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2024年2月26日 (月)

日本のGDPが世界第4位に、だから?

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先日来、メディアは日本のGDPが世界第4位になったと嬉しげに報じています。
私からすれば、だからなんなのさ、経済はオリンピックしゃないんだぜ、と思いますが、こういう調子です。

「内閣府によりますと、日本の去年1年間の名目GDPは、平均為替レートでドルに換算すると4兆2106億ドルでした。
一方、ドイツの去年1年間のGDPは、4兆4561億ドルと日本を上回りました。
日本の経済規模は、1968年にGNP=国民総生産で当時の西ドイツを上回って、アメリカに次いで世界2位となりました。
その後、2010年にGDPで中国に抜かれ、世界3位が続いていましたが、去年、人口がほぼ3分の2のドイツに逆転され、4位となりました。
日本では1990年代にバブル経済が崩壊して以降、長年にわたって低成長やデフレが続き、個人消費や企業の投資が抑えられてきました」
(NHK2月14日)
日本の去年1年間の名目GDP ドイツに抜かれ世界4位に後退 | NHK | GDP 

20240226-001214

ブルームバーク

日本が世界の経済大国の地位から転げ落ちた、ニッポン終了バンザイ、とばかりに朝日は身悶えせんばかりのご様子です。
朝日は、メディアの仕事は国民を落ち込ませ、未来なんぞない、子供も作れない絶望大国だ、と国民に思わせることこそが仕事だとわかっておられます。
さっそく出した記事がこれ。行間から歓喜がにじみ出ています。

「半世紀以上掲げてきた「経済大国ニッポン」の金看板が危うくなっている。昨年の国内総生産(GDP)ランキングで日本がドイツに抜かれ、4位に転落した。
 2010年に中国に抜かれた際と同様のショックと受け止める向きもあるようだが、ノンフィクション作家の高野秀行さんは「日本はとっくに世界の蚊帳の外に置かれている」と語る。世界を飛び回りながら隅々まで見てきた目に、日本の針路はどう映るのか」
(朝日2024年2月15日)
「ニッポンは田舎の終着駅」 GDP4位転落、辺境作家が占う未来:朝日新聞デジタル (asahi.com)

タイトルからして「ニッポンは田舎の終着駅」だもんね。
いちおう経済のことがテーマなのに、めったに日本にいない世界放浪を生業にしている旅行作家が登場して、ニッポンは没落しているぞよ、いまや「辺境の地」と成り果てた、世界は誰もニッポンなんか相手にしてないぞ、廃線駅の裏で草むしりでもしていろ、とのことです。
この人どこを回ってきたんだろう。世界放浪してこういうことをいえる人って、そうとうにレア。

はいはいそれにしても、あまりの朝日節に吹き出してしまいました。
朝日さんはこの20年間、なにかというとこういう時には辺見庸のような作家を登場させて「足るを知れ、成長幻想から醒めよ」とのたもうていましたもんね。
その努力の甲斐あって、めでたくニッポン経済は世界経済の辺境、行き止まりの国となったのでしたとさ。ちゃんちゃん。
ペシミズムに染まってガス管くわえるのは勝手ですが、どうぞ自分の新聞業界だけのことにしておいて下さいな。
あそこは確かに「辺境の終着駅」そのものですからね。

メディアは日本が没落してドイツが躍進したというニュアンスですが、そもそもここからちゃいまんね。
ドイツは名目GDPが、ひどいインフレで水ぶくれしただけのこと。
IMFも「ドイツが3位になったのはインフレのためだよ」と言っています。

ニッポンひとり負け論の熊野英生氏はこう述べています。

「GDPの日独逆転の一因として円安の影響が大きいからだ。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、為替要因に言及した上で、13年の大規模金融緩和以降の円安が「日本のドル表示の経済規模を小さくしている」と指摘。ドイツに抜かれたというよりも「日本の一人負け。実質ベースであれほど苦しんでいるドイツを下回ってしまっている」と語った」
(ブルームバーク2024年2月13日)
日本のGDP、世界4位転落が確実な情勢-存在感低下に懸念の声 - Bloomberg

あれ熊野さん、じゃあ円安止めます?
円安こそ日本の製造業に国際競争力をブーストしたんじゃなかったんですかね。
日本が円安インフレにならなかったのは、輸出力が増して企業業績が好調だからです。
この資本が成長力の弱い日本から逃げていき円安になるという悪い円安論は日経新聞が得意ですが、歴史的経緯を見落としています。
日本の低成長が定着した2010年以降の円高時代には、巨額の資本が成長率が高い海外へと流出しましたが、円高は続きました。
日本の成長力と為替レートはデュアルではないのです。

