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2024年6月 7日 (金)

米国、ウクライナにロシア領に米国兵器使用を限定的に許可

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米国がウクライナに米国製兵器によるロシア本土の攻撃を認めました。
遅すぎた感がありますが、画期的なことです。

「バイデン政権は、ウクライナがロシア国内(ハリコフ近郊のみ)で米国が供与した武器を使用して攻撃する許可をウクライナに密かに与えたと、3人の米国当局者とこの動きに詳しい他の2人の関係者は木曜日に述べた。
米政府高官の1人は「大統領は最近、ウクライナがハリコフで反撃目的で米国の兵器を使用できるようにするようチームに指示した。そうすれば、ウクライナはロシア軍に反撃したり、攻撃の準備をしたりできる」と述べ、ロシア国内での長距離攻撃を認めない方針は「変わっていない」と付け加えた」
(POLITICO 5月30日)
バイデンはウクライナに米国の兵器でロシア国内を攻撃する許可を密かに与えた - POLITICO

いままで、供与された米国製兵器はウクライナ領(クリミア半島を含む)地域のみでの使用を許可されていました。
そのためにロシア領からのミサイル攻撃や空爆に対して対処するには、ウクライナ領に入ってから落すしかなかったわけです。
ミサイルは対処するリードタイムが短いのですから、本来ならロシア領にいるうちから落してしまえばいいのに、わざわざ危険を承知でこんなことをしていたのです。

また通常の戦争では、相手のミサイルや空爆の攻撃の発射する基地(策源地と呼びます)を攻撃するのが常識ですが、米国はそれを武器の使用制限をすることで禁じました。
こんな制限をかけているために、ロシアは思うままにウクライナにミサイル攻撃と空爆をかけてきました。
つい最近も1日100発の攻撃をエネルギーインフラと民間住宅地にかけています。

「ウクライナへの侵略を続けるロシア軍は5月31日~6月1日、ウクライナ各地のエネルギー施設を狙い、計100のミサイルと無人機で攻撃した。南部ザポリージャ州にある同国最大の水力発電所が稼働を停止するなど被害が出ている。
ウクライナ軍の発表によると、露軍は一方的に併合した南部クリミアやカスピ海上空の爆撃機などから弾道ミサイルや巡航ミサイル53発、露南部プリモルスコ・アフタルスクから無人機47機を発射した。ウクライナ軍はミサイル35発と無人機46機を撃墜したとしている」
(読売6月2日)
ロシア軍が合計100のミサイル・無人機攻撃、ウクライナ最大の水力発電所が稼働停止 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)

このロシアの民間インフラの攻撃のために、ウクライナは発電能力の半分を失い深刻な電力危機に陥っています。

「ウクライナの発電能力について「侵攻前の発電能力は約55GWで欧州最大級だったが、現在は20GW以下に低下している。政府関係者は1日の被害がもたらす影響について『今年の冬は暗闇と寒さの中で生活することになる』『これがウクライナの新しい日常になる』と、キーウ経済学院のボリス・ドドノフ氏(エネルギー気候変動研究センター長)も『何の対策も講じられなければ来年1月までに国民が使用できる電力は1日2時間~4時間になる』と述べた」と報じている」
ロシアはウクライナの発電の半分以上を奪った (ft.com)

とうぜんのこととしてウクライナはこのロシアの攻撃に対して、米国兵器のロシア領に対しての使用許可を求め続けてきました。
発電所や送電網をロシアの好き放題に攻撃できる状態で復旧しても意味がないからです。
しかしロシアとの戦争のエスカレーションを恐れるバイデンは頑として許しませんでした。
このバイデンの煮え切らない態度が、ウクライナの窮地を招いてしまいました。
すべて後手後手。
プーチンは攻撃したい場所を、好きな時に攻撃できるのてすから、いまさらエスカレーションの脅威もナニもあったもんじゃありません。

やむなく妥協線として、ハリコフに向かって発射されたロシアのミサイルや、ハリコフ近くのロシア国境のすぐ東に集結している部隊や、ウクライナ領土に向けて爆弾を発射するロシアの爆撃機を撃ち落とすために、米国製兵器を限定的に使用していました。

