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2024年5月16日 (木)

ワニの口論の破綻

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財務省には世界でも稀な奇習があって、国債を60年で償還するべしという自主ルールを作っています。
この償還のためだけに「債務償還費」として一般会計のなんと17.5%も使っています。
財務省の広報紙である日経はこんなことを書いています。

「財務省が2023年度予算案をもとに歳出や歳入の見通しを推計する「後年度影響試算」が17日分かった。国債の元利払いに充てる国債費は26年度に29.8兆円と、23年度予算案から4.5兆円ほど膨らむ。足元の長期金利を加味し利払い費の見積もりに使う10年債の想定金利を1.6%と前回試算から引き上げた」
(日経2023年1月17日)
国債費、26年度に4.5兆円増 財務省が想定金利1.6%に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「防衛費増額の財源を巡る自民党の特命委員会が16日に始まった。歳出改革や税外収入など増税以外の財源を模索する。国債の「60年償還ルール」見直しで財源を捻出すべきだとの案も浮上する。償還期間を延長・廃止しても、浮いた国債費を防衛費に使えば借金は膨らむ。借金返済の担保が消えれば、市場の信認を失う恐れもある」
(日経2023年1月16日)
防衛財源確保、「国債60年償還」延長論も 自民が本格議論: 日本経済新聞 (nikkei.com)

ふーん、「国債の償還ルールを守らねば、借金は膨らむ」ですか。
想定金利も1.6% だそうで、なにが根拠かしりませんが、目一杯上振れしています。
ここで日経が「4.5兆円膨らむ」と書いているのは、財務省が債務償還費まで含んで計算しているからです。
この債務償還費は、ただ積んでおくだけの予算で、なににも使い道がありません。
もちろん例によって、これも法律の定めでもなければ、論理的根拠も怪しいもので、勝手に財務省が前例踏襲しているだけの因習にすぎません。
これができたのは日露戦争の頃のことで、当時戦費が枯渇していた日本が、国債市場で国債の信任をとりつけるために作った苦肉の策だったのが始まりです。
そんなものを1世紀も後生大事に持っている財務省はなんと物持ちがいいんでしょうか。

「国債は10年などの満期が来ると、返済する必要があるが、一度に現金で償還することは難しい。このため、大部分は借換債と呼ばれる国債を出して借り換えた上で、毎年の現金償還を国債残高の約60分の1(1・6%)とするのが「60年償還ルール」だ。1966年度に建設国債の発行開始と同時に始まった日本の減債制度で、道路などの平均的な耐用年数から60年とした。戦後の日本の財政制度の根幹をなすルールだ」
(朝日2023年1月11日
国債の返済ルール見直し検討へ 防衛費の財源確保狙い、財務省は警戒 [自民]:朝日新聞デジタル (asahi.com)

この60年償還ルールという奇習に、日本で最初に気がついたのはエコノミストの会田卓司氏(クレディ・アグリコル証券チーフエコノミスト) でした。
21世紀政策研究所より政策提言報告書「中間層復活に向けた経済財政運営の大転換 

この中で会田氏は、1990年以降、一般会計の歳入と歳出のギャップが拡大しているという財政危機を語る人が必ず使う図を引き合いにだして説明しています。
下のグラフだけ見ていると、財務省 の言うように収入と支出の差がどんどん開いているように見えてしまいます。
この開いた口が歳入と歳出のギャップで、俗に「ワニの口」と呼ばれているものです。
なんだか日本がワニに呑み込まれそうでコワイですね。

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岡三証券 

さて、ここで会田氏が指摘しているのは、こんな「ワニの口」ができる原因についてです。
会田氏はこれが日本の財政運営における「60年償還ルール」にあると喝破しました。
実は、日本の予算(一般会計歳出)には国債の償還費が含まれているのです。
なんと日本は、現在の負債を60年後までに完済することができるようにせっせと毎年国債の元本を積み立てています。

ヘンな話です。60年というのは減価償却の発想から生まれています。
減価償却年数を定めで、積み立てていくわけです。
まるでサラリーマンの住宅ローンみたいな発想です。
しかしよく考えて見てください、庶民は60年後には死んだりリタイアするかもしれませんが、国家はなくなりません(あたりまえだ)。
だから国家が発行する国債は、60年たったら借り換えして先延ばしていけばいいのです。
世界中の国はそうやっています。

しかし日本だけは頑固にこの奇習を守ってきました。
するとこういう項目が予算に堂々と記されることになります。
右が米国の予算ですが、左の日本の予算のように「債務償還費」などという項目はありません。
これが世界ひろしといえど、日本にだけしかない「60年償還ルール」です。

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岡三証券


「日本政府は国債残高の数%を毎年償還(形式上は返済)してほぼ同額を国債発行(形式上は借入)によって賄う--つまりは債務の借り換えを行っています.どうせ借り換えをしている,さらに別に満期がきたわけではないのだなら借換をする必要もないのに,償還の部分は歳出(=出費)扱いをして,一方の借り換えの部分は歳入(=収入)として取り扱わない.この不可思議な慣習が生んだのが「ワニの口」なのです.
ちなみに米国の予算ではこのような不思議な取り扱いは行われません.景気過熱を防ぐために積極的に債務償還が必要……といった場合以外では歳出として扱われるのは利払い部分のみです.つまりは下図の赤色部分だけ日本の一般会計歳出は「盛られ」ている」
(飯田泰之2022年6月3日 )

ですから、このおかしな積み立てを止めれば、歳入と歳出のバランスは至って健全なものに変わります。
グローバルスタンダードにしてみるとこうなります。

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岡三証券

あら、不思議。ワニの口などどこかに消えてしまいました。
あるていどの経済成長がされれば、歳入と歳出の差は縮まっていくもので、コロナで大盤振る舞いした米国ですら景気がよいので財政環境は持ち直しています。

だからこの不思議な「60年償還ルール」をやめれば、1兆円など簡単にでてきます。

飯田氏はいみじくもこう述べています。

「ここからも,そもそもこれらのルールは「何か論理的な意味があって存在する」わけではなく,「なんとなくそれっぽい数字を並べて権威付けしているだけ」というのがわかります.
 財政関連ってこの手の「無駄な作法」がやたら多いんです.例えば,徳川幕府では会計を米方(米の収支)と金方(金銀の収支)にわけていましたが,両者の間には謎の繰り入れルールが入り乱れ・・・。
この手の「お作法」って何のためにあるのか.正直,ルールを複雑化して政治家(江戸期なら将軍・老中)が官僚の仕事に口出しできないようにするために存在するんじゃないかしら.いわば実務官僚の「お仕事の知恵」「処世術」と言ってよいのかもしれない」
(飯田前掲)

まったくそのとおりです。
岸田氏の防衛増税論は不毛そのものでしたが、こういう財務省の因習が分かったのだけは、よかったかもしれません。
財務省はたかだか1兆円を騒ぎ立てたために、とんだ藪蛇でした。


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コメント

そこらへんに下手に政治家が首を突っ込むと、あら不思議どこからともなくその政治家のスキャンダルないなんなりがマスコミに出てくるんじゃにでしょうかね?知らんけど。それか、選挙で対抗馬がでてくるとか?
いずれにしても、日本の政治家先生は何故か財務省さんには頭が上がらんですよね。

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