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2024年5月 3日 (金)

もしイスラエルがラファに進軍すれば

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まだ、イスラエルをやっているのかといわれそうですが、米国の大学へ飛び火したように、この交渉の結果いかんで中東情勢だけではなく、世界情勢も大きな影響を受けざるをえません。
ウクライナ戦争もそうですが、地殻変動は好むと好まざるととに関わらず戦争を原因として起きます。
在野の素人ですので限界はありますが、可能なかぎり具体的にガザ戦争の行方を追っていくつもりです。

イスラエルを訪問していたブリンケンの調停は不調に終わりそうです。
現時点でわかっているイスラエル側提案はこのようなものです。
ハマスがイスラエル提案に否定的も交渉は継続と時間稼ぎ様相 :ネタニヤフ首相はどう決断する!? 2024.5.2 – オリーブ山通信 (mtolive.net)

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mtolive.net)

第一段階(少なくとも40日間は攻撃を停止)
① 人道支援物資のトラック(燃料を搭載した50台を含む約500台)が、毎日ガザへ入るとともに、避難住民がガザ北部へに戻る。イスラエル軍は、これが可能になる程度に撤退する。
② イスラエル軍は、上空の監視を1日8時間停止する。人質交換の日は10時間、上空監視を停止する。
③ この間にハマスが解放する人質は、生存している33人(女性と女性兵士、19歳以下の子供、高齢者と病人、負傷者)
④ イスラエルは、女性と子供の人質1人あたり、20人のパレスチナ人女性と未成年テロリストを釈放する。
高齢者、病人、負傷者の人質1人あたり、やはり病気や負傷しているパレスチナ人(50歳以上で、懲役10年以下)を釈放する。
女性兵士の人質1人あたり、20人の終身刑と、20人の懲役10年以下のテロリスト、つまり40人を釈放する。
どのテロリストを釈放するかは、ハマスがリストを提出できる。
⑤ 第一段階がはじまってから16日目から、停戦に関する交渉を始める。

第二段階(次の42日間)
① 持続可能な停戦についての話し合いをする。

② 男性と兵士の人質を解放し、イスラエルは交換にパレスチナ囚人(人数は不明)を釈放する。
③ イスラエル軍がガザから完全に撤退する。

第三段階(次の42日間)
① 双方が遺体を交換する

② ガザの復興5年計画を開始する(ハマスは非武装とする)

実現可能な、よく考えられた提案です。
ラファ問題は別にして、イスラエルとしては最大限の譲歩なはずです。
しかしこれも頓挫しました。なぜか。
最大の原因は、ハマスが時間稼ぎのために回答を渋っているからです。
しかも交渉はするが回答は先伸ばしにするという見え見えの時間稼ぎです。
よく日本や米国のリベラルは、イスラエルにだけ戦争は止めろと言いますが、戦争をしかけたのもハマス、虐殺を始めたのもハマス、市民を楯にした戦争をしているのもハマス、そして休戦提案に乗ってこないのも、ハマス側だということを忘れないでほしいものです。

「ハマスとの戦争が始まって7ヶ月になろうとする今、イスラエルとハマスの人質と停戦に関する交渉が、カイロで続けられている。今はイスラエルからの提案をハマスが検討している状態にあるが、ハマスは、これには否定的ながら、それでも交渉は続けるという態度をとっている。www.jpost.com/israel-hamas-war/article-799480
ラファへの攻撃を前に、ハマスの態度は、時間稼ぎにみえる。もし、このままの状態で、イスラエルがラファへの攻撃に踏み切った場合、ハマスとの交渉は頓挫するとみられる。これはすなわち、人質を全部見捨てることにほかならないと、イスラエル国内では、懸念と政府への反発が高まっている」
ハマスがイスラエル提案に否定的も交渉は継続と時間稼ぎ様相 :ネタニヤフ首相はどう決断する!? 2024.5.2 – オリーブ山通信 (mtolive.net) 

ゴチャゴチャ言ってないで、人質を解放しさえすればガザ戦争は終わりなのですが、最後の最後まで手放したくないようです。
人質は戦争の中連れ回したために大部分が死亡し、いまや彼らの延命のための保険として生かしているだけのことです。
どこまで卑劣なのかと呆れます。
ハマスの狡猾さはいまさらですが、ことここに至っても健在で、なにがなんでも交渉を引き延ばし延命したいということのようです。
生き残ってガザの復興に忍び込みたいのでしょう。
彼らを完全排除せねば、ブリンケンが言う「パレスチナ自治政府の刷新」などは絵に描いた餅にすぎません。

