小池女史の手法は「敵」を作ること
有本香氏は、『「小池劇場」が日本を滅ぼす』の中で、小池氏の政治が、同じように「劇場型政治」と言われながらも、小泉氏や橋下氏とは根本的に違うとしています 。
その理由を3つの「ないない尽くし」があるからだとして、 こう言っています。
「小泉純一郎氏、橋下徹氏の『劇場』には、賛否は別にして,はっきりとした『演目=実現したい政策』があった。小泉のそれは『郵政民営化』に代表される構造改革であり、橋下には『大阪都構想』と銘打った大阪の再編という大命題があった。
しかし小池劇場にはこれといった演目が『ない』 。
強いて挙げれば、小池本人が言った『黒い頭のネズミ捜し』であろうか。つまり、前任者や政敵の『吊るし上げ』劇だが、数カ月もメディアと共に大騒ぎしたわりには、罪人は一人も見つかっていない」
(有本香『「小池劇場」が日本を滅ぼす』)
「敵」を仕立て上げて、それを叩くことで己の政治目的を達しようとするのは、古来よくある政治手法ですが、ここで問題となるのは小池女史に「政治目的」と呼べるようなものがあるのか、ということです。
私はないと思っています。小池女史にとって政敵を叩くこと自体が「目的」だからです。
彼女が取った石原氏の百条委員会でのつるし上げなど、まさに文革の人民裁判を彷彿とさせるものでした。
病身ながら、出席した石原氏は堂々の論陣を張りました。
その結果、何か石原氏の都政ガバナンスに問題点がみつかったでしょうか。
なにひとつ見つかりません。それは一見ワンマン型に見える石原氏が、東京都のシステムを尊重して、議会と官僚に諮りながら慎重に移転作業を進めたからです。
http://www.huffingtonpost.jp/2016/12/12/yuriko--st...
小池女史は政敵を「叩く」ことについて貪欲です。しかしそれは小泉、橋下両氏と大きく異なっていました。
「つぎの『ない』は、正規の手続きがないことだ。
小泉、橋下は『既得権益をぶっ壊す』ことを訴えて喝采をあびてはいたが、日本の民主主義のシステムをぶっ壊すことはけっしてなかった。
当然ながら、2人は行政の長として手続きをきちんと踏んでものごとを決め、執行した。小泉の『破壊劇』の後ろには財務省のエリート官僚がついていたし、橋下は法律家だ。そのあたりは抜かりはない。
ところが、小池は違った」
(有本前掲)
小池女史は口を開けば「ブラックボックスの透明性」と言いますが、それは自分だけは例外です。
思い出してみましょう。わずか2カ月先に迫っていた豊洲市場への移転をちゃぶ台返ししたわけですが、それはどのような手続きを踏んで、どのように執行されたのでしょうか。
議会には諮りましたか?いや、なにひとつ諮らずに、わずかの側近、それも外部から「小池チーム」として連れてきた側近とだけ相談し、独断で延期すると叫んだのではありませんでしたか。
この豊洲移転は20年間に渡って続けられたもので、その政策決定過程に「ブラックボックス」などではありません。
都庁には膨大な議事録が積み重なっており、都議会事務局には審議記録が山のようにあったはずです。
しかもそれは秘匿情報ではなく、完全に一般市民も閲覧できるものでした。
「ブラックボックス」など初めからなかったのです。
少し検索すれば、豊洲になぜ選定されたのか、その汚染土壌をどのように処分して、どのような汚染防止策をとったのか、東京ガスとどのような取り決めをしたのか、すべて詳細に分かります。
この積み上げを一瞬にして破壊してみせたのが、小池氏でした。しかもひとりの独断で、なんの手続きも踏まず、議会にも諮らずに。
このようなガバナンスのスタイルを、私は「独裁」と呼びます。
三つ目の「ない」を有本氏は、「ファクト(事実)に基づくロジック(論理)がない」ことを挙げています。
豊洲移転は小池氏一人の独断で決定したために、途中から迷走を開始します。
そもそもメディアが騒いだような豊洲の安全性には、なんの問題もなかったからです。
私は当時豊洲移転問題を三つに切り分けました。
①豊洲の安全性評価
②東京都のガバナンスのあり方の問題点
③豊洲移転と都政利権
これらがなんの問題もなかったことが分かるに連れて、小池氏はメチャクチャなことを口走り始めます。
「2月末、現在の築地市場の安全性か問われた際に、『コンクリートとアスファルトでカバーされており、法令上も問題がない(から安全)』 と答え、それなら同じく被覆されている豊洲も安全ではないか、と問い返されると、『地上と地下を分けるという考え方は、消費者が合理的に考えてクエスチョンマークだ』と支離滅裂な答えを返し、数日後、『豊洲は安全だが、安心がない。築地は安心もある』との珍回答をした」
安全性は始めから問題はなく、そもそもメディアと共産党がヒ素が出たなどと騒いだ地下水は排水路に回されて、魚や野菜にかけるものではありませんでした。
五輪施設の工事にも入札手続きに瑕疵はなく、政治家が介在や談合の不正はなにひとつ見つかっていません。
自分が仕掛けた「革命」が不発に終わったとみるや、窮したあげく小池女史が言ったのが「豊洲と築地の両方をAIで決めた」ですから、もはや爆笑ものです。
このような小池氏が目指したのは国政、しかも首相でした。
当時、週刊誌などは「安倍惨敗退陣・小池首相誕生」とブチあげていました。テレビは小池絶賛一色。
メディアは小池新党がどのような政策を持っているのか、ひとことも触れません。それはメディアの愚かさもありますが、そもそも小池氏やその新党に政策などと呼べるものがなかったからです。
小池氏の支援者だった二階堂氏が政界から去り、東京15区の補欠選で敗北し、国政復帰の道は断たれたように見えます。
さてさて、小池さんもう一回都知事をやるんでしょうか。
やるなら、自分の経歴の「ブラックボックスの透明化」をしたらいかがでしょうか。
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天安門に差し替えで記事を一日寝かせているうちに、小池出馬断念という話も入ってきましたが・・・まだソースはFACTAだけのようです。
投稿: 山形 | 2024年6月 5日 (水) 01時52分
もし小池が出ないとなると、蓮舫確定でしょうか…この世の地獄ですね。
投稿: ねこねこ | 2024年6月 5日 (水) 13時26分
でもまぁ、蓮舫より幾分マシなのではないですかね。
石原さんや内田、豊洲に切り付けてスタートしたワケですが、今や自民党の政策は小池のものでもあるというのが現状です。
なお、一番マスコミの注目を浴びられるカタチで出馬表明したいし、自民党との演出的距離感をどう作り上げるか?って考えているところでしょ。
まともな候補者が誰もいない、すごい選挙ですね。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年6月 5日 (水) 17時31分