• 20250522-022216
  • 20250522-022718
  • 20250522-030230
  • 20250521-004451
  • 20250519-054718
  • 20250519-145622
  • 20250518-093208
  • 20250518-140611
  • 20250518-160806
  • 20250518-162028

« まだわからないのか、日本政府 | トップページ | イスラエル、イラン・コッズ部隊司令官を空爆で殺害 »

2023年12月27日 (水)

なかなかよく出来たエジプトの調停案

S2-020_20231226020101

エジプトが、前向きな調停案を出してきました。

「イスラエル当局者は日曜日、いくつかのヘブライ語メディアに対し、エジプトがハマスとの戦争の停戦と、ガザに拘束されているイスラエル人人質の解放に関する新たな提案をテーブルに載せたことを認め、エルサレムは草案を全面的に拒否しておらず、交渉につながる可能性があると示唆する者もいる。
先週、カイロで行われたエジプトとテロ集団との会談に参加した情報筋を引用したサウジアラビアのニュースサイト「アシャルク」によると、エジプトのイニシアチブは、敵対行為を終わらせ、残りの人質全員を3段階で解放する計画だという」
(イスラエルタイムス12月24日)
エジプト、人質解放、戦争終結、ガザ地区にパレスチナ自治政府・ハマス政権樹立の提案を提出 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

考えてみれば、エジプト以外に調停ができる立場の国はありません。
調停できるのはイスラエル、ハマス双方にパイプを持ち、かつ中立性がある国です。

エジプトは米国とは緊密に連絡していながら、ハマスの指導者ハニエを招いて協議するというまねができる希有な国です。
しかも地理的には遠からず近からず、ガザとはゲートひとつ隔てて準当事国です。
調停案を出すなら、エジプトをおいて他に存在しないでしょう。

停戦の妨げとなっているのは、①人質の解放、②戦後処理、③この地獄の釜の蓋を誰が開けたのかという開戦責任などです。
以上が明確にならないかぎり、イスラエルが協議に乗る可能性はありません。
ただし、③の開戦責任に関しては、ここにこだわりすぎると調停自体が成立しません。

第1に、いかにしてまだ解放されていない135人もの人質を解放させるのか、ハマスからすればこの貴重な人間の楯を失いたくないでしょうから、人質の解放と停戦が同時に行われなくてはなりません。
これをハマスに飲ませるためにはハマスの弱点を知り尽くしており、なおかつハマス支持に偏った国でないことが大事です。

第2に、いまイスラエルの最大の支援国である米国とイスラエルの間で意見が大きく異なるのが戦後処理です。
既報したとおり、イスラエルは現在のファタハ政府も、ましてやハマス政府も強く拒否しています。
米国は自治政府に刷新しろといっていますが、ファタハはしがみついています。

第3に、国連安保理決議に一貫して米国が拒否権を発動して抵抗しているのは、いまやこの戦争がイスラエルのジェノサイドであるかのような歪曲がまかり通っていることです。
あくまでもこの戦争が始まった原因は、ハマスの民間人虐殺がきっかけであって、これに対してイスラエルの自衛戦争が始まったのです。
この戦争責任の所在が明確にならないかぎり、イスラエルは矛を収めないでしょう。

では、この難問にエジプトはどう応えたでしょうか。
エジプトはいくつかの段階にわけてこの難問を解こうとしています。

「エジプトの計画の第一段階は、40人の人質(女性、未成年者、高齢男性、特に病気の男性)の解放と引き換えに、延長可能な2週間の戦闘停止である。その見返りとして、イスラエルは120人のパレスチナ人治安部隊の囚人を釈放する。この間、敵対行為は停止し、イスラエルの戦車は撤退し、人道支援物資はガザに入るだろう」
(イスラエルタイムス前掲)

