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2023年12月 7日 (木)

憂鬱なる泥沼に落ちるな

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イスラエル軍が南部侵攻した後のことを考えてみましょう。

「FTは情報筋を引用し、イスラエルが高強度地上作戦をした後、「転換・安定化」のために低強度軍事作戦をする多段階戦略を構想していると伝えた。高強度地上作戦には、イスラエル軍がガザ地区南部まで深く進入してハマスの最高指導者ヤヒヤ・シンワル、ムハンマド・デイフ、マルワン・イッサの3人を殺害する暗殺作戦も含まれた。
高強度地上作戦に数カ月かかるという見方があるが、米国とイスラエルの対話に詳しいある人物は「数週間しかかからないだろう」と予測した」
「イスラエル、1年以上の長期戦計画」…2地域を集中攻撃へ(中央日報日本語版) - Yahoo!ニュース

10月7日、ガザからイスラエル南部のアシュケロンなどに対して、5000発とも8000発とも言われるロケット弾攻撃が行われました。
そしてハマスは重火器で武装してイスラエルに侵入し1200人を虐殺し200人を連れ去りました。
これら大量のロケット弾を製造し、武器、弾薬の貯蔵施設があるのが南部です。
そしてこの南部には、ハマスがエジプトなどの外部から資材を搬入する地下トンネルが延びています。
これらを一掃するのが、今回のイスラエル軍の掃討作戦の目的ですが、この南部も北部に劣らずイスラエル軍にとって難しい作戦となります。
理由は同じように、ハマスが市街地などでゲリラ戦を挑んでくることと、これらの地下工場や武器庫が病院の地下などに設けられているためです。

またそれだけではなく、北部から南部地域に逃げて膨れ上がったパレスチナ民間人200万人の保護を考えねばなりません。
これは想像するまでもなく、北部以上の困難さをともなうことでしょう。

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イスラエル、ガザ南部の地上作戦を強化 地図示し避難指示 - BBCニュース

BBCによれば、イスラエル軍は民間人保護について神経を使っており、戦闘が予想される地域に対して市民に避難を呼びかけるQRコード付きの地図がついたビラを投下し、より安全な地域に誘導しています。

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BBC

このようにこれから攻撃する地域を明示することは、作戦計画をハマスに教えてしまうことになるのでイスラエルのギリギリの住民保護策です。
ただし、このような対応をしたとしても、ハマスが市民を人間の楯として利用し続けている以上、限界があるでしょう。

この南部のハマス掃討作戦が終わった後に来るのが、転換・安定化段階です。
「安定」というと聞こえがいいですが、これはイスラエルのための安定であって、すなわち力による軍事支配です。

「これは2024年末まで続くが、時期は明確でない。これはガザ地区をハマスが存在しない新しい秩序に対応させる過程だ。あるイスラエル高官は以前の軍事作戦や戦争とは違い、今回は確実な終末点がないことを示唆したと、FTは伝えた」
(中央日報前掲)

つまりは、ガザ全域に軍政を敷き、民主主義は極端に制限すると言うことになります。
そしてもちろんパレスチナ自治政府は、その存在さえ許されないことになります。
「二国共存」など話にもなりません。
ネタニエフは、イスラエルの横にパレスチナ国家があることにさえ耐えられない極右なのです。

これは考えるだけで憂鬱な、すさまじく不毛で残酷なプロセスです。
世界からのイスラエルに対する支持は消え失せ、同情すら消え失せることでしょう。
では、このような武力だけが解決方法なのでしょうか。
私はそうは思いません。

あまり報道されていませんが、ガザにはこれといった産業がありません。
つまり自立した国民経済を回せない地域なのです。
これを親ハマスの人たちは「天井がない牢獄」などと呼んで、まるで貧困の責任がイスラエルにあるとでもいうように言っていますが、そうではありません。
その責任はパレスチナ自治政府と事実上の支配者であるハマスが、経済を知らないからです。
知らないというより、経済には関心がないのです。
なぜなら、彼らにとって「経済」とは貰うことだからです。

ガザにあるパレスチナ自治政府と国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の財源は、アラブ各国と先進国からの難民支援で成り立っています。
資金だけでなく、生活物資は水までイスラエルから輸入し、毎朝イスラエルに出稼ぎに行く多くのパレスチナ人労働者で検問所は満杯でした。
もう一方の外部との接点であるエジプトは、ハマスを支援すれば国内のイスラム過激派を勢いづけるために消極的です。
ハマスがエジプトとのトンネルに資材輸入を頼っているのはそのためです。

