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2024年1月18日 (木)

北朝鮮の「新たな立場」とは

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北朝鮮がこんな不可解なことを言い出しました。
BBCからです。

「北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は15日、最高人民会議(国会に相当)で、韓国との統一はもはや不可能であり、憲法を改正して韓国を「第1の敵国」に定めるべきだと述べた。国営の朝鮮中央通信(KCNA)が16日に報じた。
KCNAによると、金総書記は南北統一を所管する3機関を閉鎖するとも述べた。
韓国の尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領はこれに対し、北朝鮮からのいかなる挑発にも「何倍も強力に」対応すると述べた。朝鮮戦争が1953年に停戦となって以降、南北は分断されたままになっている。平和条約は締結されておらず、北朝鮮と韓国は形式上は戦争状態にある」
(BBC1月17日)
金正恩氏、「南北統一」の目標を放棄 韓国を「第1の敵国」に定めるべきと - BBCニュース 



正恩は最高人民会議での演説で、憲法を改正し、韓国は「第1の敵、不変の主敵」であると位置づけ、南北統一に関連する全機関の解体し、南北関係について「新たな立場」をとるとしました。

「これを受けて13日付けの朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は「敵との関係について担当する部門の幹部らが参加して、12日決起集会が開かれた」と伝えました。
このなかでは、韓国について北朝鮮の「政権崩壊」と「吸収統一」を追求してきたと非難した上で、「南半分のすべての領土を平定しようという軍の行動に歩調を合わせる」という方針を確認しました。
そのうえで、史上初の2000年の南北首脳会談を受けて発足させた団体や、韓国との事業を担ってきた団体などを挙げ「平和統一に向けて設置された関連団体をすべて再編する」としています」
(NHK1月13日)
北朝鮮 韓国との事業を担う団体 再編へ | NHK | 北朝鮮情勢

ナニをいまさら、です。
ムン時代に形だけ作った韓国との交流団体や経済団体を解散させるというのですが、そんなものがまともに機能していたことがあるんでしょうか。
すでに2020年6月には、正恩の妹である与正(ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長によってケソン(開城)の南北共同連絡事務所ビルを爆破するという派手なことをやっています。
下の写真は、ケソンの連絡事務所をコッパミジンにした時のものです。
爆破の後、与正は今後の対韓工作を軍部に委ねると表明しましたから、要は平和的統一などとっくに念頭にないということです。

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北朝鮮の「爆破」で韓国がいよいよ正念場を迎えるワケ 国際社会で立場を表明できない | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

「新たな立場」とは統一を断念し、朝鮮半島で戦争が勃発した際には南を占領し、北の領土に編入することを、憲法に反映させるべきだとしたといいますが、なーんだこれって従来からそうじゃないですか。
北は南進を一貫して「奪還」といっていますから、元々自分らの土地を取り返すと言っているのです。

北が南を併合することを諦めたことは一回もないのですから、むしろ問題はこの時期になぜこういう挑発的なモノの言い方をし始めたのかです。むしろこのタイミングの問題でナニを言ったかという内容ではありません。

かつて極端な親北だったムン・ジェイン政権時には、南北統一を盛んにアピールさせていましたが、これはあくまでも対等な統一ではなく、北が南を併合して「高麗民主連邦共和国」にするというのが大前提でした。

「「高麗民主連邦共和国」創設案は、「自主・平和・民族大団結による統一」のスローガンの下、一民族・一国家・二制度・二政府の下で連邦制による統一を主張したものであった。これは、韓国のほうが北朝鮮よりも経済的に優位に立ち、北朝鮮が韓国を武力で併合する可能性が薄らいだために提唱されたものと言われている。
だが、これは政治面(連邦議会)で北朝鮮が明らかに優位な地位につくことになっており、また「先統一、後同一感回復」を唱えるものの、国家保安法撤廃、韓国内での共産主義政党の結成の容認、在韓米軍撤収などを求めていたため、韓国側には到底受け入れられるものではなかった。
韓国の保守勢力は、「民族解放」路線が削除されない限り、従来の赤化統一政策に変わりはないと認識した」
高麗民主連邦共和国 - 高麗民主連邦共和国の概要 - わかりやすく解説 Weblio辞書

 なにか中台関係に似ていますが、「一つの朝鮮」では正恩とムンは一致しているのです。
いわば馬英九の位置にムンがいると思って下さい。
そして体制の違いは一国二制度でやろうと言っているわけですが、その内容は在韓米軍の撤退、共産主義団体の許容などのように韓国側が丸裸になることなのです。
こんな高麗連邦なんぞ作ったら、数年で韓国は北に溶解してしまうでしょう。

