プー・シュー会談の示すものとは
プーチンと習近平が首脳会談をしました。
もちろん下目のプーが、シューの足下に参上したのです。
プー5期め初の外遊といっても、プーは国際司法裁判所のお尋ね者ですから、行ける国は中国くらいしかありませんがね。
「北京 /モスクワ 16日 ロイター] - 中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は16日、北京で会談し、両国への圧力を強める米国を非難し、防衛・軍事関係をさらに深化させる「新時代」を築くことで合意した。
習氏は、中国はロシアの良き隣人、友人、相互信頼のパートナーであり続けると表明。現在の中ロ関係は容易に実現したものではなく、双方が大切にすべきだと述べた。
5期目の大統領就任後、初の外遊となったプーチン氏は、「われわれは国際法に基づく、多極化した現実を反映した、正義と民主的な世界秩序の原則を守っている」と述べ、中ロの協力関係は特定の国に対するものではなく、世界を安定させる要素だとの認識を示した」
(ロイター5月17日)
中ロ首脳会談、対米で結束 包括的戦略パートナー深化へ共同声明 | ロイター (reuters.com)
「中華」という概念自体世界の中心を意味しますから、「パートナー」という関係ではありえません。
ワン公の世界と一緒で、エライのはオレ様、中華こそが世界の中心、世界からオレ様を慕って来れば褒美をとらせるということです。
今回のプーへの褒美は弾薬の主原料であるニトロセルロースでした。
「ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、アメリカは、中国が軍事転用可能な物資をロシアに提供しているとして懸念を強めています。その1つで弾薬の製造にも使われる「ニトロセルロース」という物資のロシアへの輸出がウクライナ侵攻が始まったおととし以降、急増していたことが中国当局の公表データの分析で明らかになりました。専門家は、ロシアに対する軍事支援と考えられるとしています。
「ニトロセルロース」は、塗料やインクなど民生用として使われる一方、激しく燃焼する性質から弾薬の材料にもなり、軍事転用が可能な物資の1つです」
(NHK5月16日)
中国 ウクライナ侵攻後 ロシアへ軍事転用可能物資の輸出急増 | NHK | ウクライナ情勢
もっともチャイナは、他の国に売っている2倍の値段で売っているようですが、制裁を潜って売ってやっているのだから文句言うなということのようです。
ロシアは北朝鮮からは砲弾を、イランからはドローンを、そしてチャイナからは弾丸の材料を売ってもらってやっと継戦しているようです。
ウクライナ戦争の結果がどうなるかはわかりませんが、この借りをどう返すつもりのでしょうか。
まず、シューが初めにトランプを連れていったのが紫禁城の太和殿前の広場です。
この広場は皇帝が臣下を拝謁させる場所です。
下の映画『ラストエンペラー』にも登場しましたので、ご記憶の方も多いでしょう。
こういうかんじの場所を案内することに無意味なはずがありません。
この太和殿こそ、世界の中心を意味する「中華」の、そのまた中華。中国皇帝が、世界の真ん中で権力を叫んだ場所です。
習はここを貸し切りました。こんなまねが今の中国で出来るのは、彼しかいません。
ホワイトハウス前とは違うのですよ。
次にお茶の場所は宝蘊楼でした。ここは皇帝の宝物殿です。
トランプ大統領が訪れた故宮の宝蘊楼 百年の歴史誇る西洋風建築物--人民網日本語版--人民日報 (people.com.cn)
皇帝が臣下を謁見する紫禁城の太和殿前の広場で初顔合わせし,そして紫禁城を案内した後に宝物庫である宝蘊楼をみせびらかし、そして夕方からは、紫禁城内の王室公演施設である暢音閣で京劇公演を観覧しました。
ここも皇帝専用の劇場です。
そして演目は孫悟空が出てくる「美猴王」だったそうで、トランプ「王」などは中華皇帝の手のひらのゴクウだといわんばかりです。
この日のしめくくりの晩餐会は建福宮で行われました。ここは清の全盛期の皇帝である乾隆帝が鎮座ましましていた王宮です。
[コラム]ゴルフ、武器商人、そして皇帝 : 社説・コラム : hankyoreh japan (hani.co.kr)