POLITICOによれば、2024年5月30日「バイデン大統領が秘密裏に米国製兵器によるロシア領内の攻撃を許可した」「米国製兵器の使用はハルキウ方面を攻撃するロシア軍や軍事目標に限定される」「今後も米国製兵器を使用したロシア領内への長距離攻撃を認めない」と報じられています。
ここでいう「米国製兵器」とは、HIMARSで使用するGMLRSのことです。
GMLRSはGPS誘導のロケット弾で射程は70km以上で、HIMARSから発射可能なATACMSは使用できません。
さらに射程が長いATACMS(射程300キロ)の使用は認められていません。

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ATACMSMay2006 (cropped) - MGM-140 ATACMS - Wikipedia

これはロシア軍が5月10日に開始した国境を越えてハルキウ北部への侵攻の再開に対応したものです。
ロシア軍のこの新たな攻勢は、ウクライナ東部、南部戦線にあるウクライナ軍の戦力を、ハルキウ北部に割かせる戦略だと考えられます。

ウクライナ軍、ロシア軍双方ともに兵員が枯渇しています。
ウクライナの兵員不足は深刻で、動員法が施行されました。

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NHK

「ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナでは、18日、軍への動員をより厳格に行うための改正法が施行されました。
兵力で上回るロシア軍に対抗するため兵員不足が課題となる中、動員逃れを防ぎ、公平性を担保することがねらいです。
ロシアによる軍事侵攻後、ウクライナでは総動員令が出され、18歳から60歳の男性は原則、出国が禁じられ、対象年齢の男性は軍から動員される可能性があります。
改正動員法によって、18歳から60歳の男性は18日から60日以内に住所や家族などの個人情報を軍に登録することが義務づけられるほか、登録したことを証明する書類を常に所持することも義務づけられます。
軍事侵攻後の混乱で、多くの人が避難や転居を余儀なくされる中、動員の対象となる男性の人数や所在を把握することで動員逃れを防ぐため、登録を行わなかった場合には罰金や車の運転の制限などの罰則が設けられています」
(NHK5月19日)
ウクライナ 兵員不足で軍への動員逃れ防止へ 軍に住所登録などを義務化 | NHK | ゼレンスキー大統領 

一方ロシア軍の損耗もひどく、おそらく数十万人規模の死傷者を出しているはずです。
それにもかかわらず、前線の兵力を拡大したり、ハリコフでの攻勢をが可能なのは、人権を無視できる全体主義国家特有の仕組みがあります。

「ロシア軍はウクライナ軍との2年2カ月あまりにおよぶ激しい戦いで、戦車、歩兵戦闘車、榴弾砲など各種装備を1万5300点あまり失った。人員も数十万人損耗した。ウクライナ軍の損害はその3分の1ほどにとどまっている。
一方で、ウクライナに進駐しているロシア軍の規模はかつてないほど大きくなっている。米欧州軍の司令官で北大西洋条約機構(NATO)の欧州連合軍最高司令官を兼任するクリストファー・カボリ米陸軍大将は10日、米下院軍事委員会で「ロシア軍の規模は(2022年2月に)ウクライナに侵攻した時点よりも15%拡大している」と証言した。「この1年で、ロシアは前線の兵員数を36万から47万に増やした」
そうできたのは、ロシア政府が志願兵への報酬を増額したのに加え、2022年後半に約30万人を動員したからだ。さらに、新兵をウクライナの戦線に迅速に投入するために、ロシア軍が基礎的な訓練を短縮しているという事情もある」
(フォーブス4月13日)
ロシアの戦車はあと1年で枯渇か、死傷者も年30万人ペース ウクライナ正念場(Forbes JAPAN) - Yahoo!ニュース

とうぜん、このようなまともな訓練も受けないで前線に駆り出された兵士は死にに行くようなものです。

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ロシアの動員兵は最低限の準備で前線に配置される=英国防省 (ukrinform.jp)

