イスラエル2週間の停戦を提案か
重大な兆候が現れました。
イスラエル戦時内閣に亀裂が走っています。
ネタニヤフ内閣で和平派が公然と台頭したようです。
それもエイゼンコット元軍参謀総長という軍トップにいた人物で、戦時内閣の一員です。
国内では産経が1面で伝えてます。
「カイロ=佐藤貴生】イスラム原理主義組織ハマスと戦うイスラエルの「戦時内閣」に亀裂が生じている。メンバーの1人がパレスチナ自治区ガザで拘束されている人質の救出を最優先にすべきだと述べ、戦時内閣を率いるネタニヤフ首相と異なる方針を示したからだ。ネタニヤフ氏の支持は低迷しており、中央政界で近く大きな動きが起きるとの観測もある。
異論を唱えたのは、戦時内閣を構成する5人のうちの1人であるエイゼンコット元軍参謀総長。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると18日放映の地元テレビのインタビューで、ハマス壊滅という目的は「達成されていない」とし、「敵の殺害より先に民間人(の人質)を救出することが(戦時内閣の)任務だ」と訴え、ハマスと交渉を行うべきだと主張した」
(産経1月23日)
イスラエル戦時内閣に亀裂 首相の求心力低下が加速 「近く政局で変動」の見方も - 産経ニュース (sankei.com)
現地のイスラエルタイムスは、「イスラエルはハマスに新しい提案をして、反応を待っている」と書いています。
「イスラエルは、カタールとエジプトの調停者を通じて、ガザに残る136人の人質の段階的解放と引き換えに、ハマスに対する軍事攻撃を2カ月間停止することに同意する提案を提出したと報じられている。
この提案は、イスラエルが戦争を完全に終わらせるというハマスの要求に耳を傾けるものではないが、イスラエルが以前の提案で行ったよりもさらに進んでいるように見えると、2人のイスラエル当局者を引用したニュースサイトAxiosは報じている。
この申し出は、ホワイトハウスの中東問題顧問ブレット・マクガークが、人質取引を進めることを狙ったエジプトとカタールのカウンターパートとの会談のためにこの地域にいたときに公表されたと、アメリカ当局者はタイムズ・オブ・イスラエルに語った。
イスラエルは現在、新しい提案に対するハマスの反応を待っており、今後数日のうちに進展が見込まれると慎重ながらも楽観的であると、イスラエル当局者はアクシオスに語った」
(イスラエルタイムス1月23日)
イスラエル、人質の段階的解放を求めてガザで戦うガザ地区での2カ月の猶予を申し出る |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)
米政治紙AXIOSによれば、ホワイトハウス中東問題顧問のブレット・マクガークがカタールに向かっており、その目的は人質解放とそれを確保するための停戦交渉だとしています。
ブレット・マクガーク・ホワイトハウス中東顧問
米の中東担当顧問、イスラエル・カタールなど訪問へ | ロイター (reuters.com)
「130人以上の人質がいまだにガザで拘束されている。イスラエル当局は、数十人の人質が10月7日か、その後の数週間に死亡したと述べている。
・バイデン大統領の顧問であるブレット・マクガークは日曜日にエジプトを訪問し、その後、ハマスが拘束している人質の解放を確保するための交渉を進展させることを目的とした協議のためにカタールに向かっている。
・カタールとエジプトの調停者は、合意に向けて前進するために、当事者間の溝を埋めようと何週間も試みてきた。
・米国当局者はアクシオスに対し、そのような合意に達することが、ガザでの停戦につながる唯一の道かもしれないと語った」
イスラエル、ガザ地区での2カ月間の停戦を提案 (axios.com)
イスラエル軍は北部・中部での戦闘はほぼ終結させましたが、南部のハン・ユニスではてこずっています。
思わぬ激戦となっており、まだハマス指導者の摘発も、人質の解放はおろか、その安否情報すら得ていないようです。
ネタニヤフは、戦争開始から一貫してハマス壊滅と人質救出のふたつを目的に掲げて、「戦闘で圧力をかけることが人質の解放につながる」と主張してきました。
戦闘に勝たないかぎり人質は帰ってこないのだという考えです。
そして北部・中部での戦闘を、南部のハン・ユニスにまで拡大しましたが、戦闘は長引き人質解放の目算ははずれました。
そもそも北部住民に南部への避難を勧めながら、攻撃を南部に拡大するのはいかがなものでしょうか。
