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2024年2月27日 (火)

中国と一蓮托生のドイツ

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さて、4番目のドイツのビジネスモデルです。
ドイツ政府は去年7月13日に、中国との関係だけに焦点を合わせた「中国戦略文書(China-Strategie)」を公表しました。
特定の国をテーマとする戦略文書は世界でも稀で、ドイツがいかに対中関係で深みにはまっていたのかを自ら証明したことになります。

ドイツは、かつて二度も世界大戦を引き起こした反省として、軍事力を行使せずに経済的関係を深めることで、相手国を変化させようとする関与外交をとってきました。
関与外交(engaged directly )とは、経済進出して相手国の経済と深く関わったり、経済協力により相手方の体制を民主化に誘導する「接近による変化」政策です。

結論からいえば、関与外交はひどい失敗でした。
中露の人権問題に目をつぶった結果、独裁政権を増長させて軍拡に走らせ、西側はなにをしても大丈夫だという妙な自信をもった独裁者たちは、クリミアや南シナ海に乗り出していったのです。

やがて中国は「西欧の押しつけられたか民主主義などいらない。西欧が作った世界秩序もいらない。中国を中心とする世界秩序を作るのだ」というという願望が目覚めてしまいました。
そしてそれを実行する超大国パワーも備わったと彼らに思わせたのが、リーマンショックでした。
中国は混乱が続く自由主義諸国をに追いつき、一気に世界有数の超大国となったのです。
ちなみにこの時期、日本はデフレ地獄にはまったままでした。

このような結果を招き寄せた関与外交は、米国民主党が行い、日本も大規模なODAという形で中国にインフラを提供し、ドイツは東欧圏、ロシア、さらに中国へとシフトしていきます。
ただし日本は対象国の港湾整備、道路・通信などのインフラ整備に対して、ドイツはひたすら経済進出をしていくというスタイルだったようです。
2005年から21年間も続いたメルケル政権は、それを対中戦略として定式化し、経済発展の結果生まれる中間層が中国の民主化を促すという幻想を強く持っていました。

この考えに基づいて、ドイツは中国政府とは親密にし、中国の宗教・人権・少数民族問題などには沈黙を貫きました。
要は、メルケルは、フォルクスワーゲンが売れれば良かったのです。

「現に、ドイツの主力産業である自動車産業の場合、いわゆるBIG3(フォルクスワーゲン、ダイムラー、BMW)の自動車販売の4割程度を中国が占めている。メルケル政権下でのドイツ景気の堅調は、まさしく中国の成長の果実を享受することで実現したのである」
(土田陽介2021年10月22日)
メルケル首相を「中国人の友」と持ち上げる習近平国家主席の魂胆 対中ビジネス依存度の引き下げを提言したメルケル首相だが(1/4) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

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JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

またサプライチエーンの鎖で自らをがんじがらめにしました。
結果、ドイツ経済にとって中国市場なくしては成り立たないようないびつな構造を作ったのです。

この光景はプーチンのロシアに対して独露蜜月関係とよく似たパターンで、メルケルなど在任中、中国訪問回数は12回なのに対して訪日は6回、しかもう3回はG7サミットですから実質たった3回というショボさです。
製造業ではライバル関係の上に、デフレで消費縮小していた日本などには用はなかったのでしょう。
とまれメルケルは、ロシアと中国をメタメタに溺愛していたのです。

ドイツの貿易において1990年には1%に満たなかった中国の割合は、2021年には9.5%にまで上昇しました。
一方、ドイツの中国からの輸入額は2013年からの10年間で150%以上伸び、2022年には約850億ユーロの入超となっています。
今や、ドイツにとって輸出入共に最も大きな単一の貿易相手国は中国です。
輸出先としては米国に次ぐ地位にあり、輸入元としては2015年以降7年間、中国は首位を維持しています。

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ドイツの対中戦略を読む:日本企業の欧州ビジネスと中国における競争への影響 | PwC Japanグループ