語弊がある言い方をすれば、ガザの主要産業は「難民」だけでした。
よくガザの大半が貧困だと親ハマスの人たちは言っていますが、これは支援される資金の大半をハマスの指導者が吸い上げて富豪生活を送っているからです。
ハマス全体の総司令官と政治部門のトップを兼ねている、イスマイル・ハニヤは5000億円もの資産を持ち、カタールで大富豪の生活をおくりながらテロを指令しています。
かつてのパレスチナ解放機構(PLO)に君臨していたアラファトは、1兆円もの資産を持っていました。
反米の旗を掲げ、パレスチナ建国とイスラエル抹殺を謳いながら、彼らは骨の髄まで腐り切っていたのです。
そして中東にお定まりの独裁政治に浸りきっていました。

それもそのはず、パレスチナ問題が「アラブの大義」でいるうちは、PLO各派はイスラエルと戦っているふりさえ続けさえすれば、膨大な支援をえることができたのですから、ある種のビジネスでした。
たまにアリバイ作りでテロをしてみせればお褒めに預かってカネを貰えるのですから、腐って行って当然。
しかしやがてパレスティナ自治政府に居すわったPLOは戦うふりすら嫌うようになり、送られてくる援助を血縁で独占するようになります。
この腐敗の頂点にいるとされているのがアッバス大統領で、彼への反発がハマスへの支持につながって、ハマスの権力掌握につながっていきます。

しかしそのPLOにとって替わったハマスも体質的には同根ですから、指導部は王侯貴族化していき、ガザ住民はあいかわらず貧困に置かれていくことになります。
ただしハマスが巧妙なのは、国連などを介して入ってくる巨額資金を「福利厚生」に当てたことです。
病院や学校をせっせと作り、見た目にはちょっとしたミニ福祉国家であるかのようなモノを仕立て上げたのです。
しかしテロリストの悲しさで、経済を興すことなど眼中にないために、あいかわらず経済は崩壊状態でした。

最近のハマスは、政治的に追い詰められていました。
今までハマスを支えていた周辺のアラブ諸国の資金援助は、サウジがイスラエルとの国交正常化に向けた接触を行うことにみられるように細る一方で、大勢としてイスラエルと友好関係を結びつつあったからです。
産油国からハイテク産業立国を目指すサウジからすれば、中東最大の技術立国であり、かつ成長センターのイスラエルと共に共通の経済圏を作るほうが、「パレスチナの大義」などという手垢のついたボロ旗よりはるかに現実的であり、魅力的だったのです。

それでもなお富豪暮らしと独裁政治が止められないハマスの指導者たちに対してガザの内部では、2023年7月末には数千人が集まる大規模な反ハマスデモが発生しています。
腐敗しきったハマス体制に対する、ガザ住民の不満は爆発寸前でした。
これらがハマスをイチかバチかの10月7日の大バクチを打たせたのでしょう。

つまり、ガザはイスラエルなくしては自立できない地域なのです。
このように考えると、ハマスの資金源を断つことにもっとも有効なのは、湾岸諸国とイスラエルが友好関係を持ち国交を正常化することなのです。

そう考えてくると、今回のネタニヤフのとった武力一辺倒の方針は悪手でした。
自衛権に基づく反撃まではいいとして、それは抑制的でなければなりませんでした。
長谷川良氏の「ウィーン発コンフィデンシャル」はこのようなイスラエルの歴史学者ハラリの言葉を伝えています。

「イスラエルの著名な歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏は10月27日の英国の著名なジャーナリスト、ピアス・モルゲン氏のショー(Uncensored)の中で、「歴史問題で最悪の対応は過去の出来事を修正したり、救済しようとすることだ。(略)
歴史で傷ついた者がそれゆえに他者を傷つけることは正当化できない。そして『平和』(peace)と『公平』(justice)のどちらかを選ぶとすれば、『平和』を選ぶべきだ。世界の歴史で『平和協定』といわれるものは紛争当事者の妥協を土台として成立されたものが多い。『平和』ではなく、『公平』を選び、完全な公平を主張し出したならば、戦いは続く」と説明していた」
ウィーン発 『コンフィデンシャル』 (livedoor.blog)

ガザ駐屯イスラエル軍は、まるでアフガンの米軍のようにように周囲を敵意をもったパレスチナ人に囲まれていきます。
イスラエルはこのために常に強力な軍隊を常に送り続けねばならず、多くのイスラエルの青年とパレスチナ人の生命を無駄に費やすことでしょう。