「しかし、こうした訓練不足の新兵は前線で長く生き残ることはできない。ウクライナ国防省の発表では、ロシア軍はこのところ1日に800~1000人の人員を失っている。
ロシア兵はウクライナに到着するとすぐに死ぬ。エストニア国防省は昨年の研究で、ウクライナ側が今年、ロシア軍に10万人の死者・重傷者を出させれば、ロシアの動員努力を崩壊させるとまではいかなくとも、それに恒久的なダメージ与えられると分析していた。
現在、ウクライナは年30万人のペースでロシア軍の人員を損耗させている。ロシアはこれほどの人的損失には持ちこたえることができない」
(フォーブス前掲)

ロシア国境に近いヴォフチャンスクでは、ロシア軍がウクライナ軍の砲兵陣地位置を知るため、自軍兵士をおとりで進撃させる戦術をとっていることがわかっています。
多くが訓練が足りない契約兵によるロシア軍部隊は無謀な突撃を強いられたために100人いた中隊の生存者は1割の12人にすぎませんでした。
そして突撃を強いられたこの村は戦略的価値がなく、ただウクライナ軍砲兵を叩くためだけに突撃を命じられたようです。
この中隊の兵士の平均年齢は20歳を下回っており、生き残った兵士は、「モスクワで座っている指揮官たちの前進、前進、前進戦略による兵士の損失を気にしない命令で、自分が死や負傷に直面している」と訴えています。
The Ukrainians stole a super new tank from the Russians and here's what they found on it! (youtube.com)

今回のハルキウ攻撃において「亀戦車」というシロモノまでが登場しました。

「ハルキウ攻撃で露軍が投入したのは「亀戦車」。戦車の前方に地雷源処理車用の除去ローラーを、そして後方や上部には無人ドローン攻撃を防ぐための装甲を取り付け、さながら"亀の甲羅"で防御力を高めた改造戦車だ。
そして、亀戦車で地雷原を突破したところに露軍が攻め込む。通常の機甲部隊ならば、亀戦車の後には装甲車両BTRが続くが、受刑者らで編成されたストームZ部隊は違う。民間車両のバン、オフロードバイク、中国製電動ゴルフカートで突っ込んでくる。
「機甲部隊として、戦車に歩兵戦闘車、装甲歩兵輸送車を随伴させ移動、散開して戦闘する部隊を育成するには長期間の訓練が必要です。しかし露軍はいま、新兵に十分な訓練を行わず基礎訓練だけ受けさせて攻撃をさせています。
大量の人員損耗をおかしてまで遂行している露軍の狙いはハルキウを攻撃することで、ウ軍の予備兵力を投入させて兵力不足にさせ露軍の主導性を更に発揮しようとしたものでした。その狙いは当たり、ウ軍はかなり兵力的に厳しい状態に陥ったのです」(二見龍元陸将補)
崖っぷちのウクライナ軍が最後の"賭け戦"を開始!? ロシアへの攻撃が新たなフェーズに!(週プレNEWS) - Yahoo!ニュース

まさにロシア軍のなりふりかまわない攻撃が起きているわけです。
これを止めるには、米国兵器の性能を目一杯引き出すしかありません。
さもなくば、ウクライナは兵員不足+武器不足+電力不足で早晩力尽きることでしょう。

 

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コメント

 報道によれば、ATACMSの使用やロシア本土攻撃への制約を設けた元凶はサリバン補佐官だと言われてますね。
けれど、アフガニスタンの撤退問題など見るように、このグズグズ感こそバイデン政権の特徴だと思います。
万一、ロシアが戦術核を使用したら? についての回答がロシア政府になされているようですが、プーチンはバイデン政権を見切っていて、実際には「実行できないだろう」と考えているでしょう。
こういう間違いはロシアを「話の出来る相手」として過信し過ぎているから起きるので、譲歩しかする事がない政府に成り下がっています。
でも、戦況はウクライナにとって決して悲観する状態ではないと思われ、「時間」がどちらの味方をするのかも現時点では明らかではないと思います。

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