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2024年5月

2024年5月22日 (水)

頼清徳新総統の就任演説

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台湾の頼清徳(ライ・チンドォー)新総統の就任演説の要旨です。
福島香織氏の解説を参考にして付け加えます。
頼清徳新総統の演説要旨 「台湾をAIの島に」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)


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「戦争の恐怖から解放を」 台湾の頼清徳新総統、就任演説で中国警戒:朝日新聞デジタル (asahi.com)

「1996年に選挙で選ばれた総統が就任し、台湾は主権独立国家だと世界に示した。初めて同一政党(民主進歩党)が3期続けて政権を担う。苦労して勝ち取った民主主義の勝利だ」

この部分ですが、頼総統ははっきりと「中華民国」という表現をとっていました。しかも9回も。
台湾独立派には正名運動というのがあります。

「台湾の公的な場で使用されている「中国中華(China)」という呼称を「台湾(Taiwan)」へ置き換え、台湾の存在を「中国の一部」から「中国とは別個の地」に代えることを目標としている。但し、ここでの中国、中華は中華人民共和国ではなく1945年以降台湾を実効支配している中華民国(Republic of China)に由来する名称である」
台湾正名運動 - Wikipedia

ここでいう「中華」や「中国」とは国民党の蒋介石が作った中華民国のことです。
ですから上の頼氏の写真には、国民党の党旗が中華民国国旗に入っています。
国旗を見ただけで蒋介石は他の政党を認める気がなかったのがわかりますが、中華民国3代目の総統となった李登輝が一気に民主化を押し進めて多党時代に突入しました。
民進党もこの民主化の流れの中で誕生した独立派の政党です。

ただし民進党は、台湾が独立すると口にした瞬間、中国が攻めてくることを知っていますから、「独立」という表現を使わず、かつ「中華民国」という国民党臭がこびりついた国名を使うことにも慎重でした。
蔡英文前総統もほとんど中華民国という表現を使っていませんでしたが、今回、頼新総統はそのタブーをあえて破っています。

「傲慢にも卑屈にもならず、(中台関係の)現状を維持する。中国が言論や武力での威嚇を停止し、共に台湾海峡と地域の平和と安定の維持に尽力するよう求める。中台は互いに隷属しない。
中華民国(台湾)の存在を中国が直視し、台湾人の選択を尊重するよう望む。中国が民主的な選挙で選ばれた合法的な政府と対等の原則の下で、対話と交流を進めることを望む。
ただ中国に幻想を抱いてはいけない。中国は台湾に対する武力侵攻の可能性を放棄していない。中国の台湾併合の企てが消えることはない。
民主主義国家と平和の共同体を形成して抑止力を高めて戦争を回避しなければならない」
(日経前掲)

つまりこれは、頼氏率いる民進党の台湾アイデンティティの現れで、もう台湾は国民党の私物ではないのだから中華民国でかまわないというのが新総統の考えです。

「国名問題に結論を出しています。中華民国じゃなくて、台湾が正名とかいう議論は些末な問題で、重要なのは民主パワーで団結すること、という立場を言明。
これで憲法問題、国名問題について頼清徳民主党政権として答えを完全に出したということです。なので頼清徳政権による国名変更も、憲法改正も当面ない、ということです。だから、国民党は台湾の政党として国家主権を守るという立場において民進党と協力、強調せよ、と呼び掛けているわけです」
(福島香織 note)

そしてそのうえで中国に対して「中華民国」という現実を直視し、侵略をしないようにと呼びかけました。

「台湾の国家としての存在をはっきりと中国に示し、その上で、中国が中華民国の存在という事実を直視し、台湾人民の選択を尊重するように、呼びかけました。
ここで「各位国人同胞(国民同胞のみなさん)」という呼びかけで、「(中国に対して)幻想を持つべきではない」と訴えているんですが、この国人という表現には、中華民国人(国民党、親中派)が強調されているように聞こえます。
そして抑止力による戦争回避の必要性をときました」
(福島前掲)

一方、議会(立法院)は、民進党も国民党も過半数をとれずにいます。
つまり三すくみ状態なわけです。
国民党は新総統の就任式に参加しないという子供じみた抵抗をしていて議員がひとりしか参加しませんでした。
これについて頼氏はこう述べています。

「立法院(国会)はいずれの党も過半数に達していない。各政党は競争だけではなく協力の信念を持つべきだ。国の利益は政党の利益より優先される」
(日経前掲)

この部分は中国にすり寄り、馬元総統のように中国と声を合わせてワンチャイナを叫ぶような国民党に対して、政争ではなく大局を見ろという意味です。

「16年ぶりに「3党とも半数以下」の立法院に言及。「人民至上」「国家優先」での協力を呼び掛けると同時に、中国にすり寄る国民党に牽制を入れました。すなわち、どんな政党であっても、政治権力のために国家主権を犠牲にするな、と釘をさしました」
(福島前掲)

そして経済については、AIイノベーションの島にすると宣言しました。

「台湾を「人工知能(AI)の島」にする。イノベーション主導型の経済モデルを発展させ、台湾に第2の経済成長の奇跡をもたらす。地政学的な変化をチャンスと捉え、半導体やAI、軍事産業、次世代通信といった産業を育成する」
(日経前掲)

日経が頼演説のタイトルにしているほどこの台湾のAI立国宣言は心強いものです。
これはTSMCの熊本進出を、今後も台湾政府も後押しするということです。

「今、誰もが夢にも思っていなかった大投資ブームが起きている。その牽引車は半導体の受託生産で世界最大手の台湾企業「TSMC」による熊本工場の始動である。2月に第1工場が完成したのに続いて、6ナノメートルの先端半導体を生産する第2工場の建設も決まり、第3工場も視野に入っている。これまでに決まった投資総額は3兆4000億円、日本政府は1兆2000億円の補助を約束している。熊本県ではこの投資ラッシュにより土地は値上がりし、人不足から賃金は上昇、交通渋滞が起きるなどブーム状態である」
日本半導体産業復活をけん引する「天の時、地の利、人の和」 | 武者リサーチ (musha.co.jp)

そして日本のみならず、世界の重要なAIサプライチェーンである台湾を世界は見捨てるなという意味になります。
全体を通して実にリアリズムに徹して、かつ壮大な理念に裏打ちされています。

 

2024年5月21日 (火)

イラン大統領、ヘリ事故で死亡

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イランのライシ大統領が事故死したことを、イラン当局も認めました。

[ドバイ 20日 ロイター] - イランのライシ大統領(63)とアブドラヒアン外相が搭乗していたヘリコプターがアゼルバイジャンとの国境近くの山岳地帯に墜落し、いずれも死亡した。イラン国営メディアが20日に伝えた。
19日に墜落したヘリを巡っては吹雪の中で夜通し捜索が進められ、20日の早い時間帯に炎上して燃え尽きた残骸が発見された。
政府高官がロイターに明らかにしたところによると、搭乗者全員が死亡。マンスーリ副大統領もその後、声明でライシ氏の死亡を確認した。
国営テレビは墜落原因に触れていない。現場の映像は山頂に激突したことを示していると伝えた」
(ロイター5月20日)

イラン大統領と外相が死亡、ヘリ墜落で 国営TVは原因に言及なし(ロイター) - Yahoo!ニュース

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速報】イラン・ライシ大統領ら乗せたヘリ発見か ロイター通信に対しイラン当局者「生存可能性低い」 | TBS NEWS DIG

さて、上の黒いターバンを巻いて人間を信じない目つきをしている人物がセイイェド・エブラーヒーム・ライシです。
黒いターバンを巻く者は、ムハンマドの血筋を引くという意味で、シーア派高位であることを示しています。
ですから、イランの歴代大統領でも黒いターバンを巻けることができるのは2名しかいませんでした。
次の「最高指導者」はこのライシだと目されていたようです。

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毎日

ライシは、2021年の大統領選挙で6割の票を集めて当選しました。
大統領職とは元首のことですから、国家のトップかとおもいきや、イランでは中間管理職でしかありません。
だから選挙で国民が選ぶことが(形式的にはですが)可能なのです。
イランの権力構造は下図のようになっています。
実にわかりにくいですが、イランという異形の国家を知るためにちょっとおつきあいください。

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イランは最高指導者が絶対権力 大統領は行政の長 (産経ニュース) (newspicks.com)

イランの全権を握るのは「最高指導者」は、わが国やヨーロッパ諸国のような国家統合の象徴ではなく文字通りの実力を持っています。
ここに座ったのはたった2名。初代があまりにも有名なカリスマ指導者のホメイニ、二代目が今のハメネイで、いずれも高位のイスラム法学者でした。
3代目と目されていたのが、今回事故死したこのライシでした。

この「最高指導者」が、日欧の立憲君主制と根本的に違うのはふたつの「力」を持っているからです。
まず、なんといっても国家の実力組織を掌握しています。国軍と例の悪名高きコッズ部隊を擁する革命防衛隊です。
ですから、イスラエルに盛んにテロ攻撃を仕掛けているコッズ部隊は、直接に「最高指導者」が司令官を任命し、その命令で動いているということになります。
国軍は政府の統制が効きますが、革命防衛隊は「最高指導者」の直轄なので、なにをしているのかさえも政府が掌握してはいないようです。

イラン革命防衛隊(IRGC)は、軍隊のように見えますし、実際国軍並の軍事力を持っていますが、国軍とはまったく別系列の軍隊です。
おそらくこのような組織は諸外国にはないでしょう。
強いていえば、ヒトラー個人に忠誠を誓ったナチの突撃隊(SA) と武装親衛隊(SS)を足して、ゲシュタッポをかけあわせたような組織で、独裁国家でしか誕生しません(おおコワ)。
当初、イスラム原理主義政権が反革命と目した国内の民主派運動家たちを殺すために作られ、やがて起きたイラン-イラク戦争を支える組織として武装化しました。
国内民主派が海外に逃亡すると、海外のイラン民主派勢力に対しても容赦ない暗殺攻撃を続けました。

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イスラム革命防衛隊

「イラン人の暗殺は、欧州亡命組を中心に、1980年代から90年代にかけてかなり頻繁に行われ、少なくとも20か国以上で、計350人以上が殺害された。ただし暗殺作戦は、2000年代以降は比較的沈静化している。亡命反体制派の活動家たちが高齢化し、武力で体制を倒せるような存在ではなくなったからである」
(黒井文太郎2019年4月17日)
中東の最重要問題に浮上したイランの国家的テロ組織 ISよりも危険な存在、イラン「革命防衛隊」とは(後編)(1/4) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

この執拗な大量暗殺のために、国外亡命グループは壊滅しました。
なぜならほとんど全員が殺されてしまったからです。
このようにイランで専制政治が続く最大の理由は、イスラム原理主義政権にとって代わる民主派勢力を存在させない革命防衛隊がいるからです。

次に革命防衛隊の標的にされたのが、イスラエルです。
コッズ部隊は、中東各国に浸透しました。浸透工作が成功した地域は、イラク、シリア、イエメン、パレスチナで、この地におけるテロ流血事件のすべてに、イランが関わっています。
今回イスラエルをテロ攻撃しているハマス、ヒズボラなどのテロ組織はことごとくイランが育成し、武器と資金を与えたものです。
これらの組織の活動は、革命防衛隊の指令に従っており、革命防衛隊を通じてイラン「最高指導指呼」と直接につながっています。
つまり、中東の騒乱の大元締めがイランの「最高指導者」なのです。

第2に、「最高指導者」は大統領選挙の候補者を選ぶことができます。
え、国民が投票で選ぶんじゃなかったのと思うのは甘い。

その候補の選定は「最高指導者」が行うのです。
こういうのを言葉の正しい意味で「選挙」とは呼ばないはずですが、大統領選挙に出るには、最高指導者の影響下に置かれた「監督者評議会」(専門家会議)の承認を得なければなりません。
この監督者評議会のメンバー12人のうち6人は最高指導者が任命し、残り6人は司法の長が指名します。

ライシが司法の長だった時代に指名した人間がこの6名の中には含まれています。

つまり、「最高指導者」のペット以外に立候補すらできないのです。
しかしメディアはノーテンキに「イラン大統領選挙でライシ当選」などと報じていましたが、こういうカラクリには触れませんでした。
当然のこととして、大統領職は「イラン・イスラム共和国」という看板に偽りありの体裁を整えるためだけの存在にすぎません。
逆に、失敗したら大統領が腹を切ることになります。

ライシは精力的に仕事をこなしていき、長く在任した検察官時代には多くの反体制派の処刑を決定しました。
「検察官」といっても、近代法で裁くのではなく、イスラム原理主義の法典で裁くのです。

たとえばヒジャブです。
日本の「イスラム専門家」たちには、ヒジャブについてイスラム風ファッションだとか、着用の義務はなく自由だという言い方をする者がいますが違います。
女性のヒジャーブ着用はイスラム教という宗教上の義務であり、そこには基本的に「選択の自由」などというものは存在しません。

国家が宗教支配の象徴として着用義務を定めているために、ヒジャーブをしなかったり、着用が既定と少し異なっていることで懲役刑や、それ以上の刑罰に処されます。

22歳のイラン女性マーサー・アミニさんは、ヘジャブの端から髪の毛がでていたというささいな理由で宗教警察(こんなもんがあるんです)逮捕され、拷問死しました。
この痛ましい事件はイラン全土で激しい抗議デモを呼び起こしました。

「一方、クルド系のRudawメディア・ネットワークは、「彼女はヘッドスカーフが原因で警察官に殴打された。彼女の父親は娘の体に拷問の痕跡があったと主張している。彼女が以前に病気を患っていたという情報についても、父親は『娘は完全に健康だった』と述べた」と報じた。また、彼女の治療にあたったクリニック関係者は、「彼女は13日に入院した時に既に脳死状態だった」と証言したという」
(ウィーン発 『コンフィデンシャル9月24日)
10年遅れで「イランの春」到来するか : ウィーン発

アミニさん虐殺抗議行動は、イスラム原理主義政権への抵抗運動でした。

「(CNN) イランで道徳警察に拘束された若い女性の死に対する抗議デモが続くなか、当局は24日までに、街路に平穏が戻るまでインターネット接続を制限すると明らかにした。
イランではマフサ・アミニさん(享年22)の先週の死をきっかけに、数千人が街頭に繰り出して抗議を行っている。
アミニさんは首都テヘランで逮捕され、「再教育センター」に連行された。逮捕理由は頭部を覆うヒジャーブを適切に着用していなかったことだとみられる。
16日以降、テヘランを含む少なくとも40都市でデモが行われた。デモ隊は女性に対する暴力や差別、ヒジャーブ着用義務の撤廃を求めている。
デモは治安部隊との衝突に発展し、数十人が死亡したとの情報もある」
(CNN9月24日)
イラン、ネット接続を制限 女性死亡へのデモで死者増加 - CNN.co.jp

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民主派を大量にクレーンから「吊るした」ので、奉られたあだ名が「ハングマン」でした。
なぜハングマンと呼ばれたかといえば、イランはいまだ公開処刑をしており、死刑囚をクレーンで街中に吊るすという蛮行をいまでもしているからです。
特にひどかったのが、1988年で、実に数千人から数万人といわれるイランの反体制派が短期間に絞首刑とされましたが、その決定をした「死の委員会」の4人のメンバーの指導者が、このライシでした。

ライシの後任はモハンマド・モフベル第1副大統領です。
そうとうに悪相の男です。

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ハメネイ師に近い強硬派 大統領代行のモフベル氏 イラン(時事通信) - Yahoo!ニュース

革命防衛隊上がりのゴリゴリの強硬派だそうで、大統領選挙にも出るようです。やれやれ。

 

2024年5月20日 (月)

ガラントとガンツ国防相コンビ、ネタニヤフ戦時内閣から離脱か

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イスラエルのガラント国防相が、戦時内閣からの離脱を示唆しました。
もし離脱が実行されれば戦争の真っ最中に国防相と前国防相が戦時内閣から出て行くという異常事態となり、戦時内閣は瓦解するでしょう。

ヨアヴ・ ガラントは、ネタニヤフと同じリクードに属しながら、野党の支持もあって、今選挙があれば次期首相の呼び声も高い政治家です。
ネタニヤフとは対照的な考えを持っており、たとえば、ネタニヤフは西岸支配を強化するための司法改革を進めましたが、ガラントは粘り強く反対し撤回させました。

公然と叛旗を翻すのは時間の問題と見られていたようです。

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ヨアブ・ガラント国防相とベニー・ガンツ前国防相
ガンツはギャラントを国防相として復帰させるよう呼びかける - イスラエルの政治 - エルサレムポスト (jpost.com)

今回の戦時内閣離脱の示唆は、前々からくすぶっていたガザの戦後統治のあり方を巡って、ネタニヤフと決定的に対立したからのようです。
ガラントの懸念は、去年10月のテロ発生直後からあったようです。
BBCによれば、対ハマス戦争を遂行する主体であるイスラエル国防軍(IDF)は、この戦争初期の時点で戦時内閣に対して「戦争の計画書」を提出していたようです。


「ガラント氏は、ガザ地区への地上作戦を開始した昨年10月末の時点ですでに、国防省が内閣に戦争の計画書を提示していたと説明。それには「現地主導で非敵対的なパレスチナの統治代替組織を確立する」案も含まれていたという。
ハマスのいない状態は、「パレスチナ人組織が、国際的な組織と共にガザを掌握することによってのみ達成される」と、ガラント氏は述べた。
しかし、この案は一度も議論されず、代替案も提示されていないという」
(BBC5月19日)
ネタニヤフ首相に反発、イスラエル国防相 ガザ地区の戦後計画めぐり - BBCニュース

このIDFの「戦争計画書」がどのようなものかは明らかではありませんが、ガラントのいうことから想像すると戦後のガザ統治まで含んだ中長期的なもののようです。
ここで問題となるのは、なんといっても戦後統治のあり方です。
これを定めて置かねば、戦後のガザは統治主体なき混沌の場と化します。
このような統制の及ばない政治的真空地帯を作ってしまえば、そこには「アラブの春」で各国にISが誕生したような過激組織の温床が生まれるでしょう。
この不安は戦争が拡大するに連れて実体化して、いまやIDFの中にある種の厭戦気分をもたらしているようです。
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BBC ガラント国防相

