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2024年1月

2024年1月31日 (水)

全身をハマスに犯されていたUNRWA

S2024-049

ハマスの10月7日のテロ攻撃に関わったとして解雇されたUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関・アンルワ)12人の職員の続報が、ニューヨークタイムスとウォールストリートジャーナルからでています。
まず、ニューヨークタイムス(1月28日)の記事です。
イスラエル、ハマスを支援したと主張する国連職員に対する請求を詳述 - The New York Times (nytimes.com)

「国連によると、12人のうち1人は死亡が確認され、9人はすでにUNRWAから解雇されたという。2人はまだ調査中である。
イスラエルが訴えた12人のうち、7人はUNRWAの学校教師で、その他は、事務員、ソーシャルワーカー、倉庫管理者などであった。
犯罪の内容については、ニューヨークタイムスが一部、発表したところによると、1人はハン・ユニスの学校カウンセラーで、女性誘拐に関わっていた。また別の1人は、ソーシャルワーカーで、イスラエル兵の遺体をガザへ搬入し、爆弾や車両の手配もしていた。もう1人は、97人の虐殺そのものに参加していたとのこと」
(オリーブ山通信1月29日)
UNRWA職員ハマス協力疑惑:日本もUNRWAへの追加支援停止を発表  2024.1.29 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

20240130-154852

さらにNYTの同記事は

「・携帯電話の追跡調査によると、6人は10月7日にイスラエル国内にいた。
・携帯電話の追跡調査によると、3人は10月7日に集合場所に来るよう命令するテキストメッセージを受け取り、1人は自宅に保管されているロケット弾を持参するよう指示された。
・12人のうちの1人であるハーン・ユーヌスに住むスクールカウンセラーは、息子と協力してイスラエル人女性を拉致した
・ヌセイラートに住むソーシャルワーカーは、イスラエル兵の死体をガザに運び、攻撃当日に弾薬を配り、車両を調整するのを手伝った。
・1人は97人が殺害されたキブツ・ベエリでの虐殺に参加した。
・12人のうち10人はハマスのメンバーであり、1人はイスラミックジハードのメンバー」
(飯山陽note)

またウォールストリート(1月29日)記事によれば
諜報機関が10月7日の攻撃と国連機関職員のつながりの詳細を暴露 - WSJ

・ガザのUNRWA職員1万2000人のうち約1200人がハマスやパレスチナ・イスラム聖戦と関係を持っている。
・ガザのUNRWAの男性職員のうち23%がハマスとの関係をもっており、これはガザの成人男性のうち15%がハマスと関係を持っていることと比較すると、一般人よりUNRWA職員のほうがより一層ハマスと深く関係していることはわかる。
・UNRWA職員の半数近く(推定49%)は、近親者が過激派組織、特にハマスと公式な関係を持っていた。
(飯山前掲)

WSJは「UNRWA職員1万2000人のうち約1200人がハマスやパレスチナ・イスラム聖戦と関係を持っている」、さらにガザ地区では「ガザのUNRWAの男性職員のうち23%がハマスとの関係」を持っているとしています。
このハマスの含有率の根拠はしめされていませんが、UNRWA職員の10%~23%はハマスであるということになります。
これはガザ地区の一般男性のハマスと関係しているといわれる15%を大きく上回っていて、ハマスメンバーをUNRWAが積極的に採用していたことがわかります。
つまりハマスのUNRWA職員が面接して、ハマスのエージェントを採用していたのです。
というか、むしろハマスは意図的にUNRWAの乗っ取りを企んで、ハマスのエージェントを積極的に送り込んだのでしょう。
でなければここまで浸食されません。

ハマスにとってUNRWAを乗っ取ることによって、経済的には各国から送られてくる1年間1800億円ものカネを牛耳ることができ、かつ政治的には「国連」という公正中立の仮面を被って活動することが可能となりました。

いや一部だ、とあくまで言いたいのが中東学者のようです。鈴木一人氏はこうツイートしています。

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鈴木氏によれば、UNRWAの「一部であり全部ではない。UNRWAはガザの支援物資を配給できる唯一の組織だから日本政府が支援を止めてはいけない」としています。これと同様の主張を中東学者と国際政治学者のいつもの方々もしています。
しかし組織の12~23%もハマスエージェントに支配されており、彼らは直接にテロ攻撃に参加して、虐殺にも手を染めていたわけです。
鈴木氏が言うように「一部の不心得な者」たちがだけとはもはや言えないはずです。

では10月7日にイスラエルのクファル・アザのキブツで一体なにが起きたのでしょうか。

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「車や家には火が放たれ、子供を含む遺体があちこちにころがっている。現場にあったのは大人200人と、乳児40人ほどの遺体だった。乳幼児の遺体の一部は、残虐に斬首されているものもあった。
ちょうど仮庵の祭りの最終日でまだスッカがあった。子供の自転車が血まみれになってころがっているような中に、遺体が散在していた。
3日も経っているので、あたりは死の匂いに満ちていたという。首相府担当官によると、記者たちの中には、取り乱したり、嘔吐した人もいたとのこと。
記者たちを案内したイスラエル軍司令官は、メディアに対し、「これは戦争ではない。戦場でもない。赤ちゃんとその母、父親がベッドルームで、シェルターの中で殺されている。これは大量虐殺の現場だ」と語った」
イスラエル、外国人ジャーナリストを連れてクファル・アザの虐殺現場を視察 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

このような民間人虐殺と拉致に「国連機関」が直接に関与していたのです。軽く見るわけにはいかない。

この問題をセキュリティクリアランスの問題に矮小化している者もいますが、これらの人にかかると「おかしな奴はどこの組織にでもいるものさ」ということになります。
冗談ではない。ひとりふたりではありません。
実に組織の2割以上の千人を超えるハマスエージェントを抱えた「国連機関」は、骨絡みでハマスに浸食されていたはずです。

このUNRWAの活動を回していく資金として集まった献金は、2022年度で、11億7000万ドル(約1800億円)にも達します。
これはパレスチナ難民は世界の難民の中でも一種の特権的な位置にあって、国連を含む世界から支援金を受けていることを示しています。

パレスチナ難民は約70万人ですが、世界には難民が溢れていますが、一地域の難民救済にひとつの専用の国連組織が作られ、しかも桁違いに巨額の支援金を75年間も得てきたような地域は他にありません。

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GNV (globalnewsview.org)

しかもパレスチナ難民支援は、本来は自立を支援することが目的であるのに、UNRWA設立から75年たっても貧困から抜け出せず、ハマス幹部だけが大富豪になっている、ということの理由を知りたいものです。
「ウィーン発コンフィデンシャル」の長谷川良氏はこのように述べています。

「それでは国際社会から難民救済資金を得たパレスチナ自治政府はそれでパレスチナ人の生活向上、教育、国民経済の発展に投資しただろうか。現実は、ハマスはそれらの資金で武器を購入し、イスラエルへ侵入するためにトンネルを建設してきた。一方、アッバス議長が率いるパレスチナ自治政府には腐敗、汚職の噂が絶えない、といった具合だ」
「難民」はパレスチナ人だけではない : ウィーン発 『コンフィデンシャル』 (livedoor.blog)

全身をハマスに犯され、人道支援で送られてきたカネで武器を買い、テロに参加し、拉致を行い、日常的には国連が作った学校でテロリスト教育をしている状態であるということは、単に支援に依存をしているだけではなく、完全な失敗だったということです。
ここまでハマス汚染されたUNRWAは一度解体して、ガザ難民には別途な方法で支援を考えるしかないでしょう。
その意味で、G7各国とに協調して日本がUNRWAの支援を一時停止したのはまったく正しい判断でした。

 

 

2024年1月30日 (火)

国際司法裁判所、判決出る

S2024-038

南アフリカが提訴していたイスラエルのジェノサイドについて、国際司法裁判所(ICJ)の判決が出ました。

「イスラエル軍によるガザ地区への攻撃が、パレスチナ人に対するジェノサイド、集団殺害などにあたるかどうかが争われている訴訟で、国際司法裁判所はイスラエルに対して、判決を言い渡すまでの間、住民の大量虐殺などを防ぐため、あらゆる手段を尽くすという、暫定的な措置を命じました。一方で裁判所は焦点となっていた軍事作戦そのものの停止は命じませんでした」
(NHK1月26日)
国際司法裁 イスラエルに暫定措置命じるも軍事作戦停止命じず | NHK | イスラエル・パレスチナ

これではなんのことかよくわかりませんので、もう少し詳しく見ていきます。
この南アフリカの提訴に対して、イスラエルは敏感に反応し、直ちに受けて立つ方針を固めました。
そりゃそうでしょう、イスラエル人が一番使われたくない「ジェノサイド」という言葉を使って、こともあろうにユダヤ人国家が提訴されたからです。
忘れられてきていますが、イスラエルはこのジェノサイドから生き残ったユダヤ人によって建国された国家なのです。
あらためてシェノサイドについておさえておきます。
ジェノサイドとは軽く使われていい概念ではありません。
ジェノサイドとは | ホロコースト百科事典 (ushmm.org)
ジェノサイドは、「国民的、民族的、人種的、または宗教的な集団の全体もしくは一部を破壊する意図をもって取られるような行動」のことです。
20240129-144639
ドナヒュー裁判長 AP
イスラエルの反論です。
「12日の口頭弁論では、イスラエル側共同代理人のタル・ベッカー氏が冒頭陳述を行い、「集団殺害とみなされる行為があったとすれば、それはイスラエルに対して行われたもの」と指摘した。
さらに、「ハマスが繰り返すと公然と宣言している10月7日の虐殺と、現在も続いているガザからの攻撃に対して、イスラエルは自国民を守り、人質の解放を確保するために、あらゆる合法的な措置をとる固有の権利を有している」と主張した。
ベッカー氏は最後に、「イスラエルはハマスのテロリストと戦っているのであって、一般市民と戦っているのではない」と述べ、「南アによる申請は名誉棄損として却下されるべきだ」と締めくくった」
(ジェトロビジネス短信1月15日)

ガザでの集団殺害の提訴を巡り、国際司法裁判所でイスラエルが反論(パレスチナ、オランダ、イスラエル、南アフリカ共和国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)

イスラエルはパレスチナと戦っているのではなく、あくまでもハマスという凶悪なテロリストと戦っているのだ、という主張です。
この部分を意図的に落として情緒的に「パレスチナ人2万5千人が虐殺された」というすり替えが行われていることに、イスラエルは抗議したのです。
イスラエルに、パレスチナ人を民族的に滅亡させようという意志はありません。
あったのは、過剰な民間人の死傷者に現されるような「巻き込まれ」なのです。
これをどう判断するかが、この裁判の焦点でした。

2日間の審理で、1月26日、15人の判事(1人はイスラエル人判事)は、イスラエルがガザでパレスチナ人に対してジェノサイド(大量虐殺)を行っていると訴えたことについて、15対2で、「妥当性」がある、つまりありうると認めました。
ひとりがイスラエル人なので、判事のほぼ全員が「可能性がある」としたことになります。

「ICJは特に、パレスチナ住民を殺害したり、肉体的・精神的に深刻な危害を加えたり、部分的あるいは全体的に物理的破壊を引き起こすために「生活の条件」を故意に破壊するなど、「集団としてパレスチナ住民を破壊しようとする意図を持った行動を取ってはならない」と命じた。
ICJは、イスラエルが「ジェノサイドを犯しうる直接的で公開的な扇動」も防いで処罰し、ガザ地区に必要な援助をより緊急に支援しなければならないと命じた。ICJの暫定措置は、最終判決が出るまでさらなる被害を防ぐための一種の仮処分命令だ。ジェノサイドの疑いそのものに対する本案判決の結果が出るまでには、今後数年かかる可能性もある」
(ハンギョレ1月29)
国際司法裁判所の「イスラエルへのジェノサイド防止命令」、安保理で論議へ(ハンギョレ新聞) - Yahoo!ニュース

このことについて、イスラエルは重く受け止めねばなりません。
いかにハマスが人間の楯を使った卑劣な方法で民間人を危機にさらしているとしても、2万5千人とも言われる死傷者はあまりにも多く、あまりにも悲惨です。

「パレスチナ自治区ガザの保健当局は21日、イスラエルとイスラム組織ハマスによる10月の戦闘開始以降、パレスチナ側の死者が2万5000人を超えたと発表した」
(ロイター1月22日)
ガザの死者2万5000人超、イスラエル・ハマスの戦闘開始後 | ロイター (reuters.com)

ここで出てくる 「ガザ保健省」がハマスの支配下にあり、 かつ、パレスチナ側死者の中にはハマス戦闘員が7千人以上いたとしても、耐えがたい死者数です。
今のイスラエル軍の掃討戦は「殺戮」のようになっているのは事実です。
特に、戦場の大部分が市民が居住する市街地での戦闘にもかかわらず、シナイ半島で使われたような大規模な空爆を戦術としたことは強く非難されるべきです。

国際社会はこれ以上死者を容認しないということです。
少なくとも、ICJはそう見ています。

しかし同時にICJは「停戦」を命じてはいません。
つまり、言い換えれば判決文が言う「パレスチナ住民を殺害したり、肉体的・精神的に深刻な危害を加えたり、部分的あるいは全体的に物理的破壊を引き起こすために生活の条件を故意に破壊するなど、「集団としてパレスチナ住民を破壊しようとする意図を持った行動」をとらねば、イスラエルがハマスと戦い続けることを認めています。
つまりイスラエルのガザにおける戦闘は、国家の自然権である自衛行為であることを認めているといってよいでしょう。
たぶん反イスラエル系は判決の「ジェノサイドの可能性がある」という部分だけを切り取ってプロパガンダするでしょうが、ちゃんと後段で戦闘自体は認めているのです。

ICJが判決で言っているのはそのやり方です。
イスラエルはジェノサイドにならないよう、最善の措置を講じなければならない」とし、イスラエルに対し、1ヶ月後に以下の点を改善するかどうかを見てから再び状況を判断する、という暫定措置だということは、改善すれば継続可能だということです。

その意味では、南アの望むようなイスラエル制裁を回避したバランスがとれた判決です。

イラエルに課された内容は以下の通り。

①イスラエル軍はジェノサイド(大量虐殺)をしないと保証すること。
②イスラエル政府内の閣僚による大量虐殺を先導するともとれる発言に処罰を与えてこれを阻止すること。
③ガザの厳しい人道状況を改善する緊急措置を講じること。
④ジェノサイドに関する証拠隠滅をしないこと。
⑤これらについて一月後に報告すること
国際司法裁判所:即時停戦は命じず「ジェノサイド」の可能性は否定せず 2024.1.27 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

イスラエルが一番恐れていた即時停戦は判決には盛り込まれませんでしたので、イスラエルの半ば勝訴といってよいのかもしれません。

2024年1月29日 (月)

「国連機関」がハマスの虐殺に関与か

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私には特に驚きはないのですが、改めて立証されたということです。
UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関・アンルワ)の職員が、10月7日のハマスの民間人虐殺に関与していたとして、米英豪独加が支援を一時停止しました。
NHKはあくまでもイスラエルが言い出した疑惑だという言い方をしていますが、ハマスとUNRWAの癒着は公然の秘密だったはずです。

「こうした中、ガザ地区で人道支援活動を行っているUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は26日、去年10月のハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃に複数のスタッフが関与した疑いがあるとする情報がイスラエル側から寄せられ、調査を始めることを明らかにしました。
これを受けてUNRWAに最も多くの資金を拠出しているアメリカをはじめ、カナダやオーストラリアがUNRWAへの追加の資金の拠出を一時停止すると明らかにし、支援活動への影響が懸念されています」
(NHK1月27日)
国連スタッフがハマスのイスラエル奇襲関与か UNRWAが調査開始 | NHK | イスラエル・パレスチナ

米国はUNRWAへの第1位の支援国です。
ちなみに以下、ドイツ、EU、スウエーデン、日本と続きます。

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かつてトランプ政権はUNRWAのハマスとの関係を問題視して大幅に予算を削減していましたが、バイデンがこれを復活させました。

「トニー・ブリンケン国務長官は水曜日、米国はドナルド・トランプのパレスチナ人への援助削減を撤回すると発表した。
この措置はイスラエルの反対を押し切って行われ、パレスチナ人との関わりを取り戻そうとするバイデン大統領の選挙公約を実現するものだ。米国は総額2億3,500万ドル以上の援助を行い、そのうち1億5,000万ドルはパレスチナ難民を支援するUNRWAに拠出される。
イスラエルと多くの共和党議員は、イスラエルに対する扇動だと非難しているUNRWAへの援助の復活に反対した」
(axos2021年4月7日)
バイデンは、UNRWAを含むパレスチナ人へのトランプの援助削減を撤回します (axios.com)

したがって、上位国が支援を停止したために日本が必然的に第1位の支援国となりますが、わが国はこの件について沈黙を守っています。
外務省: [ODA] 広報・資料 ODA個別評価報告書  第3章 対パレスチナ援助実績と他の援助国・国際機関の援助動向 (mofa.go.jp)
■追記
日本も一時停止に踏み切りました。

イスラエルのヨアブ・ギャラント国防相は、UNRWAへの資金提供を一時停止するという米国の決定を歓迎し、この動きを「UNRWAに説明責任を負わせるための重要な一歩」と呼びました。

「国際的な取り組み、資金、人道的イニシアチブがハマスのテロリズムやイスラエル人の殺害を煽らないように、大きな変化を起こす必要がある」とギャラントはツイートした。「人道的活動を装ったテロリズムは、国連と国連が代表すると主張する原則に対する恥辱である。
イスラエルのギラッド・エルダン国連大使は声明の中で、「国際ホロコースト記念日に、UNRWAの職員がテロ組織ハマスの協力者であり、国連がイスラエル国家の存在を非合法化する場所になっただけでなく、私たちが長年主張してきたことが証明されたことは、なんと象徴的なことでしょうか。 しかし、その職員は、イスラエルの絶滅の試みと市民の殺害に物理的に加担した」
(イスラエルタイムス1月26日)
UNRWAは、10月7日の攻撃に関与したとされる職員を解雇。米国が資金調達を停止 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

UNRWAラザリーニ事務局長もこれを否定できず、ハマスの虐殺行為に関わったとされる12人の職員を解雇したと述べています。
ハマスの民間人虐殺には国連の車両も目撃されており、関わった職員は12人などというケタではないはずです。
そして単なる数の問題ではなく、UNRWAが骨絡みでハマスに乗っ取られていたことが問題なのです。

「UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は、26日、声明を発表し、「人道支援を届けるUNRWAの力を守るためこれらのスタッフとの契約を直ちに打ち切ることを決めた。また遅滞なく真実を明らかにするために調査の開始を決定した。テロ行為に関与したスタッフは刑事訴追を含め責任を問われることになる」とコメントしました。
その上で「UNRWAは10月7日の忌まわしい攻撃を改めて最も強いことばで非難する」としてガザ地区に捕らえられている人質全員の即時かつ無条件の解放を求めました」
(NHK前掲)

UNRWAがこれら職員を解雇したことで、虐殺に関わっていたことをUNRWAも認めたということになります。
国連職員がテロ組織のメンバーであるばかりか、実際に民間人虐殺に関わることなどあってはならないことですから、さすがに反イスラエルのグテーレス事務総長も、強い遺憾を表明せざるを得ませんでした。

しかしUNRWAとハマスの癒着は秘密とすらいえないようなもので、国連がカネを出して運営している学校でハマスのトンネルが見つかっています。

「ガザ北部のベイトハヌーンでは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する学校近くでトンネル一つの存在を突き止め、破壊したとも明かした」
イスラエル、ガザの130カ所でハマスのトンネル発見し破壊 - CNN.co.jp

UNRWAの学校では、ハマスの教師がテロ賞賛教育を行っていました。

「イギリスを拠点とするNPO、IMPACT-se は2023年11月、UNRWAの学校で使用されている教科書が極端に反ユダヤ主義的で、イスラエル人に対する暴力やジハード、ジハードによる殉教を賛美していることや、教員が配布した教材のなかでイスラエル人に対する爆破テロを「バーベキュー・パーティー」として祝福したり、1978年に13人の子どもを含む38人のイスラエル人を殺戮したテロ実行犯を模範的人物として賛美したりしている事実を報告した。
同NPOはまた、少なくとも13人のUNRWA職員が2023年10月7日にハマスが実行した大規模テロを公然と称賛したり支持を表明したりしている事実、テロをして死亡したハマスの戦闘員18人がUNRWAの学校の卒業生であることを確認できる件などについても報告している。
ジュネーブを拠点とするNGO、UN Watchは、少なくとも20人のUNRWA教師が2023年10月7日にハマスが実行した大規模テロをSNSで祝福した事実を報告し、日本を含むUNRWAへの主要資金提供国に対し、憎悪やテロをあおる教師に資金提供しないよう、UNRWAの責任と義務を追及すべきだと提言している」
(FNNプライム1月3日)
「パレスチナ支援」避けられぬハマスの関与 国連機関との“協力関係”も…背景にある構造的問題とは(FNNプライムオンライン) - Yahoo!ニュース

下動画で子供たちが口々にテロを称賛し、イスラエルと戦う決意を表明している様子が確認できます。

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これではUNRWAが次世代のテロリストを育てているようなものです。

これをUNRWAのセキュリティクリアランスの問題に矮小化させる人もいますが、そもそも自治政府がガザをきちんと統治しきれておらず、ハマスに支配を許しているから発生した問題です。
「自治政府は看板のみ」と私は書いてきましたが、もはや崩壊寸前のようです。

「パレスチナ自治政府には、組織内部の汚職などをめぐり内外から厳しい目が向けられる。自治政府で労働相などを務めたビルゼイト大のガッサン・カティブ教授は「崩壊寸前だ」と危機感をうったえた。
カティブ氏は、イスラエルとの交渉を通じたパレスチナ国家の樹立を掲げながら成果を上げられなかった自治政府について「存在意義を失いつつある」と指摘した」
(日経 2024年1月25日 )
パレスチナ元閣僚、自治政府は「崩壊寸前」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

イスラエルが米国が主導するパレスチナ国家成立を和平の条件にしたがらないのは、統治能力を欠いた自治政府がハマスの支配を許してテロの温床を作り出し、そして10月7日の惨劇を生み出したと考えているからです。
現実に今のファタハの自治政府では、一カ月ともたない失敗国家をひとつ作り、また残存するハマスに乗っ取られることは必定です。
和平を叫ぶのはいいですが、では不可逆的にテロをおこさせない仕組みをどうやったら作れるのか考えないと、また同じことの繰り返しになります。

水面下で進んでいる停戦交渉案は自治政府の刷新を含んでいますが、UNRWAにまで視野を拡げて行く必要があるようです。

 

2024年1月28日 (日)

日曜写真館 日は過る梢の柿と見あひつゝ

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ひとり旅しぶ柿くふた顔は誰 嵐雪

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せめてもの貧乏柿にむめの華 其角

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世中に落そゝくれた熟柿かな 梢風尼

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取尽す梢に柿の入日かな 望月宋屋

 

アップする時期を失して、季節はずれですが、ご勘弁。

 

