海保機に進入許可なし
どうやら国家的災厄というのは重なる習性でもあるようです。
2011年3月には、東日本大震災と福島第1原発事故が重なりました。
今回は、能登半島地震と羽田日航機事故が重なりました。
ただし、今回は、地震対応は素早く、航空機事故は客室乗務員の現場力で最悪の結果をかろうじて回避できました。
「2日午後6時前、東京 大田区の羽田空港で、新千歳空港から向かっていた日本航空516便が、着陸した直後に海上保安庁の航空機と衝突しました。この事故で海上保安庁の機体に乗っていた6人のうち、5人の死亡が確認されたほか、日本航空516便の乗員・乗客のうち14人がけがをしていることが確認されたということです。
また、この事故について、警視庁は業務上過失致死傷の疑いで詳しい経緯を捜査する方針です」
(NHK1月3日)
【2日詳細】羽田空港 日本航空JALの機体が炎上 海上保安庁の機体と衝突 海保機の5人死亡 | NHK | 羽田空港事故
日航機事故の対応に失敗し、仮に400名もの乗客を焼死させてしまっていたら、岸田内閣は吹き飛んでいたことでしょう。
「欧米各紙が事故を伝える記事の見出しには「ミラクル」という言葉が並んだ。英ガーディアン紙は「まず第一に、私たちは奇跡を目撃したと言わなければならない。あの飛行機から乗客全員を降ろした方法は、ほとんど信じられないほどだ」との元民間パイロットの談話を伝えた。
米ニューヨーク・タイムズ紙は旅客機の安全教育の専門家の話として「驚くべきだ。CAたちの反応速度は目を見張るものがあった。本当に奇跡だった」。またロイター通信は「CAたちは素晴らしい仕事をしたに違いない。乗客全員が降りられたのは奇跡的だった」との航空分析会社の専門家の話を伝えた」
(産経1月3日)
全員脱出「奇跡の18分」世界が称賛 「驚くべき」「CAは素晴らしい仕事」日航の事故対応 - 産経ニュース (sankei.com)
この脱出成功の原因は
「識者が多く指摘していたのが、大きく(1)客室乗務員(CA)の訓練(2)乗客が荷物を持ち出そうとせずに速やかな脱出に協力した、という点だ。JALが1月3日夜に開いた記者会見でも、こういった点が奏功したとの見方が示された」
羽田事故、世界を驚かせた「奇跡」の裏側...JAL幹部が明かす CAが迫られた「判断」: J-CAST ニュース【全文表示】
全部で8カ所あるシューターを、どこを降ろしどこを降ろさないかの判断を客室乗務員が瞬時に行い、プロフェショナルな誘導で全員を救助しました。
【速報】シューター滑降、9人次々避難 羽田の航空機衝突事故|47NEWS(よんななニュース)
日経
「大丈夫です」「落ち着いて」。乗員が繰り返す間にも機内は緊迫する。窓の外が炎で赤くなり、子どもが泣き叫ぶ声が聞こえた。案内があるまで席で身をかがめるように指示があり「(乗員の)言うことを聞いた方がいい」と呼びかける乗客もいた。
出口が開くまでの時間は5〜15分ほどとみられる。アナウンスシステムが作動せず、一部の乗員はメガホンも使い誘導した。8カ所ある出口のうち5カ所は火災で使えないと判断。最前列の左右、最後尾の左の計3カ所から、滑り台状の脱出シューターで次々と乗客が機外に脱出を始めた」(日経1月3日)
【羽田空港事故】「90秒ルール」訓練効果か 日航機、18分間で全員脱出 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
そして機長は乗客全員の脱出を見届けて、最後に機体を後にするという国際慣習どおりに締めくくりました。
火に包まれた機体からの脱出という離れ業は、こうしてパーフェクトに終わりました。
ペットがどうしたというチャチャがあるようですが、人が死んでペットが助かればよいとでもいうのでしょうか。
「ペット論争」が起きているようですが、ことの軽重をわきまえないでくだらないにもほどがあります。
ところで原因については、事故調査委員会が調査中ですので決定的なことを言うべきではありませんが、ほぼわかってきています。
海保機とJAL機、互いに気付かずに衝突した可能性 羽田の事故 [日航機・海保機事故]:朝日新聞デジタル (asahi.com)
同一滑走路上にふたつの機体が併存していたために、日航機が海保機の後ろにぶつかるようにして衝突したことが事故原因です。
海保機長は爆発が起きたと思ったと語り、日航機長は見えなかったと語っているところから、両機は互いの存在を視認できないまま衝突しています。
すると、この事故でありえる原因の可能性はみっつしかありません。
①日航側が進入してはならないC滑走路に進入したヒューマンエラー
②海保機の誤った進入
③管制ミス
追って最大の物的証拠のボイスレコーダーとフライトレコーダーの記録も開示されるでしょうが、管制記録は国交省が交信記録を公表しています。
「国土交通省が公表した交信記録(抜粋)
時間(2日午後) 発信者 交信内容
5時43分02秒 日航機 東京タワー。JAL 516スポット18番です。
管制 JAL 516、東京タワー こんばんは。滑走路34Rに進入を継続してください。風 320度7ノット。出発機があります。
12秒 日航機 JAL 516 滑走路34Rに進入を継続します。
44分56秒 管制 JAL 516 滑走路34R着陸支障なし。風 310度8ノット。
45分01秒 日航機 滑走路34R着陸支障なし JAL 516
11秒 海保機 タワー、JA 722A C誘導路上です。
管制 JA 722A、東京タワー こんばんは。1番目。C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください。
19秒 海保機 滑走路停止位置C5に向かいます。1番目。ありがとう。
※交信は英語。本文は国交省の仮訳による。JAL 516=日航機、JA 722A=海保機、東京タワー=管制」