そりゃそうでしょう。
残虐なテロに対しての反撃をするところまでは多くのイスラエル人の挙国一致でしたが、戦争が長引いて多くのガザ市民が巻きぞいで殺害されて、いまやイスラエルはこともあろうにジェノサイド国家の汚名を着せられつつあります。
しかしハマスの首領は捕まらず、人質は続々と死亡が確認されていき、南部ラファに侵攻かと言う時期を狙ったように戦闘が終結したはずの北部で再びハマスの攻勢が始まっています。
そのうえに仮にガザの戦闘が終わっても、戦後統治が決まらないままにIDFはどこまで続くかわからない治安維持任務に駆り出されます。
たまったもんじゃない、なんで戦争開始の時点でIDFの戦争計画書を戦時内閣が議論しなかったのだ、冗談ではない、これが本音でしょう。
ガラントが考えているのはハマスを放逐し、「パレスチナ人組織が、国際的な組織と共にガザを掌握することによってのみ達成される」(BBC)状態のようです。
ガラントはぼかした言い方をしていますので、「パレスチナ組織」とはいまのアッバスの自治政府を指すのか、それともそれ以外の「穏健な市民たち」で構成される「刷新された自治政府」のか、ならばどうやってその線引きをするのか、あるいは「国際的組織」はアラブ湾岸地域諸国のエジプト、ヨルダン、サウジがこの火中の栗を拾う用意はあるのかなど不透明なことばかりです。
はっきりしていることは、ネタヤフのイスラエル単独でのガザ統治構想に対しての強い批判です。
「ガラント氏は、イスラエル政府が計画を立てられずにいることで、ガザはイスラエル軍と民間人が支配する「危険な道」に向かっていると述べた。
「これはイスラエル国家にとって、戦略的にも、軍事的にも、安全保障の観点からも、ネガティブで危険な選択肢だ」「繰り返すが、私はガザにイスラエル軍による統治体制を作ることに反対する。イスラエルはガザ地区に文民統治を敷くべきではない」」
(BBC前掲)

なお、ガラントの盟友であるベニー・ガンツ前国防相が、ネタニヤフに突きつけた6項目要求は以下です。

「ガンツは、「6つの戦略目標」を達成するために、戦争内閣は「行動計画を策定し、承認しなければならない」と述べた。
1「人質を家に連れて帰れ」

2「ハマスの支配を打倒し、ガザ地区を非武装化し、イスラエルの治安管理を(ガザを)手に入れよう」
3イスラエルの治安管理と並行して、「アメリカ、ヨーロッパ、アラブ、パレスチナの要素を含む、ガザの国際的な文民統治メカニズムを創設し、それはまた、ハマスでもなければ、(パレスチナ自治政府の)アッバス議長でもない、将来の代替案の基礎となるだろう」
4「(ヒズボラの攻撃で避難した)北部の住民を9月1日までに自宅に帰還させ、(10月7日にハマスが標的にしたガザに隣接する)西部ネゲブを復興させる」
5「イランとその同盟国に対抗する自由世界と西側諸国との同盟関係を構築するための包括的なプロセスの一環として、サウジアラビアとの国交正常化を進める」
6「すべてのイスラエル人が国家に奉仕し、国家的努力に貢献する(軍/国家)奉仕の枠組みを採択すること」
ガンツ首相、6月8日を首相の戦後計画策定期限に設定、さもなければ連立政権を断念 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

 ガンツの提案は傾聴を値します。
人質の解放、ハマスの粉砕を前提として、北部住民の帰還、西武の拠点としネゲブの復興などの復興プログラムを組み入れています。
これはイスラエルの(おそらく暫定的な)治安管理の下で、「国際的文民統治メカニズム」を作りながら行われると考えられます。
「国際管理」とは、エジプトとアラブ湾岸諸国が加わり、サウジとの国交正常化を意味するようです。
ここでできる暫定政府からはハマスは言うまでもなく、アッバスも排除されるようです。

このガンツ提案は米国案と重なる部分があります。
米国は一貫してイスラエルのハマスをガザから一掃することについては合意しつつも、戦後に恒久的な平和をもたらすためには、西岸地区とガザ地区を合わせたパレスチナ国家設立が必須だと考えています。

この米国プランでは、パレスチナ国家の樹立主体はあくまでも現行のパレスチナ自治政府です。
これを国家承認し、西岸とガザを管理させ、その復興を湾岸諸国と世界諸国が助けるというビジョンのようです。
そして納得しないイスラエルには、ブリンケンはイスラエルがこのプランを受け入れるなら、サウジとの国交正常化を強く推進するというおまけを用意しています。

ガンツ案と米国案の決定的違いはアッバスの扱いです。
ガンツはアッバスを排除していますが、米国は許容しむしろ戦後の主体にしたいようです。
腐り切ったアッバス政府に対する過剰な思い入れに見えますし、ともかくアッパスは西岸の一部しか実効支配していないのですからどうしてガザ全域を代表できるのか不明です

とまれガラントは6月8日までと時間を区切ってネタニヤフに回答を迫っていますので、もし協議が不調な場合、ガラントとガンツは戦時内閣から出ていくことになるでしょう。
ここまで対立が煮詰まってしまったら(戦時下で可能かどうか分かりませんが)、ネタニヤフの信任を問う選挙をしたほうがいいと思います。
この男はなにも決められないまま、ひたすら軍事力だけで押し進もうとしているようです。

ネタニヤフは、オレに最後通牒を出すのか、ハマスに出せぇと吠えています。
逆質問状はガンツの公開質問状の意図をねじ曲げて、ハマスを殲滅したくないのかといっていますが、これは論点ずらしです。
ガンツが言ってるのは、ハマスを粉砕した「後」の状況についてです。
ただパレスチナ国家について、ガンツがあえて不明瞭にしている点をついています。
まぁ、結局ここなのです。

「ネタニヤフ首相は、大統領府を通じて発表した痛烈な声明で、連立相手が「ハマスに最後通牒を突きつける代わりに、首相に最後通牒を突きつけた」と非難した。
ガンツの要求は「イスラエルの戦争と敗北を終わらせ、人質の大多数を放棄し、ハマスを権力の座に残し、パレスチナ国家を樹立する」ことを意味すると声明は主張している。
首相官邸は、ガンツが本当に政府の転覆ではなく、国益を優先するのであれば、次の3つの質問に答えなければならないと主張した。
・ガンツは、ラファでの作戦を最後まで見届けたいのだろうか、もしそうなら、なぜ彼はイスラエル国防軍の作戦中に統一政府を打倒すると脅しているのだろうか?
・彼は、たとえマフムード・アッバースが関与していなくても、ガザにおけるパレスチナ自治政府の支配に反対しているのだろうか?
・彼は、サウジアラビアとの国交正常化プロセスの一環として、パレスチナ国家を支持するだろうか?」
(イスラエルタイムス5月19日)
ガンツ首相、6月8日を首相の戦後計画策定期限に設定、さもなければ連立政権を断念 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

やれやれネタニヤフは、聞く耳をもたないという姿勢です。

2024年5月19日 (日)

日曜写真館 あかときの水平らかに花菖蒲

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咲くほかはなき一叢や花菖蒲 阿部ひろし

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いさぎよく散るも叶はず花菖蒲 山本浪子

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その中にサムライブルー菖蒲園 桑原泰子

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仮縫のままで咲いてる花菖蒲 松田都青

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七彩の風のさやかに菖蒲園 大橋淳一

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水染めて舞ひ立たんとす花菖蒲 清水明子

 

 

 

2024年5月18日 (土)

プー・シュー会談の示すものとは

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プーチンと習近平が首脳会談をしました。
もちろん下目のプーが、シューの足下に参上したのです。
プー5期め初の外遊といっても、プーは国際司法裁判所のお尋ね者ですから、行ける国は中国くらいしかありませんがね。

「北京 /モスクワ 16日 ロイター] - 中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は16日、北京で会談し、両国への圧力を強める米国を非難し、防衛・軍事関係をさらに深化させる「新時代」を築くことで合意した。
習氏は、中国はロシアの良き隣人、友人、相互信頼のパートナーであり続けると表明。現在の中ロ関係は容易に実現したものではなく、双方が大切にすべきだと述べた。
5期目の大統領就任後、初の外遊となったプーチン氏は、「われわれは国際法に基づく、多極化した現実を反映した、正義と民主的な世界秩序の原則を守っている」と述べ、中ロの協力関係は特定の国に対するものではなく、世界を安定させる要素だとの認識を示した」
(ロイター5月17日)
中ロ首脳会談、対米で結束 包括的戦略パートナー深化へ共同声明 | ロイター (reuters.com)
「パートナー」なんてモダンな言い方をしていますが、これはシューがプー帝国を中華帝国の属邦としてやったという宣言のようなものです。
共同宣言の内容は、要は米国を中心とする自由主義陣営に対抗して、中露で軍事協力を深化させて「新時代」を作るということです。
「中華」という概念自体世界の中心を意味しますから、「パートナー」という関係ではありえません。
ワン公の世界と一緒で、エライのはオレ様、中華こそが世界の中心、世界からオレ様を慕って来れば褒美をとらせるということです。

今回のプーへの褒美は弾薬の主原料であるニトロセルロースでした。
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NHK

「ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、アメリカは、中国が軍事転用可能な物資をロシアに提供しているとして懸念を強めています。その1つで弾薬の製造にも使われる「ニトロセルロース」という物資のロシアへの輸出がウクライナ侵攻が始まったおととし以降、急増していたことが中国当局の公表データの分析で明らかになりました。専門家は、ロシアに対する軍事支援と考えられるとしています。
「ニトロセルロース」は、塗料やインクなど民生用として使われる一方、激しく燃焼する性質から弾薬の材料にもなり、軍事転用が可能な物資の1つです」
(NHK5月16日)
中国 ウクライナ侵攻後 ロシアへ軍事転用可能物資の輸出急増 | NHK | ウクライナ情勢

もちろんニトロセルロースは軍事転用可能な物質ですから国際制裁違反です。
もっともチャイナは、他の国に売っている2倍の値段で売っているようですが、制裁を潜って売ってやっているのだから文句言うなということのようです。
ロシアは北朝鮮からは砲弾を、イランからはドローンを、そしてチャイナからは弾丸の材料を売ってもらってやっと継戦しているようです。
ウクライナ戦争の結果がどうなるかはわかりませんが、この借りをどう返すつもりのでしょうか。
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習近平、トランプのために紫禁城をまるごと空けて“皇帝儀式” : 日本•国際 : hankyoreh japan (hani.co.kr)
それはさておき、中華帝国は一貫してこの思想でやってきました。現代も例外ではありません。
上の写真はかつてトランプが訪中した時のものですが、どこを案内したのかご存じでしょうか。
まず、シューが初めにトランプを連れていったのが紫禁城の太和殿前の広場です。 
この広場は皇帝が臣下を拝謁させる場所です。

下の映画『ラストエンペラー』にも登場しましたので、ご記憶の方も多いでしょう。 
こういうかんじの場所を案内することに無意味なはずがありません。

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「ラストエンペラー」

この太和殿こそ、世界の中心を意味する「中華」の、そのまた中華。中国皇帝が、世界の真ん中で権力を叫んだ場所です。 
習はここを貸し切りました。こんなまねが今の中国で出来るのは、彼しかいません。
ホワイトハウス前とは違うのですよ。

次にお茶の場所は宝蘊楼でした。ここは皇帝の宝物殿です。

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トランプ大統領が訪れた故宮の宝蘊楼 百年の歴史誇る西洋風建築物--人民網日本語版--人民日報 (people.com.cn)

皇帝が臣下を謁見する紫禁城の太和殿前の広場で初顔合わせし,そして紫禁城を案内した後に宝物庫である宝蘊楼をみせびらかし、そして夕方からは、紫禁城内の王室公演施設である暢音閣で京劇公演を観覧しました。
ここも皇帝専用の劇場です。
そして演目は孫悟空が出てくる「美猴王」だったそうで、トランプ「王」などは中華皇帝の手のひらのゴクウだといわんばかりです。
この日のしめくくりの晩餐会は建福宮で行われました。ここは清の全盛期の皇帝である乾隆帝が鎮座ましましていた王宮です。

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[コラム]ゴルフ、武器商人、そして皇帝 : 社説・コラム : hankyoreh japan (hani.co.kr)

というわけで、習のおもてなしは中華皇帝尽くしのコテコテの暗喩とも言えない露骨な教育でした。

ところで、この紫禁城の最長の支配者だったのが乾隆帝でした。
ここも重要です。乾隆帝は在位と退位した後の太上皇帝だった時期を合わせると、実に64年間に渡って、中華帝国の主人でしたが、これは中国皇帝として最長の支配期間となり、その間、乾隆帝は10数回の遠征に成功し、最大の版図を築き上げました。

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なまぐさ坊主の聖地巡礼 世界史のミラクルワードルー十全老人・乾隆帝 (fc2.com)

実はこれがシューがイメージする中華帝国の版図です。
いうまでもなく台湾は領土、東南アジアと朝鮮半島全域と沖縄は朝貢国です。
日本とインドはそのどちらでもありません。

さて、習が自分を何になぞらえているのか見えてきましたね。
なぜこのようなものをトランプ「王」にみせたのかはお分かりですね。
自分は中国皇帝、それも乾隆帝であるという示威です。

シューが考える中華帝国と、自由主義陣営とは根本的に相いれません。
中華帝国が考える「法」は、上位者が下位の人民を縛るためのものにすぎません。
上位者、そのトップである支配者の中の支配者であるシューを縛るものはありません。
中華帝国とは、極端な人治国家ですから、権力者が自在に解釈を変更することが可能です。

一方、同じ「法」という言葉を使っていても、自由主義陣営においては「法の支配」(rule of law )を意味します。
「法」が国際的な秩序を定め、様々な取り決めを互いに遵守することが自由主義貿易に参加できる資格でした。
これが法治主義です。

世界で唯一の人治主義の理解者はロシアです。
プーだけが人間であり、その他は農奴でしかありません。
農奴に人権などはありませんから、ツァーリーの命令に従ってウクライナの戦場で生命を散らすのです。

 

 

2024年5月17日 (金)

NHKはただの金融ファンドなので「公共放送」の特権を剥奪すべきです

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何年か前にNHKの人件費だけで、海保全体の予算よりも多いとのコメントをいただいたので調べてみたことがあります。
現在は尖閣の緊張で増額されていますが、海保は2012年度は、全部の人件費、巡視艇からヘリなどの装備費を入れてたった1千732億円でした。
また海保の人員は1万2636人です。

一方、同年度のNHKの職員数は1万354人、人件費だけで1千819億円でした。わ、ははですな。
あってもなくてもいいようなコンテンツを垂れ流すNHKと、連日のように侵入する中国海警や違法漁船と危険を冒して取り締まりにあたっている海保の予算総額は、なんとNHKの人件費より少ないのです(号泣)。
そしてNHKの人件費は予算の3割にすぎません。

しかも職員数は民法の10倍の1万354人、平均給与は1千90万円、退職金は4千万円。うひゃー。
まさに電波貴族です。
しかもこの人件費1千万円超えの給与はNHK本体だけの話。

いくつあるのかわからないほど多数の子会社を持っています。

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くつざわ亮治(クツザワリョウジ) | 選挙ドットコム (go2senkyo.com)

たとえばNHKドラマの大部分を丸投げをしているのは、NHKエンタープライズ(NEP)です。
自社制作を増やせばいいだけですが、このような子会社を多数作るのは、余剰金のストックに使っているからです。

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NHKネット事業、財源議論スタート…「何をどう見るか自由に選べる」時代の公共放送・受信料のあり方とは : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

東経はNHKの余剰金についてこのように述べています。
NHKの『値下げ』と『2倍割増』受信料よりも事業支出が多い構造改革と放送法を考える…(神田敏晶) - エキスパート - Yahoo!ニュース

「2022年9月末時点のNHKの連結剰余金残高は5135億円に達する。
営利を目的としない特殊法人でこの数字というだけでも貯め込みすぎの観があるが、それより注視すべきは8674億円もの金融資産残高だ。剰余金残高の1.7倍近くに上る。
特別な事情で多額の資金流出があった年度を除けば、毎年1000億円を超える事業CF(キャッシュフロー)を生んできた。
そしてその半分強が設備投資などに回り、残りは余資となり国債など公共債での運用に回されてきた。その結果として積み上がったのが、7360億円もの有価証券である。
金融資産は総資産の6割を占めており、このほかに保有不動産の含み益が136億円ある。まるで資産運用をなりわいとしているファンドのようなバランスシートだ」
(神田敏晶 東経前掲)

そもそも、NHKは放送業界最大の自前の放送設備や番組制作のリソースを持っています。
そのうえに全国すべての県にまたがって、その県庁所在地の一等地に大きな自社ビルもあるわけです。
渋谷の放送センターなど、巨額の資金で建て替えるのだと。

なぜわざわざこの巨大な自社資産を使わないで、下請けのNEPに出す必要があるのでしょうか。
このNEPは大変な売り上げを上げている超優良企業です。NHKの名はかぶっていますが、ただの民間会社にすぎません。
このNEPも2015年度売り上げが544億3175万円で、その6割が番組制作費としてNHKから支払われています。
このようなNEPに渡った番組制作費用が正しく使われたか否かについて、国会は監査することができません。

なぜなら、NHK本体は「公共放送」ですから、国民の監査が可能ですが、NEPはただの民間企業ですので、監査の手が及ばないのです。
一般企業ならば一般株主の監査要求ができますが、なにぶん株主はNHKが独占しています。
つまり、NHKは経費の80.7%を占める番組制作・発送経費の多くを、監査不可能な民間会社に出しているのです。
これで「公共放送」とは、とんだ言い草ではありませんか。

 

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http://www.dempa-times.co.jp/housou/2017/0120-01.h...