2024年1月27日 (土)

安倍派解散は福田孫のクーデターだった

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岸田氏のひとりクーデターの派閥解消から数日たって、その内情が少しわかってきました。
解散でもっとも大きな打撃を受けたのが安倍派でしたが、その仕掛けを作ったのは福田赳夫元首相の孫である福田達夫元総務会長を中心とする福田グループだったようです。

福田氏は派閥解散でしょげるどころか、元気イッパイでこう言っています。

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日経

「自民党安倍派の福田達夫元総務会長は19日、安倍派の解散を受けて今後の組織のあり方について触れた。「政治は国民の信頼がなければ動けないという原点に戻ったうえで新しい集団をつくっていくことが大事だ」と話した。党本部で記者団に語った。
福田氏は長年の政治家としての経験などを「知識」と表現し「知識を伝承することで政党は強くなる」と訴えた。「派閥ではなく新しいガバナンスの形」で組織をつくる必要性を唱えた。(略)
福田氏は解散について「国民に大きな政治不信をつくったから、けじめをつけるということだ」と述べた。福田氏ら有志は総会に先立ち、安倍派を解散すべきとの決議文をまとめ塩谷立座長に提出していた 」
(日経1月20日)
自民党安倍派・福田達夫元総務会長「新しい集団つくる」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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福田赳夫は「金権政治嫌い」 田原総一朗が見た福田家の政治家たち | AERA dot. (アエラドット) (asahi.com)

ところで実は清和会を作ったのは、達夫氏の祖父の福田赳夫元首相です。
福田赳夫氏といえば、あの1976年に起きたダッカ日航機ハイジャック事件で「一人の生命は地球より重い」といって巨額の資金を渡して、三菱重工爆破事件を起こした極悪テロリストを釈放してしまった人物です。
福田赳夫氏は、テロリスト対処の教科書には絶対にやってはいけない事例として歴史に名を刻んでいます。
その息子の福田康夫氏は、90年代には佃煮ができるほどうじゃうじゃいたリベラル・平和主義・護憲派でしたが、どのようなわけか首相に。

しかし護憲派リベラルは、安倍政権となって日陰の身に追いやられて絶滅危惧種となりました。
彼ら党内護憲派が死滅に追い込まれたのは、中国の軍拡膨張という現実を突きつけられたからですが、彼らは安倍という極右のせいだと信じているようです。

この党内護憲派の両首相の孫が、なんと政敵の安倍氏の派閥にいたのですから世の中わかりません。
達夫氏にとってこんな「偉大」なジジとパパを持ち、世が世なれば清和会はオレ様の派閥なのに、なにが「5人衆」だ、カーペっと、というルサンチマンに満ちた日常を送っていたのでしょう。
達夫氏の今回の派閥解消も、元を正せば、福田ジジが1979年、池田勇人首相に対抗して立ち上げた「党風刷新連盟」に源流を置きます。
福田ジジは「清和会」を創設し、スタンスとしては経世会(旧田中派)による金権政治の批判しました。
福田マゴからすればジジの初心に帰れ、というところでしょうか。

「福田氏が掲げたのは「政治は最高の道徳である」という格言だった。福田氏は72年の総裁選で田中氏と争い、政治資金の透明化と派閥解消を訴えたが、議員への買収工作を仕掛けた田中氏に敗れた」
(毎日12月21日)
「安倍派」なぜゆがんだ? 福田赳夫氏の清く正しい理念どこへ | 毎日新聞 (mainichi.jp)

一方、清和会(清和研)は岸元首相の流れを汲んで、安倍氏の父である安倍晋太郎氏が領袖を務めてきた派閥でもあります。
福田氏の考え方は安倍氏と真逆の対中融和平和主義で、同一の派閥に同居しているほうがおかしなほど水と油でした。

安倍氏が二度目の総理を辞した後、自身の派閥に戻ろうとしましたが、それに反対し続けたのがこの福田マゴグループと一部幹部でした。
そのために安倍氏はあれだけ大きな足跡を残した党の領袖でありながら、帰る所がないという期間があったのです。
これを見かねた盟友の麻生氏は、安倍氏に対して新たな派閥を作って、麻生派と合流しないかと救済策を出したほどです。
引退年齢を迎えつつある麻生氏としては、一回り歳の若い安倍氏に麻生派全体を任せてもいいという気持ちすらあったようで、今の安倍派の惨状をみて彼がどう考えているのか知りたいものです。
結局、清和会に隠然たる影響力を持つ森元首相(安倍派顧問)の裁定があって、清和会は安倍氏が継ぐことになったのですが、わずか数カ月で凶弾に倒れます。

安倍氏なき後もゴタゴタは続き、下村博文氏と5人衆が対立し、再び森氏の裁定の下で下村氏が弾き飛ばされ、塩谷氏が議長となった形で、5人の合議制という構造が生まれました。
この「5人衆」は萩生田、西村の両氏が頭ひとつ抜けているていどの、カリスマ不在のドングリの背比べの指導部でした。

これに徹底的に不満だったのが、「本来ならオレが安倍派のボス」と常々思っている福田マゴでした。
彼はメディアの安倍派叩きと呼応した岸田ひとりクーデターに同調して、一気に安倍派解散を掲げたクーデターに走りました。
この福田達夫氏をリーダーとする福田グループの20人のクーデター部隊は当選1回から5回のいわゆる若手議員に属します。

「自民党安倍派(清和政策研究会)に所属する福田達夫元総務会長ら有志の議員は18日、党本部で会合を開いた。オンラインを含め衆院当選1〜5回の20人超が参加した。塩谷立座長ら幹部に派閥の政治資金問題の経緯について説明を求める意見や、安倍派を解体すべきとの主張が出た」(日経1月18日)
自民党安倍派・福田達夫氏ら「幹部は説明尽くせ」「派閥解体を」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

この福田クーデターグループは、さらに茂木幹事長に「5人衆」の追放処分も求めたといわれています。
これに対して、元々指導力が弱いうえに責任問題を抱える「5人衆」はまともに抵抗できずに、言うがままに派閥解散を飲んでしまったようです。

この福田グループは、派閥解消後福田グループを結成して、この大乱を迎えた党内にジジ・パパ譲りの「保守本流」護憲派閥でも作りたいのでしょうが、この仲間の寝首をかくようなやり方に嫌悪感は強いはずなのでどうなりますことやら。
もっとも達夫氏自身の政治スタンスは、ジジパパよりももう少し現実的にはなっているようですが。
福田達夫 - Wikipedia

残るメンバーたちは麻生派へと吸引されていくのかどうか、当分星雲状態が続くはずです。
いずれにしても、私は巨大派閥に収斂されていくような気がします。

 

 

 

 

2024年1月26日 (金)

今度は「安倍派5人衆」に離党勧告だとさ

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国内政治を語ろうとすると、すべからくワイドショーみたいになってしまうなんて、情けない。
しかしそうさせているのは、自民党執行部自身ですから仕方がない。

「自民党執行部が、派閥による政治資金規正法違反事件を巡り、立件対象とならなかった安倍派幹部について、自発的な離党や議員辞職を求めたことがわかった。自ら身を処さない場合、党として厳重な処分を科すことを検討している。
事件に関して十分な説明をせず、政治的な責任も取っていないとして、世論や自民党内で批判が高まっていることから、厳しく対応せざるを得ないと判断した。
事件に関して十分な説明をせず、政治的な責任も取っていないとして、世論や自民党内で批判が高まっていることから、厳しく対応せざるを得ないと判断した。
安倍派幹部としては、同派座長の塩谷立・元文部科学相や、派閥の事務を取り仕切る事務総長を務める高木毅・前国会対策委員長、松野博一・前官房長官など同派中枢の「5人衆」らを念頭に置いている。党則に基づく処分には、党の役職停止、離党勧告、除名などがある」
(読売1月25日)
自民執行部、安倍派幹部に離党要求…立件見送られた「5人衆」ら念頭 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)


「立件対象とならなかった安倍派幹部について、自発的な離党や議員辞職を求めた 」ですと。
立件対象に特捜ですら出来なかったということは、法的にはノットギルティだということです。
法的根拠もなく、本来「同志」(なのか?)であるはずの自民党が追放処分にする、呆れてものが言えません。
中国人からの違法献金が発覚した宏池会パーティーのほうがよほど悪質、かつ没義義ではないのですか。
そもそもこの「裏金疑惑」とやらは共産党が仕組んだもの。
まんまと共産党のいうがままになって党を解体に追い込んで、さぞかし自民執行部は満足でしょう。
下写真では、刷新会議直前まで小物ふたりがナニやら話し込んでおります。
どうせ、せこいことでしょう。
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なぜ岸田政治が「ワイドショー的」になるかといえば、岸田氏が世論の風向きだけで政治をしているからです。
岸田氏の政治方針は自らの信念で決めず、今日はコッチの風が吹けば右を見、明日あっちの風が吹けば左を見る、俗にいう風見鶏で決めているからです。
日本社会では「風」はテレビ局が作るものと決まっているようですから、結局ワイドショーを見て政治を徹底することなります。

たとえば、そろそろ安倍氏暗殺犯が裁かれようとしていますが、1審までこんなに時間がかかってしまったのは、あまりにも宗教法人潰しに夢中になって寄り道を食ってしまったからです。
今回の政治資金収支報告書「不記載」問題も同様で、派閥解消なんてトンチンカンな方角にボールを蹴らねば、もっとスッキリと対応が決まっていたはずですが、ワイドショーが派閥解消もいい加減だ、「5人州衆」を打ち首獄門にせねば世論は承知しないぞ、と叫んでいるために今度はそちらへボールを蹴ろうとしています。
派閥が全廃にならない?
それは当然です。岸田氏にはもうひとつの宏池会である麻生派や、幹事長派閥の茂木派までは潰せないのはわかりきったことだからです。

そのうえ茂木氏がよほど権力に淡白な人物でもないかぎり岸田降ろしは始まり、次は自分が総理総裁だと信じて疑っていないはずです。
1月からの通常国会は、自分が火を点けた政治資金の「裏金」問題で、防戦一方になるのは目に見えています。
野党とメディアは叩けるだけ叩き、さらに支持率はこれ以上下がる余地がないほど下がって20%台を割り込むでしょう。
後ろ側からのスナイパーことゲル氏は、「予算成立後、首相が辞めるというのはありだ。心中密かに決意していればいい」(BSフジ)と言っていますが、まぁそのとおりでしょう。
岸田降ろしは予算成立までは顕在化しなくても、予算審議が終わりさえすれば、もう撃ち方始めでしょうからね。
そもそも来年夏の参院選を岸田氏で戦えるなんて思っている自民党議員はひとりもいないはずです。

いくら派閥からカネと人事の権限を剥奪されようと、首相を出した派閥は隠然たる結集力を保ちます。
だから、茂木派と麻生派はいくらドンガラになろうと、麻生、茂木を核にして残り続けます。
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すると世論様はなんと言うかといえば、派閥を残し、政治資金規正法の厳罰化もできないなんて不徹底だということを叫びだすわけです。
東京新聞は、今モーレツに張り切っておられます。
「自民党は23日、政治刷新本部の会合を開き、政治改革の中間取りまとめ案を了承した。会合後、岸田文雄首相は記者団に「派閥ありきの自民党から脱却する」と高らかに宣言した。
だが、この改革案の内容にはのっけから疑問符が付いている。焦点の派閥のあり方を巡っては「いわゆる派閥の解消、派閥から真の政策集団へ」との書きぶりで、派閥全廃には踏み込めなかったからだ。
 政治資金パーティーの開催や閣僚人事への働きかけの禁止を掲げてはいるが、これでは派閥は政策集団と名前を変えただけで存続できることになる」
(東京1月25日)
矛盾だらけの自民派閥 「派閥=政策集団」と言いながら「解消して政策集団へ」 そもそも30年前に解消したはずでは?:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
東京新聞からこう言われるのはしかたがありません。
岸田氏は23日の政治改革の中間取りまとめ案について、党の政治刷新本部で一任を取り付けましたが、その中身は派閥からカネと人事権限を剥奪したに止まりほんとうの解決である政治資金規正法厳罰化を明記できなかからです。
しかも自分に近しい麻生派と茂木派が派閥を残すと決定したために派閥の全面解消に踏み込めませんでした。
これでは目的はただの安倍派潰しだといわれても仕方がありません。実際そのとおりですから。
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そして派閥解消できなかったことを転化するかのように、今度は「安倍派5人衆」を自民党から叩き出そうとしています。
スゴイね、政調会長や現職大臣打だった人物で、次期総裁選に出馬しただろう相手に離党勧告だってさ。
経済政策的には、「5人衆」が追い出されれば自民党リフレ派は壊滅です。
「自民党派閥による政治資金規正法違反事件を巡り不起訴となった安倍派(清和政策研究会)幹部の離党論が浮上してきた。安倍派幹部が処分もないまま、党内にとどまるのは望ましくないとの声が広がったためだ。世論の批判が根強く、野党が26日召集の通常国会で証人喚問を求めている」
(日経1月25日)
安倍派幹部に離党論浮上 自民党、政治資金巡る引責 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
離党勧告の実例としては、コロナの自粛時の銀座のクラブ訪問で3人の衆院議員が離党勧告を受けましたが、これを念頭に置いているようです。

「塩谷立元文部科学相ら複数の安倍派幹部が党執行部と対応について協議した。
自民党は2021年に新型コロナウイルスの緊急事態宣言中の夜に東京・銀座の飲食店を訪問した3人の衆院議員が離党した例がある。この事案を引き合いに「誰も離党せず役職停止という程度ではすまない」との主張が党内であがる」
(日経前掲)

ならば安倍派、二階派、岸田派の不記載に関与した議員100名以上も全員が連座するのが筋でしょう。
「安倍派5人衆」というのは、安倍憎しのメディアの煽りにすぎないのですから。

すべての大臣、党執行部、委員長ポストから追い出され、とうとう幹部は党追放、昔だったら頭を剃って高野山送りだそうですから、もう自民党なんか見限ったらいいんじゃありませんか。
もはや自民党はゆるやかな連合党であることを止めたということです。
こんな頭が腐った党には未来はありません。

 

 

2024年1月25日 (木)

イスラエル2週間の停戦を提案か

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重大な兆候が現れました。
イスラエル戦時内閣に亀裂が走っています。
ネタニヤフ内閣で和平派が公然と台頭したようです。
それもエイゼンコット元軍参謀総長という軍トップにいた人物で、戦時内閣の一員です。
国内では産経が1面で伝えてます。

「カイロ=佐藤貴生】イスラム原理主義組織ハマスと戦うイスラエルの「戦時内閣」に亀裂が生じている。メンバーの1人がパレスチナ自治区ガザで拘束されている人質の救出を最優先にすべきだと述べ、戦時内閣を率いるネタニヤフ首相と異なる方針を示したからだ。ネタニヤフ氏の支持は低迷しており、中央政界で近く大きな動きが起きるとの観測もある。
異論を唱えたのは、戦時内閣を構成する5人のうちの1人であるエイゼンコット元軍参謀総長。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると18日放映の地元テレビのインタビューで、ハマス壊滅という目的は「達成されていない」とし、「敵の殺害より先に民間人(の人質)を救出することが(戦時内閣の)任務だ」と訴え、ハマスと交渉を行うべきだと主張した」
(産経1月23日)
イスラエル戦時内閣に亀裂 首相の求心力低下が加速 「近く政局で変動」の見方も - 産経ニュース (sankei.com)

現地のイスラエルタイムスは、「イスラエルはハマスに新しい提案をして、反応を待っている」と書いています。

「イスラエルは、カタールとエジプトの調停者を通じて、ガザに残る136人の人質の段階的解放と引き換えに、ハマスに対する軍事攻撃を2カ月間停止することに同意する提案を提出したと報じられている。
この提案は、イスラエルが戦争を完全に終わらせるというハマスの要求に耳を傾けるものではないが、イスラエルが以前の提案で行ったよりもさらに進んでいるように見えると、2人のイスラエル当局者を引用したニュースサイトAxiosは報じている
この申し出は、ホワイトハウスの中東問題顧問ブレット・マクガークが、人質取引を進めることを狙ったエジプトとカタールのカウンターパートとの会談のためにこの地域にいたときに公表されたと、アメリカ当局者はタイムズ・オブ・イスラエルに語った。
イスラエルは現在、新しい提案に対するハマスの反応を待っており、今後数日のうちに進展が見込まれると慎重ながらも楽観的であると、イスラエル当局者はアクシオスに語った」
(イスラエルタイムス1月23日)

イスラエル、人質の段階的解放を求めてガザで戦うガザ地区での2カ月の猶予を申し出る |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

米政治紙AXIOSによれば、ホワイトハウス中東問題顧問のブレット・マクガークがカタールに向かっており、その目的は人質解放とそれを確保するための停戦交渉だとしています。

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ブレット・マクガーク・ホワイトハウス中東顧問
米の中東担当顧問、イスラエル・カタールなど訪問へ | ロイター (reuters.com)

「130人以上の人質がいまだにガザで拘束されている。イスラエル当局は、数十人の人質が10月7日か、その後の数週間に死亡したと述べている。
・バイデン大統領の顧問であるブレット・マクガークは日曜日にエジプトを訪問し、その後、ハマスが拘束している人質の解放を確保するための交渉を進展させることを目的とした協議のためにカタールに向かっている。
・カタールとエジプトの調停者は、合意に向けて前進するために、当事者間の溝を埋めようと何週間も試みてきた。
・米国当局者はアクシオスに対し、そのような合意に達することが、ガザでの停戦につながる唯一の道かもしれないと語った」
イスラエル、ガザ地区での2カ月間の停戦を提案 (axios.com)

イスラエル軍は北部・中部での戦闘はほぼ終結させましたが、南部のハン・ユニスではてこずっています。
思わぬ激戦となっており、まだハマス指導者の摘発も、人質の解放はおろか、その安否情報すら得ていないようです。
ネタニヤフは、戦争開始から一貫してハマス壊滅と人質救出のふたつを目的に掲げて、「戦闘で圧力をかけることが人質の解放につながる」と主張してきました。
戦闘に勝たないかぎり人質は帰ってこないのだという考えです。
そして北部・中部での戦闘を、南部のハン・ユニスにまで拡大しましたが、戦闘は長引き人質解放の目算ははずれました。
そもそも北部住民に南部への避難を勧めながら、攻撃を南部に拡大するのはいかがなものでしょうか。
しかし、この戦争でハマスの根絶を意図しているネタニヤフは、さらに軍を南下させてしまいました。

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時事 戦争研究所による

「130人前後の人質は拘束されたままで、うち20人以上が死亡したとみられる。2万人以上の住民が死亡したガザへの攻撃でもハマスは壊滅できていない(略)
イスラエルのメディアが11、12日に公表した世論調査では、ネタニヤフ政権の連立与党が、次の選挙で現在の64から44~48に議席を減らして国会(定数120)で半数を割り、中道右派の「国家団結党」など野党が躍進するとの結果が出た」
(産経前掲)

戦死者も急増しています。
冒頭に紹介したエイセンコット元参謀総長も息子と甥を戦死させています。
下の写真は息子のガル・エンセンコット軍曹で、彼は北部のトンネル掃討で戦死しました。

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エイセンコット元IDF参謀総長息子も戦死:地上戦以降戦死者89人 2023.12.8 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

このまま戦闘が膠着すれば、さらに人質は死ぬだろうし、イスラエルは国際的孤立を深めるのは必至です。
イスラエル国民への世論調査ではネタニヤフの連立与党の支持が大きく下がり、中道右派が伸びました。
このまま選挙を行えばネタニヤフはまちがいなく失脚します。

一方、米国はは22日、イスラエルが仲介役のカタールなどを通じ、ハマスに対して、人質全員の解放などと引き換えに、戦闘を約2カ月休止する提案を行ったと報じました。
その交渉内容は

「交渉舞台裏:2人のイスラエル当局者によると、イスラエルの戦争内閣は10日前に、ハマスが拒否した過去の取引とは異なっており、以前のイスラエルの提案よりも前向きな、人質取引の新たな提案のパラメータを承認したという。
・イスラエル当局は、ハマスからの返答を待っていると述べたが、今後数日間で進展が見込めるかどうかについては、慎重ながらも楽観的であると強調した。
・提案によると、この取引には、生存している残りの人質全員の解放と、死亡した人質の遺体の返還が段階的に含まれるという。第1段階では、女性、60歳以上の男性、重篤な状態にある人質が解放される予定だという。
・次の段階では、女性兵士、兵士ではない60歳未満の男性、イスラエル人男性兵士、人質の遺体の解放が含まれる」
axios.com

ネタニヤフには国内外から、一時的にでも停戦交渉に応じて、人質を取り戻すことの方が重要ではないなのかという声がぶつけられています。
信頼を取り戻すためにも、総選挙するべきではないかとの声も出始めました。
ネタニヤフは、イスラエルは戦争を終わらせることはないと強調し続けていますが、それが徐々に非現実的になりつつあるのは事実です。

 

 

2024年1月24日 (水)

ロックスターとしての「トランプ」

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トランプが共和党候補になることが9割9分決まりました。
なんと2位のデサンティスが降りたのです。
これで候補者レースで残るは、ニッキー・ヘイリーだけとなりました。

「ワシントン=坂口幸裕】米南部フロリダ州のロン・デサンティス知事は21日、X(旧ツイッター)で11月の大統領選の共和党候補者指名争いから撤退すると表明した。トランプ前大統領を支持する。共和予備選は前大統領とニッキー・ヘイリー元国連大使の2人に絞り込まれた。
デサンティス氏は21日、Xに動画を投稿し「勝利への明確な道筋が見えない以上、支持者にボランティアや寄付を求めることはできない。選挙戦を停止する」と話した。「予備選に参加する共和有権者の大多数がドナルド・トランプにもう一度チャンスを与えたいと思っているのは明らかだ」と明言した。
15日の共和予備選初戦の中西部アイオワ州党員集会では前大統領に次ぐ2位だったものの、30ポイントほど差をつけられた。同州の全99郡を回るなど最重点州として支持拡大をめざしたが、成果は乏しかった」
アメリカ大統領選挙、デサンティス氏撤退 トランプ氏を支持 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

追記
ニューハンプシャーが開きました。
もちろんハランプの勝利ですが、予想以上にヘイリーーがつけています。


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ニューハンプシャー州予備ライブ:ドナルド・トランプがニューハンプシャー州で勝利し、ニッキー・ヘイリーを破る-BBCニュース

デサンティスはトランプ支持に乗り換えると言っていますから、彼のポイントが上乗せされることになります。
ちなみに、アイオワの得勝率はこのようになっています。

「アイオワ州共和党の発表(集計率99%)によると、トランプ氏の得票率は51・0%。デサンティス・フロリダ州知事(45)が21・2%、ヘイリー元国連大使(51)が19・1%で続いた。4番手の実業家ラマスワミ氏(38)は7・7%に沈み、選挙戦からの撤退を表明した」
(朝日1月16日)
共和党候補者選び、アイオワで号砲 トランプ氏、51%の得票で大勝 [アメリカ大統領選挙2024]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

