トランプ圧勝
共和党候補を決める党員集会のトップであるアイオワでトランプが圧勝しました。
米国の候補者選びは世界に稀なやり方で、同じ日にやるのではなく、まるでカードを一枚一枚めくっていくように各州を開けていきます。
その初回がアイオワだったわけです。
次のニュージャージーでどうなるかわからないので決定的なことは言えませんが、トランプは選挙戦にもっとも必要な「勢い」をつけています。
「[デモイン(米アイオワ州) 15日 ロイター] - 米共和党の大統領候補指名争い初戦である15日のアイオワ州党員集会はトランプ前大統領の勝利が確実になった。トランプ氏は過去最大の差を付けて勝利する見通しとなっており、計4つの刑事裁判を抱えながらも指名獲得への独走態勢を鮮明にした。トランプ氏に代わる候補として注目されていた2位争いはデサンティス・フロリダ州知事が制した。3位はヘイリー元国連大使だった。
トランプ氏は自身が創設した交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に「アイオワよ、ありがとう。みんな愛している!」と投稿した。
エジソン・リサーチによると予想票数の95%を集計した時点で、得票率はトランプ氏が51%、デサンティス氏が21%、ヘイリー氏が19%。アイオワ州共和党党員集会でこれまで最大の得票差で勝利したのは1988年のボブ・ドール氏の12.8%ポイント」
(ロイター1月16日)
米共和アイオワ州党員集会、トランプ氏勝利 2位デサンティス氏 | ロイター (reuters.com)
大統領選挙というのはトライアスロンのように出来ていて、本選に出るには各州で党の候補者にならねばなりません。
今回はその最初の扉が開いたということです。
実にあしかけ2年以上もかかる長距離レースなので、この間にどんどんと候補者がボロボロ落ちていくことになります。
今回も4位の実業家ビベック・ラマスワミが早くもギブアップして選外になりました。
残るは、若さとハンサムを売り物にするディサンティスか、ヘイリー姐御の二人に絞られてきました。
ロイター
アイオワが白人が多い保守的な州だから、ということを言う人がいますが、次のニュージャージーの結果がこれを覆すとは思えません。
つまり、よくも悪しくも、何もなければ共和党候補はトランプでほぼ決定したといってよいでしょう。
残る候補はなんとか2位につけて、副大統領の座を目指すことになります。
「何もなければ」という意味は、連邦最高裁がトランプに立候補資格を剥奪する可能性が残っていることです。
「[ワシントン 5日 ロイター] - 米連邦最高裁判所は5日、11月の大統領選に向けた西部コロラド州の共和党予備選へのトランプ前大統領の出馬を認めないとした同州最高裁判断の是非について審理することを決定した。
2月8日に口頭弁論を開く。コロラド州予備選が3月5日に予定されており、判断を急ぐ意向だ。
コロラド州最高裁は昨年12月、支持者らの議事堂襲撃をあおったトランプ氏は、反乱などに関わった者が公職に就くこと禁じる憲法の規定に抵触したと判断。同州大統領選で出馬資格を認めないとした」
(ロイター1月6日)
米連邦最高裁、トランプ氏のコロラド州予備選出馬資格判断へ | ロイター (reuters.com)
州最高裁によってはトランプが支持者に連邦議事堂を襲わせ、副大統領だったペンスに投票結果の変更を強要したとして出馬資格を剥奪する判決を出しています。
トランプが憲法修正第14条3項の「米国に対する暴動や反乱に関与した者は、国や州の官職に就くことができない」との条項に該当するのかどうかについて連邦最高裁の判断待ちです。
他の州最高裁も連邦最高裁の判断待ちとなっています。
「[ワシントン 17日 ロイター] - 米メーン州の裁判所は17日、トランプ前大統領が大統領選の同州予備選に出馬する資格があるかどうかについて、コロラド州における同じ問題で連邦最高裁の判断が出るまで結論を持ち越すよう、州務長官に命令した。(略)
こうした中で裁判所のマイケル・マーフィー判事はベローズ氏に対して、最高裁の判断が全てを変えてしまうので、それから30日以内に改めて決めるべきだと命じた」
(ロイター1月15日)
メーン州のトランプ氏出馬資格問題、連邦最高裁の判断後に結論持ち越しへ | ロイター (reuters.com)
つまり最高裁の判断次第で、最悪の場合トランプは大統領候補にすらなれないことになります。
逆に言えば、仮に連邦最高裁が立候補資格を認めた場合、そうとうの確率でトランプが大統領選に勝利する可能性が浮上します。
一方、民主党は同じくアイオワで民主党大会を開き、候補投票を行ったが、あくまでも大投票候補選びの大会ではなく、党の地方支部の定期集会でしかありませんでした。
候補投票の結果はスーパーチューズデーに発表するとしていますが、今のところバイデン以外に有力候補がいない状況ですので、超新星が生まれない限りバイデンの勝利に決まっています。
バイデンは身内にスキャンダルを抱えすぎです。
「保守派ポッドキャスターのダン・ボンギーノ氏によると、ミシェル夫人の周辺が騒がしいのは偶然ではない。同氏は、これは左派の懸念を反映していると言う。バイデン氏が副大統領だった間に、息子のハンター氏とその仲間が外国のオリガルヒ(新興財閥)から約2000万㌦を受け取っていた証拠を、下院共和党の調査官らはつかんでいる。そのため、今後、バイデン氏に不利な情報がさらに明らかになるのは間違いない」
民主、オバマ夫人に高まる期待 バイデン氏に不安-米大統領選 | ワシントン・タイムズ・ジャパン (washingtontimes.jp)