そしてもうひとつ、イスラエル側にも頑迷このうえもないキャラが居すわっています。
ネタニヤフがいまだこう息巻いているからです。

ホント馬鹿じゃなかろか、この男。

「リヤド/エルサレム(CNN) イスラエルのネタニヤフ首相は4月30日、イスラム組織ハマスとの停戦交渉の結果にかかわらず、パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファに地上侵攻すると述べた。エジプトが提案した新たな停戦の枠組みは現在、ハマスが検討しているが、今後の交渉に影響が出る恐れがある。
イスラエル首相府によると、ネタニヤフ氏はガザに拘束されている人質の家族に、イスラエル軍の部隊は「(交渉案の)合意の有無にかかわらずラファに侵攻し、ハマスの戦闘員を排除する」と伝えた」
(CNN5月1日)
イスラエル首相、停戦合意にかかわらず「ラファ侵攻」 - CNN.co.jp

「停戦交渉とは関係なくラファに進軍させる」なら、そもそも今やっている停戦協議なんぞ止めてしまえばよい。
今なんのために停戦協議をしているかといえば、ラファにイスラエル軍を入れないためですから、お話になりません。
ラファはエジプト国境の街で、エジプトの安全保障にもダイレクトに響くことはいうまでもありません。

そうさせたくないから、ブリンケンは汗水流して中東を走り回り、仲介を投げ出したがっているカタールをなだめすかし、湾岸諸国随一の軍事国家であるサウジを巻き込み、かつエジプトを交渉の舞台にすることで西側自由主義陣営の枠組みを建て直していたのです。
それを一切無視して、こういうことを放言するというのは、じぶんの国が自由主義陣営に属していることを忘れたのかと、ブリンケンは思ったことでしょう。
イスラエルはひとりで戦っているわけではないのです。
ネタニヤフでは平和的交渉による解決は不可能です。いますぐにでもヘルツォグに代わって欲しい。

さて、ここでイスラエルがラファに軍を侵攻させれば、いくつかのことが連鎖的に拡がります。
エジプト、ヨルダン、サウジは、イスラエルとの接近を諦めるでしょうから、米国が描いたイランを共通の敵と見立てた陣形の成立は不可能となります。
G7各国もサジを投げて、異形の国としてイスラエルを見始めるはずです。
したがって、イスラエルは中東のみならず世界の友を失います。

そしてもうひとつの連鎖反応はイランに出ます。
イランはイスラエルの孤立の隙をついて一機に核開発のゴールに向かうことでしょう。

「イラン最高幹部は核兵器の開発について費用が利点を上回ると判断している――同国の核開発を注視している人々は長い間、そう考えていた。兵器能力が手の届くところにある「核敷居国」として、同国は核兵器開発の試みが発見された場合に起こり得る戦争の危険を冒さずに、既に相当の抑止力を享受している。
 しかし今年に入り、この見解が揺らいでいる。イスラエルとの緊張が高まる中、イランの最高幹部からは、核兵器製造の専門技術習得が近いことをうかがわせる発言が相次いでいる」
(ウォールストリートジャーナル5月1日)
イラン核開発、イスラエル攻撃で高まる懸念 - WSJ

つまり、いままでイランは核開発の能力は持つがギリギリで核開発をしない「核敷居国」として充分に抑止力を持っていたが、一気にホンモノの核保有国となる意志を持ったという見立てです。
イランはいまでもこれだけの核施設を持っています。

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WSJ

「イラン当局者は核能力をほぼ獲得したと発言することでこうした思考をあおっている。元イラン副大統領で、過去に同国の核開発の中心人物だったアリ・アクバル・サレヒ氏は2月に放送されたインタビューで、同国が「核科学と技術の全ての敷居」を超えたと述べ、イラン原子力庁のモハンマド・エスラミ長官はのちにこのコメントを繰り返した」
(WSJ前掲)

イランが言う「核科学と技術の全ての敷居を超えた」という意味は核開発のめどがついたという意味です。
簡単に言えば、核兵器を保有する直前まで行っているということで、それは実戦配備可能だということです。
現実には、ミサイルに搭載するだけではなく、トラックや船などに載せられて自由に移動可能なポータブル原爆を考えているようです。

「米シンクタンク・科学国際安全保障研究所(ISIS)のデービッド・オルブライト所長は、イランがトラックや船で運搬が可能な最低レベルの核兵器を2~3個作るには半年しかかからないだろうと話した。
2021年、イランはウラン金属――高濃縮ウランを核兵器に必要な高密度に変えるために不可欠――に関する作業を再開。現在は核爆発を引き起こすのに必要な高性能爆薬のパッケージについて前進したようだ」
(WSJ前掲)

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WSJ

いや、イランにはIAEAの査察官が常駐し、公的な濃縮施設はカメラで見張られている上、イランの核活動は西側の情報機関が厳しく監視しているから大丈夫だという意見があります。
しかしIAEAの査察はイランの核開発の現状に追いついていないことはIAEA自身も認めています。

