中国電網が企むアジアスーパーグリッド
大林ミカ氏がタスクフォース委員を辞任したようです。
「再生可能エネルギーに関する規制見直しを目指す内閣府のタスクフォースに中国の国営電力会社「国家電網公司」のロゴマークが入った資料が提出された問題で、資料を提出した公益財団法人「自然エネルギー財団」の大林ミカ事業局長が27日、タスクフォースの民間構成員を辞任したと発表した。都内で記者団に明らかにした」
(産経3月27日)
中国企業ロゴ入り資料作成、自然エネルギー財団の大林ミカ氏が内閣府タスクフォース構成員を辞任 - 産経ニュース (sankei.com)
まぁ、トカゲのシッポ切りでしょうな。
トカゲの頭である河野氏や孫氏を傷つけないために自爆してみせたのです。
さて昨日、内閣府規制緩和TFに中国国営企業「国家電網公司」(ステートグリッド)のロゴが入っていたことの問題点は、つまるところふたつです。
ひとつは、こういうことを許してしまった政府のセキュリティ・クリアランス(適格性審査)の甘さの問題です。
いや、甘さというより、日本政府にはそもそもこれがないのです。
そしてもうひとつは、中国の目的がなにかという点です。
この中国電網のロゴが入った資料は自然エネルギー財団という孫正義氏が代表をつとめる組織ですが、ここの事務局長の大林ミカ氏が会議に持ち込んだものでした。
彼女が持ち込んだ資料の9割にこの中国企業のロゴが発見されており、事実上彼女の資料は中国の作成したものだったようです。
つまり自然エネルギー財団は、自前の研究の蓄積を持たない、中国の代弁者だった可能性が強まりました。
大林氏をセキュリティ・クリアランスしてみましょう。
この人は職歴や履歴が闇に包まれている謎の人物です。
わかっているのは大林氏は高校を卒業した後、塾講師などをしながら反原発団体である原子力資料情報室に属し、社民党と関わっていたようです。
いまでも福島党首の応援団だそうです。
福島みずほのどきどき日記 今日も色々な方にお会いしました (fc2.com)
ここまでの段階の経歴では彼女は反原発運動家でしかありませんので、欧米のセキュリティクリアランスでは政策の機微に触れるような審議会に呼ばれるはずがありません。
日本でも社民党系活動家では中立性に問題がありすぎて国の審議会に呼ばれることはありえません。
逆に有識者会議が大林氏を呼んだなら、その政府の意図を知りたいほどです。
有識者会議は、官僚がすべてをお膳立てして何からなにまで仕組んでから人選を決めるものです。
ですから大林氏が呼ばれたこと自体が、勘ぐれば政府の一部にすでに自然エネルギー財団と似た考えがあるということを物語っています。
たぶんそれは大林氏を突っ込んだ河野太郎氏でしょう。
それはさておき大林氏は、再生可能エネルギー推進の財団である自然エネルギー財団の事務局長に収まってから陽の当たる坂道を登り始めます。
いわば経歴ロンダリングがなされたのです。
このへんで河野太郎氏の目に止まったようで、河野氏は大林氏を同志と見て、様々な省庁横断の審議会の常連に押し込みます。
わずか十数年で反原発運動家が、国家のエネルギー政策にタッチし、その機密情報に接する立場になったというわけです。
なんかサクセスストリー見ているようですね。
大林氏が関わっている審議会は以下です。
いずれの審議会でも「中国電網」のロゴ入り資料を配布しています。
ところで自然エネルギー財団とはなんのために作られた団体でしょうか。
私が調べた限りでは、孫正義氏がオーナーのようなものですが、そのほんとうの設立目的は中国と共にスーパーグリッドを作ることです。
これは別に秘密でもなんでもなく、2016年には自然エネ財団が堂々と中国と共にアジアスーパーグリッドをつくるぞ、と孫氏にぶちあげさせています。
自然エネルギー財団
「2016年3月、中国国家電網(SGCC)のよびかけにより、自然エネルギーの活用のための世界的な送電ネットワークの実現をめざす国際的非営利団体、"Global Energy Interconnection Development and Cooperation Organization (GEIDCO)" が設立され、財団は理事会メンバーとして参加しました。
"Global Energy Interconnection"は、ASG構想の世界版であり、国際的な自然エネルギーの活用を促進するものです。GEIDCOには、中国、韓国、ブラジル、ロシアなどの電力会社、大学・研究機関、送電分野の世界的企業などが参加しています。
GEIDCOの会長には、中国国家電網会長の劉振亜(Liu Zhenya)氏が就任し、副会長には、自然エネルギー財団設立者・会長の孫正義氏(ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役社長)が、元米国エネルギー庁長官のスティーブン・チュー氏とともに就任しました」
(自然エネルギー財団『アジアスーパーグリッドとは』)
アジアスーパーグリッド(ASG)とは | アジア国際送電網 | 自然エネルギー財団 (renewable-ei.org)
この推進団体はGEIDCO(グローバル・エネルギー・インターコネクション発展協力機構 )と名付けられ、会長には中国電網会長の劉振亜、そして副会長には他ならぬ孫氏が就任しています。
なお、今回の辞任劇で、このGEIDCOも「誤解を呼ぶ」とのことで脱退しています。
こういう泡を食ったやり方はかえって疑惑を深めるのですがね。
2016年9月9日に開催された5周年シンポでは、中国電網の会長の劉振亜会長、韓国電力公社のチョ・ファンイク社長、ロシア電力会社ロスセチのオレグ・ブダルギン氏などが居並びました。
いうまでもなく主催者の孫氏は登壇して得意の熱弁を振るったのでしょうが、気の毒なことに他の面子はそれぞれの国において主力の電力供給者であるのに対して、孫氏はしょせんショボい再エネ会社社長にすぎなかったことです。
