トランプ警備失敗の謎
バイデンが撤退して後継は民主党最左派のカマラ・ハリスだそうです。
大山鳴動、結局あの悪評ふんぷんたるカマラかよ、というかんじで、意外感はありません。
おそらく、かつて仕えたオバマに引導を渡されたのが効いたのでしょう。
オバマはかつて副大統領だったバイデンを後継指名せずにヒラリーを候補としましたが、今回また二度目の引導です。
こういうかんじで事実上の政界引退ですから、やや気の毒な感じさえします。
「アメリカのバイデン大統領は、21日午後、声明を出し、秋の大統領選挙での再選を断念し、選挙戦から撤退する考えを表明しました。
そして、後任の民主党の大統領候補に、ハリス副大統領を指名する考えを示しました。
再選を目指す現職大統領が選挙戦の途中で撤退するのは1968年のジョンソン大統領以来、56年ぶりの事態です」
(NHK7月22日)
【速報】バイデン氏 大統領選 撤退表明 後任候補 ハリス氏指名 | NHK | バイデン大統領
撤退については明日に。
さて、トランプ暗殺未遂事件についての詳細がわかってきました。
というか不思議なことがあぶり出された、というほうが正確かな。
BBCが暗殺未遂事件について検証をおこなっています。
このへんの冷静さは、ただワーワーいうだけで「選挙戦への影響は」などと言ってしまうどこぞ国のメディアとは大違いです。
時系列で追っています。
【検証】 トランプ前米大統領の暗殺未遂、事件はどのように展開したのか (youtube.com)
さて、この暗殺犯トーマス・クルックスの動向は発砲前からわかっていました。
男は会場外で車を乗り捨てると、その中に爆発物を置いたまま自動小銃を携行したまま徒歩で工場の倉庫に向かっています。
下写真の右側の小さな方の建物で、男は登るための長い梯子まで準備していました。
この時点で警備は失敗と烙印されてもいたしかたありません。
BBC
携行していた武器はDPMS製AR-15/5.56㎜ライフルで、民間仕様のために連射機能がはずしてあるだけで、軍用と同様の自動小銃です。
有効射程は400ⅿ以上ですが、今回の暗殺犯の潜んだ建物からトランまでわずか130ⅿという距離しかありませんでした。
スコープがついており、遮蔽物がない場所での狙撃ですから、ほぼ必中距離だといってよいでしょう。
父親の銃だという情報もありますが、暗殺犯も射撃クラブの会員だったようです。
軍隊仕様の銃『AR15』とは?動機は?共和党員20歳男がトランプ氏“銃撃”事件の全容は(テレ朝news)|dメニューニュース(NTTドコモ) (docomo.ne.jp)
ここでこの事件の最大の謎の一番目が浮かんできます。
どうしてこんな狙撃可能な場所に、シークレットサービスは銃を持った犯人を容易に近づけたのでしょうか。
犯人からトランプまで見下ろす形が130メートルでした。
BBC
しかもこの会場に来た観客のひとりは犯人が建物の屋根に登るのを目撃し、警官に通報していましたが、無視されたと怒っています。
BBC
ここで出てくるのは「警備の範囲」です。
この建物があったのは会場外で警備は地元警察がおこなっていました。
たしかに大統領は退任後も、生涯にわたってシークレットサービスが警護をしますが、現職と違って人員も少なく予算も限られているようです。
そこでシークレットサービスは地元警察(州警察、郡警察など)に協力を頼んで警備をします。
米国の警察機関は日本のように一元化されている国と違って、地方に行けば行くほど各種の警察や保安官が複雑怪奇にり組んで存在し、必ずしも相互の連絡関係はスムーズではありません。
ここで疑問に思うのは、シークレットサービスが警備計画を立てたと言いながら、なぜこのような絶好な狙撃ポイントを犯人に与えてしまったか、です。
今回の場合、会場内はシークレット・サービスが直接警備し、会場外はペンシルべニア州バトラー郡警察が警備しました。
なお、狙撃された後に壇上裏からわらわらと兵隊のような男たちの一群が出てきましたが、あれがバトラー郡警察SWATチームです。
彼らSWATチームが、会場外を警備していたら犯人は建物に近づくことさえできなかったと思いますが、結局なにもできないまま壇上裏に待機したままでした。
この批判に対して、シークレット・サービス長官のキンバリー・チートルは、7月16日、米ABCテレビで「その建物の屋根には傾斜があったので、危険なために警察官を配置していなかった」と説明して炎上しています。