するとなんと72%となってしまい、ウヘェ~という感じで食欲も失せますが、トランプの勝利はもはや絶対不動のものとなっています。
完全にトランプが共和党内を固めきりました。
ヘイリーは副大統領候補をねらうでしょう。
彼女はウクライナ支援についても妥当な考えを示しているので、トランプが次期大統領となった場合に懸念されているウクライナ支援打ち切りやNATOとの決別という最悪な結果には歯止めがかかるかもしれません。

まるでトランプはロックスターのようです。
では、どうしてトランプがここまで強力になってしまったのでしょうか。
トランプは余計なことは言いません。
口にするのは敵対陣営の罵倒と、たったひとつの政策である「不法移民をブロックしろ」「メキシコとの壁を作れ」「グレートアメリカアゲイン」ということだけといっていいくらいです。
一般の候補が作る政策パッケージはそのうち大統領選の本選挙になれば出してくるのでしょうが、予備選挙にはその陰すらありません。
1期目を見ればわかるだろうというとなのか、候補者討論集会に顔さえ出しません。
小粒候補は相手にしないと余裕をかますこともあるでしょうが、討論会でテーマになる諸々の国内外のテーマに応える気がないからです。
しかし、このシンプルな手法のほうが訴える力が強いことをトランプは熟知しています。

古くからの共和党支持者である政治学者のピットニーはこう言います。

「共和党の人々はトランプの言うことが好きなんだ。殆どが『不法移民がアメリカの血を汚している』という発言を支持している。多くの人が、それが世界史の非常に酷い章(ヒトラーの著作)と似ていると指摘しても、共和党員はそのレトリックから目を背けようとしない。(中略~かつては富裕層が共和党を支持していたが)最近は主に大学教育を受けていない白人が支持する政党になった」
(TBS1月22日)
可能性高まる“もしトラ” 何故アメリカはトランプを選ぶのか?【報道1930】|ニフティニュース (nifty.com)

「不法移民がアメリカの血を汚している」ですか、頭を抱えるような差別発言です。
「血を汚す」などという表現には、ナチス優生学の亡霊が蘇ったような嫌悪感さえ感じます。
しかしこういうリベラルメディアが絶対に容認しないような修辞が、彼を労働者階級のヒーローにしています。
それを聴く大衆は、今の米国で我が物顔のポリコレをものともしないトランプ親分にしびれるわけです。
メディアが叩こうとどうしようと、ワーキングクラスはニューヨークタイムスなど読まないからです。

アイオワ州で長年共和党の下院議員を務めたウォルター・コンロンはこう言います。

「昔は金持ちは共和党に投票し、中間層は民主党に投票し、貧困層は選挙に行かないもんだった。(中略)これまで10年連続でトランプ支持者以外の共和党員が支部などの運営をしていたが、直近の執行部の顔ぶれは大半が親トランプ派に取って代わった。
多くは共和党の会合で見たこともない人たちだ。(私はトランプ支持ではないが)バイデンとどちらかを選ぶことになったらトランプのレバーを引くよ。引く時に指に鎮痛剤を注射してね。
仕方なくトランプを選ぶが、(ホントは)他の人の方がずっといいと思っている」
(TBS前掲)

このへんが共和党知識層の平均的な塩辛い見方でしょう。
つまりトランプは、いわばブランドとしての「トランプ」と化していて、生身のドナルド・トランプではないのです。
経済学者のスティーブン・ムーアは、マーチャンダイジング(商品化計画 )の「商品としてのトランプ」をいみじくもこう評しています。

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TBS

「彼はロックスターのようだ。人々は彼を愛している。特に労働者階級の人たちは彼が自分たちの代弁者だと感じている。トランプは並み外れてカリスマ的な男だ。みんな彼の頭の良さを過小評価している。彼は素晴らしい男、ゴルフが大好きで、庶民的で、テレビをよく見る。彼はアメリカを理解している。マーケティングの天才だ。彼は“トランプ”をブランド化した。それは素晴らしいブランドで、彼は偉大なプロモーターで、好感が持てる人物…。つまりトランプには多くの人が知らない面があるのだ」
(TBS前掲)

米国選挙は沿岸部を中心とした青い州(民主党)、伝統的に保守的な赤い州(共和党)そして、選挙によって左右するスイング州という構造だといわれています。

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〈米大統領選2024〉投開票まで1年、「揺れる州」増す重み - 日本経済新聞 (nikkei.com)

前回大統領選の構図はこうでした。

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基礎からわかるアメリカ大統領選挙 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

全国的には、共和党3割、民主党3割、中間層4割だといわさています。
しかし現在の世論調査では、スイング州(激戦区)とされる8州すべてが共和党優勢という結果でやりようがない状況です。
元来は民主党支持だったイスラム系も、米国のイスラエル・ハマス戦争方針を嫌って離反していると伝えられています。

大げさにではなく、トランプが次期大統領になるならないではなく、なった場合どのように対応するのかを考えねばならない状況になってきました。

 

2024年1月23日 (火)

派閥解消、今後どうなっていくのか

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では、岸田氏がどうしてこんな自爆行為のようなことをやったのでしょうか。
統一教会問題もそうでしたが、岸田さんは危機に陥ったとみるや、トンデモの方向に弾を撃ち返す習性があります。
安倍氏暗殺犯人の勘違いをメディアが騒ぎたてると、それを増幅させてしまい宗教法人取り消しまで突っ走ってしまいました。
統一教会の法人格を取り消しても、テロリズムがなくなるわけでもなんでもありません。

今回の不記載問題も同じで、派閥を解消しても解決されません。
問題は派閥にあるのではなく、政治資金の透明性の取り扱いであり、派閥が悪いわけではありません。
派閥はすべての人間の集団につきまとうものであって、派閥がないことがいいことではないのは、共産党の異論をいっさい認めない独裁制をみればわかるでしょう。

自民党の派閥には若手が勉強会を通じて、政治の実際を学んだり、派閥に意見を持ちかえることで現実政治を動かすことも可能でした。
そのときには、議員連盟や部会と違って、派閥には拘束性があるために力となりました。
たとえば宏池会と安倍派が財政金融政策や対中外交においてかなりの違いがあるように、自民党内に右から左までの政策の選択肢を与え、首相派閥の交代によって疑似政権交代を行うことも可能でした。
岸田氏はこの派閥が「裏金づくり」に関与したとして全否定したわけですが、たぶん二階翁がいうように似たようなものができるだけのことです。

当初、岸田氏は財務省筋が共産党にリークして起きたといわれるこの不記載問題を使って、目の上のたんこぶである安倍派を一掃しようとしたようにみえます。
自分で今になって「事務的なミスが積み重なって」というような事案を、あえて「裏金づくり」とあざとくメディアに煽らせることで最大派閥の安倍派幹部を揃って打ち首獄門に処し、次いで二階派にも延焼しました。

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自民党から派閥なくなる?「勝負に出た」岸田派解散の真意は…「安倍派」どうなる? (tv-asahi.co.jp)

そして岸田氏本人は12月7日には派閥を離脱してしまい、知らぬ顔の半兵衛を決め込む予定でした。
これがうまくいったなら、圧倒的優勢な安倍派、政敵の二階派に壊滅的大打撃を与えられるはずでしたが、なんと自分の岸田派の足元にも延焼してしまったのが誤算でした。

そもそもこの問題は、大騒ぎするようなテーマではありませんでした。
現代の2・26将校を気取る特捜があれだけ大騒ぎし、メディアに情報をリークして煽らせても、結局は会計責任者しか立件できなかったていどのテーマなのです。

「自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件を受け、最大派閥の安倍派(清和政策研究会)では、派閥の会計責任者や所属議員が立件された。
責任論が浮上している安倍派の幹部「5人組」は結局、立件されなかった」
(東京1月19日)
立件を逃れた安倍派「5人組」、議員辞職は?離党は? 派閥解散が決まった日に語った「責任」:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

さすが赤旗よりヒダリの東京だけあって悪絡みしていますが、初めから特捜は立件できるはずがないことはわかっていたはずです。
だから安倍派だけは「裏金」と書かせて「5人衆」を打ち首にし、自分の派閥は「不記載」とメディアに書かせて逃げきろうとしたのでしょう。

当時から、元東京地検特捜部の高井康行弁護士はこう言っていました。

「政治資金規正法では、責任を問われるのは政治家ではなく、原則的には収支報告書を作成する会計責任者になります。そのため、事務総長など派閥幹部や国会議員本人を立件する場合、会計責任者との共謀が認められなければなりません。
高井弁護士:「会計責任者については、故意があるかどうか。その次の問題は、会計責任者と議員の間に共謀があったかどうか。大きく言えば、この2点です」
高井弁護士:「故意が成立するためには、問題になっている資金が、政治資金パーティーの収益の一部であること。これが客観的要件。次に主観的要件として、収益の一部だと当事者たちが認識していること。それに連なって、その金は収支報告書に記載すべき金だと認識していること。にもかかわらず、意図的に記載しなかったこと。意図的に不記載にした報告書を提出したこと。これらが要件になります」
高井弁護士:「客観的に、派閥開催の政治資金パーティーの収益の戻りだという認識があったかどうか。今までの報道によると、客観的には収益の戻りのようですねと。次に、会計責任者が収益の戻りだと認識していたのかどうか。それについては『政策活動費だと思っていた』『制作活動費は記載する義務がないので、記載しなかった』と言っています」
【報ステ】焦点は“共謀”元特捜検事に聞く…議員の立件可能?安倍派・二階派強制捜査 (tv-asahi.co.jp)

まともに考えれば、不記載問題は文字どおり政治資金報告書に記入していなかった悪しき慣習ていどのことで、事務方が修正申告すればよいだけのことでした。
政治家が会計責任者に対して、「お前、このカネを隠して裏金としておけ」という証言がとれなければ、仮に立件しても裁判は持ちません。
特捜はたぶん政治家を立件できないことをわかっているからこそ大騒ぎを演じて、まるで疑獄事件のように騒ぎ立てることで、政治家を粛清しようとしたのでしょうね。
実にアンフェアなやり方です。

でも、これってどこかの会社から贈収賄でカネをもらった、外国企業から袖の下をもらったという角栄先生のロッキード疑獄とは、次元がまったく違う案件なのです。
ハナから、自分らが政治資金を集める目的で開いたパーティで得たカネの一部を議員個人に貫流させたというだけのことです。
なんの贈収賄関係もありません。ここが大事です。
だから党首として岸田氏は初めから「事務処理のミスが重なって生まれた。このことについては謝る。直ちに修正報告する」で突っぱねれば良かったのです。
それをあえて火種に燃料を投下して大火事にしてしまい、自民党を丸焼けにするのですから、岸田さんって草食系の顔をしてけっこうやり手なのかもしれません。
少なくとも自分では異様に張り切っているようです。

「『隗(かい)より始めよ』だ」。昨年12月まで約11年率いてきた岸田派の解散について、首相は19日、面会した党青年局メンバーにこう強調した。解散表明に先立ち、首相は18日、同派座長の林芳正官房長官に方針を伝達。所属する官房副長官や閣僚経験者にも短時間で根回しを済ませた。国民世論に派閥への批判が強まる中、首相周辺は「岸田派が率先しなければならない」と語った」
(時事前掲)

これで派閥は大部分が消滅しますから、一定の当選回数を持つ古株議員は派閥という装置を失ってしまうことになります。
残った派閥は抵抗し続けるでしょうが、メディアが叩きまくるでしょうから影響力は削がれます。
するとどうなるかといえば、派閥という古くからのコアが消失して、いままで派閥がモチ代と称して配っていた選挙資金や政治資金が、党の中央から直接配られることになります。
党中枢と官邸が圧倒的な力を持つようになるのは必至です。

そして全員が「無派閥」という自民党始まって以来のキテレツなことになりますから、派閥の力学とは無関係な構図で今年の総裁選を迎えることになります。
元々無派閥だった議員は、このことだけで圧倒的な優位を占めることが可能です。
ところで、今、無派閥ってだれでしょうか。
高市さん、菅さん、小泉ジュニアなどが無派閥です。
ゲル氏は小派閥を持っていますから違います。

彼らは派閥力学の外にいますから、いままで総裁選で得票を得られなかったのですが、一点してその弱みが強みに変化します。

そしてもうひとつの起きるであろう現象は、旧弊たる派閥に代わって各種の議員連盟と部会が日の目をみることです。
たとえばその中には「日本の国益と尊厳を守る会」や「積極財政推進議連」などがあります。
もちろんここに限らず、初めて自民党議員が派閥ではなく、同じ理念と具体的政策をもって議論し、離合集散する下地が生まれるでしょう。
これで自民党が政治理念と政策を競うほんとうの近代政党になれたらバンバンザイですが、そううまくいくかどうか。
いずれにしても、岸田氏が総裁選で再び選ばれる可能性は皆無となったことだけは確かです。

 

 

 

2024年1月22日 (月)

臆病者の大勇気が自民党をぶっ壊すか?

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岸田さんってホントよくわからないお人です。
稀に見る臆病者なのか、それとも勇猛果敢な改革者なのか。
なんと自分の支持母体の宏池会(岸田派)を解散してしまい、その煽りでグラグラだった清和政策研究会(安倍派)と志帥会(二階派)もガラスのように砕け散るようです。あらあら。

「岸田文雄首相が自民党岸田派(宏池会)解散という賭けに出た。派閥の政治資金パーティー収入裏金化事件で内閣支持率がどん底状態から抜け出せない中、1957年から続く名門派閥の解体で捨て身の反転攻勢を図る。首相を支えてきた第2、3派閥の麻生派と茂木派からは首相の独断に「徹底対決だ」と不満が高まっており、政権基盤が揺らぐ危うさをはらむ」
(時事1月21日)
岸田首相、捨て身の派閥解消 反転攻勢狙い、危うさも 麻生・茂木派が反発、党内動揺〔深層探訪〕(時事通信) - Yahoo!ニュース

なにも能登半島地震の対処に追われている今やらなくても、とは思いますが、自民党をぶっ壊すと言ったかつての小泉パパクラスの衝撃度だったはずです。
なんの相談もなかった副総裁の麻生さんと幹事長の茂木さんはワナワナしながら、ゼッテェに派閥は解散させないからなと言っているようです。

これはこれで正常な反応です。
解散すると言った二階さんも、さすがは古狸、こんなことをのたもうています。

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東京

「この日、二階派(志帥会)でも、派閥の元会計責任者と二階氏の秘書が政治資金規正法違反の疑いで立件された。リャク略)
その上で「派閥並びに私自身を含む所属議員の政治資金について収支報告書に記載漏れを確認した。私は政治への信頼を取り戻すためにこの際、志帥会を解散するという結論に至り、所属議員の了承を得た」と語った。
一方、派閥の元メンバーが集まる可能性を問われると「人は自然に集まってくるものだから。派閥解消だから、マスコミに文句言われるからあっち行け、とは言えないからね。そこらは自然体で、常識の範囲でやっていきたい」と述べた。
二階氏は総会後に会見を開き、「派閥が悪かったわけでも、金をごまかしたわけでも何でもない」と語気を強めた」
(東京1月21日)
二階派は解散、でも二階俊博氏「人は自然に集まってくる」 裏金事件に「金ごまかしたわけでもない」:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

たしかに二階翁の言うように、いったんは解散して、遠心力が働いたとしても、やがて二階さんのような面倒見がいい大物がいる派閥は、なんとなく再結集する可能性は残っています。

かつての吉田茂にルーツを持ち、角栄時代には我が世の春だった旧竹下派の平成研究会(茂木派)ははどうでしょうか。
解散するとは言っていませんが、自分が幹事長をやっている党本部に一任するようなことを言っています。

「会計責任者で終わらせない、秘書で終わらせない、きちんと政治家が責任を持つような制度を作っていかなければいけない」と話しました。
また、自民党では政治刷新本部で派閥のルールなどについて議論が進められていますが、茂木氏は「派閥の政治資金であっても、今後は党が責任を持って関与する仕組みを作る。派閥がお金や人事のための集団だと見られることがないよう、党主導で新たな仕組みを作って抜本的な是正策をとっていきたい」と強調したほか、派閥の政治資金パーティーについては「これだけ厳しい目が向けられている中で、このまま続けるということにはならない」との考えを示しました」
(TBS1月21日)
【速報】自民・茂木幹事長「政治家が責任持つ制度を作らなければいけない」 派閥の政治資金パーティーめぐる裏金事件|ニフティニュース (nifty.com)

茂木氏はまだ従来の党のガバナンスの枠内で収められると考えているようです、甘い。
派閥解体の波はすべての派閥に押し寄せるはずです。
政治刷新本部に無派閥の大物である菅氏を据えた時点で、岸田氏の意図ははっきりしていたはずです。

次に麻生派ですが、こちらは頑張るといっています。

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麻生氏「麻生派存続の意向」総理に伝達 裏金事件巡り安倍派・岸田派・二階派は解散 | TBS NEWS DIG

「自民党の麻生太郎副総裁は、自身が率いる麻生派(56人)を存続させる意向を固めた。自民党関係者が20日明らかにした。
 麻生氏は、岸田文雄首相が岸田派解散を表明した18日、首相に「立件された者がいないのに派閥を解散するのは理屈が立たない。派閥はやめない」と電話で伝達。首相も派閥の存廃は各派閥が判断することだとの認識を伝えた」
(毎日1月20日)
麻生派は解散せず 麻生氏が意向固める 首相に伝達(毎日新聞) - Yahoo!ニュース

麻生さんは岸田派と合流して大宏池派構想をもっていましたが、もうそれどころじゃないやね。

最悪は、党内最大派閥でありながら、偉大なカリスマなき後の小粒政治家が集団合議で運営していた清和研究会(安倍派)です。

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「自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件を受けて、「清和政策研究会」=安倍派は派閥の解散を決めたと発表しました。
安倍派は19日夜、党本部で座長を務める塩谷 元文部科学大臣や「5人衆」と呼ばれる有力議員で、事務総長の高木 前国会対策委員長、常任幹事会のメンバーの松野 前官房長官らが出席しておよそ1時間半、議員総会を開き、派閥を解散する方針を決めました。(略)
その上で、「清和政策研究会の総会を開き、今回の経緯について説明をする中で、われわれ幹部の責任のとり方や派閥の今後について十分に意見をいただき、結果的に清和政策研究会を解消することを決定した。発言したほとんどの議員が派閥解消を主張した」と述べました」
(NHK1月19日)
自民党安倍派 派閥解散の方針を決定 政治資金めぐる事件で | NHK | 政治資金

安倍派はなんの抵抗もできないまま、まるで党内クーデターのようなキシダトルネードに巻き込まれて、唯々諾々と幹部5人が打ち首獄門に付されてしまいました。
安倍氏がいないということが、いかに党内力学を変化させたのかわかります。

安倍派は安倍元会長が還流を問題視し、「やめろ」と指示を出して、いったんは止まったはずの議員への還流が、いったい誰の指示で復活したかを公表すらできないという危機対応能力ゼロがバレて墓穴を掘りました。
結局、鬼籍に入った元会長2名に責任をなすりつけるという形で収束を図ろうという姑息さです。
醜悪の極みで、潰れてしまいなさい。
安倍派は仮に他派閥が再生したとしても、もはや再生不能でしょう。

ではどうしてこんなことがおきたのでしょうか。
そしてこの岸田クーデターの今後はどうなっていくのか次回に続けます。

 

 

 

2024年1月21日 (日)

日曜写真館 北風が浚ひて湖上無一物

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朝おそき日を霧はれの湖の上 飛鳥田れい

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霧飛ぶ湖上夜がひたひた去つてゆく 加藤知世子

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青あらし鳥くるひとぶ湖上あり 中田剛

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冬浜に憩ひ湖上の舟に坐す  山口波津女

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流星の声発したる湖の上 大串章

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東風の月湖上にまろび来る如し 石井保

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暁や湖上を走る青嵐 石井露月 

 

 

2024年1月20日 (土)

やっと辞めたか、志位委員長

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共産党の志位委員長が、やっとやっと、もうひとつおまけにやっとのことでお辞めになるそうです。

「共産党は、党大会で、志位委員長が交代し、新しい委員長に田村智子・政策委員長を起用する人事を発表しました。共産党の委員長に女性が就任するのは初めてです。
共産党の党大会は、4年ぶりに今週15日から開かれ、最終日の18日新たな執行部人事が発表されました。
それによりますと、2000年から20年以上委員長を務めてきた志位氏が交代し、新しい委員長に田村智子・政策委員長が起用されました。
共産党の委員長に女性が就任するのは、ことしで102年となる党の歴史で初めてのことになります。

田村氏は、長野県出身の58歳。国会議員の秘書などを経て、2010年の参議院選挙で初当選し、現在3期目です。
4年前には政策委員長になり、国会で「桜を見る会」の問題の追及などにあたってきました」
(NHK1月18日)
共産党 志位委員長交代 新委員長に田村智子氏 起用発表 | NHK

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NHK

小池晃氏が委員長になると思っていましたが、田村氏が追い抜いて委員長になってしまいました。
これでかつて田村氏にパワハラを働いた小池氏のほうが部下となります。(苦笑)
覚えておられるでしょうか、小池氏は集会で進行役をしていた田村氏に間違いを指摘されて逆ギレしたことがありました。
こんなかんじです。

「小池氏は壇上で「相模原市議団の松本千賀子議員団長」と名前を挙げた。小池氏が壇上を降りた直後、司会を進行していた田村氏が「相模原市議団長のお名前は松本千賀子さんではなく、正しくは松永、松永千賀子さんでしたので、訂正をいたします」とすぐに訂正。その後、地方議員候補者からの発言に移る際、小池氏は田村氏のもとに詰め寄った」
(フラッシュ2022年11月14日)
共産党・小池書記局長が「パワハラ叱責」を謝罪 議員たちの「じつは気になってた」発言に「もの言えぬ党」と集まる批判 | Smart FLASH/スマフラ[光文社週刊誌] (smart-flash.jp)

当時の双方のやりとり。

「ちゃんと松永って読んでるって」(小池氏)
「名前ですよ」(田村氏)
「訂正する必要ないって」(小池氏)
(フラッシュ前掲)

バカだねぇ。ただの名前の読み間違いなんですから、あっさりと頭をかいてごめん訂正します、でいいじゃないの。
それをメンツが大事で居直るから、委員長になりそこなうのです。
こういうことでキレる奴って、会社でもトップになれるわけがありません。
会場は共産党員ばかりの集会で、聴衆は間違いをわかっていたそうですが、書記局長という党ナンバー2のご威光にひれ伏して沈黙。
さすがに見かねた田村氏が注意したら、逆ギレされてしまったということのようです。
後に、小池氏が自己批判(共産党以外では死語)しましたが、経歴に大きな汚点を残したようです。
叱り飛ばしたほうに上司になられる、こりゃ一種の懲罰人事ですな。