つまり、NHKは自社内部に余剰金として毎年280億円もの金を溜め込み、そのうえに営利目的のNEPを作って、そこをもうひとつの「隠し田」にしています。
「隠し田」は領主からの年貢を避けるために農民が秘かに作った田んぼのことですが、NHKは領主である国の眼、つまりは監査から逃れるためにNEPのような「隠し田」を増やしていったのです。
またこのNEPはNHKの天下りが大半を占める意味でも、NHKにとって二重に美味しい「隠し田」なのです。

現在の放送業界は、視聴率最下位に転落したフジを見ればわかるように、制作コストの切り詰めから、さらに下請けの番組会社を圧迫することでコンテンツがいま以上に貧しくなるという悪循環に陥っています。
しかしこのNEPという番組制作会社のみは、バラ色の未来が拡がっています。

説明する必要もないでしょうが、親方NHKが税金まがいの視聴料徴集が可能で、それを気前よく下請けに丸投げしてくれるのですから、永久に鉄のお茶碗で飯がくえるからです。

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NHK

ちなみに、NEPはビデオやキャラクター商品の販売までやっていますから、「公共放送」が作ったコンテンツの二次利用で二度おいしい思いをすることすら可能です。
また、すこしでも儲けを増やそうとして韓国から格安の韓流ドラマを仕入れるという悪習を放送業界に取り入れたのも、このNEPでした。
2004年の『冬のソナタ』に始まり、わけのわからない朝鮮王朝ものをはやらせたのが、この「公共放送」の独占的下請けでした。

「公共放送」を自称するならば、日本の優秀な演出家や俳優を起用すべきなのに、このていたらくです。
フジはこれを模倣したあげく、ドラマ制作力を喪失して今の体たらくとなったのはご存じのとおりです。

NEPはこの版権を親会社NHKに独占的に売り込み、そこでもまた膨大な収益を得ました。
このような下請けは13社にも登り、その中にはNHKアイテックという発送設備整備会社まで含まれています。

NHKアイテック - Wikipedia

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ここも余剰金を154億円積み上げていています。
この会社の腐敗ぶりもなかなかで、2人で2億(!)という巨額着服事件まで発生しています。
それにしても作るのは子会社、電波を発送し、保守点検するのも子会社、では親会社は一体なにをする所なのでしょうか。

NHKは「公共放送」であるが故に、格安の価格で電波帯を多数押さえ、視聴料を強制的に徴集する権利を得ています。
テレビ局が支払っている電波利用料は、携帯電話会社の実に13分の1という破格な価格に据え置かれているのも、この「公共性」が認められているからです。Photo_6

 

しかし「公共性」の内実はご覧のとおりです。
会計検査院は2015年度のNHKに対する監査で、NEPのようなNHK子会社13社の利益剰余金総額を948億円あるとし、NHKに対してこの剰余金の性格を明瞭にすべきであるとの監査報告を出しています。
NHKが既に健全な「公共放送」としての性格を逸脱し、ただの官許独占企業、あるいは金融ファンドになっています。
そしてさらに貪欲にPCにまで受信料という税金をかけようとしているのですから、たまったもんじゃありません。
いまやNHKの実体は、ただの金融ファンドなので「公共放送」の特権を剥奪すべきです。

NHKは大正時代に作られ、放送法も70年間改正されないまま放置されています。

放送法
第1条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
1 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
2 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
3 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。
放送法 | e-Gov法令検索

読めばお分かりのように、「放送が国民に最大限普及することを保障する」なんて時代は半世紀前に終わっています。
つまり公共放送を作る目的は、放送が未発達だった時代に適合したものなのですから、いまや解散して当然です。
また「不偏不党」などと白々しいことを言われても困ります。
そして巨額の余剰資金の蓄積にもかかわらず、まったく視聴者に還元せず、私腹を肥やし続け、さらに貪ろうという根性。

つまりもうとっくにNHKは「公共の福祉」のための公共放送であることを止めたのです。
視聴料という「税金」を廃止し、一企業として電波帯の独占を排除し、あたりまえの競争にさらして余剰金を吐き出させ、普通の放送局として出直す時期です。

2024年5月16日 (木)

ワニの口論の破綻

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財務省には世界でも稀な奇習があって、国債を60年で償還するべしという自主ルールを作っています。
この償還のためだけに「債務償還費」として一般会計のなんと17.5%も使っています。
財務省の広報紙である日経はこんなことを書いています。

「財務省が2023年度予算案をもとに歳出や歳入の見通しを推計する「後年度影響試算」が17日分かった。国債の元利払いに充てる国債費は26年度に29.8兆円と、23年度予算案から4.5兆円ほど膨らむ。足元の長期金利を加味し利払い費の見積もりに使う10年債の想定金利を1.6%と前回試算から引き上げた」
(日経2023年1月17日)
国債費、26年度に4.5兆円増 財務省が想定金利1.6%に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「防衛費増額の財源を巡る自民党の特命委員会が16日に始まった。歳出改革や税外収入など増税以外の財源を模索する。国債の「60年償還ルール」見直しで財源を捻出すべきだとの案も浮上する。償還期間を延長・廃止しても、浮いた国債費を防衛費に使えば借金は膨らむ。借金返済の担保が消えれば、市場の信認を失う恐れもある」
(日経2023年1月16日)
防衛財源確保、「国債60年償還」延長論も 自民が本格議論: 日本経済新聞 (nikkei.com)

ふーん、「国債の償還ルールを守らねば、借金は膨らむ」ですか。
想定金利も1.6% だそうで、なにが根拠かしりませんが、目一杯上振れしています。
ここで日経が「4.5兆円膨らむ」と書いているのは、財務省が債務償還費まで含んで計算しているからです。
この債務償還費は、ただ積んでおくだけの予算で、なににも使い道がありません。
もちろん例によって、これも法律の定めでもなければ、論理的根拠も怪しいもので、勝手に財務省が前例踏襲しているだけの因習にすぎません。
これができたのは日露戦争の頃のことで、当時戦費が枯渇していた日本が、国債市場で国債の信任をとりつけるために作った苦肉の策だったのが始まりです。
そんなものを1世紀も後生大事に持っている財務省はなんと物持ちがいいんでしょうか。

「国債は10年などの満期が来ると、返済する必要があるが、一度に現金で償還することは難しい。このため、大部分は借換債と呼ばれる国債を出して借り換えた上で、毎年の現金償還を国債残高の約60分の1(1・6%)とするのが「60年償還ルール」だ。1966年度に建設国債の発行開始と同時に始まった日本の減債制度で、道路などの平均的な耐用年数から60年とした。戦後の日本の財政制度の根幹をなすルールだ」
(朝日2023年1月11日
国債の返済ルール見直し検討へ 防衛費の財源確保狙い、財務省は警戒 [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

この60年償還ルールという奇習に、日本で最初に気がついたのはエコノミストの会田卓司氏(クレディ・アグリコル証券チーフエコノミスト) でした。
21世紀政策研究所より政策提言報告書「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換 

この中で会田氏は、1990年以降、一般会計の歳入と歳出のギャップが拡大しているという財政危機を語る人が必ず使う図を引き合いにだして説明しています。
下のグラフだけ見ていると、財務省 の言うように収入と支出の差がどんどん開いているように見えてしまいます。
この開いた口が歳入と歳出のギャップで、俗に「ワニの口」と呼ばれているものです。
なんだか日本がワニに呑み込まれそうでコワイですね。

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岡三証券 

さて、ここで会田氏が指摘しているのは、こんな「ワニの口」ができる原因についてです。
会田氏はこれが日本の財政運営における「60年償還ルール」にあると喝破しました。
実は、日本の予算(一般会計歳出)には国債の償還費が含まれているのです。
なんと日本は、現在の負債を60年後までに完済することができるようにせっせと毎年国債の元本を積み立てています。

ヘンな話です。60年というのは減価償却の発想から生まれています。
減価償却年数を定めで、積み立てていくわけです。
まるでサラリーマンの住宅ローンみたいな発想です。
しかしよく考えて見てください、庶民は60年後には死んだりリタイアするかもしれませんが、国家はなくなりません(あたりまえだ)。
だから国家が発行する国債は、60年たったら借り換えして先延ばしていけばいいのです。
世界中の国はそうやっています。

しかし日本だけは頑固にこの奇習を守ってきました。
するとこういう項目が予算に堂々と記されることになります。
右が米国の予算ですが、左の日本の予算のように「債務償還費」などという項目はありません。
これが世界ひろしといえど、日本にだけしかない「60年償還ルール」です。

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岡三証券


「日本政府は国債残高の数%を毎年償還(形式上は返済)してほぼ同額を国債発行(形式上は借入)によって賄う--つまりは債務の借り換えを行っています.どうせ借り換えをしている,さらに別に満期がきたわけではないのだなら借換をする必要もないのに,償還の部分は歳出(=出費)扱いをして,一方の借り換えの部分は歳入(=収入)として取り扱わない.この不可思議な慣習が生んだのが「ワニの口」なのです.
ちなみに米国の予算ではこのような不思議な取り扱いは行われません.景気過熱を防ぐために積極的に債務償還が必要……といった場合以外では歳出として扱われるのは利払い部分のみです.つまりは下図の赤色部分だけ日本の一般会計歳出は「盛られ」ている」
(飯田泰之2022年6月3日 )

ですから、このおかしな積み立てを止めれば、歳入と歳出のバランスは至って健全なものに変わります。
グローバルスタンダードにしてみるとこうなります。

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岡三証券

あら、不思議。ワニの口などどこかに消えてしまいました。
あるていどの経済成長がされれば、歳入と歳出の差は縮まっていくもので、コロナで大盤振る舞いした米国ですら景気がよいので財政環境は持ち直しています。

だからこの不思議な「60年償還ルール」をやめれば、1兆円など簡単にでてきます。

飯田氏はいみじくもこう述べています。

「ここからも,そもそもこれらのルールは「何か論理的な意味があって存在する」わけではなく,「なんとなくそれっぽい数字を並べて権威付けしているだけ」というのがわかります.
 財政関連ってこの手の「無駄な作法」がやたら多いんです.例えば,徳川幕府では会計を米方(米の収支)と金方(金銀の収支)にわけていましたが,両者の間には謎の繰り入れルールが入り乱れ・・・。
この手の「お作法」って何のためにあるのか.正直,ルールを複雑化して政治家(江戸期なら将軍・老中)が官僚の仕事に口出しできないようにするために存在するんじゃないかしら.いわば実務官僚の「お仕事の知恵」「処世術」と言ってよいのかもしれない」
(飯田前掲)

まったくそのとおりです。
岸田氏の防衛増税論は不毛そのものでしたが、こういう財務省の因習が分かったのだけは、よかったかもしれません。
財務省はたかだか1兆円を騒ぎ立てたために、とんだ藪蛇でした。


2024年5月15日 (水)

恒久財源だってさ

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岸田さんは深~く財務省の洗脳を受けておられる方です。
親族には財務省関係ばかり、鈴木財務大臣も親戚です。
あまり頻繁に増税をいいすぎたために、とうとう「増税めがね」という愛称までつけられてしまい、以来、増税という知恵の足りない表現から社会保障の負担を増やしていくというやり方に変更しました。
昨今でいえば、「子供・子育て支援」という名目で「ステルス増税」したことなど典型です。

え、増税じゃないって。いえいえ、誰でもウーもスーもなく払わねばならない医療保険の負担を増やすのですから、言い方が違うだけで実質増税とかわりありません。

「政府は公的医療保険制度を活用することを決めた。理由について、もっとも幅広い世代の人が保険料を支払っていること、少子化や人口減少に歯止めをかけることができれば、社会保障に関わる制度全体の持続可能性も高まること、企業も負担することを挙げる。
つまり社会全体で子どもや子育てを支えようということだ。
加入者1人あたり平均月350円~600円。
子どもなど扶養されている人を除いた「被保険者」で試算すると最も高い場合は950円。
少子化対策の一環として、政府が公的医療保険を通じて集める「子ども・子育て支援金制度」」
(NHK2024年3月29日)
「子ども・子育て支援金」であなたの負担はどうなる? 加入者1人平均月350円~600円 被保険者 最高950円 | NHK政治マガジン

じゃあどれだけ足りないんだといえば、わずかなもんです。

「「子ども・子育て支援金制度」は2026年度から始まり、初年度は6000億円、2027年度は8000億円、2028年度以降は1兆円が徴収される予定だ」
(NHK前掲)

たった1兆円など、税収の上ぶれで吸収できてしまうような額です。
「防衛増税」の時も同じでした。
防衛費を増やすというのはいいのですが、その手段となるとパブロフの犬よろしくすぐに「広く国民にご負担を」、つまり増税となります。

財務省はなんと税収はゼロ成長を前提にしているのです。
日本経済はゼッタイに成長しない、しないといったらしない、なぜなら財務省が成長しそうになると潰すからだ、ということのようです。
いつも景気が回復しそうになると消費増税をしかけて成長の芽をつぶしてきていたのでヘンだとは思っていたのです。
案の定、彼らには彼らしか通用しないロジックがありました。それが「税収弾性値が1.1」ということでした。
税収弾性値とは、「名目GDPが増えた時に税収がどの程度増えるか」という予測値のことですから、財務省の1.1とはゼロ成長で経済を考えていたわけです。

経済を回復させれば税収が増える、という子供にも分かるこの理屈が、東大法学部出身のエリート官僚の皆さんには理解できないようです。
彼らは経済はずっとデフレでけっこうと思っていますから、景気をよくする、雇用を増大させる、収入を増やして個人消費を伸ばすという平々凡々たる経済の道筋が見えません。
仮に景気が上振れして税収が伸びたとしても、そんなことは一時的なこと、税率を高く設定せねば財政は健全化しないぞ、だから税率を高くせねばならないのだ、ありとあらゆる機会を逃さずに増税を、くらいに盲進しています。
与野党を問わず、議員の大半もこの信徒だから困ったもんです。
これが、昨今首相がよく口にする「恒久的財源」論です。

もちろん現実には、税収の伸びが1.1なんてことはありえません。
下図は90年代後半に消費税増税をして以後の、過去15年間の一般会計税収ですが、名目GDPが増えれば税収は1.1どころか3倍ちかくに増大することがわかっています。

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一般会計税収の推移

ですから経済に冷や水を掛けなければ、1兆円ていどの税収不足など軽く自然の税収増だけで得られてしまいます。
2021年度の一般会計決算概要によると、国の税収は67兆378億8500万円と過去最高だった20年度の税収(60兆8216億400万円)を更新しました。
しかもこのコロナ不況の真っ最中で個人消費がメタメタであったにもかかわらず、予想を3.1兆円も上回りました。しかも2年連続です。

普通に考えれば景気が回復すれば税収は今回の3.1兆円上振れしたようなことが起きるはずですが、彼らの税収弾性値では1.1しか成長しないはずなので、常に財政危機なのです。
経済学者の飯田泰之氏が言っていますが、「何か論理的な意味があって存在するわけではなく、なんとなくそれっぽい数字を並べて権威付けしているだけ」のこけ脅かしにすぎません。

岸田氏は政権の人気浮揚に腐心しているようですが、これも簡単。
オレは増税はしないと言い切ればいいだけです。
もちろんモロモロの負担増もなしでね。

2024年5月14日 (火)

NHK「国の借金論」をまた蒸し返す

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今、6月のいわゆる骨太の方針を巡って追い込みの時期に入っています。
こういう時期にかならず出てくるのが、「基礎的財政収支の(プライマリーバランス)の黒字化の時期」です。

「財務大臣の諮問機関が、政府がまとめることしの「骨太の方針」に向けた議論を始め、焦点となる財政健全化の目標をめぐり、財政の現状などについて意見を交わしました。
財務大臣の諮問機関、財政制度等審議会は、政府が例年、夏までに「骨太の方針」をまとめるのを前に提言を提出していて、5日、ことしの提言に向けた議論を始めました。
会議では、政府が2025年度の黒字化を目指す「基礎的財政収支」という指標について、ことし1月に行った試算では、高めの経済成長を想定した場合でも、2025年度には1兆1000億円程度の赤字が見込まれることが説明されました」
(NHK2024年3月5日)
財政審「骨太の方針」ことしの提言に向けた議論を開始 | NHK | 財務省

この中で死滅したとばかり思っていた「国の借金」論を、NHKがまたもや蒸し返しています。
たぶんこういうことを言う委員が、かなりの数いるということです。

「国債や借入金などをあわせた政府の債務、いわゆる“国の借金”は、ことし3月末の時点で1297兆円余りと過去最大を更新し、財政状況は一段と厳しくなっています。
財務省によりますと、国債と借入金、それに政府短期証券をあわせた政府の債務、いわゆる“国の借金”はことし3月末の時点で1297兆1615億円と8年連続で過去最大を更新しました。
去年3月末と比べた1年間の増加額は26兆6625億円となり、財政状況は一段と厳しくなっています。
昨年度は防衛費や社会保障費が増えたことに加え、ガソリン補助金や低所得者世帯への給付金など、物価高対策を盛り込んだ13兆円を超える補正予算を編成した結果、国債の発行が積み重なりました」
(NHK2024年5月10日 )
“国の借金” 1297兆円余 8年連続で過去最大を更新 財政厳しく | NHK | 財務省

へぇー、今どき「国の借金」だなんて堂々と言うとはやるな、NHK。
もちろん冒頭から間違っています。
政府債務は「国の借金」ではありません。
そして「借金」という一般家庭の財布と、「国の借金」を意図的に混同して使うという初歩的誤謬をしています。

では、「国の借金」とはなんでしょうか。
一般家庭には債権を発効できませんが、国家は国債を発効する権限を持っています。
ここが一般家庭の家計と国の財務を一緒にしてはならないポイントです。

しかも日本国債はすべて内国債といって、すべて自国通貨建て(円建て)です。
国債が日本で破綻するとすれば以下の条件が揃った時です。

●国債が破綻する原因
①国内投資家が国債を買わなくなること。
②外国投資家が国債を買わなくなること。
③中央銀行(日銀)が国債を買わなくなること。

では、国債の保有者はだれなのでしょうか。
この「国の借金」論の出元である財務省自身がこんなグラフを出しています。

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saimu2023-1-3.pdf (mof.go.jp)

●国債引き受け主体
・中央銀行(日銀)   ・・・47.90%
・保険・年金基金    ・・・19.06%
・預金取扱機関(市中銀行)・・10.92%
・社会保障基金     ・・・4.50%
・海外         ・・・13.51%