「IAEAのラファエル・グロッシ事務局長は先月、イランの作業に対する可視性の縮小は、イランの核開発計画が平和的なものであり続けることを必ずしも保証できるわけではなくなることを意味すると警告した。
「IAEAの査察官がジグソーパズルをつなぎ合わせられるか、憂慮している」とグロッシ氏は話した」
(WSJ前掲)

こういった中で、イランはウラン濃縮度を兵器級にまで上げ、すでにそれを搭載する弾道ミサイルも各種保有し、さらにはトラックでイスラエル国内に搬入できるまでになっているのです。
ハマス残党が核爆弾を持ったらどうするのですか。彼らは核の自爆デロくらい朝飯前ですよ。

そしてイランが核保有すれば、宿敵サウジは万難を排して核開発に進むでしょう。
そうなればイスラエルも、いままで公然の秘密だった核保有を明らかにせねばなりません。
イスラエルは90発以上といわれる核を保有しています。
これは疑惑ではなく公然の秘密であって、イスラエルは保有をあえてあいまいにする戦略をとっているだけのことです。

イスラエルの核開発は、二度とホロコーストを受けないというユダヤ民族の決意そのものであり、それはユダヤ人を海に追い落とせと叫んで四方から攻め込んで来るアラブ諸国に対する恐怖が背景にあったのです。
これは今に至るもいささかも変化しないイスラエルの根っこにある感情です。
これはイスラエルが、米国の核の傘(拡大抑止)に入っていないことを意味しています。
言い換えれば、米国には止められないのです。
「イスラエルの核」という複雑なパズル: 農と島のありんくりん (cocolog-nifty.com)

いままでイスラエル一国だった核が中東全体にひろがっていきます。
これがいわゆる核の連鎖です。

イスラエルの安全保障にとっていいことなのかどうか、イスラエルは冷静に判断したほうがいい。


 

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コメント

 そうすると逆に、ラファに進軍しなかった場合はどうなるか?
二個大隊と言われるハマスの戦闘員は温存され、これから先もハマスによるガザ市民の搾取が続く。さらに苛斂誅求が激しくなるでしょう。
ハマスが、イスラエルが譲歩した案に乗れない理由は、ここにおいてもガザ市民なんかより組織維持が大事だからです。
よって、市民を盾に取る事に味をしめた成功体験は必ず繰り返される事になります。
また、居座り続けるハマスがいる限り、ブリンケンの言う「刷新されたパレスチナ政府」など増々絵空事にすぎず、中共の目論見どおりのパレスチナが完成するのを見る事にもなりそう。

しかしながら、イスラエル国民の大勢はラファ侵攻に反対で、「交渉によって人質返還を求めるべき」なのです。これも考えものですが、国軍やモサドが圧倒的な支持を受ける時代は過ぎたとも言えそう。
ネタニヤフは右派に追われるか、大多数のリベラルな国民に追われるか? 本来なら早期退陣すべきだったのでしょうが、それはそれでハマスの思うつぼだったと思えます。


根っこには宗教的矜持があって、イスラエルは「ワシらは古来より神に選ばれし民なのだ、アラーなどと土人のふざけた新興宗教とは違うのだよ」、イスラムとしては「古臭いユダヤと違って、ありがたやムハンマド様が真の預言者として最も正確に神のコトバを伝えたのだ、改宗しない石頭の猿どもめ」と、最初から相手を見下してるんで、マトモな協議をする気なんて起きないんですわ。話し合いというのは相手の都合も聞き入れて妥協するということですが、劣等な相手に妥協するなど、負けたも同然だとプライドが許さない。

世俗的な日本庶民の感覚からは推し量れない「絶対に負けられない、神は敗者には死しかお望みにならない」という悲壮な宗教的信念があって、それが互いの国内世論の土台を形成しているように思えますわ。「まあまあ、それじゃ両者のまん中をとって…」という日本式じゃあ、全然収まるハズもないし、国内世論も許さず突き上げをくらう。ブリンケンさんはアメリカ式に「冷静になってビジネスをしよう、これは取引だ」として色々ヤリクリしたんでしょうが、宗教を支柱とした国家には不誠実なやり方として映ったんでしょう。

思い返せばネタニヤフ首相の、ハマスの越境攻撃を察知していたのに政治的に利用しようとしたらイランの後援もあってハマスの攻撃が想定外に大規模で大殺戮を許してしまったという大チョンボが、この双方の世論が容易に妥協できないという状況を作り出してしまった。その意味では、ネタニヤフ首相閣下が「ワシの大チョンボや、ワシのスケベな功名心が悪かった、もうワシ辞めるわ、神よ弱き私を許したまえ」と勇退して、サムライのようにハラキリして下されば、状況はかなり好転すると思いますわ。

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