたかが「ついに池内は日本がイラン側に」と書いていたのもこの画像が元であれば、ちがいますよ。

https://x.com/chutoislam/status/1716172671841390847?s=46&t=KIgf9ZZl89D5gUk8M3PndQ

ほんとうにすみません。捏造スクショではなくポストされています。
しかし内容は日本に対してではなく一貫して湾岸諸国の意向についてであることは変わらないです。
池内氏が米イランで日本にイラン側につけと言及したことはないです。
反省いたします。

ふゆみさん。池内氏がどういうつもりで言ったかは別に置いて、「湾岸諸国が先回りしてイランにつく」ということなどありえません。
ただあえて言うならば、池内氏にはイランに対するシンパシーとまでは言いませんが、過大評価があるようです。
まるで池内氏はイランが中東の主導権を握っていて、湾岸諸国がそれに追随しているように読めます。
そしてここまで強大なイランにつくほうが、「不安定な」米国に着くより日本にとってもいいんじゃありませんか、と池内氏が勧めていると私は解釈しました。

今日の記事でも書いたように、イランこそが湾岸諸国の原油輸出の最大の阻害物です。
イランは東西のチョークポイントを握っています。
西にはフーシ派がバブ・アル・マンダブ海峡を握り、東は自らがホルムズ海峡を握っています。
このような状況で「湾岸諸国がイランに頭を下げてすり寄る」という池内氏の見立ては、あまりにイランにとってつごうのよい想像です。
先日イスラム諸国会議で、イラン提案がすべて否決されたことは、湾岸諸国にはすり寄る意志がないということです。


立つ振る舞いを見せて米国が湾岸防衛を厚くするよう促すと、ずっと書かれています。
だからあっち側に行かない前提で、擦り寄って見せるという交渉スタイルなのだと繰り返し語られています。
もちろんそれをどう捉えるかは個人によりますが。
本当にイランと共に立つことはないが、距離感の交渉の話です。
こう噛み合わないのも申し訳ないので私が引かないとですね。すみません。

 今の日本の中東政策は破綻しているので、早急に見直すべきです。
イランやそれに連なるテロリスト集団から身を護る手段として、日本も2019当時にIMSCに加入すべきでした。
当時の保守派は安倍さんに期待するあまり「独自外交」とか、二国間交渉とか、経産省含め米国に油を握られてコントロールされる事の懸念とか色々あって、友好国とおぼしく見えたイランに寄り添うてもいいんじゃない?と勘違いしてました。
イスラム左派は元々イラン革命大歓迎で反米丸出しのバカ野郎だったし、両者の意見がマズイ一致を見てしまったんですね。

安倍さんも私たちも確かに不用意だったけど、ここまで明らかになった中東政策の失敗を放っておけません。

外務省はイスラム左翼に押され気味で、そこへ持ってきてシンクタンクの役割をする東大教授らの「見識ある人達」らの提言なんかが、また酷かった。
狂ったテロ支援国家のイランをして「関係国として適切な位置を付与すべき」だの、「ハマスを孤立、封じ込めるのではなく、平和プロセスに取り込む働きかけを国際社会に向けて行うべき」とか、夢のような戯言を政府に申しています。
また、彼ら(東大系研究者ら)がハマスをテロリストと呼びたくない理由は、彼らが一定の支持を受けている「政治アクター」だからだそうで、「日本政府はこうした(ハマスやアルカイーダ、イスラム国やフーシ派武装集団)を「非国家アクター」と位置づけ、その対応として日本独自の外交理念を確立すべき、との提言も行っているんですね。

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