というわけで、習のおもてなしは中華皇帝尽くしのコテコテの暗喩とも言えない露骨な教育でした。
ところで、この紫禁城の最長の支配者だったのが乾隆帝でした。
ここも重要です。乾隆帝は在位と退位した後の太上皇帝だった時期を合わせると、実に64年間に渡って、中華帝国の主人でしたが、これは中国皇帝として最長の支配期間となり、その間、乾隆帝は10数回の遠征に成功し、最大の版図を築き上げました。
なまぐさ坊主の聖地巡礼 世界史のミラクルワードルー十全老人・乾隆帝 (fc2.com)
実はこれがシューがイメージする中華帝国の版図です。
いうまでもなく台湾は領土、東南アジアと朝鮮半島全域と沖縄は朝貢国です。
日本とインドはそのどちらでもありません。
さて、習が自分を何になぞらえているのか見えてきましたね。
なぜこのようなものをトランプ「王」にみせたのかはお分かりですね。
自分は中国皇帝、それも乾隆帝であるという示威です。
シューが考える中華帝国と、自由主義陣営とは根本的に相いれません。
中華帝国が考える「法」は、上位者が下位の人民を縛るためのものにすぎません。
上位者、そのトップである支配者の中の支配者であるシューを縛るものはありません。
中華帝国とは、極端な人治国家ですから、権力者が自在に解釈を変更することが可能です。
一方、同じ「法」という言葉を使っていても、自由主義陣営においては「法の支配」(rule of law )を意味します。
「法」が国際的な秩序を定め、様々な取り決めを互いに遵守することが自由主義貿易に参加できる資格でした。
これが法治主義です。
世界で唯一の人治主義の理解者はロシアです。
プーだけが人間であり、その他は農奴でしかありません。
農奴に人権などはありませんから、ツァーリーの命令に従ってウクライナの戦場で生命を散らすのです。
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コメント
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いつも拝読しています。ありがとうございます。
今週の記事を読み、そして今日の記事の末尾〜
〜だけが人間であり、その他は農奴でしかありません〜
の文章からはたと気がつきました。
昨日のアホンダラ1号様のNHKへの指摘にもありますが、
今週の記事にある彼ら、財務省、総務省、NHKなどにも、
プー・シューと同じ、「賎民に対する姿勢」が感じられますね。
いつか正される時が来るのでしょうか。
投稿: ひだか | 2024年5月18日 (土) 06時13分
清王朝の6代目ですね。最も偉大なと言われてますけど、清の衰退への道筋を付けてしまったのが乾隆帝。
で、満州族中心国家の清王朝がなんだってぇ?
辛亥革命があって「王朝文化」は否定されたのに、よもや共産党政権のトップが王を名乗るのはちゃんちゃらおかしいという話です!
常連コメンターに「プー」さんがいるんですけど···
と、いっても訳すに「チン·ビンビン会談」ではヤバすぎますが(笑)
投稿: 山形 | 2024年5月18日 (土) 06時48分
プーも堕ちたもんですね。
G8からは追放され、NATOはどんどん東方拡大するし。いまや弟分だと思っていたシューに命綱を握られ、惨めにかしずかなければ戦争出来ないない立ち位置。いちばん頼っちゃならん人間に寄らなければならんとは。人間、孤立だけは避けたいものです。
ウクライナの主線は東部ではなくクリミアに置いているようで、来年には攻守逆転になりそう。
しかし、シューが乾隆帝とか。そりゃ、いくら何でもおこがましい。
だいいち満州族ですので、漢人のシューには辮髪をお願いしましょうかね。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年5月18日 (土) 17時42分
常連から脱落しないように頑張ります。
ウクライナそのものの行く末も大事ながら、
日本にとってはロシアの中国属国化で、
北方領土が中国領になったら、
返せのかの字も言えなくなってしまいますね。
中ロの対立抗争こそがその他の世界の平和と思うのですが、
二虎競食の良いネタは無いでしょうか。
投稿: プー | 2024年5月19日 (日) 20時56分