当時北は「和解」の印として南北境界線の監視ポストを破壊したことをアピールさせていましたが、ユン政権となって検証するとまったく破壊されていないこともバレています。

「韓国と北朝鮮が2018年の軍事合意を受け非武装地帯(DMZ)にある監視所(GP)をそれぞれ撤去し相互に検証したものの、韓国側の検証が不十分だったとの疑惑が取り沙汰されていることについて、韓国国防部のチョン・ハギュ報道官は15日の記者会見で「事実関係を確認中」と述べた。
 同疑惑は申源湜(シン・ウォンシク)国防部長官が10日に行われた聯合ニュースとのインタビューで初めて提起した。申氏は北朝鮮が昨年11月に南北軍事合意の破棄を宣言した後、破壊した監視所の復元を進めているとし、「(撤去した)当時、北は地上に見える監視所だけを破壊し、残りの地下施設には手をつけなかったものとみられる」と指摘。修理すればすぐに使える程度の破壊だったのではないかなどと述べた」
(連合月15日)
北朝鮮の監視所撤去検証に不備か 韓国国防部「事実関係確認中」 | 聯合ニュース (yna.co.kr)

2018年9月の蜜月時代に作った合意に「9・19軍事合意」というものがあります。
今になって北はこれを廃棄すると言い出しています。
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「北朝鮮は24日、2018年に韓国との緊張緩和のために締結した軍事合意を全面的に破棄すると発表した。
北朝鮮は声明で、「今後、わが軍は9月19日南北軍事合意には一切拘束されない」と説明。
また、「地海空を含むすべての領域で軍事衝突を防ぐためにとられていた」全措置を撤回し、境界線周辺に「より強力な軍隊と新型の軍備」を配備すると述べた」
(BBC2023年11月24日)
北朝鮮、南北軍事合意を全面破棄 軍事偵察衛星の打ち上げめぐり - BBCニュース

ところで、9.19軍事合意の中身はこのようなものです。

●9.19軍事合意
・DMZ(非武装地帯)付近の軍事施設を縮小し、偵察活動を中止する。

・JSA(板門店共同警備区域)の自由往来を推進する。
・NLL(北方限界線=海上の軍事境界線)での敵対行為を全面的に中止する。

空においては従来あった飛行禁止区域を撤廃します。

「これは「固定翼、回転翼、無人機、気球」などの種類と東西地域によって、南北それぞれ10キロから40キロまで設定された飛行禁止区域を今後、韓国が守らないという宣言に他ならない」
(ハンギョレ2023年11月22日)
抜かれた「安全ピン」…北朝鮮の衛星発射を受け韓国政府が『9.19南北軍事合意書』一部効力停止を決定(徐台教) - エキスパート - Yahoo!ニュース

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ハンギョレ

海においてはNLL(海上境界線)は南北で大きくくいちがっていました。
下図で、青線が韓国が主張するNLL、赤線が北朝鮮の主張する海上軍事境界線です。

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ファイル:韓国海上国境の地図.svg - ウィキメディア・コモンズ (wikimedia.org)

ムンはこの双方の海上境界線が韓国の主張で統一されたと成果を誇りましたが、北はそんなことを合意した覚えはないと言っています。

陸においては、DMZ(非武地帯)の監視ポストを廃棄することになっていたのですが、前述どおり北は履行していなかったようです。
要するに、ムンが手柄としていた陸海空の緊張緩和措置についての合意はまるで守られていなかったことになります。
左派紙のハンギョレは「抜かれた安全ピン」などと書いていますが、今まで安全ピンがあったことなど一度ないのです。

あったのはムードだけ。

この北の動きについて、もっとも厳しい見方を取るのが38ノースです。

「朝鮮半島の情勢は、1950年6月初旬以来、かつてないほど危険である。それは過度に劇的に聞こえるかもしれませんが、1950年の祖父のように、金正恩は戦争に行くという戦略的決定を下したと私たちは信じています。金正恩がいつ、どのように引き金を引くつもりなのかは分からないが、その危険は、ワシントン、ソウル、東京で、平壌の「挑発」に関する日常的な警告をはるかに超えている。言い換えれば、昨年初め以降、北朝鮮のメディアに登場する戦争準備のテーマは、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮)の典型的な大げさな言葉とは思えない」
  AND 
金正恩は戦争の準備をしているか?- 38 北朝鮮:北朝鮮の情報に基づいた分析 (38north.org)

この38ノースの分析が不気味なのは、以下の部分です。

「北朝鮮は大量の核兵器を保有しており、我々の推定では、50発から60発の核弾頭がミサイルに搭載され、韓国全土、事実上日本全土(沖縄を含む)、グアムに届く可能性がある。もし、我々が疑っているように、金正恩が、何十年にもわたる試みの末、米国と関わる方法はないと自分を納得させているのだとすれば、彼の最近の言動は、その兵器を使った軍事的解決の可能性を示唆している」
(38ノース前掲)