武者陵司氏はこのように見ています。

「これは日経が言い続けてきた日本の産業復興を切望する米国が、円安を誘導しているのだ。韓国が2008年から2013年の著しいウォン安の過程で飛躍的に競争力を強め日本のハイテク企業をなぎ倒したが、円安の定着は日本の劇的再台頭を準備するだろう。日本は巨大な製造業立国として、サービス(観光)立国として再登場するだろう。それにより長期的に日本の強い円は復活する。日本は今の円安の僥倖を享受するべきであり、間違っても円高誘導等、無駄な抵抗をするべきではない」
円安を享受せよ | 武者リサーチ (musha.co.jp)

米中対立が深刻化し、トランプが火を点け、バイデンも倣ったのは米中デカップリング(分離)でした。
中国台頭前の時期には、米国は日本をライバル視し、日本バッシングに狂奔した時期があります。
こうして円高デフレは根が生えたように日本経済に取り付き、日本を衰弱させました。
それはいまや逆転しました。中国と対抗するためには、中国経済と距離を開ける必要があり、そのためには世界を見渡しても日本しかその役割を担える国がないのです。
ですから米国政府は、対中デカップリングのために強い日本を必要とし、そのための円安を容認するようになったのです。

では、人口が3分の2なのに日本を抜いた、と囃したてられているドイツはどうでしょう。

「欧州連合(EU)の経済の中心であるドイツの消費者物価上昇率も歴史的な高水準であり、2022 年 10 月時点で前年比 12.8%になった。高インフレの最大の理由は、エネルギー価格の急騰にある。同月のエネルギー価格の上昇率は生産者物価ベースで同 123.4%と、2 ヵ月続けて伸びが鈍化したものの、9 ヵ月連続で 100%以上となった。
インフレの元凶であるエネルギー価格の急騰が生じた最大の理由は、欧米を中心とする主要国による対ロシア制裁にある」
(三菱 UFJリサーチ & コンサルティング 調査部土田陽介)
tsuchida_2023_02.pdf (murc.jp)

図表でみるとドイツのインフレの凄まじさがわかります。
まずは消費者物価。ドーン。

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三菱 UFJリサーチ & コンサルティング

そしてその原因となったエネルギー価格の爆発上げ。ドーン。

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三菱 UFJリサーチ & コンサルティング

ドイツ経済のビジネスモデルは4つありました。
ひとつは、エネルギー安です。
天然ガス供給量の実に62.4%(2022年現在)を占めるロシア産が安価かつ安定して供給される構造が、ドイツ経済の大前提でした。
石炭産業は伝統的に強かったのですが、メルケルの強引な化石燃料排除政策のために、天然ガスシフトに変えられてしまいました。

原発も同じで、全原発を原子力についても、稼働中の原発 3 基について、2023 年 4 月 15 日までの運転延長が決定ましたが、基本的には脱原発路線が引き継がれました。

メルケルは脱炭素・脱化石の切り札として再エネをすえましたが、ともかく天候に左右されて不安定で、電気料金を押し上げました。

「脱炭素化の旗振り役でもあるドイツは、2020 年時点で一次エネルギー(国内産出分)の 47.6%を再エネに頼っていた。しかし再エネは気象条件や地理条件の制約を受けるため、安定性を欠いている。特に近年は、異常気象の影響から再エネは風力を中心に不調が続き、それがドイツのエネルギー価格の上昇の一因となっている」
(土田前掲)

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ドイツの電力料金の構成と再生可能エネルギー付加金の推移‐ドレスデン情報ファイル (de-info.net)

もはや逃げ道は天然ガスしかありません。
したがって、ドイツのエネルギー構造はロシア産天然ガスだけに強依存する異常なバランスになってしまいました。
いや、他のヨーロッパもそうだろう、って。違います。
他のユーロ圏のロシア依存度は平均で34.4%にすぎませんから、ほぼ倍ロシアにベッタリと頼りきっていたのです。

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三菱 UFJリサーチ & コンサルティング

これが、ウクライナ侵略に対して当初ドイツが制裁に消極的だった原因です。
武器を送ってくれ、と要請しているウクライナにヘルメットを送りつけてウクライナを逆上させましたっけね。

ロシアが制裁に反発してノルドストリームのコックを締めてしまうと、一気にドイツのエネルギーは干上がってしまうことになりました。
あとは世界各地の産地に頭を下げて、高い天然ガスを売ってもらうというしかありませんでしたが、その時は遅し、他の国が押さえた後でした。
ウクライナ戦争が長引けば長引くほど、ノルドストリームの稼働はありえませんから、ドイツのインフレか改善する可能性はありません。
しかも強インフレ下の景気後退、つまりもっとも恐ろしいスタグフレーションの可能性もささやかれている始末です。
長年のデフレから復活し、再び本来の力を取り戻しつつある日本。