孫氏の持つ世界的大富豪というキラキライメージだけで大きな顔ができただけで、その発電事業家としての実体がお粗末なものだということは、彼自身身に沁みてわかっているはずです。
孫氏にこのアジアスーパーグリッド(ASG)構想を吹き込んだのは、間違いなく中国電網だったはずです。
前掲の自然エネルギー財団のASG構想の発起人は中国国家電網公司だと明記されており、すでに中国はモンゴル、ロシアとは限定的ながら送電網を結合しているようです。
それをさらに東南アジア、インド、韓国、日本に延伸したいということのようです。
ですから、中国にとっての日本の代理人は孫正義氏であり、さらに彼がオーナーの自然エネルギー財団であり、財団を尖兵にして国家のエネルギー政策に食い込み、なんとしてでもASGに接続させること、これが中国の意図です。
自然エネルギー財団
「アジア各地に豊富に存在する太陽光、風力、水力などの自然エネルギー資源を、各国が相互に活用できるようにするため、各国の送電網を結んでつくりだす国際的な送電網で、中国、モンゴル、ロシアなどの間での限定的な連携を東アジア全体に広げようとするものです」
(前掲)
このASGがモデルにしているのは、ヨーロッパ送電網です。
ヨーロッパは地域全体で国を超えた電力需給をしており、その中で得意方面をいかしているのだと思えばいいでしょう。
スペインは風力であり、ノルウェーやスウェーデンは水力、そしてフランスは原子力という具合です。
いまさらいうまでもありませんが、メルケルが原発ゼロにできたのは、ひとつにはプーチンからノルドストリームで原油・天然ガスを供給してもらえたこと、そしてもうひとつは燐国フランスは原発大国であり、ドイツは系統調整の一環として燐国から原子力の電気を融通してもらったというだけの話です。
熊谷徹『
このような裏付けがあってドイツは初めて「脱原発」を叫ぶ事ができたのですが、このようなことが日本に当てはまるでしょうか。
まったくあてはまりません。
大林氏は今回の辞任のインタビューでこう言っています。
「日本は島国だから他と電線がつながっていないが、欧州では国同士が相互に自然エネルギーの電気を送りあい、相互依存しながら、それを1つの経済の発展の基盤として自然エネルギーを拡大していくということがある。日本が島国だからできないというが、例えば欧州でも英国が島国だし、他にもたくさんの島を抱えた国々がある。例えば英国は欧州連合(EU)を脱退したが、他の国と国際送電網を今も構築、強化していくことで自然エネルギーを促進している。アイルランドも島国だが、英国やフランス、オランダとつながりながら自然エネルギーを拡大している」
(産経前掲)
なにを言っているのか。ヨーロッパといまのアジアをベタ平面に並べて、一般化するんじゃありませんよ。
常識的に考えてみればわかりますが、このヨーロッパ送電網はEUという国家間連合の枠内で連結され、さらにNATOという軍事同盟がこれを支えています。
決済はユーロという国際通貨で行われており、意志決定はヨーロッパ委員会が行います。
つまりEUという「ひとつの国」の内部での送電網の結合にすぎないために、安全保障上のトラブルは起きようがありません。
唯一の不協和音は、プーチンが押してメルケルが乗ったノルドストリームでした。
これにより、安全保障上の脅威からエネルギーをもらう、という絶対にしてはならない失敗をEUはするはめになってしまいました。
エネルギーは戦略物資の最たるものだということを忘れたためです。
孫氏がやりたいASGはまったく違って、価値観も国家体制も違う全体主義の国との送電網結合です。
こんな中国やロシアと送電網結合したならば、わが国は彼らの支配下に入ることになります。
それはノルドストリームが、どのような変化をドイツにもたらしたのかをみればわかるはずです。
今回の事件で、中国と再エネ業界の危険な関係があぶり出されました。
こういうことをした河野氏にも政府は事情聴取し、規制改革担当大臣を解任するべきです。
当人は「チェックミスだ」という苦しい言い訳をしていますが、大林氏を入れたことに対する説明にはなっていません。
こんな中国の影が見え隠れする人物に規制改革なんぞやられたらたまったもんじゃありませんからね。
日々自民党をぶっ壊すことのみ熱中している岸田さん、裏金がどうたらなどということより、外国の干渉を誘致した罪のほうがよほど大問題ではありませんか。
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コメント
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内閣府は下手な説明をしたけど、経産省の資料などをみれば説明の整合性がありません。一番合理的な説明が出来るとすれば、「国家電網が自然エネ財団の資料を作成した」って事でしょう。
ねらいはもちろん日本と中国の電力網を一体化することで、依存させて取り込むのは中共の常とう手段。激しく中国の国益にかないます。
自然エネ財団と国家電網はもともと共通の危険な目的で進んでいて、河野太郎がそれを知らないはずもありません。河野太郎が推薦し、河野太郎が任命したのですから。
河野太郎は方向転換したかのように見る人がいるが、筋金入りの反原発主義者。しかし、どうやらそれだけじゃなさそうです。
「新再エネ議連」はこうした河野や柴山らの行き方に自民党がブレーキをかける目的もあったもの。「再エネは国産で」という点が河野らのグループと違うところです。
しかし、再エネは普及すればするほど賦課金が上がる仕組みです。
「賦課金そのものや仕組みを停止した上で、抜本的見直し」を主張する国民民主党の方が自民党よりも余程しっかりした保守派に思えます。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年3月28日 (木) 21時16分