そりゃそうでしょう、あの建物は犯人が楽に横たわって寝撃ち(Prone Position)が可能な程度のゆるい傾斜の屋根だったからです。
BBC
「この寝撃ちは、4つある射撃姿勢の中で一番正確に射撃できる姿勢です。
うつぶせになり、両肘を立てて銃構えます。体の大部分を地面に預けることになり、体とライフルは安定します。体の隠蔽率が最も高く、敵に発見されにくくなります。しかし、その反面、低姿勢は視野が制限され、草むらなどブッシュの中では更に視野が狭まります」
ライフルを持った時の4つの基本の構え方・射撃姿勢│サバテク|sabatech
不審な人物が建物の屋根に上ったという通報を受けての地元警察の対応は鈍く、その建物には警官が配置されていて、そのひとりが見に上がったようですが、犯人から銃を突きつけられてそれ以上の行動をしなかったようです。
すぐに発砲するので有名な米国警察流とも思えませんが、上がってこようとする警官を追い払ってから犯人は悠々と狙撃にとりかかっています。
この時点でどのような連絡がシークレットサービスの警備本部に行ったのかわかりませんが、信じられないような失敗です。
しかし遅れはしたもののこの連絡を受けたシークレット・サービスは、会場後ろの建物屋上で待機する対狙撃班(CS)のカウンタースナイパーチームに対応を指示しました。
BBC
このカウンタースナイパーのCSチーム「ヘラクレス」は特殊作戦部に所属し、黒スーツシークレットサービスの「大統領警護部」とは別系列ですが、通常は緊密に連絡を取り合っていたはずでした。
ここで第2の疑問点が浮上します。
カウンタースナイパーチームは高倍率のスコープを装着したレミントンM700という高性能ライフルを装備していましたが、その動きは緩慢でした。
映像でも確認できますが、連絡を受けて犯人の方向に銃を指向し、当然望遠スコープには犯人が照準されていたはずなのにもかかわらず、直ちに対応せずに先に撃たせてしまっています。
いいでしょうか、そのとき犯人は銃を向けていたのですよ。なぜ撃たない!
この数秒間の謎の逡巡の間に、犯人はトランプとその周辺に弾丸の雨を降らせ、トランプ以外に1名を射殺し、2名に重傷を負わせました。
犯人の放った弾丸はまさに奇跡的にトランプの頭蓋骨をわずかに逸れて耳たぶを撃ち抜きました。
ANN
まさに奇跡としか言いようがありません。
この数秒のカウンタースナイパーの逡巡がなぜ起きたのか、一節で上部からストップがかかったという根拠不明の情報もあるようですが、謎です。
とまれ福音派に近いトランプは、これでいっそう自分は神の加護があると信じたはずです。
ただしその後のシークレットサービスの動きはまさに要人警護はかくあるべしという手本で、トランプを布団むしにしてみずからの身体で防いでいます。
安倍氏の時のように、安倍氏を放って第2撃を与えた奈良県警とはエライ違いです。
« 日曜写真館 ふり止みて再びはげし蓼の雨 | トップページ | バイデン涙の撤退 »
明け方になってバイデン撤退のニュースが飛び込んで来ました。
本来はバイデンの4年間で副大統領を務めたカマラ・ハリスへの禅譲は「寄附金調達」的には普通なんでしょうけど。ミシェル·オバマ案とか推測記事が出回りましたけど、そうなると今から公約作成して更に新たな「寄付金集め」が必要になるので、全くありえません。
とはいえハリスとは元々思想が違ったからか、ろくに育てずに民主党がバイデンというジョイントがいなくなって空中分解の様相ですね。
トランプ陣営からは政権に警護レベルの引き上げを要請されていたのに断ったという情報もあります。
SWATは既に容疑者を発見しスコープで捉えていたのに、何故か対象が発砲するまで待たされたものの、確認し次第即座に命中させ射殺。レベルが違います。
単射もしくはバースト射で8発ならほんの数秒ですが。
ついでに、ラスベガス乱射事件のカラシニコフのように「連射できなくするバンプ·ストック」ですが、まあ外そうと思えば割と簡単です。
ついでに、先週の連邦最高裁でトランプ大統領時代の遺産である裁判官入れ替えのおかげでNRAが大勝利。バンプ·ストック規制が違憲判決が出ました。
全く平和な日本はともかく他国の常識が通用しない銃国家アメリカです。
投稿: 山形 | 2024年7月22日 (月) 06時09分