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2024年6月25日 (火)

ガザ戦争に投影された超正統派と世俗派の対立

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イスラエルのガザ戦争に対する国論は分裂しています。
整理すれば、今のイスラエルにはガザ戦争についておおよそふたつの立場があります。

一つ目は、ネタニヤフとイスラエル右派の立場です。
イスラエル右派は、ユダヤ教超正統派を基盤としています。
シンクタンク「イスラエル民主主義研究所」によれば、イスラエルの超正統派は130万人近くに上り、かつては9%程度だったものがいまや人口の約14%を占め、出生率は全国平均を大きく上回って、急速に拡大しています。

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イスラエルの宗教モザイク/イスラエルについて | シオンとの架け橋 (zion-jpn.or.jp)

超正統派が拡大するのは、特権がいくつもあるからです。
その最大のものは、徴兵免除と税金の減免です。

「イスラエルの超正統派は電力や水道の供給に至るまで世俗派(の税金)に依存している。超正統派の割合が増えれば全般的に生活の質が落ちる」
(産経2022年11月1日)
「超正統派」に「世俗派」が反発 揺れるイスラエル - 産経ニュース (sankei.com)

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イスラエル「超正統派」ユダヤ人の間で感染拡大…戒律重視で礼拝規制も無視 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

このような超正統派に与えられた特権が、イスラエルの国家統合を阻んできました。
超正統派は、非妥協的戦争の完遂を目指せと主張していますが、皮肉にも兵役を免除されていました。

「イスラエルでは、基本的に国民皆兵が導入されているが、フルタイムで宗教を学ぶ超正統派の男性は、建国初期から続く政策に基づき、多数が免除されてきた。建国当時の1948年ごろに徴兵免除になったのはイェシーバーの学生約400人のみだったが、現在は18~26歳の超正統派の男性約6万6000人に上っている。
この問題は長らくイスラエル社会を分断しており、超正統派も他のイスラエル国民と同様、国家安全保障に貢献するべきだという声も上がっている」
(AFP2024年4月15日)
兵役免除は「道徳的」に許されない ユダヤ教超正統派閣僚 イスラエル

宗教保守派が兵役を拒否するのは、(ふざけた話しですが)女性や他宗派、さらには同じユダヤ教でも世俗派などとは共に軍隊に勤務できないと主張するからです。
彼らは一切の妥協を拒み、ハマスの物理的完全殲滅を目指しており、戦争後もハマスの復活を許さないと言い続けています。
また戦後のガザ統治についても、パレスチナ国家はおろかいまあるパレスチナ自治政府すら否認しています。
いうまでもなく、ヨルダン川西岸の植民者を撤収させる気など毛頭ありません。
なぜなら、神が与えたもうた土地だからで、そう聖書に書かれているからです。
神が出てくると、一切の妥協を拒否し、みずからの民族的利害を一歩も譲ろうとしません。
ネタニヤフ政権は、この超正統派を支持基盤にしています。

何事もない平時なら、それはそれとして通用したでしょうが、戦火が拡大し戦死者が増大し続け、国際的孤立が進行しても、あいも変わらず頑なに過激なことを鼓吹している超正統派に大きな反発が生まれました。
なんせ自分は戦争に出ないでナニを言っているのか、という反発が出て当然です。

この世論に押されて、兵役適期の青年層の宗教学校学生も徴兵対象とする法改正が行われました。

「イスラエル議会は10日、ユダヤ教超正統派の宗教学校生も徴兵対象に含める徴兵法改正法案の予備採決を行い、法案成立に向けて前進した。
ユダヤ教超正統派の兵役免除は長年、イスラエル社会に分断をもたしてきた。ネタニヤフ首相率いる連立政権が免除廃止に向けた方策を打ち出すと、連立政権内の超正統派系政党から強い反発を招き、紛糾が続いていた」
(ロイター2024年6月11日)
イスラエル議会、徴兵法改正に前進 ユダヤ教超正統派も対象に | ロイター (reuters.com)

ネタニヤフは戦時内閣という野党まで含んだ大連合を組んだはずなのに、結局は自分の支持基盤である超正統派のいう通りではないか、という声が高まっています。
この声は米国政府内にも拡がり、いまや国際社会の孤児と化そうとしています。

それに対してもうひとつの考え方は、世俗派の見方です。
彼らは軍や情報機関、あるいはイスラエル労働党やキブツなどの社会主義勢力にまで広く分布しています。

ガザ紛争においては世俗派は、IDFと諜報機関という形で政権内部に現れ、首相府を取り巻くようなデモはネタニヤフを確実に追い込みました。
軍部というとイケイケのイメージですが、極めて冷静、かつ、したたかです。

彼らは、いままでの四方を敵とした4次に渡る苛烈な戦争を経て勝利してきました。
多くの土地を軍事占領しながら、それを返還するという政治的妥協を知っています。
すべてが神の与えたもうた土地だなどというおとぎ話など信じていたら、ジェノサイドを経てカナンの地に辿りついたユダヤ民族はとうに滅亡していたでしょう。
したがって彼ら世俗派は、超正統派をイスラエルに必要不可欠なものとして重要視していると同時に、敬して遠ざけています。

