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2024年6月13日 (木)

南シナ海、天気晴朗なれども浪高し

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日本のメディアはのほほんと政治資金規正法改正がどーたら、小池氏参戦などとやっていますが、南シナ海の軍事緊張が急速に高まっています。
中国の海警及び海上民兵とフィリピン沿岸警備隊は、たびたび衝突しており、今年大では本格的戦闘に発展する可能性があります。

「南シナ海における中国とフィリピンの緊張が高まっている。中国は南シナ海のほぼ全域を「九断線」で囲み、内側の島嶼の領有権と海底資源の権利と管轄権を主張する。周辺国は、このような主張が国際法、とりわけ国連海洋法条約と合致しないとして争いが起きている。
このような中、以前より中国の海警局の所属船(海警船)や海上民兵の船がフィリピン沿岸警備隊(PCG)の巡視船や補給船に接近し、かろうじて衝突を回避するケースが多く報じられてきた。そのような中で、2023年の2月に海警船がPCGの巡視船にレーザー光線を照射し、一時的に乗組員の視界が遮られたと報じられた。
その後8月には中国海警がPCGの巡視船に対して放水銃を使用する事件が発生した。
さらに9月には中国が南シナ海のスカボロー礁に全長300メートルにも及ぶ網状の障害物を設置し、フィリピン漁民の漁業や船舶交通の安全に支障をきたす事件が発生した。この障害物は、のちにPCGのダイバーによって撤去された」
( 海上保安大学校教授 古谷 健太郎)

古谷 健太郎 | 著者・研究員紹介 | 国際情報ネットワークIINA 笹川平和財団 (spf.org)

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南シナ海でフィリピン軍船と中国海警局の船が衝突 互いに非難 | NHK | 南シナ海問題

今回の衝突は、南シナ海のセカンド・トーマス礁(フィリピン名アユギン礁)付近で発生しました。
セカンド・トーマス礁は、南シナ海のスプラトリー諸島の中央付近に位置しています。
下図を見ていただくとわかりますが、スプラトリー諸島には例の悪名高きファイアリークロス礁とミスチーフ礁には、すでに中国軍の軍港と滑走路が建設されてしまって要塞化されています。
この両人工島にはさまれるようにしてウィットサン礁がありますが、2021年3月には中国は海上民兵の船舶を220隻も結集させて、フィリピンに圧力をかけています。

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 JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

「多数の中国海上民兵船が集結しているのは、南シナ海・南沙諸島を形成するユニオン堆(たい)と呼ばれている環礁群の中で最も大きい環礁(満潮時は水没する暗礁)のウィットサン礁である。この環礁はフィリピン沿岸から200海里以内に位置しており、フィリピン政府によるとフィリピンの排他的経済水域内ということになる」
(北村淳2021年3月25日)
中国船220隻が集結、8つ目の人工島を建設か? 武装海上民兵が乗船、完全に舐められたバイデン政権(1/4) | JBpress (ジェイビープレス) (ismedia.jp)

フィリピ政府は激しく中国に抗議していったん状況は鎮静化したものの、去年12月また中国民兵船団が活動を開始しました。

「フィリピン沿岸警備隊は3日、南シナ海・南沙(英語名スプラトリー)諸島のウィットサン礁付近に中国の海上民兵の船団135隻以上が「不法」に集まっていると発表した。沿岸警備隊の巡視船2隻が海域に派遣され、無線警告を行ったが、反応はなかったという」
(2023年12月3日)
南シナ海に中国の民兵船団135隻が集結 フィリピン「不法」と警告 - 産経ニュース (sankei.com)

そして今年に入ってセカンド・トーマス礁で座礁したフィリピン海軍の廃船に陣取って実効支配を宣言しているフィリピン軍に対して、中国海警は補給船の進路を妨害したり、レーザー光線を照射するなどの激しい圧力をかけています。

「フィリピン側は、中国海警局の船舶が放水銃を使用し、セカンド・トーマス礁(フィリピン名・アユンギン礁、中国名・仁愛礁)に座礁させた軍艦への補給任務を妨害したと指摘。放水銃を発射された船はガラスが割れ、4人が負傷したものの、乗船していた高官にけがはなかったという」
(ロイター2024年3月7日)
フィリピン「最も深刻な事案」、南シナ海の中国船衝突で | ロイター (reuters.com)

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JBpress (ジェイビープレス)

このセカンド・トーマス礁は領海などの海域の基準となるフィリピンのパワラン島の群島基線から約104海里(約192キロ)、中国の海南島の基線からは約598海里(約1,107キロ)の距離にあり、フィリピンはその基線から200海里以内であるため、国連海洋法条約に基づき、フィリピンの排他的経済水域の一部であると主張しています。
中国は例によって一切の国際法上の根拠を明確にしないまま、中国が管轄権を有する海域であるとの主張を行なっていますが、国際社会はこのような言辞を認めないでしょう。

ところで、スプラトリー諸島はベトナムも領有権を主張しており、「チュオンサ諸島」と呼称しています。
1972年、当時の南ベトナムはパラセル諸島を、中国に奪われました。
中国はベトナムから米軍が地上撤退して、米国にベトナム近海に関与する意思がないことを見計らって、これを強奪しています。

