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2024年5月 2日 (木)

またイスラエルに突きつけられたパレスチナ国家承認問題

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また再びパレスチナ国家をイスラエルが認めるか否かが、交渉の焦点になっています。
というのは、ハマスがイスラエルの休戦案に対して回答を渋って、どうやらその理由がパレスチナ国家の承認にあるからのようです。

「ハマスは、昨日29日(月)、カタールとエジプトの仲介者に、イスラエルからの提案に対する返答を表明する予定だった。しかし、その内容について、「これまでと目立った違いはなかった」と述べ、合意する動きには出ていない。
イスラエルは、本日、カイロの代表団を送り出すとのことだったが、ハマスの返答を待つとして、派遣を保留にしたとのこと。
いわば、最後の試みであり、これで交渉が挫傷すれば、イスラエルのラファ攻撃が始まる可能性が高まっている」
イスラエルのラファ侵攻を防げるか:エジプトとアメリカが必死の仲介 2024.4.30 – オリーブ山通信 (mtolive.net) 

交渉のポイントは三つです。
これらは単独にあるのではなく、相互に関連し合っています。

ひとつめは、人質の解放。
ふたつめは、イスラエル軍のガザから撤退。
そして三つ目は、「戦後」にパレスチナ国家を認めるか否かです。

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タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

まず人質ですが、先週末にイスラエルは人質130人のうち、40人の解放を要求を引き下げて33人にしました。
というのは今130人の人質は相当数が殺されており、生き残っているのは33人ていどのようだからです。
またこの人質解放は、イスラエルが捉えているハマス側の捕虜との交換を通してなされていますが、今回、イスラエル側は数千人ともいわれるパレスチナ治安部隊の捕虜を返してもよいという大幅な妥協をしています。
たぶんこのことについて、イスラエルのさらなる妥協は無理なはずです。
ハマスのイスラエルに対する大規模テロとその際奪われた人質の奪還こそが、イスラエルにとっての戦争の大義でだからです。

2番目のイスラエル軍の撤退については、イスラエルは40日間の停戦を申し出ています。
これがギリギリのイスラエルの妥協線で、これを呑まねばラファ攻撃をすると言っています。
難民をエジプト国家虚のラファまで追い込んで、さらにそこに攻撃を仕掛ければ、見るも無惨な結果となるでしょう。
イスラエルはハマスの完全撃滅と引き換えにして、歴史に消しがたい悪名を残すことになります。

イスラエル内部でもラファ攻撃について世論が分かれており、反ネタニヤフデモがなんども行われています。
コロンビア大学にも飛び火して大規模デモが行われました。

「強硬姿勢を崩さない政府に対し、ラファ侵攻よりもハマスとの交渉をすすめて、人質解放を優先するよう、訴えるデモは毎週続けられている。
昨日29日、テルアビブで、数千人が、ラファ侵攻より、ハマスとの交渉を行い、戦闘ではなく、交渉で人質を取り戻せと訴えるデモを行った。こうしたデモは、反政府、ネタニヤフ政権打倒、また極右政治家たちへの非難を訴えている。今週も、警察と暴力沙汰の衝突となり、5人が逮捕された」
オリーブ山通信 (mtolive.net) 前掲

かねてから書いてきていますが、私は絶対にラファ攻撃はするべきではなく 、そもそも南部侵攻も誤りだったと思っています。
南部侵攻すれば必ずいっそうの地獄をみることは明らかで、よしんばそれでハマスを根絶やしにできたとしても、イスラエルの国際的地位は地に堕ちることでしょう。
そして新たに生まれたパレスチナ人の犠牲者や難民の中から、新たなハマスの戦闘員が生まれます。
ハマスはイランがあるかぎりなくなりません。
いたちごっこは終わらないのなら、北部を緩衝地帯としておくだけで充分だったはずです。
どこかで現実と妥協せねばならなかったにも関わらず、ネタニヤフはテロを防止できなかった失態を隠すためかとことんまで突っ走りました。

3番目は戦後処理の問題に絡んできます。
ハマスがどんな答えをするにせよ、「戦後」は来ます。
いかなるイメージでパレスチナの「戦後」と復興を考えるのかが問われる時期に入っています。

実はこれについてイスラエル内部で意見が割れているように見えます。
戦時内閣にも一定のパレスチナ自治を認めてもいいのではないかという考えが生まれています。

民間人の犠牲を減らすよう求める国際社会の圧力や、予備役の動員による国内経済への影響があるとみられます。
ガラント国防相はまた、戦闘が終結したあとのガザ地区の統治について「パレスチナ人が責任を持つ」と強調しました。一方で、治安維持のため、イスラエル軍がガザ地区で自由に活動できるようにすべきだとしています」
(日テレ2024年1月5日)
イスラエル国防相 ガザ北部で“標的絞った作戦に移行”方針示す - YouTube

ガラント国防相はネタニヤフと同じリクードですが、ネタニヤフのように「ガザは『ハマスタン』にも『ファタハスタン』にもならない」という頭からの拒否ではなく、イスラエル軍の一定数の駐屯を前提してパレスチナ自治政府を認めてもいいようなニュアンスです。

