• S-121_20240303154501
  • S-127_20240303154401
  • S-060_20240303152101
  • 20240303-151852
  • 20240303-153725
  • 20240303-155958
  • S2-006_20240302150601
  • S2-008_20240302150701
  • S2-014
  • S2-017_20240302150801

« 憂鬱なる泥沼に落ちるな | トップページ | ガザ市民はもう限界だ »

2023年12月 8日 (金)

もうひとつの不幸、イスラエルの極右政権

S-043_20231207142001

それにしても、このネタニヤフの不器用さはどうでしょうか。
10月7日から地上進攻まで1カ月も時間があったのなら、ゼレンスキーのようにG7や、湾岸諸国を回って支援要請くらいしなさい。
当時イスラエルは1200人もの市民を虐殺されたという外交上のゴールデンカードがあったのですから、G7諸国なら議会演説くらいできたでしょうし、いまや冷戦関係に戻ってしまった湾岸諸国からさえ同情の言葉とハマステロは許さんくらいの言質を引き出せたはずです。
初動で同情票を固めておけば、後の展開もまるでちがったはずですが、それを作ろうともせずにナニをしていたんですか。

当時、せっせとやっていたのは、盲爆とさえ言われた空爆でしたが、そんなに大慌てでやるような話ではなかったはずです。
自衛権行使については国際法上容認されていたのですから、地上軍を入れてからその指示に基づいてピンポイントで潰していけばよかったのです。
この初動で、ネタニヤフは外交ができない男だということがバレてしまいました。

NHKエルサレム支局長のエルサレム支局長・曽我太一氏によれば、先日亡くなったキッシンジャーには「イスラエルに外交政策はない、国内政治だけだ」と喝破されていたそうです。
ホントそうですね。こういうイスラエル建国以来最大のテロを受けた時ですら、ネタニヤフの念頭にあったのは己が政権の護持と、「エリコ文書」を握りつぶした失態を隠しおおせることだけだったのでしょう。

そもそも、なんでこんなときに限ってネタニヤフなんでしょう。イスラエルには人材がいないのか。
シッチャッカメッチャカな小党乱立のあげく過半数をとれる政党がなく、なんと8政党で連合政権を作ったあげく、こんな極右と右翼が作った政権をまとめられるのはこの男だけだったというのですから、イスラエルの不幸と言うべきでしょう。

「6月30日、イスラエル議会が解散し、ことし11月1日に総選挙が行われることになりました。
イスラエルで総選挙が行われるのはこの3年半で実に5回目です。
イスラエルでは2021年6月、8つの党による新たな連立政権が発足。しかし、与野党の勢力がきっ抗して議会はこう着状態に陥り、政権運営に行き詰まったベネット首相は議会の解散を決意したのです。
連立政権が毎回、過半数ギリギリで成立しているため、政権運営が不安定になるのです」
(NHK2022年7月1日)
なぜ イスラエルでまた選挙? 3年半で5回のわけは | NHK

悪い時には悪いことが重なるというマーフィーの法則よろしく、この極右の闇鍋政権ができたやいなやハマスのテロです。

現在のイスラエル議会には13もの政党や政党連合があります。
朝日が好きそうな多元主義の花盛りです。
元来ユダヤ人はひとり一党のような民族気質のところに、世界各国から様々な考えの持ち主が集まり、ユダヤ人といっても民族的にも多様で、地元のパレスチナ人が
21%もいます。
イスラエル基礎データ|外務省 (mofa.go.jp)

ですから、なにをして「イスラエル人」と呼ぶのかというスタンダードが見いだせない国です。
そこがまたこの国の活力ともなっているのですが、いかんせんやりすぎです。
最も多いネタニヤフが率いるリクードでも29議席しかなく、とうてい過半数61議席には及びません。
次いで、反ネタニヤフが大嫌いなはずのイェシュアティドが17議席と続き、残りの11政党はいずれも10人以下といったどんぐりの背比べ状態です。

20231207-030001

NHK

ちなみに2021年の前政権の時も小党乱立で、このような連立となっていました。

20231207-144330

FOCUS:8党寄り合い イスラエルで12年ぶりの政権交代=坂本正樹 | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp)

前政権のほうがましに見えますが、それは置くとして、結局大混乱の果てにまたまたネタニヤフに6回目の政権が転がり込んだのです。
こういう小党乱立状態で政権を作るとどうなるのでしょうか。
目に見えていますね、なにも決まらないか、極端に過激なことを言う奴が出て、「イヤなら出て行くがいいのか」と脅し、それに力弱きトップが追随するというパターンです。

この「極端に過激なことを言う連中」とは、イスラエルの場合は宗教右派です。

「2022年11月1日に行われた総選挙で最も注目された点は、宗教シオニズムを掲げる極右政党の連合「宗教シオニズム/ユダヤの力」が、前回選挙(2021年3月)より議席を倍以上に増やしたことだった。
宗教シオニズムはユダヤ人による「約束の地(イスラエルの地)」に対する支配の強化がメシアの到来を早めるという宗教解釈に立脚したシオニズムの一形態であり、政治的にはヨルダン川西岸の併合や入植活動の推進、さらに国内政治でもユダヤ人の権利拡大などを主張している」
(NHK前掲)