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上の写真は侵攻してくる中国軍と戦う旧南ベトナム軍ですが、中国は戦闘機、軍艦まで繰り出しました。
米国の庇護を失って、亡国の道を滑り落ちていた南ベトナム政権には止める手だてはありませんでした。
中国は泥沼のベトナム戦争から足抜きしたいという米国の意志を見抜いて、領土拡張に走ったのです。
当時の北ベトナム(今の現政権)は、中国に支援を受けていたために沈黙していましたが、後に深く後悔することになります。
なぜなら、ベトナムの前庭に拡がる西沙諸島は中国の内海となってしまったからです。
沈黙の代償に、ベトナムは統一後の1988年に、
南沙諸島のファイアリー・クロス礁を中国によって奪われています。
皮肉にもベトナム戦争におけるベトナムの勝利が、東南アジア全域からの米国の後退をもたらしたからです。
この軍事的真空につけこんだのが中国でした。

ちなみに、よく「米軍は沖縄から出て行け」などと軽く言う人たちがいますが、そんなことやってしまったら、1972年に米国が南シナ海に作ってしまった軍事的真空と同じものを東シナ海に作ってしまうことになります。
残念ですが、東アジアの軍事力バランスは米国と自衛隊が共同で支えてなんとか保たれているのですから、米軍という大黒柱が消滅してしまえば自衛隊単独でこれを支えることは不可能です。
1972年から始まった悪夢が尖閣、宮古・八重山を襲うことになるでしょう。

1995年、南沙諸島のミスチーフ礁を中国が占拠していますが、これも1992年から米軍がフィリピンから撤退したのを見計らって奪取し、そのまま居すわって軍事基地を建設したものです。
国際海洋法で否認されている水面下の岩礁を建て増しして、いまや完全な軍事基地と化しています。
このミスチーフ礁の中国軍事基地のグロテスクな成長ぶりのビフォア・アフターです。
いい機会ですから一挙公開してみます。

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1995年頃。満潮時には水面下に隠れる岩礁に乗った岩礁勇士。よほど悪いことしたんだろうな。

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1990年代終わり頃か。岩礁からパイルを打ち込んで、海上石油基地もどきの海上基地に成長しました。

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2000年代初頭。海底の泥を汲み上げて陸地化させる埋め立て技術で、立派な島になりました。既に大型貨物船がつく桟橋もあるようです。

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ジャーン、2017年頃。ほぼ完成しました。ビルが立ち並び、長距離爆撃機が発着できる滑走路、軍港、商用港、対空ミサイル陣地、兵舎、グラウンドも設置されています。

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こちらはスビ礁。同じくビルと工場が立ち並び、工場写真手前には3千メートル級の滑走路もあります。
岩礁を埋め立てて作った基地なんて言うと小規模なものを連想しがちですが、とんでもなくバカデカイものだとお分かりになったでしょうか。

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CNN

こうして一気に時系列で並べると、水面下の岩礁から一大軍事要塞を作ってしまうというまさに毛沢東の「愚公、山を移す」の教えに沿って着々と岩の上にも三年をやっているようです(褒めてんじゃねぇぞ)。
おそらく尖閣諸島を中国が奪った場合、彼らは島々の間を埋立て、大規模軍事基地建設をするんでしょうね。

フィリピンは、いまでは死ぬほど後悔していますが、途上国が溺れやすい反米民族主義に陥った結果、よせばいいのに米軍のクラーク空軍基地と、スービック海軍基地を追い出してしまったからです。
このような悲惨な事態になって、新たに米比相互防衛条約を締結したようてすが、この「失われた20年」はあまりにも大きかったようで、フィリピンも前庭の南沙諸島を中国の軍事要塞に変えられてしまいました。
若い頃に毛沢東思想にかぶれていたドテルテも、やっと昨今目が醒めたようです。

島だけならまだしも、そこを領土と宣言して領海、接続海域、EEZを設定してしまいますから、今や南シナ海全域が中国の海と化してしまっています。
中国の南シナ海領有の目的は、ひとつには中国の一帯一路の海上ルートが南シナ海からインド洋に伸びているためです。
ならば国際海洋法を遵守して公海としてその安定に協力すればよさそうなものですが、彼らの発想の影には常に軍事支配がちらつきます。
中国はこの海域一帯を軍事基地として利用し、SLBMを搭載する戦略原潜を配備可能な自分だけの海、つまり「内海」にしたいのです。

この南シナ海を軍事的に我が物とできればビンの蓋の役割を果たしてきた日本列島・南西諸島・台湾を迂回して南シナ海ルートで太平洋の深く広大な海へと戦略原潜を放つことが可能となります。
これにより、中国が建国以来追及してきた核の三本柱(戦略原潜・地上発射弾道ミサイル・長距離爆撃機)の最後の一枚である戦略原潜が完成します。

もっともこの人工島は軟弱地盤なので、昨今は不同沈下しているのが認められているようです。(笑)

 

 

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コメント

欧州各国の軍艦がこの海域を通過しているわけだけど、先日の習近平歴訪では完全にソッポ向かれたわけで。
同海域通過で同じEU加盟国でもオランダ艦には酷い嫌がらせをして平然と誇示。でもトルコ海軍のコルベットには何もしない。厚顔無恥だけど強国やそこそこ友好的な相手には配慮するという分かりやすいちっこいヤツだな。
エルドアンはプーチンと仲が良くて権威主義ですから。

今ロシアはBRICS外相会談を開催しているけど、開催場所がねえ。これがプーチンのメッセージだと。。

日本でもフィリピンでも良いですが、こっそりじわじわ、海面下で工作して、この島もどきごと全部沈没させられませんかね。

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