こういう決まった結果しかないような選挙は盛り上がるはずがありません。
残るは、パイデンが老齢問題や健康問題で出馬を辞退することだけが頼みです。
というわけで、民主党はやる前から沈滞しきっています。
超新星のミシェルオバマが出るとなれれば、米国メディアは諸手を上げて大応援団を結成することでしょう。
「オバマ元大統領のミシェル夫人の名前が、2024年大統領選のバイデン大統領に代わる民主党候補として、一部の民主党議員のウィッシュリストに載り続けている。保守派によれば、このような異常事態の一因は、バイデン大統領の息子ハンター氏の捜査によって、選挙前にバイデン家の資金疑惑を巡ってさらに不利な情報が明らかになるのではないかとリベラル派やメディアが懸念していることだという」
ワシントン・タイムズ・ジャパン (washingtontimes.jp)
ちなみに、ミシェルは出るとは言っていません。
「(ミシェル)オバマ氏は当時、「興味があれば、そう言う。参戦しようとは思っていない」と語っていた。ホワイトハウスは8年間で十分であり、子供たちにこれ以上の犠牲を強いることはしたくないと述べた。
「大変な仕事だ。こちらが走れば、子供の人生は止まってしまう。私たちが不平を言うことはないから、その大変さは分からないと思う。だが、それは事実であり、現実であり、重要なことだ」
(ワシントンタイムズ前掲)
現在のところ、大統領本選でバイデンVSトランプになった場合、民主党びいきのCNNですらトランプが勝利するという予測を出しています。
経済界はすでにトランプ勝利として動いています。
「ネットニュース企業のメッセンジャーと調査会社ハリスXは12月5日、2024年大統領選挙などに関する世論調査結果を発表した。それによると、トランプ氏とバイデン氏を候補者として、2024年大統領選挙が今日実施された場合、誰に投票するかという問いで、トランプ氏との回答が47%とバイデン氏の40%を上回った。
また、経済誌「エコノミスト」と調査会社ユーガブが11月に実施した世論調査(注2)では、トランプ氏、バイデン氏の大統領としての仕事ぶりをどう評価するかとの問いで、「素晴らしい」と「良い」と回答した割合の合計は、トランプ氏47%、バイデン氏34%と、トランプ氏が上回った」
(ジェトロ短信2023年12月06日)
ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース - ジェトロ (jetro.go.jp)
米国には赤い州(共和党)青い州(民主党)スイング州(毎回変わる)の三種類の州があり、スイング州の動静が選挙の勝敗を決める構造です。
この8州あるスイング州は、すべてトランプ優勢であり、これを覆すのは至難の業です。
そして、トランプが連邦最高裁に資格停止されないかぎり、バイデンに勝機はありません。
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なんかもう、バイデンの後釜の若手が育っていないという民主党もそうですけど、共和党もあのアクが強すぎたトランプに勝てる候補がいない。アメリカ政治は絶望的な状態です。
バイデン爺様は「調整型」タイプでよく頑張ったとは思いますよ。コロナ禍にウクライナ戦争と物価高騰という超マイナス要因だらけの中で。
トランプ爺様も最初の2年間はダイナミックに次々と公約実現してました。でもあの爺ちゃんがまた出て来られても···世界情勢があまりにも変わってますんで。
で、爺様対決になったら···バイデンはボロ負けする。この二択はやだなあ。
いわゆる「社会の分断」とか言われてるヤツが原因なんでしょうけど、アメリカ国民も振れ幅がずいぶんと大きくなったもんですね。こんな時に選挙で活きてくるのが正に「勢い」です。熱量ですね。
デサンティスは元々「ミニ·トランプ」なだけなので論外ですが、ヘイリー姉さんではさすがに大統領候補としては弱いか。トランプが最高裁で出馬OKとなった時に、もしひっくり返す要素があれば「女性票」でしょうね。ここで波を起こせれば一発逆転もあり得ます。
かなりいい歳してAVでバコバコ暴れてた爺さんと、あのヒラリーでさえ叶わなかった初の女性大統領という肩書きのある対決。だが、どうにも小者だなあ。
投稿: 山形 | 2024年1月19日 (金) 07時47分
いや、まだわからないと思いますよ。
今のところ、数字的には代議員数4750人のうちの20人をトランプが確保しただけであって、全体の流れまではつかみ切っていないと考えます。
次のニューハンプシャーではヘイリー、トランプの互角の勝負になりそうで、もしヘイリーがトップを取るようなら、流れが変わる可能性もあるのではないかと。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年1月19日 (金) 17時23分
私も思っていたよりヘイリーが伸ばしてきたなという印象です。
以前見た世論調査ではたしか支持率が2桁にも届いていなかったはずですが、それを倍近く伸ばしてきてデサンティスが圧倒的に強いとされていたアイオワで肉薄していますからね。
米国に起きている民主党左派ポリコレへのカウンターがトランプ支持の最大の要因だと思うのですが、支持者に「報復を約束する」という振り切りすぎた候補者にどれだけの有権者がついていけるかと思うと「やる気があるなら穏健派のヘイリーでいいんじゃね?」という風が起きてもおかしくはありません。
というか起きてほしいものです…
投稿: しゅりんちゅ | 2024年1月21日 (日) 16時20分