しかし、この戦争でハマスの根絶を意図しているネタニヤフは、さらに軍を南下させてしまいました。
時事 戦争研究所による
「130人前後の人質は拘束されたままで、うち20人以上が死亡したとみられる。2万人以上の住民が死亡したガザへの攻撃でもハマスは壊滅できていない(略)
イスラエルのメディアが11、12日に公表した世論調査では、ネタニヤフ政権の連立与党が、次の選挙で現在の64から44~48に議席を減らして国会(定数120)で半数を割り、中道右派の「国家団結党」など野党が躍進するとの結果が出た」
(産経前掲)
戦死者も急増しています。
冒頭に紹介したエイセンコット元参謀総長も息子と甥を戦死させています。
下の写真は息子のガル・エンセンコット軍曹で、彼は北部のトンネル掃討で戦死しました。
エイセンコット元IDF参謀総長息子も戦死:地上戦以降戦死者89人 2023.12.8 – オリーブ山通信 (mtolive.net)
このまま戦闘が膠着すれば、さらに人質は死ぬだろうし、イスラエルは国際的孤立を深めるのは必至です。
イスラエル国民への世論調査ではネタニヤフの連立与党の支持が大きく下がり、中道右派が伸びました。
このまま選挙を行えばネタニヤフはまちがいなく失脚します。
一方、米国はは22日、イスラエルが仲介役のカタールなどを通じ、ハマスに対して、人質全員の解放などと引き換えに、戦闘を約2カ月休止する提案を行ったと報じました。
その交渉内容は
「交渉舞台裏:2人のイスラエル当局者によると、イスラエルの戦争内閣は10日前に、ハマスが拒否した過去の取引とは異なっており、以前のイスラエルの提案よりも前向きな、人質取引の新たな提案のパラメータを承認したという。
・イスラエル当局は、ハマスからの返答を待っていると述べたが、今後数日間で進展が見込めるかどうかについては、慎重ながらも楽観的であると強調した。
・提案によると、この取引には、生存している残りの人質全員の解放と、死亡した人質の遺体の返還が段階的に含まれるという。第1段階では、女性、60歳以上の男性、重篤な状態にある人質が解放される予定だという。
・次の段階では、女性兵士、兵士ではない60歳未満の男性、イスラエル人男性兵士、人質の遺体の解放が含まれる」
axios.com
ネタニヤフには国内外から、一時的にでも停戦交渉に応じて、人質を取り戻すことの方が重要ではないなのかという声がぶつけられています。
信頼を取り戻すためにも、総選挙するべきではないかとの声も出始めました。
ネタニヤフは、イスラエルは戦争を終わらせることはないと強調し続けていますが、それが徐々に非現実的になりつつあるのは事実です。
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イスラエル政府は24日、ここ2~3日の停戦を巡る報道を否定していますね。
https://news.yahoo.co.jp/articles/fa89358b7b5a0a991dfde810df98f2888ca509a8
これで分かるのは、米国との意見の相違も著しいという事。
ガザに何としても居座りたい続けたいハマスの思惑を受け入れる事は出来ない、というのがイスラエル世論の総意であって,同時に「人質の解放」が第一という要望も確固たるもの。
さらに、イスラエル政府はバイデン政権の対イラク政策に疑念を持っていて、ハマスを生き延びさせてでもイランとの「合意の道」を閉ざすのを避けようとしています。
ハマスやイラクが信用に値しないのは当然としても、米国としても中東で足を取られている場合ではない、という判断もあるのでしょう。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年1月25日 (木) 12時34分
いきなりですが、チャンネル桜のフロント ジャパンをご覧ください。
こちらの大方の方々とは異なるスタンスからのウクライナ情勢についての見方が語られますが、我慢してでも、ぜひご覧になっていただきたいと思います。水沢社長と及川さんの意見が一致しております。 これは、考えられないことです。チャンネル桜と幸福実現党はこれまで仲がよくなかったのですが、ここで一致したのです。
ご参考になる動画です。
投稿: ueyonabaru | 2024年1月25日 (木) 18時34分
ueyonabaru さん。記事とは無関係な書き込みです。ご遠慮ください。
水沢氏と及川氏の意見が一致しようと知ったことではありません。
投稿: 管理人 | 2024年1月26日 (金) 03時54分