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NHK

ところで、盛んに共産党は清新なイメージをアピールしたいようですが、(なんせ20年も志位さんが居座り続けましたからね)、この人事だれが決めたんでしょう。

「共産党は党大会最終日の18日、新指導部人事を決定する。全国から選ばれた党員でつくる中央委員会が、党幹部らでつくる常任幹部会から提案された名簿を審査し、委員長人事などを決める。ただし、党関係者によると、提案内容が拒否されることはない。
 田村智子政策委員長は党大会初日の15日、大会決議案の報告で「民主的選挙によって中央委員会を選出し、新しい中央委員会は党指導部を民主的選挙によって選出する」と強調した。党規約が「党内に派閥・分派はつくらない」と定めているとして「現在の選出方法は必然的に導かれるものだ」と語った」
(毎日1月17日)
共産指導部人事、その選挙は自由? 党員から疑問視 18日決定 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

党のボスたちだけで作る秘密サークルである常任幹部会がブラックボックスで決め、そのまま中ボスたちの集まりである中央委員会に上意下達するのです。中ボスたちに拒否権はありませんから、そのまま通ります。
おー、なんつう民主的組織(笑)。
同じことを自民党がやったら、野党は談合政治とボロ叩きするでしょうな。

ちなみに岸田さん、本当に安倍、二階、岸田の3大派閥を解散してしまいましたが(このことについては来週)、共産党はそもそも派閥なんかありません。
だってベタ一面全部志位派ですから。
「派閥を作らない」というと風通しがよさそうですが、志位派以外「作らせない」のです。

ですから、共産党においては女性が委員長になるならないなどどうでもいいことです。
党首公選もできない党のトップに女性がなったとしても、その背後には前ボスの志位氏が議長でいて院政政治をするだけのことです。
その志位氏も20数年間の治世の初期は、前委員長にして議長であらせられる不破氏に支配されていました。
ほんとうに清新をアピールしたいのなら、フツーの党のように党首選をして、代表を決めることです。

共産党では、党首をだれにするか、路線をどうするのかについて党内部で議論されたことはありません。
それどころか、内部でなにが議論されているのか党外に話してもいけません。
唯一許されているのは、「赤旗」に書いてあることを単位ごとに集まって読み合わせて実行することだけです。

議論などすると様々な意見や要求が出てきて分裂するからだ、というので、そのために規約には分派禁止条項まで作っています。

●日本共産党規約
第3章第17条
全党の行動の統一をはかるために、国際的・全国的な性質の問題については、個々の党組織と党員は、党の全国方針に反する意見を、勝手に発表することをしない。」
日本共産党規約 

彼らがファシズムだと決めつけている自民党など、年がら年中党首をくさすゲル氏みたいな人がメディアに登場するのですが、そんなことをしたら共産党では即時アウトで除名です。

こんな牢獄のようなところにも、党内部から党首選要求が上がったことがあります。
総選挙結果に関する覚書・了 | 松竹伸幸オフィシャルブログ「超左翼おじさんの挑戦」Powered by Ameba (ameblo.jp)

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松竹伸幸氏
私、共産党の党首選に出ます!~「自衛隊活用論」を唱えてきたヒラ党員の覚悟 - 松竹伸幸|論座 - 朝日新聞社の言論サイト (asahi.com)

「共産党の元職員で今も党員の男性が19日に都内で会見を開き、「党首公選」の必要性を訴えた。志位和夫委員長が20年以上にわたって在任していることに異を唱えた形で、内部から執行部批判が出るのは異例だ。
この男性は、松竹伸幸氏(67)。党職員時代は党政策委員会の安保外交部長などを務めたという。会見で党の閉鎖性を指摘したうえで、「現場の党員の声が表に出て議論されることで、党の組織的な課題が解決する」と強調。「党首公選」の導入を主張した。実現すれば、自ら立候補する考えを示した。
党によると、党員数は約27万人。トップの委員長は約200人で構成する中央委員会から選ばれ、一般の党員は直接関わらない。志位氏は2000年に委員長に就いた」
(朝日2023年1月19日)
日本共産党員が「党首公選」要求 20年以上在任の志位委員長に異議 [共産]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

この松竹氏の提言に対する共産党の反論は、答えたのが当の志位氏でもなければ、幹部会でもない、たかだかといっては失礼ですが、機関紙編集局次長あたりが出てくるというのも、いかにもこの党らしい尊大さです。
しかもその理由がお前は規律違反だと決めつけて威嚇するだけですから話しにもなりません。

もちろん松竹氏は党規に党首公選がないのがオカシイといっているのですから、これでは議論になりません。
まれに内部がどうなっているのか窺い知ることができるのは脱洗脳に成功して辞めた脱会者からだけで、彼らは背信者のように扱われて葬られます。

というわけで、この党、相当に薄気味悪くありませんか。
同じ党内で議論してはいけない、隣の「同志」たちと勝手に連絡をとってもいけない、という極度に風通しの悪い組織で、党員も国民のひとりとして憲法の基本的人権に基づく様々な議論をしたいはずです、それもがダメだそうですからいやはや。

田村氏は志位氏のテーチャーズペットだから委員長になれたのです。
彼女は早稲田から一貫して民青で、卒業後は民青の専従としてほぼすべての人生を党員生活に費してきた人です。
志位氏もそうですが、シャバを知らない、会社でメシを食ったこともない生粋の純粋培養型党員です。
そんな人が「清新」なはずがないではありませんか。
ハッキリ言って、この党はカルト政党です

 

 

2024年1月19日 (金)

トランプ圧勝

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共和党候補を決める党員集会のトップであるアイオワでトランプが圧勝しました。
米国の候補者選びは世界に稀なやり方で、同じ日にやるのではなく、まるでカードを一枚一枚めくっていくように各州を開けていきます。
その初回がアイオワだったわけです。

次のニュージャージーでどうなるかわからないので決定的なことは言えませんが、トランプは選挙戦にもっとも必要な「勢い」をつけています。

「[デモイン(米アイオワ州) 15日 ロイター] - 米共和党の大統領候補指名争い初戦である15日のアイオワ州党員集会はトランプ前大統領の勝利が確実になった。トランプ氏は過去最大の差を付けて勝利する見通しとなっており、計4つの刑事裁判を抱えながらも指名獲得への独走態勢を鮮明にした。トランプ氏に代わる候補として注目されていた2位争いはデサンティス・フロリダ州知事が制した。3位はヘイリー元国連大使だった。
トランプ氏は自身が創設した交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に「アイオワよ、ありがとう。みんな愛している!」と投稿した。
エジソン・リサーチによると予想票数の95%を集計した時点で、得票率はトランプ氏が51%、デサンティス氏が21%、ヘイリー氏が19%。アイオワ州共和党党員集会でこれまで最大の得票差で勝利したのは1988年のボブ・ドール氏の12.8%ポイント」
(ロイター1月16日)
米共和アイオワ州党員集会、トランプ氏勝利 2位デサンティス氏 | ロイター (reuters.com)

大統領選挙というのはトライアスロンのように出来ていて、本選に出るには各州で党の候補者にならねばなりません。
今回はその最初の扉が開いたということです。
実にあしかけ2年以上もかかる長距離レースなので、この間にどんどんと候補者がボロボロ落ちていくことになります。
今回も4位の実業家ビベック・ラマスワミが早くもギブアップして選外になりました。
残るは、若さとハンサムを売り物にするディサンティスか、ヘイリー姐御の二人に絞られてきました。

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ロイター

アイオワが白人が多い保守的な州だから、ということを言う人がいますが、次のニュージャージーの結果がこれを覆すとは思えません。
つまり、よくも悪しくも、何もなければ共和党候補はトランプでほぼ決定したといってよいでしょう。
残る候補はなんとか2位につけて、副大統領の座を目指すことになります。

「何もなければ」という意味は、連邦最高裁がトランプに立候補資格を剥奪する可能性が残っていることです。

「[ワシントン 5日 ロイター] - 米連邦最高裁判所は5日、11月の大統領選に向けた西部コロラド州の共和党予備選へのトランプ前大統領の出馬を認めないとした同州最高裁判断の是非について審理することを決定した。
2月8日に口頭弁論を開く。コロラド州予備選が3月5日に予定されており、判断を急ぐ意向だ。
コロラド州最高裁は昨年12月、支持者らの議事堂襲撃をあおったトランプ氏は、反乱などに関わった者が公職に就くこと禁じる憲法の規定に抵触したと判断。同州大統領選で出馬資格を認めないとした」
(ロイター1月6日)
米連邦最高裁、トランプ氏のコロラド州予備選出馬資格判断へ | ロイター (reuters.com)

州最高裁によってはトランプが支持者に連邦議事堂を襲わせ、副大統領だったペンスに投票結果の変更を強要したとして出馬資格を剥奪する判決を出しています。
トランプが憲法修正第14条3項の「米国に対する暴動や反乱に関与した者は、国や州の官職に就くことができない」との条項に該当するのかどうかについて連邦最高裁の判断待ちです。
他の州最高裁も連邦最高裁の判断待ちとなっています。

「[ワシントン 17日 ロイター] - 米メーン州の裁判所は17日、トランプ前大統領が大統領選の同州予備選に出馬する資格があるかどうかについて、コロラド州における同じ問題で連邦最高裁の判断が出るまで結論を持ち越すよう、州務長官に命令した。(略)
こうした中で裁判所のマイケル・マーフィー判事はベローズ氏に対して、最高裁の判断が全てを変えてしまうので、それから30日以内に改めて決めるべきだと命じた」
(ロイター1月15日)
メーン州のトランプ氏出馬資格問題、連邦最高裁の判断後に結論持ち越しへ | ロイター (reuters.com)

つまり最高裁の判断次第で、最悪の場合トランプは大統領候補にすらなれないことになります。
逆に言えば、仮に連邦最高裁が立候補資格を認めた場合、そうとうの確率でトランプが大統領選に勝利する可能性が浮上します。

一方、民主党は同じくアイオワで民主党大会を開き、候補投票を行ったが、あくまでも大投票候補選びの大会ではなく、党の地方支部の定期集会でしかありませんでした。
候補投票の結果はスーパーチューズデーに発表するとしていますが、今のところバイデン以外に有力候補がいない状況ですので、超新星が生まれない限りバイデンの勝利に決まっています。

バイデンは身内にスキャンダルを抱えすぎです。

「保守派ポッドキャスターのダン・ボンギーノ氏によると、ミシェル夫人の周辺が騒がしいのは偶然ではない。同氏は、これは左派の懸念を反映していると言う。バイデン氏が副大統領だった間に、息子のハンター氏とその仲間が外国のオリガルヒ(新興財閥)から約2000万㌦を受け取っていた証拠を、下院共和党の調査官らはつかんでいる。そのため、今後、バイデン氏に不利な情報がさらに明らかになるのは間違いない」
民主、オバマ夫人に高まる期待 バイデン氏に不安-米大統領選 | ワシントン・タイムズ・ジャパン (washingtontimes.jp)

こういう決まった結果しかないような選挙は盛り上がるはずがありません。
残るは、パイデンが老齢問題や健康問題で出馬を辞退することだけが頼みです。
というわけで、民主党はやる前から沈滞しきっています。
超新星のミシェルオバマが出るとなれれば、米国メディアは諸手を上げて大応援団を結成することでしょう。

「オバマ元大統領のミシェル夫人の名前が、2024年大統領選のバイデン大統領に代わる民主党候補として、一部の民主党議員のウィッシュリストに載り続けている。保守派によれば、このような異常事態の一因は、バイデン大統領の息子ハンター氏の捜査によって、選挙前にバイデン家の資金疑惑を巡ってさらに不利な情報が明らかになるのではないかとリベラル派やメディアが懸念していることだという」
ワシントン・タイムズ・ジャパン (washingtontimes.jp) 

ちなみに、ミシェルは出るとは言っていません。

「(ミシェル)オバマ氏は当時、「興味があれば、そう言う。参戦しようとは思っていない」と語っていた。ホワイトハウスは8年間で十分であり、子供たちにこれ以上の犠牲を強いることはしたくないと述べた。
 「大変な仕事だ。こちらが走れば、子供の人生は止まってしまう。私たちが不平を言うことはないから、その大変さは分からないと思う。だが、それは事実であり、現実であり、重要なことだ」
(ワシントンタイムズ前掲)

現在のところ、大統領本選でバイデンVSトランプになった場合、民主党びいきのCNNですらトランプが勝利するという予測を出しています。
経済界はすでにトランプ勝利として動いています。

「ネットニュース企業のメッセンジャーと調査会社ハリスXは12月5日、2024年大統領選挙などに関する世論調査結果を発表した。それによると、トランプ氏とバイデン氏を候補者として、2024年大統領選挙が今日実施された場合、誰に投票するかという問いで、トランプ氏との回答が47%とバイデン氏の40%を上回った。
また、経済誌「エコノミスト」と調査会社ユーガブが11月に実施した世論調査(注2)では、トランプ氏、バイデン氏の大統領としての仕事ぶりをどう評価するかとの問いで、「素晴らしい」と「良い」と回答した割合の合計は、トランプ氏47%、バイデン氏34%と、トランプ氏が上回った」
(ジェトロ短信2023年12月06日)
ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)

米国には赤い州(共和党)青い州(民主党)スイング州(毎回変わる)の三種類の州があり、スイング州の動静が選挙の勝敗を決める構造です。
この8州あるスイング州は、すべてトランプ優勢であり、これを覆すのは至難の業です。
そして、トランプが連邦最高裁に資格停止されないかぎり、バイデンに勝機はありません。

 

 

 

2024年1月18日 (木)

北朝鮮の「新たな立場」とは

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北朝鮮がこんな不可解なことを言い出しました。
BBCからです。

「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は15日、最高人民会議(国会に相当)で、韓国との統一はもはや不可能であり、憲法を改正して韓国を「第1の敵国」に定めるべきだと述べた。国営の朝鮮中央通信(KCNA)が16日に報じた。
KCNAによると、金総書記は南北統一を所管する3機関を閉鎖するとも述べた。
韓国の尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領はこれに対し、北朝鮮からのいかなる挑発にも「何倍も強力に」対応すると述べた。朝鮮戦争が1953年に停戦となって以降、南北は分断されたままになっている。平和条約は締結されておらず、北朝鮮と韓国は形式上は戦争状態にある」
(BBC1月17日)
金正恩氏、「南北統一」の目標を放棄 韓国を「第1の敵国」に定めるべきと - BBCニュース 



正恩は最高人民会議での演説で、憲法を改正し、韓国は「第1の敵、不変の主敵」であると位置づけ、南北統一に関連する全機関の解体し、南北関係について「新たな立場」をとるとしました。

「これを受けて13日付けの朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は「敵との関係について担当する部門の幹部らが参加して、12日決起集会が開かれた」と伝えました。
このなかでは、韓国について北朝鮮の「政権崩壊」と「吸収統一」を追求してきたと非難した上で、「南半分のすべての領土を平定しようという軍の行動に歩調を合わせる」という方針を確認しました。
そのうえで、史上初の2000年の南北首脳会談を受けて発足させた団体や、韓国との事業を担ってきた団体などを挙げ「平和統一に向けて設置された関連団体をすべて再編する」としています」
(NHK1月13日)
北朝鮮 韓国との事業を担う団体 再編へ | NHK | 北朝鮮情勢

ナニをいまさら、です。
ムン時代に形だけ作った韓国との交流団体や経済団体を解散させるというのですが、そんなものがまともに機能していたことがあるんでしょうか。
すでに2020年6月には、正恩の妹である与正(ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長によってケソン(開城)の南北共同連絡事務所ビルを爆破するという派手なことをやっています。
下の写真は、ケソンの連絡事務所をコッパミジンにした時のものです。
爆破の後、与正は今後の対韓工作を軍部に委ねると表明しましたから、要は平和的統一などとっくに念頭にないということです。

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北朝鮮の「爆破」で韓国がいよいよ正念場を迎えるワケ 国際社会で立場を表明できない | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

「新たな立場」とは統一を断念し、朝鮮半島で戦争が勃発した際には南を占領し、北の領土に編入することを、憲法に反映させるべきだとしたといいますが、なーんだこれって従来からそうじゃないですか。
北は南進を一貫して「奪還」といっていますから、元々自分らの土地を取り返すと言っているのです。

北が南を併合することを諦めたことは一回もないのですから、むしろ問題はこの時期になぜこういう挑発的なモノの言い方をし始めたのかです。むしろこのタイミングの問題でナニを言ったかという内容ではありません。

かつて極端な親北だったムン・ジェイン政権時には、南北統一を盛んにアピールさせていましたが、これはあくまでも対等な統一ではなく、北が南を併合して「高麗民主連邦共和国」にするというのが大前提でした。

「「高麗民主連邦共和国」創設案は、「自主・平和・民族大団結による統一」のスローガンの下、一民族・一国家・二制度・二政府の下で連邦制による統一を主張したものであった。これは、韓国のほうが北朝鮮よりも経済的に優位に立ち、北朝鮮が韓国を武力で併合する可能性が薄らいだために提唱されたものと言われている。
だが、これは政治面(連邦議会)で北朝鮮が明らかに優位な地位につくことになっており、また「先統一、後同一感回復」を唱えるものの、国家保安法撤廃、韓国内での共産主義政党の結成の容認、在韓米軍撤収などを求めていたため、韓国側には到底受け入れられるものではなかった。
韓国の保守勢力は、「民族解放」路線が削除されない限り、従来の赤化統一政策に変わりはないと認識した」
高麗民主連邦共和国 - 高麗民主連邦共和国の概要 - わかりやすく解説 Weblio辞書

 なにか中台関係に似ていますが、「一つの朝鮮」では正恩とムンは一致しているのです。
いわば馬英九の位置にムンがいると思って下さい。
そして体制の違いは一国二制度でやろうと言っているわけですが、その内容は在韓米軍の撤退、共産主義団体の許容などのように韓国側が丸裸になることなのです。
こんな高麗連邦なんぞ作ったら、数年で韓国は北に溶解してしまうでしょう。

当時北は「和解」の印として南北境界線の監視ポストを破壊したことをアピールさせていましたが、ユン政権となって検証するとまったく破壊されていないこともバレています。

「韓国と北朝鮮が2018年の軍事合意を受け非武装地帯(DMZ)にある監視所(GP)をそれぞれ撤去し相互に検証したものの、韓国側の検証が不十分だったとの疑惑が取り沙汰されていることについて、韓国国防部のチョン・ハギュ報道官は15日の記者会見で「事実関係を確認中」と述べた。
 同疑惑は申源湜(シン・ウォンシク)国防部長官が10日に行われた聯合ニュースとのインタビューで初めて提起した。申氏は北朝鮮が昨年11月に南北軍事合意の破棄を宣言した後、破壊した監視所の復元を進めているとし、「(撤去した)当時、北は地上に見える監視所だけを破壊し、残りの地下施設には手をつけなかったものとみられる」と指摘。修理すればすぐに使える程度の破壊だったのではないかなどと述べた」
(連合月15日)
北朝鮮の監視所撤去検証に不備か 韓国国防部「事実関係確認中」 | 聯合ニュース (yna.co.kr)

2018年9月の蜜月時代に作った合意に「9・19軍事合意」というものがあります。
今になって北はこれを廃棄すると言い出しています。
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「北朝鮮は24日、2018年に韓国との緊張緩和のために締結した軍事合意を全面的に破棄すると発表した。
北朝鮮は声明で、「今後、わが軍は9月19日南北軍事合意には一切拘束されない」と説明。
また、「地海空を含むすべての領域で軍事衝突を防ぐためにとられていた」全措置を撤回し、境界線周辺に「より強力な軍隊と新型の軍備」を配備すると述べた」
(BBC2023年11月24日)
北朝鮮、南北軍事合意を全面破棄 軍事偵察衛星の打ち上げめぐり - BBCニュース

ところで、9.19軍事合意の中身はこのようなものです。

●9.19軍事合意
・DMZ(非武装地帯)付近の軍事施設を縮小し、偵察活動を中止する。

・JSA(板門店共同警備区域)の自由往来を推進する。
・NLL(北方限界線=海上の軍事境界線)での敵対行為を全面的に中止する。

空においては従来あった飛行禁止区域を撤廃します。

「これは「固定翼、回転翼、無人機、気球」などの種類と東西地域によって、南北それぞれ10キロから40キロまで設定された飛行禁止区域を今後、韓国が守らないという宣言に他ならない」
(ハンギョレ2023年11月22日)
抜かれた「安全ピン」…北朝鮮の衛星発射を受け韓国政府が『9.19南北軍事合意書』一部効力停止を決定(徐台教) - エキスパート - Yahoo!ニュース

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ハンギョレ

海においてはNLL(海上境界線)は南北で大きくくいちがっていました。
下図で、青線が韓国が主張するNLL、赤線が北朝鮮の主張する海上軍事境界線です。

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ファイル:韓国海上国境の地図.svg - ウィキメディア・コモンズ (wikimedia.org)

ムンはこの双方の海上境界線が韓国の主張で統一されたと成果を誇りましたが、北はそんなことを合意した覚えはないと言っています。

陸においては、DMZ(非武地帯)の監視ポストを廃棄することになっていたのですが、前述どおり北は履行していなかったようです。
要するに、ムンが手柄としていた陸海空の緊張緩和措置についての合意はまるで守られていなかったことになります。
左派紙のハンギョレは「抜かれた安全ピン」などと書いていますが、今まで安全ピンがあったことなど一度ないのです。

あったのはムードだけ。

この北の動きについて、もっとも厳しい見方を取るのが38ノースです。

「朝鮮半島の情勢は、1950年6月初旬以来、かつてないほど危険である。それは過度に劇的に聞こえるかもしれませんが、1950年の祖父のように、金正恩は戦争に行くという戦略的決定を下したと私たちは信じています。金正恩がいつ、どのように引き金を引くつもりなのかは分からないが、その危険は、ワシントン、ソウル、東京で、平壌の「挑発」に関する日常的な警告をはるかに超えている。言い換えれば、昨年初め以降、北朝鮮のメディアに登場する戦争準備のテーマは、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮)の典型的な大げさな言葉とは思えない」
  AND 
金正恩は戦争の準備をしているか?- 38 北朝鮮:北朝鮮の情報に基づいた分析 (38north.org)

この38ノースの分析が不気味なのは、以下の部分です。

「北朝鮮は大量の核兵器を保有しており、我々の推定では、50発から60発の核弾頭がミサイルに搭載され、韓国全土、事実上日本全土(沖縄を含む)、グアムに届く可能性がある。もし、我々が疑っているように、金正恩が、何十年にもわたる試みの末、米国と関わる方法はないと自分を納得させているのだとすれば、彼の最近の言動は、その兵器を使った軍事的解決の可能性を示唆している」
(38ノース前掲)