ここでいう「その兵器」とは核兵器のことです。
これについての小谷哲男氏のコメント。

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XユーザーのTetsuo Kotani/小谷哲男さん

小谷氏の分析を読んで、ウワー北は先制核攻撃すると言っているぞという人もいますが、38ノースと小谷氏は、北の言うことをそのまま受け取りすぎです。
ハッキリ言ってナイーブすぎ。
北はそう言って、日米韓にマウントするのが常套手段じゃないですか。
私は先々代の日成の頃から北とつきあってきましたが、彼らが口にしている過激な言辞と思惑がまるっきり離れていることなど年中行事で、彼らはそれを外交戦略にしていたほどです。
朝鮮スタイルの口汚い表現に共産国家の過激なプロパガンダが被っていますから、正日などは年がら年中過激な言葉を吐き散らしてきました。
北が自分の言うとおり実行していたら、東京はとっくに火の海でした(笑)。
正恩もそのキム家のお家芸を踏襲しているだけのことです。

2017年には「日本列島を核で沈める」とまで言い放っています。

「北朝鮮は、国連安保理の対北朝鮮制裁決議の採択を、アメリカと共に主導した日本を批判して「日本列島の4つの島を、核爆弾で海中に沈めるべきだ」などと威嚇した。
同国の朝鮮アジア太平洋平和委員会の声明として9月13日、国営の朝鮮中央通信が伝えた。
声明は、アメリカが主導した国連の対北制裁決議について、「卑劣な国家テロ犯罪」と批判。北朝鮮軍と国民から「アメリカ帝国主義の侵略者を絶滅させる時が来た。アメリカの本土を灰と闇に変えよう」という声が出ていると綴った」

(ハフポスト2017年9月14日)
「日本列島を核で海に沈めるべき」北朝鮮が声明 | ハフポスト WORLD (huffingtonpost.jp)

ヤクザが月夜の夜だけじゃないでぇ、とすごんでいるようなものです。

そして黒井文太郎氏のコメント。

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私は、38ノースの分析は行き過ぎていると思います。
いくらなんでも北が先制核攻撃をいきなりしかけてくるという可能性は限りなくありえません。
それは地上から北朝鮮という国家が文字どおり消滅することを意味するからで、核兵器開発は金王朝の生き残りのためにやってきたのであって自殺のために作ってきたのではありません。
先制核攻撃などしてしまったら、なんのために核兵器開発をしてきたのわからなくなるからです。
北は最大限に警戒すべき対象ですが、彼らの言うことごとに踊らされることはないのです。
それこそが彼らの目的なのですから。

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コメント

 38ノース見解の元ネタで、小谷さんがいう所の専門家というのはジークフリート・ヘッカー教授とカーリン研究員です。
この名前、以前トランプ時代に本ブログでも議論になったので憶えてらっしゃる方もいるかと思います。
トランプ政権が「完全で検証可能、不可逆的な非核化」を打ち出したとき、「それには15年かかる」として北朝鮮の「非核化の罠」に結果的に組みした研究者です。彼は意図してかどうかは別にして、北朝鮮の招きで4度も訪朝し、核開発の進捗を誇大に宣伝して広報した役割を果たしています。

それはそれとして、北朝鮮が準戦時体制を取りつつあるのは事実で、しかし、それはこれまで幾度もあった事。
終末期にあるカルト宗教の教祖のように自らの破滅を省みない認知的不協和の状態に正恩があるワケではなく、いきなり核使用するとは考えられません。ロシアへの武器売却で資金難は一服しているはずだからです。また、そのために自国内の弾薬類も枯渇に等しく、韓国と本格的な戦闘を開始する事は不可能と指摘する専門家もあります。

プーチン訪朝の地ならしというか、西側の視線をウクライナからそらし、支援を停滞させる一助を狙っているように私には思えます。
また、中国に平仄を合わせ、台湾問題に関連した目論見であるとの見方もあるようです。

最近の北朝鮮の不穏な動きは今年の韓国総選挙にむけての情報戦なのかな?という印象です。
ユン政権になって以降の日米融和路線でこれまでおとなしくしてた(という事になっている)北朝鮮を刺激している、このままではまた戦争状態になるぞ〜
という感じで韓国の左派の方々はこれを保守派への攻撃材料にでも使ってくださいと。

台湾総統選挙でも情報戦が相当な規模で行われてたようですし春に向けて韓国でも加熱化してくるのでしょうね。

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