海保機、滑走路進入許可なし=日航機には着陸許可―羽田事故で交信記録公表・国交省|ニフティニュース (nifty.com)
5時44分56秒に管制は日航機に着陸に支障がないと告げて着陸許可を出し、すでに着陸態勢にあった日航機は進入を継続します。
一方、海保機は45分11秒に管制塔にC滑走路の誘導路上にいることを管制に伝え、管制は「C5上の滑走路停止位置まで地上走行するようら」と命じ、19秒には海保機もそれを復唱しています。
ちなみに航空機と管制は必ず復唱して確認し合います。
管制官は滑走路付近の航空機の中で最初の離陸予定を意味する「ナンバーワン」と伝えた上で、「C5上の滑走路手前停止位置まで地上走行してください」と述べ、C滑走路手前にあるC5誘導路上の停止位置まで走行するよう指示しています。
海保機側は「滑走路手前停止位置C5に向かいます。ありがとう」と復唱している以上、滑走路手前の待機位置で停止すべきでした。
しかし、どのような錯誤によるのか、海保機は機長が言うように「着陸許可が出た」と解釈し、C滑走路上に出てしまい、そこで40秒待機してしまいました。
海保機長がこの滑走路上でエンジンをフルスロットルにしていたことは証言からわかっており、離陸する気だったと思われます。
そこに管制から「滑走路に進入を継続してください」「着陸支障なし」と告げられて、滑走路南側からの着陸許可が出ていた日航機が衝突したのです。
亡くなられた海上保安官に笞打つようですが、海保機の管制からの指令の聞き間違えであった可能性が高くなりました。
ただし羽田空港には、2機の航空機が同時に滑走路を占有しているという危険を監視し、管制官に知らせる「滑走路占有監視支援機能」がありましたが、管制官は気がつかなかったようです。
「羽田空港で日航と海上保安庁の航空機が衝突した事故で、着陸機が接近する滑走路に別の機体が進入した場合、管制官に画面上で注意喚起する「滑走路占有監視支援機能」が事故当時、正常に作動していたことが分かった。国土交通省が5日、明らかにした。海保機は滑走路への進入後、約40秒間停止していたとみられ、管制官が注意喚起表示を見落としていた可能性が出てきた」
(共同1月5日)
注意喚起機能は正常に作動 管制官、見落としの可能性(共同通信) - Yahoo!ニュース
この監視機能が正常に働いて管制官に知らせたにもかかわらずなぜか無視され、さらに海保機も管制官の指示を間違えていたダブルヒューマンエラーの可能性です。
世界の空港では、陸着陸の密度が高い空港になればなるほどこのようなヒューマンエラーによる機体の接触事故が絶えません。
そこで世界の空港管制では、「離陸」とひとことで指示するのではなく、それを「滑走路進入」「滑走路前で待機」に分けて指示することになっています。
パイロットもこの指示の確認のために復唱を義務づけられています。
にもかかわらず、今回のような事故が起きたのですから、深刻に受け止めねばなりません。
管制官には「第5管制業務処理規程」として、滑走路上での間隔について細かく決められています。
管制官は決められた間隔を守りつつ、間隔が最小限になるように指示や許可を出しています。
ところが羽田空港は1時間当たりの発着回数が最大90回にも上り、文字通り列をなして離陸を待つことが常態化していました。
これが事故の遠因です。
しかもこの時期は年末年始の帰省客らの利用で年間最大の混雑をしていました。
そして旅客便に加えて海保など他の利用もあり、羽田空港の過密状態は世界最悪レベルだったと思われます。
この羽田空港のパンク状態を解決するためには、羽田のさらなる拡張と横田基地の共用化が避けられないでしょう。
繰り返しますが、事故調査は始まったばかりですので、新事実が出たとしてもまだ可能性の段階だということをお忘れなく。
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海保の機長はランウェイに出たのに、いつまでも「クリアード・フォー・テイクオフ」の指示が来ないなあ?ラッシュアワーなのにずいぶんと待たせる。
と、最後まで思ってたかも・・・という話です。やはり管制とのやりとりに何らかの齟齬があったようで。
あと、滑走路出てすぐに離陸していたらぶつからなかった。という意見もネットではお見受けしましたが・・・確かにそうですけど、それこそ重大な違反になります。
投稿: 山形 | 2024年1月 6日 (土) 01時39分
さすがに私の20年落ちの愛車にはついてないけれど、最近ではもう軽乗用車にさえ先行車追従やらライン逸脱防止やら衝突防止システムがついてます。ダブルのヒューマンエラーで起こった事故だとしても、AIが次々と実用化されているこの時代に、飛行機の運行安全面についてマシンのアシストが無かったなんて、まったく意外でしたわ。
そんなマシンがあるにはあったけどメンテ中で作動していなかったという報もありましたが、普通、メンテの時はサブシステムが動くとかするはずですわ。恒常的に、マシンアシストの空白時間を許している? それも年末年始に?
復唱して相互確認したにせよ、飛行機・飛行場の運営管理がヒトの脳の認識のみに頼っているなんて、ホント信じられませんわ。JR西日本の列車が脱線してマンションへ飛び込んだ大事故も、若い運転手が運行のわずかな遅れをド詰めされると焦って速度超過したというヒューマンエラーが原因で、速度超過を制御するシステムは無く、彼一人(の脳)だけに全乗客の命を預けていたという事実に愕然とした時のデジャブですわ。
私はただでさえ飛行機が怖くて出来るだけ乗りたくないタチなのに、こんなヒト頼みの事実を知ると、ますます乗れないですわ。羽田以外の飛行場、特にオウベイの飛行場もマシンアシストなど無いのかしらん。
投稿: アホンダラ1号 | 2024年1月 6日 (土) 22時10分