ハマスの地下トンネル
ガザ市の包囲環が閉じました。
「イスラエル国防軍のスポークスマン、ダニエル・ハガリ少将は、地上部隊がガザ市を完全に包囲したと述べている。
「わが軍は、ハマスの活動の中心地であるガザ市の包囲を完了した」とハガリは記者会見で述べた。
カタール在住のハマス指導者イスマイル・ハニヤは、プライベートジェットでイランを訪問する予定だという」
イスラエル国防軍:ガザ市は包囲され、停戦は交渉のテーブルに載っていない |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

おそらく短期間の人道的停戦が行われるようです。
「ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、短期間の人道的停戦を求める米国の要請を検討していると、ヘブライ語のKan Newsが報じている。
イスラエル当局者は、数時間の停戦は可能だと述べている。
米国のアントニー・ブリンケン国務長官は明日イスラエルを訪問し、停戦などについて話し合う予定だ」
ネタニヤフ首相は短期間の停戦を秤にかけたと報じられるが、これは米国の主要な要求 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)
この人道停戦は米国の圧力が功を奏したものです。
米国はイスラエル支援の予算案を可決する時だったので、なんらかの圧力の材料につかったのでしょう。
「パレスチナ自治区ガザで10月27日、インターネットと携帯電話の回線が突然寸断され、米政府当局者はイスラエルに瞭然たるメッセージを静かに伝えた。ネットワークを復旧せよと。
(米国からの)要請が伝えられたのは、イスラエル軍の戦車と部隊がガザに進軍し、ちょうど地上攻撃を開始したタイミングだった。ネタニヤフ政権は米国の要請に即座に従った。
イスラエルに対する全面的な支援を公に表明しつつ、民間人の保護と紛争の拡大防止に向けた要請を抑えたトーンながらも執拗に伝達することで、バイデン政権はこれまで一定の成果を上げてきた。このエピソードはそれを改めて裏付けるものだ」
バイデン米政権の静かな圧力、イスラエルのガザ攻撃抑制で一定の成果(Bloomberg) - Yahoo!ニュース
当初、いまよりはるかに早い段階で、イスラエルはガザを取り囲んで猛攻をかける予定でした。
しかし米国の人道上の配慮要請のために、地上進攻はより遅れて慎重で精密なものに変更されました。
イスラエル空軍が保有するGBU-28は地下30mまで破壊可能ですが、これだとハマスのトンネル地下司令部を破壊するには限定的効果しかありません。
イスラエル軍がガザ包囲の完了を発表、短時間の人道的停戦を検討中 (grandfleet.info)
このうち注目されるのは、10月29日にイスラエル国防軍が公表した海岸沿いに進撃した部隊です。
イスラエル国防軍は、地上部隊がガザの海岸で武装集団を殺害し、ハマスのテロ標的を破壊したと発表 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)
この海岸からの部隊は、会場のイスラエル海軍と連携して西の海方向に逃げようとするハマス部隊を阻止するものだと考えられます。
とまれ、これでハマスのガザ市内の勢力は地下トンネルだけに限定されたことになります。
このハマスのトンネルは「メトロ」と呼ばれ、ハマスが巨額の費用と時間をかけて掘り抜いたトンネル・ネットワークです。
ハマスは市民用のシェルターなどには見向きもせずに、ひたすら軍事用トンネルを掘り続け、病院や学校、あるいは難民キャンプの地下に司令部や弾薬庫などを設置しました。
国連は口を極めてイスラエルの空爆を非難していますが、難民キャンプは国連が管理していたものです。
2000年代初めにはガザ市の地下でハマスのトンネル建設が始まっていますから、国連がこのことを知らないはずはないのです。
このことについて、いまだだんまりを決め込んでいる国連に中立性などありません。
人道でイスラエルを責めるのなら、ハマスのトンネルを容認してきたことはどうなるのでしょうか。
NHKとBBCがハマスの地下トンネルについて調査記事を書いています。
最新ハマスのトンネル内は?イスラルの攻撃は?今後どうなる? | NHK
ガザの地下にはどんなトンネルが広がっているのか ハマスの映像を分析 - BBCニュース
イスラエルのバル・イラン大学のジョエル・ロスキン教授(地質学)は、このトンネルが1980年代にかつてのエジプトからの物資・武器弾薬密輸のために掘られたものが、さらに発展し複雑化したものだとしています。
当初はガザ南部とエジプトの境界付近にあったものが、いまやガザ北部とガザ市内にも複雑に張りめぐらされることになりました。
「ロスキン教授
「かつてのガザ地区は肥沃な土地で、地下浅くの地下水を利用した豊かな農業地帯でした。その後、エジプトと地区南部のラファの間の坑道がトンネルとして利用されました。そして、エジプト側から武器を含む密輸品の通り道となりました。2007年になると、トンネルはラファの街だけでなく、境界一帯にまで拡張しました。
ガザ地区の土は粘土を含み、手やシャベルを使って簡単に掘ることができる上、崩れにくいという性質があります」
(NHK前掲)
また今回のハマスの攻撃がなぜ事前に察知できなかったのかについて、ロスキン教授はこう述べています。
「2014年に、イスラエル側は35本のトンネルを間違いなく破壊しました。しかし、より深い部分にはまだ多くのトンネルが残されていたのです。その後、ハマスはガザ地区内の地下トンネルの能力を再び強化し、残ったトンネルを活用しました。そして、10月7日に、それらのトンネルで兵士たちをイスラエルとの境界に近い場所に移動させ、イスラエル側の監視カメラの目を逃れて攻撃を開始したのでしょう」
(NHK前掲)
今後、イスラエルははバンカーバスターでトンネルを空から破壊しながら、一方で「ヤハロム」と呼ばれる特殊工兵隊を投入すると見られています。
ただし、部隊がガザ市内に突入したので、そうそう簡単に爆撃はできにくくなってはいます。
イスラエルの情報機関の元高官デイビッド・シモニ氏はこう述べています。
「そのうえでイスラエル軍は地下トンネルへの対応を専門とする「ヤハロム」という特殊部隊を投入し、トンネルやトンネル内に隠された武器などの破壊にあたるという見方を示しました。
シモニ氏は特殊部隊「ヤハロム」について「ヘブライ語でダイヤモンドを意味し、工兵部隊に所属している。軍のなかでもエリート部隊だ」としています」
(NHK10月27日)
イスラエルの情報機関元高官「ガザ地区北部が地上戦の中心か」 | NHK | イスラエル・パレスチナ
かつてネタニエフが所属していたイスラエルの特殊部隊「サエレット・マトカル」は出動命令を待っていると伝えられています。
いずれにしても、イスラエルにとって苦しい戦いは続くでしょう。
« イランとハマスの米国孤立化作戦 | トップページ | 日曜写真館 ひら~と朝霧乾くすすきかな »
病院や学校の地下に司令部や攻撃拠点を置く外道ハマスですから、救急車に戦闘員を乗せて行動するなど痛痒も感じないでしょうね。
投稿: | 2023年11月 4日 (土) 14時29分