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« 第1ラウンドは民主主義陣営の勝ち | トップページ | 北朝鮮の「新たな立場」とは »

2024年1月17日 (水)

独裁者は間違える

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昨日はniftyのメンテのため、午前から夕方6時までまったく視聴できなくなってしまって申し訳ありません。
私が謝ることではないのですが、ほぼ丸1日アウト。
記事を書くサイト側も同様にブラックアウトで、いつもこの時間帯で翌日の記事を書いているために進行が押せ押せになってしまいました。
つらい。

さて、台湾総統選挙に対していままでにない規模の大陸からの干渉がありました。
頼清徳新総統が勝利演説の場で、あえてこのように言っているにはわけがあるのです。

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エポックタイムス

「一つ目は、台湾は全世界に対し、民主主義と権威主義の間において、台湾は民主主義の側に立つことを選択したと発信しました。中華民国台湾は、これからも民主主義の同志国と共に歩んでいきます。
二つ目は、台湾人は自らの行動でもって、外部勢力の介入を跳ね除けました。私たちは、総統を選ぶ権利は、私たち自身にあると信じています」
【全文】台湾・頼清徳次期総統勝利演説 中共の武力を前に「台湾守り抜く」 | 台湾総統選 | 中国共産党 | 民主主義 | 大紀元 エポックタイムズ (epochtimes.jp)

大陸からの高温高圧の干渉の下にこの総統選が行われ、中共の介入をはね除けて明確に台湾が自由主義陣営の立場に立ちきり、改めて旗幟を鮮明にしたことに歴史的意義があります。
しかも民進党は実にデリケートな神経で立場を明らかにせねばなりませんでした。
それは大陸に侵略の口実を与えず、かつ立場を明らかにするというガラス細工のような外交をするという意味です。

台湾選挙の1月12日という選挙前夜、ブリンケンは国務省に中共の外交を担う中央対外連絡部の劉建超部長を呼んで会談しました。
ウクライナや麻薬問題についても話し合われたようですが、この日程からいってももちろん焦点は台湾総統選だったはずです。

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日経

「ブリンケン米国務長官は12日、首都ワシントンで中国共産党中央対外連絡部の劉建超部長と会談した。台湾海峡と南シナ海情勢に触れ、平和と安定が重要だと訴えた。13日投開票の台湾総統選についても話し合ったとみられる。
両氏は米中対話を続ける方針を確認した。国務省のミラー報道官は声明で、2023年11月の米中首脳会談で合意した事項を実行する考えで一致したと説明した。重点分野として麻薬対策と軍事対話をあげた」
(日経1月13日)
ブリンケン米国務長官、中国共産党高官と会談 台湾海峡の安定訴え - 日本経済新聞 (nikkei.com) 

ワシントンがあえて中国外交官相手ではなく、中共対外連絡部という政府の上にそびえ立つ共産党外交部に警告を発したのは、中共に対し台湾選挙を台湾海峡を不安定化させる口実に使わないよう強く警告するためです。
現在、米国はアジア太平洋地域で、新たな戦場を開きたくないと考えているはずです。
それは同時に台湾政府に対しても同じことを強く言ってきたはずで、だから米国政治を熟知する「駐米大使」蕭美琴を副総統に据える人事は大いに米国を満足させるものだったはずです。
蕭美琴なら、このガラス細工を大事にすることの意味を熟知しているからです。

シドニー工科大学の准教授である馮崇義はこのように述べています。

「同氏は世界的な第二次冷戦を視野に台湾選挙と台湾海峡の情勢を見なければならないと述べた。第二次冷戦とは、米国が主導する民主主義陣営と中国が主導する権威主義陣営との対立を指し、台湾は民主主義陣営に属し、中共の権威主義体制の拡大を封じ込める最前線ということになる」
台湾総統選の民進党勝利 中共の選挙介入が裏目に | 頼清徳 | 大紀元 エポックタイムズ (epochtimes.jp)

この「中共の権威主義体制の拡大」とは、現実にどのようなものとなるでしょうか。
いくつかのシナリオが考えられます。
2023年12月初め、キヤノングローバル戦略研究所が「ポスト台湾有事」と題する政策シミュレーションを実施しています。
このシミュレーションゲームは、米国のシンクタンクがよく使う大規模なゲーム形式を使います。