国民が「預金取扱機関」(市中銀行)に預けた資金を日銀に預け、そこから日銀は国債を買っています。
つまり一般国民が国債を買っているということです。
海外は13.51%しかないうえに、円建てですので怖くありません。
したがって、日本国債は世界でも稀なくらいにデフォルトする確率が低い国債なのです。

え、国債が満期になったらどうするのか、って。
国には寿命がありませんから、借り換えればよいだけです。

日本国債は絶対に破綻しませんから、ナニかあるごとに財政負担がぁ増えてぇ、国の赤字を先の世代に残してはならないぃなどと言う増税派には警戒のほどを。
こういう人たちは国の借金を返すために政府は無駄遣いをやめ清く正しく緊縮せねばならない、それでも足りないから恒久的財源確保のために増税やむなしという議論に誘導したがります。

自国建て国債でデフォールトした国は、世界広しといえどありません。
破綻するのは、常に自国建てができない経済しか持たない国です。
なによりも一目瞭然なのは、現在の国債の利回りは10年債で0.28%、20年債でようやく1%をわずかに超えて1.103%、最も長い40年債ですら1.564%に過ぎないことを見れば、理解できるはずです。
ちなみに、下図はちょっと古い2018年のものですが、ブラジルは10%超え、米国ですら2.9%です。
日本は金利0.062%ですから、まちがいなく世界一の低利の国債でしょう。
金利が高い国の国債はリスキーだからです。

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No.3793 世界各国の10年国債利回りです… - シャープ1億にモノ申す部屋 - FX、為替掲示板 - Yahoo!ファイナンス掲示板

かつてカンという無知な男が、財務省からギリシアになるぞと脅かされたという話がありましたが、そんなことにはなりようがありません。
ちなみに民主党政権がやったことは、財務省のレクチャーどおりに事業仕分けという名の歳出カット祭りと、東日本大震災の復興財源と称しての復興増税でした。
消費増税も民主党時代の悪しき遺産です。
ホント、民主党ほど財務省にいいなりの党はなかったのですが、みなさんもうお忘れか。

国債依存になるとハイパーインフレになるということが言われましたが、なりません。
いまの日本のインフレは、欧米のそれと較べようがないほど微弱なインフレにすぎません。

今、日本の円安インフレは日米の金利差から生じているもので、際限なく亢進するものではありません。
そんなことになれば、日本の主力製造業は世界のシェアを奪い尽くしてしまいます。
原油高による電力価格の上昇は避けられませんが、なんの原発を少し余分に動かせばいいだけの話です。


 


2024年5月13日 (月)

自衛艦、白昼堂々と中国にドローン撮影されてしまう

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横須賀軍港に停泊中の自衛艦「いずも」が、中国人にドローンで上空から撮影されていたというので大騒ぎになっています。

「防衛省は9日、中国の動画サイトに投稿された、海上自衛隊の基地で護衛艦ドローンで撮影したとされる動画について、「実際に撮影された可能性が高い」とする分析結果を公表した。
問題の動画は、法律でドローンの飛行が原則禁止されている横須賀基地で、停泊中の護衛艦「いずも」をドローンで撮影したとされ、SNS上で拡散された結果、日本の安全保障への懸念の声が上がっていた。
防衛省はこの動画について様々な分析を進めた結果、「実際に撮影された可能性が高い」との見解を公表し、「防衛関係施設に対してドローンにより危害が加えられた場合、我が国の防衛に重大な支障を生じかねないことから、分析結果を極めて深刻に受け止めている」との認識を示した」
(FNN5月9日)
【速報】海自護衛艦「いずも」ドローン動画「実際に撮影された可能性が高い」防衛省が分析結果を公表 再発防止へ対策(FNNプライムオンライン(フジテレビ系)) - Yahoo!ニュース

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FNN

撮った人物は中国人で、堂々とインタビューに答えています。

「10日までにSNSを通じた取材に対して、ドローンを飛ばして撮影したことを明らかにし、「注目を集めるために動画を投稿した。(基地周辺での無許可のドローン飛行が)禁止されているのは知っていたが、楽しむために危険を冒した」と釈明した。
撮影の際には「妨害を受けなかった」と主張し、撮影日時やドローンの発着場所については「詳細は明かせない」と回答した」
(ZAKZAK5月11日)
「注目集めるため」海自護衛艦「いずも」ドローン投稿者のあきれた釈明 撮影後は中国滞在 身の危険を感じ「もう二度としない」 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

この人物はすでに日本を出て中国にいるそうです。
その筋の人物かどうかは不明ですが、じぶんの国で同じことをしたらその場で撃ち殺されます。
まぁ「その筋」ならSNSには流さんだろうけどね。

伊藤俊幸元海将が言っていましたが、これが今ウクライナで頻繁に使われている自爆型ドローンだったら、「いずも」の甲板に大穴を開けられていたところです。
電子装置類によっては代替が効かないものもありますから、海自さんのどかな顔をしないで下さいね。

たとえ偵察だとしても、自衛艦隊の軍港を見れたということは、その隣の米海軍第7艦隊軍港も撮影可能だったということですから、米国は冷やかに日本を見ることでしょう。
日米同盟の弱点は、自衛隊の装備や練度ではなく、セキュリティクリアランスやこういうドローン対策ができていないような機密保持の甘さなのです。
とまれ、これで東アジアで西側最重要の軍事拠点を自由に中国がドローン撮影できるということを、世界に知らしめてしまいました。
ため息が出ます。

伊藤氏は元呉地方総監らしく、なぜ「いずも」が直ちに報告を上げて来ないのか、SNSに上がってから事後報告することを嘆いていました。
というのは、「いずも」は当然のこととして当直士官以下の乗員が、このドローンを目撃しているはずですから、これを脅威だと考えないほうが鈍いのです。

といっても、自衛艦側がナニをできるというわけでもないのが日本の実態です。
いちおう「小型無人機等飛行禁止法」という法律はあります。
小型無人機等飛行禁止法関係|警察庁Webサイト (npa.go.jp)

いちおうドローンを飛ばしてはならない地域も指定してあります。

●小型無人機等禁止法に基づき指定する施設
・国の重要な施設等、国会議事堂、内閣総理大臣官邸、最高裁判所、皇居等危機管理行政機関の庁舎
・対象政党事務所
・対象外国公館等
・対象防衛関係施設(令和元年改正で追加)

・対象空港(令和2年改正で追加)
・対象原子力事業所

総理大臣官邸はかつて屋上に降りられたことがありました。
軍事施設はもちろんアウトです。
ただし、これは絵に描いた餅です。なぜなら、罰則既定があるだけだからです。

小型無人機等飛行禁止法第11条第1項に基づく警察官の命令に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金 に処せられます。

はいはい、これではなにも言ったことにはなりません。
この法律には、重要禁止区域に侵入したドローンを落せとは書いてないからです。
もちろん法律に、日々進化するドローンとその対処の技術的なことを書く必要はありませんが、撃墜することを視野に入れた条項でなくては抑止効果はゼロです。
だって、この中国人のように見つからなければいいだけだと思う奴は後を断たないでしょうからね。

では、落す方法はあるのでしょうか。
先日ニュースでお巡りさんが昆虫採集の網持って右往左往していましたが、論外です。
軍事施設だからといって、住宅地の近くにあるのですから銃で撃つわけにはいきません。
発見すると言っても艦載レーダーは近隣の施設や住宅地に電波障害を引き起こすのでダメだそうです。
人の目にはかぎりがあります。

しかし大丈夫。
東芝のHPには、このようなものをランンアップしています。

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対ドローン セキュリティシステム | 電波システム | 東芝インフラシステムズ (global.toshiba)

なぁーんだ、あるではないですか。
防衛施設用のシステムも開発済みのようです。
防衛施設向け運用例 | 電波システム | 東芝インフラシステムズ (global.toshiba)

ちなみに三菱電気にも似たシステムがあります。
防衛省の担当官は、明日にでも東芝に飛んで行きなさい。
法整備も急ぐことです。

2024年5月12日 (日)

日曜写真館 おのが名を偽らず咲き鉄線花

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つつましき夏のはじめや鉄線花 森澄雄

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鉄線の花の平らに空広し 高浜年尾

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音を立てさうな紫鉄線花 後藤比奈夫

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刷く闇の水のごとくに白鉄線 山口青邨

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狂ひ咲く鉄線高さ失はず 上田五千石

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鉄線のむらさき深き母情かな 前田鶴子

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花びらにアテネをのせて鉄線花 平井照敏 

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すつきりと紫張りて鉄線花 池田やす子

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鉄線の花の重さを見せぬ蔓 稲畑汀子

 

2024年5月11日 (土)

全米大学の反イスラエルデモの真の標的は民主党大会だ

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やっぱり目標はここだったのね、というところです。
反イスラエルデモの最終標的は民主党党大会です。
去年から各地で開かれている大統領候補を決定する民主党大会が、親パレスチナ派に占拠されていました。
なぜかうれしげに伝える毎日から。

「ママ、党大会がパレスチナ支持者たちに乗っ取られた! 今から避難する」
 こんなメッセージが高校生の娘から届いたのは11月18日のこと。この日は年に1度のカリフォルニア民主党大会が開かれており、娘は州議会議員の夫と参加していました。
 このとき撮影された動画を見ると、「即時停戦」「ストップ! ジェノサイド」などと繰り返しながら若者たちが警備を突破し、党大会中の会場になだれ込みました。何百人もの若者たちの姿が確認できます。米国では反ユダヤ的とみなされる親パレスチナ運動のスローガン「川から海までパレスチナに自由を」も時折、聞こえていました。議場でも抗議活動は続き、ほどなくして党大会は中止となりました。
 ユダヤ系議員連盟はこの抗議活動を「乗っ取り」「反イスラエル」と非難し、党本部長も処罰を要求しています。しかし当の若者らは非暴力の抗議だったと訴え、毅然(きぜん)とした態度を崩しません」
(毎日2023年12月8日)
米国動揺 若者の叫びは「イスラエル寄りの国」を変えるか | 米国社会のリアル | 樋口博子 | 毎日新聞「経済プレミア」 (mainichi.jp)

毎日はわかって書いていないようですが「川から海までパレスチナに自由を」“From the river to the sea, Palestine will be free.”は親パレスチナのスローガンなどといった可愛いものではなく、パレスチナ極左過激派のスローガンそのものです。
元来PLOが作ったスローガンで、ハマスも使っています。
「川」はヨルダン側を表し、「海」は地中海のことで、昨日のイスラエルの地図を見ていただければ分かるように、イスラエルを完全否認し、ユダヤ人を海に追い落して「パレスチナ国家」を作れと言っているわけです。
「非暴力の抗議」どころか、ユダヤ人は死ねと言っているわけで、暴力的スローガンもいいところです。
ヨーロッパではこんなスローガンを口にしただけで起訴対象となります。
現に、ドイツではこのスローガンは禁止され、ベルリンの学校では米国学生が着けていたシュマグやクーフィーヤの学校での着用すら禁じられています。


去年のうちからこういう過激なスローガンを「毅然と」叫んでいれば、当然行動も過激化していくのが道理です。
全国の大学に拡大した今年はアラブ風シュマグで覆面して大学のホールを占拠し、警官隊と衝突を繰り返しすまでにエスカレートしています。
発端となったコロンビア大学の親パレスチナ派のデモの様子です。
もうハマスが米国でデモをしているような有り様です。

「パレスチナを解放せよ」、「反イスラエル闘争を世界へ」
学生らが連呼し、パレスチナの旗を振る。首には「ケフィエ」と呼ばれる網目模様のスカーフ。団結の象徴だ。おびただしい数の警官。上空を舞うヘリ。4月下旬、米ニューヨーク市のコロンビア大前は緊張した空気に包まれた」
(日経5月9日)
米大学デモの危うい正義 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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1968年民主党大会の亡霊なのか…米国の学生「抗議運動」 宮家邦彦 宮家邦彦のWorld Watch - 産経ニュース (sankei.com)

いまや彼らが狙っているのは米民主党大会への突入です。
そして狙いは、1968年に起きた「シカゴ事件」の再来です。
ではシカゴ事件とはどんなものだったのでしょうか。
映画にもなっていますし、ロックバンド「シカゴ」のファーストアルバムにはそのデモの音声がクリップされています。

「大統領選挙を控えた、1968年8月、民主党全国大会がシカゴで開催された。 当時ベトナム戦争に反対する活動が高まっており、何千もの人々がデモや集会を繰り返しおこなっていた。 8月28日、グランドパークで行われた集会で、警察と暴徒化した群衆が衝突し双方に多数の負傷者を出した」
シカゴ・セブン - Wikipedia 

今回、反イスラエル派がコロンビア大学のハミルトン・ホールがいち早く占拠してシンボル化したのは、68年のシカゴ事件へのよく言ってやればオマージュ、はっきり言ってパクリです。
68年当時は選抜徴兵制でしたので、ベトナム戦争に対しての反戦運動はそれなりの重みを持っていました。
当時の大統領ジョンソンは民主党で、11月の大統領選で民主党の候補指名が確実視されていましたが、炎上する反戦運動を鎮静化できずに立候補の辞退に追い込まれます。
代わってリベラル派の切り札だったロバート・ケネディ上院議員が後継に有力視されましたが、暗殺されてしまい、不人気な副大統領ハンフリーが指名をうけます。
この11月の大統領候補指名の民主党全国大会も、大規模なデモ隊と警官隊の間で流血の惨事になっています。

こういった暴動まがいの大規模デモから、爆弾闘争をするウェザーマンや、黒人運動極左のブラックパンサーが生まれます。
今回もその残党たちが学生を指導しているのが報じられています。

大学キャンパスでの最近の親パレスチナ抗議行動の波は突然やってきて、全国の人々に衝撃を与えた。しかし、いくつかのデモの根底にある政治的戦術は、長年の活動家や左翼グループによる何ヶ月にもわたる訓練、計画、奨励の結果でした」
Students Trained for Pro-Palestinian Protests With Veteran Activists for Months - WSJ

結局、トンビが油揚げをさらうようにして共和党のニクソンが大統領に当選してしまいます。
国民は連日の流血にうんざりして、ニクソンの掲げる「法と秩序」を支持したのです。
ね、なにやらそっくりな構図ですね。

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キャンパスはジョー・バイデンのために来ています (economist.com)

今回は3万といわれる反イスラエル学生がバイデンのイスラエル支援策を糺弾して集結し、民主党大会に突入します。
バイデンが頼れるものは警官隊しかありません。
まさに第2のシカゴ事件です。
極左の民主党議員も内部から呼応し、バイデンの候補辞退を迫ります。
そして民主党左派は、意気軒昂な副大統領カマラ・ハリスを代表に押し立てます。

つまり民主党の左派による支配です。
とまぁ、これが民主党左派の思惑だと見て、そうはずれていないはずです。
ただし、左派の思惑どおりになるかどうかはわかりませんが。

ニクソン役を割り当てられそうなトランプは笑いが止まらないでしょうが。

 

※写真 珍客のゴイサギです。

 

2024年5月10日 (金)

「パレスチナ国家」が難しい理由

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パレスチナ国家承認問題は、イスラエルの喉に引っかかった小骨のような存在です。
先月、パレスチナ自治政府が再び国連に承認問題を持ち出しました。

「パレスチナ自治政府は2日、2011年に行った国連への正式加盟申請の再検討を要請した。パレスチナは12年に国連から非加盟オブザーバー国家の資格を付与され、事実上国家として承認されている。
正式加盟には安全保障理事会での申請承認を経た後に国連総会で加盟国193カ国の少なくとも3分の2の賛成が必要となる」
(ロイター4月4日)
パレスチナ国家承認は国連でなく当事者間の協議で、米が見解 | ロイター (reuters.com)

「オブザーバー国家」とは国連などの国際機関や国際会議で、正式な加盟国や参加国以外に、一定の参加資格を与えられた国のことです。
ロイターは「事実上の国家」というい言い方をしていますが、正確ではありません。
会議に出席して提案したりはできますが、投票権はありませんから「半国家」あるいは「みなし国家」です。

このみなし国家をホンモノの国家待遇に格上げしてほしいというのが、自治政府の要求です。
米国民主党政権としては、かつてオスロ合意を作った後継政権として、本心は国家承認に踏み込みたいのでしょうね。

オスロ合意は、1993年8月20日、クリントン民主党政権が仲立ちして、イスラエルのラビン労働党政権とアラファトPLOを握手させたものでした。

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 Wikipedia

これによっていまのパレスチナ暫定政府が成立し、イスラエルはガザから撤退します。

  1. イスラエルを国家として、PLOをパレスチナの自治政府として相互に承認する。
  2. イスラエルが占領した地域から暫定的に撤退し、5年にわたって自治政府による自治を認める。その5年の間に今後の詳細を協議する。
    オスロ合意 - Wikipedia

ただしこのパレスチナ暫定政府は、あくまでも「みなし国家」でした。
これを正式な国連の加盟国とすることで正式な国家待遇を与えよ、というのが自治政府の要求です。
ちなみに米国、EU、カナダ、日本など西側主要国は承認していません。
パレスチナ国 - Wikipedia

今回も米国はこれに対して、こんなことは国連で決めることではなく、当事国つまりイスラエルと相談してくれというい言い方で拒否しました。

「正式加盟には安全保障理事会での申請承認を経た後に国連総会で加盟国193カ国の少なくとも3分の2の賛成が必要となる。
米国務省のミラー報道官は、米国が安保理の拒否権を行使してパレスチナの加盟を阻止するかと問われ、「先のことを推測するつもりはない」としつつ、イスラエルへの安全保障を伴うパレスチナの独立国家樹立は「国連ではなく、当事者間の直接交渉によって行われるべきだ。われわれは現在これを追求している」と述べた」

(ロイター前掲)

当然といえば当然の対応です。
「パレスチナ」とひとくちで言っても、パレスチナ自治政府が実効支配できているのは、その「首都」が置かれているヨルダン川西岸のわずかであり、今紛争が起きているガザではハマスに奪取されていたからです。
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パレスチナ国 - Wikipedia     灰色の部分はパレスチナの統治外
「パレスチナ国は領有を主張する国土に16の県(ガザ地区に5、ヨルダン川西岸地区に11)を設置している。ただしイスラエルの実効支配下にある地域を含んでいるため、ヨルダン川西岸地区の県の多くの地域が統治下にはない」
パレスチナ国 - Wikipedia
「首都」の西岸地区だけでこの複雑さです。