ここでいう「その兵器」とは核兵器のことです。
これについての小谷哲男氏のコメント。

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XユーザーのTetsuo Kotani/小谷哲男さん

小谷氏の分析を読んで、ウワー北は先制核攻撃すると言っているぞという人もいますが、38ノースと小谷氏は、北の言うことをそのまま受け取りすぎです。
ハッキリ言ってナイーブすぎ。
北はそう言って、日米韓にマウントするのが常套手段じゃないですか。
私は先々代の日成の頃から北とつきあってきましたが、彼らが口にしている過激な言辞と思惑がまるっきり離れていることなど年中行事で、彼らはそれを外交戦略にしていたほどです。
朝鮮スタイルの口汚い表現に共産国家の過激なプロパガンダが被っていますから、正日などは年がら年中過激な言葉を吐き散らしてきました。
北が自分の言うとおり実行していたら、東京はとっくに火の海でした(笑)。
正恩もそのキム家のお家芸を踏襲しているだけのことです。

2017年には「日本列島を核で沈める」とまで言い放っています。

「北朝鮮は、国連安保理の対北朝鮮制裁決議の採択を、アメリカと共に主導した日本を批判して「日本列島の4つの島を、核爆弾で海中に沈めるべきだ」などと威嚇した。
同国の朝鮮アジア太平洋平和委員会の声明として9月13日、国営の朝鮮中央通信が伝えた。
声明は、アメリカが主導した国連の対北制裁決議について、「卑劣な国家テロ犯罪」と批判。北朝鮮軍と国民から「アメリカ帝国主義の侵略者を絶滅させる時が来た。アメリカの本土を灰と闇に変えよう」という声が出ていると綴った」

(ハフポスト2017年9月14日)
「日本列島を核で海に沈めるべき」北朝鮮が声明 | ハフポスト WORLD (huffingtonpost.jp)

ヤクザが月夜の夜だけじゃないでぇ、とすごんでいるようなものです。

そして黒井文太郎氏のコメント。

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私は、38ノースの分析は行き過ぎていると思います。
いくらなんでも北が先制核攻撃をいきなりしかけてくるという可能性は限りなくありえません。
それは地上から北朝鮮という国家が文字どおり消滅することを意味するからで、核兵器開発は金王朝の生き残りのためにやってきたのであって自殺のために作ってきたのではありません。
先制核攻撃などしてしまったら、なんのために核兵器開発をしてきたのわからなくなるからです。
北は最大限に警戒すべき対象ですが、彼らの言うことごとに踊らされることはないのです。
それこそが彼らの目的なのですから。

2024年1月17日 (水)

独裁者は間違える

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昨日はniftyのメンテのため、午前から夕方6時までまったく視聴できなくなってしまって申し訳ありません。
私が謝ることではないのですが、ほぼ丸1日アウト。
記事を書くサイト側も同様にブラックアウトで、いつもこの時間帯で翌日の記事を書いているために進行が押せ押せになってしまいました。
つらい。

さて、台湾総統選挙に対していままでにない規模の大陸からの干渉がありました。
頼清徳新総統が勝利演説の場で、あえてこのように言っているにはわけがあるのです。

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エポックタイムス

「一つ目は、台湾は全世界に対し、民主主義と権威主義の間において、台湾は民主主義の側に立つことを選択したと発信しました。中華民国台湾は、これからも民主主義の同志国と共に歩んでいきます。
二つ目は、台湾人は自らの行動でもって、外部勢力の介入を跳ね除けました。私たちは、総統を選ぶ権利は、私たち自身にあると信じています」
【全文】台湾・頼清徳次期総統勝利演説 中共の武力を前に「台湾守り抜く」 | 台湾総統選 | 中国共産党 | 民主主義 | 大紀元 エポックタイムズ (epochtimes.jp)

大陸からの高温高圧の干渉の下にこの総統選が行われ、中共の介入をはね除けて明確に台湾が自由主義陣営の立場に立ちきり、改めて旗幟を鮮明にしたことに歴史的意義があります。
しかも民進党は実にデリケートな神経で立場を明らかにせねばなりませんでした。
それは大陸に侵略の口実を与えず、かつ立場を明らかにするというガラス細工のような外交をするという意味です。

台湾選挙の1月12日という選挙前夜、ブリンケンは国務省に中共の外交を担う中央対外連絡部の劉建超部長を呼んで会談しました。
ウクライナや麻薬問題についても話し合われたようですが、この日程からいってももちろん焦点は台湾総統選だったはずです。

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日経

「ブリンケン米国務長官は12日、首都ワシントンで中国共産党中央対外連絡部の劉建超部長と会談した。台湾海峡と南シナ海情勢に触れ、平和と安定が重要だと訴えた。13日投開票の台湾総統選についても話し合ったとみられる。
両氏は米中対話を続ける方針を確認した。国務省のミラー報道官は声明で、2023年11月の米中首脳会談で合意した事項を実行する考えで一致したと説明した。重点分野として麻薬対策と軍事対話をあげた」
(日経1月13日)
ブリンケン米国務長官、中国共産党高官と会談 台湾海峡の安定訴え - 日本経済新聞 (nikkei.com) 

ワシントンがあえて中国外交官相手ではなく、中共対外連絡部という政府の上にそびえ立つ共産党外交部に警告を発したのは、中共に対し台湾選挙を台湾海峡を不安定化させる口実に使わないよう強く警告するためです。
現在、米国はアジア太平洋地域で、新たな戦場を開きたくないと考えているはずです。
それは同時に台湾政府に対しても同じことを強く言ってきたはずで、だから米国政治を熟知する「駐米大使」蕭美琴を副総統に据える人事は大いに米国を満足させるものだったはずです。
蕭美琴なら、このガラス細工を大事にすることの意味を熟知しているからです。

シドニー工科大学の准教授である馮崇義はこのように述べています。

「同氏は世界的な第二次冷戦を視野に台湾選挙と台湾海峡の情勢を見なければならないと述べた。第二次冷戦とは、米国が主導する民主主義陣営と中国が主導する権威主義陣営との対立を指し、台湾は民主主義陣営に属し、中共の権威主義体制の拡大を封じ込める最前線ということになる」
台湾総統選の民進党勝利 中共の選挙介入が裏目に | 頼清徳 | 大紀元 エポックタイムズ (epochtimes.jp)

この「中共の権威主義体制の拡大」とは、現実にどのようなものとなるでしょうか。
いくつかのシナリオが考えられます。
2023年12月初め、キヤノングローバル戦略研究所が「ポスト台湾有事」と題する政策シミュレーションを実施しています。
このシミュレーションゲームは、米国のシンクタンクがよく使う大規模なゲーム形式を使います。

「この種の演習は2009年以来43回目。今回も国会議員、公務員・自衛官、学者、ビジネス・ジャーナリズムの精鋭約40人が集い、中国や台湾、日本など関係政府・報道関係者らの役を一昼夜、リアルに演じてもらった」
(産経12月14日)
【宮家邦彦のWorld Watch】中国「台湾侵攻」5つのシナリオ - 産経ニュース (sankei.com)

えてして政府がするシミュレーションは、中国の軍事侵攻をテーマにすれば、ほとんどの時間をかけてこれがいかなる法律の範疇に属するのかという事実認定の神学論議に費やされてしまいます。
ですからこんなことをいくらやっても、国会の大臣の答弁のメモになるだけのことです。

一方、40人もの専門家が各自の専門分野に立って、ロールプレイングゲームをするわけですから、東アジア情勢のリアルな状況展開を知り、かなりの精度で予測することが可能です。
キャノングローバル研が用意した台湾有事シナリオは5つでした。

●シナリオ1 台湾の「独立宣言」
これは台湾が焦るあまり独立宣言、ないしはそれに近い言辞をしてしまうことから始まります。
たとえば、台湾正名運動も「独立宣言」と大陸は見なすでしょう。

台湾正名運動(たいわんせいめいうんどう)とは、主に台湾泛緑連盟の議員やその支持者及び在日台湾人などによって行われている台湾本土化運動の一つ。台湾の公的な場で使用されている「中国中華(China)」という呼称を「台湾(Taiwan)」へ置き換え、台湾の存在を「中国の一部」から「中国とは別個の地」に代えることを目標としている」
台湾正名運動 - Wikipedia

「ひとつの中国」を国是とする中共は、台湾が「独立」を正式表明することを待っています。
「ひとつの中国」は、中共にとって正統性( legitimacy)そのものです。
ワンチャイナは、中共が中国を支配する倫理的、歴史的に正しいとされる唯一の根拠ですから、譲ることができないのです。
したがって、中国は台湾が「独立」を口にした瞬間、武力行使せざるを得ないことになります。

ただし、台湾民進党政府が「独立」という地雷を踏む可能性はかぎりなくゼロです。

●シナリオ2 軍強硬派の自己過信

「一方、人民解放軍が「今なら台湾制圧は成功可能」と政治指導部に保証するなど、米軍を過小評価し、己の軍事力を過大評価する恐れもある」
(産経前掲)

中国軍内部には強硬派が存在します。
彼らは自らを過信し、世界最大最強の軍隊だと思っています。
そして台湾軍を小国の三流軍隊と見なしており、米軍も手を出せないはずだ、とみくびっています。
特にウクライナ戦争に、米国が戦備リソースを使っている中、東アジアはまで手を伸ばせないと考えています。
彼ら軍部強硬派は前述したブリンケンの中共に対する警告も、米国の弱さの現れであると見るでしょう。
この可能性はありえます。

●シナリオ3 共産党内の権力闘争
習に強力な政敵が誕生し、彼が習を軟弱な日和見主義者と批判した場合、習はリアクションとしての軍事侵攻を取らざるをえなくなるでしょう。

「現指導者の前に強力な政敵が出現し、現政権の外交政策を「弱腰」「不十分」と批判し始めれば、対抗上何らかの措置を取らざるを得なくなる。今後中国国内の経済・社会状況が悪化すれば、党内で権力闘争が再燃する可能性はあるだろう」
(産経前掲)

ただし、現在のように習近平の党内闘争が終了し、ひとり独裁が完成してしまえばこの可能性は低くなります。

●シナリオ4 民衆の不満爆発

「マクロ経済学的に見て現政権の経済政策は不十分だ。ナショナリズムで扇動されてきた民衆の不満が、不動産市場低迷、バランスシート不況、若年失業率の悪化、社会保障制度の不備などで爆発する恐れがある以上、指導部が批判を逸らすため対外強硬路線に踏み切る恐れもある」
(産経前掲)

いわゆる内部矛盾を外への侵略で糊塗する伝統的な方法です。
共産党統治を国民が支持してきた最大の理由が、右肩上がりの国内経済でした。
中国経済は2023年にコロナ危機から急速に回復し、世界成長の原動力としての役割を再び果たすと予想されていましたが、習のゼロコロナ政策の失敗によって完全に失敗し、いまやIMFから世界生産の「足かせ」とまで呼ばれるほどに失速してしまいました。


●シナリオ5 独裁者の判断ミス
これがもっとも大きなリスクです。
一種のヒューマンエラーですが、プーチンはこの「独裁者の誤謬」をウクライナで盛大にやらかし、独裁者は必ず失敗するという教訓を世界に与えました。

「最も恐ろしいのは、プーチン露大統領の対ウクライナ戦争のように、独裁者が戦略的判断ミスを犯す可能性だ。もしかしたら、この蓋然性が最も高いかもしれない」
(産経前掲)

今回の台湾総統選を見ると、中共の干渉の痕が多く発見されます。
中国は毎回、台湾の選挙に介入してきましたが、今回は最も深刻、かつ大規模でした。
中国は明らかに選挙に影響を及ぼして、彼らが望む馬英雄九政権のような親中政権を樹立しようとしました。
その最大のものは、馬英九の「一つの中国」発言です。

「元台湾総統の馬英九氏は、優勢な民進党に対抗するため、反対候補の一本化を図ったが、協議は決裂した。8日、ドイツメディアの取材を受けた馬英九氏は、台湾と中国の関係を意味する「両岸関係」についてはと前置きしながらも、「信用しなければならない」という発言をした。この事は国際社会と台湾の有権者に衝撃を与え、国民党の侯友宜(こう ゆうぎ)候補でさえ認めなかった。
蔡慎坤氏によれば、 中共が支持する人物は、必ず負ける。中共に好意的な政党や要人は、ほとんどの場合、有権者に捨てられると述べた」
エポックタイムズ (epochtimes.jp)

この大きすぎる敵失で、民進党は勝利を勝ち得たといっても過言ではありません。
この原因は、習近平の馬鹿ぶりにあると福島香織氏は見ていますが、私もそう考えます。
習の現実に対してのこのボケぶりこそが、東アジアの最大の不安定要因なのです。

 

 

2024年1月16日 (火)

第1ラウンドは民主主義陣営の勝ち

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今年は前々から言われてきたとおり、国際政治における「選挙イヤー」です。
まず第1ラウンドは、この台湾総統選でした。
これは今や中華帝国がその牙でかみ砕こうとしている台湾を巡っての民主主義陣営と専制国家との戦いの場でした。
そして1ラウンドは民主主義陣営が勝利しました。

第2ラウンドは、3月のロシアの大統領選です。
専制国家らしく対立候補がいないというのですから、「選挙のようなもの」というべきでしょうか。
100%プーチンが再選が再選されて、次の任期は2030年までです。
そのうち憲法をいじって永世大統領にでもなるかもしれません。
問題はむしろ、どこの範囲まで選挙をするのかですが、プーチンとしては22年に「併合」を宣言したウクライナの4州でも選挙する構えです。か
大統領選を使って既成事実の積み重ねをしていき、それを国民と国際社会に見せつけるというだんどりです。

第3ラウンドは、5月に予定されているウクライナ大統領選挙です。
これは実施されるかどうかは不透明ですが、戦況が膠着してしまい、政府内部の内紛が絶えない状況ですから、かならずしもゼレンスキーが有利とはいえません。

「ゼレンスキー氏は2019年大統領選で初当選し、来年5月に1期5年の任期切れを迎える。ウクライナ政府はロシアによる侵略開始と同時に全土に戒厳令を敷いており、戒厳令下では国政選挙の実施が禁じられている。ゼレンスキー氏が大統領選の延期を示唆したため、戒厳令は今後も議会の承認を得て更新される公算が大きくなった」
(読売11月7日)
ゼレンスキー大統領、来春の大統領選挙の延期を強く示唆「今は適切な時期ではない」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

第4ラウンドは、これがある意味で本番ですが、11月には米国大統領選挙が行われます。
現在の情勢では、トランプの立候補する権利を連邦最高裁が否定しないかぎり、トランプvsバイデンという組み合わせの一騎討ちとなるでしょう。
不人気なバイデンを担ぐ民主党は、隠し玉としてミシェル・オバマを引っ張りだすという動きもあるようで、彼女が出ると一気にわからなくなります。
私はもうトランプはこりごりですので、ニッキー・ヘイリーでも出てくれないか、というのが私のひそかな願いです。
ちなみに、民進党は本来リベラル政党ですし、副総統の蕭美琴(しょう びきん )は駐米大使(台北駐米経済文化代表処代表 )で、民主党政権とは懇意の仲でしたから、民主党政権のほうが相性がいいでしょう。

あとは2月にインドネシア大統領選、6月にメキシコ大統領選が用意されています。
そして4月から5月にかけ「世界最大の選挙」インド総選挙が行われます。

9億とか10億という単位のすさまじい規模の選挙が見られることになります。
6月には、 EU「ヨーロッパ議会」選挙があります。
極右の進出が目立つ中、どうころぶか次第でウクライナ支援の風向きが替わりかねません。

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台湾与党、副総統候補に蕭美琴氏 | 中国新聞デジタル (chugoku-np.co.jp)

さて、このように国際社会が流動化する中で、ここだけは食い止まってほしいと願った最大の選挙が、この台湾総統選挙でした。 
民進党は辛勝だったと思います。
なんせ、対抗馬2人が野党連合を組むといってスッタモンダで失敗。
去年11月に浮上した合作案ですが、これが成功していれば、総統選はどうなったかわかりません。

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読売

「【台中(台湾中部)=園田将嗣】台湾の野党2党が総統選の候補一本化で電撃的に合意した背景には、候補乱立で支持が分散したままでは共倒れに終わり、勝利につながらないとの危機感があった。両党の掲げる政策には温度差があるが、政権交代を目指す一点で一致し、小異を捨てて大同につく共闘の道を選んだ」
(読売11月16日)
台湾総統選で野党共闘、共倒れ回避…政策に温度差不安も : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) 

福島香織氏にいわせれば、当然の失敗だったそうですが、民衆党はこれで失速し、大勢は大きく民進党に傾いたところに、追い打ちをかけるように馬英九が見事なまでのオウンゴール。
この馬の放言については昨日書きましたが、時代を読めていないオールド権力者の哀しい性なのか、それとももっとバックがあるのでしょうか。

福島氏はこう述べています。

「野党連合の背後に中国習近平政権の目論見があったとすれば、二つの可能性があります。習近平がおバカで、台湾の実情、有権者心理を理解していなかったので、馬英九や郭台銘を使って野党連合を画策した。
馬英九や郭台銘は台湾有権者にほとんど信頼されていない、どころか国民党内でも信頼されていないということを、習近平はわかっていなかったから、その目論見に失敗した」
(福島香織中国趣聞NO.944:民進党勝利の要因と歴史的意義)

つまり習近平が馬鹿だったために常套的手段に頼ったというものです。
いつもの中国の手口である脅迫的言辞や、時にはミサイルをぶっ放してみたり、軍事演習で台湾島を包囲したりしました。
古くは、李登輝時代にも訪米したことを怒ってミサイルを発射しています。

「李氏は95年に訪米し、母校コーネル大学で台湾の存在を世界にアピールする演説を行った。訪米は密使ルートで事前に伝えていたが中国は激しく非難し、ミサイル演習で威嚇した。
96年の初の総統直接選挙でも、中国は李氏の得票を減らそうとミサイルを発射したが、李氏は「空砲だ。恐れることはない」と住民を鼓舞した」
FOCUS:「空砲だ。恐れることはない」中国のミサイルにも動じなかった李登輝元総統 中国を翻弄したその「スパイ網」の正体 | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp)

蔡英文の訪米時にも同じような軍事恫喝をしており、もっとも大規模だったのは、2022年8月のペロシ米下院議長の台湾訪問への抗議として行われた人民解放軍の総力を上げた大軍事演習でした。
海軍、空軍、ロケット軍、戦力支援軍、統合後方支援軍が参加した台湾周辺の6箇所の空域及び海域での大規模な軍事訓練を行いました。
このときには、波照間島近海に着弾しています。

こういうことをやってきた中国が手をこまねいて総統選挙をながめている道理はなく、議員を中国に呼んで利権をチラつかしてみたり、大量のフェーク情報を流布したりと忙しく、その規模は今までで最大のものだったそうです。
これについては別途に記事にしようかと思っています。
その締めくくりとして台湾最大のパンダハガーの馬英九を使って野党連合をつくらせてみたり、中国式模範回答をしゃべらせたりした、というものです。
中華帝国は内向きな国で、しかも中南海にこもっている独裁者は正しい情報が持っていないのかもしれません。

もう一つは、もっとうがった説です。
これを言っているのは、産経の名物特派員だったあの元台北支局長の吉村剛史氏です。
ヒゲヅラの大男というお姿は、よくユーチューブで拝見します。
吉村氏の説はこうです。

「習近平は我々が想像する以上の頭脳派で、馬英九を使って、わざと国民党を負けさせ、民進党を勝たせた。野党連合を画策させるとみせかけて、わざと失敗させ、民衆党と国民党の有権者対立を生むことによって「棄保」(勝てそうな候補に票を集めて民進党に勝たそうとする有権者行動)を防ぎ、三つ巴戦を維持させた。馬英九の「習近平を信じるべきだ」発言によって、国民党の信頼を貶め、民進党総理に寄与した。
習近平の中国にとっては国民党政権より民進党政権の方が都合がよい。なぜなら国民党は表向き中国との対話をよびかけており、習近平は残り任期3年のうちに台湾を強引に統一しようにも、武力を使いにくい。でも、民進党ならば独立派として武力行使の口実を見つけやすい」
(福島前掲)

うーん、ありそうですが、考えすぎなんじゃないでしょうか。
民進党に勝たせるのは、中国にとってリスキーにすぎます。
これまでの2期の民進党政権は非常に慎重で、独立の「ど」の字も口にしない兎のような神経を持っています。
民進党の外交路線は決して冒険的ではなく、一言でいえば、ステータスクオ(現状維持)です。
侵略を受けるような不用意なことはいっさい国しない、米国の支持を常にキープする、同じ立場の日本との連帯を大事にする、そういう賢さを持っています。
ですから、今回も習近平のお馬鹿で自滅したというのが妥当な見方ではないでしょうか。

そしてなにより、台湾総統選挙は牙をむく専制主義国家に対して、民主的方法によって指導者が選ばれたことこそが重要です。
民主主義こそがもっとも厚い防壁なのです。
そしてこの台湾と言う民主主義の防壁が守られたことは、沖縄にとってもうれしいことでした。

「台湾が中国に吸収されれば、沖縄・八重山は台湾という緩衝地帯を失い、巨大な独裁国家と直接的な対峙を余儀なくされる。県民として、ことさら「一つの中国」に反対したり、台湾独立を支持するわけではないにせよ、台湾の民意にそむく形での統一は「沖縄としても受け入れらない」との意思を明確にすべきだろう」
(八重山日報1月16日)
【視点】頼氏当選 台湾との連携強化を(八重山日報) - Yahoo!ニュース

まことにそのとおりです。

2024年1月15日 (月)

台湾総統選挙・民主主義の歴史的勝利


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2024年1月13日の台湾総統選挙、頼清徳(らい・せいとく )・蕭美琴(しょう びきん )において、ご承知のように勝利を収めました。
投票率は71.86%、得票数は約558万票、得票率は40.05%。
国民党の侯友宜(こう・ゆうぎ )・趙少康(ちょう しょうこう )は467万票で、得票率は33.49%、民衆党の柯文哲(か・ぶんてつ )、呉欣盈(ごきんえい )369万票、得票率26.46%でした。
事前の民意調査どおりでした。

ただし、前回総統選の蔡英文・頼清徳ペアの得票率を17%落としています。

「2020年の総統選と比較すると、あのときは民進党蔡英文・頼清徳ペアは817万票を獲得、得票率57.13%でしたから、17%も得票率を落としたことになります。つまり、民進党は余裕の大勝利というよりは、厳しい戦いを勝ち抜いた、ということでしょう。700万票以上の反対票があったと考えると、そして国会(立法院も)事実上のねじれ国会ですから、なかなかむつかしい」
(福島香織 中国趣聞NO.944:民進党勝利の要因と歴史的意義)

一方、立法委員選挙は接戦でした。
民進党は惨敗予測を覆して民進党が健闘し、ほぼイーブンの1議席差にまで肉薄しました。第一党は国民党52議席、民進党51議席、民衆党8議席で、3党とも過半数を制することが出来ず、民衆党の8議席がキャスティングボートを握ることになりました。
いわそるねじれが生じたわけですが、これは最小限に止まったとは言えます。