「この種の演習は2009年以来43回目。今回も国会議員、公務員・自衛官、学者、ビジネス・ジャーナリズムの精鋭約40人が集い、中国や台湾、日本など関係政府・報道関係者らの役を一昼夜、リアルに演じてもらった」
(産経12月14日)
【宮家邦彦のWorld Watch】中国「台湾侵攻」5つのシナリオ - 産経ニュース (sankei.com)

えてして政府がするシミュレーションは、中国の軍事侵攻をテーマにすれば、ほとんどの時間をかけてこれがいかなる法律の範疇に属するのかという事実認定の神学論議に費やされてしまいます。
ですからこんなことをいくらやっても、国会の大臣の答弁のメモになるだけのことです。

一方、40人もの専門家が各自の専門分野に立って、ロールプレイングゲームをするわけですから、東アジア情勢のリアルな状況展開を知り、かなりの精度で予測することが可能です。
キャノングローバル研が用意した台湾有事シナリオは5つでした。

●シナリオ1 台湾の「独立宣言」
これは台湾が焦るあまり独立宣言、ないしはそれに近い言辞をしてしまうことから始まります。
たとえば、台湾正名運動も「独立宣言」と大陸は見なすでしょう。

台湾正名運動(たいわんせいめいうんどう)とは、主に台湾泛緑連盟の議員やその支持者及び在日台湾人などによって行われている台湾本土化運動の一つ。台湾の公的な場で使用されている「中国中華(China)」という呼称を「台湾(Taiwan)」へ置き換え、台湾の存在を「中国の一部」から「中国とは別個の地」に代えることを目標としている」
台湾正名運動 - Wikipedia

「ひとつの中国」を国是とする中共は、台湾が「独立」を正式表明することを待っています。
「ひとつの中国」は、中共にとって正統性( legitimacy)そのものです。
ワンチャイナは、中共が中国を支配する倫理的、歴史的に正しいとされる唯一の根拠ですから、譲ることができないのです。
したがって、中国は台湾が「独立」を口にした瞬間、武力行使せざるを得ないことになります。

ただし、台湾民進党政府が「独立」という地雷を踏む可能性はかぎりなくゼロです。

●シナリオ2 軍強硬派の自己過信

「一方、人民解放軍が「今なら台湾制圧は成功可能」と政治指導部に保証するなど、米軍を過小評価し、己の軍事力を過大評価する恐れもある」
(産経前掲)

中国軍内部には強硬派が存在します。
彼らは自らを過信し、世界最大最強の軍隊だと思っています。
そして台湾軍を小国の三流軍隊と見なしており、米軍も手を出せないはずだ、とみくびっています。
特にウクライナ戦争に、米国が戦備リソースを使っている中、東アジアはまで手を伸ばせないと考えています。
彼ら軍部強硬派は前述したブリンケンの中共に対する警告も、米国の弱さの現れであると見るでしょう。
この可能性はありえます。

●シナリオ3 共産党内の権力闘争
習に強力な政敵が誕生し、彼が習を軟弱な日和見主義者と批判した場合、習はリアクションとしての軍事侵攻を取らざるをえなくなるでしょう。

「現指導者の前に強力な政敵が出現し、現政権の外交政策を「弱腰」「不十分」と批判し始めれば、対抗上何らかの措置を取らざるを得なくなる。今後中国国内の経済・社会状況が悪化すれば、党内で権力闘争が再燃する可能性はあるだろう」
(産経前掲)

ただし、現在のように習近平の党内闘争が終了し、ひとり独裁が完成してしまえばこの可能性は低くなります。

●シナリオ4 民衆の不満爆発

「マクロ経済学的に見て現政権の経済政策は不十分だ。ナショナリズムで扇動されてきた民衆の不満が、不動産市場低迷、バランスシート不況、若年失業率の悪化、社会保障制度の不備などで爆発する恐れがある以上、指導部が批判を逸らすため対外強硬路線に踏み切る恐れもある」
(産経前掲)

いわゆる内部矛盾を外への侵略で糊塗する伝統的な方法です。
共産党統治を国民が支持してきた最大の理由が、右肩上がりの国内経済でした。
中国経済は2023年にコロナ危機から急速に回復し、世界成長の原動力としての役割を再び果たすと予想されていましたが、習のゼロコロナ政策の失敗によって完全に失敗し、いまやIMFから世界生産の「足かせ」とまで呼ばれるほどに失速してしまいました。