西岸地区の総面積は5,660km²であり、以下に区分けされている。
A地区・・・パレスチナ政府が行政権など全てを握っている。面積は西岸地区のうち18%の約1,018km²である。
B地区・・・イスラエル軍警察権を握っているが行政権はまだパレスチナ政府にある。面積は西岸地区の21%の約1,188km²である。
C地区・・・イスラエル軍が行政権など全てを握っている。面積は西岸地区の61%で約3,452km²である。
また、西岸地区のイスラエル軍管轄地域はユダヤ・サマリア地区と言われている。
パレスチナ国 - Wikipedia

ガザは自治政府が「統治」していたといいますが、実態はハマスが実効支配していました。
だから去年10月のような残虐なテロが起きたのです。
ですからパレスチナ自治政府が純粋にみずから実効支配できたのは西岸地域のA地区18%だけにすぎません。
こんなていどの「統治」しかできない自治政府がいかに無力な存在かわかるでしょう。
これを「国家」承認しろというには無理がありすぎます。
A地区より大きなイスラエルが警察権や行政権を握るB地区、C地区 をどう扱うつもりなのでしょうか。
一方、ガザ地区のイスラエル軍の支配状況です。
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アメリカがイスラエルへの武器支援を保留:どうする!?ネタニヤフ首相 2024.5.9 – オリーブ山通信 (mtolive.net)
ハマスがいう恒久的平和とは、ガザのみならず西岸からもイスラエルに出て行けという意味ですが、そんなことを飲む道理がありません。
英国はこんな言い方をしています。


「昨年11月の外相就任後、4度目となる中東訪問を前にキャメロン氏は、中東での和平を促進するにはパレスチナ人に政治的地平を与える必要があると、与党・保守党の中東評議会 (CMEC)で述べた。
キャメロン氏はまた、イギリスにはパレスチナ国家がどのようなものかを示す責任があると語った。
そして、パレスチナの人々に対して「2国家解決」に向けた「不可逆的な進展」を示す必要があるとした」
(BBC1月31日)
英外相、パレスチナ国家の承認を「前倒しする用意」示唆 和平には「不可逆的進展」必要と - BBCニュース 

ナニを言いたいのかよくわかりませんが、英国としてはパレスチナ国家承認はやぶさかではないが、できる国家像がはっきりしないうちはねぇ、というところでしょうか。
西側主要国が及び腰なことには理由があります。
パレスチナを国家承認すれば、ネタニヤフのガザ侵攻は「武力による国境変更」に該当してしまうからです。
西側はイスラエルがこれほどまでにオーバーランしてしまうとは思わず、自衛権であると擁護して米国も武器援助をおこなったからです。
国家承認してしまえば、「パレスチナは国家ではないので武力による国境変更にはあたらない」という弁解ができなくなるのです。

パレスチナ国家の基本はパレスチナ自治政府となるのでしょうが、実効支配があまりに少なく、主体が腐りきって無能なアッバス政権では話にもなりません。
ブリンケンがいう「刷新された自治政府」といっても、その道筋が見えません。

というわけで、理念では「二国家共存」が正しいのは百もわかっていても実効はかぎりなく困難なのです。
ネタニヤフも、どうせ戦争が終われば自分は勝利した指導者どころか、ハマスの攻撃を予想した情報を握り潰して防がなかった罪と、無駄にガザ住民の流血を招いて世界から批判された罪によって辞任に追い込まれることくらいは覚悟しているでしょう。
だから彼が政権を握る以上、妥協はありえません。

このように見てくると、バイデンが気の毒な気がしないでもありません。
クリミアを含めて全土の奪還をめざすウクライナ、そして頑としてハマス討伐をに突き進むイスラエル。
共に最大に支援国でありながら、いやそれ故に難しい判断を強いられています。
ま、これも11月までの辛抱かもしれませんが。

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2024年5月 9日 (木)

ハマスはほんとうに停戦案を受諾したのか?

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ハマスが停戦案を受諾したというニュースが流れています。

「【5月7日 AFP】イスラム組織ハマス(Hamas)は6日、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)での7か月に及ぶイスラエルとの戦闘について、最高指導者イスマイル・ハニヤ(Ismail Haniyeh)氏が仲介役を務めるカタールとエジプトに対し、「両国の戦闘休止案に同意する」と伝えたと発表した。
 ハマスの発表を受け、ガザでは街頭に繰り出した人々が歓声を上げながら祝砲を放ち、喜びの涙を流す人や「アラーアクバル(Allahu Akbar、神は偉大なりの意)」と唱える人の姿も見られた。
ハマス幹部のハリル・ハイヤ(Khalil al-Hayya)氏は、カタールを拠点とする衛星テレビ局アルジャジーラの番組で、休戦案にはガザからのイスラエル軍の完全撤退、パレスチナ避難民の帰還、人質とイスラエル当局に拘束されているパレスチナ人の交換の3段階から成り、「恒久的な停戦」が目標だと説明した」
(AFP5月7日) 
ハマス、休戦案同意を発表 イスラエル側はなおラファ侵攻の構え 写真14枚 国際ニュース:AFPBB News

にもかかわらず、イスラエルはラファに侵攻するという姿勢をくずしていないと伝えています。
20240508-171241

「【5月1日 AFP】イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は4月30日、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)での戦闘休止合意の「有無にかかわらず」、同地区最南部ラファ(Rafah)への地上侵攻を開始すると表明した。首相府が明らかにした。
ネタニヤフ氏はイスラム組織ハマス(Hamas)に拘束されている人質の家族代表と面会し、「すべての目標を達成する前に戦争を中断するのは問題外だ。われわれは完全な勝利を達成するため、合意の有無にかかわらず、ラファに侵攻してハマスの大軍勢をせん滅する」と主張した」
(AFP5月1日)
休戦合意の「有無にかかわらず」ラファ侵攻 イスラエル首相 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

う~ん、このニュースだけ見るとやっぱりネタニヤフは交渉によらない解決、つまりは戦争で決着をつける気なんだということになってしまいますね。
果たしてそうなんでしょうか。
イスラエルタイムズは5月1日付けで、この「ハマス停戦案合意」についてのネタニヤフのコメントを載せています。
 (timesofisrael.com)

「ネタニヤフは、月曜日に、合意の条件は、イスラエルが数日前に承認したものから変更され、「軟化」され、受け入れられないものになったと述べたイスラエル当局者に同調し、ハマスの提案は「イスラエルの死活的な要求から非常にかけ離れている」と強調した」
(イスラエルタイムス前掲)

では、イスラエルがハマスが停戦提案を改竄しているとすればどこでしょう。
ハマスは、最新の人質取引の申し出を鼻であしらうと示唆するが、交渉は継続すると述べている |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

細かい点は多々ありますが、最大の相違点は人質解放についてです。

「イスラエルが提示した3段階の合意は、最初の42日間で、33人の生きている人質(全員が女性、子供、老人、病人)の解放を求めているが、ハマスは、生死を問わず33人の人質を解放すると述べた。
さらに、ハマスの提案は、第1段階の人質解放のタイミングを、3日ごとに3人の人質から7日ごとに3人の人質に変更している」
(イスラエルタイムス前掲)

・ハマスが受諾していると称している合意案・・・生死を問わず33人
・イスラエルの合意案                             ・・・生きている33人

これは大きい違いです。イスラエルが情勢、子供、老人を中心とする「生きている人質33人」なのに対して、ハマスは「生死を問わない33人」ですから、死体を送り返してくるつもりでしょう。
また人質解放の間隔ですが
・ハマス                 ・・・7日ごとに3人
・イスラエルの合意案・・・3日ごとに3人

ハマスは1週間ごとに3人とするとしていますから、全ての人質が解放されるまで実に77日間もかかることになります。

そして人質解放と同時にパレスチナ治安部隊の囚人を解放するわけですが、その人選に関してイスラエルは拒否権を持つとされていましたが、ハマスは拒否権をあたまから無視しています。
するとハマスは、最初の段階からもっとも危険なテロリスト(ハマスからすれば「英雄」)を釈放しようとするでしょう。
この人質交換のレートも、ハマスは勝手にハマスの都合よく囚人の数を引き上げています。

ガザ北部への帰還についても
・イスラエル合意案                ・・・保安検査を受けた者のみ通過
・ハマスが合意案と称するもの・・・一切の保安検査なく自由に帰還

またイスラエル軍の撤退についても大きな差があるようです。

とまれ、ハマスが狙っているのは、ラファスに残存しているといわれる6個大隊規模といわれるハマス戦闘部隊と指導者の温存です。
ハマスの部隊編成がどうなっているのかは不明ですが、常識的に見て1個大隊は約500人~600人ですから、3千人規模の戦闘員がラファに潜んでいると思われます。
おそらくハマスが狙っているのは、人質解放を2ヶ月以上に渡ってすることで、その間に人質交換で釈放された戦闘員で部隊補充し、中部と北部で部隊の再編をするとイスラエル軍は見ています。

人質解放は望ましいことであると同時に、大変に危険なことを伴います。
大量のパレスチナ側囚人を野に放つからです。

在イスラエルジャーナリスト石堂ゆみ氏はこう述べています。

「しかしながら、その一人が助かることが、非常に大きな問題となって戻ってくる可能性があるということをイスラエル政府、さらにはネタニヤフ首相個人は、はすでに痛いほど経験している。
かつて、イスラエルは、人質になっていた、イスラエル兵のシャリートさんを奪回するために、ハマスと交渉し、その代価として、パレスチナ人テロリストの囚人約1000人を釈放した。今、イスラエルが、探し出すのに苦戦しているガザのハマスの指導者ヤヒヤ・シンワルは、その釈放されたテロリストの中の一人である。
シンワル以外にも、多数のテロリストが、この1000人の中から出てきて、多くのイスラエル人をテロで殺害した。このシャリートさん救出の決断をしたのは、ネタニヤフ首相だった。人質の家族を思えば、本当に辛いが、これと同じことを、今、ネタニヤフ首相がするとは考えにくい」
イスラエル軍ラファへ進軍開始:人質家族たちが大規模デモ 2024.5.7 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

今、ハマスがやっているのは、交渉を長引かせて人道を名目とした国際世論戦を仕掛けることです。
ハマスの残虐非道な無差別テロを「抵抗」と言い換えることで合理化し、イスラエルの反撃のすべてを「ジェノサイド」と認識させようとしています。
このプロパガンダは西側メディアの協力により成功し、本来被害者だったイスラエルの侵略行為による民間人虐殺のように捉えられつつあります。

これはかつて北ベトナムが米国に仕掛けたプロパガンダによる世界的反戦運動の爆発とよく似ています。
結果、米国は民主主義国家最大の弱点である「人命と人権」カードを北ベトナムに握られてしまいました。
その結果、巨大な米国は戦闘で勝ち、戦争で負けたのです。
ハマスはこの北ベトナムの戦略を、よく研究していると思われます。

ただ相手が悪名などは苦にしないネタニヤフであることが最大の違いです。
イスラエルは交渉をしつつ軍事的な一手を打っています。

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イスラエル軍ラファへ進軍開始:人質家族たちが大規模デモ 2024.5.7 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

「イスラエル国防軍は、約100,000人のパレスチナ人にガザの東部地区から避難するよう促した翌日の火曜日に、ガザとエジプトの間のラファ国境検問所を占領した」
(イスラエルタイムス5月8日)
イスラエル国防軍の報道官、米国の武器輸出の停滞を軽視、意見の相違は非公開で解決したと発言 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com) 

 状況は混沌としています。

 

 

2024年5月 8日 (水)

「自由度ランキング」が下がった原因はメディア自身のせい

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日本の「報道自由度ランキング」なるものがさらに低下したようで、メディアは大喜びしているようです。
ランキングを作ったのは「国境なき記者団」(RSF)で、今年の日本の順位は70位。68位だった2023年と比べ、さらに2位下がりました。

このRSFのランキングはどうやって決定するのか、基準があきらかではないので、本来は勝手に言っていなていどのことです。
ただ想像はつきます。
RSFは「政治」の項目でこう述べています。

「2012年に国家主義的な右派勢力が権力を掌握以来、ジャーナリストたちからは、自分たちに対する不信感に加え、ときには敵意さえも漂っている全体的な風潮に不満を表明してきた。記者クラブ制度は既存の報道機関のみに対し、記者会見や高官へのアクセスを許可する仕組みで、記者を自己検閲に追い込み、独立系ジャーナリストや外国人ジャーナリストに対するあからさまな差別的取り扱いの温床となっている」
リーダーボード |RSFの

はい、「国家主義的右派勢力の権力掌握」ですか。
誰のことでしょうかね(笑)。RSFさんのお里が知れます。

特に論評しませんが、この人らがどういう政治的スタンスなのかよくわかります。
「角度をつけて」(←朝日用語)から日本の政治をご覧になっているようです。

実際には、日本平和学研究所が、安保審議を取り上げたNHKと民放計6局の報道番組(9月14~18日)に関する調査結果を見て下さい。
調査方法は、番組内の街頭インタビューやコメンテーターらの発言を、安保法制への「賛成」「反対」の2つに分類しました。
その結果はいささか衝撃的なものです。Photo_4


●安保法制についての放送時間割合
・テレビ朝日系「報道ステーション」(対象4651秒)・・・反対意見95%
・日本テレビ系「NEWS ZERO」(1259秒)      ・・・同90%
・TBS系「NEWS23」(4109秒)・        ・・・同90%
・フジテレビ系「あしたのニュース」(332秒)           ・・・同78%
・NHK「ニュースウオッチ9」(980秒)        ・・・同68%

な~んだ、テレビは反対派の意見しか報じていないじゃないですか。
当時のテレビだけを見ている人は、世の中全員がハンタイだと思ったでしょうね。
これだけ自由にモノが言えているのに、いまさら報道の自由がないはないもんです。

それはさておき、RSFは正しいことも言っています。
報道の自由がない原因がメディアの寡占状態にある、という指摘です。

「紙媒体の新聞は依然として主要な経営モデルであるが、この国では世界で最も高齢化が進んでおり、読者の減少によりその将来は不透明である。日本には新聞と放送グループの相互所有権を制限する規制がないため、極度のメディア集中と、時には記者数が2,000人を超えるかなりの規模のグループの成長につながっている」
(RSF前掲)

これはご指摘のとおりです。
日本のメディアはテレビ局が主体となって新聞社と組んだ巨大モンスターを作ってしまったために、独立系の媒体が伸びないという指摘は正確です。
その理由は、割り当てられる電波帯があまりに格安だからです。

話は飛ぶようですが、日本の携帯料金は世界でも高いので有名で、菅さんが首相時に引き下げを要求しました。

Photo_2OECD調査における携帯電話料金の国際比較(出典:OECD「Digital Economy Outlook 2015」)
https://www.icr.co.jp/newsletter/icte20150811-kubota.html

上図はOECD各国の料金です。日本は高い方から3番目に入っていますが、携帯会社の努力だけではナンともならない構造的問題があります。日本の電波は国(総務省)が割り当てをしているからです。
テレビ局や携帯各社は、その電波利用料を国に支払っているわけですが、その額には大きな差があるのです。 

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出典不明  

上のグラフは総務省のデータから作られたものですが、携帯各社で実に85.7%を負担していることに対して、テレビ局(放送事業者)はたった5.8%しか負担していません。 
この図より去年2013年度はさらに増えて、携帯各社の負担率は歳入額は約806億円のうち87%にも達しています。
おいおいです。携帯は85.7%で、テレビ屋はあんな巨大な所帯なのにわずか5.8%だそうです。
携帯会社が電波を支えているのに、はるかに裕福なテレビ屋は正当な電波使用料を払っていないのです。

もう少し具体的に電波料金を比較してみましょう。

●2013年度の携帯・PHS等の通信事業者8社の電波利用料支払総額・・・約700億円

一方テレビ局の電波使用料は

●2013年度のテレビ局放送事業者の電波使用料支払い総額
・NHKも含めた全国128局の電波使用料の総額・・・約56億6200万円  

 

Photo_8週刊ポストより

携帯会社は大手のドコモだけで電波利用料として実に244億支払っています。テレ朝なんぞたった4億7500万です。
ドコモは、NHKの実に10倍以上、民放各社の平均60倍支払っています。
ですから、その巨額な事業収入に占める電波利用料比率はわずか民放各社わずかに0.1~0.5%にすぎません。
つまり放送局の原価のかなりを占めていなければならない電波使用料は、ヘソのゴマほどの割合でしかないのです。
こりゃ儲かってあたりまえ。

ということで、テレビ局の売り上げを見てみます。全体で約2兆8490億円あります。 

Photo_92010年度テレビ局売り上げhttp://www.geocities.jp/yamamrhr/ProIKE0911-122.html

つまり、テレビ局は約2.8兆円売り上げて、その電波の仕入れ値はたった60億ていどにすぎないのです。
原価でもっとも大きな割合を占めるべき電波利用料がたった0.2%とは!
これならテレビキャスターに年俸12億出そうが、NHK局員が新人でも1000万取るのも楽勝ですな。
ちなみに、テレビ局員の年収は、フジテレビの社員の平均年収は軽く1500万円を超え、TBSも1500万円弱、テレ朝、日テレも1300万円超えでいます。
がはは、まさに電波貴族です。

 

Photo_11出所: 会社四季報 2010年04月号年収プロ

 

ああ、だんだんむかっ腹が立ってきたゾ。どこの世界に原価のうち最大を占める要素が、たった0.2%などという馬鹿にしたようなことがあるもんですか。 
こういうハッチャメチャな安値を世間では、「ただ同然」とか「濡れ手に粟」、あるいはそのままズバリ「暴利を貪る」と呼びます。 
テレビがいかに優遇されたメディアであるか分かります。

