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2023年12月11日 (月)

ヨルダン川西岸問題に辿りつくには

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常連コメンターのふゆみさんからこんなコメントを頂いております。

「ハマスを裁くべきはガザ難民であるという意見があるならば、より生存権を保証された中で、西岸地区への入植者を引き上げさせるべきはイスラエル国民であるとも言うべきだと私は考えます。
裁判所が裁定を下したとか、それを覆す政府にデモをしているとかでなく、入植者を直接非難できない国内情勢があるならば、その原因は何なのか。イスラエル国民自身が見つめなくてはならないでしょう」

脱稿後に新しいふゆみさんの投稿を拝見しました。
100%私の気持ちと一緒です。

もう見たくないと思いながら、毎日書いている私です。

ただし仰せのとおり、イスラエルが西岸からの撤退するべきなことはそのとおりですが、ではそれが可能でしょうか。
今、イスラエルは圧倒的に戦闘では勝っているのですよ。
勝利しつつある国が、その遠因に胸に手を当てて自分の国の国内政治の間違いに気がつくとは思えません。

むしろさっそくにでも考えねばならないのは、ネタニヤフを戦後処理において戦勝内閣気分にさせないことです。
彼らがやろうとしているガザの軍事占領の恒久化を阻止せねば、永久にパレスチナ問題は解決されません。
これを阻まないことには、西岸問題自体が俎上に乗りません。
イスラエルリベラル勢力が、ガザの軍事支配放棄と西岸問題を一気に片づけられる力があるとは思えません。
ふゆみさんがおっしゃるイスラエル側の問題を併記したというのは理解できますが、今そこまで突っ込むことは不可能だと思います。
むしろ順番としては、ガザからの早期撤退と復興計画に重点を置いた方がいいように思えます。
これだけでもうんざりするほど大きな課題ですから。

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世界の農業農村開発67号

ところで、西岸問題はイスラエルの宿痾でした。
15万人と呼ばれるイスラエルの入植者の多くは農業を営んでおり、入植から既に30年以上経過し根が生えてしまっています。

彼らはパレスチナ側からみれば「侵略者」ですが、入植者からみれば手つかずの荒野を切り開いたたとのどこが悪いということになります。
ですから、イスラエルに対して「新たな」入植の禁止はありえても、既存の入植者の撤収はかぎりなく難しいのは事実です。

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パレスチナ子どものキャンペーン (ccp-ngo.jp)

上の写真で丘の上にあるのがイスラエルの入植者集落で、谷に向けてパレスチナ人の集落が広がっています。
2002年以降、頻発するテロに手を焼いて、イスラエル領土と西岸の間に巨大な隔離壁が建設しました。
そしてその隔離壁は徐々に延長され、1949年の停戦ラインを超えてイスラエル人専用の道路や入植地とつながり、 パレスチナ自治区を飛び地状態にしている地域すらあります。
西岸問題を農業の視点で詳細にレポートしたものとしては、下記のものがありますので参考にしてください。
●参考資料
世界の農業農村開発67号-REPORT & NETWORK 土地と水を巡る紛争 ~イスラエル占領下のパレスチナの農業~ (jiid.or.jp)

なおこの分離壁については、国際司法裁判所からイスラエルの違法の裁定がでています。

「イスラエルがヨルダン川西岸パレスチナ占領地で建設を進めている分離壁について、国際司法裁判所(オランダ・ハーグ、ICJ)は9日、「占領地での分離壁建設は違法にあたり、中止・撤去すべきだ」との勧告的意見を言い渡した。パレスチナ人に対する補償措置も求めるなど、イスラエル側の「全面敗訴」といえる内容だ」
(2007年1月12日)
asahi.com : ニュース特集

また、イスラエル最高裁も分離壁に関係する土地収用を違法としています。

「イスラエルがパレスチナ人の土地を強制収用して分離壁を建設することが妥当かどうかが争われた裁判で、イスラエル最高裁は30日、収用決定の一部を取り消し、建設ルートの再考を政府と軍に命じた。ルートを決めるにあたってパレスチナ人住民への人道上の配慮が不足しており、違法と認定した。モファズ国防相は同日、これを受け入れると語った。
 イスラエル政府の分離壁計画責任者によると、これまでに分離壁をめぐる係争は40件近くあったが、収用決定が取り消されたのは初めて。最高裁は「通行ゲートの設置などでパレスチナ人にも配慮している」という政府の主張を明確に否定したうえで「ルートを変更することで安全の程度が下がるとしても、人道配慮のためには甘受すべきだ」とも指摘した」
(朝日。
asahi.com : ニュース特集