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産経

【台北=桑村朋】13日に投開票された台湾の総統選で、中国の統一圧力に屈しない姿勢を示す与党、民主進歩党の頼清徳(らい・せいとく)副総統(64)が勝利した。対中融和路線の最大野党、中国国民党の侯友宜(こう・ゆうぎ)新北市長(66)と、米中間でバランスをとる中間路線の第2野党、台湾民衆党の柯文哲(か・ぶんてつ)前台北市長(64)がそれぞれ敗北を認めた。
中台統一を「歴史的必然」だとする中国に、台湾の有権者は改めてノーを突き付けた。
頼氏は台北市内で記者会見し、「台湾人は民主主義の新たな1ページを刻んだ。中国の脅威から台湾を守る決意だ」と勝利を宣言した。
1996年に総統の直接選挙が始まって以降、初めて同じ政党が3期連続で政権を担う。2000年以降、民進党と国民党が2期8年ごとに政権交代を繰り返していた」
(産経1月14日)
台湾・総統選の開票終了 勝利の頼氏「中国の脅威から台湾守る」 立法委員選は与党過半数割れ - 記事詳細|Infoseekニュース

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台湾総統選、与党・民進党が勝利 親中の最大野党・国民党は敗北認める - BBCニュース

5月に交代する蔡英文総統と頼清徳新総統の勝利の弁。

「退任する蔡英文総統は、台湾は民主主義を維持するのだという揺るぎない決意を世界に示す選挙結果だと歓迎した。
「世界は台湾の選挙に注目しており、台湾の民主主義の価値を見抜いている」と蔡氏は述べ、「どのような困難や圧力があっても、民主主義を維持するという私たちの決意や、台湾と自由に対する私たちの愛情を打ち砕くことはできない。そのことを世界に示した」と強調した。(略)
頼氏は民進党の選挙本部で勝利演説を行い、「台湾は民主主義国家の共同体にとっての勝利を収めた」と述べた。
「我々の民主主義に新章を刻んでくれた台湾の人々に感謝したい。我々は、民主主義をどれほど大切にしているかを世界に示した。これは揺るぎないコミットメントだ」と、次期総統は強調し、「台湾の人たちは行動を通じて、選挙に影響を与えようとする外部勢力からの活動に抵抗し、成功した。自分たちの総統を選ぶ権利を持つのは台湾の人々だけだと、私たちは信じている」と話した」
(BBC2024年1月13日) 

さて、勝因はいうまでもなく元総統の馬英九の「習近平を信じるべきだ」発言によって、国民党の信頼を貶め、民進党に寄与ししてしまったからです。
馬は総統選投票日直前の11日に、こんなことを放言しました。

総統選は外交安全保障がテーマであり、議会選挙は内政です。
それを「オレは習近平を信じている。彼は中台湾統一を考えていない」と言ってしまったのですから、まさに舌禍です。

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台湾・馬英九前総統「習近平氏を信用すべき」 国民党候補が“火消し”(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース   

「台湾総統選があと2日に迫る中、馬英九前総統が中国の習近平国家主席を「信用しなければならない」と語ったほか、習氏が意欲を示す台湾統一についても「本来は受け入れられる」と述べ、波紋が広がっています。
台湾メディアによりますと、野党・国民党の馬英九前総統は8日、ドイツメディアの取材に応じ、習主席を「信用するか」問われ、台湾と中国の関係を意味する「両岸関係」については、と前置きしたうえで「信用しなければならない」と答えました。
また、習主席が意欲を示す台湾統一について「統一は憲法に書いてあり、本来は受け入れられる」と述べました」
(TBS  2024年1月11日)
台湾・馬英九前総統 中国・習近平国家主席を「信用しなければならない」 波紋広がる | TBS NEWS DIG

この馬は中台統一論者です。
この時、習近平が露骨に言っている中台統一について馬は、「統一は憲法に書いてあり、本来は受け入れられる」と述べました。
いつの話か。これは大陸反攻」と切ないことを言ってた蒋介石時代の遺物にすぎません。
台湾の主流の民意は「現状維持」であり、国民党の総統選候補の侯友宜すら、この馬の発言について「私の考えは少し違う」「中国の一国二制度には反対だ」と繰り返し述べねばなりませんでした。

2023年3月30日、武漢で中国国務院台湾事務弁公室主任の宋濤と面会した時、92年コンセンサス(92共識)に言及したことがあります。
「92年コンセンサス」とは、1992年11月16日に、中国の海峡両岸協会と台湾の海峡交流基金会という両岸関係問題の窓口で、それぞれ各自が口頭で表現する方式のことで、「両岸はともに一つの中国であるという原則」のコンセンサスを指します。

これが実に玉虫色のシロモノで、中台で一致しているのは「一つの中国」(ワンチャイナ)の立場だけで、中国にとっての「一つの中国」とはとうぜん中華人民共和国のことですが、馬にとってそれは国民党が支配する中華民国のことです。
つまり、「92年コンセンサス」という言葉でくるむことで、「一つの中国」をめぐる中台間の立場の違いを曖昧化させ、「意見の不一致への同意」(agree to disagree/各自口頭方式)が可能となった高等外交戦略だ、と馬は言いたかったようです。
現実的には、この馬の主張、つまりかつての国民党の考えは、「一つの中国」という虚構を立てることで、中国が言う「一国二制度」を容認するものでした。

蔡英文は馬が残した「ひとつの中国」という「92共識」の存在自体を否定し、「独立」という刺激的な言葉はつかわずに慎重に国民党政権とは一線を画した「台湾」をめざしました。
これに激怒したのが習です。彼はありとあらゆる方法を使って台湾に嫌がらせをしました。

台湾と国交がある国をカネの力でしらみつぶしに引き剥がし、続々と断交を迫っていきました。
これによって台湾は、いまや世界でたった17カ国にしか承認されていないという国際的孤立を味わうことになります。
これにとどまらず、大人げないことには、中国人の台湾旅行にも制限をかけるようなまねまでやっています。
中国進出した財界は常に蔡政権を揺さぶり続け 、シャープを買収したホンハイの郭台銘(かく たいめい)は、国民党から総統選に出るといって注目を浴びたこともあります。
中国資本に買われたメディアも蔡政権を執拗に攻撃し続けます。
また中国はメディアの重要性を熟知しており、香港でもほとんどすべての新聞が中国系資本となっています。
今回もミサイルこそ撃たなかったものの、陰湿な選挙に対する干渉があったようです。

ちなみに今回3政党共に、一国二制度反対、統一を話しあう予定なし、民主主義擁護、台湾擁護、国防強化支持、米国関係強化で一致しています。
香港の地獄を見て、なおも一国二制度などと言える馬のほうがズレきっているのです。

国民党の侯友宜などはっきりと「統一を話し合わない」と言明し、また習近平を信じろといった馬英九にはっきりと「賛同しない」と批判し、選挙前夜祭イベントに馬英九を招待しない決断をしました。
いままでの馬が仕切っていた国民党からずっと民進党寄りに変化しています。

一方、頼清徳は蔡英文の独立色を押さえる政策を継承し、中国の「一つの中国」には反対するものの最低限のコミュニケーション維持する方針です。
実際、中国団体観光客の受け入れ、中南部の農産物貿易についてどこかで中国と話し合わねばならない現実は見据えています。

つまり、いくら馬が時代錯誤な蒋介石時代の「一つの中国」を言おうと、台湾国民は見向きもしなかったということになります。
では、どうしてこんな馬鹿なことを馬は言ったのでしょうか。
そして習はどう考えていたのか、それについては長くなりそうなので、次回にいたします。

2024年1月14日 (日)

日曜写真館 ひしめきてただひと時の墓参かな

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冬日向まぶたの重き地蔵尊 上田俊二

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いわし雲出を待つごとく佛像立つ 宮坂静生

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こまかなる光を連れて墓詣 能村登四郎

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ひう~と氷る夜の念彼観音力 川端茅舎

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秋風をきくみほとけのくすりゆび  欣一

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凍光にこころの塵のとぶ墓参 飯田龍太

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露草や露に坐したる地蔵尊 寺田寅彦

 

 

速報 台湾総統選・頼氏「中国の脅威から台湾守る」

速報だけとします。
詳細は月曜日に。

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大紀元

【台北=桑村朋】13日に投開票された台湾の総統選で、中国の統一圧力に屈しない姿勢を示す与党、民主進歩党の頼清徳(らい・せいとく)副総統(64)が勝利した。対中融和路線の最大野党、中国国民党の侯友宜(こう・ゆうぎ)新北市長(66)と、米中間でバランスをとる中間路線の第2野党、台湾民衆党の柯文哲(か・ぶんてつ)前台北市長(64)がそれぞれ敗北を認めた。
中台統一を「歴史的必然」だとする中国に、台湾の有権者は改めてノーを突き付けた。(略)

一方、総統選と同時に行われた立法委員(国会議員に相当、定数113)選では民進党が過半数を維持できず、国民党が最大勢力となった。頼氏は蔡英文政権以上に難しい政権運営を迫られることになる。
台湾・総統選の開票終了 勝利の頼氏「中国の脅威から台湾守る」 立法委員選は与党過半数割れ - 産経ニュース (sankei.com)

2024年1月13日 (土)

ネタニヤフの司法制度改革に赤信号

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もう少しイスラエルの内政問題を続けます。
瑣末に見えるかもしれませんが、このハマス・イスラエル戦争の行方を考える上で重要なことだと私は考えています。
というのは、この戦争はネタニヤフの個性に支配されているところが濃厚にあって、仮に彼ではなく別の人物が首相の座に座っていたら、たとえ言いがかりだとしてもジェノサイドだなどということは言われなかったと思うからです。

ネタニヤフが固執していた国内政策に司法制度改革というものがありました。
なぜネタニヤフが司法制度改革にこだわるのかといえば、建国以来の基本法( 憲法)によれば、政府が決定した法律が国家にとって合理的ではないと判断される場合に、最高裁がこれを却下する権限がある、とされているからです。
そして最高裁には15人の判事(保守派(右派系)がおり、その内訳は保守系判事7人とリベラル系判事8人という構成になっています。
長官はリベラルです。

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ネタニヤフ首相
ネタニヤフ政権の即時退陣要求=モービルアイCEO | ロイター (reuters.com)

最高裁は、ファーライト政権のネタニヤフ政権が「国家にとって合理的ではない」と思われる政策を提案した場合、最終的に拒否権を有しているわけです。
結果、ネタニヤフが国会で可決した法案したにもかかわらず、多数が最高裁で却下されてしまいました。
いまやネタニヤフの政敵となった最高裁をなんとか黙らせたい、そもそも司法府が行政府と立法府の上を行くことになってよいのか、これは民主主義の原理に反すると叫んで、最高裁のこの権限を認めないために作ったのが「合理性法」です。

ネタニヤフはメチャクチャな男ですが、これには確かに一理あります。
最高裁の裁判官は、民主的な選挙で選ばれるものではないものが、国民の選挙で選ばれて付託を受けた政府の動きを否定してよいのかという言い分です。
とうぜん、彼の支持母体の右派、宗教政党は賛成しました。

一方、リベラル派と宗教世俗派たちからすると、このネタニヤフの作った合理性法を受け入れると、政府の暴走を許してしまい、戦時挙国内閣であることをよいことに好き放題に暴走されてしまうと考えて「合理性法」反対に立ち、完全に国論が二分する状態になりました。
戦争中に内政で国論分裂ですからシャレになりません。

イスラエルはイスラエル嫌いの人からすると一枚岩のユダヤ教国家に見えるようですが、そんなことはありません。
極右国家ならキブツなどという社会主義的農業組織が健在なはずがありません。
アラブ系住民は165万人もおり、人口の20、7%を占めています。
彼らの多くはイスラム教です。

キブツは労働力不足からアラブ人を大量に雇用しており、イスラエルにはアラブ人の政党も議席を持っているほどです。
そのキブツでハマスは大虐殺をやってのけたのです。
イスラエルのアラブ系市民 - Wikipedia

ところで議会も、リベラル勢力は過半数はとれませんでしたが、前政権のラピド首相はリベラル派であり、ほぼ保守派と議席数をわけあっています。
大統領のヘルツォーグは労働党出身です。
イスラエルの大統領 - Wikipedia

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イスラエル右派が過半数、ネタニヤフ氏復権へ 総選挙結果公表:中日新聞Web (chunichi.co.jp)

昨年7月に、ネタニヤフは「合理性法」を与党多数(といっても7議席差程度ですが)の国会で可決させ、基本法に加えるという動きをとりました。
議会を二分し、かつ世論調査でも国民の大多数が反対する「合理性法」を力づくで通してしまう、というのがいかにも我らがネタニヤフです。
当の最高裁はがどのような判断をするかが注目されたのですが、昨年1回は延期し、1月1日に合理性法案を却下するかどうかの最高裁の採択が行われました。
結果は予想されたように、合理性法却下に賛成する判事は13、反対は2で、保守系判事を含めて圧倒的多数で「合理性法」は、基本法から却下の発表がされました。
ちなみに、すでに基本法に加えられている法律が却下されるのは、イスラエル史上初めてだそうです。
日本で言えば、最高裁による違憲判決ということです。

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移民、ポップスター...イスラエルの司法制度の運命を決める最高裁判事 |イスラエル |ガーディアン紙 (theguardian.com)

最高裁長官のエスター・ハユット判事はリベラル派だと言われています。
ハユット判事は、最高裁長官就任演説において、ネタニヤフを前にして「適正に適用された法の支配こそが、イスラエルの分裂を防ぐ」という演説をしてのけた女性です。

「進歩的」な最高裁長官エスター・ハユットは、パレスチナ人に対しては厳しい態度をとっているが、恵まれない人々の側にも立っており、右派から批判を受けている。
2017年にイスラエル最高裁判所の首席判事に就任したエスター・ハユットは、常に髪を真ん中できれいに分け、バレッタで後ろに留めた眼鏡をかけた女性で、イスラエルの司法を弱体化させようとする政治的動機による試みから国の司法を守ることを誓った。
適切に適用された法の支配こそが、わが国を団結させる接着剤の役割を果たしている。司法制度に亀裂が入らないことを祈ります」と、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を含む聴衆に語った」

移民、ポップスター...イスラエルの司法制度の運命を決める最高裁判事 |イスラエル |ガーディアン紙 (theguardian.com)

この最高裁判断の背景には、10月7日のハマスの大虐殺とまだ奪還できていない百数十人の人質と、増大する戦死者があると言われています。
このネタニヤフの「合理性法」が、国論の分裂を招きながら、あまりに強引に基本法に繰り入れられたことに対して、今はそんなことをしている場合か、国を失ったら生きていけないイスラエルの民が内輪もめしている場合ではない、という声が強くなったのです。
その声はネタニヤフの足元のリクードにも及んでいます。

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ガリット・ディスティル・アトバリヤン
イスラエルタイムス
元リクード党の大臣は、10月7日の攻撃に先立って国を引き裂くことで「罪を犯した」と言います |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

もとリクードの大臣であったアトバリアンはこう述べています。

「かつて合理性法を強力に推進してきた元リクード党員のガリット・ディスティル・アトバリヤン氏は、公共外交大臣として、国内で合理性法を推進する担当に任じられていた。戦争前までは、合理性法を推進し、かなり強く、反対派を批判する側に立っていた。
ところが、アトバリヤン氏は、ハマスとの戦争が始まって数日後に、自らこのポジションを辞任した。
12月31日、テレビでのインタビューで、「10月7日のハマスの攻撃を知り、一瞬で自分がしてきたことが間違いであったと察した。私自身が国に亀裂と分裂を生み出し、それが、国を弱体化させて、結果的にハマスの虐殺を招く結果になった。」と明確に、自分の罪だったと認め、公的に謝罪する声明を出した。
アトバリヤン氏は、今ではネタニヤフ首相を批判する立場に立っている。しかし、同時に、ネタニヤフ首相の政治家としての力量は他に類をみないこと、汚職疑惑についても、ネタニヤフ首相がはめられた部分もあると感じているとして、複雑な思いも語っている。
またリクード内部に混乱を持ち込みたくないとして、総選挙の案が出た時には、反対票を投じると言っている」
(イスラエルタイムス1月1日)
元リクード党の大臣は、10月7日の攻撃に先立って国を引き裂くことで「罪を犯した」と言います |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

ネタニヤフは焦りすぎています。
なにもこの時期を選んで「合理性法」という国論を分裂に追い込むような法律を通すことはありませんでした。

 

2024年1月12日 (金)

徐々に方向転換しようとしているイスラエル

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イスラエルが微妙に方向を転換しています。
まずは国防相のガラントの発言です。

「パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘をめぐり、イスラエルの国防相は北部で大規模攻撃から標的を絞った作戦に移行する方針を示しました。
イスラエルのガラント国防相は4日、ガザ地区での戦闘の今後の見通しに言及し、南部ではイスラム組織ハマスの壊滅に向けた攻撃を継続する一方、北部では標的を絞った作戦に移行する方針を明らかにしました。地下トンネルの破壊や特殊部隊による攻撃が含まれるとしています。
民間人の犠牲を減らすよう求める国際社会の圧力や、予備役の動員による国内経済への影響があるとみられます。
ガラント国防相はまた、戦闘が終結したあとのガザ地区の統治について「パレスチナ人が責任を持つ」と強調しました。一方で、治安維持のため、イスラエル軍がガザ地区で自由に活動できるようにすべきだとしています。
ガザ地区では年明け以降も連日100人以上が犠牲となっていて、ガザ地区保健当局は4日、過去24時間で少なくとも125人が死亡したと明らかにしました」
(日テレ1月5日)
イスラエル国防相 ガザ北部で“標的絞った作戦に移行”方針示す - YouTube

実はこのガラントの戦後処理の考えは、ネタニヤフと異なっています。
共に一定期間軍事占領せねばならないところまでは一緒ですが、ネタニエフは戦後もガザにイスラエルが「関与し続ける」としています。
このネタニエフが言う「関与」とは、ネタニヤフが12月12日の演説で言う「ガザは『ハマスタン』にも『ファタハスタン』にもならない」という意味で、ガザをハマスだけではなく、自治政府の主流派ファタハにも渡さないという意味です。
これは2005年のようなガザの軍事的占領を繰り返すことを意味します。

パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスとの戦闘をめぐり、イスラエルのネタニヤフ首相は6日、戦後のガザ統治について、イスラエルが安全保障の責任を負う考えを示した。戦闘開始から1カ月となり、ガザへの攻勢を強めるなか、ハマス排除後の自国防衛のため、イスラエルがガザに関与し続ける考えを初めて明確に打ち出した。
イスラエルは1967年の第3次中東戦争でガザ地区を占領。2005年にガザから軍を撤退させた後もガザ境界を封鎖し、人やモノの出入りを厳しく制限してきた。バイデン米大統領は、イスラエルが05年以前のようなガザ占領を繰り返すのは「大きな過ち」と述べている」
ネタニヤフ氏、戦後のガザへの関与明言 「イスラエルが安保に責任」 [イスラエル・パレスチナ問題]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

では、イスラエルの最大の後ろ楯である米国の考えはどうなのでしょうか。
ブリンケンは頻繁にイスラエルと中東諸国を行き交いながら、なんとかこのハマス・イスラエル戦争をソフトランディングさせようとしてきました。
つい先だっての1月に中東9カ国とイスラエルへの訪問をしています。
驚異的なハイスピードで、これほどエネルギッシュな国務長官は見たことがありません。

この中で、米国の和平案が見えてきました。
やや長いですが、イスラエルポストから引用します。

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イスラエルポスト

「パレスチナ国家への道筋を提供することは、より広い地域を安定させ、イランとその代理人を孤立させる最善の方法だと、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は木曜日、カイロでのガザ戦争をめぐる熱狂的な地域歴訪を終えた際に述べた。
イスラエルとアラブ諸国の間を行き来するブリンケン国務長官は、紛争がレバノン、イラク、紅海の航路にさらに広がる恐れがあるにもかかわらず、ガザでの流血から前進する方法を推し進めてきた。
ブリンケン国務長官は、エジプトのアブデル・ファタハ・アル・シシ大統領との会談後、記者団に対し、この地域は2つの道に直面していると述べ、1つ目は「イスラエルが統合され、地域諸国と米国、そしてパレスチナ国家からの安全保障の保証とコミットメント、そしてパレスチナ国家が統合される」と述べ、
「もう一つの道は、テロリズム、ニヒリズム、ハマス、フーシ派、ヒズボラによる破壊を、すべてイランが支援するのを見続けることだ」と彼は述べた。
最初の道を進むと...それこそが、イランを孤立させ、疎外し、我々にとっても、この地域の他のほとんどすべての人にとっても、非常に多くの問題を引き起こしている代理人を疎外するための唯一の最善の方法だ
(イスラエルポスト1月11日)
ブリンケン国務長官:イスラエルがパレスチナ国家への道筋をつけることは、孤立化するための最良の方法である - エルサレム・ポスト紙 (jpost.com)

ブリンケンは、戦後のガザの復興が中東諸国の支持によらないと失敗するだろうと述べています。
そのためには、イスラエルとの経済的一体化は必要だが、政治的には「独立したパレスチナ国家」の創設に向かわねばならないとしています。
そしてその道だけが、この地域の紛争の元凶であるイランを孤立化させる唯一の道だとしています。

日本の中東屋の学者先生は、イランと等距離外交をすることこそが日本の生きる道みたいなことばかり言っていますが、とんでもない。
イランの影響力を中東から排除し孤立化させることだけが、中東安定化の唯一の道なのです。
かつて安倍氏がイランとの協調外交をとった時、ポンペオもトランプも、「あのアベでも間違えるのだ」とため息をついたそうです。

それはさておき、「統一されたパレスチナ国家」というのは、今の外形的にはファタハが統治し、内実はハマスが強権支配しているパレスチナ自治政府とは異なる「パレスチナ国家」を作るという意味だと思われます。
ここで登場するのは、おそらくブリンケンとそうとうに突っ込んだところまで一致していると思われるエジプトの戦後処理案です。
なかなかよく出来たエジプトの調停案: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

「第2段階では、パレスチナの諸派閥(主にファタハ党が支配するパレスチナ自治政府とハマス)間の分裂を終わらせ、ヨルダン川西岸地区とガザ地区にテクノクラート政権を樹立し、パレスチナの議会選挙と大統領選挙への道を開くことを目的とした、エジプトが後援する「パレスチナ国民会議」が行われる」
(イスラエルタイムス12月24日)
エジプト、人質解放、戦争終結、ガザ地区にパレスチナ自治政府・ハマス政権樹立の提案を提出 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

冒頭のガラントの発言は、エジプト調停案の「新たなパレスチナ人の自治政府」のためのなんらかの推進母体を作ることを認めたように読めます。
ネタニヤフの強硬一点張りの方針は、ネタニヤフがハマスの襲撃情報を握りつぶしたことがあきらかになるに連れて、イスラエル国内でも批判がでてくるようになっています。
ガラントはネタニヤフと同じファーライトと呼ばれるグループに属しますが、彼をしても方向転換を余儀なくされつつあるようです。

 

 

2024年1月11日 (木)

強靱なことを証明した志賀原発

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ルーピーさん、あなたに重度の虚言癖があるのはよーくよーくわかっていますが、この大災害の時には流言飛語を流さないで下さい。
よく例えにだされるのが、映画館で火事だと叫ぶ行為です。
それでなくても、大規模災害時は情報が錯綜して不安心理が増している時に、こともあろうに震源地に近い原発が炎上事故を起こしたと言われたら、イヤでも東日本大震災時の福島事故を思い出してパニくる人が出るでしょう。