つい3年ほど前までは、他のEU諸国が中国の軍事膨張にを警戒して関係に距離をおき始めても、ドイツにはこの中国への強依存を改めるきはさらさらありませんでした。

「EUでは経済安全保障上の懸念から中国との関係を見直す機運が高まっているが、ドイツの政財界はそうした声から距離を置いていた。かつてのような高成長が見込みがたいとはいえ、中国経済は着実に発展し、今後も米国とともに世界景気をけん引し続けることになる。中国との良好な関係の維持は、ドイツの産業界の将来にとって必要不可欠だ」
(土田前掲)

そしてさらに関係を深めた結果、今度は中国のヨーロッパ市場の征服を手助けすることになります。
輸出入に変化が見られたのは、中国経済が猛烈な勢いでドイツ製をキャチアップしてしまい逆上陸を開始したからです。
攻守は逆転しまったのです。

いまやドイツはバッテリーや半導体製造で遅れをとり、さらにはメルケルが音頭を取った脱炭素の象徴であるEV市場では、中国製EVに欧州市場を席巻されてしまったのですからミイラ取りがミイラになってしまったというわけです。

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武者リサーチ

「貿易変調の最大の理由は、EV用主体のバッテリーと半導体(太陽光パネル、パワー半導体等)の急増である。中国の対ドイツバッテリー輸出は2020年16億ドル、21年37億ドル、22年80億ドル、対ドイツ半導体輸出は2020年14億ドル、21年18億ドル、22年31億ドルと倍々ゲームで増加し始めた(JETRO「地域分析レポート」)。クリーンエネルギーやEVにシフトすればするほど自動的に対中赤字が増加する仕組みがビルトインされている。
加えて中国EVの欧州急進出により欧州自動車企業は地元でシェアを奪われるリスクが高まっている。中国市場で高成長を謳歌してきたVWなどの欧州自動車メーカーは、今や攻守所を変えて、守る側に立たされつつあるのである。
2023年上期の中国自動車輸出台数は214万台(前年比76%増)のとなり、日本を抜き世界一となった。けん引役は、EVおよび民主主義国が禁輸している対ロシア向け輸出である。中国車のロシアでのシェアは2021年9%から22年37%、23年にはシェア50%を超え100万台に迫ると見られている」
窮地か?ドイツ企業の対中戦略検討とEU | 武者リサーチ (musha.co.jp)

メルケルが始め、バイデンが乗り、いまや世界の常識と化した脱炭素でもっとも恩恵を得たのはまがうことなくこの中国でした。
中国は、不動産バブルで得た有り余るチャイナマネーを、この脱炭素のサプライチェーンに惜しげもなく投入しました。
バッテリー、液晶、通信基地局、太陽光パネル、風力発電部品等には初期の巨額投資が必要ですが、国家財政の大規模投入で次々に世界の競争相手をなぎ倒してきました。
その結果、EVとEV用バッテリーの世界シェアは6割です。
いまやEVや風車、太陽光と関わることは、中国のサプライチェーンに組み込まれることと同義なのです。

「また5,000以上のドイツ企業が中国に拠点を持っています2。中国から輸入する中間製品に依存するドイツ企業の割合は、自動車産業や電気機器産業で70%超、比較的上流に近い化学産業でも40%以上にのぼります。ドイツはEU加盟国やG20諸国と比べても特に、中間財の供給国として、また販売市場として中国の重要性が高い国と言えます」
ドイツの対中戦略を読む:日本企業の欧州ビジネスと中国における競争への影響 | PwC Japanグループ

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 PwC Japanグループ

また中国企業によるドイツ企業買収も盛んで、中国資本は「中国製造2025」で掲げられたハイテク重要産業に集中して買収を重ねました。
このように「地球にやさしい」脱炭素政策は、確実に欧米日の産業に打撃を与え、国の体力を奪い、中国を肥え太らせたのです。

