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2024年6月 8日 (土)

米国の新和平提案の中身とは

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ガザ戦争はあいかわらずしっこっており、先が見通せません。
米国の案提案は概要しかわかりませんが、3段階にわかれているようです。

「AFPが確認した草案には、「5月31日に発表された新たな停戦案を歓迎し、ハマスに対して同案を全面的に受け入れ、合意内容を無条件で遅滞なく履行するよう求める」との文言が盛り込まれている。
 バイデン氏は5月31日、イスラエルが完全な停戦に向けた行程表を提示したと発表。3段階から成り、紛争終結に向け6週間かけてイスラエル軍がガザの人口密集区域から撤退する一方、ハマスは人質全員を解放、さらに、ハマスには権限を与えずにガザの復興計画に着手するなどと説明していた」
(AFP6月7日)
米、ガザ停戦へ国連決議案の草案発表 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

これは安保理に対しての米国案としてでてきたものですが、米国は「中東諸国を含めさまざまな国の指導者や政府の支持を得ている」と言っています。
米国は湾岸諸国で最大のハマス支援国であるカタールにも圧力をかけています。

「CNNの報道によると、カタールはハマスに対し、アメリカとイスラエルが提案した停戦協定を受け入れるか、さもなくばドーハからの追放に直面するという最後通牒を突きつけた。
停戦を達成するための米国の外交キャンペーンの一環として、米国はイスラエル政府のメンバーに取引を受け入れるよう強い圧力をかけてきた。CNNは、カタールに対しても、交渉の結果を出すよう、同様の圧力をかけていることを明らかにした」
(エルサレムポスト 6月7日)
カタールはハマスに停戦を受け入れるか、ドーハから追放すべきだと告げる - エルサレム・ポスト (jpost.com)

いまハマスの親玉であるイスマイル・ハニヤは確かにカタールに豪邸を構えて拠点としていますが、カタールから追い出されたらレバノンにでも移転すればいいだけのことです。
これしきの圧力でこたえるようなハマスではありませんから、直ちにゴネ始めました。

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ロイター

「エジプトの関係者によると、ハマスは提案の特に第2段階について懸念を示しているという。
ホワイトハウスが発表した計画の概要によると、第2段階には敵対行為の恒久的な停止とイスラエル軍のガザ撤退が含まれている。
ハマス幹部のサミ・アブ・ズーリ氏は6日、ロイターに対し、いわゆるバイデン案を歓迎するものの、米国が国連安保理に示した草案はイスラエルの停戦案を基にしていると指摘。「イスラエルの文書は無期限の交渉や、占領軍が人質を取り戻し戦争を再開する段階について述べている」とし、そうした文書は受け入れられないと仲介国に伝えたと語った」
(ロイター6月7日)
ガザ休戦交渉、進展見られず バイデン氏発表の提案にハマス難色 | ロイター (reuters.com)

まぁ、要はガザの復興計画からハマスを排除するというのが気に食わなかったのでしょう。
一方、イスラエルの原則は一貫して頑迷なまでに不変です。

「しかし、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相側は、ハマスの軍事・統治能力の破壊を含め、「すべての目標が達成されるまで」戦闘を続ける考えに固執。米国との足並みはそろっていなかった」
(AFP前掲)

しかし、ハマスを物理的に完全殲滅することは可能でしょうか。
イスラエル軍は、現在ラファでいままでになく神経の行き届いた作戦をして市民の巻き沿いを防ごうとしていますが、それでも誤爆や誤射が絶えません。
人口密集地域で掃討作戦をすれば必ずそのようになるのです。
したがって必ずハマスはなんらかの形で生き残り、イスラエルの国際的立場はいっそう悪化します。
イスラエルは、どこかで現実との折り合いをつけねばなりません。
とはいえ、折り合いをつけるためには、最低でもガザ地区の最高指揮官であえ、10月7日越境テロの計画実行の主犯であるヤヒヤ・シンワルを逮捕せねば収まりがつかないでしょう。

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ヤヒヤ・シンワル
Xユーザーの黒井文太郎さん

シンワルは1962年にハンユニスの難民キャンプで生まれ。
1987年に発足したハマスに初期から加わり、その軍事部門のカッサム旅団の創設者です。
つまり初めからテロリストの指導者としてハマスに関わっていきます。
1989年、いすらえるによって逮捕され、殺人や誘拐の罪でイスラエルの刑務所に収監されますが、2011年、イスラエル兵1人の解放と引き換えに1000人余りのパレスチナ人受刑者が釈放された際に、シンワルも釈放されました。
今回もイスラエルは人質交換で大量にハマスの収監者を解放していますが、これは後に恐ろしい結果をもたらすのは、イスラエルもよくわかってのことでしょう。

2015年にはアメリカ政府が国際テロリストに指定され、2017年にガザ地区の指導者を務めていたイスマイル・ハニヤが政治部門のトップに選出された際、その後任としてシンワル氏がガザ地区のトップに選ばれました。
ハニヤの直属の腹心であり、かつ、イランのコッズ部隊との連絡役でした。