ルーピー氏の1月2日午後9時半のツイートです。

「気になるのは志賀原発で、爆発音がして変圧器の配管が破損して3500ℓの油が漏れて火災が起きた。それでも大きな異常なしと言えるのか。被害を過小に言うのは原発を再稼働させたいからだろう」
(1月2日午後9時半)

実際はどうだったかといえば、ハト氏がツイートする8時間以上前に前に北陸電力が公式に説明しています。

「1日午後に石川県で最大震度7を観測した地震に関して、北陸電力は2日、同日午前11時までの志賀原子力発電所(石川県志賀町)の状況について、報道陣にオンラインで説明を行った。
同原発1号機の変圧器と2号機の変圧器でそれぞれ油漏れがあった影響で、一部の外部電源が利用できなくなったが、別系統の外部電源を利用することで使用済み核燃料の冷却プールの機能などは維持できているという。
地震の影響で冷却プールの水があふれる事象もあったが、いずれも原子炉建屋のプールがあるフロア内にとどまっており、外部への影響はなかったという」
(産経1月2日 13:10 )
志賀原発、変圧器の火災は誤認 冷却プールなど機能維持、北陸電発表 - 産経ニュース (sankei.com)

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北陸電力

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北陸電力

北陸電力プレスリリースです。
隠すどころか、詳細に写真や図解も使って報告しています。

●北陸電力1月2日
令和6年能登半島地震による志賀原子力発電所の影響について
24010201.pdf (rikuden.co.jp)
(1)1・2号機変圧器関連

●1号機起動変圧器からの油漏れ及び放圧板の動作,噴霧消火設備の起動
・当該変圧器の現場確認を行い、変圧器の絶縁油が約3,600リットル(推定)漏れていたことを確認しましたが、絶縁油は堰内に収まっており、外部への影響はありません。
・なお、地震発生時に1号機起動変圧器の放圧板の動作及び噴霧消火設備を手動起動したことが確認されました。放圧板が動作した原因等は調査中です。また、火災の発生は確認されておりません。
●2号機主変圧器からの油漏れ及び噴霧消火設備の起動、放圧板の動作
・当該変圧器の現場確認を行い、変圧器の絶縁油が約3,500リットル(推定)漏れていたことを確認しましたが、絶縁油は堰内に収まっており、外部への影響はありません。
・噴霧消火設備の起動及び放圧板が動作した原因等は調査中です
また、火災の発生は確認されておりません。

要するに外部電源の変圧器の配管が壊れ、冷却用などの油が漏れ出しました。
一時的に外部電源を失いましたが、正常に他の系統の外部電源に切り替わって冷却は中断されていません。
また、完全に外部電源が切断されたとしても、ディーゼルの自家発電による予備電源に自動的に切り替わるはずです。
したがって、福島事故のようなステーションブラックアウト(全交流電源停止)ではありません。

「北陸電力の志賀原発も、50万ボルトの2回線と、27万5000ボルトの2回線、それに6万6000ボルトの1回線のあわせて3系統5回線の送電線で電気を受けられるようになっています。
送電線から電気を受ける際には、変圧器を通して高い電圧を発電所内で使える電圧に下げる必要があります。
しかし、志賀原発では1日の地震の影響で、27万5000ボルトの送電線から1号機に電気を送るための変圧器と、50万ボルト送電線から2号機に電気を送るための変圧器それぞれ1台が使えなくなっています」
(NHK1月2日)
志賀原発 外部電源一部使えず 安全上重要な機器の電源は確保 | NHK | 令和6年能登半島地震

冷却水の漏洩というと大げさに聞こえて、まるで冷却系パイプでも破損したように聞こえますが、実際は冷却プールの水が溢れただけのことです。
その量もコップ1杯ていどが建屋の床にこぼれただけのことです。

モニタリングポストが数カ所機能しなくなりましたが、大多数のモニタリングポストは作動しており、これでモニタリングができなくなるということはありませんでした。
震度7の地震を受けて、このていどで済んだこと自体が、改めて原発の安全性が確認されたということになります。
他の原発もまったく問題なく運転が継続されていました。

「最大で震度7の揺れを観測した石川県志賀町にある北陸電力の志賀原子力発電所と、最大で震度5強の揺れを観測した新潟県の柏崎市と刈羽村にある東京電力の柏崎刈羽原発は、いずれも長期間運転を停止していますが、原子力規制庁によりますと、午後5時45分時点で、今回の地震と津波による影響は確認されていないということです。
いずれの原発でも核燃料を貯蔵している燃料プールの冷却は継続しているということです。
また、最大で震度4を観測した、いずれも福井県にある関西電力の高浜原発1号機、2号機、3号機、大飯原発3号機、4号機は、現在、運転中で、原子力規制庁によりますと、今回の地震と津波による影響はこれまでのところ確認されておらず、運転を継続中だということです」
(NHK2024年1月1日 20時32分)
石川・新潟・福井などの各原発 地震影響確認されず(20:15) | NHK | 各地の原発

ちなみにこのNHKの放送も、ルーピー氏のツイートの1時間前ですから読んでおかねばなりません。
にもかかわらず「火災が起きた」という悪質なデマをなんの裏取りもせずにツイートするのですから、さすがは日本一の大馬鹿者です。

ルーピー氏はこんな電力会社の説明など見もしないでツイートしたのでしょうが、何かの悪い冗談で一時は首相だった人の発言ですから、放置するわけにもいかないと見えて、政府も2日後(遅いよ)ルーピー氏のツイート完全否定しています。

「問題の投稿から2日が過ぎた4日夜、鳩山元首相はXに「東奥日報が『林芳正官房長官が志賀原発の変圧器で火災発生、消火済みと述べた』のでこの重大性を書いたところ、北陸電力が、作業員の誤認で調べたら火災はなかったと発表していた」と投稿。2日の投稿は、十分な事実確認をせずに発信したことを暗に認めた。一方で「火災がないに越したことはないが、作業員が何を火災と間違えたのか。では火もないのに消火済みとは?怪しさは消えず」とし、問題の投稿の削除や撤回の文言はない」
(中日スポーツ1月5日)
鳩山由紀夫元首相「志賀原発で火災が起きた」を誤りと認めず…あきれた声広がる「なぜ謝れない?」(中日スポーツ) - Yahoo!ニュース 

さすがに見かねた長男から、削除するように求められていますが、平然とそのまま曝してありますから、さぞかし自信がおありなのでしょう。
この人は、東日本大震災は地震兵器によるものだとか、2019年の北海道厚真町の地震は苫小牧での炭酸ガスの地中貯留実験CCSによるものだとか放言していました。
妄言癖はもう病膏肓の域に到達しています。

ルーピー氏が心密かに望むのは、ゲンパツが爆発して日本が住めなくなるということなのでしょう。

ところで、今回の能登半島地震の揺れの大きさを示す「最大加速度」は2828ガルでした。
すさまじい加速度で揺られたのです。
この強さは東日本大震災を上回ります。

「石川県能登地方で1日に発生したマグニチュード(M)7・6の地震について、揺れの強さの目安となる「最大加速度」が、2011年の東日本大震災に匹敵する2828ガル(ガルは加速度の単位)だったことが分かった。「大地震」の尺度の一つとなる1000ガル以上の観測点は能登半島各地の計7地点で確認され、広範囲で非常に強い揺れに襲われたことが浮き彫りとなった」
(読売1月4日)
能登半島地震の揺れ、東日本大震災に匹敵…「最大加速度」は2828ガル : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

福島第1と第2原発を襲った最大加速度は以下です。

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宮野廣法政大学教授による 単位ガル

最大のものは福島第1の1、2号機で南西方向に550ガル、3号機で507ガル、5号機で548ガルです。
さらに震源域に近かった女川では636ガルでした。
そして福島第1原発は地震では破壊されませんでした。

志賀原発における震動が2828ガルだったかどうかは、原発の設置された地盤の状況で変化しますから一概に言えませんが、志賀町での計測ですから、そうはずれてはいないはずです。

「防災科学技術研究所(茨城県)のまとめによると、石川県志賀町の観測点で、東日本大震災の最大加速度(2933ガル)に近い2828ガルを記録。同県輪島市や珠洲市、穴水町など計7地点で1000ガル以上だった」
(読売前掲)

だとすると、志賀原発には福島第1を襲った地震の加速度よりはるかに大きな震動が来ていたわけです。
にもかかわらず、志賀原発は水漏れが一部生じただけだったのです。
ルーピー氏にとって気の毒なことに、今回改めてわかったのは原発の危険性ではなく、逆に強靱さだったのです。


 

 

2024年1月10日 (水)

あまりにもくだらない「ペット論争」

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なんでも日航機で死んだペットについて論争があるそうです。

「貨物室のペットが救えなかった事実が明らかになった4日、元フジテレビでフリーアナウンサーの笠井信輔氏(60)は「どちらの航空機でも犠牲者は出ていた」とSNSに投稿。続けて、ペットの同伴搭乗を認めているエールフランスの例を挙げて「日本でも試験的に始めてみては、どうでしょうか?」と対策を強く促した」
JAL機炎上事故で浮上した「ペット」論争 愛犬・愛猫との「同伴搭乗」が問題解決にならない理由(デイリー新潮) - Yahoo!ニュース

するとナニですか、笠井氏は日航機のペットも「犠牲者」とするわけですね。
私は愛犬愛猫家のつもりですが、ペットは人ではありません。

そもそも欧米と日本はペット文化が異なっています。
ドイツなど、州によってリードをつけないで街を散歩させたり、レストランに入れることができるところもあります。
ただし、街は犬の糞だらけですがね。
わが国はリードをつけないでの散歩などありえませんし、入店も拒否されるでしょう。
その文化の違いが航空機へのペット持ち込み制限に現れただけのことで、特に日本が「遅れている」わけではありません。

私は、狭い機体の中で人間同様に遇されるべきではないので、盲導犬のような場合を除いて搭乗させるべきではないと思っています。
また、緊急事態においては人間の生命が優先するのはあたりまえです。
羽田事故当時、ペットを救うにはカーゴ(貨物室)を開けて探さねばならず、そのような時間的余裕は皆無でした。
ペットまで救うことは不可能だったのです。

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《JAL機炎上事故》現役管制官が緊急告発 「事故が起きた羽田空港C滑走路は離着陸兼用の“異常”な運用だった」 (文春オンライン) - Yahoo!ニュース

私は笠井氏程度の議論でで終わると思っていましたが、そうだ、そうだペットも客室に乗せろという方向に議論が逸れていってしまったのには呆れました。
ヒトとペットは違うという大前提に立って私は犬猫を愛していますが、どうもこれを同一視する人が多いようです。

「この笠井氏の投稿にコメントを寄せたのが女優の石田ゆり子(54)だ。石田は「生きている命をモノとして扱うことが私にはどうしても解せない」と書き、笠井氏の提案に賛同の意を表明。また愛猫家として知られるメンタリストのDaiGo(37)も同日、「ペットを貨物室に預けなければいけない決まりにしている日本の航空会社が終わってる」と自身のSNSで怒りをにじませた」
デイリー新潮前掲

彼ら愛犬・猫家たちは、ペットを手荷物としてカーゴに入れることを嫌悪し、機内に入れることを要求しています。
そして日本は「遅れている」とのご託宣です。

「笠井氏が指摘した「エールフランス」以外にも、「エア・カナダ」「ルフトハンザドイツ航空」「KLMオランダ航空」「デルタ航空(米国)」「ユナイテッド航空(米国)」「大韓航空」などで、一部のペットに限って同乗が認められている。一方で、日本の現状は大きく異なるのだ」
デイリー新潮前掲

エールフランスでは、規定のケージに入れた場合には体重8キロ以下の犬猫の機内持ち込みが可能であることを例にとり、制度化を要望する声が上がっているようです。
しかしこれら機内持ち込みを認めている外国の航空会社も、今回のように緊急時にペットを入れたケージの持ち出しを許すはずがありません。
絶対にシートに残しておくように指示されるはずです。
ならばペットと目の前で生き別れになってもいいのでしょうか。
大げさに言えば、その覚悟があるなら持ち込みなさい、ということです。

そもそもペットの持ち込みを許すなら、オレは機内持ち込みのトランクに大金が入っているから持ち出させろ、などという客の要求も呑まねばならず、脱出は遅れに遅れて犠牲者が大勢出たことでしょう。
つまりペットの持ち込みは、緊急時には制限されるべき私権なのです。

デイリー新潮の記事によれば、「ペットを貨物室に積み込むことは、家族を貨物室に入れることと同じです」と言っている人もいるようです。
しかし航空機は、他の人たちと狭い空間を共有する乗り物なのです。
しかも羽田事故のように緊急脱出もありえる乗り物です。
そこに「自分の家族同然」だからといって、ペットを乗せることを要求する神経が私には理解できません。
そこまで言うのなら、空路を使わずに自家用車で移動することです。
自分の車になにを乗せようと、誰もなんとも言いませんからね。

 
 

2024年1月 9日 (火)

遅い遅いと言う前に

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どうしてこんな簡単なことがわからないのだろうか、かえって不思議なくらいです。
れいわ新撰組の山本氏や共産党の小池氏などは口を開けば遅い遅いと叫んで、とうとう能登にまで押しかけました。
遅くさせているのはあんたらのせいだろう。

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Xユーザーのれいわ 山本太郎 

お調子者の共産党の小池氏はこうツイートしています。

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Xユーザーの小池 晃(日本共産党)さん

まったく迷惑な話です。
救援でごったがえす現地に来なくても、東京でできることはたくさんあります。

たとえば災害救助法の枠内では、その主体は県という自治体です。
自衛隊に災害出動を要請するのも、救援を政府に要請するのも主体は県です。
すべてが県が政府とうまく連携して動けるという暗黙の性善説に立っています。
しかしこれがれいわ新撰組や共産党が首長の県だったらどうしますか。
静岡県知事や沖縄県知事のように、妙な政治的独自性を発揮して抵抗するかもしれません。
すると救援は滞ることになります。
こういったことに対しての法改正は、現地に来なくてもできるし、いまやるときでもありません。

また緊急事態に際しては、政府が現地で足りていないヘリなどを全国から一時的に操縦士ごと借り受けて集中して現地に投入できるような緊急事態法のようなものができないでしょうか。
大量のヘリがあれば、高齢者や身障者の被災者を安全な地域に移送可能です。
こういう法制度改革は東京でないとできません。
これも今はもう遅いので、政治家はそのための議論をするべきなのです。
といってもこのおふたりさんはダンコ反対でしょうがね。

こういう今の救援のあり方の法的枠組みを議論できないから、ケチつけに政府や石川県がボランティアも立ち入りを制限をかけている現地に行きたがるのでしょう。
困った人たちです。

政治家の皆さん、行く前にいま能登や珠洲周辺で政府はなにに力を入れているのか、ちっとはかんがえたらいいのです。
救援はいま、どの段階なのでしょうか。
仮に大規模火災が起きたとします。

しかし火災現場に行く道が壊れていて通れない、としたらどうします。
消火弾を投下する?、消防署員を落下傘で落とす?
いや、消火弾の威力はたかがしれていますし、市街地で使われたことは日本ではありません。
落下傘なんて見たこともない消防署員を火元に落としてどうするんですか。
水や化学消化剤をたっぷり備えた消防車や指令車などという主力を投入せねば鎮火できません。

では、そのためにはどこから手をつけたらいいのでしょう。
わかりきったことですが、火災現場へのアクセスの復旧です。
そのために道を啓開せねばなりませんから、瓦礫をどかし、道を直し、重量車両が通過しても大丈夫な状態に戻さねばなりません。
一見迂遠ですが、モノには手順というものがあるのです。

20240108-141429

日経

いま、能登市や珠洲市でやっているのはこの作業なのです。
能登半島はかつては辺境とまでいわれた山がちの土地で、とくに珠洲などはアクセス道が限定されています。
下図の赤点が通行止めの箇所で、こんなにあります。
とくに最北端の珠洲に輪島側から行く国道249は7カ所もの崩落があります。

「今回の地震は1日の発生以降、道路インフラの損壊が徐々に明らかになった。
国土交通省や石川県などによると、発生7日目の7日時点で「能登半島の大動脈」とされる国道249号は少なくとも25カ所で土砂崩れや道路陥没などで寸断された。県内全体で通行止めとなった道路は4日時点で最大41路線93カ所となり、7日になっても35路線83カ所が復旧されていない。
不通となった道路は緊急道も多く含まれていた。被害が大きい輪島市や珠洲市、能登町の中心部につながる道路で大型車両が通行できるようになったのは生存率が大幅に低下する「発生72時間」を間近に控えた4日午後。緊急道が使えなかったことで救助活動が困難になり、支援物資の輸送が遅れた」
(日経1月5日)

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能登半島地震で道路寸断、救助・支援阻む 孤立2300人超 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

珠洲への道路はいたるところで崩落した土砂、地割れ、瓦礫で埋められています。

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【能登半島地震・上空ルポ】「72時間」迫る中で懸命の救出活動 山崩れが行く手を阻む:北陸中日新聞Web (chunichi.co.jp)

大災害においては、まずせねばならないのは人命の救助です。
アクセスする道路が限られていようと人命のタイムリミットといわれる72時間のうちに救助隊を投入できねばなりません。
この救助隊の緊急車両が通るための最低限の道路を確保しせねばなりません。
このために、崩落した土砂や瓦礫を撤去するために大量の重機が必要です。

この重機を大量に持っているのは、自衛隊の施設科と地元の民間土建業者です。
崩落した道路の撤去作業の映像を見ると、黄色の土建業者が奮闘しているようです。
かつては、「コンクリートから人へ」などという倒錯したスローガンで公共事業を切りまくった民主党政権の影響で、地方の土建業界が崩壊しかけ、復旧工事に当たる主力がいなくなってしまいました。
緊縮財政は、地方の公共インフラを膳弱化させ、災害時の復旧主力を衰弱させるのです。

話を戻します。
この災害現場へのアクセス復旧があって初めて救助隊が現地に辿りつけるので、この後に食糧や水、毛布などの支援物資がを積んだ車両が入るのです。
なぜ災害ボランティアが入れないのだという声があるようですが、すでに後方の支援物資の仕分けには参加しているようですが、まだ現地に行ける状況ではありません。

とくに現地に行くべきでないのは政治家たちです。
首相や知事さえも行くべきではありません。
VIPが視察するだけで、地元警察に警備の手間をかけさせ、自治体の対応に大きな負担をかけてしまいます。

かつてカンというクレージーな首相が東日本大震災と同時に起きた福島第1事故で、フクイチにヘリで「視察」に押しかけて吉田所長から何をしに来たんだと言われました。
首相や知事は、つまるところ責任を取るためだけにいることを忘れないで下さい。
安全な後方で統括的な立場で情報を統括し、調整するだけでよいのです。
指揮官先頭などとまちがっても思わないように。

岸田氏はいままでの段階でうまくやっています。
初動は見事でしたし、優先順位をつけて①倒壊建物等からの救命・救助活動、②孤立集落の解消、③被災者の当面の生活を支えるための避難所等へのプッシュ型物資支援、④その前提となる道路啓開作業を精力的に遂行しています。

馳知事も、皇室行事のため東京にいたために現地にはいませんでしたが、逆に地震からわずか34分後の16時45分に知事本人が首相官邸で自衛隊の災害派遣要請を行っています。

阪神淡路大震災時には、社会党の党首が首相であっために自衛隊出動が大きく遅れたのも、犠牲者を増やした原因でした。 
「自衛隊は、兵庫県に伊丹、姫路、福知山の三個連隊がありますが、特に伊丹の陸上自衛隊の駐屯地は、被災地のすぐそばです。  阪神淡路大震災が起こったのは朝の5時46分のことでした。自衛隊は6時30分には緊急勤務態勢にうつり、災害派遣を予想して出動準備にかかりました。
しかし、災害派遣要請はなかなか出ませんでした。首相官邸は何もせず、兵庫県は規則に縛られて動きがとれなくなっていたからです。
ようやく要請がでたのは午前10時のことで、伊丹、姫路、福知山の三個連隊をはじめとした自衛隊の部隊が、神戸に向かって出発しました。救助に向かうのに3時間半ロストしています」
阪神・淡路大震災から23年経過 (nishino-law.com) 

ましてや野党の政治家など、来られるだけで迷惑です。
彼らは地震対応の専門家でもなく、なんの権限もない悪質な野次馬でしかありません。
ともかくテレビの前でパーフォーマンスをしたいだけで、現場で対応したり、警備をつけねばならないだけジャマです。

といっても、既に押しかけて来てしまいましたが。

2024年1月 8日 (月)

羽田事故と似ている「テネリフェの惨事」

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もっとも恐ろしい航空機事故のタイプは、航空機と航空機の誤進入(runway incursion)による衝突です。
今回の羽田事故もそれに該当します。

しかもそのどちらかが満員の旅客機だった場合、甚大な事故につながります。
それが現実に起きたのが、1977年3月に発生したスペイン領テネリフェ島でのジャンボ・ジェット旅客機2機による衝突事故です。
これはいまだ世界最大の航空機事故と呼ばれています。

「テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故は、1977年3月27日17時06分(現地時間)、スペインカナリア諸島テネリフェ島にあるテネリフェ空港(現:テネリフェ・ノルテ空港)の滑走路上で2機のボーイング747(ジャンボジェット)同士が衝突し、両機の乗客乗員644人のうち583人が死亡した事故の通称である。
生存者は乗客54人と乗員7人であった。死者数においては史上最悪航空事故である。
死者数の多さなどから「テネリフェの悲劇」「テネリフェの惨事」(Tenerife Disaster)とも呼ばれている」
テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故 - Wikipedia

この事故が起きたテネリフェ空港は1本しか滑走路と誘導路しかない古い地方空港で地上管制レーダーもなく、ジャンポ機を多数受け入れるような施設が整っていませんでした。
そこに事故当日は、爆弾事件の影響で空港にはダイバート(代替着陸)した旅客機が数多くいました
しかも天候は視界の悪い濃霧で、離陸滑走を始めたKLM(オランダ)のジャンボ機が、濃霧の中、誘導路代わりに滑走路を進んでいた米パンナム(パンアメリカン航空)のジャンボ機に正面衝突したものです。
パンナム機はKLM機に乗り上げるようにして双方ともに炎上しました。