しかしご承知のように、その中国経済もデッドロックに突き当たりました。

「一方中国は深刻な経済困難に陥っている。国内ではバブル崩壊と消費の落ち込みによるデフレ化が進行している。金融緩和が不可欠だが、それは資本流出と人民元安圧力を高める。2022年までウォール街は中国応援団が多数派で、ワシントンの警告を無視して対中投資を積み上げてきた。しかしレイ・ダリオ、ジム・ロジャースなどのパンダ・ハガー(Panda hugger)は中国の独裁恐怖政治の確立、反スパイ法の制定、中国バブル崩壊と経済困難により対中政策を転換し対中投資の回収に走り始めた。これが中国株独歩安の原因となっている」

この中国経済の不動産と株式バブルの崩壊については、先日詳述しましたのでそちらをご覧ください。
中国恒大集団、清算へ: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
中国逃げが始まった: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

とまれ、ドイツはだましだまし進むしかないほど根本的なビジネスモデルの崩壊に瀕しています。
その結果としてのインフレ下の不況(スタグフレーション)という業病に罹患してしまいました。
こんなのでGDP3位になってもうれしかないでしょうな。
わかっていても元には戻れない以上、共に一蓮托生となるのでしょう。
それに引き換え34年ぶりでデフレトンネルから抜けつつある日本。
さて、どちらが健康な経済なんでしょうか。

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コメント

ドイツが滅ぶなら滅ぶで、持ってる兵器全部ウクライナに明け渡してから滅んでくれ…!それが彼らにとってのせめてもの罪滅ぼしです。

コンビニ弁当や牛丼といった庶民の食べ物が100円上がっただけで大騒ぎする日本経済もかなり異常なんですけどね。収入が増えないままだったから。

で、ドイツはシュレーダーというロシアの犬に続きアンゲラババアが長期政権で本当にやらかしました。よくもまあ美味いタイミングで退陣なさったもんです。
マルク高で苦しんでたのをユーロで救われた途端にやりたい放題。ロシアと中国で稼げるなら何でも良いという、正直トランプ以上の自国都合至上主義です。
で、やっぱ西洋人指導者って数年から10年程度先しか観ないのね?と。
そんなことやって喜んでたら···世界の軍事や経済情勢が全く変わっていましたという話です。見事に落とし穴に落ちたけど誰も責任を取らないです。
ようやくドイツのハイテクロボット会社が合弁廃止して本国に撤退したとかニュースになってますけど。
そんなことは性能そこそこで安価な中国のウイグル製太陽光パネルに最初に駆逐されたのがドイツだった時点で気付けないくらいのおバカっぷりです。

エネルギー政策で敵国認定してるロシアに金玉を差し出し、交易でチャイナマネーにすり寄り、EUの金融政策で一人勝ちを享受してたツケが一気に吹き出してきた感じですね。
日本のリベラリストが見習えと主張してたドイツがただの自国が潤えばそれでいい近視眼な国の運営していただけという正体がようやく明るみになったかという感想しかありません。
よく日本政府は…という意見を目にしますし自分もそう思うこともありますが、よくよく考えるとマトモと思える運営してる国って世界に存在してないなとも感じる今日このごろです。

とはいえ今の日本はマトモな財政政策すりゃ一気に伸びていく可能性がある状況なのにそれをドブに捨てようとしてるのはなんとも歯がゆいですが。

 ドイツ企業はEUの対中ブロック政策に反対し、まだ中国的な状況や環境に適応する必要を説いているようですね。それだけズブズブなので仕方ないですが、もはや中国なしでは成り立たないところまで突っ込むとは思いも寄りませんでした。
日本も一部そのような企業があるものの、ドイツとは比較になりません。
たとえ「現地生産、現地消費」と言ったって、儲けを国外へ持ち出せるかも不明。関わりをなくしていく他ない状況ではないでしょうかね。

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