そしてテレビ局が新聞を系列化しています。
いまや衰退寸前の新聞は、テレビがカネを出してなんとか成立しているにすぎません。

こういうベラボーな安値の秘密は、その発信局のカウントの仕方にあります。
なんと総務省が決める電波利用料は、各社が保有する無線・中継局の数によって決めているのです。 
携帯の一家に数台の末端1台でも一局とカウントし、原理的にはテレビ局一局も携帯1台も、一台は一台として扱うのです。
これに携帯各社は200円の電波使用料を支払っていますから、上記の円グラフで携帯の電波使用料だけで85%にもなってしまうわけです。

そして彼ら電波貴族は、極端な寡占状態を作って電波利権を握りしめています。
キイ局はたった7局しかなく、電波媒体を独占しているのです。
あざといことには、テレビ局は2.8兆円売り上げて、60億で主要原価が納まってしまうのに、これをわずか7局で独占しているのです。

これが冒頭のRSFの「自由度ランキング」が指摘する「極度のメディア集中」です。
なんのこたぁない「自由度ンキング」が下がったと喜んでいる当のメディアの存在のあり方こそが、押し下げた原因なのです。
あ、ついでに外国の記者に評判が悪い記者クラブ制度も、作ったのは大手メディアですから、よろしく。

電波の専門家によれば、このUHFだけで30局は軽く取れる帯域を競売制にすれば、数十局が入るといいます。
現実に米国はそのような競売制にして、その代わりに日本の放送法のようなものは一切ありません。
くだらないことばかり言っている放送局と新聞社は競争で淘汰される、これが国際的な電波のあり方で、日本のような戦時中の電波統制の名残のような電波行政を根本から改めるべき時なのです。

そうすれば、巨額な電波利用料が国庫に入りますから、消費増税の必要もありません。
おまけに携帯料金はグッと安くなり、視聴者はさらに多くのコンテンツを安く見られるようになります。
電波統制の名残の放送法も不要となります。
そして日本の「自由度ランキング」も飛躍的にあがるでしょう(上がらないか)。

 

2024年5月 7日 (火)

クルド人「難民」の密航ルート判明

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アホのバイデンは日本が移民が少ないから問題を抱えるのだとのたもうていましたが、いやいやゴッソリと抱え込んでいる地域もあります。
それが埼玉県川口市や蕨市で、だいぶ前からワラビスタンと呼ばれていました。

「日本国内に住んでいるクルド人は約2000人と言われ、その6割強が住んでいるとされるエリアが首都圏にある。それが埼玉県の川口市や蕨市など県南地区。最近はシリア内戦の戦禍を逃れるため、難民として来日する人も増えている。クルド人の故郷の地であるクルディスタンと、蕨(わらび)を掛け合わせ「ワラビスタン」とも呼ばれ始めたこの場所。なぜクルド人が続々と集まっているのか」
なぜ埼玉県南部にクルド人が集まるのか?:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

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日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

この川口市に集まって暮らすクルド人は約1200人以上で、単一民族コロニーとしては日本最大級です。
たまに内部抗争を起こして治安問題となって新聞ネタになっているようですが、今回、テーマではないので、仔細は触れません。
問題はなぜこれだけの不法移民が入ってこられるのかです。
そして本当に彼らは「難民」なのか、です。

このクルド人の流入ルートについて、元国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日代表の滝沢三郎(東洋英和女学院大名誉教授)が詳細な調査報告を出しています。
結論から言えば、すでに確立された密航ルートがあり、密航を仕切って高額の謝礼を受け取っているブローカーが存在しています。
彼らは、中国密航者のスネークヘッドのような役割をしています。

「滝沢氏によると、トルコの経済悪化に伴い、相対的に所得が低いクルド人による、米国やカナダなどのビザが必要な北米への密航が横行。1万5千ドル(229万円相当)ほどの手数料を支払えば正規のビザなしで違法に入国できる仕組みが確認された。一方、日本ではクルド人を含むトルコ人は短期滞在のビザが免除され、入国は自由。航空券も数十万円程度で入手できるため「北米よりも割安な渡航先となっている」(滝沢氏)という」
(産経2024年5月4日)
<独自>クルド人、高額手数料で密航横行 専門家が現地調査、「割安」な日本にも流入か - 産経ニュース (sankei.com)

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産経

上図が密航ルートですが、1万5千ドルもかかる北米の米国、カナダより、一桁安い10万円ほどでに短期滞在の名目で入国し、そのまま定着してしまいます。
当然のこととしてただの不法移民ですが、彼らはみずからを「難民」と称しています。

難民認定を受けるためには、当該政府から政治的迫害を受けていなければなりませんが、日本に在留するクルド人の多くはそうではありません。

「日本の一部のクルド人は、PKK支持を理由にトルコで迫害を受ける恐れがあるとして難民認定を申請している。ただ、滝沢氏が面会したPKK支持のクルド人は、逮捕経験はあるものの、テロ活動に参加しないよう警告を受けた後も、支持を公言しながらトルコ国内で生活を続けていた。滝沢氏は「トルコでは、クルド人に対する差別はあっても迫害を受けているのは一部のPKK構成員などに限られている。実態を踏まえた対策が必要だ」としている」
(産経前掲)

トルコではエルドアンの経済運営が失敗し強インフレが慢性化してしまい、そこにトルコ南部での大地震が重なり、300万人以上の難民が流入しました。
トルコ経済の現況をみてみましょう。

「実際には輸入増が輸出増を上回って貿易収支が悪化し、経常収支赤字も拡大、想定とは逆の結果をもたらした。為替相場は名目値では切り下がったものの、エネルギーなどの輸入物価が急上昇、それによりインフレが急進し、実質為替相場が異常に切り上がったためである」
3選エルドアンのトルコ──「経済合理性への回帰」(間 寧) - アジア経済研究所 (ide.go.jp)

貿易収支は赤字が拡大し続けているのは下図で確認できます。

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アジア経済研究所 (ide.go.jp)

そして為替相場が急落し、エネルギー価格、食料が直撃しているのも下図で確認できます。

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アジア経済研究所 (ide.go.jp)

これらの原因によりインフレが亢進しました。
政府の中期計画は、インフレ率を2023年末に65%、2024年末に33%と想定しています。
すさまじい強インフレです。

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アジア経済研究所 (ide.go.jp)

そしてこの状況にシリア国境地域からの難民355万が流入し、不正規労働者層を作ってしまいました。

「2011 年シリア内戦の発生後から,トルコはシリアからの難民を受け入れ続け,2018 年で,その数は355 万に達している.イスタンブルに住むシリア難民家族の平均支出は,トルコの 4 人家族の貧困線の約 37% であるなど,その生活は厳しい.シリア難民は「一時保護」の対象であるために,社会保障の適用のない,インフォーマルな雇用に従事せざるをえない.同じ仕事をするトルコ人よりも 25% から 50%
ほど安い賃金で働いている」
湯浅典人『トルコにおけるシリア難民と労働をめぐる課題』)
hum2018_085-092.pdf (bgu.ac.jp)

このような難民の極貧層が非正規労働者としてイスタンブールを中心に流れ込んだために、トルコ人正規労働者の労働条件はさらに押し下げられました。

「トルコでは賃金労働者の半数以上が最低賃金ないしそれ以下の水準で働いている。2023年12月に発表された最低賃金改定率は49%と、12月の年間インフレ率64%を15ポイント下回った。最低賃金上昇率が公式インフレ率にさえ追い付かない状態は長く続いている。特に過去5年、最低賃金では4人家族の食費しかまかなえない状態だった。労働者の多くは長時間労働や副職従事に迫られている」
アジア経済研究所 (ide.go.jp)前掲

トルコは、このような経済悪化を背景にして玉突き的に大量の経済難民を出しました。
これがトルコが大量の経済難民を排出している背景です。

彼ら経済難民は北米と、さらには北米よりゆるい規制しかなかった日本が受け入れ国となっています。
では、なぜ入管に送還されていないのでしょうか。
それは難民申請中は送還停止となるという入管法のぬけ穴を利用していたからです。
政府は入管法を手直しして、難民申請3回目以降は送還するように罰則強化しました。

「改正出入国管理法は、難民申請中は強制送還が停止される規定について申請を繰り返すことで送還を逃れようとするケースがあるとして、3回目の申請以降は「相当の理由」を示さなければ適用しないことにしています。
また、退去するまでの間、施設に収容するとしていた原則を改め、入管が認めた「監理人」と呼ばれる支援者らのもとで生活できることなどが盛り込まれています」
(NHK2024年4月6日)
改正入管法 6月施行へ 難民申請3回目以降は強制送還の対象に | NHK | 技能実習生

去年度の難民認定者数は303人にすぎず、申請者は1万3823人と前年の3倍超に急増しています。
そしてこのうち難民認定を複数回申請しているのは1661人、3回目以上の申請者数は348人です。
これがクルド「難民」の実態です。
彼らは不法に入国したのですから、法に従っていただくしかありません。

2024年5月 6日 (月)

過激化する米大学の反イスラエル運動の背後にいるのは

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米国の大学で、シャレにならない規模で抗議活動が拡がっています。

「4月18日、ニューヨークのコロンビア大学構内で、大規模な反イスラエルデモが発生。一時、その中心的な建物ハミルトン・ホールを占拠するまでになった。警察が動員され、100人が逮捕された。
これを皮切りに、暴力にも発展する反イスラエルデモが、5月3日の時点で、全米44の大学にまで拡大。これまでにアメリカ全国での逮捕者は、2300人を超えた。
特にロサンゼルスのUCLAでは、反イスラエルデモ隊と、親イスラエルデモ隊が衝突し、取り締まりに入った警察とも衝突するカオスとなった」
UCLAで反イスラエルと親イスラエルデモの衝突も:全米で2300人以上逮捕 2024.5.4 – オリーブ山通信 (mtolive.net) 

デモ自体は学生らの政治的な発言ですからご自由になさいですが、こういう発言があると話は違ってきます。

「(CNN) 米コロンビア大学の広報担当者は26日、CNNに対し、同大のパレスチナ支持デモを主導する学生の一人を出入り禁止にしたことを明らかにした。
コロンビア大アパルトヘイト・ダイベスト(CUAD)連合の広報を務める学生はX(旧ツイッター)への投稿で、「シオニスト(ユダヤ民族主義者)は生きるに値しない」と述べたことを認め、1月に撮影されたインスタグラムライブの動画での発言だと説明した」
(CNN4月27日)
「シオニストは生きるに値せず」 米コロンビア大のデモ主導者、大学出入り禁止に - CNN.co.jp

この人物は抗議活動の主体となっているアパルトヘイト・ダイペストの指導者のひとりですが、コロンビア大から「暴力の呼び掛けや、宗教、民族、国民意識を基に個人を狙い撃ちにする発言は容認できず、大学の方針に違反している」と警告を受けて、「かっとなって言葉遣いを誤ってしまった。それについて謝罪する」と述べています。

この学生の意見は、ハマスと同じです。
学生たちは、イスラエルがパレスチナ人に対するジェノサイドを行っていると信じきっており、学内にテントを張り大学が保有する、イスラエルに関係する金融資産を売却するよう要求しています。
また今後もイスラエルとの関係を断絶するよう訴え続け、イスラエルに協力する米政府や企業を非難しています。

そのスタイルもシュマグを着けてアラブ過激派のコスプレをしています。

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米大学での親パレスチナデモ、「反ユダヤ主義的」で「テロを扇動」 イスラエル国防相 - CNN.co.jp

イスラエルに対して、これ以上の侵攻は止めろと言うことまではいいでしょう。
私も同じ考えですし、イスラエルが過剰反撃をしていることを批判するのはある意味当然です。
しかし、それとハマスのようななりをしてイスラエルをシオニストと呼び、その追放を叫ぶこととはまったく別です。

冷静に思い出して下さい。ことの起こりはなんであったのでしょうか。
去年10月に起きた、ハマスの大虐殺と人質誘拐が発端です。
イスラエルの反撃は、当然の国家と民族の自衛権の範疇に属します。
この反撃が過剰であるなら、それはそれとして自制を呼びかけるべきであって、ハマスの側に立って反イスラエルを呼びかけることではないはずです。

日本でも国際政治学者や中東屋の一部は、イスラエルを「殺人嗜好国家」と名付けて批判しました。
左翼メディアは「ガザジェノサイド」と呼んでいます。

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特集:イスラエルの「ジェノサイド」|週刊金曜日公式サイト (kinyobi.co.jp)

しかし日本では米国のような大学占拠という事態はありませんでした。
では日本になく、米国にあったのはなんなのでしょうか。

このような大学生暴動にまで至った反イスラエルの学生紛争には、長年米国に浸透してきたカタールの動きがあると言われています。

「ニューヨーク市警の情報テロ対策部門のレベッカ・ワイナー副部長は、突入翌日の5月1日の記者会見で、「自国産テロ」という表現こそ使わなかったものの、若年層の過激化が市の治安を脅かす懸念があると警告。急激に進む先鋭化の「軌道」を、市警察は慎重に見守っていると述べた。
イスラエル寄りの立場を鮮明にしているニューヨークのエリック・アダムズ市長も記者会見で同様の見解を語った。「若者たちを過激化しようとする動きがある。私は彼らがそれをやり遂げ、その存在が白日の下にさらされるまで、手をこまねいて待っている気はない」「若者は扇動されているだけ」
アダムズによれば、「われわれの子供たちを過激化する手練れのプロフェッショナルがいて、若年層がその連中にそそのかされている。これは今や世界的な問題だ」という」
(ニューズウィーク5月2日)
米大学デモは外から来たパレスチナ過激派の仕業──NY当局が警告 証拠は示さず|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

また今回の学生団体は、BLMでも登場した極左過激集団が指導しているとウォールストリートジャーナルは報じています。

「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、過激派活動家は米国のキャンパスで学生活動家の訓練を支援した。報告書は、米国の学生グループが、元ブラックパンサー党員を含むさまざまなベテラン活動家から、抗議の方法や紛争への対処方法に関する研修を受けた方法を詳述している。
ある学生は「先輩たちからメモを取り、彼らと対話し、以前の抗議行動に対する大学の対応を分析した」と語った」
(イスラエルポスト5月4日)
過激派活動家による抵抗の訓練を受けた米国の学生たち - エルサレム・ポスト (jpost.com) 

この支援グループには、ドイツで反ユダヤ運動をしたとして活動禁止を受けたサミドーンという団体もあります。

「何人かの学生は、10月7日の虐殺を支持したためにドイツで最近禁止された組織であるサミドーンの活動家から訓練を受けました。サミドーンは2021年以降、イスラエルではテロ組織と見なされています。
サミドーンはパレスチナ解放人民戦線(PFLP)とつながりがある。PFLPは、20世紀にイスラエルで起きた最悪のテロ攻撃のいくつかに関与し、10月7日以前にはイスラエル史上最悪のテロ攻撃を行った」
(イスラエルポスト前掲)

彼らはパレスチナゲリラのPFLPとつながりがあり、今回のハマスのテロにも、諸手を上げて賛同していました。

あるいは大学の教授陣にも、多数の親パレスチナ派が浸透しています。

「2020年7月、UAEの研究者であるナジャット・アル・サイード氏は、「カタールとアメリカの大学の資金調達」と題する記事を「アル・フッラ」紙に寄稿しました。彼女は、カタールが資金提供する、過激なアメリカ左翼とムスリム同胞団活動家の間で形成された奇妙な同盟を描写した。彼女によれば、左翼同胞同盟に所属する教授や学生の数が増え、その原則に同調し、アメリカの大学で思想の自由を奪っているという」
(イスラエルポスト4月30日)
イスラエルに対する米国の学生抗議に対するカタールの影響が明らかに-エルサレムポスト (jpost.com)

彼らは、反対意見を表明しようとする人たちに対してポリコレでレイシズムだと糺弾し、批判を許しません。
このような活動は、BLMや親ハマスと一体化して、いまや米国左翼同盟のような混合体になっています。

「スモール博士によると、コロンビア大学やUCLAでは、著名な教授たちが、10月7日のハマスの虐殺を、イスラエルの“占領”に対する正当な、抗議行動であるとの視点から、心理、哲学的論理で、解説していたという。
コロンビア大学のジェンダー問題を専門とする教授にいたっては、ハマスの性的暴力を、占領に対する、正当な抵抗運動と解説していたとのこと。
その背景にあるのが、イスラムに基づくカタールのアメリカはじめ、世界の名門大学への進出である。
スモール博士は、こうした背景に、カタールが、アメリカはじめ、世界の大学に世界最大級の資金援助を行っているため、多くの学術的研究プロジェクトのスポンサーになっている。このため、教育内容や、メディア部門にも影響力があると指摘する。
アメリカでは、2005年から、アメリカ・ムスリム・フォーパレスチナ(AMP)が、全国にオフィスを展開しているが、これは、カタールが支援するムスリム同胞団(ハマスの母体)による団体である。これが、今回のデモ拡大にも大きく影響していると言われている」
アメリカのカオスの背景にあるもの:カタールの影響? 2024.5.4 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

この資金源がカタールです。
カタールは、表面的には自由主義陣営に属するような顔をしながら、ハマスの指導者の事務所を置いていたような国です。
仲介活動ができるのも、ハマスと密接な関係があったからで、ブリンケンはハマスをカタールから追い出すように要請しています。
また、カタールの放送局のアルジャジーラはイスラエル政府によって「ハマスの代弁者」として支局閉鎖を受けています。

「2012年、カタールの国際教育機関「ムアササット・カタール」は、全米28の大学の教育イニシアチブに少なくとも15億ドルを費やし、米国の主要な外部教育資金提供者になったと報告されました」
(イスラエルポスト前掲)

彼らが狙うのは反イスラエル、反ユダヤです。

 

2024年5月 5日 (日)

日曜写真館 朝桜静なる枝を垂れにけり

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朝桜さざなみこそは水の花 香西照雄

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朝桜みどり児に言ふさやうなら 中村草田男

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癒ゆる身はかりそめのもの朝桜 齋藤玄 

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朝桜天にまつたき藍満ちぬ 仙田洋子

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空に浸る月の円形朝桜 香西照雄

 

 

2024年5月 4日 (土)

