メルケルとトランプ、どちらが正しかったか?
メルケルとトランプは在職中犬猿の仲でした。
まずはこの一枚の写真からご覧ください。
これは2018年のG7の事前会合で撮られたもので、メルケルのインスタグラムにアップされていました。
素知らぬ顔で視線をはずすトランプと、机を叩かんばかりに詰め寄るメルケル、間にはさまれてウーンとうなっているのが安倍氏です。
G7首脳会談の1枚 この写真には誰と誰が - BBCニュース
同じシーンをカナダのトルドー首相もアップしていますが、こちらは笑っています。
BBC
メルケルが、こういう米国に談判といった写真をアップしたのは、ここで議題になっていた米国のアルミニウム関税だけではなく、メルケル先生が教師が不良生徒のトランプをみんなの前で叱っているのだ、というボディランゲージでした。
メルケルは常に米国は欧州の利害を無視して経済的にも軍事的にもわがまま放題を言う、と考えていたはずです。
ところでトランプは、最近でもこんなことを吹いています。
「トランプ前米大統領が10日、国防費のコミットメントを満たさない北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対しては、ロシアが好きなように侵攻するのに任せると在任中に欧州の首脳に語ったとするエピソードを明らかにし、波紋が内外に広がっている」
(ブルームバーク2024年2月12日 )
トランプ氏のNATO発言、内外に波紋-同盟への影響巡り新たな議論 - Bloomberg
またウクライナに関しては、オルバン・ハンガリー首相を相手にこんなことまで言い散らしています。
「ドナルド・トランプは、もし彼が再びアメリカ大統領に選出されたら、ロシアの侵略に対するウクライナの戦いに資金を提供しないだろう、とハンガリーのオルバン首相に言った。
「彼はウクライナとロシアの戦争に一銭も与えないだろう。それが戦争が終わる理由だ」と、保守派の首相はフロリダでトランプ氏と会談した後、語った。
前アメリカ大統領は、当選すれば「24時間以内に」戦争を終わらせると約束したが、詳細は明らかにしなかった」
(BBC3月8日)
トランプはウクライナに一銭も与えない-ハンガリーのオルバン首相-BBCニュース
オルバンは極右とも称される政治家で、ヨーロッパの極右らしくプーチンに親しみをもっているようです。
またオルバンは「ウクライナが自力で立ち続けられないのは明らかだ」とし、「米国が金を出さなければ、欧州だけでこの戦争を経済的に支えることはできない」(BBC前掲)とも言っています。
このオルバン発言自体、NATOやEUの方針とはまったく違うので、問題視されるでしょうが、しょせん小者です。
これらの外信記事を読むと、ヒドイと感じるのは、トランプ発言の脈絡を欠落させて報じているからです。
あくまでもトランプは、すぐにNATOをおん出るとか、ウクライナにはびた一文出さんと言っているわけではなく「ヨーロッパが自分で防衛する気がないのだったら」というのが大前提です。
この部分を抜かしてトランプ発言を読むと訳がわからなくなります。
ウクライナ戦争前まで、NATO各国の防衛努力は大変にお粗末でした。
下図は2021年と2023年を比較したものですが、ドイツなどわずか1.46%という緊張感のなさです。
主なNATO加盟国の対GDP比国防費 - NATO、国防費が急増 加盟国半数が24年にGDP2%超 - 写真・画像(2/3)|【西日本新聞me】 (nishinippon.co.jp)
ちなみに日本は0.93%で、安保三文書でようやくNATO並を目指すことになったばかりです。
トランプが怒り、メルケルがそれを米国の不当な圧力と感じたのは、このようなヨーロッパ、特にその中心国であるドイツの政治姿勢のゆがみがあったからです。
先日も記事にしましたが、ドイツのビジネスモデルは4ツあります。
日本のGDPが世界第4位に、だから?: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
①安いロシア産原油・天然ガスの無限の供給。
②ユーロによる通貨安。
③EU圏の無関税。
④対中輸出。
これらすべてが絶賛崩壊中です。
具体的に見てみましょう。
①ショルツ首相は、ロシアとドイツ間のロシア産天然ガス輸送パイプライン建設計画ノルド・ストリーム2の承認を停止し、ロシアへのエネルギー強依存体制を変えようとしています。
これはかねがねトランプのロシアのエネルギー依存は欧州の安全にとって危険だ、という警告を無視してメルケルが突っ走ったからです。
②トランプがしつこくNATOを罵っているのは、加盟国がみずからが定めた国防費に対し対GDP比2%を実現していなかったからです。
あまりに防衛努力を怠ってきたために、ウクライナ支援を開始したらすぐに自国の砲弾の備蓄がなくなりかけるという体たらくに陥りました。
やっと増産体制を整えつつありますが、遅い。
ウクライナがロシアに負けたら次はバルト三国、そしてポーランドだということにやっと思い致したわけです。
ウクライナが敗北した場合、NATOの防衛費は2%どころかその倍、3倍になるでしょう。
そしてメルケルは、対中姿勢が大甘で、中国の脅威などアジアだけのこと、ドイツは儲けなくちゃ損々とばかりに構えていました。
ですから、中国にせっせと12回も通いつめ習近平と抱擁し、フォルクスワーゲンを売ることに国の将来を賭けていたのです。
結果、いまや中国は世界支配の野望を隠そうともしなくなり、ヨーロッパのEV市場を制圧してしまいました。
中国と一蓮托生のドイツ: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)
さぁこのように見てくると、理性的に語り、論理的に見えたメルケルと、突発的で脈絡なく激しい言葉を使うトランプのどちらが正しかったのかお分かりでしょう。
« ラマダン「停戦」だって? | トップページ | トランプ政権の第2期はどうなるか »





「トランプはウクライナを支援しない」というのは、私は疑わしいと思っています。方々で演説をする中で、トランプが言っている事は常に変わっています。「(支援を)一切しない」とする方がめずらしく、「縮小」や「借款にする」などとの言説が多いようです。
また、ヘリテージ財団やフーバー研究所、ランド研究所などの保守系シンクタンクは一様に記事中の見立て(ウクライナが敗北した場合、NATOの防衛費は2%どころかその倍、3倍になるでしょう)のごとくです。トランプの腹はEUに出来るだけ吐き出させ、足らず目を補うといったところでしょうか。
ドイツは自称「関税マン」のトランプが大統領になると、一番ワリを食う立場になりそうです。これまで中国製造にベットしすぎていて、対米輸出が減る一方となりそうです。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年3月15日 (金) 01時56分