さてさて、日独どちらが「辺境の終着駅」なんでしょうか。

ところでドイツのビジネスモデルの2番目は、ユーロという魔法の箱を作ったことです。
ユーロが出来るまで、ドイツは慢性リウマチのように、マルク高に苦しんできました。
その原因は、皮肉にもドイツが貿易黒字大国だったからです。
輸出黒字が増えるほど通貨は信任されて買われてしまって通貨高になってしまう、という悲喜劇。
ドイツは人口が8千万人程度で内需の引きが弱いので、貿易の対GDP比率は40%という馬鹿げた輸出依存体質でしたから、イヤでも貿易黒字が積み上がっていきました。
ちなみに輸出産業国家と思われているうちの国は16.5%にすぎません。


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ですから、ドイツが独自通貨を維持していた頃にはマルク高は常態化しており、これがドイツの悩みでした。
一方、逆の現象はドイツの輸出の受皿国だったギリシャで起きました。
貿易収支・経常収支赤字が積み上がっていくために、通貨の価値が下がっていってき、ドラクマ安になるはずでした。
ところがならなかったというミラクル。
なぜなら、「ユーロ」という世紀の大発明があったからです。

ドイツが独自通貨ならば、マルク高が必ず起きたはずで、一方でギリシアが独自通貨だった場合、貿易収支・経常収支赤字が積み上がっていくために、通貨の価値が下がっていきます。
まぁ通貨安になることで、国際競争力が強化されるというメリットもあるのですが、ユーロは、あくまでも「みんなの通貨」(共通通貨)ですから、為替政策はギリシア一国の経済に関係なく、他国の貿易収支を加えてヨーロッパ中央銀行(ECB)がガラガラポンにする仕組みです。

これはマルクでいるよりも、ドイツにとって圧倒的に有利なシステムでした。
マルク高による、輸出ブレーキがないからです。
事実、マルクはユーロ加盟以前は常にマルク高に悩まされていましたが、ユーロになってからは、ユーロ安の恩恵を存分に浴びて、ユーロ圏、特に製造業が弱い南欧諸国への貿易で潤ってきたわけです。

その上に、関税というブレーキがユーロによってなくなったことです。
輸出依存国にとってユーロ域内はどこに行っても無関税 、ついでにヒトの動きも制限なしとなって安い労働力を南欧や東欧からいくらでも吸収できるようになりました。
つまり、ドイツのこの間の繁栄は、①安いエネルギー、②ユーロによる通貨安、③無関税、ヒトの動きの自由化による移民、によって成り立っていたのです。

そして4番目のドイツのビジネスモデルは、こうして得た経済力を中国にドッと輸出攻勢をかけたことです。
これが中国経済の失速と同時にお先真っ暗となっていますが、これについては次回にまわします。
いずれにしても、ドイツのビジネスモデルが八方ふさがりしたのはあきらかです。

 

 

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コメント

あっははは!
左翼メディアは「このままでは日本は終わりだあー!」的な誘導してますね。
むしろドイツの「ユーロバブルが終わった」だけ。
なんか30年前に世紀末説を散々説いていた上にサリンテロを自ら起こした宗教団体みたいで、本当にキモいです。

もちろん実質賃金のアップや少子化問題は待った無しではあります。

私のような経済音痴の人間でも今回の件に「カラクリ」があることはわかります。
しかしテレビや新聞など所謂オールドメディアのみが情報源の人達には一定程度訴えるものがあるのでしょうね。それにしても日本をディスる情報になると欣喜雀躍とばかりに活動を始めるメディアやジャーナリストのなんと多いことか。中国や韓国に蔓延る反日勢力よりも、こういう「獅子身中の虫」こそ一番厄介な存在なのかも知れません。

 GDPは国力を示す要素のうちの、たった一つのデータでしかありません。注意すべきはGDP回復の為に外国人材をもっと活用すべきとする財務省筋の方針や、関連して「少子高齢化緩和のためには移民受け入れしかない」と言う薄っぺらい意見が多々見られる事です。

日本は戦後復興期からGDP偏重が続き、国力を示す他の指針が置き去りにされてきました。軍事力やソフトパワーなどを含めた「総合国力」の面からみると、もともとドイツの方が日本よりも上位に位置しているデータばかりです。
ですが、安倍政権以降、まして中国経済崩壊を目の当たりにしている現在、日本の総合的な国際的評価は飛躍的に高まっているのが事実でしょう。米・欧の日本研究者も増えていて、経済・文化的な影響力も増しています。
製造拠点としての復活も大事ですし、先端研究やソフトパワー・金融面での領分拡大と、バランス良く成長していく事が大事。
そうして行く事で、総合国力の根幹たる「国民の幸福度」につながって行くのだし、GDP偏重の時代錯誤から抜けられるものと思います。
ただ、それもドイツの二の舞、同じ轍を踏まないように注意が必要ですが。

また、GDPの算出基準がドイツとは異なっている点や、円安による為替差によるだけの事であるなど、一時的な順位の入れ替えに過ぎないとする専門家も多いようです。


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