岸田政権、自衛隊訓練場計画を簡単に投げ出す

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こういうニュースを聞くたびにゲンナリしまします。

「防衛省は、沖縄県うるま市のゴルフ場跡地で計画していた陸上自衛隊の訓練場新設を断念する方針を固めた。住宅地などに近いことから地元住民らが反対しており、理解を得るのは困難と判断した。同省関係者が11日、明らかにした。
木原稔防衛相は同日午後、中村正人市長と面会して伝達する。2月の住民向け説明会では反対意見が続出。市、県も白紙撤回を要求していた。 訓練場は、陸自第15旅団(那覇市)の師団への格上げに伴う体制拡充の一環。同省は今後、県内の別の場所を検討する」
(時事4月11日)
防衛省、訓練場の新設断念へ 沖縄県うるま市、地元反対:時事ドットコム (jiji.com)

理由は例によって例の如く、デニー知事らの反戦平和運動の成果です。
デニー氏は頭から,聞く耳を持たずに陸自訓練場に反対していました。
その理由は、これまた例によって例のごとく県は米軍基地反対やってんだから、自衛隊のほうもダメだ、という当人たちだけにしかわからない理由です。

「沖縄県の玉城デニー知事は13日、うるま市石川のゴルフ場跡地で計画されている陸上自衛隊の訓練場新設について「沖縄県としては、米軍基地のさらなる返還を求めている。自衛隊基地の計画が進められることが住民にとって不安を増幅させることになっては絶対に良くない」と指摘した。「地域住民の思いに応えられるように、防衛省は計画についての是非をしっかり考えてほしい」と話し、地域住民の意思を尊重することを改めて求めた。
11日に防衛省が住民説明会を開き、住民から反対の声が上がったことについて、「計画地域が住宅地に近接しているにもかかわらず、事前の十分な説明もないまま計画ありきで物事が進んでいることに、地域住民から反対を含めて強い懸念が示されるのは当然だと思う」と話した」
(琉球新報2月13日)
デニー知事、住民の「強い懸念は当然」 計画の是非、検討を 陸自訓練場新設で 沖縄  - 琉球新報デジタル (ryukyushimpo.jp)

ここまでは一種の反基地派の伝統芸なのでなんの驚きもありませんが、驚いたのはむしろ政府があっさりと引き下がったことのほうです。
木原防衛相は早々に4月11日、訓練場計画を撤回してしまいました。
おいおい、政府は一押しも二押しもしないで諦めるのか、とやや呆れました。
たぶん安倍氏なら菅官房長官をはりつけたように、気長に東京と沖縄を往復させて現地行政を説得にあたったでしょう。
それをなんの働きかけもなく放り出すとは、さずがは岸田氏です。
いちおう県内で別の場所を探すと言っていますが、徹底的に地元と話し込んで合理的判断で断念したわけではなく、こんなチョイ出しで引っ込めれば次からは足元を見られます。
これで沖縄駐屯の陸自には県内の訓練場がなくなりました。

木原氏が岸田氏からどういう指示をもらったか知りませんが、この断念劇と同時期に開かれていたのが日米首脳会談です。
岸田氏は、バイデンに自衛隊と米軍との指揮統制を一元強化するという約束をしていたので、ここで現地沖縄でもめている姿を見せたくなかったのでしょう。
ともかくモメたくない、オレの日米首脳会談の影で地元ともめている姿を見せて、ガバナンスが効いていないザマを見せたくない、たぶんそんなところです。

それにしても岸田氏のひ弱さはハンパではありません。
岸田氏はポスト安倍を争う総裁選で敗北し、終了宣告を受けていたところ、菅氏の総裁選辞退というフロックで、首相の地位が転がり込んで来た人です。

決して実力で首相になったわけではなく、人望があったわけでもなく、派閥が強かったからでもなく、ただただ運が良かっただけです。
そのような彼は、外圧に際して正面から取り組むのではなく「そらす」「転化する」といった弱者の知恵で対応しようとしました。
政策課題をコツコツ片づけていき理念を実現するというのではなく、とりあえず当座が凌げればよいという姿勢です。

こういう時に起きたのが、岸田氏を外相として取り立ててくれた安倍氏の暗殺でしたが、彼はこれを統一教会狩りにすり替えてしまうことで、安倍は殺されるような奴だったんだという認識を国民に植えつけました。
またいままで公然の秘密だった政治資金パーティの一部還流も、共産党の告発のままに騒ぎ立て、あろうことか安倍派潰しに利用しました。
あげく派閥解体というオーバーランをしてしまったために、いまや自民党は焼け野原、戦えない党になっています。
その結果が補選の全敗です。
つくづく一国の指導者なんかをやらせてはいけない人だと思います。
このひとはやがて自民党だけではなく、国を潰すでしょう。

それはさておき、岸田氏はこの訓練場の意味をわかっていて、あっさり取り下げたのでしょうか。
今、陸自は南西方面、つまり中国に対応した方面を強化を急いでいます。
現在、沖縄に駐屯する2000人規模の第15旅団を1個連隊から2個に増強し、3000人規模の師団に格上げしようとしています。

「防衛省が、沖縄県を中心とした南西諸島防衛を担う陸上自衛隊第15旅団を師団に格上げする時期を令和8年度とする方向で調整していることが、分かった。政府関係者が24日、明らかにした。中国が東シナ海などで軍事活動を活発化させる中、台湾有事などに備えた南西地域の防衛体制強化の一環で、現在の1個普通科連隊を2個連隊とするのをはじめ、3千人規模に増強する」
(産経10月24日)
<独自>陸自沖縄部隊の師団化、令和8年度に 政府、南西防衛強化急ぐ - 産経ニュース (sankei.com)

師団化するといっても、通常の師団は外国では1万人、陸自でも5千から7700人はいますから、大きめの旅団といったところです。
ただし、指揮官は師団化に伴い、陸将補から陸将に格上げしますので、在沖米海兵隊第3海兵遠征軍(ⅢMEF)の司令官(中将)と同格の階級となります。
軍人同士はこういうことに神経質なのです。
また普通科連隊のほか、通信、施設、後方支援の部隊も増強し、さらに有事における住民避難を円滑に行うための機能も持たせます。

いままで沖縄県は中国の正面でありながら、長らく防衛空白地域でした。
宮古八重山に自衛隊が配備されたのはつい先日のことです。
膨張を重ねる中国の正面は、那覇から先はノーガード。
信じられないことですが、理由はもういいですね。

沖縄の自衛隊は、1972年10月、復帰直後に移駐した臨時第1混成群と翌年の第6高射特科群が始まりです。
「混成」と名前がついているように臨時編成という色彩が強い部隊です。
彼らは沖縄で地道な活動を展開します。
もっとも有名な部隊は第101不発弾処理隊と第101飛行隊でしょう。
不発弾処理隊は、世界でもっとも出動回数が多い不発弾処理部隊として地味に活動を続け、一回の失敗もないという驚異的な記録を打ち立てました。
第101飛行隊は、全国でもっとも出動回数が多い緊急搬送部隊で、いかなる悪天候でも離島に駆けつけて救助に当たりました。
こうした地道な積み上げの上に、県民の信用を勝ち取り、2010年3月に第15旅団として再編されました。

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拒絶反応で宙に浮いた入学 隊員の子、受け入れへ動く教師も<駐屯50年「自衛隊」と沖縄>③ - 琉球新報デジタル (ryukyushimpo.jp)

私が初めに沖縄旅行をしたときには、役場の前に自治労の「日本軍の上陸阻止」というおどろおどろした立て看板を見た記憶があります。
「日本軍」ですよ・・・。

当時自治労は、自衛隊員の住民登録を拒んでいたのです。
当然、自衛官の子供たちも編入学できずに、教育を受けられませんでした。
成人式にも出席を許さなかったのですから、自衛官は市民扱いされていなかったのです。
なんとも凄まじい自衛官差別です。

あれから52年。
混成団から旅団、そして連隊が増強され3000人規模になれば、当然必要なのが訓練場です。
いまでもあることはあります。
ただしいまある3カ所は小隊規模の訓練がやっという手狭さで、とてもじゃないが3000人規模の部隊を動かす訓練は不可能です。

ですから、いまでも連隊規模の訓練をするには、いちいち本土の大分・日出生台演習場に渡って訓練を続けてきました。
簡単に移動といいますが、陸自の部隊移動は隊員と共に、多くの武器、車両などの装備品も共にも船舶で移動するのです。
しかも船ですから、その乗り降りだけでも馬鹿になりません。
2023年度は県外で29日間の訓練を実施し、その往復の移動だけで83日間も費やしているのです。
つまり実際の訓練期間の倍以上かけて移動していることになります。
その間の112日間もの長期間、沖縄の防衛は空白になります。
陸自もこんな長期間空白にするわけにはいかないので九州の部隊を代替させていますが、彼らは沖縄の地理にも不慣れなために大きな負担となっています。

これではまずいので、地元で訓練場を作ろうというのが今回の計画でした。
それが一瞬でパーですから、なにをかいわんやです。
岸田政権は、リアルに沖縄防衛を考えてはいないことが改めてわかりました。
ワシントンでつまらないギャグ飛ばしていないで、足元から解決していきなさい。

 

 

 

2024年5月 3日 (金)

もしイスラエルがラファに進軍すれば

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まだ、イスラエルをやっているのかといわれそうですが、米国の大学へ飛び火したように、この交渉の結果いかんで中東情勢だけではなく、世界情勢も大きな影響を受けざるをえません。
ウクライナ戦争もそうですが、地殻変動は好むと好まざるととに関わらず戦争を原因として起きます。
在野の素人ですので限界はありますが、可能なかぎり具体的にガザ戦争の行方を追っていくつもりです。

イスラエルを訪問していたブリンケンの調停は不調に終わりそうです。
現時点でわかっているイスラエル側提案はこのようなものです。
ハマスがイスラエル提案に否定的も交渉は継続と時間稼ぎ様相 :ネタニヤフ首相はどう決断する!? 2024.5.2 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

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mtolive.net)

第一段階(少なくとも40日間は攻撃を停止)
① 人道支援物資のトラック(燃料を搭載した50台を含む約500台)が、毎日ガザへ入るとともに、避難住民がガザ北部へに戻る。イスラエル軍は、これが可能になる程度に撤退する。
② イスラエル軍は、上空の監視を1日8時間停止する。人質交換の日は10時間、上空監視を停止する。
③ この間にハマスが解放する人質は、生存している33人(女性と女性兵士、19歳以下の子供、高齢者と病人、負傷者)
④ イスラエルは、女性と子供の人質1人あたり、20人のパレスチナ人女性と未成年テロリストを釈放する。
高齢者、病人、負傷者の人質1人あたり、やはり病気や負傷しているパレスチナ人(50歳以上で、懲役10年以下)を釈放する。
女性兵士の人質1人あたり、20人の終身刑と、20人の懲役10年以下のテロリスト、つまり40人を釈放する。
どのテロリストを釈放するかは、ハマスがリストを提出できる。
⑤ 第一段階がはじまってから16日目から、停戦に関する交渉を始める。

第二段階(次の42日間)
① 持続可能な停戦についての話し合いをする。

② 男性と兵士の人質を解放し、イスラエルは交換にパレスチナ囚人(人数は不明)を釈放する。
③ イスラエル軍がガザから完全に撤退する。

第三段階(次の42日間)
① 双方が遺体を交換する

② ガザの復興5年計画を開始する(ハマスは非武装とする)

実現可能な、よく考えられた提案です。
ラファ問題は別にして、イスラエルとしては最大限の譲歩なはずです。
しかしこれも頓挫しました。なぜか。
最大の原因は、ハマスが時間稼ぎのために回答を渋っているからです。
しかも交渉はするが回答は先伸ばしにするという見え見えの時間稼ぎです。
よく日本や米国のリベラルは、イスラエルにだけ戦争は止めろと言いますが、戦争をしかけたのもハマス、虐殺を始めたのもハマス、市民を楯にした戦争をしているのもハマス、そして休戦提案に乗ってこないのも、ハマス側だということを忘れないでほしいものです。

「ハマスとの戦争が始まって7ヶ月になろうとする今、イスラエルとハマスの人質と停戦に関する交渉が、カイロで続けられている。今はイスラエルからの提案をハマスが検討している状態にあるが、ハマスは、これには否定的ながら、それでも交渉は続けるという態度をとっている。www.jpost.com/israel-hamas-war/article-799480
ラファへの攻撃を前に、ハマスの態度は、時間稼ぎにみえる。もし、このままの状態で、イスラエルがラファへの攻撃に踏み切った場合、ハマスとの交渉は頓挫するとみられる。これはすなわち、人質を全部見捨てることにほかならないと、イスラエル国内では、懸念と政府への反発が高まっている」
ハマスがイスラエル提案に否定的も交渉は継続と時間稼ぎ様相 :ネタニヤフ首相はどう決断する!? 2024.5.2 – オリーブ山通信 (mtolive.net) 

ゴチャゴチャ言ってないで、人質を解放しさえすればガザ戦争は終わりなのですが、最後の最後まで手放したくないようです。
人質は戦争の中連れ回したために大部分が死亡し、いまや彼らの延命のための保険として生かしているだけのことです。
どこまで卑劣なのかと呆れます。
ハマスの狡猾さはいまさらですが、ことここに至っても健在で、なにがなんでも交渉を引き延ばし延命したいということのようです。
生き残ってガザの復興に忍び込みたいのでしょう。
彼らを完全排除せねば、ブリンケンが言う「パレスチナ自治政府の刷新」などは絵に描いた餅にすぎません。

そしてもうひとつ、イスラエル側にも頑迷このうえもないキャラが居すわっています。
ネタニヤフがいまだこう息巻いているからです。

ホント馬鹿じゃなかろか、この男。

「リヤド/エルサレム(CNN) イスラエルのネタニヤフ首相は4月30日、イスラム組織ハマスとの停戦交渉の結果にかかわらず、パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファに地上侵攻すると述べた。エジプトが提案した新たな停戦の枠組みは現在、ハマスが検討しているが、今後の交渉に影響が出る恐れがある。
イスラエル首相府によると、ネタニヤフ氏はガザに拘束されている人質の家族に、イスラエル軍の部隊は「(交渉案の)合意の有無にかかわらずラファに侵攻し、ハマスの戦闘員を排除する」と伝えた」
(CNN5月1日)
イスラエル首相、停戦合意にかかわらず「ラファ侵攻」 - CNN.co.jp

「停戦交渉とは関係なくラファに進軍させる」なら、そもそも今やっている停戦協議なんぞ止めてしまえばよい。
今なんのために停戦協議をしているかといえば、ラファにイスラエル軍を入れないためですから、お話になりません。
ラファはエジプト国境の街で、エジプトの安全保障にもダイレクトに響くことはいうまでもありません。

そうさせたくないから、ブリンケンは汗水流して中東を走り回り、仲介を投げ出したがっているカタールをなだめすかし、湾岸諸国随一の軍事国家であるサウジを巻き込み、かつエジプトを交渉の舞台にすることで西側自由主義陣営の枠組みを建て直していたのです。
それを一切無視して、こういうことを放言するというのは、じぶんの国が自由主義陣営に属していることを忘れたのかと、ブリンケンは思ったことでしょう。
イスラエルはひとりで戦っているわけではないのです。
ネタニヤフでは平和的交渉による解決は不可能です。いますぐにでもヘルツォグに代わって欲しい。

さて、ここでイスラエルがラファに軍を侵攻させれば、いくつかのことが連鎖的に拡がります。
エジプト、ヨルダン、サウジは、イスラエルとの接近を諦めるでしょうから、米国が描いたイランを共通の敵と見立てた陣形の成立は不可能となります。
G7各国もサジを投げて、異形の国としてイスラエルを見始めるはずです。
したがって、イスラエルは中東のみならず世界の友を失います。

そしてもうひとつの連鎖反応はイランに出ます。
イランはイスラエルの孤立の隙をついて一機に核開発のゴールに向かうことでしょう。

「イラン最高幹部は核兵器の開発について費用が利点を上回ると判断している――同国の核開発を注視している人々は長い間、そう考えていた。兵器能力が手の届くところにある「核敷居国」として、同国は核兵器開発の試みが発見された場合に起こり得る戦争の危険を冒さずに、既に相当の抑止力を享受している。
 しかし今年に入り、この見解が揺らいでいる。イスラエルとの緊張が高まる中、イランの最高幹部からは、核兵器製造の専門技術習得が近いことをうかがわせる発言が相次いでいる」
(ウォールストリートジャーナル5月1日)
イラン核開発、イスラエル攻撃で高まる懸念 - WSJ

つまり、いままでイランは核開発の能力は持つがギリギリで核開発をしない「核敷居国」として充分に抑止力を持っていたが、一気にホンモノの核保有国となる意志を持ったという見立てです。
イランはいまでもこれだけの核施設を持っています。

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WSJ

「イラン当局者は核能力をほぼ獲得したと発言することでこうした思考をあおっている。元イラン副大統領で、過去に同国の核開発の中心人物だったアリ・アクバル・サレヒ氏は2月に放送されたインタビューで、同国が「核科学と技術の全ての敷居」を超えたと述べ、イラン原子力庁のモハンマド・エスラミ長官はのちにこのコメントを繰り返した」
(WSJ前掲)

イランが言う「核科学と技術の全ての敷居を超えた」という意味は核開発のめどがついたという意味です。
簡単に言えば、核兵器を保有する直前まで行っているということで、それは実戦配備可能だということです。
現実には、ミサイルに搭載するだけではなく、トラックや船などに載せられて自由に移動可能なポータブル原爆を考えているようです。

「米シンクタンク・科学国際安全保障研究所(ISIS)のデービッド・オルブライト所長は、イランがトラックや船で運搬が可能な最低レベルの核兵器を2~3個作るには半年しかかからないだろうと話した。
2021年、イランはウラン金属――高濃縮ウランを核兵器に必要な高密度に変えるために不可欠――に関する作業を再開。現在は核爆発を引き起こすのに必要な高性能爆薬のパッケージについて前進したようだ」
(WSJ前掲)

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WSJ

いや、イランにはIAEAの査察官が常駐し、公的な濃縮施設はカメラで見張られている上、イランの核活動は西側の情報機関が厳しく監視しているから大丈夫だという意見があります。
しかしIAEAの査察はイランの核開発の現状に追いついていないことはIAEA自身も認めています。

「IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は先月、イランの作業に対する可視性の縮小は、イランの核開発計画が平和的なものであり続けることを必ずしも保証できるわけではなくなることを意味すると警告した。
「IAEAの査察官がジグソーパズルをつなぎ合わせられるか、憂慮している」とグロッシ氏は話した」
(WSJ前掲)

こういった中で、イランはウラン濃縮度を兵器級にまで上げ、すでにそれを搭載する弾道ミサイルも各種保有し、さらにはトラックでイスラエル国内に搬入できるまでになっているのです。
ハマス残党が核爆弾を持ったらどうするのですか。彼らは核の自爆デロくらい朝飯前ですよ。

そしてイランが核保有すれば、宿敵サウジは万難を排して核開発に進むでしょう。
そうなればイスラエルも、いままで公然の秘密だった核保有を明らかにせねばなりません。
イスラエルは90発以上といわれる核を保有しています。
これは疑惑ではなく公然の秘密であって、イスラエルは保有をあえてあいまいにする戦略をとっているだけのことです。

イスラエルの核開発は、二度とホロコーストを受けないというユダヤ民族の決意そのものであり、それはユダヤ人を海に追い落とせと叫んで四方から攻め込んで来るアラブ諸国に対する恐怖が背景にあったのです。
これは今に至るもいささかも変化しないイスラエルの根っこにある感情です。
これはイスラエルが、米国の核の傘(拡大抑止)に入っていないことを意味しています。
言い換えれば、米国には止められないのです。
「イスラエルの核」という複雑なパズル: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

いままでイスラエル一国だった核が中東全体にひろがっていきます。
これがいわゆる核の連鎖です。

イスラエルの安全保障にとっていいことなのかどうか、イスラエルは冷静に判断したほうがいい。


 

2024年5月 2日 (木)

またイスラエルに突きつけられたパレスチナ国家承認問題

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また再びパレスチナ国家をイスラエルが認めるか否かが、交渉の焦点になっています。
というのは、ハマスがイスラエルの休戦案に対して回答を渋って、どうやらその理由がパレスチナ国家の承認にあるからのようです。

「ハマスは、昨日29日(月)、カタールとエジプトの仲介者に、イスラエルからの提案に対する返答を表明する予定だった。しかし、その内容について、「これまでと目立った違いはなかった」と述べ、合意する動きには出ていない。
イスラエルは、本日、カイロの代表団を送り出すとのことだったが、ハマスの返答を待つとして、派遣を保留にしたとのこと。
いわば、最後の試みであり、これで交渉が挫傷すれば、イスラエルのラファ攻撃が始まる可能性が高まっている」
イスラエルのラファ侵攻を防げるか:エジプトとアメリカが必死の仲介 2024.4.30 – オリーブ山通信 (mtolive.net) 

交渉のポイントは三つです。
これらは単独にあるのではなく、相互に関連し合っています。

ひとつめは、人質の解放。
ふたつめは、イスラエル軍のガザから撤退。
そして三つ目は、「戦後」にパレスチナ国家を認めるか否かです。

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タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

まず人質ですが、先週末にイスラエルは人質130人のうち、40人の解放を要求を引き下げて33人にしました。
というのは今130人の人質は相当数が殺されており、生き残っているのは33人ていどのようだからです。
またこの人質解放は、イスラエルが捉えているハマス側の捕虜との交換を通してなされていますが、今回、イスラエル側は数千人ともいわれるパレスチナ治安部隊の捕虜を返してもよいという大幅な妥協をしています。
たぶんこのことについて、イスラエルのさらなる妥協は無理なはずです。
ハマスのイスラエルに対する大規模テロとその際奪われた人質の奪還こそが、イスラエルにとっての戦争の大義でだからです。

2番目のイスラエル軍の撤退については、イスラエルは40日間の停戦を申し出ています。
これがギリギリのイスラエルの妥協線で、これを呑まねばラファ攻撃をすると言っています。
難民をエジプト国家虚のラファまで追い込んで、さらにそこに攻撃を仕掛ければ、見るも無惨な結果となるでしょう。
イスラエルはハマスの完全撃滅と引き換えにして、歴史に消しがたい悪名を残すことになります。

イスラエル内部でもラファ攻撃について世論が分かれており、反ネタニヤフデモがなんども行われています。
コロンビア大学にも飛び火して大規模デモが行われました。

「強硬姿勢を崩さない政府に対し、ラファ侵攻よりもハマスとの交渉をすすめて、人質解放を優先するよう、訴えるデモは毎週続けられている。
昨日29日、テルアビブで、数千人が、ラファ侵攻より、ハマスとの交渉を行い、戦闘ではなく、交渉で人質を取り戻せと訴えるデモを行った。こうしたデモは、反政府、ネタニヤフ政権打倒、また極右政治家たちへの非難を訴えている。今週も、警察と暴力沙汰の衝突となり、5人が逮捕された」
オリーブ山通信 (mtolive.net) 前掲

かねてから書いてきていますが、私は絶対にラファ攻撃はするべきではなく 、そもそも南部侵攻も誤りだったと思っています。
南部侵攻すれば必ずいっそうの地獄をみることは明らかで、よしんばそれでハマスを根絶やしにできたとしても、イスラエルの国際的地位は地に堕ちることでしょう。
そして新たに生まれたパレスチナ人の犠牲者や難民の中から、新たなハマスの戦闘員が生まれます。
ハマスはイランがあるかぎりなくなりません。
いたちごっこは終わらないのなら、北部を緩衝地帯としておくだけで充分だったはずです。
どこかで現実と妥協せねばならなかったにも関わらず、ネタニヤフはテロを防止できなかった失態を隠すためかとことんまで突っ走りました。

3番目は戦後処理の問題に絡んできます。
ハマスがどんな答えをするにせよ、「戦後」は来ます。
いかなるイメージでパレスチナの「戦後」と復興を考えるのかが問われる時期に入っています。

実はこれについてイスラエル内部で意見が割れているように見えます。
戦時内閣にも一定のパレスチナ自治を認めてもいいのではないかという考えが生まれています。

民間人の犠牲を減らすよう求める国際社会の圧力や、予備役の動員による国内経済への影響があるとみられます。
ガラント国防相はまた、戦闘が終結したあとのガザ地区の統治について「パレスチナ人が責任を持つ」と強調しました。一方で、治安維持のため、イスラエル軍がガザ地区で自由に活動できるようにすべきだとしています」
(日テレ2024年1月5日)
イスラエル国防相 ガザ北部で“標的絞った作戦に移行”方針示す - YouTube

ガラント国防相はネタニヤフと同じリクードですが、ネタニヤフのように「ガザは『ハマスタン』にも『ファタハスタン』にもならない」という頭からの拒否ではなく、イスラエル軍の一定数の駐屯を前提してパレスチナ自治政府を認めてもいいようなニュアンスです。

実はこのパレスチナ自治政府を認めることは米国の強い要望でした。
精力的に中東を飛び回るブリンケンはこう言っています。

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イスラエルポスト

「パレスチナ国家への道筋を提供することは、より広い地域を安定させ、イランとその代理人を孤立させる最善の方法だと、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は木曜日、カイロでのガザ戦争をめぐる熱狂的な地域歴訪を終えた際に述べた。
イスラエルとアラブ諸国の間を行き来するブリンケン国務長官は、紛争がレバノン、イラク、紅海の航路にさらに広がる恐れがあるにもかかわらず、ガザでの流血から前進する方法を推し進めてきた。
ブリンケン国務長官は、エジプトのアブデル・ファタハ・アル・シシ大統領との会談後、記者団に対し、この地域は2つの道に直面していると述べ、1つ目は「イスラエルが統合され、地域諸国と米国、そしてパレスチナ国家からの安全保障の保証とコミットメント、そしてパレスチナ国家が統合される」と述べ、
「もう一つの道は、テロリズム、ニヒリズム、ハマス、フーシ派、ヒズボラによる破壊を、すべてイランが支援するのを見続けることだ」と彼は述べた。
最初の道を進むと...それこそが、イランを孤立させ、疎外し、我々にとっても、この地域の他のほとんどすべての人にとっても、非常に多くの問題を引き起こしている代理人を疎外するための唯一の最善の方法だ
(イスラエルポスト1月11日)
ブリンケン国務長官:イスラエルがパレスチナ国家への道筋をつけることは、孤立化するための最良の方法である - エルサレム・ポスト紙 (jpost.com)

この考え方は、単なるイスラエル支援に限らず、中東全体の鎮静化の見地に立って見ています。
ここでイスラエルが強硬策に走ってラファを陥落させ、さらに戦後処理において一切のパレスチナ人の自治も許容しないなら、逆にそれはイランとその手先のテロリストを喜ばせるだけだとブリンケンは考えています。
ガザに残ったイスラエル占領軍は、敵意に満ちた住民に包囲され、復興を指揮する主体なきままに混沌の渦が残されます。
その渦の中から新たなハマス戦闘員が大量に育っていくはずです。

ブリンケンが今試みているのは、仲介役から脱落しそうなカタールから、エジプトとサウジ、ヨルダンに軸足を動かすことです。
そしてそのサウジははっきりとパレスチナ国家の承認を条件に上げています。

「アメリカはそれでもまだ諦めていない。Times of Israelによると、昨日から、中東全体を視野に入れて情勢沈静化を目指すアメリカのブリンケン国務長官が、皮切りとなるサウジアラビアを訪問している。
アメリカは、イスラエルにサウジアラビアとの国交正常化という大きなアメをもたらすことで、ガザへの侵攻を思い止まらせようとしている。ブリンケン国務長官は、サウジアラビアの後、イスラエルとヨルダンを訪問する予定である。
サウジアラビアは、イスラエルとの国交を、受け入れてもいいと匂わせながらも、パレスチナ国家をイスラエルが認めることを明確な条件にあげている。
このため、ブリンケン国務長官は、イスラエルにパレスチナ国家を認めるよう、圧力をかけている」
オリーブ山通信 (mtolive.net) 前掲

そもそもハマスがこの時期にイスラエルに無差別テロ攻撃を働いたのは、サウジとイスラエルの国交正常化が日程に上っていたからです。
これはトランプの置き土産であるアブラハム合意の延長ですが、サウジやヨルダンとイスラエルが国交正常化することで、最大にして共通の敵であるイランを孤立化できます。

イスラエルにとっても、サウジアラビアとの国交正常化はきわめて魅力的な話でしたが、喉に引っかかったトゲとなったのがパレスチナ国家承認でした。

いまのアッバスが率いるパレスチナ自治政府は全身をハマスに蝕まれていますから論外ですが、ブリンケンがいう「刷新されたパレスチナ自治政府」ならばありえる未来なはずです。
今、またこのパレスチナ国家承認問題という難問がイスラエルに突きつけられたことになります。
イスラエルはどう答えるでしょうか。

 

2024年5月 1日 (水)

イスラエルの新提案出る

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イスラエルがハマスに対して、いくつかの前向きな休戦提案をしたようです。
ブリンケンは「非常に寛大な内容だ」としてハマスに受け入れることを要求しています。


「パレスチナ自治区ガザ地区での停戦と人質解放をめぐり、イスラム組織ハマスが29日、イスラエルの新たな提案について、仲介役のエジプト、カタールと協議した。アメリカは新提案を「非常に寛大」なものだと評価し、ハマスが受け入れることへの期待を示した。
新しい提案は、人質の解放と引き換えに、40日間の停戦と、避難しているガザ住民の北部への帰還を認める内容とされる。
また、恒久的な停戦というハマスの要求に応えるため、平穏の回復に関する新たな文言も含まれていると報じられている」
(BBC4月30日)
ガザ停戦、ハマスがイスラエルの新案を検討 アメリカは合意に期待 - BBCニュース

ハマスもまた今回の提案に乗り気のようです。

「【AFP=時事】イスラム組織ハマス(Hamas)の幹部は28日、パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)での戦闘が長期化する中、イスラエル側が新たに提示した戦闘休止と人質解放案について、「大きな問題はない」との見方を示した。
匿名でAFPの取材に応じた同幹部は、代表団が29日にエジプトを訪れ、イスラエル側の提案についての検討結果を伝える予定だと明らかにした。 同幹部は「イスラエルから新たに妨害を受けない限り、前向きな雰囲気がある」として、「ハマスの検討結果の中に大きな問題は含まれていない」と語った」
(AFP4月29日)
ハマス、イスラエルの新たな提案に「大きな問題ない」(AFP=時事) - Yahoo!ニュース

かんじんのイスラエルの新提案ですが、まだ推測の域を出ませんが、このようなものだと考えられています。

「米ニュースサイト「アクシオス」は27日、イスラエル当局の話として、新提案にはガザ北部への住民帰還を認めると共に、ガザを分断し移動の自由を妨げている東西回廊からイスラエル軍が撤退する意向が含まれていると伝えた。
また、「合意実施の第2段階の一環として、持続可能な停戦の確立について話し合う」意思も含まれているとした。
イスラエルの当局や外交官は29日、人質解放の第1段階の人数を40人から33人に減らす用意があると、米紙ニューヨーク・タイムズと英紙フィナンシャル・タイムズに話した」
(BBC前掲)

まず、ガザ地区を南北に分断している東西回廊からイスラエル軍を撤退させます。
東西回廊とは、下図(2023年11月3日現在)のピンクの部分と白い部分の間の回廊(赤線)を指します。

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イスラエル軍、ガザ市を完全包囲と発表 一部のパレスチナ人の脱出続くも人道危機悪化 - BBCニュース

この東西回廊によって、イスラエルの避難指示で南に逃げた避難民は元の北部の住居に戻れなくなっています。
北部の住居は壊滅的被害を受けていますが、すでに食料や医薬品の援助が届いていています。
3月31日現在は、イスラエル軍がはるか南部まで侵攻しています。

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写真:ガザ最大病院再び襲撃 イスラエル軍「精密作戦」 | 沖縄タイムス+プラス (okinawatimes.co.jp)

戦闘はエジプト国境のラファにまで及んでおり、この攻撃に米国が待ったをかけている状況でした。
さらに複雑にしたのが、この時期に起きたのが、4月13日のイランのイスラエル本土へのミサイル攻撃でした。
イランに対して即時に報復をかける気だったネタニヤフに、バイデンは電話会談で止めるように説得し、ネタニヤフは戦時内閣で合意に至っていたイランへの即時大規模反撃を電話会談の直後に中止していたと報じられています。

このときの米国との交渉で、米国はイランへの大規模攻撃を限定的とするなら、ガザのラファへの攻撃を黙認してもいいと譲歩したたようです。

「しかし、ガザのハマスとイランは、無関係ではない。イランがいるからこそハマスがいる。
ラファへ突入してハマスを倒しても、イランを倒さなければ、また同じことになってしまう。イランを諦めて、ハマスを倒すという交換条件は、成り立つようで成り立たないのである。
とはいえ、打倒イランを優先すれば、人質を見捨てるということにつながりかねず、かつ、最大の同盟国アメリカをも失うことになる」
アメリカが大規模イラン攻撃中止と引き換えにラファ攻撃容認か:恐るべし水面下の交渉 2024.4.18 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

これを受けて、ご承知のようにイスラエルは準備済みだった全面攻撃、ないしは核施設攻撃を断念しました。
そして4月19日、核施設があるイスファファンの空軍基地のレーダー施設のみをピンポイントで爆撃し破壊しました。

つまりオレはいつでも核施設に精密攻撃を実施できるが、今回はここまでにしておく、というメーッセージです。

4月23日、このイスラエルの自制を評価して、米国はイスラエルに対して大規模な援助も行っています。

「23日、アメリカ議会は、反対勢力を押し切り、戦争支援措置として、ウクライナ、イスラエル、台湾へ950億ドルを支援することで合意。24日、バイデン大統領がこれに署名した。
このうち、イスラエルへの支援額は170億ドル(2兆6000億円)で、ガザなど復興支援に90億ドルとされている。ガザへは、追加で10億ドルを加え、100億ドルを当てるとバイデン大統領は言っている」
オリーブ山通信  前掲

そして同時に西岸地区で非人道的行為を働いたとして、極右入植者への経済制裁と、それに協力したとしてイスラエル軍のネツァ・ヤフディ(ネッツァ・イエフダ)大隊に対しても制裁を加えると発表しました。
この部隊は他のIDF(イスラエル国防軍)部隊とは異なり、純粋のシオニストによって編成されています。
この人々のイデオロギーは、過激入植者と同様で、西岸地区は神がユダヤ人に与えたものだと信じている人々です。
この西岸入植の強行が、パレスチナ問題の解決をどれだけ妨げていることか。

このような宗教右派は、ユダヤ教の聖典どおり政治をしなけりゃ夜も陽も明けない連中ですから、外交もクソもありません。
オスロ合意なんてとっくに失効、アブラハム合意など知ったことか、ハマスみんな死ね、ということです。
そのくせ自分らは兵役の義務がないというのですから、ガザの戦場で死ぬ心配はない、まことにいい気なもんです。
これではいくら米国が、湾岸諸国と友好関係を結ばせて、ハマスを干上がらせようとしても無駄です。
内政大事で外交が吹き飛ぶ、というイスラエルの宿痾が丸出しです。
こんな連中を率いてか、率いられてか、戦時内閣首相をやっているのがネタニヤフです。
逆にいえば、ネタニヤフが今政権の座にいる唯一の意味は、こんなイカレタ連中を説得できるからです。

「イスラエルでは多くのユダヤ教男子が、本来義務であるはずの兵役を免除されているが、ネツァ・イエフダ大隊は、およそ四半世紀前に、超正統派ユダヤ教男子を軍隊に組み込む目的で編成された歩兵部隊だ。同大隊は歴史的にヨルダン川西岸地区を拠点としており、一部の隊員はパレスチナ人に対する虐待に関係しているといわれている。
米国には、人権侵害を犯した外国の軍隊に援助を行うことを禁じる法律がある」
(AP4月24日)
米国イスラエル軍に制裁検討 「ネツァ・イエフダ大隊」(AP通信) - Yahoo!ニュース

米国は一方で制止しながら一方で容認し、片手で援助を与えながら別の手で制裁を加えるという複雑なことをやっているわけです。

 

 

 

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