●シナリオ5 独裁者の判断ミス
これがもっとも大きなリスクです。
一種のヒューマンエラーですが、プーチンはこの「独裁者の誤謬」をウクライナで盛大にやらかし、独裁者は必ず失敗するという教訓を世界に与えました。

「最も恐ろしいのは、プーチン露大統領の対ウクライナ戦争のように、独裁者が戦略的判断ミスを犯す可能性だ。もしかしたら、この蓋然性が最も高いかもしれない」
(産経前掲)

今回の台湾総統選を見ると、中共の干渉の痕が多く発見されます。
中国は毎回、台湾の選挙に介入してきましたが、今回は最も深刻、かつ大規模でした。
中国は明らかに選挙に影響を及ぼして、彼らが望む馬英雄九政権のような親中政権を樹立しようとしました。
その最大のものは、馬英九の「一つの中国」発言です。

「元台湾総統の馬英九氏は、優勢な民進党に対抗するため、反対候補の一本化を図ったが、協議は決裂した。8日、ドイツメディアの取材を受けた馬英九氏は、台湾と中国の関係を意味する「両岸関係」についてはと前置きしながらも、「信用しなければならない」という発言をした。この事は国際社会と台湾の有権者に衝撃を与え、国民党の侯友宜(こう ゆうぎ)候補でさえ認めなかった。
蔡慎坤氏によれば、 中共が支持する人物は、必ず負ける。中共に好意的な政党や要人は、ほとんどの場合、有権者に捨てられると述べた」
エポックタイムズ (epochtimes.jp)

この大きすぎる敵失で、民進党は勝利を勝ち得たといっても過言ではありません。
この原因は、習近平の馬鹿ぶりにあると福島香織氏は見ていますが、私もそう考えます。
習の現実に対してのこのボケぶりこそが、東アジアの最大の不安定要因なのです。

 

 

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コメント

国民党は、先だっての中共のロケットで防空警報を発出したのは「民進党の選挙利用だ」とも主張して、オウンゴール2発という雑っぷりでした。
習とその手羽先による介入なり影響工作なりも、確かに雑で稚拙です。
昨夏の、東京大学の佐橋亮准教授のお話を思い出しました。
中共の科学技術の発展とその軍事利用で「追い付かれる恐怖」がアメリカを動かしているが、合衆国側には、堕ちゆく中共だからこそ冒険主義に走ることを危惧する論調もあるといいます。(2023年8月27日BSテレ東 日曜サロン)

もし賢ければ、堕ちたり走ったりはしない確率が高いのですがね。
昔むかしの彼の地には、賢い言説を残した誰かがありました。
古典を捨ててしまえば、碌なことにはならない、ということですかね。

 昨近の中国の状況をかんがみると、シナリオ2~5まで、どの動機によって暴発してもおかしくないように思えます。
特にシナリオ5は習自身の能力の低さに加え、「ロバの耳」の寓話そのもので、状況に気付きさえしない「独裁者の誤謬」に陥っている気味がすでに現れてます。

「友好」や相手に対する好意的な理解、同民族同士の「対話や交流」と言った対応策は共産党には通じません。
台湾は中国でなく、自由主義世界の中の一員として存在感を増して行く事が次世代に生きる若者たちのためになるでしょう。

選挙の翌日だったか⁈、NHKニュースでナウルが台湾との外交を断交したと報じてました。
蔡政権発足時には22カ国と外交がありましたが、大陸の圧力によってその数が徐々に減り、今や12カ国としか外交がありません。
あの手この手で台湾を追い詰める習近平。

台湾侵攻の前に無人の尖閣諸島に進軍し掌握、日本の出方を見てから台湾へという説もあります。
仮に尖閣に漁師に扮した民兵が上陸した場合、海上保安庁だけでは対処できません。
自衛隊も投入する可能性大です。
不測の事態が起きたその時、日本は、岸田政権は正しく対応出来るのか不安しかない。
安易に米軍がいるだろうという方もいますけど、まず日本が領土を守るべく戦い、血を流さねば米軍は動きません。

トランプさんが大統領に再選されたらどうなるのでしょう、ウクライナから手を引くと言ってますし、アジアのことなど知らん顔かもしれない。イスラエルだけは別ですが。
安倍さんが存命であれば、総理時代のように彼に助言して上手く誘導できるのでしょうが、実に惜しい人をなくしました。

共同通信などは台湾独立を書いて煽ってますね。

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