米国は水面下でイスラエルにこのシンワルの所在について、調停案とを納得させる意図で情報提供をほのめかしたようです。

「バイデン政権はイスラエルに対し、ラファ侵攻を思いとどまらせるためにハマス幹部の居所に関する機微なインテリジェンスの支援を提案した。イスラエルの情報機関モサドは、少数の要人暗殺で多数の犠牲者が出る戦争を回避できると考えてきた経緯がある。一方、ネタニヤフ首相は暗殺に消極的で、モサドとはむしろ対立関係にあったという。冷戦期から緊密に協力してきた米CIAとモサドは、ネタニヤフ首相に暗殺カードを切らせるか」
(榛名幹夫6月7日)
米国がハマス幹部情報をオファー:イスラエル首相は「暗殺カード」を切るか:春名幹男 | インテリジェンス・ナウ | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト (fsight.jp) 

ネタニヤフはこのシンワル情報について冷やかに受け取ったはずです。
なぜならシンワルの居所についてはCIAと緊密に情報交換しているモサドが知らないはずがありませんから、ネタニヤフに暗殺を進言しているはずです。
この暗殺方針はモサドが一貫してとってきたもので、陰険に見えるようですが、空爆や地上進攻作戦と違って市民を巻き添えにしません。

それが実行されてかったのは、一にネタニヤフが軍事力の解体を優先しているからです。
憶測にすぎませんが、ネタニヤフはシンワルの居場所を知っていて、ハマスの戦闘力を解体しきるまであえて泳がせているのかもしれません。

かくして、ネタニヤフが戦時内閣にトップに座っているかぎり、この提案も拒否されるでしょう。
この男を降ろさない限り戦争は続きます。

ネタニヤフに対して独自案を主張しているガンツ国防相の回答期限が今日午前に切れます。
おそらく彼の党(国民統一党)は離脱することになりそうです。

「ベニー・ガンツ国防大臣は、先月ベンヤミン・ネタニヤフ首相に突きつけた最後通牒を履行し、ハマスが敗北したシナリオで誰がガザ地域を支配するかを規定することを含む、ガザ紛争の合意されたビジョンへのコミットメントを要求し、土曜日の夜までに、彼の国民統一党の政府からの撤退を発表する予定だ。(略)
先月の最後通牒で、ガンツは、人質の返還、ガザのハマスの排除、10月7日以降、ガザの北部と南部の家を追われた何千人ものイスラエル人の帰還を認めること、そして「すべてのイスラエル人が国家に奉仕し、国家の努力に貢献する[軍/国家]奉仕の枠組みを採用する」ことを含む計画を策定するよう、戦争内閣に要求した。

彼の要求には、政府に「アメリカ、ヨーロッパ、アラブ、パレスチナの要素を含む、ガザの国際的な文民統治メカニズムを創設し、それはハマスでも[パレスチナ自治政府の]マフムード・アッバース議長でもない将来の代替案の基礎にもなる」こと、そしてパレスチナ国家を創設するための実行可能な道筋を約束してきたサウジアラビアとの正常化を進めることへの呼びかけが含まれていた」
(タイムス・オブ・イスラエル)
ガンツは土曜日の夜に連立を離れると予想されていますが、彼は留まるように圧力をかけられています|タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

妥当な提案です。
戦後枠組みも協議せぬまま、市街地戦闘を拡大し続けるネタニヤフは正気とは思えません。
たぶんガンツの離脱でも戦時内閣は揺るがないでしょうが、労働党も似たような発言をしていますから、選挙をすればネタニヤフを引きずり降ろすことは可能なはずです。

 

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コメント

 あまり報道されませんが、現在でもハマスからのロケット弾攻撃はイスラマバードに向けて発射され続けています。
しかも、ラファ地区からです。
このような状態のなか、可能か否かは別にしてネタニヤフがテロ組織である「ハマスせん滅」を鳴らすのは当然じゃないでしょうか。

問題は、国際法的に民間人の犠牲をイスラエルが可能な限り抑える事をしていたかどうか?にかかっています。ガザ保健当局なるハマスの出先機関からの発表では民間人犠牲者数もさだかではなく、犠牲者が全く出ない事が国際法自衛権の要件ではありません。

また、ガンツはガザ地区からハマスを一掃し、ガザ地区を非武装化すると言っています。ガンツはどうやってガザ地区からハマスを一掃するのでしょうか?ハマスを撲滅するとしているネタニヤフの主張と大差ありません。
現在のところ、外見的には米国の提案はイスラエルの承認済みであり、G7はじめ湾岸諸国も支持するところです。
先に枠組みを拵えて同意を基礎にする。現実は条件闘争が延々と続くんでしょうが、ハマスが提案を一蹴する事は政治的に困難な状況を作り出しているとも考えます。

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