現実に西岸で深刻なのは水争いです。
イスラエルが進める果樹栽培は、水資源を多用し、灌漑などの方法で水を独占するために、パレスチナ側には水が来ない時期すらあるようです。
西岸問題とは、宗教対立ではなく水利権の問題なのです。
イスラエルは水を必要とする果樹栽培が主であり、パレスチナ側は放牧とオリーブ栽培です。
そのために放牧可能地域は年を追うごとに減少しています。
一方、イスラエル入植者からみれば、パレスチナ人がする放牧などは土地を荒廃させるだけで有効な土地利用とはいえない、オレたちがこの土地を肥やしているのだという意識があるのかもしれません。
そして西岸から撤退しろといわれても数十年にわたって整えてきた農業基盤を捨てることはありえない選択です。
このように西岸問題は、複雑に問題が入り組んでおり軍隊と違って、水利権に深く関わる農業というもっとも動かすのが難しいのが対象なのです。

ご承知のように、西岸は1993年9月のオスロ合意でパレスチナ自治政府に帰属することで合意されています。

同時にこのオスロ合意は西岸からのイスラエル軍の撤退、ガザ地区からの撤退、パレスチナ自治政府の承認にも合意しています。
一瞬でも「二国共存」という道筋が見えた時期でした。
しかしイスラエル社会には、宗教右派を中心としてヨルダン川西岸のできるだけ多くの土地を併合したいと考える人々が多く存在します。
彼らは入植者と違って農業とは関係なく、宗教的信念でモノを考えています。
宗教右派はこのような聖書の一句を文字どおり解釈しています。

「主はアブラムに仰せられた。『さあ、目を上げて、あなたがいる所から北と南、東と西を見渡しなさい。わたしは、あなたが見渡しているこの地全部を、永久にあなたとあなたの子孫とに与えよう。』」
(創世13:14-15)

これが「神が与えたもうたカナンの土地」という聖書的約束ですが、ここには西岸のみならずガザ地区も含まれています。
頑迷な彼らがこの考えを修正するのは戦争で負けるか、選挙において反右派が過半数を握るかしかありません。


※後半は別テーマなので明日にまわしました。

 

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コメント

ネタニヤフ政権はどちらにしてもガザ侵攻が終わったら(今はどう終わらせるかの時期)倒れるでしょう。
問題はその後のイスラエルの政権ですね。先日のこちらの記事でも取り上げられたように、一応民主主義をやってるけど政権が安定することがたぶん無理という政治状況です。
対するハマスはもちろんだけど、西岸でパレスチナ独立国家を謳うファタハも先人の故アラファトの伝統を受け継いでいて頭が腐っています。

正直比較するのはおかしいけど、我が国の清和政策研究会の裏金問題なんてショボイこと(もちろんアウトだけど)。
今話題の大谷翔平の契約金ですら遥かに霞む汚職金溜め込みです。
そんな利権塗れな連中とまともに交渉出来るのか?と。。

 西岸地域のうち、自治も治安もパレスチナが行使しているエリアはたった18%です。
アブラハム合意では自治エリアを倍増させ、そのうえ当面の入植を行わない事が交渉のスタートラインでした。
今考えれば、このトランプ案は現実的だったように思えます。

ところで、この時も首相はネタニアフでしたし、むしろそのような「強硬保守政権の時の方が爾後のイスラエル内からの憤懣を抑えられ、したがって約束も守られる」主旨から、提案を急いだようにトランプ政権は言っていましたね。

どっちにしろ「馬鹿げている」として、アッバスは一蹴したわけです。
しかし、アッバスには威勢よく席を蹴る力があっても、受け入れる力がなかったのです。条件闘争の舞台たる交渉に入る事すらも、これを阻む内部勢力に勝てなかった。これは、当時も今も同じ。
ですので、まずパレスチナ側に交渉にたる統治者が現れないときびしいかも知れません。


いずれにしろ今回の戦争があってすらも、中東でのアブラハム合意のトレンドは変わりません。
そこはオバマがやったイラン核合意への憤懣が中東にあって、イランを正しく「地域最大の脅威」とみる国家が中東の大勢を占めるからです。

順番的には同意見です。私見として、今取り組めないことでもあらかじめ出しておくことが、30年も経ってなくてここ数年で入植した土地に関しても「あの時出てなかったから西岸は現在をスタート地点にするよ、入植地はイスラエルだよ」とならないための置き石にはなるかと考えています。小さな石ですが。

おそらくガザの復興は先送りされ、その間にどれだけ西岸地区を併合できるかに現政権は力を注ぐ。
それは入植という彼等にとって尊ぶべき活動とセットなので内側からの批判は難しいでしょう。

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