宗教右派がやりたかったことは、いままで極端な政策に歯止めをかけてきた司法に対しては司法改革をして黙らせる、西岸にはじゃんじゃん移民を行って領土化を既成事実化する、パレスチナ自治政府なんて金輪際認めない、という具合にイケイケドンドンの極右政策です。

そして案の定、自らの首相返り咲きを最優先したネタニヤフは、連立交渉の過程で各党の要求を次々に受け入れ、極右政党などが主張している極端な政策の実行に乗り出しました。
もっとも危険なポストである占領地や警察行政に係る閣僚ポストを手にしたのは宗教極右でした。
彼らは宗教的信念に基づいて信仰を実現しようとしました。

つまり現有のイスラエル領土のみならず、パレスチナ全域は神がユダヤ民族に与えたもうた約束の地だという信念です。
こういう思想的信念は信仰という心の内の問題としているぶんには無害ですが、現実化しようとすると「実力による現状変更」ということになります。

「宗教シオニズム」の党首であるスモトリッチ党首は財務相と兼務で、国防相とは別に国防省内に新設された「第2国防相」という正体不明のポストに就任しました。

この結果、従来は国防相が一括して掌握してきたヨルダン川西岸の占領行政に関する権限のうち、入植地関係など民生事項をスモトリッチが担うことになり軍は大混乱です。
しかも司法から出ている入植地の撤去命令をスモトリッチは勝手に停止し、さすがに見かねて司法命令の実施を求めたリクードのギャラント国防相と衝突しました。
この西岸入植の強行が、パレスチナ問題の解決をどれだけ妨げていることか。

もう一つの極右政党「ユダヤの力」の党首イタマール・ベングビールは、新設の国家安全保障相に就任しました。
このポストは警察行政に関し従来の公共治安相よりも強い権限を持ち、なおかつ従来は国防相の指揮下にあった西岸の警察業務も所掌するというなんとも危険なポジションです。
こんな地位に宗教極右を据えたらどうなるかわかりそうなものですが、ペングビールは就任からわずか5日後の1月3日、エルサレム旧市街地内の聖域「神殿の丘」(ハラム・シャリフ)に入場し、祈祷しようとしました。
このエルサレムは宗教的に極めてデリケートな場所で、1967年にイスラエルは軍事占領して実効支配しているものの、他宗派に配慮して入場はするが祈祷はしないということで折り合ってきていました。
当然のこととして、湾岸諸国は勝手な現状変更として激怒しました。

このような宗教右派は、ユダヤ教の聖典どおり政治をしなけりゃ夜も陽も明けない連中ですから、外交もクソもありません。
オスロ合意なんてとっくに失効、アブラハム合意など知ったことかということになりました。
これではいくら米国が、湾岸諸国と友好関係を結ばせて、ハマスを干上がらせようとしても無駄です。

内政にかまけて外交が吹き飛ぶ、というイスラエルの宿痾が丸出しとなりました。
こんな連中を率いてか、率いられてか、戦時内閣首相をやっているのがネタニヤフです。

石堂ゆみ氏がこのような旧約聖書の一句を引用しています。

主よ。あなたが贖い出された御民イスラエルをお赦しください。罪のないものの血を流す罪を、御民イスラエルのうちに負わせないでください。彼らは血の罪を赦される。
(申命記21:8)

 

« 憂鬱なる泥沼に落ちるな | トップページ | ガザ市民はもう限界だ »

コメント

さすが主さんは知識豊富ですね
双方やり合って疲れきるぐらいしか着地点なさそうです
占領 管理コストはイスラエルに重くのし掛かることでしょう
我が国は双方に小銭渡して関わらないのが一番ですね

停戦してどんな代償を払っても人質を生きて戻すよう求めてデモをする人々がいるイスラエルではなく、リクード議員でイスラエル安全保障内閣のメンバーが「ガザのナクバ2023、それが終わり方」(Avi Dichter農業相)
https://www.haaretz.com/israel-news/2023-11-12/ty-article/israeli-security-cabinet-member-calls-north-gaza-evacuation-nakba-2023/0000018b-c2be-dea2-a9bf-d2be7b670000
(11月12日ハアレツ)
と公言して否定もお咎めも無い極右としてのイスラエルは、そのありようが批判されて然るべきと考えます。
あれは左翼でなくても世界の多くの人をドン引きさせて当然の発言ですが、完全否定も言い訳もないところが、現イスラエル政権がどういうつもりであるのかを窺わせます。
ネタニヤフは「完璧なセキュリティ・コントロールが欲しい、統治はしない」という主旨の発言もしているので、占領するが行政サービスはやらないってことですかね。
被害者としての義を自ら積極的にぶち壊して行くスタイルに、揺ぎはないように見受けます。
ただひとつ、高級でありながらイスラエルでは少数派となる左派リベラルメディアのハアレツが、政権批判と同時に、ハマスの卑劣な犯罪や意外なほど中立な記事も書けるところに、極々僅かな救いと少々の羨ましさを感じております。

ユダヤ人が二人いると、三つの意見が出て、4つの政党ができると言いますね。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 憂鬱なる泥沼に落ちるな | トップページ | ガザ市民はもう限界だ »