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2024年5月22日 (水)

頼清徳新総統の就任演説

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台湾の頼清徳(ライ・チンドォー)新総統の就任演説の要旨です。
福島香織氏の解説を参考にして付け加えます。
頼清徳新総統の演説要旨 「台湾をAIの島に」 - 日本経済新聞 (nikkei.com)


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「戦争の恐怖から解放を」 台湾の頼清徳新総統、就任演説で中国警戒:朝日新聞デジタル (asahi.com)

「1996年に選挙で選ばれた総統が就任し、台湾は主権独立国家だと世界に示した。初めて同一政党(民主進歩党)が3期続けて政権を担う。苦労して勝ち取った民主主義の勝利だ」

この部分ですが、頼総統ははっきりと「中華民国」という表現をとっていました。しかも9回も。
台湾独立派には正名運動というのがあります。

「台湾の公的な場で使用されている「中国中華(China)」という呼称を「台湾(Taiwan)」へ置き換え、台湾の存在を「中国の一部」から「中国とは別個の地」に代えることを目標としている。但し、ここでの中国、中華は中華人民共和国ではなく1945年以降台湾を実効支配している中華民国(Republic of China)に由来する名称である」
台湾正名運動 - Wikipedia

ここでいう「中華」や「中国」とは国民党の蒋介石が作った中華民国のことです。
ですから上の頼氏の写真には、国民党の党旗が中華民国国旗に入っています。
国旗を見ただけで蒋介石は他の政党を認める気がなかったのがわかりますが、中華民国3代目の総統となった李登輝が一気に民主化を押し進めて多党時代に突入しました。
民進党もこの民主化の流れの中で誕生した独立派の政党です。

ただし民進党は、台湾が独立すると口にした瞬間、中国が攻めてくることを知っていますから、「独立」という表現を使わず、かつ「中華民国」という国民党臭がこびりついた国名を使うことにも慎重でした。
蔡英文前総統もほとんど中華民国という表現を使っていませんでしたが、今回、頼新総統はそのタブーをあえて破っています。

「傲慢にも卑屈にもならず、(中台関係の)現状を維持する。中国が言論や武力での威嚇を停止し、共に台湾海峡と地域の平和と安定の維持に尽力するよう求める。中台は互いに隷属しない。
中華民国(台湾)の存在を中国が直視し、台湾人の選択を尊重するよう望む。中国が民主的な選挙で選ばれた合法的な政府と対等の原則の下で、対話と交流を進めることを望む。
ただ中国に幻想を抱いてはいけない。中国は台湾に対する武力侵攻の可能性を放棄していない。中国の台湾併合の企てが消えることはない。
民主主義国家と平和の共同体を形成して抑止力を高めて戦争を回避しなければならない」
(日経前掲)

つまりこれは、頼氏率いる民進党の台湾アイデンティティの現れで、もう台湾は国民党の私物ではないのだから中華民国でかまわないというのが新総統の考えです。

「国名問題に結論を出しています。中華民国じゃなくて、台湾が正名とかいう議論は些末な問題で、重要なのは民主パワーで団結すること、という立場を言明。
これで憲法問題、国名問題について頼清徳民主党政権として答えを完全に出したということです。なので頼清徳政権による国名変更も、憲法改正も当面ない、ということです。だから、国民党は台湾の政党として国家主権を守るという立場において民進党と協力、強調せよ、と呼び掛けているわけです」
(福島香織 note)

そしてそのうえで中国に対して「中華民国」という現実を直視し、侵略をしないようにと呼びかけました。

「台湾の国家としての存在をはっきりと中国に示し、その上で、中国が中華民国の存在という事実を直視し、台湾人民の選択を尊重するように、呼びかけました。
ここで「各位国人同胞(国民同胞のみなさん)」という呼びかけで、「(中国に対して)幻想を持つべきではない」と訴えているんですが、この国人という表現には、中華民国人(国民党、親中派)が強調されているように聞こえます。
そして抑止力による戦争回避の必要性をときました」
(福島前掲)

一方、議会(立法院)は、民進党も国民党も過半数をとれずにいます。
つまり三すくみ状態なわけです。
国民党は新総統の就任式に参加しないという子供じみた抵抗をしていて議員がひとりしか参加しませんでした。
これについて頼氏はこう述べています。

「立法院(国会)はいずれの党も過半数に達していない。各政党は競争だけではなく協力の信念を持つべきだ。国の利益は政党の利益より優先される」
(日経前掲)

この部分は中国にすり寄り、馬元総統のように中国と声を合わせてワンチャイナを叫ぶような国民党に対して、政争ではなく大局を見ろという意味です。

「16年ぶりに「3党とも半数以下」の立法院に言及。「人民至上」「国家優先」での協力を呼び掛けると同時に、中国にすり寄る国民党に牽制を入れました。すなわち、どんな政党であっても、政治権力のために国家主権を犠牲にするな、と釘をさしました」
(福島前掲)

そして経済については、AIイノベーションの島にすると宣言しました。

「台湾を「人工知能(AI)の島」にする。イノベーション主導型の経済モデルを発展させ、台湾に第2の経済成長の奇跡をもたらす。地政学的な変化をチャンスと捉え、半導体やAI、軍事産業、次世代通信といった産業を育成する」
(日経前掲)

日経が頼演説のタイトルにしているほどこの台湾のAI立国宣言は心強いものです。
これはTSMCの熊本進出を、今後も台湾政府も後押しするということです。

「今、誰もが夢にも思っていなかった大投資ブームが起きている。その牽引車は半導体の受託生産で世界最大手の台湾企業「TSMC」による熊本工場の始動である。2月に第1工場が完成したのに続いて、6ナノメートルの先端半導体を生産する第2工場の建設も決まり、第3工場も視野に入っている。これまでに決まった投資総額は3兆4000億円、日本政府は1兆2000億円の補助を約束している。熊本県ではこの投資ラッシュにより土地は値上がりし、人不足から賃金は上昇、交通渋滞が起きるなどブーム状態である」
日本半導体産業復活をけん引する「天の時、地の利、人の和」 | 武者リサーチ (musha.co.jp)

そして日本のみならず、世界の重要なAIサプライチェーンである台湾を世界は見捨てるなという意味になります。
全体を通して実にリアリズムに徹して、かつ壮大な理念に裏打ちされています。

 

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