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Wikipedia

このテネリフェ事故でも羽田事故と同様に管制官と機長の間にコミュニケーション障害が起きており、それが主原因でした。
時系列で追います。

「KLM4805便の機長はブレーキを解除し離陸滑走を始めようとしたが、副操縦士が管制承認が出ていないことを指摘した。
17時6分6秒、KLM4805便の副操縦士は管制官に管制承認の確認を行う。
17時6分18秒、管制官はKLM4805便の飛行計画を承認した。これはあくまで「離陸の準備」であり、「離陸してよい」という承認ではないが、管制官は承認の際に「離陸」という言葉を用いたためKLM4805便側はこれを「離陸してよい」という許可として受け取ったとみられる。
17時6分23秒、KLM4805便の副操縦士はオランダ訛りの英語で、“We are at take off”(これから離陸する)または“We are taking off”(離陸している)とどちらとも聞こえる回答をした。
管制塔は聞き取れないメッセージに混乱し、KLM4805便に「OK、(約2秒無言)離陸を待機せよ、あとで呼ぶ(OK, … Stand by for take off. I will call you)」とその場で待機するよう伝えた。この「OK」とそれに続く2秒間の無言状態が後に問題とされる」
Wikipedia

テネリフェにおいても、羽田事故における海保機のケースに似たミスが起きます。
KLM機はすでに地上滑走しようとしていましたが、いったん離陸の承認を得るために停止していました。
管制塔から来ている指令は「テイクオフ準備」でしたが、KLM機は「テイクオフ」の部分を離陸許可と勘違いしました。
そしてKLM機は 、本来は「停止・待機」指示だったにもかかわらず、「われわれは離陸している」と通信して滑走を再開してしまいました。
ちょうど羽田事故で、停止して待機命令を聞き違えて、誘導路から滑走路に出てしまった海保機のようにです。

管制官はこのKLM機の真正面からパンナム機が滑走路に進入していたことを知っていましたが、ここでなぜか「謎の2秒間の沈黙」をしてしまいます。
たぶんKLM機のオランダ訛りの英語が聞き取れなかったためだと言われていますが、管制官は自分の出した「停止・待機」指示を了解したものだと受け取ったようです。

この通信のやりとりは、もう1機のパンナム機でも傍受されていました。
このような傍受は、本来混信を避けるためにできないことになっていますが、このとき管制官はマイクの送信ボタンを押しっぱなしだったのです。
このような大事故も、小さなミスの集積だとわかります。

とまれKLM機に待機指示がでていると思ったPAA機は「滑走路があいたら離陸する」と応えます。   

「17時6分26秒、管制官は改めてPAA1736便に対し“Report the runway clear”(滑走路を空けたら報告せよ)と伝え、PAA1736便も“OK, we'll report when we're clear”(OK、滑走路を空けたら報告する)と回答した」
Wikipedia

この通信もKLM機にも聞こえており、仰天したKLMの機関士はパンナム機が滑走路にいるのではないかと機長に危険を進言します。
そのときのKLM機内部の会話がボイスレコーダーに残っていました。

KLM機関士:「まだ(パンナム機が)滑走路上にいるのでは?」
KLM機長:「何だって?」
KLM機関士:「まだパンナム機が滑走路上にいるのでは?」
KLM機長/KLM副操縦士:(強い調子で)「大丈夫さ!」
Wikipedia

機長は機関士の上司であり、しかもKLMの中でも最も経験があるパイロットだったために、機関士は重ねての進言は控えてしまい、この乗客・搭乗員の運命は決定しました。

羽田事故においても、管制塔と海保機が重大なコミュニケーションミスをしています。

44分56秒   管制  JAL 516 滑走路34R着陸支障なし。風 310度8ノット。
45分01秒   日航機 滑走路34R着陸支障なし JAL 516
11秒   海保機 タワー、JA 722A C誘導路上です。
管制  JA 722A、東京タワー こんばんは。1番目。C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください。
19秒   海保機 滑走路停止位置C5に向かいます。1番目。ありがとう。

海保機は「待機・停止」指示であったにもかかわらず、この通信の「1番目」を一番最初の離陸と勘違いし、日航機の手前の滑走路上に出て停止してしまいました。
またテネリフェでもそうであったように、羽田も双方から互いの機体は見えず、衝突まで気がつきませんでした。
しかも双方共に滑走路が極度に立て込んでおり、一刻も早く離陸を急ごうとして焦る「ハリーアップ症候群」が生じていと指摘されています。

今回の羽田事故がテネリフェ事故のような大惨事にならなかったのは、一に日航客室乗務員の勇敢な脱出活動によってでした。
彼女たちの真にプロフェショナルな仕事は、称賛してもしすぎることはありません。

このテネリフェ事故は47年も前に起きた事故ですが、それから航空機の安全装備や訓練は大きく進歩しましたが、この管制塔と航空機のコミュニケーションは無線交信というある意味で原始的なツールひとつに任されたまま残されています。

 

 

 

 

2024年1月 7日 (日)

日曜写真館 初東雲珊瑚の薄紅鮮しき

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初東雲暁闇に幹潜みゐて 新谷ひろし 

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除々に除々に初東雲といへる空 後藤比奈夫

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せめぎあふ初東雲の藍と紅 鷹羽狩行

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しののめの星まだありぬ揚雲雀 篠原

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しののめの薄氷は踏み砕くもの 雅人

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かたびらの初あけぼのや水浅黄 配力

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一生のあかときいくつ初曙 新谷ひろし

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木の中に初東雲の柳かな 武定巨口

 

 

2024年1月 6日 (土)

海保機に進入許可なし

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どうやら国家的災厄というのは重なる習性でもあるようです。
2011年3月には、東日本大震災と福島第1原発事故が重なりました。
今回は、能登半島地震と羽田日航機事故が重なりました。
ただし、今回は、地震対応は素早く、航空機事故は客室乗務員の現場力で最悪の結果をかろうじて回避できました。

「2日午後6時前、東京 大田区の羽田空港で、新千歳空港から向かっていた日本航空516便が、着陸した直後に海上保安庁の航空機と衝突しました。この事故で海上保安庁の機体に乗っていた6人のうち、5人の死亡が確認されたほか、日本航空516便の乗員・乗客のうち14人がけがをしていることが確認されたということです。
また、この事故について、警視庁は業務上過失致死傷の疑いで詳しい経緯を捜査する方針です」
(NHK1月3日)
【2日詳細】羽田空港 日本航空JALの機体が炎上 海上保安庁の機体と衝突 海保機の5人死亡 | NHK | 羽田空港事故 

日航機事故の対応に失敗し、仮に400名もの乗客を焼死させてしまっていたら、岸田内閣は吹き飛んでいたことでしょう。

「欧米各紙が事故を伝える記事の見出しには「ミラクル」という言葉が並んだ。英ガーディアン紙は「まず第一に、私たちは奇跡を目撃したと言わなければならない。あの飛行機から乗客全員を降ろした方法は、ほとんど信じられないほどだ」との元民間パイロットの談話を伝えた。
米ニューヨーク・タイムズ紙は旅客機の安全教育の専門家の話として「驚くべきだ。CAたちの反応速度は目を見張るものがあった。本当に奇跡だった」。またロイター通信は「CAたちは素晴らしい仕事をしたに違いない。乗客全員が降りられたのは奇跡的だった」との航空分析会社の専門家の話を伝えた」
(産経1月3日)
全員脱出「奇跡の18分」世界が称賛 「驚くべき」「CAは素晴らしい仕事」日航の事故対応 - 産経ニュース (sankei.com)

この脱出成功の原因は

「識者が多く指摘していたのが、大きく(1)客室乗務員(CA)の訓練(2)乗客が荷物を持ち出そうとせずに速やかな脱出に協力した、という点だ。JALが1月3日夜に開いた記者会見でも、こういった点が奏功したとの見方が示された」
羽田事故、世界を驚かせた「奇跡」の裏側...JAL幹部が明かす CAが迫られた「判断」: J-CAST ニュース【全文表示】

全部で8カ所あるシューターを、どこを降ろしどこを降ろさないかの判断を客室乗務員が瞬時に行い、プロフェショナルな誘導で全員を救助しました。
【速報】シューター滑降、9人次々避難 羽田の航空機衝突事故|47NEWS(よんななニュース)

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日経

「大丈夫です」「落ち着いて」。乗員が繰り返す間にも機内は緊迫する。窓の外が炎で赤くなり、子どもが泣き叫ぶ声が聞こえた。案内があるまで席で身をかがめるように指示があり「(乗員の)言うことを聞いた方がいい」と呼びかける乗客もいた。
出口が開くまでの時間は5〜15分ほどとみられる。アナウンスシステムが作動せず、一部の乗員はメガホンも使い誘導した。8カ所ある出口のうち5カ所は火災で使えないと判断。最前列の左右、最後尾の左の計3カ所から、滑り台状の脱出シューターで次々と乗客が機外に脱出を始めた」(日経1月3日)
【羽田空港事故】「90秒ルール」訓練効果か 日航機、18分間で全員脱出 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

そして機長は乗客全員の脱出を見届けて、最後に機体を後にするという国際慣習どおりに締めくくりました。
火に包まれた機体からの脱出という離れ業は、こうしてパーフェクトに終わりました。
ペットがどうしたというチャチャがあるようですが、人が死んでペットが助かればよいとでもいうのでしょうか。
「ペット論争」が起きているようですが、ことの軽重をわきまえないでくだらないにもほどがあります。

ところで原因については、事故調査委員会が調査中ですので決定的なことを言うべきではありませんが、ほぼわかってきています。

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海保機とJAL機、互いに気付かずに衝突した可能性 羽田の事故 [日航機・海保機事故]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

同一滑走路上にふたつの機体が併存していたために、日航機が海保機の後ろにぶつかるようにして衝突したことが事故原因です。
海保機長は爆発が起きたと思ったと語り、日航機長は見えなかったと語っているところから、両機は互いの存在を視認できないまま衝突しています。

すると、この事故でありえる原因の可能性はみっつしかありません。
①日航側が進入してはならないC滑走路に進入したヒューマンエラー
②海保機の誤った進入
③管制ミス

追って最大の物的証拠のボイスレコーダーとフライトレコーダーの記録も開示されるでしょうが、管制記録は国交省が交信記録を公表しています。

「国土交通省が公表した交信記録(抜粋)
時間(2日午後)   発信者 交信内容
5時43分02秒   日航機 東京タワー。JAL 516スポット18番です。
管制  JAL 516、東京タワー こんばんは。滑走路34Rに進入を継続してください。風 320度7ノット。出発機があります。
12秒   日航機 JAL 516 滑走路34Rに進入を継続します。
44分56秒   管制  JAL 516 滑走路34R着陸支障なし。風 310度8ノット
45分01秒   日航機 滑走路34R着陸支障なし JAL 516
11秒   海保機 タワー、JA 722A C誘導路上です。
管制  JA 722A、東京タワー こんばんは。1番目。C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください。
19秒   海保機 滑走路停止位置C5に向かいます。1番目。ありがとう。
※交信は英語。本文は国交省の仮訳による。JAL 516=日航機、JA 722A=海保機、東京タワー=管制」
海保機、滑走路進入許可なし=日航機には着陸許可―羽田事故で交信記録公表・国交省|ニフティニュース (nifty.com)

5時44分56秒に管制は日航機に着陸に支障がないと告げて着陸許可を出し、すでに着陸態勢にあった日航機は進入を継続します。
一方、海保機は45分11秒に管制塔にC滑走路の誘導路上にいることを管制に伝え、管制は「C5上の滑走路停止位置まで地上走行するようら」と命じ、19秒には海保機もそれを復唱しています。
ちなみに航空機と管制は必ず復唱して確認し合います。

管制官は滑走路付近の航空機の中で最初の離陸予定を意味する「ナンバーワン」と伝えた上で、「C5上の滑走路手前停止位置まで地上走行してください」と述べ、C滑走路手前にあるC5誘導路上の停止位置まで走行するよう指示しています。
海保機側は「滑走路手前停止位置C5に向かいます。ありがとう」と復唱している以上、滑走路手前の待機位置で停止すべきでした。
しかし、どのような錯誤によるのか、海保機は機長が言うように「着陸許可が出た」と解釈し、C滑走路上に出てしまい、そこで40秒待機してしまいました。
海保機長がこの滑走路上でエンジンをフルスロットルにしていたことは証言からわかっており、離陸する気だったと思われます。
そこに管制から「滑走路に進入を継続してください」「着陸支障なし」と告げられて、滑走路南側からの着陸許可が出ていた日航機が衝突したのです。
亡くなられた海上保安官に笞打つようですが、海保機の管制からの指令の聞き間違えであった可能性が高くなりました。

ただし羽田空港には、2機の航空機が同時に滑走路を占有しているという危険を監視し、管制官に知らせる「滑走路占有監視支援機能」がありましたが、管制官は気がつかなかったようです。

「羽田空港で日航と海上保安庁の航空機が衝突した事故で、着陸機が接近する滑走路に別の機体が進入した場合、管制官に画面上で注意喚起する「滑走路占有監視支援機能」が事故当時、正常に作動していたことが分かった。国土交通省が5日、明らかにした。海保機は滑走路への進入後、約40秒間停止していたとみられ、管制官が注意喚起表示を見落としていた可能性が出てきた」
(共同1月5日)
注意喚起機能は正常に作動 管制官、見落としの可能性(共同通信) - Yahoo!ニュース

この監視機能が正常に働いて管制官に知らせたにもかかわらずなぜか無視され、さらに海保機も管制官の指示を間違えていたダブルヒューマンエラーの可能性です。
世界の空港では、陸着陸の密度が高い空港になればなるほどこのようなヒューマンエラーによる機体の接触事故が絶えません。
そこで世界の空港管制では、「離陸」とひとことで指示するのではなく、それを「滑走路進入」「滑走路前で待機」に分けて指示することになっています。
パイロットもこの指示の確認のために復唱を義務づけられています。
にもかかわらず、今回のような事故が起きたのですから、深刻に受け止めねばなりません。

管制官には「第5管制業務処理規程」として、滑走路上での間隔について細かく決められています。
管制官は決められた間隔を守りつつ、間隔が最小限になるように指示や許可を出しています。
ところが羽田空港は1時間当たりの発着回数が最大90回にも上り、文字通り列をなして離陸を待つことが常態化していました。
これが事故の遠因です。
しかもこの時期は年末年始の帰省客らの利用で年間最大の混雑をしていました。
そして旅客便に加えて海保など他の利用もあり、羽田空港の過密状態は世界最悪レベルだったと思われます。
この羽田空港のパンク状態を解決するためには、羽田のさらなる拡張と横田基地の共用化が避けられないでしょう。

繰り返しますが、事故調査は始まったばかりですので、新事実が出たとしてもまだ可能性の段階だということをお忘れなく。

 

2024年1月 5日 (金)

見事だった能登半島大地震の救援対応

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明けましておめでとうございます。今年の更新を開始します。
元旦の賀詞に「地には平和を」の言葉に込めた思いのようなものがあったのですが、見事に裏切られました。
ご承知のように、おめでとうという言葉が喉に詰まるような年始でした。
これほど多くの災厄が降りかかった年始は初めてです。

能登半島で巨大地震が起き、その翌日には日航機が海保機と衝突して5名が亡くなりました。
能登地震では、3日の午後3時時点で死者が73人、負傷者は323人となりました。
石川県内では地震や津波により住宅223棟への被害が確認され、停電や断水は今も続いています。

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元日に能登半島で震度7の大地震 大津波警報も 建物倒壊や大規模火災で甚大被害、救助活動続く(Science Portal) - Yahoo!ニュース

日航機事故では、5名の海保職員が亡くなりました。
能登半島地震に救援物資を届けようとした時に起きた事故でした。
この地震で亡くなった方々と海上保安官に哀悼の意をすると同時に、いまだ困難な状況の中で日夜を問わず救助活動や復旧活動に携わる、自衛隊員、県・各市町の職員、電力・ガス・水道などのライフライン関係者、物資運搬に携わるすべての皆さまに、深く感謝致します。

さて、このような大災害や大事故において問われるのは国家の有り様の証明でした。
阪神大震災では首相が腰を抜かし、東日本大震災と福島事故では首相が狂乱しました。
今回はどうだったでしょうか。
結論から言えば、岸田氏と政府の対応は見事でした。
日本国家は正常に機能し、国民を救援し、保護し続けています。

能登半島大地震は東日本大震災にも劣らない震度7クラスのものでしたが、自衛隊は直ちに救援活動を開始しています。

「防衛省によりますと、震度6強の揺れを観測した石川県輪島市にある航空自衛隊輪島分屯基地に、住民およそ1000人が避難しているということです。
分屯基地では水や毛布、食料を配って住民の避難を一時的に受け入れているということです。
また、金沢市にある陸上自衛隊金沢駐屯地の一部の部隊が、輪島市に向かって移動を始めているということです」
(NHK2024年1月1日 19時48分)
石川 航空自衛隊輪島分屯基地に住民約1000人が避難 | NHK | 令和6年能登半島地震

ほぼ同時刻の5時30分には陸海空自衛隊が、状況の偵察と情報の伝達のために航空機を飛ばしています。
輪島の空自分屯地では避難民を受け入れると同時に、霞目駐屯地からは状況偵察のヘリを飛ばしています。

「霞目駐屯地 東北方面ヘリコプター隊の映像伝送機UH1は、本日、石川県付近で発生した地震に伴う山形県沿岸部の被害情報収集のため、霞目駐屯地を17時30分頃離陸しました。」
陸上自衛隊霞目駐屯地

また海自も厚木、八戸、舞鶴から航空機を飛ばして情報を収集しました。

「1月1日午後4時10分頃、石川県能登地方を震源とする最大震度7の地震を受けて、#海上自衛隊 のP-1(厚木)、P-3C(八戸)、SH-60K(舞鶴)が離陸し、上空からの被害情報収集を実施中です」

また発生から時間をおかず、全国の自衛隊、消防の緊急消防援助隊、警察の広域緊急援助隊といった緊急即応部隊が被災地に向かいました。
消防は広域の動員を発令しました。

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能登地震「発生72時間」はあす午後、自衛隊員2000人に倍増…岸田首相「救命・救助に全力」 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

「今回の地震を受けて、総務省消防庁は午後6時までに
新潟県、富山県、福井県、愛知県、岐阜県、大阪府、京都府、奈良県の8つの府県の消防に対し、大規模な災害の際に救助活動を行う「緊急消防援助隊」として、合わせておよそ1700人に石川県への出動を要請しました。(略)
今回の地震を受け、警視庁は1日夜、現地で救助活動などにあたる「特殊救助隊」を石川県に派遣しました。部隊は1日夜8時前に都内を出発し、
現地で活動している部隊と連携し、捜索や救助活動などにあたるということです。
警察庁は関東や中部、近畿の16の警察から「広域緊急援助隊」を石川県に向けて順次、出動させました。
派遣された隊員はおよそ数百人にのぼり、現地での救出救助活動にあたるということです。
また、福井県、滋賀県、新潟県、愛知県、京都府の警察から「広域警察航空隊」が出動し、ヘリコプターで被害の状況を確認しているということです」
(NHK 2024年1月1日 22時13分)
総務省消防庁 「緊急消防援助隊」約1700人 石川県へ出動要請 | NHK | 令和6年能登半島地震

気象庁とNHKは、常に震災情報とライフラインについての情報を流し続けました。
民放のくだらない年始番組は吹き飛んで、地上波は震災情報一色となりました。
そういえば気のせいか、今回は被災地をハイエナのように低空で飛ぶ民放ヘリが少なかったような気もします。

翌2日には早くも自衛隊は統合任務部隊を編成し、陸海空で連携して災害救助に当たる体制を整えました。
驚異的なスピードです。
all.pdf (mod.go.jp)

「能登半島地震で、防衛省は2日、災害対応に当たる陸海空3自衛隊の統合任務部隊を編成した。隊員約千人が活動中で、各自治体の要請に応じられるよう約9千人が待機している。木原稔防衛相は「スピード感を特に重視し、全力で対応する」と防衛省で記者団に語った。
今回の部隊トップは陸自中部方面総監が務める。同様の部隊は2011年の東日本大震災などでも編成された」
(共同1月2日 16:13)
自衛隊の統合任務部隊を編成 能登地震「全力で対応」と防衛相(共同通信) - Yahoo!ニュース

おそらく平時から東日本大震災の対応を検証して整備してあったようですが、見事です。

そしてこのような国家的大災害に際して岸田氏は、いつものふにゃふにゃ感をかなぐり捨てて、指導者としてしゃっきりとした姿勢を見せました。
いつもは批判ばかりしていますが、今回は素直に評価いたします。

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自衛隊員を4日中に4600人に増強 能登半島地震で岸田首相が表明 - 産経ニュース (sankei.com)

「今回の地震を受けて、岸田総理大臣は、非常に大規模な被害が報告されているとした上で引き続き救命救助活動を急ぐとともに、現地に関係省庁の幹部も派遣し、物資の輸送などの支援をプッシュ型で進めていく考えを示しました」
(NHK2024年1月2日 16時01分)
【全編動画】地震 岸田首相会見「物資輸送など支援 プッシュ型で」 | NHK | 令和6年能登半島地震 

聞き慣れない「プッシュ型支援」とはこういう意味です。

「発災当初は、被災地方自治体において正確な情報把握に時間を要すること、民間供給能力が低下すること等から、被災地方自治体のみでは、必要な物資量を迅速に調達することは困難と想定されます。
このため、国が被災都道府県からの具体的な要請を待たないで、避難所避難者への支援を中心に必要不可欠と見込まれる物資を調達し、被災地に物資を緊急輸送しており、これをプッシュ型支援と呼んでいます」
物資支援(プッシュ型支援)の状況 : 防災情報のページ - 内閣府 (bousai.go.jp) 

馳知事が公務で東京にいたことを批判する輩もいるようですが、自治体首長が皇室の祝賀に参加するのはとうぜんのことで、馳知事は直ちに地元に帰還して指揮をとっています。
くだらないことで足を引っ張らないこと。

このように今回の能登半島地震においての救援活動は見事な立ち上がりでした。
かくも見事に救援体制を発動できる国は、世界でも珍しいのではないでしょうか。

 

 

2024年1月 1日 (月)

明けましておめでとうございます

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明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

身体のアッチコッチガタがきていますが、憧れだけはなくなさないようにしたいものです。
皆様のご多幸をお祈りいたします。

去年2023年は、歴史の分岐点にも見えるウクライナ戦争とハマス戦争が同時に起きるというとんでもない年でした。
この結果次第では、大きく歴史が変わってしまうかもしれませんが、現状ではそうとうに厳しい流れです。
戦争は今年一杯続くことは間違いありませんが、民主主義陣営の勝利とすっきりいえない決着を迎えるかもしれません。

一方、国内ではかつての2・26の青年将校のような特捜が財務省とつるんで、安倍派狩りに狂奔しています。
安倍派は名称から勘違いされているような安倍氏の理念を支持する政治集団ではありません。
寄らば大樹の陰で集まった政治屋ばかりですが、中には少数ながらそうではない人たちもいました。
良質な人まで含めて、安倍派は分裂コースに入り無力化の道を辿っています。
結果、安倍氏が残した政治的遺産のアベノミクスと対中包囲網は大きく揺らごうとしています。
いかに安倍氏を失ったことが、巨大な国家的損失だったかわかります。

安倍派の崩壊で喜ぶのは、習近平です。
習の哄笑が見えるようです。

ささやかですが、素朴な祈りを。
地には平和を

空には光を
海には願いを

 

2024年元旦
ブログ主

 

 

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