バイデン涙の撤退
ご承知のようにバイデンが撤退表明し、カマラ・ハリスを後継に指名しました。
「ジョー・バイデン米大統領は21日、大統領選から撤退すると発表し、アメリカの有権者を驚かせた。大統領はもう何週間にもわたり、撤退を求める声に抵抗していた。
バイデン氏は大統領としての任期は全うすると表明しつつ、今年11月の大統領選では自分の代わりとなる民主党の候補として、カマラ・ハリス副大統領を全面的に支持すると言明した」
(BBC7月22日)
【米大統領選2024】 撤退のバイデン氏、ハリス副大統領を支持 ではこの次は?(BBC News) - Yahoo!ニュース
【米大統領選2024】バイデン氏、米大統領選からの撤退を表明 後任候補にハリス副大統領を支持 - BBCニュース
思わず、バイデン爺に同情したくなりました。
彼にまたまた撤退の鈴をつけたのはオバマです。
オバマに副大統領として8年間も仕えたのはバイデンでした。
副大統領というなんの権限も与えらていない陰キャラを8年間もやったことの唯一の報いは、その忠誠の報酬として次期大統領選の後継指名をもらえることだったはずなのに、なんとお可哀相なジョー。
副大統領は不思議な職務です。権力継承順位1位でありながら、あくまでもイザという時のスペアでしかありません。
無色透明の人間であり、大統領がピンピンしている間は、大統領演説の後ろでニコニコしているくらいしか仕事がありません。
有能な政治家なら耐えられないかもしれません。
それを知っているバイデンは、今回の逆風において2つのシナリオを持っていました。
第1は、バイデンが2期めを目指すこと。
当然、今回彼はこの道を突き進む予定でした。まだ1期しかやっていないし、大統領職は2期でワンセットなのです。
1期めは党内調整で始めの2年は潰れますから、やりたいことができるのはたった2年です。
バイデンは党内左派と中間派の妥協で生まれた政権だけに、わじわじとしたこともあったはずです。
ですからそれから解放される2期めを待望していたはずでした。
またなんといっても「トランプに勝った」という政治的資産は大きいので、対抗馬も出ずに党内候補の地位を獲得しました。
ですから2期めに不出馬という選択肢はバイデンにはなかったはずです。
ところが、政治家としての熟成期に年下のオバマのスペアを8年間もやったために大統領に就いた時は老いぼれていました。
足はよろける、手は震える、すぐに物忘れするという老耄が隠せなくなったのです。
そこで第2は、1期目で引退し誰か自分の政策を引き継ぐ人物に譲ることです。
結局、バイデンは第1の選択を党内とメディアに阻まれて、第2の道をえらぶしかないまでに追い詰められてしまいました。
リベラルメディアは砲門を揃えてバイデン撤退を唱えて、民主党内からも造反組が続々と出てきたところでした。
しかしバイデンは自分はまだリングに立っている、まだ戦えるとタオルを入れることを拒否し続けたわけです。
その引導を渡す役割をしたのは、またもやオバマでした。
前回の時もオバマはバイデンを後継指名せずに、国務長官だったヒラリーを指名しましたが、今回は政界からの引退に等しい勧告をしに現れたのです。
オバマは、リングサイドにフラフラになって戻ったバイデンに、タオルを投げるぞとささやいたのですから、コロナ明けのバイデンはぽっきり折れました。
いいおじぃちゃんとして余生をお送りください。
いくら「残りの任期をまっとうすることが党と国家への忠誠の証だ」と力んでも、後継指名までしてしまった人物はただの丸焼けのレームダックです。
どの国もまともにバイデンに対応しようとはしないはずです。
ロシアやイラン、中国はもはやバイデンを相手にしないでしょうし、同盟国ですらご苦労さまでしたお身体をご自愛下さいと優しく言うのみです。
いっそここで思い切って辞任して、自動的にカマラを大統領に昇格させて「現職大統領」として戦わせるという裏技を使えと言う人もいましたが、相手は「前大統領」にしていまや「民主主義の受難者」という後光を背負ったトランプです。
そんな姑息な手を使ったら、それでなくても民主党内すらカマラで一本化できるか怪しいのに、共和党から嵐のような罵声を浴びることでしょう。
そして国民からもね。
カマラについては次回に回します。
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デニーロ主演で映画にもなった「アイリッシュマン」の原作本中で、主人公で殺し屋のペンシルベニア・ブファリーノファミリーのフランク・シーランがバイデンの事を言ってました。「一期目から手を貸していた。あいつは全くいい男だ」と。
良くも悪くも、アメリカの遥かそういう時代から叩きあげでのし上がったバイデン。その紆余曲折と辛苦を思うとき、カマラ・ハリスのような、女性・黒人であるだけが売りの権力男性に媚びる能力に長けた政治的無能者に席を空けるしかなかった決断は苦悩に満ちたものだったでしょう。
投稿: 山路 敬介(宮古) | 2024年7月23日 (火) 17時02分