今月、ガンツ前国防相とアイゼンコット元参謀長が戦時内閣を離脱しました。
IDFはいまや反ネタニヤフの旗幟を鮮明にしており、元来ネタニヤフとは不仲だったモサドも同調しているようです。
いままで水面下での軋轢でしたが、軍を代表するガンツが戦時内閣を脱退し、そのうえIDFスポークスマンのハガリまでもが公然とこのようなことを記者会見で言い出すようになっています。

「イスラエル国防軍のスポークスマン、ダニエル・ハガリ少将は水曜日、ハマスのテロ集団を根絶するというイスラエルの戦争目標は達成不可能だとし、ベンヤミン・ネタニヤフ首相と国防高官の間のガザでの戦争の扱いをめぐる緊張を強調しているように見えた。
「ハマスを破壊し、ハマスを消滅させるというこのビジネスは、大衆の目に砂を投げつけているだけだ」と、ハガリはチャンネル13のインタビューで語った。
「ハマスは思想であり、ハマスは政党だ。それは人々の心に根ざしており、ハマスを抹殺できると考える人は誰でも間違っている」と彼は続けた。ハガリ氏はまた、「もし政府が代替案を見つけなければ、(ハマスは)ガザ地区に残るだろう」と警告した。
これに対し、ネタニヤフ首相の事務所は声明で、安全保障内閣は「ハマスの軍事力と統治能力の破壊を戦争目標の一つと定めた」と述べた」
(タイムス・オブ・イスラエル2024年6月20日 )
イスラエル国防軍のスポークスマン、ハマスを壊滅させることはできないと発言、首相から反論「それが戦争の目標だ」 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

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国防軍のスポークスマン、ダニエル・ハガリ少将
タイムズ・オブ・イスラエル

このハガリのコメントは、先月、軍がハマスを一掃したガザ地区に戻る必要があるのは、テロ集団の代わりに誰がガザ地区を支配するかについて政府が決定を下さなかった結果ではないかと尋ねられたときの発言です。
ヨアブ・ガラント国防相は、ネタニヤフにガザの戦後統治計画を進めるよう促し、5月には、ハマスに代わるものを見つけられなければ、テロ集団が再編成し、飛び地の支配を再び主張することができるため、イスラエルの軍事的成果が損なわれると警告しました。

ガラント国防相はこう述べています。

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ヨアブ・ガラント国防相
|タイムズ・オブ・イスラエル

「イスラエル国防軍は、ハマスの残存大隊を解体し、人質の居場所を突き止め、テロリストを排除し、(ハマスの)密輸ルートを封鎖するために、ラファで活動している。
しかし、ハマスがガザの市民生活を支配し続ける限り、ハマスは再建と強化を行う可能性があり、イスラエル国防軍は帰還し、すでに活動している地域で戦う必要がある。ガザ地区におけるハマスの統治能力を解体しなければならない。
この目標の鍵は、軍事行動と、ガザ地区における統治の代替案の確立である。
そのような代替案がなければ、ガザにおけるハマスの支配か、ガザにおけるイスラエルの軍事支配かという、2つの消極的な選択肢しか残されていない。
優柔不断の意味は、ネガティブな選択肢の1つを選択することです。それは、我々の軍事的成果を損ない、ハマスへの圧力を弱め、人質解放の枠組みを達成する機会を妨害するだろう」
(タイムス・オブ・イスラエル2024年5月15日)
本文: 勇敢な首相、イスラエル軍の排除を要求、ハマス後のガザ地区の文民統制 |タイムズ・オブ・イスラエル (timesofisrael.com)

さらに、ガラントは、ネタニヤフの連立政権の超正統派が提唱しているような、戦争終結後のガザにおけるイスラエルの軍事支配の考えを排除するようネタニヤフに呼びかけています。
このガラントに同調し、イスラエル国防軍参謀総長のヘルジ・ハレヴィとシン・ベト(イスラエル総保安庁)のローネン・バール、国民統一党首の元国防相のベニー・ガンツも戦時内閣を辞任しました。

 

 

 

 

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コメント

イランもライシ死亡で大統領選挙ですけど、あくまで特殊な支配体制のイスラム宗教国家でユダヤとは絶対に相入れませんからねえ。

ええ、イスラエルはパレスチナが「約束の地」だと(旧約)聖書に書いてあります。見方を変えると2000年前のベストセラー本ですけどね。世界史好きでかなり面白いので高校時代に完読しました。
で、イエスを磔ににたのはユダヤ人なので後のキリスト教(ローマカトリック)とは犬猿の仲。中世ヨーロッパのルターたちの宗教革命に至り、今やバラバラ。
イスラムでもエルドアンより前のトルコのように「世俗的な」緩いイスラム教国もあったんですけど、どちらも先鋭化してますね。

イスラエルは極右というか純粋な連中が兵役免除といった特権があるのに、現場で戦うのは世俗派という矛盾。そりゃあ国内分裂しますわ。
ネタニヤフは右派の支援で政権維持で「辞めたら死ぬ」状態になってますから、全く身動きが取れないんでしょう。50年前と違ってエジプトやシリアが今のところ冷静なのが唯一の光明か。

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