40人規模の人質を2週間かけて解放させ、一方イスラエルは120人のパレスチナ人囚人を解放します。
この間戦闘は停止します。
これは第3段階の全員解放を前提としたいわば信頼醸成段階です。
おそらくイスラエルはその解放される人数の少なさと、停戦期間の長さに異議を唱えるでしょう。

そして第2段階。

「第2段階では、パレスチナの諸派閥(主にファタハ党が支配するパレスチナ自治政府とハマス)間の分裂を終わらせ、ヨルダン川西岸地区とガザ地区にテクノクラート政権を樹立し、パレスチナの議会選挙と大統領選挙への道を開くことを目的とした、エジプトが後援する「パレスチナ国民会議」が行われる」
(イスラエルタイムス前掲)

この部分こそがエジプト案の核心部分です。
エジプトは、いまある自治政府を一回完全に解体して、新たなテクノクラート(専門知識を持つ技術官僚)のパレスチナ政府を作ってみてはどうかと提案しています。
つまり、自治政府からファタハとハマスの党派色を消してやり直せということです。
そのために議会選挙と大統領選挙を行えと言っています。
これを担保するのは、エジプトが後見人となった「パレスチナ国民会議」です。

この「国民会議」の正体がよくわかりません。
ファタハとハマスから自治政府を解放するという視点は現実性があります。
ハニエとアッバスに権力を握らせておくかぎり、パレスチナが復興することはおろか、調停協議がまとまることさえありえませんから。

問題は公正な選挙の実現方法です。
公正な選挙が行われるという保証が必要です。
本来ならPKOが入ってもいいような場面ですが、国連はあまりにもハマスに偏りすぎました。
エジプトなどからなる選挙監視団がガザと西岸に入らないとむずかしいかもしれません。

そして最終段階の第3段階です。

「第3段階は、包括的な停戦、ハマスとパレスチナのイスラム聖戦テロ集団と関係のあるイスラエルの刑務所に収監されているパレスチナ人治安部隊の囚人(10月7日以降に逮捕された者や、重大なテロ犯罪で有罪判決を受けた者を含む)の未定のパレスチナ人治安囚の解放と引き換えに、兵士を含む残りのイスラエル人人質の解放を含む。
この段階では、イスラエルはガザ地区の都市から軍隊を撤退させ、飛び地の北部から避難したガザの住民が故郷に帰れるようにするだろう」
(イスラエルタイムス前掲)

たぶん第2段階と並行することになるのでしょうが、ここで残りの人質の解放とガザ住民の北部への帰還が開始されます。
おそらくこの案に、米国は乗るでしょう。
そしてイスラエルの意見を聞いた上で、いくつかの修正を経て一定の調停案が誕生するかもしれません。

 

 

« まだわからないのか、日本政府 | トップページ | イスラエル、イラン・コッズ部隊司令官を空爆で殺害 »

コメント

 よくよく考えられた優れた案だと思うし、やはり情勢を良く見ています。現地メディアの評価も良いようです。
イスラエルにとっても、エジプトの提案は無下には出来ませんし。UNRWAやグレーデスのように無能で歪なイデオロギーに偏した国連主導では、この先何十年カネを突っ込んでも絶対に解決しません。

 で、この「「パレスチナ国民会議」ってのをどう捉えるかって事ですが、情痴的なイスラム原理主義を排し、科学主義・合理的な行政を通じて、国民のあるべき福利厚生や幸福を最大化させる目的のものだと理解してます。国民の幸福など皆目考えないパレスチナやハマスなどが反対する事は既定の路線でしょうが、唯一この道しかないかも知れません。

問題は実効性をどう担保するかって事で、後見をエジプト以外の湾岸諸国も担うべきかと。
また、ちょっと名前は忘れましたが、ファタハやハマスと一線を画す現代的リーダーもかつては存在してました。そういう意中のリーダーの存在をエジプトは具体的に認知しているのかも知れません。


コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« まだわからないのか、日本政府 | トップページ | イスラエル、イラン・コッズ部隊司令官を空爆で殺害 »