そしてそれが、イスラエルの安全に寄与するかというと、まったくないのです。

イスラエル情報機関「シンベト」元長官 アミ・アヤロンはこう言っていることに、ネタニヤフは耳を傾けるべきです。

「ハマスとは、イスラム教の、非常に過激な原理主義者の集団です。
しかし、ハマスとは軍事部門だけではなく、イデオロギーそのものでもあります。イデオロギーを破壊することはできません。軍事力を使いすぎると、逆にイデオロギーに力を与えてしまうこともあります。人々の意思を抑圧することはできないのです。ハマスの軍事部門を壊滅することはできるでしょう。私が理解するところでは、これが今回の戦争のイスラエル政府の目的です。

イスラエル、パレスチナ双方に非常に大きな痛みを伴いますが、達成することは可能です。
しかし、政治的、イデオロギー的な組織であるハマス、そして多くのパレスチナ人が支持しているハマスを打ち負かすには、人々によりよい選択肢を提示するしかありません。
ハマスと戦う唯一の方法は、2つの国家という政治的地平をパレスチナ人に提示することだと思います。
国際決議に従って、イスラエルの隣に国家を持ち、2つの民族のための2つの国家を実現するのです。
1990年代、パレスチナ人の80%がオスロ合意を受け入れていました。
それは「シオニズム運動に賛同した」ということではなく、パレスチナ人はパレスチナ人の国家を望んでいた、占領が終わる日を待ち望んでいたということなのです。
今回の戦争の政治的な目標は、イスラエル人とパレスチナ人、双方にとってよりよい現実をつくることであるべきです。
私たちは今こそ、イスラエルとパレスチナという、2国家共存を実現させなければならないのです」
イスラエル情報機関元トップが語る「ハマスを怪物にしたのは?」 | NHK

私もこのアヤロンの言葉に深くうなずきます。
もう遅すぎることを承知で言うのなら、イスラエル軍はいまこの時点で停止すべきです。
これ以上の南部への深追いはパレスチナの市民にぬぐい難い虐殺の記憶として残り続け、イスラエル自身を深く傷つけることでしょう。

 

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コメント

 記事あるようにガザ地区の貧困救済・戦後復興には経済振興プランが不可欠です。支援金頼みは逆効果。
ただ、それにはエジプトも同意しているように、ガザ地区の非武装化が必要不可欠です。

かつてイスラエルは数次にわたりガザ地区の貧困に対処すべく、出資を含め様々な対処や提案をパレスチナやハマスに試みて来ました。
2018年には港湾を整備し東洋のシンガポール化のプランを提示、2021年にはインフラ整備と工業化の推進をすべく国際資本導入の提案をしていますが、どちらもハマスに一蹴されています。
ハマスの統治に民衆の生活向上はマイナスでしかなく、ハマス自身の資金ポジションに影響するからです。

ハマスなきあとの統治者がパレスチナであったとしても、非武装であってそれを担保出来る仕組みがあれば、少なくもネタニヤフ後のイスラエルは100%容認するでしょう。
地域での二国間共存は主だった世界中が認める唯一の方途ですので、戦後の機会をガザ地区の貧困解消につなげる事がイスラエルの名誉回復になると考えます。

米国による大日本帝国の破壊と新生民主日本国への再生は、ネタニエフ首相がよく言及するところですわ。原爆や焼夷弾による市民への無差別殺戮は、戦後、(熱しやすく冷めやすい?)日本人は赦していて、今や日米が同盟していて、一部の人達を除くと関係は良好です。ネタニエフ首相の頭の中には、この米国による日本の民主化の成功例があるに違いありませんわ。

思えば米国も、日本改革の成功体験が忘れられずに、その後のチャレンジは全て失敗と言っていいのに繰り返していますわ。私は、ネタニエフ首相の新生民主パレスチナの建国も失敗すると思います。

「日本が特殊」な理由はいくらでもありますが、根本的に「日本は一神教の歴史を持たない」んで、大ドンデン返しにも耐えられるというかすぐに適応してしまえる国民性だからですわ。世俗すぎる国民性なんで、クリスマスで騒ぎ、正月は神社へ初詣して、死んだらナンマイダなんて、私も実にいい加減に生きてます。

マジメな話として、岸田首相はテルアビブへ飛んで、ネタニエフ首相に「バカな真似はやめろ!日本のように上手くいくワケないだろ!」「夢は寝てから見ろ」と、諭してあげるべきだと思いますわ。ユダヤ人のネタニエフ首相には、神ナシでフツーに社会生活してる人間が大勢いる民主国なんて、想像できないと思うんで。

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