実はこのパレスチナ自治政府を認めることは米国の強い要望でした。
精力的に中東を飛び回るブリンケンはこう言っています。

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イスラエルポスト

「パレスチナ国家への道筋を提供することは、より広い地域を安定させ、イランとその代理人を孤立させる最善の方法だと、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は木曜日、カイロでのガザ戦争をめぐる熱狂的な地域歴訪を終えた際に述べた。
イスラエルとアラブ諸国の間を行き来するブリンケン国務長官は、紛争がレバノン、イラク、紅海の航路にさらに広がる恐れがあるにもかかわらず、ガザでの流血から前進する方法を推し進めてきた。
ブリンケン国務長官は、エジプトのアブデル・ファタハ・アル・シシ大統領との会談後、記者団に対し、この地域は2つの道に直面していると述べ、1つ目は「イスラエルが統合され、地域諸国と米国、そしてパレスチナ国家からの安全保障の保証とコミットメント、そしてパレスチナ国家が統合される」と述べ、
「もう一つの道は、テロリズム、ニヒリズム、ハマス、フーシ派、ヒズボラによる破壊を、すべてイランが支援するのを見続けることだ」と彼は述べた。
最初の道を進むと...それこそが、イランを孤立させ、疎外し、我々にとっても、この地域の他のほとんどすべての人にとっても、非常に多くの問題を引き起こしている代理人を疎外するための唯一の最善の方法だ
(イスラエルポスト1月11日)
ブリンケン国務長官:イスラエルがパレスチナ国家への道筋をつけることは、孤立化するための最良の方法である - エルサレム・ポスト紙 (jpost.com)

この考え方は、単なるイスラエル支援に限らず、中東全体の鎮静化の見地に立って見ています。
ここでイスラエルが強硬策に走ってラファを陥落させ、さらに戦後処理において一切のパレスチナ人の自治も許容しないなら、逆にそれはイランとその手先のテロリストを喜ばせるだけだとブリンケンは考えています。
ガザに残ったイスラエル占領軍は、敵意に満ちた住民に包囲され、復興を指揮する主体なきままに混沌の渦が残されます。
その渦の中から新たなハマス戦闘員が大量に育っていくはずです。

ブリンケンが今試みているのは、仲介役から脱落しそうなカタールから、エジプトとサウジ、ヨルダンに軸足を動かすことです。
そしてそのサウジははっきりとパレスチナ国家の承認を条件に上げています。

「アメリカはそれでもまだ諦めていない。Times of Israelによると、昨日から、中東全体を視野に入れて情勢沈静化を目指すアメリカのブリンケン国務長官が、皮切りとなるサウジアラビアを訪問している。
アメリカは、イスラエルにサウジアラビアとの国交正常化という大きなアメをもたらすことで、ガザへの侵攻を思い止まらせようとしている。ブリンケン国務長官は、サウジアラビアの後、イスラエルとヨルダンを訪問する予定である。
サウジアラビアは、イスラエルとの国交を、受け入れてもいいと匂わせながらも、パレスチナ国家をイスラエルが認めることを明確な条件にあげている。
このため、ブリンケン国務長官は、イスラエルにパレスチナ国家を認めるよう、圧力をかけている」
オリーブ山通信 (mtolive.net) 前掲

そもそもハマスがこの時期にイスラエルに無差別テロ攻撃を働いたのは、サウジとイスラエルの国交正常化が日程に上っていたからです。
これはトランプの置き土産であるアブラハム合意の延長ですが、サウジやヨルダンとイスラエルが国交正常化することで、最大にして共通の敵であるイランを孤立化できます。

イスラエルにとっても、サウジアラビアとの国交正常化はきわめて魅力的な話でしたが、喉に引っかかったトゲとなったのがパレスチナ国家承認でした。

いまのアッバスが率いるパレスチナ自治政府は全身をハマスに蝕まれていますから論外ですが、ブリンケンがいう「刷新されたパレスチナ自治政府」ならばありえる未来なはずです。
今、またこのパレスチナ国家承認問題という難問がイスラエルに突きつけられたことになります。
イスラエルはどう答えるでしょうか。

 

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コメント

 ブリンケンの話は非常に分かりづらく、「(イスラエルが)パレスチナを国家として認める事=イランの孤立化達成」という図式の実現性に疑念があります。少なくも、甘すぎると思います。サウジやカタールを信用し過ぎでもあろうと思います。

つい先月、米国は国連においてパレスチナの国家承認について、拒否権を発動して阻止しました。その理由は、ハマスに限らず数々のテロを生み出して来たパレスチナの過去、現在でもその温床として機能し続けている最中であり、改善の動きもないことをあげています。
同じアメリカ政府なのに言っている事が結論として違うわけですが、これは国家承認に関しての「主導権」の問題なのでしょう。
ならばブリンケンの言う「刷新されたパレスチナ自治政府」というものの実現のための具体策は何なのか? そこが問われているのではないでしょうか。
この件でカービー報道官の説明を聞いても具体策めいたものは一切あらず、ただ「大枠で(概念的には)イスラエルも理解をしめした」と言ったのみ。

また、中国の仲介で北京にファタハとハマスの代表者を招集していて、かつてサウジが成し得なかった両者の和解をやろうとしています。
つまり、「刷新されないパレスチナ政府」でパレスチナ国家を立ち上げようとしているのです。こうした逆風のなか、どうにもバイデンやブリンケンでは力不足に感じてしまいます。リベラルの取って付けたような曖昧さ、言葉をその場しのぎに使う傾向にネタニヤフのような右派が納得するとも思えない。

イスラエルがこうした状況のなか、なし崩し的にパレスチナの国家承認を認める事は非現実的です。あるいはアメリカやサウジからのイスラエルへの安全保障に関する保証の如何によるのかも知れません。
また、記事にもあるように、ラファに突っ込んで行くことがイスラエルにとって本当に必要なのかどうか?ここは「大局」とは別に、疑いがあります。

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